(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一態様に係る直接埋設用ケーブルは、(1)内側の第1シースと外側の第2シースを備え、該第2シースが前記第1シースに対して遊嵌されている直接埋設用ケーブルであって、前記第2シースは、主材料がポリプロピレンで形成されているとともに、シャルピー衝撃強度が52KJ/m
2以上であ
り、内径が30±2mmの範囲内で、肉厚が1.1mm〜1.37mmの範囲内である。第2シースがポリプロピレンを主材料とするので、高密度ポリエチレンで形成する場合に比べて肉厚を薄くすることができ、ケーブルの小型化や軽量化を図ることができる。そして、第2シースのシャルピー衝撃強度が52KJ/m
2以上となるようなポリプロピレンを用いれば、所定の衝撃強度を容易に得ることができる。
そして、第2シースは、30±2mmの内径に対して肉厚が1.1mm〜1.37mmの範囲内であれば、衝撃強度と可撓性との両立を図ることができる。
【0015】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る直接埋設用ケーブルの具体例について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る直接埋設用ケーブルの一例を示す斜視図であり、
図2は、直接埋設用ケーブルの正面図である。
直接埋設用ケーブル1は、光ケーブルコア20と、光ケーブルコア20の外側に配置された強化型外被10とを備えている。
【0016】
光ケーブルコア20の詳細は、その図示は省略するが、例えば、加入者引き落とし用のドロップケーブルのような、8心程度のケーブルのコア部21を有する。コア部21の周囲は例えばPE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等で構成された内部シース22で覆われている。なお、内部シース22が本発明の第1シースに相当する。
【0017】
光ケーブルコア20(内部シース22)の外径は10mm〜20mm程度で構成され、光ケーブルコア20は例えば丸型に形成されている。
なお、コア部21は、支線用の少心地下ケーブルのような、多心の光ファイバテープ心線等を束ねたケーブル(例えば200心程度まで)の外側を押え巻きテープ等で保持したものであってもよい。
また、コア部21は、スロットケーブルであっても、スロットレスケーブルであってもよく、多心の光ファイバケーブルであれば、その形状は限定されない。
【0018】
強化型外被10は、光ケーブルコア20に対して遊嵌されており、光ケーブルコア20の周囲を覆って光ケーブルコア20を保護する。なお、強化型外被10が本発明の第2シースに相当する。
強化型外被10は、主材料がポリプロピレン(PP)の硬質プラスチックで形成されている。強化型外被10をPPで構成すれば、HDPE、つまり、密度0.942(g/cm
3)以上の高密度ポリエチレンで形成する場合に比べて、後述のように許容される肉厚が小さくても必要な強度を保つことができる。
【0019】
また、強化型外被10は、例えば蛇腹状に形成され、その長手方向の断面が波形に形成されている。詳しくは、強化型外被10は、その長手方向に直交する方向に沿って山部11や谷部12が形成され、これら山部11と谷部12がケーブルの長手方向に沿って交互に設けられている。また、強化型外被10(谷部12)の内径が30mm程度で構成され、強化型外被10も例えば丸型に形成されている。
【0020】
このように、光ケーブルコア20の内部シース22が強化型外被10に対してルース状態にあり、光ケーブルコア20の修理・保守の際には、光ケーブルコア20を強化型外被10から容易に引き抜くことができ、また、新たな光ケーブルコア20を強化型外被10に容易に挿入することができるので、光ケーブルコア20を短時間で修理・保守することができる。
【0021】
また、強化型外被10を波形に形成すれば、土圧に耐えられると共に、交互に形成された山部11と谷部12によって一般的な光ケーブルと同様の可撓性が得られるため、ケーブルを容易に取り扱うことができる。
なお、図では、山谷の方向が長手方向に直交する蛇腹状の強化型外被の例を挙げて説明したが、本発明の強化型外被は、山谷の方向が長手方向に交差する螺旋形状の蛇腹であってもよい。また、強化型外被の外周面や内周面の一方をフラットに形成し、他方を波形にすることも可能である。
【0022】
ところで、上述のように、強化型外被10には、一般的な光ケーブルと同様の可撓性を確保する必要があるが、直接埋設用ケーブル1を土中に敷設すると、最外周に位置する強化型外被10には、ショベル等による誤掘削に耐える強度(衝撃強度ともいう)も求められる。
そこで、衝撃強度と可撓性とを両立させるために、発明者らが鋭意調査した結果、強化型外被10の主材料をPPとし、強化型外被10の肉厚をある範囲内に規定するとよいことが分かった。
【0023】
図3は、強化型外被10の部分断面図である。
強化型外被10は、内径Dが30±2mm、外径は、谷部12で32±2mm、山部11で37±2mmであり、山部11の高さは2.5mmである。また、強化型外被10の波形のピッチPは5.5±0.5mmであり、山部11の幅は3.5±0.5mmである。なお、
図3において、強化型外被10の厚みをtで示している。
【0024】
図4は、衝撃強度試験(ショベル試験)を説明する図である。
この試験では、設置台100、ショベル丸型101、重錘103、ガイド102を使用する。ショベル丸型101は、所定規格(JIS A 8902 丸型1番)のものであり、劣化、摩耗の無いショベル丸型である。重錘103は10kgであり、重錘103の下端には緩衝材(厚さ10mm以内のクロロプレンゴム(CRゴム))104が貼り付けられている。強化型外被10は200mmの長さのものを使用する。
【0025】
強化型外被10を設置台100上に載せ、ショベル丸型101を強化型外被10の軸線に対して直角に配置し、ショベル丸型101の先端を強化型外被10の山部(あるいは谷部)に予め当てておく。重錘103をガイド102に沿って13cmの高さ(
図4中にZで示す)から自然落下させ、強化型外被10の山部(あるいは谷部)を打撃する。強化型外被10を3個準備し、3個の試験片(強化型外被10)において山部及び谷部をそれぞれ打撃した際、ショベル丸型101の先端が強化型外被10の内面に露出したか否かで評価する。
【0026】
図5は、可撓性試験を説明する図である。
この試験では、固定台200、把持部201、自由端支持台203、錘204を使用する。錘204は0.5±0.01kgである。強化型外被10は1.2mの長さ(
図5(A)にLで示す)のものであり、2時間以上常温中に置いたものを使用する。
図5(A)に示すように、強化型外被10を固定台200上に載せ、強化型外被10の一端(固定端)を把持部201に固定する。なお、強化型外被10の一端から固定台200の支点202までの距離(
図5(A)にL1で示す)は500mmであり、支点202から強化型外被10の他端(自由端)までの距離(
図5(A)にL2で示す)は700mmである。
【0027】
一方、強化型外被10の他端は、自由端支持台203で支持される。錘204は強化型外被10の他端から50cm以内の位置(
図5(A)にL3で示す)に吊り下げられる。錘204を吊り下げた後、強化型外被10の他端から自由端支持台203を素早く外し、10秒間経過した時点における強化型外被10の他端の撓み量(
図5(B)にyで示す)が8cm以上であるか否かで可撓性を評価する。
【0028】
強化型外被10を一般的に用いられるHDPEで形成した場合、強化型外被10の肉厚が1.3mm未満の場合には必要な衝撃強度を得られない。
しかしながら、ケーブルの小型化や軽量化を図るには、強化型外被の肉厚をさらに薄くすることが好ましい。そこで、プラスチック容器等の射出成型品や車両用配線の保護チューブ等でよく使用されるプロプレンに着目した。
【0029】
図6は、シャルピー衝撃強度とショベル試験との関係を説明する表である。
試料Aは、HDPEで形成した肉厚1.23mmの強化型外被である。その物性は、曲げ弾性1300MPa、密度0.96g/cm
3、シャルピー衝撃強度25KJ/m
2であり、亀裂が確認された。このため、必要な強度を満たさないと判定した。
試料Bは、HDPEで形成した肉厚1.26mmの強化型外被であり、その物性は、曲げ弾性1100MPa、密度0.95g/cm
3、シャルピー衝撃強度34KJ/m
2であった。この場合、ピンホールが稀に確認された。このため、必要な強度を満たさない場合があると判定した。
【0030】
試料C,D,Eは、HDPEで形成した肉厚1.27mmの強化型外被である。試料Cの物性は、曲げ弾性1350MPa、密度0.96g/cm
3、シャルピー衝撃強度13KJ/m
2であり、亀裂が確認されたので、必要な強度を満たさないと判定した。試料Dの物性は、曲げ弾性1550MPa、密度0.96g/cm
3、シャルピー衝撃強度13KJ/m
2であり、亀裂が確認されたため、必要な強度を満たさないと判定した。試料Eの物性は、曲げ弾性1050MPa、密度0.95g/cm
3であった。なお、試料Eは破壊が無かったため、シャルピー衝撃強度は計測していない。この場合、ピンホールが稀に確認されたので、必要な強度を満たさない場合があると判定した。
【0031】
試料Fは、PPで形成した肉厚1.27mmの強化型外被である。その物性は、曲げ弾性950MPa、密度0.9g/cm
3、シャルピー衝撃強度66KJ/m
2である。そして、試料Fの場合、3個の強化型外被のいずれにも外傷が確認されなかったので、必要な強度を満たすと判定した。
【0032】
また、試料Gは、PPで形成した肉厚1.27mmの強化型外被であり、その物性は、曲げ弾性750MPa、密度0.9g/cm
3、シャルピー衝撃強度52KJ/m
2である。そして、試料Gの場合、3個の強化型外被のいずれにも外傷が確認されなかったことから、必要な強度を満たすと判定した。
この結果、シャルピー衝撃強度が衝撃強度(ショベル試験)に影響しており、強化型外被をシャルピー衝撃強度が52KJ/m
2以上のPPで形成すれば、肉厚が1.3mm未満の場合にも衝撃強度を得られることが分かる。
【0033】
図7は、試料Fについて肉厚を変えた際の評価結果を説明する表である。
PPで形成した試料Fの強化型外被の肉厚を0.7mmから1.5mmまで変更し、衝撃強度(ショベル試験)を評価した。
肉厚が0.7mm(No.1と称する)の場合、3個の強化型外被のいずれにも亀裂が確認されたので、必要な強度を満たさないと判定した。
【0034】
一方、肉厚が0.9mm(No.2と称する)の場合、3個の強化型外被のいずれにも外傷が確認されなかったので、必要な強度を満たすと判定した。また、肉厚が1.1mm(No.3と称する)の場合、肉厚が1.2mm(No.4と称する)の場合、肉厚が1.33mm(No.5と称する)の場合、肉厚が1.37mm(No.6と称する)の場合、肉厚が1.5mm(No.7と称する)の場合にも、強化型外被には外傷が確認されなかったため、必要な強度を満たすと判定した。
【0035】
このように、PPで形成した試料Fの場合、強化型外被10の肉厚が0.9mm未満の場合には必要な衝撃強度を得られなかったが、0.9mm以上の場合には必要な衝撃強度を得ることができた。
続いて、可撓性の評価結果について説明する。上記したNo.1,No.2の撓み量はいずれも500mm以上であり、可撓性が確保されていると判定した。また、No.3の撓み量は400mm、No.4の撓み量は320mm、No.5の撓み量は240mm、No.6の撓み量は170mmであり、いずれも可撓性が確保されていると判定した。
【0036】
一方、No.7の撓み量は70mmであり、8cm以上ではないため、可撓性が確保されていないと判定した。
このように、PPで形成した試料Fの場合、強化型外被10の肉厚が1.5mm未満の場合には必要な可撓性を得ることができたが、1.5mm以上の場合には可撓性を得ることができなかった。
【0037】
図8は、試料Gについて肉厚を変えた際の評価結果を説明する表である。
PPで形成した試料Gについても、強化型外被10の肉厚を0.7mmから1.5mmまで変更し、衝撃強度(ショベル試験)を評価した。
肉厚が0.7mm(No.1と称する)の場合や、肉厚が0.9mm(No.2と称する)の場合、強化型外被には亀裂が確認されたので、必要な強度を満たさないと判定した。
【0038】
一方、肉厚が1.1mm(No.3と称する)の場合、3個の強化型外被のいずれにも外傷が確認されなかったので、必要な強度を満たすと判定した。また、肉厚が1.2mm(No.4と称する)の場合、肉厚が1.33mm(No.5と称する)の場合、肉厚が1.37mm(No.6と称する)の場合、肉厚が1.5mm(No.7と称する)の場合にも、強化型外被には外傷が確認されなかったため、必要な強度を満たすと判定した。
【0039】
このように、PPで形成した試料Gの場合、強化型外被10の肉厚が1.1mm未満の場合には必要な衝撃強度を得られなかったが、1.1mm以上の場合には必要な衝撃強度を得ることができた。
続いて、可撓性の評価結果について説明する。上記したNo.1,No.2の撓み量はいずれも500mm以上であり、可撓性が確保されていると判定した。また、No.3の撓み量は420mm、No.4の撓み量は360mm、No.5の撓み量は280mm、No.6の撓み量は190mmであり、いずれも可撓性が確保されていると判定した。
【0040】
一方、No.7の撓み量は90mmであり、8cm以上ではあるが、この基準値よりも10mm程度多い値であり、厳格にみて可撓性が確保されていないと判定した。
このように、PPで形成した試料Gの場合、強化型外被10の肉厚が1.5mm未満の場合には必要な可撓性を得ることができたが、1.5mm以上の場合には必要な可撓性を得ることがでなかった。
【0041】
したがって、強化型外被10が、PPで形成され、かつ、30±2mmの内径に対して肉厚を1.1mm〜1.37mmの範囲内にすれば、衝撃強度と可撓性の両立を図ることができる。
【0042】
なお、実施形態として、本発明を光ケーブルコアに適用した場合について説明したが、光ケーブルコアの代わりにメタルケーブルコアであってもよい。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。