(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る防眩性フィルム及び防眩性偏光板の例を模式的に示す断面図であり、画像表示装置に組み込まれた状態、具体的には、画像表示素子の一部である基板300に粘着剤層200を介して貼合された状態にある防眩性偏光板を示したものである。
図1に示される防眩性フィルム1のように、本発明に係る防眩性フィルムは、透明支持体102及びその上に積層される微細な凹凸表面2を有する防眩層101を備える。また、本発明に係る防眩性偏光板は、
図1に示される例のように、防眩性フィルム1と偏光フィルム104とを含む。以下、本発明に係る防眩性フィルム、防眩性偏光板及びこれらを用いた画像表示装置についてより詳細に説明する。
【0017】
<防眩性フィルム>
(1)防眩層、及びその凹凸表面の標高のパワースペクトル
防眩性フィルム1は、透明支持体102上に積層される防眩層101を備えており、防眩層101は、微細な凹凸表面2を有している。まず、防眩層101が有する凹凸表面2の標高のパワースペクトルについて説明する。
【0018】
図2は、本発明に係る防眩性フィルムの表面を模式的に示す斜視図である。「凹凸表面の標高」とは、防眩性フィルム1の凹凸表面2上の任意の点Pと、凹凸表面2の平均高さにおいて当該高さを有する仮想的な平面(標高は基準として0μm)との防眩性フィルム1の主法線方向5(上記仮想的な平面における法線方向)における直線距離を意味する。
図2には、防眩性フィルム全体の面を投影面3で表示している。
【0019】
防眩層101の微細な凹凸表面2は、
図2に模式的に示したように二次元平面であり、従って、凹凸表面2の標高は
図2に示すように、フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示した際には、座標(x,y)の二次元関数h(x,y)で表すことができる。
【0020】
凹凸表面2の標高は、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)等の装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。測定機に要求される水平分解能は、少なくとも5μm以下、好ましくは2μm以下であり、また垂直分解能は、少なくとも0.1μm以下、好ましくは0.01μm以下である。この測定に好適な非接触三次元表面形状・粗さ測定機としては、New View 5000シリーズ(Zygo Corporation社製、日本ではザイゴ(株)から入手可能)、三次元顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)等を挙げることができる。測定面積は、標高のパワースペクトルの分解能が0.005μm
−1以下である必要があるため、少なくとも200μm×200μm以上とするのが好ましく、より好ましくは500μm×500μm以上である。
【0021】
次に、二次元関数h(x,y)より標高のパワースペクトルを求める方法について説明する。まず、二次元関数h(x,y)より、下記式(1)で定義される二次元フーリエ変換によって二次元関数H(f
x,f
y)を求める。
【0023】
f
x及びf
yはそれぞれx方向及びy方向の周波数であり、長さの逆数の次元を持つ。また、式(1)中のπは円周率、iは虚数単位である。得られた二次元関数H(f
x,f
y)を二乗することによって、二次元パワースペクトルH
2(f
x,f
y)を求めることができる。この二次元パワースペクトルH
2(f
x,f
y)は、凹凸表面2の空間周波数分布を表している。
【0024】
以下、凹凸表面2の標高の二次元パワースペクトルを求める方法をさらに具体的に説明する。上記の共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡等によって実際に測定される表面形状の三次元情報は、一般的に離散的な値、すなわち、多数の測定点に対応する標高として得られる。
図3は、標高を表す関数h(x,y)が離散的に得られる状態を示す模式図である。
図3に示すように、防眩層101の面内の直交座標を(x,y)で表示し、投影面3上にx軸方向にΔx毎に分割した線及びy軸方向にΔy毎に分割した線を破線で示すと、実際の測定では凹凸表面2の標高は、投影面3上の各破線の交点毎の離散的な標高値として得られる。
【0025】
得られる標高値の数は、測定範囲とΔx及びΔyによって決まり、
図3に示すようにx軸方向の測定範囲をX=(M−1)Δxとし、y軸方向の測定範囲をY=(N−1)Δyとすると、得られる標高値の数はM×N個である。
【0026】
図3に示すように投影面3上の着目点Aの座標を(jΔx,kΔy)(jは0以上M−1以下であり、kは0以上N−1以下である。)とすると、着目点Aに対応する防眩性フィルム面上の点Pの標高は、h(jΔx,kΔy)と表すことができる。
【0027】
ここで、測定間隔Δx及びΔyは、測定機器の水平分解能に依存し、精度良く凹凸表面を評価するためには、上述したとおりΔx及びΔyともに5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。また、測定範囲X及びYは上述したとおり、ともに200μm以上であることが好ましく、ともに500μm以上であることがより好ましい。
【0028】
このように実際の測定では、凹凸表面の標高を表す関数は、M×N個の値を持つ離散関数h(x,y)として得られる。測定によって得られた離散関数h(x,y)と下記式(2)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数H(f
x,f
y)が求まり、離散関数H(f
x,f
y)を二乗することによって二次元パワースペクトルの離散関数H
2(f
x,f
y)が求められる。式(2)中のlは−M/2以上M/2以下の整数であり、mは−N/2以上N/2以下の整数である。また、Δf
x及びΔf
yはそれぞれx方向及びy方向の周波数間隔であり、下記式(3)及び下記式(4)で定義される。
【0032】
図4は、防眩層101の凹凸表面2の標高を二次元の離散関数h(x,y)で表した図の一例である。
図4において標高は白と黒のグラデーションで示している。
図4に示すように防眩層101の凹凸表面2は、凹凸がランダムに形成されているため、周波数空間(空間周波数領域)における二次元パワースペクトルH
2(f
x,f
y)は原点(f
x=0,f
y=0)を中心に対称となる。よって、二次元関数H
2(f
x,f
y)は、周波数空間における原点からの距離f(単位:μm
−1)を変数とする一次元関数H
2(f)に変換することができる。本発明に係る防眩層101は、この一次元関数H
2(f)で表される一次元パワースペクトルが一定の特徴を有するものである。
【0033】
具体的には、まず、
図5に示すように周波数空間において、原点O(f
x=0,f
y=0)から(n−1/2)Δf以上(n+1/2)Δf未満の距離に位置する全ての点(
図5中の黒丸の点)の個数Nnを計算する。
図5に示した例ではNn=16個である。次に、原点Oから(n−1/2)Δf以上(n+1/2)Δf未満の距離に位置する全ての点のH
2(f
x,f
y)の合計値H
2n(
図5中の黒丸の点におけるH
2(f
x,f
y)の合計値)を計算し、下記式(5)に示すように、その合計値H
2nを点の個数Nnで割ったものをH
2(f)の値とする。
【0035】
ここで、M≧Nの場合、nは0以上N/2以下の整数であり、M<Nの場合、nは0以上M/2以下の整数である。なお、M及びNは、
図3に示されるように、それぞれx軸方向の測定点の数及びy軸方向の測定点の数を意味する。また、Δfは(Δf
x+Δf
y)/2とする。
【0036】
一般的に前記した方法によって求められる一次元パワースペクトルは、測定の際の雑音を含み得る。一次元パワースペクトルを求めるにあたって、この雑音の影響を除くためには、防眩層101上の複数箇所の凹凸表面2の標高を測定し、それぞれの凹凸表面2の標高から求められる一次元パワースペクトルの平均値を一次元パワースペクトルH
2(f)として用いることが好ましい。防眩層101上の凹凸表面2の標高を測定する箇所の数は3箇所以上が好ましく、より好ましくは5箇所以上である。
【0037】
本発明の防眩性フィルム1において、以上のようにして求められる凹凸表面2の標高のパワースペクトル(一次元パワースペクトル)は、空間周波数0.01μm
−1において1μm
2以上とされ、0.033μm
−1において0.05μm
2以下とされる。これにより、高精細な画像表示装置に組み込んだときに凹凸表面−カラーフィルター間距離Lが1mm未満となる場合において、十分な防眩性と優れたギラツキ抑制性とを両立させることができる。距離Lが0.75mm未満であると、より高いギラツキ抑制効果を得ることができる。
【0038】
上述のように、本明細書において凹凸表面−カラーフィルター間距離Lとは、
図1を参照して、防眩層101が有する凹凸表面2からカラーフィルター400(より具体的には、カラーフィルター400のRGBパターン)の表面までの距離をいう。ここでいう凹凸表面2とは、視認側表面を意味しており、そのうち、最も突出している凸部の表面をいう。また、カラーフィルター400の表面とは、視認側の表面、すなわち、カラーフィルター400が設けられている基板300側の表面を意味する。基板300は、画像表示素子を構成する視認側の基板であり、防眩性フィルム1又はそれを含む防眩性偏光板が貼合される基板である。
【0039】
凹凸表面2の標高の一次元パワースペクトルH
2(f)の常用対数logH
2(f)は、防眩層101上の異なる5箇所における凹凸表面2の標高から求められる一次元パワースペクトルの常用対数を平均したものである。この一次元パワースペクトルの常用対数logH
2(f)から、一次元パワースペクトルの常用対数logH
2(f)の空間周波数fに関する二次導関数d
2logH
2(f)/df
2を計算することができる。具体的には、下記式(6)の差分法によって二次導関数を計算することができる。
【0041】
図4に示される二次元の離散関数h(x,y)から上記式(5)に従って求められる一次元パワースペクトルH
2(f)の常用対数logH
2(f)の空間周波数fに関する二次導関数d
2logH
2(f)/df
2は、空間周波数0.01μm
−1において−5192であり、空間周波数0.02μm
−1において36695であった。よって、この一次元パワースペクトルの常用対数logH
2(f)を空間周波数に対する強度として表したときのグラフは空間周波数0.01μm
−1において上に凸の形状を有し、空間周波数0.02μm
−1において下に凸の形状を有している。
【0042】
本発明の防眩性フィルム1のギラツキ抑制能についてさらに詳しく説明する。ギラツキ発生の原因は、画像表示装置の画素と防眩性フィルム1の表面凹凸形状とが干渉して生じる輝度分布であるから、ギラツキの強度は画像表示装置の画素の精細度に依存する。本発明者は、ギラツキの要因として、画素の精細度とは別に、凹凸表面2の凹凸のレンズ機能が関与しているという仮説を立てた。すなわち、凹凸表面2の凹凸がレンズとして働き、レンズ焦点距離の内側に画素がある場合に視認者に画素の拡大虚像を見せることがギラツキの原因であると考えた。この場合、微細凹凸に含まれるある周期のうねり成分を、連続して並べられたレンズと見なすと、凹凸表面−カラーフィルター間距離Lがそのレンズの焦点距離よりも短い場合に、そのうねり成分が画素を拡大させ、ギラツキを発生させることになると考えられる。かかる仮説に基づくと、距離Lに応じてギラツキを発生させるうねり成分の周期が異なることになると考えられる。
【0043】
本発明者は鋭意検討した結果、実際、同じ防眩性フィルムを用いても、距離Lに応じてギラツキ抑制能が異なることを見出し、また、距離Lが1mm未満の場合においては、微細凹凸に含まれる30μm又はそれに近い周期のうねり成分がギラツキを発生させる主な要因であることを見出した。かかる知見に基づき検討した結果、本発明者は、上記周期のうねり成分を減少させて距離Lが1mm未満の場合におけるギラツキを効果的に抑制するためには、空間周波数0.033μm
−1における凹凸表面2の標高のパワースペクトルを0.05μm
2以下とすべきことを見出したものである。ギラツキ抑制の観点から、当該パワースペクトルは、好ましくは0.04μm
2以下であり、さらに好ましくは0.030μm
2以下である。
【0044】
これに対して、上記引用文献1に記載される防眩性偏光板は、微細凹凸に含まれる50μm付近の周期のうねり成分を主に抑制できるものであり、距離Lが1mm以上の場合においてギラツキを効果的に抑制できる表面凹凸形状を有していると認められる一方、距離Lが1mm未満となる画像表示装置に適用した場合には、ギラツキの抑制が不十分となる可能性がある。
【0045】
空間周波数0.033μm
−1における凹凸表面2の標高のパワースペクトルは、通常0.005μm
2以上である。当該パワースペクトルが0.005μm
2未満であると、空間周波数0.01μm
−1におけるパワースペクトルを1μm
2以上にすることが難しくなることがある。
【0046】
また本発明者は、防眩性フィルム1の防眩性が微細凹凸に含まれる100μm付近の周期のうねり成分の強さと関係しており、100μm付近の周期のうねり成分が強いと外光の映り込みを効果的に散乱させることができ防眩性を向上できること、さらに、良好な防眩性を得るには、空間周波数0.01μm
−1における標高のパワースペクトルを1μm
2以上にすべきことを見出した。防眩性の観点から、当該パワースペクトルは、好ましくは2μm
2以上であり、より好ましくは2.5μm
2以上であり、さらに好ましくは3μm
2以上である。
【0047】
空間周波数0.01μm
−1における凹凸表面2の標高のパワースペクトルは、通常10μm
2以下である。当該パワースペクトルが10μm
2を超えると、空間周波数0.033μm
−1におけるパワースペクトルを0.05μm
2以下にすることが難しくなることがある。
【0048】
(2)防眩層の作製方法
防眩層101は、所定のパターンに基づいた表面形状(微細凹凸)を金型基材の表面に形成する工程を含む方法によって凹凸表面形成用金型を製造し、この金型の凹凸表面の形状を透明支持体102上に形成された樹脂層(光硬化性樹脂層等)の表面に転写する方法(エンボス法)により作製することができる。「パターン」とは、典型的には、防眩層101の凹凸表面2を形成するために用いられる、計算機によって作成することができる画像データを意味するが、当該画像データへ一義的に変換可能なデータ(行列データ等)も含み得る。画像データへ一義的に変換可能なデータとしては、各画素の座標及び階調のみが保存されたデータ等が挙げられる。
【0049】
上述のようなパワースペクトル特性を有する防眩層101の凹凸表面2を精度よく形成するために、凹凸表面形成用金型の製造に用いる上記所定のパターンの一次元パワースペクトルを空間周波数に対する強度として表したときのグラフは、空間周波数0.006μm
−1以上0.15μm
−1以下において2つの極大値を有し、一方の極大値を空間周波数0.006μm
−1以上0.012μm
−1以下の範囲に有し、他方の極大値を空間周波数0.07μm
−1以上0.15μm
−1以下の範囲に有することが好ましい。これら2つの極大値の間に存在する極小値は、空間周波数0.012μm
−1以上0.025μm
−1以下の範囲に存在することが好ましい。ここで極大値及び極小値とは、全域的な極大値及び極小値のことを指し、グラフの小刻みな振れによる局所的な極大値及び極小値を指すものではない。
【0050】
また、凹凸表面形成用金型の製造に用いるパターンの空間周波数0.006μm
−1以上0.012μm
−1以下における第1の極大値の強度は、空間周波数0.07μm
−1以上0.15μm
−1以下における第2の極大値の強度より小さいことが好ましい。第1の極大値の強度が第2の極大値より大きい場合にはギラツキが強くなる傾向にある。パワースペクトルの第1の極大値が大きくなるようにパターンを設計することで、凹凸表面2の空間周波数0.01μm
−1における標高のパワースペクトルを大きくすることが可能となる。一方、空間周波数0.012μm
−1以上0.025μm
−1以下にある極小値を小さくし、かつ、第2の極大値をより高周波数側にシフトするようにパターンを設計することで、凹凸表面2の空間周波数0.033μm
−1における標高のパワースペクトルを小さくすることが可能となる。
【0051】
パターンの二次元パワースペクトルは、例えばパターンが画像データである場合、画像データを2階調の二値化画像データに変換した後、画像データの階調を二次元関数g(x,y)で表し、得られた二次元関数g(x,y)をフーリエ変換して二次元関数G(f
x,f
y)を計算し、得られた二次元関数G(f
x,f
y)を二乗することによって求められる。ここで、x及びyは画像データ面内の直交座標を表し、f
x及びf
yはx方向の周波数及びy方向の周波数を表している。
【0052】
防眩層101の凹凸表面2の標高の二次元パワースペクトルを求める場合と同様に、パターンの二次元パワースペクトルを求める場合についても、階調の二次元関数g(x,y)は離散関数として得られるのが一般的である。その場合は、凹凸表面2の標高の二次元パワースペクトルを求める場合と同様に、離散フーリエ変換によって、二次元パワースペクトルを計算すればよい。パターンの一次元パワースペクトルは、パターンの二次元パワースペクトルから、凹凸表面2の標高の一次元パワースペクトルと同様にして求められる。
【0053】
一次元パワースペクトルが空間周波数0.006μm
−1以上0.012μm
−1以下と0.07μm
−1以上0.15μm
−1以下にそれぞれ第1の極大値と第2の極大値を有し、空間周波数0.012μm
−1以上0.025μm
−1以下に極小値を有するパターンを作成するためには、ドットをランダムに配置して作成したパターンや乱数もしくは計算機によって生成された疑似乱数により濃淡を決定したランダムな明度分布を有するパターンから、特定の空間周波数範囲の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させればよい。
【0054】
上述のように、防眩層101の凹凸表面2の空間周波数分布を適切に制御し、凹凸表面2に所定のパワースペクトル特性を付与するためには、防眩層101をエンボス法によって作製することが好ましい。エンボス法としては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
【0055】
UVエンボス法は、透明支持体の表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面を光硬化性樹脂層に転写させる方法である。具体的には、透明支持体上に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化性樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で透明支持体側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、その後金型から硬化後の紫外線硬化性樹脂層(防眩層)が形成された透明支持体を剥離する。
【0056】
UVエンボス法を用いる場合における紫外線硬化性樹脂の種類は、特に限定されないが、市販の適宜のものを用いることができる。また、紫外線硬化性樹脂に適宜選択された光開始剤を組み合わせて、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることも可能である。
【0057】
紫外線硬化性樹脂の具体例は、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)等の光重合開始剤とを混合した樹脂組成物である。
【0058】
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂で形成された透明支持体を加熱状態で金型に押し付け、金型の表面形状を透明支持体に転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明支持体としては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルム等を用いることができる。これらの透明樹脂フィルムは、上で説明したUVエンボス法における紫外線硬化性樹脂を塗工するための透明支持体としても好適に用いることができる。
【0059】
(3)透明支持体
防眩性フィルム1を構成する透明支持体102は、実質的に光学的に透明なフィルムであればよく、例えばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。
【0060】
透明支持体102の厚みは、例えば10〜200μmであり、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜60μmである。透明支持体102の厚みがこの範囲であると、十分な機械強度を有する防眩性フィルム1が得られる傾向にあり、当該防眩性フィルム1を備えた画像表示装置は、より一層ギラツキを発生しにくいものとなる。
【0061】
(4)防眩性フィルムのヘイズ
防眩性フィルム1は、ヘイズが0.3〜5%であることが好ましく、0.3〜3%であることがより好ましく、0.3〜1%であることがさらに好ましい。ヘイズがこの範囲を超えるとコントラストの低下を招く。また、ヘイズがこの範囲を下回ると十分な防眩性が得られない可能性がある。ヘイズは、JIS K 7136に準拠して測定される。
【0062】
(5)凹凸表面形成用金型の製造方法
次に、防眩層101の表面に微細な凹凸表面2を形成するために用いられる金型を製造する方法について説明する。凹凸表面形成用金型の製造方法は、上述したパターンを用いることにより、所定の凹凸表面2が得られる方法であれば特に制限されないが、凹凸表面2を精度良く、かつ、再現性良く製造するために、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜形成工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕第1エッチング工程と、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と、〔8〕第2エッチング工程と、〔9〕第2めっき工程とを基本的に含むものであることが好ましい。
【0063】
図6は、凹凸表面形成用金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
図6には各工程での金型の断面を模式的に示している。以下、
図6を参照しながら、凹凸表面形成用金型の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0064】
〔1〕第1めっき工程
凹凸表面形成用金型の製造方法ではまず、金型に用いる基材の表面に、銅めっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきを施すことにより、後の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。これは、銅めっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆等を埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっきの特性によって、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減される。
【0065】
第1めっき工程において用いられる銅としては、銅の純金属であることができるほか、銅を主体とする合金であってもよく、従って、本明細書でいう「銅」は、銅及び銅合金を含む意味である。銅めっきは、電解めっきで行っても無電解めっきで行ってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
【0066】
銅めっきを施す際には、めっき層があまり薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であることが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コスト等に鑑み、一般的には500μm程度までとすることが好ましい。
【0067】
基材を構成する金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄等が好ましく用いられる。取扱性の観点から、より好ましくは軽量なアルミニウムである。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウム又は鉄を主体とする合金であってもよい。
【0068】
また基材の形状は、当分野において従来採用されている適宜の形状であってよく、平板状であってもよいし、円柱状又は円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩性フィルムを連続的なロール状で製造することができるという利点がある。
【0069】
〔2〕研磨工程
続く研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきが施された基材表面を研磨する。当該工程において基材表面を鏡面に近い状態に研磨することが好ましい。これは、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削等の機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような深い加工目等が残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目等の凹凸の方が深いことがあり、加工目等の影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩性フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。
図6(a)には、平板状の金型用基材7に対して、第1めっき工程において銅めっきがその表面に施され(当該工程で形成した銅めっきの層については図示せず)、さらに研磨工程によって鏡面研磨された表面8を有するようにされた状態を模式的に示している。
【0070】
銅めっきが施された基材表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法等が例示される。また、研磨工程において切削工具を用いて鏡面切削することによって、金型用基材7の表面を鏡面としてもよい。その際の切削工具の材質や形状等は特に制限されるものではなく、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイト等を使用することができるが、加工精度の観点からダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。
【0071】
研磨後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性がある。中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コスト等を考慮して適宜決定される。
【0072】
〔3〕感光性樹脂膜形成工程
続く感光性樹脂膜形成工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した金型用基材7の表面8に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。
図6(b)には、金型用基材7の表面8に感光性樹脂膜9が形成された状態を模式的に示している。
【0073】
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては、例えば、分子中にアクリル基又はメタアクリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物等を用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂系やノボラック樹脂系等を用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0074】
感光性樹脂を金型用基材7の表面8に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましい。溶媒としては、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒等を使用することができる。
【0075】
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、リングコート等の公知の方法を用いることができる。塗布膜の厚みは乾燥後で1〜10μmの範囲とすることが好ましい。
【0076】
〔4〕露光工程
続く露光工程では、上記した一次元パワースペクトルを空間周波数に対する強度として表したときのグラフが、空間周波数0.006μm
−1以上0.012μm
−1以下と0.07μm
−1以上0.15μm
−1以下にそれぞれ第1の極大値と第2の極大値を有し、空間周波数0.012μm
−1以上0.025μm
−1以下に極小値を有するパターンを、上述した感光性樹脂膜形成工程で形成された感光性樹脂膜9上に露光する。露光工程に用いる光源は、塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、例えば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nm等)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザ(波長:193nm)、F2エキシマーレーザ(波長:157nm)等を用いることができる。
【0077】
金型の凹凸表面形状、ひいては防眩層101の凹凸表面2の形状を精度良く形成するためには、露光工程において、上述したパターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましい。具体的には、コンピュータ上でパターンを画像データとして作成し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって描画することが好ましい。レーザ描画を行うに際しては印刷版作成用のレーザ描画装置を使用することができる。このようなレーザ描画装置としては、例えばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)等が挙げられる。
【0078】
図6(c)には、感光性樹脂膜9にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域10は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域11が現像液によって溶解され、露光された領域10のみ基材表面上に残りマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域10は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域10が現像液によって溶解され、露光されていない領域11のみ基材表面上に残りマスクとなる。
【0079】
〔5〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域11は現像液によって溶解され、露光された領域10のみ金型用基材上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域10のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域11が金型用基材上に残存して、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
【0080】
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液、キシレン、トルエン等の有機溶剤を挙げることができる。
【0081】
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0082】
図6(d)には、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。
図6(c)において露光されていない領域11が現像液によって溶解され、露光された領域10のみ基材表面上に残りマスク12となる。
図6(e)には、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。
図6(c)において露光された領域10が現像液によって溶解され、露光されていない領域11のみ基材表面上に残りマスク12となる。
【0083】
〔6〕第1エッチング工程
続く第1エッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材のめっきが施された表面をエッチングする。
【0084】
図7は、凹凸表面形成用金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
図7(a)には第1エッチング工程によって、主にマスクの無い領域13の金型用基材7がエッチングされる状態を模式的に示している。マスク12の下部の金型用基材7は金型用基材表面からはエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクの無い領域13からのエッチングが進行する。よって、マスク12とマスクの無い領域13の境界付近では、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされる。このようなマスク12とマスクの無い領域13の境界付近において、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされることをサイドエッチングと呼ぶ。
【0085】
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl
3)液、塩化第二銅(CuCl
2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH
3)
4Cl
2)等を用いて、金属表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸等の強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される凹形状は、下地金属の種類、感光性樹脂膜の種類及びエッチング手法等によって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に触れている金属表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0086】
第1エッチング工程におけるエッチング量は、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは2〜10μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金属表面に凹凸形状がほとんど形成されずに、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が50μmを超える場合には、金属表面に形成される凹凸形状の高低差が大きくなり、得られた金型を使用して作製された防眩性フィルムを適用した画像表示装置において白ちゃけが生じるおそれがある。白ちゃけとは、散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる現象をいう。
【0087】
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、1回のエッチング処理によって行ってもよいし、2回以上に分けて行ってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が上記範囲内とされることが好ましい。
【0088】
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でマスクとして使用した残存する感光性樹脂膜を溶解し除去する。本工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができる。剥離液のpH、温度、濃度又は浸漬時間等を変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を溶解して除去する。具体的な剥離方法は特に制限されず、浸漬剥離、スプレー剥離、ブラシ剥離、超音波剥離等の方法を用いることができる。
【0089】
図7(b)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、第1エッチング工程でマスクとして使用した感光性樹脂膜を溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜からなるマスク12を利用したエッチングによって、第1の表面凹凸形状15が金型用基材表面に形成されている。
【0090】
〔8〕第2エッチング工程
第2エッチング工程では、感光性樹脂膜をマスクとして用いた第1エッチング工程によって形成された第1の表面凹凸形状15を、エッチング処理によって鈍らせる。この第2エッチング処理によって、第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15における表面傾斜が急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて作製された防眩性フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。
図7(c)には、第2エッチング処理によって、金型用基材7の第1の表面凹凸形状15が鈍化し、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状16が形成された状態が示されている。
【0091】
第2エッチング工程のエッチング処理も、第1エッチング工程と同様に、通常、塩化第二鉄(FeCl
3)液、塩化第二銅(CuCl
2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH
3)
4Cl
2)等を用い、表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸等の強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、エッチング手法、及び第1エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さ等によって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程と同様に、エッチングにより削られる基材の厚みである。エッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩性フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1〜50μmの範囲内とすることが好ましく、4〜20μmの範囲内とすることがより好ましい。
【0092】
第2エッチング工程におけるエッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行ってもよいし、2回以上に分けて行ってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が上記範囲内とされることが好ましい。
【0093】
〔9〕第2めっき工程
続いて、クロムめっきを施すことによって、第2の表面凹凸形状16を鈍らせるとともに、金型表面を保護する。
図7(d)には、上述したように第2エッチング工程のエッチング処理によって形成された第2の表面凹凸形状16にクロムめっき層17を形成し、クロムめっき層の表面18を鈍らせた状態が示されている。
【0094】
クロムめっきとしては、平板やロール等の表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用することが好ましい。このようなクロムめっきとしては特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっき等と呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO
3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
【0095】
なお、第2めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型を用いて作製された防眩性フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、防眩性フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
【0096】
このように、クロムめっきを施した面を金型の凹凸面として用いることが好ましい。微細表面凹凸形状が形成された表面にクロムめっきを施すことにより、凹凸形状が鈍らせられるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この際の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、第1エッチング工程より得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚み等によって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御するうえで最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を転写して得られる防眩性フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえに、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまう。そこで、クロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であることが好ましく、3〜6μmの範囲内であることがより好ましい。
【0097】
第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下するうえに、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件等に異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
【0098】
<防眩性偏光板>
図1を参照して、本発明に係る防眩性偏光板は、防眩性フィルム1と偏光フィルム104とを含む。偏光フィルム104は、防眩性フィルム1の透明支持体102側に配置される。
図1に示される例において偏光フィルム104は、第1の接着剤層103aを介して、透明支持体102における防眩層101とは反対側の面に積層されている。本発明に係る防眩性偏光板は、
図1に示される例のように、偏光フィルム104における防眩性フィルム1とは反対側の面に、第2の接着剤層103bを介して積層される透明樹脂層105をさらに備えることができる。
【0099】
(1)偏光フィルム
偏光フィルム104としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されたフィルムが好ましく用いられる。偏光フィルム104を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体等が例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000〜10000、好ましくは1500〜10000の範囲である。
【0100】
偏光フィルム104は、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て、製造することができる。
【0101】
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また勿論、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
【0102】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性染料が用いられる。
【0103】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.01〜0.5重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり0.5〜10重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
【0104】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は通常、水100重量部あたり0.001〜0.01重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
【0105】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100重量部あたり2〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり2〜20重量部程度、好ましくは5〜15重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
【0106】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルム104が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥温度は、通常40〜100℃である。乾燥処理における処理時間は、通常120〜600秒程度である。
【0107】
こうして、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルム104が得られる。偏光フィルム104の厚みは5〜100μmの範囲内であることが好ましく、5〜30μmの範囲内であることがより好ましい。偏光フィルム104の厚みが5μmを下回る場合には十分な光学特性が発現しなくなるおそれがあり、かつ機械強度が不足する可能性もある。一方、偏光フィルム104の厚みが100μmを上回る場合には防眩性偏光板が厚くなり、結果としてギラツキが発生する可能性がある。
【0108】
(2)透明樹脂層
透明樹脂層105は、偏光フィルム104の表面を保護する保護フィルムであることができる。保護フィルムは、光学補償フィルムであってもよい。保護フィルムの具体例としては、トリアセチルセルロースフィルム、非晶性ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリサルホン系樹脂フィルム、脂環式ポリイミド系樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中では、トリアセチルセルロース又は非晶性ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。
【0109】
非晶性ポリオレフィン系樹脂は通常、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィンの重合単位を有するものであり、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体であってもよい。中でも、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が代表的である。また、極性基が導入されているものも有効である。市販されている非晶性ポリオレフィン系樹脂として、アートン(JSR(株)製)、ゼオノア(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、APO(三井化学(株)製)、アペル(三井化学(株)製)等が挙げられる。このような市販品の非晶性ポリオレフィン系樹脂を用いる場合、当該非晶性ポリオレフィン系樹脂を、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の方法により製膜してフィルムとすることができる。
【0110】
透明樹脂層105は、光学補償層(又は光学補償フィルム、以下同様)であることができる。また透明樹脂層105は、保護フィルムと光学補償層との積層体であってもよい。光学補償層は位相差の補償等を目的としており、透明樹脂の延伸フィルム等からなる複屈折性フィルム;ディスコティック液晶やネマティック液晶が配向固定されたフィルム;フィルム基材上に上述した液晶層が形成されたもの等が挙げられる。偏光フィルム104に積層される光学補償層は一層のみであってもよいし、複数層であってもよい。複数の光学補償層を設ける場合には、同種の光学補償層を積層してもよいし、異種の光学補償層を積層してもよい。例えば、透明樹脂の延伸フィルムからなる複屈折性フィルムにさらに別の透明樹脂の延伸フィルムからなる複屈折性フィルムを、粘着剤層を介して積層してもよいし、透明樹脂の延伸フィルムからなる複屈折性フィルムにディスコティック液晶やネマティック液晶を配向固定してもよい。
【0111】
複屈折性フィルムを構成する透明樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミド、非晶性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。延伸フィルムは、一軸や二軸等の適宜な方式で処理したものであってよい。また、上記透明樹脂からなるフィルムに熱収縮性フィルムを貼合した状態で収縮力及び/又は延伸力を加えることによってフィルムの厚み方向の屈折率を制御した複屈折性フィルムを光学補償フィルムとして用いることもできる。
【0112】
光学補償層の貼合は、後述する接着剤を用いて行ってもよいし、接着作業の簡便性や光学歪の発生防止等の観点から、後述する粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)を用いて行ってもよい。
【0113】
例えば防眩性偏光板を液晶表示装置に適用する場合、光学補償層は液晶セルの各駆動モードに合わせて適宜選択される。液晶の駆動モードとしては、垂直配向(Vertical Alignment:VA)モード、横電界(In-Plane Switching:IPS)モード、ねじれネマティック(Twisted Nematic:TN)モード等が挙げられる。
【0114】
垂直配向モードの液晶セルであれば、トリアセチルセルロースのようなアシル化セルロースに代表されるセルロース系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート等の正の屈折率異方性を有する透明樹脂からなるフィルムを一軸又は二軸延伸したn
x>n
y≧n
zの関係を有するフィルムを光学補償層として使用することができる。ここでn
xはフィルムの面内遅相軸方向の屈折率を、n
yはフィルムの面内進相軸方向の屈折率を、n
zはフィルムの厚み方向の屈折率を表している。これらの透明樹脂の中でも、光弾性係数が小さく、使用条件下における熱歪による面内特性ムラの発生等が少ないことから、トリアセチルセルロースや環状オレフィン系樹脂が好適に用いられる。また、ディスコティック液晶を基板上に塗布したフィルム、コレステリック液晶を短ピッチで基板上に塗布したフィルム、マイカ等の無機層状化合物の層を基板上に形成したフィルム、樹脂の逐次又は同時二軸延伸フィルム、未延伸の溶剤キャストフィルム等のn
x≒n
y>n
zの関係を有する光学補償層を使用することもできる。
【0115】
また、TNモードの液晶セルであれば、有機化合物、中でも液晶性を示し、円盤状の分子構造を有する化合物や、液晶性を示さないが、電界又は磁界により負の屈折率異方性を発現する化合物が、トリアセチルセルロース等からなる透明樹脂フィルム上に塗布され、光学軸がフィルム法線方向から5〜50°の間で傾斜するように配向せしめられたフィルム等が光学補償層として好ましく用いられる。配向は、一方向のみならず、例えば、フィルムの片面から他面に向かって順次傾きが大きくなる、いわゆるハイブリッド配向であってもよい。液晶性を示す円盤状の分子構造を有する有機化合物としては、低分子又は高分子のディスコティック液晶、例えば、トリフェニレン、トルクセン、ベンゼン等の平面構造を有する母核に、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換ベンゾイルオキシ基、アルコキシ置換ベンゾイルオキシ基等の直鎖状の置換基が放射状に結合したものが例示される。中でも、可視光領域に吸収を示さないものが好ましい。これらの円盤状の分子構造を有する有機化合物は、1種類を単独で用いるのみならず、必要な配向を得るために、必要に応じて2種以上を混合して用いたり、あるいは高分子マトリクス等、他の有機化合物と混合して用いたりすることができる。混合して用いる有機化合物としては、円盤状の分子構造を有する有機化合物と相溶性を有するか、円盤状の分子構造を有する有機化合物を、光を散乱しない程度の粒径に分散できるものであれば特に限定されない。セルロース系樹脂からなる透明基材フィルムに、かかる液晶性化合物からなる層が設けられ、光学軸がフィルム法線に対して傾斜しているフィルムとしては、例えば、WVフィルム(富士写真フイルム(株)製)を好適に用いることができる。また、細長い棒状構造を有する有機化合物、中でもネマティック液晶性を示し、正の光学異方性を与える分子構造を有する化合物や、液晶性を示さないが、電界又は磁界により正の屈折率異方性を発現する化合物が、セルロース系樹脂等からなる透明基材フィルム上に製膜され、光学軸がフィルム法線方向から5〜50°の間で傾斜するように配向させて得られるフィルムも好ましく用いられる。この配向は、一方向のみならず、例えば、フィルムの片面から他面に向かって順次傾きが大きくなる、いわゆるハイブリッド配向であってもよい。透明基材フィルムにネマティック液晶化合物からなる層が設けられ、光学軸がフィルム法線に対して傾斜しているフィルムとしては、例えば、NHフィルム(新日本石油(株)製)を好適に用いることができる。
【0116】
透明樹脂層105の厚みは通常、5〜200μm程度の範囲であり、好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは10〜85μmである。
【0117】
(3)接着剤層
防眩性フィルム1は、第1の接着剤層103aを介して偏光フィルム104の一方の面に積層することができる。また透明樹脂層105を積層する場合、透明樹脂層105は第2の接着剤層103bを介して偏光フィルム104の他方の面に積層することができる。
【0118】
第1の接着剤層103aや第2の接着剤層103bを形成する接着剤としては、従来公知のものを使用することができる。例えばポリビニルアルコール系樹脂を用いた水溶性接着剤、エポキシ系樹脂のカチオン重合を利用した接着剤、アクリル系樹脂のラジカル重合を利用した接着剤、エポキシ系樹脂とアクリル系樹脂の混合物によるカチオン重合とラジカル重合を利用した接着剤等を使用することができる。接着剤の厚みは、接着剤の種類によって異なるため一概にはいえないが、0.1μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。接着剤層の厚みが0.1μmを下回る場合には十分な接着強度が得られないおそれがある。一方、接着剤層の厚みが5μmを上回る場合には防眩性偏光板が厚くなり、結果としてギラツキが発生する可能性がある。
【0119】
防眩性フィルム1及び透明樹脂層105は、偏光フィルム104への貼合に先立って、貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理等の易接着処理が施されてもよい。
【0120】
(4)粘着剤層
本発明に係る防眩性偏光板は、これを画像表示素子に貼合するための粘着剤層を有していてもよい。粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系重合体、シリコーン系重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル等をベースポリマーとする粘着剤組成物を用いることができる。中でもアクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性等を有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤のベースポリマーとしては、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の官能基含有アクリル系モノマーとのアクリル系共重合体であって、ガラス転移温度が25℃以下(好ましくは0℃以下)、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が好ましく用いられる。
【0121】
防眩性偏光板への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを防眩性偏光板(透明樹脂層105)上に直接塗工して粘着剤層を形成する方式や、予めプロテクトフィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを防眩性偏光板上に移着することで粘着剤層を形成する方式等により行うことができる。粘着剤層の厚みは、その接着力等に応じて決定されるが、1〜25μm程度の範囲が適当である。
【0122】
<画像表示装置>
本発明はさらに、上述した本発明に係る防眩性フィルム1又は防眩性偏光板と、画像表示素子とを備える画像表示装置を提供する。画像表示装置は、カラーフィルターを有する画像表示素子を備えるものである限り特に制限されないが、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、プラズマディスプレイパネル等を挙げることができる。画像表示装置が液晶表示装置である場合、画像表示素子は、上下基板間に液晶が封入され、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行う液晶セルである。
【0123】
本発明に係る画像表示装置において、防眩性フィルム1又は防眩性偏光板は、
図1を参照して、透明支持体102側又は防眩性偏光板の偏光フィルム104側に画像表示素子が配置されるようにその防眩層101側を外側にして画像表示素子(より具体的には、画像表示素子を構成するガラス基板等の基板300)の視認側(カラーフィルター400とは反対側)に配置される。すなわち、本発明に係る防眩性フィルム1又は防眩性偏光板は、前面側偏光板として好適に用いられるものであり、その防眩性フィルム1の凹凸表面2、すなわち防眩層101が外側(視認側)となるように、画像表示素子の視認側に配置される。防眩性偏光板と画像表示素子との貼合は、粘着剤層200を用いて行うことができる。
【0124】
画像表示装置において、防眩層101の凹凸表面2は、空気層と接していてもよいし、他の層と接していてもよい。例えば、画像表示装置は、防眩層101の外面上(視認側)に配置される透光性部材をさらに含むことができるが、この場合において透光性部材は、接着剤層や樹脂層を介して防眩層101上に貼合されてもよく、空気層を介して防眩層101の視認側に配置されてもよい。透光性部材は、例えばガラス板等であることができる他、タッチパネル入力素子であってもよい。
【0125】
凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは1mm未満とされ、好ましくは0.75mm未満とされる。これにより、防眩性フィルム1が低ヘイズであっても、良好な防眩性を示しつつ、ギラツキを効果的に抑制することができる。また、画像表示装置の強度の観点から、距離Lは100μm以上であることが好ましい。
【実施例】
【0126】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の例において、防眩性フィルム及び防眩性偏光板についての物性測定又は評価は、次のようにして行った。
【0127】
〔1〕防眩性フィルムの表面形状の測定
(表面の標高の測定)
三次元顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)を用いて、防眩性フィルムの表面の標高を測定した。サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸表面が外側になるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は10倍とした。水平分解能Δx及びΔyはともに1.66μmであり、測定面積は1270μm×950μmであった。
【0128】
(凹凸表面の標高のパワースペクトル)
上で得られた測定データの中央部から512個×512個(測定面積で850μm×850μm)のデータをサンプリングし、防眩性フィルムの凹凸表面の標高を二次元関数h(x,y)として求めた。二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して二次元関数H(f
x,f
y)を求めた。二次元関数H(f
x,f
y)を二乗して二次元パワースペクトルの二次元関数H
2(f
x,f
y)を計算し、原点からの距離fの関数である一次元パワースペクトルの一次元関数H
2(f)を計算した。各サンプルにつき5箇所の表面の標高を測定し、それらのデータから計算される一次元パワースペクトルの一次元関数H
2(f)の平均値を各サンプルの一次元パワースペクトルの一次元関数H
2(f)とした。また、上記5箇所の表面の標高から求めた一次元パワースペクトルの一次元関数H
2(f)の常用対数の平均をとってlogH
2(f)を算出し、上記式(6)に基づいて空間周波数f=0.01μm
−1及び0.02μm
−1における二次導関数d
2logH
2(f)/df
2を求めた。
【0129】
〔2〕防眩性フィルムのヘイズの測定
防眩性フィルムのヘイズは、防眩性フィルムを光学的に透明な粘着剤を用いて防眩層形成面とは反対側の面でガラス基板に貼合し、該ガラス基板に貼合された防眩性フィルムについて、ガラス基板側から光を入射させ、JIS K 7136に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」型を用いて測定した。
【0130】
〔3〕防眩性偏光板の視認性の評価
防眩性偏光板を前面(視認側)に貼着して作製した液晶表示装置を明室内にて黒表示状態として、映り込み状態、白ちゃけを目視観察した。次に、明室内で白表示状態とし、ギラツキに関しても目視観察した。映り込み状態、白ちゃけ、ギラツキに関しての評価基準は以下のとおりである。
【0131】
(映り込み)
1:映り込みが観察されない。
2:映り込みが少し観察される。
3:映り込みが明瞭に観察される。
【0132】
(白ちゃけ)
1:白ちゃけが観察されない。
2:白ちゃけが少し観察される。
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
【0133】
(ギラツキ)
1:ギラツキが認められない。
2:ごくわずかにギラツキが観察される。
3:ひどくギラツキが観察される。
【0134】
<実施例1>
(A)偏光フィルムの作製
厚み75μm、重合度2400、ケン化度99.9%以上のポリビニルアルコールフィルムを、乾式で延伸倍率5倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、水100重量部あたりヨウ素を0.05重量部及びヨウ化カリウムを5重量部それぞれ含有する水溶液に、温度28℃で60秒間浸漬した。次いで、緊張状態に保ったまま、水100重量部あたりホウ酸を7.5重量部及びヨウ化カリウムを6重量部それぞれ含有するホウ酸水溶液に、温度73℃で300秒間浸漬した。その後、15℃の純水で10秒間洗浄した。水洗したフィルムを緊張状態に保ったまま、70℃で300秒間乾燥し、偏光フィルムを得た。
【0135】
(B)微細凹凸形成用金型の作製
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、
図8に示すパターン〔露光パターンA〕(ランダムな明度分布を有するパターンから、特定の空間周波数範囲の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて作成した)を繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、現像した。レーザ光による露光、及び現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行った。感光性樹脂膜にはポジ型の感光性樹脂を使用した。
【0136】
その後、塩化第二銅液で第1のエッチング処理を行った。その際のエッチング量は4μmとなるように設定した。第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2のエッチング処理を行った。その際のエッチング量は13μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行って、金型Aを作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
【0137】
なお、
図8は、本実施例で用いた露光パターンAの画像データの一部(1mm×1mm)を表わした図である。
図8に示した露光パターンAの画像データは33mm×33mmの大きさで、12800dpiで作成した。
図9〜14についても同様である。
【0138】
(C)防眩性フィルムの形成
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60重量%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す紫外線硬化性樹脂組成物Aを入手した。
【0139】
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60重量部
多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物) 40重量部
ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド 5重量部。
【0140】
この紫外線硬化性樹脂組成物Aを厚み60μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、乾燥後の塗布厚みが4μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型Aの凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm
2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm
2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる、透明な防眩性フィルムAを作製した。
【0141】
(D)防眩性偏光板の作製
水100重量部に対して、(株)クラレから販売されているカルボキシル基変性ポリビニルアルコール「クラレポバール KL318」(変性度2モル%)1.8重量部を溶解し、さらにそこに、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂である田岡化学工業(株)から販売されている「スミレーズレジン 650」(固形分30重量%の水溶液)を1.5重量部加えて溶解し、ポリビニルアルコール系接着剤を作製した。
【0142】
防眩性フィルムAの防眩層が形成された側とは反対側にケン化処理した後、上述のように調製したポリビニルアルコール系接着剤を10μmバーコータで塗工し、その上に先に得られた偏光フィルムを貼合した。また、偏光フィルムの防眩性フィルムAを貼合した面とは反対側の面には、ケン化処理が施された厚み40μmのトリアセチルセルロースからなる透明保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製のKC4UE、面内位相差値R
0=0.7nm、厚み方向位相差値R
th=−0.1nm)を、上で調製したポリビニルアルコール系接着剤を10μmバーコータで塗工後、貼合した。その後、80℃で5分間乾燥し、さらに、常温で1日間養生した。この後、偏光フィルムの防眩性フィルムAを貼り合わせた側とは反対側に、プロテクトフィルム上に形成されたアクリル系粘着剤層を移着することで粘着剤層を形成して防眩性偏光板Aを得た。
【0143】
(E)液晶表示装置の作製
IPSモードの液晶セルが搭載された市販のノートパソコン(ZENBOOK UX21A、ASUS製、11.6型、FHD)の液晶セルの前面(視認側)から偏光板を剥離し、液晶セルの前面に上記防眩性偏光板Aを、その吸収軸が元々液晶セルに貼合されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように貼り合わせて、液晶パネルを作製した。次に、この液晶パネルを元の位置に戻し、液晶表示装置Aを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは521μmであった。
【0144】
<実施例2>
金型作製時の第1のエッチング量を5μm、第2のエッチング量を13μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして金型Bを作製した。また、金型Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムB、防眩性偏光板B及び液晶表示装置Bを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは523μmであった。
【0145】
<実施例3>
金型作製時に
図9に示すパターン〔露光パターンC〕を用い、第1のエッチング量を4.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして金型Cを作製した。金型Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムC、防眩性偏光板C及び液晶表示装置Cを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは520μmであった。
【0146】
<実施例4>
金型作製時に
図10に示すパターン〔露光パターンD〕を用い、第1のエッチング量を4.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして金型Dを作製した。金型Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムD、防眩性偏光板D及び液晶表示装置Dを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは521μmであった。
【0147】
<実施例5>
金型作製時の第1のエッチング量を4μm、第2のエッチング量を12μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして金型Eを作製した。また、金型Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムE、防眩性偏光板E及び液晶表示装置Eを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは520μmであった。
【0148】
<実施例6>
上記ノートパソコン(ZENBOOK UX21A、ASUS製)の液晶セルの前面から偏光板を剥離し、凹凸表面−カラーフィルター間距離Lを増すため、液晶セルの前面に上記アクリル系粘着剤層と上記透明保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製のKC4UE)を交互に6重に積層し、その上から上記防眩性偏光板Aを、その吸収軸が元々液晶セルに貼合されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように貼り合わせて、液晶パネルを作製した。次に、この液晶パネルを元の位置に戻し、液晶表示装置Gを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは708μmであった。
【0149】
<比較例1>
金型作製時に
図11に示すパターン〔露光パターンH〕を用い、第2のエッチング量を12μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして金型Hを作製した。金型Hを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムH、防眩性偏光板H及び液晶表示装置Hを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは521μmであった。
【0150】
<比較例2>
金型作製時に
図12に示すパターン〔露光パターンI〕を用い、第2のエッチング量を12μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして金型Iを作製した。金型Iを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムI、防眩性偏光板I及び液晶表示装置Iを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは522μmであった。
【0151】
<比較例3>
金型作製時に
図13に示すパターン〔露光パターンJ〕を用い、第2のエッチング量を12μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして金型Jを作製した。金型Jを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムJ、防眩性偏光板J及び液晶表示装置Jを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは520μmであった。
【0152】
<比較例4>
金型作製時に
図14に示すパターン〔露光パターンK〕を用い、第1のエッチング量を3μmとし、第2のエッチング量を10μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして金型Kを作製した。金型Kを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩性フィルムK、防眩性偏光板K及び液晶表示装置Kを作製した。凹凸表面−カラーフィルター間距離Lは524μmであった。
【0153】
防眩性フィルムA〜Eの作製に使用した露光パターンA、C、Dの画像データを離散フーリエ変換して得られたパワースペクトルG
2(f)を
図15に示す。また、防眩性フィルムH〜Kの作製に使用した露光パターンH、I、J、Kの画像データを離散フーリエ変換して得られたパワースペクトルG
2(f)を
図16に示す。
【0154】
図15より、防眩性フィルムA〜Eの作製に使用した露光パターンA、C、Dの一次元パワースペクトルを空間周波数に対する強度として表したときのグラフは、空間周波数0.006μm
−1以上0.012μm
−1以下と0.07μm
−1以上0.15μm
−1以下にそれぞれ第1の極大値と第2の極大値を有し、空間周波数0.012μm
−1以上0.025μm
−1以下に極小値を有することが分かる。一方、
図16より、防眩性フィルムH〜Iの作製に使用した露光パターンH〜Iの一次元パワースペクトルは前述の範囲に第1、第2の極大値及び極小値を有しているが、防眩性フィルムHの作製に使用した露光パターンHでは露光パターンA、C、Dと比較して、第1の極大値は小さく、極小値は大きい。また、防眩性フィルムIの作製に使用した露光パターンIでは露光パターンA、C、Dと比較して、第1の極大値が小さい。防眩性フィルムJの作製に使用した露光パターンJの一次元パワースペクトルでは、第1の極大値が著しく小さく、また、第2の極大値は前述の範囲外に存在している。防眩性フィルムKの作製に使用した露光パターンKの一次元パワースペクトルでは、露光パターンA、C、Dと比較して極小値が大きく、また、第2の極大値は前述の範囲外に存在している。。
【0155】
実施例及び比較例で得られた防眩性フィルム及び防眩性偏光板についての物性測定及び評価の結果を表1に示す。また、
図17、
図18及び
図19にそれぞれ、防眩性フィルムA〜C、防眩性フィルムD及びE、防眩性フィルムH〜Kの標高より計算された一次元パワースペクトルH
2(f)を示した。
【0156】
本発明の要件を満たす防眩性フィルムA〜E(実施例1〜6)は、低ヘイズであるが十分な防眩性を示し、白ちゃけの発生もなかった。中でも、凹凸表面の空間周波数0.01μm
−1におけるパワースペクトルが2μm
2以上である防眩性フィルムA〜Dは、優れた防眩性を示した。また、防眩性フィルムA〜Eは、凹凸表面−カラーフィルター間距離Lが1mm未満となる高精細液晶パネルに適用してもギラツキを効果的に抑制した。
【0157】
一方、防眩性フィルムH(比較例1)及び防眩性フィルムK(比較例4)は、凹凸表面の空間周波数0.01μm
−1におけるパワースペクトルが2μm
2以上であるため優れた防眩性を示したが、空間周波数0.033μm
−1におけるパワースペクトルが0.05μm
2を超えるためギラツキが強く観察された。防眩性フィルムI(比較例2)は、凹凸表面の空間周波数0.033μm
−1におけるパワースペクトルが0.05μm
2以下であったため優れたギラツキ抑制効果を示したが、空間周波数0.01μm
−1におけるパワースペクトルが1μm
2未満であったため防眩性が不十分となった。防眩性フィルムJ(比較例3)は、凹凸表面の空間周波数0.01μm
−1におけるパワースペクトルが1μm
2以上でもなく、空間周波数0.033μm
−1におけるパワースペクトルが0.05μm
2以下でもなかったため、防眩性、ギラツキ抑制ともに不十分であった。
【0158】
実施例1及び6では同じ防眩性フィルムAを使用しているが、凹凸表面−カラーフィルター間距離Lが異なる。防眩性フィルムAの空間周波数0.033μm
−1におけるパワースペクトルは0.05μm
2以下であるため、凹凸表面−カラーフィルター間距離Lがそれぞれ521μmと708μmである実施例1と実施例6では優れたギラツキ抑制効果を示した。
【0159】
【表1】