(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ウエーハに多数のビアホールを生産性良く形成するための方法が記載されている。ここで、一般にビアホールは、側壁と底面とは垂直の形状であることが望ましいが、特許文献1に示された従来の方法で形成されたビアホールは、形成される一のビアホールに対してレーザー光線の入射角度が一定であったため側壁と底面のなす角が直角とならず、テーパー形状に形成されて、所望の形状に形成されない虞があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、被加工物を所望の形状に加工可能なレーザー加工装置、およびビアホールの形状を所望の形状に加工可能なビアホールの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、
ウエーハを穿孔するレーザー加工装置であって、
ウエーハを保持する被加工物保持手段と、レーザー光線を照射するレーザー光線照射手段とを、少なくとも備えるレーザー加工装置であって、該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して該被加工物保持手段に保持された
ウエーハに照射する集光レンズと、該レーザー光線発振手段のレーザー光線の進行方向下流に配設され該集光レンズの中心軸に対してレーザー光線の光軸を偏心させる一対の第1軸レゾナントスキャナを有する第1の光軸偏心手段と、該第1の光軸偏心手段と該集光レンズとの間に配設され、該集光レンズの中心軸に対してレーザー光線の光軸を偏心させる一対の第2軸レゾナントスキャナを有する第2の光軸偏心手段と、該レーザー加工装置を制御する制御部と、備え
、該第1軸レゾナントスキャナのミラーの回転周波数と該第2軸レゾナントスキャナのミラーの回転周波数とが等しく、かつ該第1軸レゾナントスキャナのミラーの回転の位相と、該第2軸レゾナントスキャナのミラーの回転の位相とを1/4周期分ずらしていることを特徴とする。
【0008】
本発明のビアホールの形成方法は、レーザー加工装置により
ウエーハにレーザー光線を照射してビアホールを形成するビアホールの形成方法であって、該レーザー加工装置は、
ウエーハを保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された
ウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を有し、該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して該被加工物保持手段に保持された
ウエーハに照射する集光レンズと、該レーザー光線発振手段のレーザー光線の進行方向下流に配設され該集光レンズの中心軸に対してレーザー光線の光軸を偏心させる一対の第1軸レゾナントスキャナを有する第1の光軸偏心手段と、該第1の光軸偏心手段と該集光レンズとの間に配設され、該集光レンズの中心軸に対してレーザー光線の光軸を偏心させる一対の第2軸レゾナントスキャナを有する第2の光軸偏心手段と、を少なくとも含み、
該第1軸レゾナントスキャナのミラーの回転周波数と該第2軸レゾナントスキャナのミラーの回転周波数とが等しく、かつ該第1軸レゾナントスキャナのミラーの回転の位相と、該第2軸レゾナントスキャナのミラーの回転の位相とを1/4周期分ずらしており、該ビアホールの形成方法は、該レーザー光線発振手段からレーザー光線を発振する工程と、発振されたレーザー光線を一対の第1軸レゾナントスキャナに導き該集光レンズの中心軸に対して第1軸方向にレーザー光線の光軸を偏心させる工程と、該一対の第1軸レゾナントスキャナを通過したレーザー光線を一対の第2軸レゾナントスキャナに導き、レーザー光線の該第1軸に直交する第2軸方向に光軸を偏心させる工程と、該被加工物保持手段で保持した
ウエーハに第1軸方向および第2軸方向に偏心されたレーザー光線を照射する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
そこで、本願発明のレーザー加工装置及びビアホールの形成方法では、被加工物を所望の形状に加工可能なレーザー加工を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るレーザー加工装置及びビアホールの形成方法を図面に基いて説明する。
図1は、実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたレーザー加工装置の加工対象のウエーハ等を示す斜視図である。
図3は、
図1に示されたレーザー加工装置のレーザー光線照射手段の構成例を示す図である。
図4は、
図3に示されたレーザー光線照射手段の第1の光軸偏心手段の構成例を模式的に示す図である。
図5(a)は、
図3に示されたレーザー光線照射手段の第1の光軸偏心手段の一方の第1軸レゾナントスキャナのミラーの回転角度の変化を示す図であり、
図5(b)は、
図3に示されたレーザー光線照射手段の第1の光軸偏心手段の他方の第1軸レゾナントスキャナのミラーの回転角度の変化を示す図であり、
図5(c)は、
図3に示されたレーザー光線照射手段の第2の光軸偏心手段の一方の第2軸レゾナントスキャナのミラーの回転角度の変化を示す図であり、
図5(d)は、
図3に示されたレーザー光線照射手段の第2の光軸偏心手段の他方の第2軸レゾナントスキャナのミラーの回転角度の変化を示す図である。
図6は、
図3に示されたレーザー光線照射手段の第2の光軸偏心手段の第2スキャナを出射したレーザー光線が被加工物を穿孔する状態を示す断面図である。
図7は、実施形態に係るビアホールの形成方法によりビアホールが形成されたウエーハを示す平面図である。
図8は、
図7中のVIII部を拡大して示す平面図である。
【0015】
実施形態に係るビアホールの形成方法(以下、単に形成方法と記す)は、
図1に示されたレーザー加工装置1により実施される方法(即ち、レーザー加工装置1を用いる方法)である。レーザー加工装置1は、被加工物としてのウエーハWを穿孔する装置である。
【0016】
レーザー加工装置1により穿孔されるウエーハWは、
図2及び
図7に示すように、実施形態ではシリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハWは、表面WSに格子状に形成される複数の分割予定ラインSよって区画された領域にデバイスDが形成されている。ウエーハWは、分割予定ラインSに沿って切断することにより、デバイスDが形成された領域を分割して、個々の半導体チップに製造される。ウエーハWは、デバイスDが複数形成されている表面WSに粘着テープTが貼着され、粘着テープTの外縁が環状フレームFに貼着されることで、環状フレームFの開口に粘着テープTで支持される。ウエーハWは、表面WSの裏側の裏面WR側からデバイスDのボンディングパッドPD(
図6に示す)に達する孔であるビアホールVH(
図8に示す)が形成される。
【0017】
レーザー加工装置1は、ウエーハWの表面WSにおけるボンディングパッドPDが形成された位置の裏面WRからボンディングパッドPDに達するビアホールVHを形成するものである。レーザー加工装置1は、
図1に示すように、ウエーハWを保持するチャックテーブル10(被加工物保持手段に相当)と、チャックテーブル10に保持されたウエーハWの裏面WRからビアホールVHを形成するために、レーザー光線L(
図3に示す)を照射するレーザー光線照射手段20と、X軸移動手段40と、Y軸移動手段50と、制御部100とを少なくとも備える。
【0018】
チャックテーブル10は、加工前のウエーハWが保持面10a上に載置されて、粘着テープTを介して環状フレームFの開口に貼着されたウエーハWを保持するものである。チャックテーブル10は、保持面10aを構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面10aに載置されたウエーハWを粘着テープTを介して吸引することで保持する。なお、チャックテーブル10は、X軸移動手段40によりX軸方向に加工送りされ、かつ回転駆動源(図示せず)により中心軸線(Z軸と平行である)回りに回転されるとともに、Y軸移動手段50によりY軸方向に割り出し送りされる。また、チャックテーブル10の周囲には、エアーアクチュエータにより駆動してウエーハWの周囲の環状フレームFを挟持するクランプ部11が複数設けられている。
【0019】
レーザー光線照射手段20は、チャックテーブル10に保持されたウエーハWに対し、ウエーハWが吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザー光線Lを照射し、ウエーハWの裏面WR側からビアホールVHを形成するものである。即ち、レーザー光線照射手段20は、ウエーハWの裏面WR側に吸収性を有する波長のレーザー光線Lを照射して、ウエーハWにアブレーション加工を施すものである。
【0020】
レーザー光線照射手段20は、
図3に示すように、装置本体2の柱部3に支持されたケーシング21(
図1に示す)と、レーザー発振器22(レーザー光線発振手段に相当)と、集光レンズ23と、第1の光軸偏心手段60と、第2の光軸偏心手段70と、ミラー24とを備える。
【0021】
レーザー発振器22は、ウエーハWが吸収性を有する波長のレーザー光線Lを発振する。集光レンズ23は、チャックテーブル10の保持面10aに対向してケーシング21の先端部に設けられている。集光レンズ23は、レーザー発振器22から発振されたレーザー光線Lを集光してチャックテーブル10に保持されたウエーハWに集光するものである。また、集光レンズ23として、F−Θレンズ、望ましくはテレセントリックF−Θレンズを用いることができる。本実施形態では、レーザー加工装置1は、集光レンズ23として、テレセントリックF−Θレンズを用いる。
【0022】
第1の光軸偏心手段60は、
図3に示すように、レーザー発振器22のレーザー光線Lの進行方向下流に配設され、集光レンズ23の中心軸P(
図3に示す)に対してレーザー光線Lの光軸LAXをY軸方向(第1軸方向に相当)と平行に偏心させる一対の第1軸レゾナントスキャナ61を有する。第1の光軸偏心手段60は、
図3に示すように、レーザー発振器22のレーザー光線Lの光軸LAXをY軸方向(第1軸方向に相当)に往復振動させる。一対の第1軸レゾナントスキャナ61は、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。第1軸レゾナントスキャナ61は、X軸方向と平行な軸心Qx周りに回転自在に設けられた平板状のミラー62と、ミラー62を共振運動により軸心Qx周りに回転させる走査部63とを備える。
【0023】
一方の第1軸レゾナントスキャナ61a(以下、符号61aで示す)のミラー62には、レーザー発振器22が発振したレーザー光線Lが、レーザー発振器22と第1の光軸偏心手段60との間に配設されたミラー24を介して入射する。一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62は、レーザー光線Lを他方の第1軸レゾナントスキャナ61b(以下、符号61bで示す)に向けて反射する。他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62は、レーザー光線Lを第2の光軸偏心手段70に向けて反射する。
【0024】
一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62は、
図5(a)に示すように、レーザー光線LをY軸方向と平行に他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62に向けて反射するようにミラー62を回転した角度を零として、時間経過とともに軸心Qx周りの角度が正弦曲線を形成するように走査部63により回転される。他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62は、
図5(b)に示すように、Y軸方向と平行なレーザー光線LをZ軸方向と平行に第2の光軸偏心手段70に向けて反射するようにミラー62を回転した角度を零として、時間経過とともに軸心Qx周りの角度が正弦曲線を形成するように走査部63により回転される。即ち、角度が零となる向きでは、ミラー62の反射面のY軸方向とのなす角度Θ(
図4に示す)は、45度となる。また、一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62と、他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62とは、軸心Qx周りに互いに連動して同方向に回転される。
【0025】
具体的には、一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62が軸心Qx周りに矢印KX1(
図4に示す)方向に回転すると、他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62が軸心Qx周りに矢印KX1(
図4に示す)方向に回転する。一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62が軸心Qx周りに矢印KX1の逆向きの矢印KX2方向に回転すると、他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62が軸心Qx周りに矢印KX1の逆向きの矢印KX2方向に回転する。また、一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62の最大振れ角Aと、他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62の最大振れ角Aとは等しく、一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62の回転周波数と、他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62の回転周波数とは等しく、ミラー62は、走査部63により軸心Qx周りに回転される。一方の第1軸レゾナントスキャナ61aのミラー62の角度が零となる向きからの回転と、他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62の角度が零となる向きからの回転の位相が等しく、ミラー62は、走査部63により軸心Qx周りに回転される。このように、一対の第1のレゾナントスキャナ61a,61bは、対を形成するレゾナントスキャナにおいて同位相で励振される。
【0026】
第2の光軸偏心手段70は、
図3に示すように、第1の光軸偏心手段60と集光レンズ23との間に配設され、集光レンズ23の中心軸Pに対してレーザー光線Lの光軸LAXをX軸方向(第2軸方向に相当)と平行に偏心させる一対の第2軸レゾナントスキャナ71を有する。第2の光軸偏心手段70は、
図3に示すように、レーザー発振器22のレーザー光線Lの光軸LAXをX軸方向(第2軸方向に相当)に往復振動させる。一対の第2軸レゾナントスキャナ71は、X軸方向に間隔をあけて配置されている。第2軸レゾナントスキャナ71は、Y軸方向と平行な軸心Qy周りに回転自在に設けられた平板状のミラー72と、ミラー72を共振運動により軸心Qy周りに回転させる走査部73とを備える。
【0027】
一方の第2軸レゾナントスキャナ71(以下、符号71aで示す)のミラー72には、他方の第1軸レゾナントスキャナ61bのミラー62が反射したレーザー光線Lが入射する。一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72は、レーザー光線Lを他方の第2軸レゾナントスキャナ71(以下、符号71bで示す)に向けて反射する。他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72は、レーザー光線Lを集光レンズ23に向けて反射する。
【0028】
一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72は、
図5(c)に示すように、Z軸方向と平行なレーザー光線LをX軸方向と平行に他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72に向けて反射するようにミラー62を回転した角度を零として、時間経過とともに軸心Qy周りの角度が正弦曲線を形成するように走査部73により回転される。他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72は、
図5(d)に示すように、X軸方向と平行なレーザー光線LをZ軸方向と平行に集光レンズ23に向けて反射するようにミラー62を回転した角度を零として、時間経過とともに軸心Qy周りの角度が正弦曲線を形成するように走査部73により回転される。即ち、角度が零となる向きでは、ミラー72の反射面のX軸方向とのなす角度は、45度となる。また、一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72と、他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72とは、軸心Qy周りに互いに連動して同方向に回転される。
【0029】
具体的には、一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72が軸心Qy周りに矢印Ky1方向に回転すると、他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72が軸心Qy周りに矢印Ky1方向に回転する。一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72が軸心Qy周りに矢印Ky1の逆向きの矢印Ky2方向に回転すると、他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72が軸心Qy周りに矢印Ky1の逆向きの矢印Ky2方向に回転する。また、一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72の最大振れ角Aと、他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72の最大振れ角Aとは等しく、一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72の回転周波数と、他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72の回転周波数とは等しく、ミラー72は、走査部73により軸心Qy周りに回転される。一方の第2軸レゾナントスキャナ71aのミラー72の角度が零となる向きからの回転と、他方の第2軸レゾナントスキャナ71bのミラー72の角度が零となる向きからの回転の位相が等しく、ミラー72は、走査部73により軸心Qy周りに回転される。このように、一対の第2軸レゾナントスキャナ71a,71bは、対を形成するレゾナントスキャナにおいて同位相で励振される。
【0030】
また、第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72の最大振れ角Aは、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62の最大振れ角Aと等しく、ミラー62,72は、走査部63,73により軸心Qx,Qy周りに回転される。第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72の回転周波数は、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62の回転周波数と等しく、ミラー62,72は、走査部63,73により軸心Qx,Qy周りに回転される。さらに、第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72の回転の位相と、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62の回転の位相とは、1/4周期分ずれて、ミラー62,72は、走査部63,73により軸心Qx,Qy周りに回転される。なお、レゾナントスキャナ61a,61b,71a,71bは、共振型発振器、レゾナントオシレータ等とも呼ばれる。また、レゾナントスキャナ61a,61b,71a,71bは、駆動時の最大振れ角A、−Aとなるときのそれぞれのミラー62の表面の法線のなす角度を2等分する方向を法線の向きとする表面の方向をミラー62の角度を零と定義することができる。また、レゾナントスキャナ61a,61b,71a,71bは、共振していないときのミラー62の表面の向きを零としてもよい。
【0031】
このように、レーザー加工装置1は、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bと第2軸レゾナントスキャナ71a,71bを90°の位相差に固定して励振させ、ビアホールVHを形成する。また、レーザー光線照射手段20は、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62と、第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72とが走査部63,73により軸心Qx,Qy周りに前述したように回転されることで、スポットが円形になるようにレーザー光線Lを偏心させる。また、レーザー光線照射手段20は、集光レンズ23としてテレセントリックf−Θレンズを用いることで、チャックテーブル10に保持されたウエーハWの裏面WR側からビアホールVHを形成してもウエーハWの裏面WR及びビアホールVHの底面において同一大きさで同一形状の円形をなすように、レーザー光線Lを偏心させることができる。なお、ミラー24、第1の光軸偏心手段60及び第2の光軸偏心手段70は、ケーシング21内などに設けられている。
【0032】
制御部100は、レーザー加工装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部100は、ウエーハWの裏面WRからボンディングパッドPDに達するビアホールVHを形成する加工動作をレーザー加工装置1に行わせるものである。なお、制御部100は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態を表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる操作手段と接続されている。
【0033】
次に、本実施形態に係るレーザー加工装置1を用いた形成方法を図面を参照して説明する。形成方法は、レーザー加工装置1によりウエーハWの裏面WRにレーザー光線Lを照射して、ボンディングパッドPDに達するビアホールVHを形成する方法である。
【0034】
まず、形成方法では、オペレータが加工内容情報を制御部100に登録し、オペレータがレーザー光線照射手段20から離間したチャックテーブル10の保持面10a上にウエーハWを載置し、加工動作の開始指示があった場合に、レーザー加工装置1が加工動作を開始する。加工動作では、制御部100は、チャックテーブル10の保持面10aにウエーハWを吸引保持し、クランプ部11で環状フレームFを挟持する。制御部100は、X軸移動手段40及びY軸移動手段50によりチャックテーブル10をレーザー光線照射手段20の下方に向かって移動して、レーザー光線Lの図示しない撮像手段の下方にチャックテーブル10に保持されたウエーハWを位置付け、撮像手段に撮像させる。撮像手段は、撮像した画像の情報を制御部100に出力する。そして、制御部100が、パターンマッチング等の画像処理を実施し、ウエーハWにビアホールVHを形成する位置を割り出した後、割り出した位置の一つにビアホールVHを形成できるように、チャックテーブル10に保持されたウエーハWとレーザー光線照射手段20との相対位置を調整する。
【0035】
そして、制御部100は、レーザー発振器22からレーザー光線Lを発振させ、発振されたレーザー光線Lを一対の第1軸レゾナントスキャナ61a,61bに導き集光レンズ23の中心軸Pに対してY軸方向にレーザー光線Lの光軸LAXを偏心させる。また、制御部100は、一対の第1軸レゾナントスキャナ61a,61bを通過したレーザー光線Lを一対の第2軸レゾナントスキャナ71a,71bに導き、X軸方向に偏心させて、チャックテーブル10で保持したウエーハWにY軸方向、X軸方向に偏心されたレーザー光線Lを照射する。そして、制御部100は、
図6及び
図8に示すように、ウエーハWの裏面WR側からビアホールVHを形成する。
【0036】
制御部100は、一つのビアホールVHを形成すると、レーザー光線Lの発振を停止した後、次のビアホールVHを形成できるように、チャックテーブル10に保持されたウエーハWとレーザー光線照射手段20との相対位置を調整した後、先程と同様にビアホールVHを形成する。制御部100は、全てのビアホールVHを形成すると、レーザー光線Lの発振を停止して、チャックテーブル10をレーザー光線照射手段20から離間した位置に移動させた後、チャックテーブル10の吸引保持及びクランプ部11の挟持を解除する。そして、オペレータがすべてのビアホールVHが形成されたウエーハWをチャックテーブル10上から取り除くとともに、ビアホールVH形成前のウエーハWを再度、チャックテーブル10上に載置し、前述の工程を繰り返して、ウエーハWにビアホールVHを形成する。
【0037】
こうして、形成方法は、レーザー発振器22からレーザー光線Lを発振する工程と、発振されたレーザー光線Lを一対の第1軸レゾナントスキャナ61a,61bに導き集光レンズ23の中心軸Pに対してY軸方向にレーザー光線Lの光軸LAXを偏心させる工程と、一対の第1軸レゾナントスキャナ61a,61bを通過したレーザー光線Lを一対の第2軸レゾナントスキャナ71a,71bに導き、レーザー光線LのY軸方向に直交するX軸方向に光軸LAXを偏心させる工程と、チャックテーブル10で保持したウエーハWにY軸方向およびX軸方向に偏心されたレーザー光線Lを照射する工程とを有することとなる。
【0038】
以上のように、実施形態に係るレーザー加工装置1によれば、レーザー光線照射手段20が、レーザー光線LをY軸方向と平行に偏心させる一対の第1軸レゾナントスキャナ61a,61bを有する第1の光軸偏心手段60と、レーザー光線LをX軸方向と平行に偏心させる一対の第2軸レゾナントスキャナ71a,71bを有する第2の光軸偏心手段70とを備える。レーザー光線照射手段20は、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62の最大振れ角A及び回転周波数と第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72の最大振れ角A及び回転周波数とが等しい。また、レーザー光線照射手段20は、第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62の回転の位相と、第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72の回転の位相とが1/4周期分ずれている。このために、レーザー加工装置1は、スポットが円形になるようにレーザー光線Lを偏心させる。また、レーザー加工装置1は、集光レンズ23としてテレセントリックf−Θレンズを用いることで、チャックテーブル10に保持されたウエーハWの裏面WR側からビアホールVHを形成してもウエーハWの裏面WR及びビアホールVHの底面において同一大きさで同一形状の円形をなすように、レーザー光線Lを偏心させることができる。
【0039】
また、形成方法は、前述した構成のレーザー加工装置1を用いて、ウエーハWの裏面WR側がらビアホールVHを形成するので、裏面WR側から表面WS側に向けて均一の内径の平面視が円形のビアホールVHをウエーハWに形成することができる。したがって、前述した実施形態に係るレーザー加工装置1及び形成方法は、ウエーハWに均一の内径の平面視が円形のビアホールVHを形成することができるので、ビアホールVHの底面と内周面とが直交させることができ、ビアホールVHの形状を所望の形状に加工可能なレーザー加工を行うことができる。よって、前述した実施形態に係る形成方法は、被加工物であるウエーハを所望の形状に加工することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、一方の第1軸及び第2軸レゾナントスキャナ61a,71aと、他方の第1軸及び第2軸レゾナントスキャナ61b,71bとの間にレーザー光線Lを反射するミラーを配設し、一対の第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62同士を互いに連動して逆向きに回転させるとともに、一対の第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72同士を互いに連動して逆向きに回転させてもよい。
【0041】
また、本発明のレーザー加工装置1は、一対の第1軸レゾナントスキャナ61a,61bのミラー62の最大振れ角A
、一対の第2軸レゾナントスキャナ71a,71bのミラー72の最大振れ角
Aを任意に変更して、スポットが任意の形状をなすようにレーザー光線Lを偏心させてもよい。本発明のレーザー加工装置1及び形成方法では、ビアホールVHに限らず、溝などを形成するなどの他の形状に被加工物を加工してもよい。