特許第6584889号(P6584889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584889
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】吸引保持パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20190919BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190919BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20190919BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20190919BHJP
   B24B 7/04 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   B24B41/06 L
   H01L21/304 622H
   H01L21/68 B
   B65G49/07 G
   !B24B7/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-182951(P2015-182951)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-56513(P2017-56513A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 太一
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−132365(JP,U)
【文献】 特開平05−033868(JP,A)
【文献】 特開平01−101386(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0151257(US,A1)
【文献】 特開平10−078166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00−7/30
B24B21/00−51/00
H01L21/304
H01L21/463
H01L21/67−21/683
B65G49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のOリングと、
該第1のOリングの外径より大きい内径を有する第2のOリングと、
該第1のOリングと該第2のOリングとを中心を一致させて装着する環状溝を備え該第1のOリングと該第2のOリングとを円弧に表出させるプレートと、
該プレートの該環状溝に装着された該第1のOリングと該第2のOリングとの間に形成され吸引源に連通する吸引口と、を備えウエーハを吸引保持する吸引保持パッドであって、
該環状溝に装着される該第1のOリングまたは該第2のOリングが該環状溝から脱落するのを防止する脱落防止部を備え
該プレートは、該第1のOリングを装着させる第1の側壁を備えるメインプレートと、該メインプレートに装着された該第1のOリングの最外周より外側で該第2のOリングを装着させる第2の側壁を備える第1の環状プレートと、該第1の環状プレートに装着される該第2のOリングの最外周より外側に装着される第2の環状プレートと、を備え、
該環状溝は、該メインプレートと該第1の環状プレートと該第2の環状プレートとを連結させ該第1のOリングを装着する第1の環状溝と該第2のOリングを装着する第2の環状溝とを備え、
該脱落防止部は、該第1のOリングの脱落を防止する第1の脱落防止部と、該第2のOリングの脱落を防止する第2の脱落防止部とを備え、
該メインプレートに該第1の環状プレートを連結させたとき該第1の環状溝を形成すると共に該第1の環状プレートが該第1の脱落防止部となり、
該第2の環状プレートを連結させたとき該第2の環状溝を形成すると共に該第2の環状プレートが該第2の脱落防止部となる、吸引保持パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを吸引保持する吸引保持パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の研削装置では、ウエーハの表面が研削加工された後、ウエーハは搬送手段によってチャックテーブルから搬出される。搬送手段は、研削されたウエーハの加工面を吸引パッドで全面吸引してウエーハを保持する。この場合、ウエーハの加工面に研削屑等のゴミが残っていると吸引パッドの吸引面とウエーハとの間で研削屑を挟み込んでしまう結果、ウエーハの加工面に傷が付いてウエーハの品質を低下させるおそれがある。
【0003】
また、研削加工後のウエーハを洗浄する際には、ウエーハが洗浄テーブルに搬送され、洗浄テーブルは吸引面でウエーハを全面吸引して保持する。この場合でも、ウエーハと吸引面との間に研削屑を挟み込んでしまうと、ウエーハに傷が付くだけでなく、ウエーハを適切に吸引保持することができないおそれがある。
【0004】
そこで、ウエーハに対する吸引面の接触面積を減らすため、Oリングを用いてウエーハを吸引保持する搬送手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の搬送手段では、円形状のプレートの表面に外径の異なる2つのOリングを同心円状に埋め込み、プレートから表出した各Oリングにウエーハを接触させて保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−294588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、プレートの表面にOリングの外径に沿った溝が形成されている。Oリングはこの溝に嵌め込まれるようにしてプレートに取り付けられる。このとき、Oリングにはねじれが生じており、ウエーハの搬送が繰り返される結果、Oリングのねじれが解消されようとされ溝からOリングが脱落してしまうという問題がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、Oリングの脱落を防止することができる吸引保持パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸引保持パッドは、第1のOリングと、第1のOリングの外径より大きい内径を有する第2のOリングと、第1のOリングと第2のOリングとを中心を一致させて装着する環状溝を備え第1のOリングと第2のOリングとを円弧に表出させるプレートと、プレートの環状溝に装着された第1のOリングと第2のOリングとの間に形成され吸引源に連通する吸引口と、を備えウエーハを吸引保持する吸引保持パッドであって、環状溝に装着される第1のOリングまたは第2のOリングが環状溝から脱落するのを防止する脱落防止部を備え、プレートは、第1のOリングを装着させる第1の側壁を備えるメインプレートと、メインプレートに装着された第1のOリングの最外周より外側で第2のOリングを装着させる第2の側壁を備える第1の環状プレートと、第1の環状プレートに装着される第2のOリングの最外周より外側に装着される第2の環状プレートと、を備え、環状溝は、メインプレートと第1の環状プレートと第2の環状プレートとを連結させ第1のOリングを装着する第1の環状溝と第2のOリングを装着する第2の環状溝とを備え、脱落防止部は、第1のOリングの脱落を防止する第1の脱落防止部と、第2のOリングの脱落を防止する第2の脱落防止部とを備え、メインプレートに第1の環状プレートを連結させたとき第1の環状溝を形成すると共に第1の環状プレートが第1の脱落防止部となり、第2の環状プレートを連結させたとき第2の環状溝を形成すると共に第2の環状プレートが第2の脱落防止部となる。
【0009】
この構成によれば、第1のOリング及び第2のOリングが環状溝に対してねじれが生じた状態で装着されても、環状溝に脱落防止部が装着されることで、第1のOリング及び第2のOリングが環状溝から脱落するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1及び第2のOリングが装着される環状溝に脱落防止部が装着されることで、第1及び第2のOリングが環状溝から脱落するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態に係る搬送手段の模式図である。
図2】第1の実施の形態に係る吸引保持パッドの分解斜視図である。
図3】第1の実施の形態に係る吸引保持パッドの組み立て順序を示す模式図である。
図4】比較例において、Oリングをプレートに組み付ける際のOリング及び環状溝周辺の部分拡大図である。
図5】第1の実施の形態において、Oリングをプレートに組み付ける際のOリング及び環状溝周辺の部分拡大図である。
図6】第2の実施の形態に係る吸引保持パッドの説明図である。
図7】第2の実施の形態の変形例に係る吸引保持パッドの説明図である。
図8】他の変形例に係る吸引保持パッドの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1及び図2を参照して、第1の実施の形態に係る搬送手段について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る搬送手段の模式図である。図2は、第1の実施の形態に係る吸引保持パッドの分解斜視図である。なお、図2においては、説明の便宜上、吸引保持パッドを上下反対にして分解した状態を示している。また、以下に示す搬送手段は、どのような装置に適用されてもよく、例えば、研削装置や切削装置等、その他のタイプの加工装置にも適用可能である。
【0015】
図1及び図2に示すように、第1の実施の形態に係る搬送手段1は、吸引保持パッド2でウエーハWの表面を吸引保持し、研削装置等の加工装置に対してウエーハを搬入出するように構成されている。搬送対象となるウエーハWは、円形状を有しており、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体ウエーハで構成される。なお、ウエーハWは、上記構成に限定されず、セラミック、ガラス、サファイア系の光デバイスウエーハで構成されてもよい。
【0016】
搬送手段1では、アーム10の先端に支持部11を介して吸引保持パッド2が取り付けられている。吸引保持パッド2は、円形状のプレート20の下面に2つのOリング3、4(第1のOリング3及び第2のOリング4)が嵌め込まれている。
【0017】
円形状のプレート20の下面側には、プレート20の中心を軸とした環状溝21が形成されている。環状溝21は、径方向に所定の幅を有しており、2つのOリング3、4の太さより僅かに小さい深さを有している。詳細は後述するが、環状溝21の深さは、Oリング3、4が装着された際に、プレート20の表面(下面)からOリング3、4の一部分が円弧状に表出する大きさに設定されている。
【0018】
環状溝21は、2つの側壁21a、21bと底壁21cによって構成される。より具体的には、底壁21cの径方向内側の端部から側壁21aが上方に立ち上がって形成され、底壁21cの径方向外側の端部から側壁21bが上方に立ち上がって形成される。また、底壁21cには、吸引源22に連通する2つの吸引口23が形成されている。なお、環状溝21の詳細な形状については後述する。
【0019】
第1のOリング3及び第2のOリング4は、ゴム等の弾性体で形成されており、同一の太さを有している。また、第2のOリング4の内径は、第1のOリング3の外径より大きく形成されている。第1のOリング3は、環状溝21の径方向内側の側壁21aに接触するように装着され、第2のOリング4は、環状溝21の径方向外側の側壁21bに接触するように装着される。この結果、第1のOリング3及び第2のOリング4は、円形状のプレート20の中心に対してそれぞれの中心が一致するようにプレート20に装着される。
【0020】
また、環状溝21には、2つのOリング3、4の脱落防止部としての環状プレート24が装着される。環状プレート24は、環状溝21の深さと略同一の厚みを有しており、2つのOリングが装着された後の環状溝21を埋めるように径方向の幅が設定されている。より具体的には、環状プレート24の径方向の幅が、環状溝21に装着された第1のOリング3の最外周から環状溝21に装着された第2のOリング4の最内周との間隔と略一致している。また、環状プレート24には、2つの吸引口23に対応する位置に、厚み方向に貫通する2つの貫通口25が形成されている。詳細は後述するが、環状プレート24がプレート20に固定されることで、2つのOリング3、4の脱落が防止される。
【0021】
このように構成される搬送手段1では、プレート20の下面から表出する2つのOリング3、4の円弧部分をウエーハWの表面に接触させ、吸引源22によって環状プレート24の下面の空気を吸引する。環状プレート24の下面の空気は、2つのOリング3、4の間に形成される貫通口25及び吸引口23を通じて吸引源22に吸引される。これにより、ウエーハWと2つのOリング3、4との間の隙間(環状プレート24とウエーハWとの隙間)に負圧が生じ、ウエーハWを吸引保持することができる。この結果、ウエーハWに対する吸引保持パッド2の接触面積を2つのOリング3、4の円弧部分のみとすることができ、ウエーハWの表面を傷つけることなく、ウエーハWを吸引保持することができる。
【0022】
ところで、プレートにOリングを装着するための溝を形成する場合、溝の外径はOリングの外径と略同一の大きさに設定され、溝の開放端がOリングの太さより僅かに小さく設定される。Oリングを装着する際には、Oリングを径方向に押し広げながらOリングの一部分を溝に押し込み、溝の形状に合わせて徐々に周方向へOリングを沿わせることにより、Oリングが全周にわたって溝に嵌め込まれる。
【0023】
この場合、Oリングの取り付けが難しいだけでなく、Oリングにねじれが生じた状態で取り付けられてしまう。すなわち、Oリングは、全体に不均一なテンションが残った状態で溝に嵌め込まれてしまう。このため、搬送動作が繰り返されてOリングに対してバキュームやブローが複数回実施されると、Oリングがねじれを解消しようとして溝から脱落してしまうおそれがある。また、溝に対してOリングが周方向に沿って徐々に嵌め込まれるため、Oリングの周方向の位置によっては、Oリングの表出高さにムラが生じる場合がある。この結果、ウエーハを周方向に均一に吸引保持することができないおそれがある。
【0024】
そこで、本発明に係る吸引保持パッド2では、プレート20の環状溝21に2つのOリング3、4を装着した後、環状プレート24(脱落防止部)を環状溝21に嵌め込むことにより、2つのOリング3、4の脱落を防止している。また、詳細は後述するが、プレート20に対して2つのOリング3、4を仮装着した後、環状プレート24を取り付けるだけで2つのOリング3、4を保持することができるため、Oリング3、4の装着が容易になるだけなく、Oリング3、4の表出高さにムラが生じるのを防止することが可能になっている。
【0025】
次に、図3を参照して、第1の実施の形態に係る吸引保持パッドの構成部品の詳細及び吸引保持パッドの組み立て順序について説明する。図3は、第1の実施の形態に係る吸引保持パッドの組み立て順序を示す模式図である。
【0026】
図3Aに示すように、プレート20の表面には、2つのOリング3、4の中心を一致させて装着するための環状溝21が形成されている。環状溝21は、2つのOリング3、4の太さの半分、すなわち、2つのOリング3、4の断面半径より大きい深さを有している。また、環状溝21を構成する2つの側壁21a、21bは、Oリング3、4の外面形状に沿った円弧面となっている。ここで、側壁21a、21bのR形状は、Oリング3、4の断面半径と略同一である。つまり、側壁21a、21bの円弧面は、2つのOリング3、4を装着する装着面である。
【0027】
上記したように、環状溝21がOリング3、4の断面半径より大きい深さで形成され、側壁21a、21bが円弧面で形成されることにより、側壁21a、21bの上端部分は、環状溝21の内側に僅かに突出した形状(返し形状)となっている(図5参照)。ここでいう「返し形状」とは、環状溝21に対するOリング3、4の装着を許容しつつ、Oリング3、4の上下方向(中心軸方向)の移動を規制するような形状を示している。
【0028】
環状プレート24は、第1のOリング3の外面に接触する内側面24aと、第2のOリング4の外面に接触する外側面24bと、環状溝21の底壁21cに接触する底面24cとを有している。図3に示す内側面24aの上端側(底面24cとは反対側)は、第1のOリング3の外面形状に沿った円弧面となっている。
【0029】
また、プレート20の側壁21bと同様に、内側面24aの上端部分は、径方向内側に僅かに突出した形状(返し形状)となっている(図5参照)。図3に示す外側面24bの上端側(底面24cとは反対側)は、第2のOリング4の外面形状に沿った円弧面となっており、外側面24bの上端部分は、径方向外側に僅かに突出した形状(返し形状)となっている。
【0030】
図3Bに示すように、側壁21aの円弧面に沿うようにして第1のOリング3が環状溝21に嵌め込まれることで、第1のOリング3がプレート20に仮装着される。このとき、側壁21aの円弧面によって第1のOリング3の径方向内側の移動及び図3Bにおける第1のOリング3の中心軸方向上側の移動が規制される。
【0031】
同様に、側壁21bの円弧面に沿うように第2のOリング4が環状溝21に嵌め込まれることで、第2のOリング4が仮装着される。このとき、側壁21bの円弧面によって第2のOリング4の径方向外側の移動及び図3Bにおける第2のOリング4の中心軸方向上側の移動が規制される。
【0032】
また、2つのOリング3、4の太さに比べて環状溝21の径方向の幅が十分大きく確保されているため、各Oリング3、4の装着が容易になっている。この結果、プレート20に対する2つのOリング3、4の表出高さにムラが生じるのを防止することができる。
【0033】
図3B及び図3Cに示すように、2つのOリング3、4が仮装着された後の環状溝21には、環状プレート24が嵌め込まれる。環状プレート24の底面24cは、プレート20の底壁21c上面に接触される。そして、環状プレート24は、図示しないボルトによってプレート20に締結されることで固定される。
【0034】
このとき、環状プレート24の内側面24aが第1のOリング3の外面に接触することで、第1のOリング3の径方向外側の移動及び図3Cにおける第1のOリング3の中心軸方向上側の移動が規制される。同様に、環状プレート24の外側面24bが第2のOリング4の外面に接触することで、第2のOリング4の径方向外側の移動及び図3Cにおける第2のOリング4の中心軸方向上側の移動が規制される。
【0035】
このように、環状プレート24が環状溝21に装着される結果、2つのOリング3、4は、径方向及び軸方向の移動が規制された状態でプレート20に装着される。このため、2つのOリング3、4を環状溝21に仮装着する際にねじれが生じたとしても、2つのOリング3、4が環状溝21から脱落するのを防止することができる。
【0036】
次に、図4及び図5を参照して、Oリングを環状溝に装着する際の様子について比較例を用いて説明する。図4は、比較例において、Oリングをプレートに組み付ける際のOリング及び環状溝周辺の部分拡大図である。図5は、第1の実施の形態において、Oリングをプレートに組み付ける際のOリング及び環状溝周辺の部分拡大図である。なお、図5においては、第1のOリングを環状溝に装着する場合について説明するが、第2のOリングについても同様である。この場合、図5では、第2のOリングについて符号を括弧書きで示すものとする。
【0037】
図4Aに示すように、比較例では、プレート50の表面にOリング51の形状に沿った環状溝52が形成されている。環状溝52の深さは、Oリング51の太さより僅かに小さく設定されている。また、環状溝52は、Oリング51の外面形状に沿う円弧面を有しており、環状溝52の開放端がOリング51の太さより僅かに小さく設定される。
【0038】
このような環状溝52にOリング51を装着する場合、Oリング51の太さより小さい溝幅の環状溝52に対して、Oリング51を変形させながら指で押し込む。そして、環状溝52の形状に沿って、Oリング51及び環状溝52を指でなぞることで、Oリング51が周方向へ徐々に嵌め込まれていく。Oリング51の全周が嵌め込まれると、図4Bに示すように、プレート50の表面からOリング51の一部分(上端部分)が円弧状に表出する。
【0039】
このように、比較例においては、Oリング51の太さより小さい溝幅の環状溝52に対してOリング51を強引に押し込むため、Oリング51の取り付けが難しいだけでなく、場合によっては、Oリング51にねじれが生じた状態でプレート50に装着されてしまう。
【0040】
この場合、環状溝52内のOリング51には、ねじれに起因した不均一なテンションが全体的に残っている。このテンションは、Oリング51の脱落の原因となり、例えば、ウエーハの吸引保持が繰り返されることでOリング51が環状溝52から外れて吸引不良を起こしてしまうという問題がある。
【0041】
また、上記したように、Oリング51は、環状溝52に沿って指でなぞられることで周方向へ徐々に嵌め込まれる。このため、Oリング51の周方向の位置によっては、Oリング51の表出高さに差が生じている。この結果、ウエーハを均一に吸引保持することができず、場所によっては吸引漏れが発生してしまうという問題がある。
【0042】
これに対し、第1の実施の形態では、図5Aに示すように、第1のOリング3((第2のOリング4)以下、単にOリング3と記す)の太さに比べて十分に幅広な環状溝21をプレート20に形成している。そして、図5Bに示すように、先ず、Oリング3を環状溝21の側壁21aに接触させるように仮装着する。その後、図5Cに示すように、環状溝21を埋めるようにして環状プレート24がプレート20に装着される。
【0043】
以上により、Oリング3が環状プレート24の内側面24aに接触し、Oリング3は環状溝21内の所定位置で保持される。上記したように、側壁21aの円弧面及び円弧状の内側面24aによってOリング3の径方向及び軸方向の移動が規制されるため、環状溝21からOリング3が脱落するのを防止することができる。
【0044】
このように、第1の実施の形態では、Oリング3を仮装着した後、環状プレート24でOリング3を軸方向に押さえ付けるだけで固定することができるため、Oリング3の装着を容易に行うことができる。また、環状溝21が十分に幅広なため、Oリング3を極端に変形させて環状溝21に押し込む必要がない。このため、Oリング3を仮装着する際にねじれが生じ難くなっている。仮に、Oリング3にねじれが生じた状態で装着されたとしても、環状プレート24(脱落防止部)によって脱落が防止されている。また、Oリング3を周方向に徐々にはめ込む必要もないため、プレート20に対するOリング3の表出高さにバラツキが生じることもない。
【0045】
以上のように、第1の実施の形態によれば、第1のOリング3及び第2のOリング4が環状溝21に対してねじれが生じた状態で装着されても、脱落防止部としての環状プレート24が環状溝21に装着されることで、第1のOリング3及び第2のOリング4が環状溝21から脱落するのを防止することができる。
【0046】
次に、図6を参照して、第2の実施の形態に係る吸着パッドについて説明する。図6は、第2の実施の形態に係る吸引保持パッドの説明図である。図6においては、2つの環状プレートが設けられる点で、第1の実施の形態と相違する。以下においては、主に相違点について説明し、第1の実施の形態と共通する構成は、説明を適宜省略する。
【0047】
図6Aに示すように、第2の実施の形態に係る吸引保持パッド101は、円形状のプレート102に2つのOリング3、4(第1のOリング3及び第2のOリング4)を装着して構成される。プレート102は、第1のOリング3を装着するメインプレート103と、第2のOリング4を装着する第1の環状プレート104と、第2のOリング4を保持する第2の環状プレート105とを備えている。
【0048】
メインプレート103は、円板状に形成され、一方の面の中央から円形状に突出した突出部130を有している。突出部130の外径は、第1のOリング3の内径と略同一に設定されており、突出部130の側壁が、第1のOリング3を装着する第1の側壁131となっている。第1の側壁131は、第1のOリング3の外面形状に沿う円弧面となっている。なお、第1の側壁131の形状は、第1の実施の形態における側壁21aと同一のため、説明を省略する。また、突出部130の外周側のメインプレート103の表面には、吸引源(不図示)に連通される吸引口132が形成されている(図6では2つ)。
【0049】
第1の環状プレート104は、外径が第2のOリング4の内径と略同一に設定され、内径が第1のOリング3の外径と略同一に設定されている。第1の環状プレート104の内側面140は、鉛直方向に延びる円筒面である一方、第1の環状プレート104の外側面141は、第2のOリング4の外面形状に沿う円弧面となっている。第1の環状プレート104の外側面141は、第2のOリング4を装着する第2の側壁141を構成する。また、第1の環状プレート104には、吸引口132に対応する位置に貫通口142が形成されている。
【0050】
第2の環状プレート105は、外径がメインプレート103の外径と略同一に設定され、内径が第2のOリング4の外径と略同一に設定されている。第2の環状プレート105の内側面150及び外側面は、鉛直方向に延びる円筒面となっている。
【0051】
第2の実施の形態では、図6Bに示すように、先ず、メインプレート103の突出部130に対して第1のOリング3を嵌め込む。より具体的には、第1のOリング3の内側面が第1の側壁131の円弧面に接触するように第1のOリング3を仮装着する。そして、図6Cに示すように、第1のOリング3の外周側に第1の環状プレート104を装着する。第1の環状プレート104は、ボルト締結によってメインプレート103に固定される。このとき、第1のOリング3の外側面に対して第1の環状プレート104の内側面140が接触している。
【0052】
次に、図6Dに示すように、第1の環状プレート104の外周側に第2のOリング4を嵌め込む。より具体的には、第2のOリング4の内側面が第2の側壁141の円弧面に接触するように第2のOリング4を仮装着する。そして、図6Eに示すように、第2のOリング4の外周側に第2の環状プレート105を装着する。第2の環状プレート105は、ボルト締結によってメインプレート103に固定される。このとき、第2のOリング4の外側面に対して第2の環状プレート105の内側面150が接触している。以上のようにして、吸引保持パッド101が組み立てられる。
【0053】
このように、第2の実施の形態では、各プレート(メインプレート103、第1の環状プレート104及び第2の環状プレート105)に対して直接環状溝を形成するのではなく、それぞれのプレートを組み合わせることで、第1のOリング3、第2のOリング4を装着するための環状溝(第1の環状溝106、第2の環状溝107)を形成している。より具体的には、メインプレート103と第1の環状プレート104によって第1の環状溝106が形成され、メインプレート103、第1の環状プレート104及び第2の環状プレート105によって第2の環状溝107が形成される。
【0054】
第1のOリング3は、第1の側壁131の円弧面及び第1の環状プレート104の内側面140によって径方向及び軸方向の移動が規制されることで、第1の環状溝106からの脱落が防止される。第2のOリング4は、第2の側壁141の円弧面(第1の環状プレート104の円弧状の外側面141)及び第2の環状プレート105の内側面150によって径方向及び軸方向の移動が規制されることで、第2の環状溝107からの脱落が防止される。すなわち、第1の環状プレート104は、第1のOリング3の脱落を防止する第1の脱落防止部を構成し、第2の環状プレート105は、第2のOリング4の脱落を防止する第2の脱落防止部を構成する。
【0055】
以上のように、第2の実施の形態では、各プレートがそれぞれ連結されることで、各プレート同士が協働して第1の環状溝106及び第2の環状溝107を形成している。よって、吸引保持パッド101の組み立てを容易にすることができると共に、各プレートに対して直接環状溝を形成する構成に比べて、加工を簡素化することができる。この結果、Oリング3、4を脱落させることのない吸引保持パッド101を、安価な構成で実現することができる。
【0056】
次に、図7を参照して、第2の実施の形態の変形例について説明する。図7は、第2の実施の形態の変形例に係る吸引保持パッドの説明図である。図7においては、メインプレート及び第1の環状プレートの形状のみが第2の実施の形態と相違する。よって、第2の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0057】
図7Aに示すように、変形例では、メインプレート203の突出部230が図6の突出部130より厚く形成されており、突出部230の角部に環状の凹部231が形成されている。また、第1の環状プレート204には、第1のOリング3の内径に相当する外径を有する環状の凸部240が形成されている。変形例では、環状の凹部231の側面が、円弧面であると共に第1の側壁232を構成する。また、第1の環状プレート204の凸部240の側面が、円弧面であると共に第2の側壁241を構成する。
【0058】
このように構成される吸引保持パッド201では、図7Bに示すように、先ず、メインプレート203の凹部231に対して第1のOリング3を嵌め込む。より具体的には、第1のOリング3の内側面が第1の側壁232の円弧面に接触するように第1のOリング3を仮装着する。また、第1の環状プレート204に対して、第2のOリング4及び第2の環状プレート105をサブアセンブリ(連結)しておく。このとき、第2のOリング4は、第1の環状プレート204及び第2の環状プレート105によって形成される環状溝207(第2の環状溝)に装着される。第2のOリング4は、第2の側壁241及び第2の環状プレート105の内側面150によって径方向及び軸方向の移動が規制されることで、環状溝207からの脱落が防止される。
【0059】
次に、図7Cに示すように、サブアセンブリされた第2のOリング4、第1の環状プレート204及び第2の環状プレート105をメインプレート203に装着する。このとき、第1のOリング3は、メインプレート203及び第1の環状プレート204によって形成される環状溝206(第1の環状溝)に装着される。第1のOリング3は、第1の側壁232及び第1の環状プレート204の内側面242によって径方向及び軸方向の移動が規制されることで、環状溝206からの脱落が防止される。
【0060】
以上のように、変形例においても、第2の実施の形態と同様に、各プレート同士が協働して第1の環状溝206及び第2の環状溝207を形成している。よって、吸引保持パッド201の組み立てを容易にすることができると共に、各プレートに対して直接環状溝を形成する構成に比べて、加工を簡素化することができる。この結果、Oリング3、4を脱落させることのない吸引保持パッド201を、安価な構成で実現することができる。また、第1の環状プレート204の厚みを図6に比べて大きくしたことにより、第1の環状プレート204の剛性を確保することができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0062】
例えば、上記した実施の形態では、環状プレート24が、環状溝21の深さと略同一の厚みを有する構成としたが、この構成に限定されない。図8に示す構成も可能である。図8は、他の変形例に係る吸引保持パッドの部分拡大図である。図8に示すように、環状プレート24の厚みTは環状溝21の深さ(高さ)Dより小さくてもよい。この場合、環状プレート24の厚みTは、Oリング3、4の断面半径Rより大きいことが好ましい。これにより、環状プレート24の内側面24a(外側面24b)を、Oリング3、4の下半部より上側において円弧面とすることができる。このため、Oリング3、4の軸方向の移動を規制することができ、Oリング3、4の脱落防止を実現することができる。
【0063】
また、上記した第1の実施の形態では、Oリング3又はOリング4のそれぞれの内側面及び外側面が円弧面に接触して装着される構成としたが、この構成に限定されない。図6図7に示す第2の実施の形態や変形例のように、Oリング3、4の内側面及び外側面のいずれか一方に円弧面が接触する構成としてもよい。この場合、円弧面を形成する加工が簡略化され、コストダウンに寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、Oリングの脱落を防止することができるという効果を有し、特に、ウエーハを吸引保持する吸引保持パッドに有用である。
【符号の説明】
【0065】
2 吸引保持パッド
20、102 プレート
21 環状溝
21a、21b 側壁
21c 底壁
22 吸引源
23 吸引口
24 環状プレート(脱落防止部)
3 第1のOリング
4 第2のOリング
103、203 メインプレート
131、232 第1の側壁
104、204 第1の環状プレート(第1の脱落防止部)
141、241 第2の側壁
105 第2の環状プレート(第2の脱落防止部)
106、206 第1の環状溝
107、207 第2の環状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8