特許第6584846号(P6584846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584846
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】剥離テープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190919BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/304 622J
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-143800(P2015-143800)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-28047(P2017-28047A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦重
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−204624(JP,A)
【文献】 特開昭60−124679(JP,A)
【文献】 特開平02−102280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長だけ引き出され、板状ワークに貼着する保護テープに押し付け貼着させ、該保護テープに押し付けられた状態で切断され、該切断された剥離テープを介して該保護テープを剥離させる剥離テープであって、
基材と、該基材の一方の面に配設する内部に粘着糊を包むカプセルと、を備え
該基材には、引き出し方向において該剥離テープの引き出し長に対応した間隔を空けて該カプセルの配設位置が設けられ、引き出し方向において該剥離テープの引き出し長に対応した間隔を空けて該剥離テープの切断位置が設けられている剥離テープ。
【請求項2】
該カプセルは、該粘着糊の溶剤を包む第1カプセルと、該粘着糊の硬化剤を包む第2カプセルとを有する請求項1記載の剥離テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークに貼着された保護テープを剥離する剥離テープに関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスが形成された板状ワークの研削時には、デバイスを保護するために板状ワークの表面に保護テープが貼着される。板状ワークの研削後には、板状ワークの保護テープに帯状の剥離テープが貼着されて、剥離テープを介して板状ワークから保護テープが引き剥がされる(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載の剥離テープは、剥離テープの裏面全域に塗布された粘着糊によって保護テープに貼着される。また、特許文献2に記載の剥離テープは、熱圧着テープであり、保護テープに対して加熱状態で押し付けられることによって保護テープに貼着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−028478号公報
【特許文献2】特開2011−023606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の剥離テープは、保護テープに貼着された箇所以外にも粘着糊が塗布されているため、保護テープを剥離した後に保護テープがゴミ箱の側面に貼り付いて保護テープを廃棄できない場合がある。また、特許文献2に記載の剥離テープは、保護テープに熱圧着されるため、板状ワークに対して局所的に熱ダメージを与える可能性がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、板状ワークに対して熱ダメージを与えることなく、剥離した保護テープを容易に回収することができる剥離テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の剥離テープは、所定長だけ引き出され、板状ワークに貼着する保護テープに押し付け貼着させ、該保護テープに押し付けられた状態で切断され、該切断された剥離テープを介して該保護テープを剥離させる剥離テープであって、基材と、該基材の一方の面に配設する内部に粘着糊を包むカプセルと、を備え、該基材には、引き出し方向において該剥離テープの引き出し長に対応した間隔を空けて該カプセルの配設位置が設けられ、引き出し方向において該剥離テープの引き出し長に対応した間隔を空けて該剥離テープの切断位置が設けられている。
【0007】
この構成によれば、剥離テープの基材の一方の面が保護テープに押し当てられることで、カプセルに内包された粘着糊が外部に流れ出る。剥離テープにはカプセルが破けた箇所のみ粘着糊が塗布されて、粘着糊によって剥離テープと保護テープとが貼着される。よって、剥離テープと保護テープの貼着箇所にのみ局所的に粘着糊が塗布されるため、剥離テープが他の部材に貼り付くことがなく、剥離した保護テープを容易に回収することができる。また、剥離テープを加熱することなく板状ワークに貼着できるため、板状ワークに対して熱ダメージを与えることもない。
本発明の剥離テープにおいては、該カプセルは、該粘着糊の溶剤を包む第1カプセルと、該粘着糊の硬化剤を包む第2カプセルとを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剥離テープの基材に粘着糊を内包したカプセルを配設することで、剥離テープに対して局所的に粘着糊を塗布することができる。よって、剥離した保護テープを容易に回収することができ、さらに板状ワークに対して熱ダメージを与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係るテープ剥離装置の模式図である。
図2】比較例に係る保護テープの剥離動作の説明図である。
図3】本実施の形態に係る剥離テープの平面図である。
図4】変形例に係る剥離テープの平面図である。
図5】本実施の形態に係るテープ剥離装置による剥離動作前半の説明図である。
図6】本実施の形態に係るテープ剥離装置による剥離動作後半の説明図である。
図7】変形例に係る保持ローラの模式図である。
図8】変形例に係る剥離テープ及び保持ローラの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係るテープ剥離装置の模式図である。図2は、比較例に係る保護テープの剥離動作の説明図である。なお、以下の説明では、専用のテープ剥離装置を用いて板状ワークから保護テープを剥離する構成について説明するが、この構成に限定されない。例えば、テープ剥離装置は他の加工装置に組み込まれていてもよい。また、図1に示すテープ剥離装置の模式図は、説明の便宜上、剥離テープの搬送路を形成する一部の部材については省略して記載している。また、図2の比較例については、本実施の形態と同一の名称については同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1に示すように、テープ剥離装置1は、保持テーブル11上で板状ワークW表面の保護テープ51に剥離テープ61を貼着し、剥離テープ61を介して板状ワークWから保護テープ51を剥離するように構成されている。板状ワークWの表面には多数のデバイスが形成されており、板状ワークW表面の保護テープ51によって前段の板状ワークWの裏面研削時にデバイスが保護されている。板状ワークWの裏面には貼着テープ52が貼着されており、貼着テープ52の外周にはリングフレーム53が貼着されている。板状ワークWは、貼着テープ52を介してリングフレーム53に支持された状態でテープ剥離装置1に搬入される。
【0012】
なお、板状ワークWは、表面に保護テープ51が貼着された板状のワークであればよく、例えば、半導体基板に半導体デバイスが形成された半導体ウエーハでもよいし、無機材料基板に光デバイスが形成された光デバイスウエーハでもよい。また、板状ワークWは、半導体デバイス形成前の半導体基板でもよいし、光デバイス形成前の無機材料基板でもよい。さらに、板状ワークWは、貼着テープ52を介してリングフレーム53に支持された状態でテープ剥離装置1に搬入されたが、リングフレーム53に支持されずにテープ剥離装置1に搬入されてもよい。
【0013】
ところで、保護テープ51は紫外線硬化樹脂で板状ワークWの表面に貼着され、板状ワークWから剥離する前に紫外線の照射によって保護テープ51の粘着力が弱められている。図2Aに示すように、保護テープ51の剥離時には、保護テープ51の外縁部に剥離テープ61が貼着されて、剥離テープ61を介して板状ワークWから保護テープ51が剥離される。この場合、紫外線の照射によって保護テープ51の粘着力が弱められているが、剥離テープ61が保護テープ51に十分な強さで貼着されなければ、保護テープ51から剥離テープ61が剥がれてしまい、板状ワークWから剥離テープ61を剥がすことができない。
【0014】
一般に剥離テープ61としては、粘着層を持った粘着テープや溶着可能な熱圧着テープが使用される。しかしながら、図2Bに示すように、剥離テープ61が粘着テープの場合には、剥離テープ61の貼着面に一様に粘着層があると、保護テープ51の剥離後の廃棄時に剥離テープ61の一部がゴミ箱54等の他の部材に貼り付いて保護テープ51の回収が困難になる。一方で、剥離テープ61が熱圧着テープの場合には、保護テープ51に対する剥離テープ61の熱圧着時に板状ワークWが熱ダメージを受けてしまう。このように、熱圧着せずに十分な粘着力を有し、保護テープ51の回収時に他の部材に付着しない剥離テープ61が求められていた。
【0015】
そこで、本実施の形態に係るテープ剥離装置1では、粘着糊64を内包したカプセル63を基材62の一面に設けた剥離テープ61を使用するようにしている(図3B参照)。この剥離テープ61を使用することで、保護テープ51に対して剥離テープ61が押し付けられた箇所のみカプセル63が破けて粘着糊64が塗布されるため、剥離テープ61がゴミ箱54(図2参照)等の他の部材に貼り付くことがない。また、剥離テープ61が粘着糊64で保護テープ51に貼着されるため、板状ワークWに対して貼着時にダメージを与えることもない。なお、剥離テープ61の詳細については後述する。
【0016】
図1に戻り、テープ剥離装置1の保持テーブル11にはポーラスセラミック材により保持面12が形成されており、保持面12に生じる負圧によって板状ワークWが吸引保持される。保持テーブル11の上方には、板状ワークWの保護テープ51に剥離テープ61を貼着する貼着手段21が設けられている。貼着手段21の側壁面にはリール23が立設され、リール23には帯状の剥離テープ61をロール状に纏めたテープロール65が装着されている。また、貼着手段21の側壁面には、剥離テープ61の引き出しに伴って従動回転する従動ローラ24と、所定長だけ引き出された剥離テープ61を保持する一対の保持ローラ25、26とが設けられている。
【0017】
貼着手段21には、これらリール23、従動ローラ24、一対の保持ローラ25、26によって剥離テープ61の通り路が形成されている。リール23には制動機構(不図示)が接続されており、テープロール65から引き出される剥離テープ61にバックテンションを作用させている。バックテンションは、剥離テープ61の引き出し中および引き出し停止中に剥離テープ61が弛まない程度の強さに調整されている。従動ローラ24は、テープロール65から引き出された剥離テープ61を一対の保持ローラ25、26に向けて折り返しており、剥離テープ61の折り返しによって剥離テープ61にテンションを付与している。
【0018】
一対の保持ローラ25、26は、従動ローラ24で折り返された剥離テープ61の通り路を挟んで対向しており、剥離テープ61の両面に対して転接可能に配置されている。一対の保持ローラ25、26の転接面は、剥離テープ61を両面からグリップ可能な材質で形成されている。一対の保持ローラ25、26にも制動機構(不図示)が接続されており、テープロール65から引き出される剥離テープ61にバックテンションを作用させている。バックテンションは、剥離テープ61の引き出し中および引き出し停止中に剥離テープ61が弛まない程度の強さに調整されている。
【0019】
一方(下側)の保持ローラ25には離間機構(不図示)が接続されており、所定タイミングで他方の保持ローラ26から離間するように構成されている。所定タイミングは、剥離テープ61のカプセル63が一対の保持ローラ25、26を通過するタイミングであり、他方の保持ローラ26から一方の保持ローラ25が離れたタイミングでカプセル63が通過することで、カプセル63の破裂が防止されている。なお、離間機構は、一方の保持ローラ25の代わりに他方の保持ローラ26を離間させてもよいし、一対の保持ローラ25、26を相互に離間させてもよい。
【0020】
また、保持ローラ25は保持ローラ26に向けてスプリング29で付勢されていてもよい(図7A参照)。スプリング29は剥離テープ61のカプセル63が一対の保持ローラ25、26を通過するタイミングでカプセル63を破裂させない強さで付勢している。カプセル63が保持ローラ25に当たると、スプリング29が収縮して保持ローラ25が下方に下がってカプセル63を破裂させることなく通過させる(図7B参照)。さらに、スプリング29を備えない場合には保持ローラ26の重力で剥離テープ61を押さえる構成としてもよい。この場合、保持ローラ26はカプセル63を破裂させない重量であればよい。
【0021】
貼着手段21には、一対の保持ローラ25、26から剥離テープ61の引き出し方向に離間した位置に、剥離テープ61の前端を挟持する挟持部31が設けられている。挟持部31は、固定爪32に対して可動爪33を接近させることで剥離テープ61を挟持し、固定爪32に対して可動爪33を離間させることで剥離テープ61の前端を解放する。挟持部31には引き出し機構34が接続されており、挟持部31に剥離テープ61を挟持させた状態で、引き出し機構34によって挟持部31を挟持位置から引き出し方向に移動される。これにより、テープロール65から保護テープ51の剥離に使用される所定長だけ剥離テープ61が引き出される。
【0022】
さらに、貼着手段21には、一対の保持ローラ25、26と挟持部31の間には、剥離テープ61を保護テープ51に押し付ける押し付け部35と、剥離テープ61を切断する切断部36とが設けられている。押し付け部35は、剥離テープ61が所定長だけ引き出されたときに、剥離テープ61のカプセル63の真上になるように配置されている。押し付け部35は、板状ワークWに対して離間又は接近に構成されており、剥離テープ61を保護テープ51に押し付けるように動作する。押し付け部35の真下にはカプセル63が位置付けられるため、保護テープ51に対して剥離テープ61が押し付けられることでカプセル63が破裂する。
【0023】
カプセル63の破裂によって粘着糊64(図3B参照)が流出して、剥離テープ61と保護テープ51とが粘着糊64によって貼着される。この場合、押し付け部35によって剥離テープ61が保護テープ51に押し付けられた箇所にのみ局所的に粘着糊64が塗布され、剥離テープ61の他の箇所には粘着糊64が塗布されることがない。また、切断部36は、剥離テープ61が所定長だけ引き出されたときに、剥離テープ61のカプセル63から外れるように配置されている。切断部36は、上下方向に移動可能に構成されており、保護テープ51に剥離テープ61が貼着された状態で下方に移動することで剥離テープ61を切断する。
【0024】
また、保持テーブル11には、板状ワークWから保護テープ51を剥離させる剥離手段37が接続されている。剥離手段37は、剥離テープ61を挟持部31に挟持させた状態で、保持テーブル11を略水平方向に移動させることで、板状ワークWから保護テープ51を引き剥がしている。板状ワークWから剥離された保護テープ51は挟持部31によってゴミ箱54(図2参照)に廃棄される。このとき、剥離テープ61には保護テープ51との貼着部分にのみ粘着糊64が塗布されるため、剥離テープ61が挟持部31に引っかかることがなく、さらにゴミ箱54の側面に貼り付くこともない。
【0025】
図3を参照して、剥離テープについて詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る剥離テープの平面図である。図4は、変形例に係る剥離テープの平面図である。なお、図3Aは、剥離テープの正面図であり、図3Bは、剥離テープの側面図である。また、図4Aは、剥離テープに対する単一のカプセルの配設例、図4B及び図4Cは、剥離テープに対する多数のカプセルの配設例をそれぞれ示している。
【0026】
図3A及び図3Bに示すように、剥離テープ61は、帯状の基材62と、基材62の一方の面に配設された、内部に粘着糊64を包むカプセル63とを備えている。基材62には、引き出し方向に一定の間隔を空けて、カプセル63が配設される配設位置P1が設けられている。カプセル63の配設位置P1は、剥離テープ61が所定長だけ引き出されたときに、貼着手段21の押し付け部35によって保護テープ51(図1参照)に押し付けられる位置である。すなわち、基材62には、引き出し方向において剥離テープ61の引き出し長Lに対応した間隔を空けてカプセル63の配設位置P1が設けられている。
【0027】
また、基材62には、カプセル63の各配設位置P1に対して引き出し方向とは逆側に離間して、剥離テープ61が切断される切断位置P2が設けられている。剥離テープ61の切断位置P2は、剥離テープ61が所定長だけ引き出されて保護テープ51に貼着されたときに、貼着手段21の切断部36によって切断される位置である。すなわち、基材62にはカプセル63の配設位置P1と同様に、引き出し方向において剥離テープ61の引き出し長Lに対応した間隔を空けて剥離テープ61の切断位置P2が設けられている。
【0028】
このように、テープロール65から剥離テープ61が引き出される度に、押し付け部35の真下にカプセル63の配設位置P1が位置付けられると共に、切断部36の真下に剥離テープ61の切断位置P2が位置付けられる。よって、剥離テープ61のカプセル63から外れた箇所が押し付け部35によって保護テープ51に押し付けられることがなく、押し付け部35によってカプセル63を確実に押し潰して剥離テープ61を保護テープ51に貼着させることができる。また、切断部36の真下にカプセル63が位置付けられることがないため、切断部36によってカプセル63が切断されて粘着糊64が飛散することがない。
【0029】
カプセル63は、所定量の粘着糊64を包み込む薄膜によって形成されている。所定量の粘着糊64は、カプセル63の破裂によって剥離テープ61に対して部分的に塗布できる程度の量である。カプセル63の破裂によって配設位置P1の周辺部分にのみ粘着糊64が塗布されて、この配設位置P1で押し付け部35によって剥離テープ61が保護テープ51に貼着される。よって、剥離テープ61の貼着位置以外で粘着糊64によって他部材に貼り付くことがない。また、剥離テープ61の切断位置P2まで粘着糊64が広がらないため、剥離テープ61の切断時に切断部36に粘着糊64が付着することもない。
【0030】
なお、上記した一例では、剥離テープ61の延在方向に直交する幅方向に、複数のカプセル63が配設される構成にしたが、粘着糊64を内包可能であれば、どのように構成されてもよい。例えば、図4Aに示すように、剥離テープ61には、幅方向に延在する単一のカプセル63が配設されてもよいし、図4Bに示すように、幅方向に複数列で並んだ多数の小型のカプセル63が配設されてもよい。粘着糊64は空気に触れて硬化することが好ましい。複数のカプセル63が配設される場合には、溶剤が内包されるカプセル63と、硬化剤が内包されるカプセル63とが別々に配設されてもよい。また、図4Cに示すように、カプセル63は、溶剤68が内包されるカプセル66の内側に、硬化剤69が内包されるカプセル67を設けた2重構造でもよい。これにより、最初に外側のカプセル66が破裂して溶剤68が流出した後に、内側のカプセル67が破裂して溶剤68が硬化剤69によって硬化される。さらに、図4Dに示すように、剥離テープ61に対して全体的にカプセル63が配設されてもよい。
【0031】
なお、図8Aに示すように、カプセル63は、剥離テープ61の幅方向の中央位置だけに設けられていてもよい。この場合、保持ローラ25のローラ面には、カプセル63を避けるように、幅方向の中央位置に窪みが設けられている。また、図8Bに示すように、カプセル63は、剥離テープ61の幅方向の両端位置だけに設けられてもよい。この場合、保持ローラ25が、剥離テープ61の幅方向の両端のカプセル63の内側に収まるように短く形成されている。このように、剥離テープ61に対するカプセル63の位置や保持ローラ25の形状を工夫することで、剥離テープ61が引き出されるときに保持ローラ25がカプセル63の障害にならない。
【0032】
図5及び図6を参照して、テープ剥離装置による剥離動作について説明する。図5は、本実施の形態に係るテープ剥離装置による剥離動作前半の説明図である。図6は、本実施の形態に係るテープ剥離装置による剥離動作後半の説明図である。
【0033】
図5Aに示すように、保持テーブル11上に板状ワークWが保持されると、貼着手段21の押し付け部35の真下に保護テープ51の外縁部が位置付けられる。また、板状ワークWの上方にはテープロール65(図1参照)から剥離テープ61が引き出されており、引き出し方向に飛び出した状態で一対の保持ローラ25、26に剥離テープ61が保持されている。この貼着開始前の初期状態では、貼着手段21の挟持部31が剥離テープ61の前端から退避した位置に位置付けられている。また、不図示の紫外線ランプによって保護テープ51に対して紫外線が照射され、保護テープ51の粘着層が硬化されて粘着力が低下される。
【0034】
図5Bに示すように、挟持部31によって剥離テープ61の前端が挟持され、一対の保持ローラ25、26から剥離テープ61が引き出し方向に引き出される。このとき、リール23(図1参照)及び一対の保持ローラ25、26によって剥離テープ61にバックテンションが作用することで、剥離テープ61の引き出し時の弛みが抑えられている。また、剥離テープ61の引き出し時には、剥離テープ61のカプセル63が一対の保持ローラ25、26を通過するタイミングで、一方の保持ローラ25が他方の保持ローラ26から離間する。これにより、一対の保持ローラ25、26間でカプセル63を破裂させることがない。
【0035】
図5Cに示すように、カプセル63が一対の保持ローラ25、26の間を通過すると、一方の保持ローラ25が他方の保持ローラ26に近づいて、再び一対の保持ローラ25、26で剥離テープ61が挟まれる。そして、挟持部31によって剥離テープ61が所定長だけ引き出されると、押し付け部35の真下に剥離テープ61のカプセル63が位置付けられる。これにより、剥離テープ61のカプセル63を挟んで保護テープ51の外縁部と押し付け部35の押し付け面とが対向する。このように、剥離テープ61には、剥離テープ61の前端から所定長だけ引き出された位置にカプセル63が配設されている。
【0036】
図6Aに示すように、押し付け部35の真下にカプセル63が位置付けられた状態で、押し付け部35が下方に移動して、押し付け部35によって剥離テープ61が保護テープ51に押し付けられる。これにより、押し付け部35の押し付け面と保護テープ51の上面との間でカプセル63が押し潰されて、カプセル63から流出した粘着糊64によって剥離テープ61が保護テープ51の外縁部に貼着される。この場合、剥離テープ61が保護テープ51に対して押し付けられる箇所にのみ粘着糊64が塗布され、保護テープ51から離れた他の箇所には粘着糊64が塗布されることがない。
【0037】
図6Bに示すように、押し付け部35によって剥離テープ61が保護テープ51に押し付けられた状態で、切断部36が下方に移動して、切断部36によって剥離テープ61が切断される。これにより、テープロール65から剥離テープ61が切り離されて、剥離テープ61によって保護テープ51の引き剥がし時の起点が作られる。また、切断部36によって切断された剥離テープ61の切断箇所は、次回の剥離動作において挟持部31によって挟持されるが、剥離テープ61の切断箇所には粘着糊64が塗布されていないため、剥離テープ61が挟持部31に付着することがない。
【0038】
図6Cに示すように、剥離テープ61が切断されると、剥離手段37(図1参照)によって保持テーブル11が剥離方向(図6Cでは右方向)に移動され、板状ワークWから保護テープ51が剥がされ始める。そして、保持テーブル11が挟持部31の下方を通過することで板状ワークWから保護テープ51が完全に引き剥がされる。このように、保持テーブル11が、剥離テープ61を保持した挟持部31に対して相対的に移動されて、剥離テープ61を介して板状ワークWから保護テープ51が剥離される。本実施の形態では、初期状態で保護テープ51に紫外線が照射されたが、図6Cに示す剥離動作前であれば、どのタイミングで紫外線が照射されてもよい。
【0039】
以上のように、本実施の形態に係るテープ剥離装置1によれば、剥離テープ61の基材62の一方の面が保護テープ51に押し当てられることで、カプセル63に内包された粘着糊64が外部に流れ出る。剥離テープ61にはカプセル63が破けた箇所のみ粘着糊64が塗布されて、粘着糊64によって剥離テープ61と保護テープ51とが貼着される。よって、剥離テープ61と保護テープ51の貼着箇所にのみ局所的に粘着糊64が塗布されるため、剥離テープ61が他の部材に貼り付くことがなく、剥離した保護テープ51を容易に回収することができる。また、剥離テープ61を加熱することなく板状ワークWに貼着できるため、板状ワークWに対して熱ダメージを与えることもない。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0041】
例えば、上記した本実施の形態においては、保持テーブル11の保持面12に貼着テープ52を介して板状ワークWが保持される構成にしたが、この構成に限定されない。例えば、保持テーブル11に保持面12の周囲に複数のクランプを設けて、クランプによってリングフレーム53を固定する構成にしてもよい。
【0042】
また、上記した本実施の形態においては、挟持部31が固定爪32と可動爪33を接近させて剥離テープ61を挟持する構成にしたが、この構成に限定されない。挟持部31は剥離テープ61の前端を挟持する構成であればよく、例えば、一対の可動爪を相互に近づけることによって剥離テープ61の前端を固定してもよい。
【0043】
また、上記した本実施の形態においては、押し付け部35の押し付け面が平坦に形成される構成にしたが、この構成に限定されない。押し付け部35の押し付け面は剥離テープ61を保護テープ51に押し付け可能であればよく、例えば、押し付け面から僅かに突起が突出してもよい。保護テープ51に対する剥離テープ61の押し付け時に、押し付け面の突起によってカプセル63を破裂させ易くなる。
【0044】
また、上記した本実施の形態においては、切断部36によって剥離テープ61を機械的に切断する構成について説明したが、この構成に限定されない。切断部36は、剥離テープ61を切断可能な構成であればよく、例えば、電熱式のワイヤで熱切断する構成でもよい。
【0045】
また、上記した本実施の形態においては、保護テープ51に対して紫外線を照射して、保護テープ51の貼着力を低下させる構成について説明したが、この構成に限定されない。保護テープ51の貼着力を低下させずに保護テープ51の剥離動作を実施してもよい。また、保護テープ51に紫外線硬化樹脂の代わりに熱硬化樹脂を使用してもよい。この場合、保護テープ51の剥離動作前に、保護テープ51が温められることが好ましい。
【0046】
また、上記した本実施の形態において、剥離テープ61のカプセル63の大きさ、形状、数は特に限定されない。剥離テープ61には、保護テープ51に貼着される箇所に、粘着糊64が内包されたカプセル63が配設されていればよい。
【0047】
また、上記した本実施の形態において、剥離テープ61によって研削後の板状ワークWから保護テープ51を剥離させる構成について説明したが、この構成に限定されない。剥離テープ61は、板状ワークWに貼着された保護テープ51を剥離させるものであり、研削後の板状ワークWの保護テープ51の剥離に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、板状ワークに対して熱ダメージを与えることなく、剥離した保護テープを容易に回収することができるという効果を有し、特に、研削後のウエーハから保護テープを剥離する剥離テープに有用である。
【符号の説明】
【0049】
51 保護テープ
61 剥離テープ
62 基材
63 カプセル
64 粘着糊
65 テープロール
W 板状ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8