(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板に対してシリコンまたはゲルマニウムを含みハロゲン元素を含む第1処理ガスを供給する工程と、前記基板に対してシリコンを含みハロゲン元素を含まない第2処理ガスを供給する工程と、前記基板に対してゲルマニウムを含みハロゲン元素を含まない第3処理ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、シリコンおよびゲルマニウムを含む第1シード層を形成する工程と、
前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第3処理ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記第1シード層上に、ゲルマニウムを含む第3シード層を形成する工程と、
前記基板に対してゲルマニウムを含みハロゲン元素を含まない第4処理ガスを供給することで、前記第3シード層上に、ゲルマニウムを含む膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
基板処理装置の処理室内の基板に対してシリコンまたはゲルマニウムを含みハロゲン元素を含む第1処理ガスを供給する手順と、前記処理室内の前記基板に対してシリコンを含みハロゲン元素を含まない第2処理ガスを供給する手順と、前記処理室内の前記基板に対してゲルマニウムを含みハロゲン元素を含まない第3処理ガスを供給する手順と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、シリコンおよびゲルマニウムを含む第1シード層を形成する手順と、
前記第1処理ガスを供給する手順と、前記第3処理ガスを供給する手順と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記第1シード層上に、ゲルマニウムを含む第3シード層を形成する手順と、
前記処理室内の前記基板に対してゲルマニウムを含みハロゲン元素を含まない第4処理ガスを供給することで、前記第3シード層上に、ゲルマニウムを含む膜を形成する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には、処理室201が形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0011】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bには、ガス供給管232cが接続されている。
【0012】
ガス供給管232a〜232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a〜241cおよび開閉弁であるバルブ243a〜243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232d,232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d,232eには、上流方向から順に、MFC241d,241eおよびバルブ243d,243eがそれぞれ設けられている。
【0013】
ノズル249a,249bは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、第1処理ガスとして、例えば、SiまたはGeを含みハロゲン元素を含むハロゲン系原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。ハロゲン元素には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。すなわち、ハロゲン系原料ガスには、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基が含まれる。ハロゲン系原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含むハロシラン原料ガス、すなわち、クロロシラン原料ガスや、GeおよびClを含むハロゲルマン原料ガス、すなわち、クロロゲルマン原料ガスを用いることができる。クロロシラン原料ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガスを用いることができる。クロロゲルマン原料ガスとしては、例えば、ジクロロゲルマン(GeH
2Cl
2、略称:DCG)ガスを用いることができる。
【0015】
ガス供給管232bからは、第2処理ガスとして、例えば、Siを含みハロゲン元素を含まない非ハロゲン系のシラン原料ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。第2処理ガスとしては、水素化ケイ素原料ガスを用いることができ、例えば、ジシラン(Si
2H
6、略称:DS)ガスを用いることができる。
【0016】
ガス供給管232cからは、第3処理ガス、第4処理ガスとして、例えば、Geを含みハロゲン元素を含まない非ハロゲン系のゲルマン原料ガスが、MFC241c、バルブ243c、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。第3処理ガス、第4処理ガスとしては、水素化ゲルマニウム原料ガスを用いることができ、例えば、モノゲルマン(GeH
4、略称:MG)ガスを用いることができる。
【0017】
ガス供給管232d,232eからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N
2)ガスが、それぞれMFC241d,241e、バルブ243d,243e、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1供給系(ハロシラン原料供給系、ハロゲルマン原料供給系)が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2供給系(水素化ケイ素原料供給系)が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第3供給系(水素化ゲルマニウム原料供給系)が構成される。主に、ガス供給管232d,232e、MFC241d,241e、バルブ243d,243eにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0019】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a〜243eやMFC241a〜241e等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a〜232eのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a〜232e内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a〜243eの開閉動作やMFC241a〜241eによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a〜232e等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、供給システムのメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0020】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0021】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217すなわちウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0022】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。
【0023】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0024】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0025】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0026】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241e、バルブ243a〜243e、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0027】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241eによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243eの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0028】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0029】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上にゲルマニウム膜(Ge膜)を形成するシーケンス例について、
図4(a)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0030】
図4(a)に示す成膜シーケンスでは、
ウエハ200に対してDCSガスを供給するステップ1aと、ウエハ200に対してDSガスを供給するステップ2aと、ウエハ200に対してMGガスを供給するステップ3aと、を含むサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上に、SiおよびGeを含む第1シード層としてSiGeシード層を形成するステップ(SiGeシード層形成ステップ)と、
ウエハ200に対してMGガスを供給することで、SiGeシード層上に、Geを含む膜としてGe膜を形成するステップ(Ge膜形成ステップ)と、
を行う。
【0031】
本明細書では、
図4(a)に示す成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例等の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0032】
(DCS→DS→MG)×n
1→MG ⇒ Ge膜/SiGeシード
【0033】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0034】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0035】
ウエハ200としては、例えば、単結晶Siにより構成されたSi基板、或いは、表面に単結晶Si膜が形成された基板を用いることができる。ウエハ200の表面には、単結晶Siが露出した状態となっている。ウエハ200の表面の一部には、例えば、シリコン酸化膜(SiO膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等の絶縁膜が形成されていてもよい。
【0036】
ウエハ200を処理室201内に搬入する前、ウエハ200の表面はフッ化水素(HF)等により予め洗浄される。但し、洗浄処理の後、ウエハ200を処理室201内へ搬入するまでの間に、ウエハ200の表面は一時的に大気に晒される。そのため、処理室201内へ搬入されるウエハ200の表面の少なくとも一部には、自然酸化膜(SiO膜)が形成される。自然酸化膜は、ウエハ200の表面、すなわち、露出した単結晶Siの一部を疎らに(アイランド状に)覆うように形成されることもあり、また、露出した単結晶Siの全域を連続的に(非アイランド状に)覆うように形成されることもある。
【0037】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の成膜温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。ボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0038】
(SiGeシード層形成ステップ)
その後、ステップ1a〜3aを順次実行する。
【0039】
[ステップ1a]
このステップでは、ウエハ200に対してDCSガスを供給する。具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へDCSガスを流す。DCSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してDCSガスが供給される。このとき同時にバルブ243dを開き、ガス供給管232d内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、DCSガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。また、ノズル249b内へのDCSガスの侵入を防止するため、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0040】
ウエハ200に対してDCSガスを供給することにより、DCSによるトリートメント効果を生じさせ、以下の処理を進行させることができる。すなわち、電気陰性度の大きなClを含むDCSをウエハ200の表面に対して供給することで、ウエハ200の表面に形成された自然酸化膜における酸素(O)と、DCSにおけるClと、を引き合わせ、自然酸化膜に含まれるSi−O結合を切断することができる。すなわち、DCSが有する極性により、単結晶Siの表面を終端しているSi−O結合を切断することができる。また、DCSから分離することで生成された微量のCl
−(Clイオン)により、単結晶Siの表面を終端しているSi−O結合を切断することもできる。これらにより、単結晶Siの表面において、Siの未結合手を生じさせ、後述するエピタキシャル成長が進行しやすい環境を整えることが可能となる。ウエハ200の表面においては、上述の反応が進行することにより、表面に形成された自然酸化膜が除去され、単結晶Siの表面が露出する。このように、DCSガスは、単結晶Siの表面から自然酸化膜を除去するクリーニングガス(洗浄ガス)として作用する。ウエハ200の表面にSiO膜等が形成されている場合は、上述のトリートメント効果により、SiO膜等の表面にSiの吸着サイトが形成される。
【0041】
上述のトリートメント効果により、ウエハ200の表面においてエピタキシャル成長が進行しやすい環境が整ったら、バルブ243aを閉じ、DCSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは上述の反応に寄与した後のガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243d,243eは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用する。
【0042】
[ステップ2a]
ステップ1aが終了した後、ウエハ200に対してDSガスを供給する。このステップでは、バルブ243b,243d,243eの開閉制御を、ステップ1aにおけるバルブ243a,243d,243eの開閉制御と同様の手順で行うことで、ガス供給管232b内へDSガスを流す。ガス供給管232b内を流れたDSガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してDSガスが供給される。
【0043】
ウエハ200に対してDSガスを供給することにより、ステップ1aで形成されたSiの未結合手に、DSに含まれるSiを結合させることができる。これにより、ウエハ200の表面上にSi結晶の核(Si核)を形成し、Si結晶をエピタキシャル成長(気相エピタキシャル成長)させることができる。この成長は、ホモエピタキシャル成長となる。ホモエピタキシャル成長では、下地となる結晶の上に、この結晶と同じ格子定数を持ち、同じ材料からなる結晶が、同一の結晶方位で成長するため、欠陥の少ない良質な結晶を得ることができる。ウエハ200の表面上にSiO膜等が形成されている場合は、上述のトリートメント効果によりSiO膜等の表面に形成されたSiの吸着サイトに、DSに含まれるSiを吸着させることができる。この場合、SiO膜上に、アモルファス、ポリ、または、アモルファスとポリとの混晶状態のSi核が形成される。
【0044】
Si核の形成が完了したら、バルブ243bを閉じ、DSガスの供給を停止する。そして、ステップ1aと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくは上述の反応に寄与した後のガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0045】
[ステップ3a]
ステップ2aが終了した後、ウエハ200に対してMGガスを供給する。このステップでは、バルブ243c,243d,243eの開閉制御を、ステップ1aにおけるバルブ243a,243d,243eの開閉制御と同様の手順で行うことで、ガス供給管232c内へMGガスを流す。ガス供給管232c内を流れたMGガスは、MFC241cにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してMGガスが供給される。
【0046】
ウエハ200に対してMGガスを供給することにより、ステップ1aで形成されたSiの未結合手や、ステップ2aで形成されたSi核を構成するSiの未結合手に、MGに含まれるGeを結合させることができる。これにより、ウエハ200の表面上にSiGe結晶の核(SiGe核)を形成し、SiGe結晶を気相エピタキシャル成長させることができる。この成長は、ヘテロエピタキシャル成長となる。ヘテロエピタキシャル成長では、下地となる結晶の上に、この結晶と同じ結晶構造を有し、異なる材料からなる結晶が、同一の結晶方位で成長する。ウエハ200の表面上にSiO膜等が形成されている場合は、上述のトリートメント効果によりSiO膜等の表面に形成されたSiの吸着サイトやSi核が有するSiの吸着サイトに、MGに含まれるGeを吸着させることができる。この場合、SiO膜上に、アモルファス、ポリ、または、アモルファスとポリとの混晶状態のSiGe核が形成される。
【0047】
SiGe核の形成が完了したら、バルブ243cを閉じ、MGガスの供給を停止する。そして、ステップ1aと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくは上述の反応に寄与した後のガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0048】
ステップ2a,3aを行うと、ウエハ200の表面の少なくとも一部が、DSガスに含まれるSi−H結合やMGガスに含まれるGe−H結合によって、終端された状態となる場合がある。ウエハ200の表面を終端するSi−H結合やGe−H結合は、次のステップ1aにおいてウエハ200に対してDCSガスを供給することにより、切断することができる。すなわち、DCSから分離することで生成された微量のCl
−により、ウエハ200の表面を終端しているSi−H結合やGe−H結合を切断することができる。これにより、ウエハ200の表面にSiやGeの未結合手を形成することができる。すなわち、ウエハ200の表面において、エピタキシャル成長が進行しやすい環境を再び整えることが可能となる。これにより、次のステップ2a,3aにおいて、上述したSi核やSiGe核の形成が遅滞なく開始されることとなる。
【0049】
また、ステップ2a,3aを行うと、ウエハ200の表面においてSi核やSiGe核が異常成長する場合がある。例えば、ステップ2a,3aを行うと、ウエハ200の表面に吸着したSiやGeが局所的に凝集する等し、ウエハ200の表面に凹凸構造が形成される場合がある。但し、異常成長した核は、次のステップ1aでウエハ200に対してDCSガスを供給することで除去することができる。すなわち、DCSから分離することで生成された微量のCl
−により、異常成長した核に含まれるSi−Si結合、Ge−Ge結合、Si−Ge結合を切断し、異常成長した核をエッチングすることが可能となる。これにより、SiGeシード層形成ステップで形成される層の表面を平滑化させ、結果として、最終的に形成されるGe膜の表面ラフネス等を向上させることが可能となる。ここで表面ラフネスとは、ウエハ面内における膜の高低差を意味しており(表面粗さと同義であり)、その値が小さいほど表面が平滑であることを示している。すなわち、表面ラフネスが向上するとは、膜の高低差が小さくなり、表面の平滑度が向上することを意味する。
【0050】
ここで示した各効果は、DCSによるトリートメント効果に含めて考えることができる。
【0051】
[所定回数実施]
ステップ1a〜3aをこの順に、すなわち、同期させることなく非同時に行うサイクルを所定回数(n
1回(n
1は1以上の整数))行う。これにより、ウエハ200の表面上にSiGeシード層を形成することができる。SiGeシード層は、ウエハ200の表面を下地として、SiGe結晶がエピタキシャル成長することで形成される。SiGeシード層の結晶構造は、下地の結晶性を継承した単結晶となる。すなわち、SiGeシード層は、下地の単結晶Siと同一の結晶方位を有する単結晶SiGe層(エピタキシャルSiGe層)となる。
【0052】
以下、SiGeシード層形成ステップの処理条件について説明する。ここに示す条件は、上述のトリートメント効果を適正に発揮させることが可能な条件でもある。
【0053】
ステップ1a〜3aにおける処理ガス(DCSガス、DSガス、MGガス)の供給流量は、それぞれ例えば10〜2000sccmの範囲内の所定の流量とする。ステップ1a〜3aにおける処理ガスの供給時間は、それぞれ例えば1〜60分の範囲内の所定の時間とする。ステップ1a〜3aにおいて、各ガス供給管より供給するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0〜10000sccmの範囲内の所定の流量とする。N
2ガスを非供給とすることにより、各処理ガスの分圧を高め、層質を向上させることが可能となる。
【0054】
ウエハ200の温度(成膜温度)は、例えば250〜450℃、好ましくは300〜400℃の範囲内の温度とする。処理室201内の圧力(成膜圧力)は、例えば0.1〜10Torr(13.3〜1330Pa)の範囲内の圧力とする。
【0055】
成膜温度が250℃未満となったり、成膜圧力が0.1Torr未満となったりすると、ステップ1aでウエハ200に対して供給されるCl
−やDCSの量が不足し、上述のトリートメント効果が得られなくなる場合がある。また、ステップ2a,3aでウエハ200に対して供給されるDSやMGが分解しにくくなり、ウエハ200上へのSiGeシード層の形成が困難となる場合がある。成膜温度を250℃以上としたり、成膜圧力を0.1Torr以上としたりすることで、これらの課題を解消することができ、実用的なレートでSiGeシード層を形成することが可能となる。成膜温度を300℃以上とすることで、これらの課題をより確実に解消することができ、SiGeシード層の形成レートをさらに高めることが可能となる。
【0056】
成膜温度が450℃を超えたり、成膜圧力が10Torrを超えたりすると、ステップ1aでは、DCSに含まれるSiがウエハ200上に堆積する場合がある。この場合、単結晶Siの表面から自然酸化膜が除去される前にSiが堆積し、単結晶Si上(自然酸化膜上)では、エピタキシャル成長が進行せず、最終的に得られるSiGeシード層がアモルファス層やポリ層になる場合がある。また、DCSの極性等を利用した上述のトリートメント効果が得られなくなる場合がある。また、ステップ2a,3aで過剰な気相反応が生じることで、SiGeシード層の厚さの均一性や段差被覆性が悪化する場合がある。また、処理室201内に発生するパーティクルの量が増加する場合もある。成膜温度を450℃以下としたり、成膜圧力を10Torr以下としたりすることで、これらの課題を解消することができ、SiGeシード層を、面内膜厚均一性や段差被覆性の良好な層とすることが可能となる。成膜温度を400℃以下とすることで、これらの課題をより確実に解消することができ、SiGeシード層の品質をさらに向上させることが可能となる。
【0057】
サイクルの実施回数(n
1)は、例えば5〜20回、好ましくは10〜15回の範囲内の所定の回数に設定する。これにより形成するSiGeシード層の厚さを、例えば10〜40Å(1〜4nm)、好ましくは20〜30Å(2〜3nm)の範囲内の所定の厚さとすることができる。なお、サイクルを複数回行うことで、SiGeシード層の密度を高め、SiGeシード層がアイランド状に成長することを回避することが可能となる。これにより、SiGeシード層上に形成するGe膜を、表面ラフネスが良好で、膜破れ等の少ない緻密な膜とすることができる。
【0058】
第1処理ガスとしては、DCSガスの他、モノクロロシラン(SiH
3Cl、略称:MCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl
3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl
4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCDS)ガス等のクロロシラン原料ガスや、モノクロロゲルマン(GeH
3Cl、略称:MCG)ガス、DCGガス、トリクロロゲルマン(GeHCl
3、略称:TCG)ガス、テトラクロロゲルマン(GeCl
4、略称:GTC)ガス、ヘキサクロロジゲルマン(Ge
2Cl
6、略称:HCDG)ガス等のクロロゲルマン原料ガスを用いることができる。ステップ1aにおいて、ウエハ200上へのSiやGeの堆積を抑制しつつ、上述のSi−O結合の切断反応を促進させるには、第1処理ガスとして、1分子中に含まれるSiやGeの数が少なく、1分子中に含まれるClの数が多い原料ガスを用いることが好ましい。また、ステップ1aにおいて、上述のトリートメント効果を適正に抑制するには、1分子中に含まれるClの数が少ない原料ガスを用いることが好ましい。
【0059】
第2処理ガスとしては、DSガスの他、モノシラン(SiH
4)ガス、トリシラン(Si
3H
8)ガス、テトラシラン(Si
4H
10)ガス、ペンタシラン(Si
5H
12)ガス、ヘキサシラン(Si
6H
14)ガス等の水素化ケイ素原料ガス、すなわち、ハロゲン元素を含まないシラン原料ガスを用いることができる。
【0060】
第3処理ガスとしては、MGガスの他、ジゲルマン(Ge
2H
6)ガス、トリゲルマン(Ge
3H
8)ガス、テトラゲルマン(Ge
4H
10)ガス、ペンタゲルマン(Ge
5H
12)ガス、ヘキサゲルマン(Ge
6H
14)ガス等の水素化ゲルマニウム原料ガス、すなわち、ハロゲン元素を含まないゲルマン原料ガスを用いることができる。
【0061】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0062】
(Ge膜形成ステップ)
SiGeシード層形成ステップが終了した後、ウエハ200に対してMGガスを供給する。このステップでは、上述のステップ3aと同様の手順により、ガス供給管232c内へMGガスを流す。ガス供給管232c内を流れたMGガスは、処理室201内へ供給され、ウエハ200に対して供給された後、排気管231から排気される。
【0063】
ウエハ200に対してMGガスを供給することで、SiGeシード層上に、SiGe結晶と同一の結晶構造を有するGe結晶を気相エピタキシャル成長させ、単結晶GeからなるGe膜(エピタキシャルGe膜)を形成することができる。この成長は、ヘテロエピタキシャル成長となる。なお、SiGe結晶の格子定数は、Si結晶の格子定数よりもGe結晶の格子定数に近いことから、SiGeシード層を下地とするヘテロエピタキシャル成長では、ウエハ200の表面(単結晶Si)を下地とするヘテロエピタキシャル成長よりも、欠陥の少ない良質な結晶を得ることができる。すなわち、本実施形態では、Ge膜形成ステップの実施前にSiGeシード層形成ステップを予め実施することから、SiGeシード層形成ステップを実施することなくGe膜形成ステップを実施する場合よりも、内部応力や欠陥の少ない良質なGe膜を得ることが可能となる。
【0064】
MGガスの供給流量は、例えば10〜2000sccmの範囲内の流量とする。MGガスの供給時間は、ウエハ200上に形成するGe膜の膜厚等によって適宜決定することができるが、例えば10〜120分の範囲内の時間とすることができる。各ガス供給管より供給するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0〜10000sccmの範囲内の所定の流量とする。N
2ガスを非供給とすることにより、MGガスの分圧を高め、膜質を向上させることが可能となる。処理室201内の圧力(成膜圧力)は、例えば0.1〜20Torr(13.3〜2660Pa)の範囲内の圧力とする。他の条件は、SiGeシード層形成ステップにおける処理条件と同様とする。
【0065】
第4処理ガスとしては、MGガスの他、上述の各種水素化ゲルマニウム原料ガスを用いることができる。Ge膜中へのハロゲン元素の残留を抑制させる観点からは、第4処理ガスとして、ハロゲン元素を含まない水素化ゲルマニウム原料ガスを用いることが好ましい。また、Ge膜の膜厚均一性を向上させる観点からは、第4処理ガスとして、第3処理ガスのような低次の水素化ゲルマニウム原料ガスを用いることが好ましい。すなわち、第4処理ガスとして、第3処理ガスを構成する物質と同一の物質で構成されるガス(第3処理ガスと分子構造が同一であるガス)を用いることが好ましい。また、Ge膜の成膜レートを向上させる観点からは、第4処理ガスとして、ハロゲン元素を含む反応性の高いゲルマン原料ガスを用いることが好ましい。
【0066】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、上述の各種希ガスを用いることができる。
【0067】
(アフターパージ及び大気圧復帰)
Ge膜形成ステップが終了した後、ガス供給管232d,232eのそれぞれからN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N
2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0068】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0069】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0070】
(a)Ge膜形成ステップを行う前に、ウエハ200上にSiGeシード層を予め形成することにより、SiGeシード層を形成することなくウエハ200上にGe膜を直接形成する場合よりも、エピタキシャル成長の品質を向上させることが可能となる。これは、SiGeシード層が、ウエハ200の表面を構成するSi結晶と、Ge膜を構成するGe結晶と、の間の格子定数差(格子不整合)を吸収するバッファ層として機能するためである。これにより、内部応力(ストレス)や欠陥の少ない良質なGe膜を得ることが可能となり、最終的に得られる半導体装置の性能を向上させ、その製造歩留まりを改善することが可能となる。
【0071】
(b)Ge膜形成ステップを行う前に、ウエハ200上にSiGeシード層を予め形成することにより、SiGeシード層を形成することなくウエハ200上にGe膜を直接形成する場合よりも、Ge膜とウエハ200との接合界面における密着性を高めたり、界面準位の状態を向上させたりすることが可能となる。これにより、最終的に得られる半導体装置の性能を向上させ、その製造歩留まりを改善することが可能となる。
【0072】
(c)SiGeシード層形成ステップでは、DCSが発揮するトリートメント効果により、ウエハ200の表面上において、エピタキシャル成長を遅滞なく開始させることが可能となる。また、このトリートメント効果により、SiGeシード層を、段差被覆性に優れ、平坦な表面を有する連続的かつ緻密な層とすることができる。結果として、最終的に形成されるGe膜を、段差被覆性や面内膜厚均一性に優れ、表面ラフネスが極めて良好な膜とすることが可能となる。
【0073】
(d)Ge膜形成ステップを行う前に、ウエハ200上にSiGeシード層を予め形成することにより、たとえウエハ200の表面(成膜の下地)の一部にSiO膜等が存在し、DCSのトリートメント効果によりそのSiO膜等を完全に除去しきれなかった場合であっても、この層を、下地からGe膜へのOの拡散を抑制する酸化ブロック層(拡散抑制層)として機能させることが可能となる。結果として、最終的に形成されるGe膜の酸化を抑制することが可能となる。
【0074】
(e)上述の効果は、第1処理ガスとしてDCSガス以外のハロゲン元素を含む原料ガスを用いる場合や、第2処理ガスとしてDSガス以外の水素化ケイ素原料ガスを用いる場合や、第3処理ガス、第4処理ガスとしてMGガス以外の水素化ゲルマニウム原料ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。なお、第1処理ガスとして、水素化ケイ素原料ガス、水素化ゲルマニウム原料ガス、アミノシラン原料ガス、アミノゲルマン原料ガス等のハロゲン元素を含まないガスを用いた場合には、上述のトリートメント効果が得られなくなる。
【0075】
(4)変形例
本実施形態における成膜シーケンスは、上記に示した態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0076】
(変形例1)
以下に示す成膜シーケンスのように、SiGeシード層形成ステップでは、各処理ガスの供給タイミングを
図4(a)に示す成膜シーケンスから変更してもよい。各ステップの処理手順、処理条件は、ガスの供給タイミングを除き、
図4(a)に示す成膜シーケンスの各ステップのそれらと同様とすることができる。
【0077】
(DCS→MG→DS)×n
1→MG ⇒ Ge膜/SiGeシード
【0078】
(DCS→DS+MG)×n
1→MG ⇒ Ge膜/SiGeシード
【0079】
これらの変形例によっても、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。なお、各サイクルで、DCS→DS→MG、或いは、DCS→DS+MGの順にガス供給を行う成膜シーケンスの方が、DCS→MG→DSの順にガス供給を行う成膜シーケンスよりも、ウエハ200の表面を下地とするエピタキシャル成長を確実かつ高品質に進行させることが容易となる点で好ましい。
【0080】
(変形例2)
図4(b)や以下に示す成膜シーケンスのように、SiGeシード層形成ステップを行う前に、Siシード層形成ステップを行うようにしてもよい。Siシード層形成ステップでは、例えば、ウエハ200に対してDCSガスを供給するステップ1bと、ウエハ200に対してDSガスを供給するステップ2bと、を交互に行うサイクルを所定回数(n
2回(n
2は1以上の整数))行うことで、ウエハ200上に、Siを含む第2シード層(Siシード層)を形成する。Siシード層は、単結晶Si層(エピタキシャルSi層)となる。ステップ1b,2bの処理手順、処理条件は、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1a,2aのそれらと同様とすることができる。
【0081】
(DCS→DS)×n
2→(DCS→DS→MG)×n
1→MG ⇒ Ge膜/SiGeシード/Siシード
【0082】
(DCS→DS)×n
2→(DCS→MG→DS)×n
1→MG ⇒ Ge膜/SiGeシード/Siシード
【0083】
(DCS→DS)×n
2→(DCS→DS+MG)×n
1→MG ⇒ Ge膜/SiGeシード/Siシード
【0084】
これらの変形例によっても、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。また、Siシード層形成ステップでは、SiGeシード層形成ステップと同様、DCSが発揮するトリートメント効果により、Siシード層のエピタキシャル成長を、ウエハ200の表面全域にわたって遅滞なく開始させることが可能となる。また、このトリートメント効果により、Siシード層を、段差被覆性に優れ、平坦な表面を有する連続的かつ緻密な層とすることが可能となる。これにより、その上に形成するSiGeシード層の品質をいっそう高め、結果として、最終的に形成されるGe膜を、段差被覆性や面内膜厚均一性がさらに優れ、表面ラフネスがさらに良好な膜とすることが可能となる。
【0085】
(変形例3)
以下に示す成膜シーケンスのように、SiGeシード層形成ステップを行った後、Ge膜形成ステップを行う前に、Geシード層形成ステップを行うようにしてもよい。Geシード層形成ステップでは、例えば、ウエハ200に対してDCGガスを供給するステップ1cと、ウエハ200に対してMGガスを供給するステップ2cと、を交互に行うサイクルを所定回数(n
3回(n
3は1以上の整数))行うことで、ウエハ200上に、Geを含む第3シード層(Geシード層)を形成する。Geシード層は、単結晶Ge層(エピタキシャルGe層)となる。ステップ1c,2cの処理手順、処理条件は、ステップ1aにおいてガス供給管232a内へDCGガスを流す点を除き、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1a,3aのそれらと同様とすることができる。
【0086】
(DCS→DS→MG)×n
1→(DCG→MG)×n
3→MG ⇒ Ge膜/Geシード/SiGeシード
【0087】
(DCS→MG→DS)×n
1→(DCG→MG)×n
3→MG ⇒ Ge膜/Geシード/SiGeシード
【0088】
(DCS→DS+MG)×n
1→(DCG→MG)×n
3→MG ⇒ Ge膜/Geシード/SiGeシード
【0089】
これらの変形例によっても、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。また、Geシード層形成ステップでは、SiGeシード層形成ステップと同様、DCGが発揮するトリートメント効果により、Geシード層のエピタキシャル成長をウエハ200の表面全域にわたって遅滞なく開始させることが可能となる。また、このトリートメント効果により、Geシード層を、段差被覆性に優れ、平坦な表面を有する連続的かつ緻密な層とすることが可能となる。これにより、その上に形成するGe膜の品質をいっそう高め、結果として、最終的に形成されるGe膜を、段差被覆性や面内膜厚均一性がさらに優れ、表面ラフネスがさらに良好な膜とすることが可能となる。
【0090】
(変形例4)
以下に示す成膜シーケンスのように、Ge膜形成ステップを行う前に、上述のSiシード層形成ステップと、上述のSiGeシード層形成ステップと、を交互に所定回数(m
1回(m
1は2以上の整数))繰り返す多層シード層形成ステップを行うようにしてもよい。多層シード層形成ステップでは、ウエハ200上に、Siシード層とSiGeシード層とが交互に積層されてなる多層シード層が形成され、この層がGe膜の形成の下地となる。
【0091】
〔(DCS→DS)×n
2→(DCS→DS→MG)×n
1〕×m
1→MG ⇒ Ge膜/多層シード
【0092】
多層シード層形成ステップを行う際、その実施期間のうち前半の期間ではn
2をn
1よりも大きくし(n
2>n
1)、その実施期間のうち後半の期間ではn
1をn
2よりも大きくする(n
1>n
2)。すなわち、多層シード層を成長させる際、その下層部分(ウエハ200に近い側)ではSiリッチな結晶を成長させ、その上層部分(Ge膜に近い側)ではGeリッチな結晶を成長させる。
【0093】
本変形例によっても、
図4(a)や
図4(b)に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。また、多層シード層の組成を上述のように厚さ方向にわたって変化させる(グラデーションをつける)ことにより、ウエハ200の表面を構成するSi結晶と、Ge膜を構成するGe結晶と、の間の格子定数差を、多層シード層内でより適正に吸収することが可能となる。結果として、内部応力や欠陥がさらに少ない、より良質なGe膜を得ることが可能となる。
【0094】
(変形例5)
図5(a)や以下に示す成膜シーケンスのように、Ge膜形成ステップを行った後、SiGeキャップ層形成ステップを行うようにしてもよい。SiGeキャップ層形成ステップでは、例えば、ウエハ200に対してDCSガスを供給するステップ1dと、ウエハ200に対してDSガスを供給するステップ2dと、ウエハ200に対してMGガスを供給するステップ3dと、を含むサイクルを所定回数(n
4回(n
4は1以上の整数))行うことで、ウエハ200上に、SiおよびGeを含む第1キャップ層(SiGeキャップ層)を形成する。SiGeキャップ層は、単結晶SiGe層(エピタキシャルSiGe層)となる。SiGeキャップ層形成ステップの処理手順、処理条件は、
図4(a)に示す成膜シーケンスのSiGeシード層形成ステップや、変形例1のSiGeシード層形成ステップのそれらと同様とすることができる。なお、
図5(a)では、便宜上、SiGeシード層形成ステップの図示を省略している。
【0095】
(DCS→DS→MG)×n
1→MG→(DCS→DS→MG)×n
4 ⇒ SiGeキャップ/Ge膜/SiGeシード
【0096】
(DCS→DS→MG)×n
1→MG→(DCS→MG→DS)×n
4 ⇒ SiGeキャップ/Ge膜/SiGeシード
【0097】
(DCS→DS→MG)×n
1→MG→(DCS→DS+MG)×n
4 ⇒ SiGeキャップ/Ge膜/SiGeシード
【0098】
本変形例によっても、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。なお、GeはSiよりも酸化しやすく、酸化ゲルマニウム(GeO)は比較的昇華しやすい特性がある。そのため、Ge膜は、処理室201内に残留している微量なO成分によって酸化されたり、成膜処理後のウエハ200を大気に暴露した際に酸化されたり、表面状態が悪化する場合がある。これに対し、本実施形態のように、Geよりも酸化耐性の高いSiGeで構成されるSiGeキャップ層をGe膜上に形成することで、Ge膜の表面の酸化を抑制し、Ge膜の表面を安定化(パッシベーション)させることが可能となる。すなわち、Ge膜の表面状態を、成膜直後の良好な状態のまま保護することが可能となる。
【0099】
(変形例6)
図5(b)や以下に示す成膜シーケンスのように、SiGeキャップ層形成ステップを行った後、Siキャップ層形成ステップを行うようにしてもよい。また、Ge膜形成ステップを行った後、SiGeキャップ層形成ステップを行うことなくSiキャップ層形成ステップを行うようにしてもよい。Siキャップ層形成ステップでは、例えば、ウエハ200に対してDCSガスを供給するステップ1eと、ウエハ200に対してDSガスを供給するステップ2eと、を含むサイクルを所定回数(n
5回(n
5は1以上の整数))行うことで、ウエハ200上(SiGeキャップ層上、或いは、Ge膜上)に、Siを含む第2キャップ層(Siキャップ層)を形成する。Siキャップ層は、単結晶Si層(エピタキシャルSi層)となる。ステップ1e,2eの処理手順、処理条件は、
図4(a)に示す成膜シーケンスのステップ1a,2aと同様とすることができる。なお、
図5(b)では、便宜上、SiGeシード層形成ステップの図示を省略している。
【0100】
(DCS→DS→MG)×n
1→MG→(DCS→DS→MG)×n
4→(DCS→DS)×n
5 ⇒ Siキャップ/SiGeキャップ/Ge膜/SiGeシード
【0101】
(DCS→DS→MG)×n
1→MG→(DCS→DS)×n
5 ⇒Siキャップ/Ge膜/SiGeシード
【0102】
これらの変形例によっても、
図4(a)に示す成膜シーケンスと同様の効果が得られる。また、SiGeよりも酸化耐性のさらに高いSiからなるSiキャップ層をSiGeキャップ層上、或いは、Ge膜上に形成することで、Ge膜の表面の酸化をより確実に抑制し、Ge膜の表面をより確実に安定化させることが可能となる。
【0103】
(変形例7)
以下に示す成膜シーケンスのように、Ge膜形成ステップを行った後、上述のSiGeキャップ層形成ステップと、上述のSiキャップ層形成ステップと、を交互に所定回数(m
2回(m
2は2以上の整数))繰り返す多層キャップ層形成ステップを行うようにしてもよい。多層キャップ層形成ステップでは、ウエハ200上に、SiGeキャップ層とSiキャップ層とが交互に積層されてなる多層キャップ層が形成され、この層がGe膜の保護層となる。
【0104】
(DCS→DS→MG)×n
1→MG→〔(DCS→DS→MG)×n
4→(DCS→DS)×n
5〕×m
2 ⇒ 多層キャップ/Ge膜/SiGeシード層
【0105】
多層キャップ層形成ステップを行う際、その実施期間のうち前半の期間ではn
4をn
5よりも大きくし(n
4>n
5)、その実施期間のうち後半の期間ではn
5をn
4よりも大きくする(n
5>n
4)。すなわち、多層キャップ層を成長させる際、その下層部分(Ge膜に近い側)ではGeリッチな結晶を成長させ、その上層部分(表面側)ではSiリッチな結晶を成長させる。
【0106】
本変形例によっても、
図4(a)に示す成膜シーケンスや、変形例5,6と同様の効果が得られる。また、多層キャップ層の組成を上述のように厚さ方向にわたって変化させる(グラデーションをつける)ことにより、Ge膜の表面を構成するGe結晶と、多層キャップ層の表面を構成するSiリッチな結晶と、の間の格子定数差を、多層キャップ層内でより適正に吸収することが可能となる。結果として、多層キャップ層を内部応力や欠陥の少ないエピタキシャル層とすることができ、この層が有する保護層としての機能を高めることが可能となる。
【0107】
(変形例8)
以下に示す成膜シーケンスのように、SiGeシード層やSiGeキャップ層のうち少なくともいずれかを、DSガスを用いずに形成してもよい。すなわち、DCSガスを、クリーニングガスとしてだけではなく、Siソースとして用いるようにしてもよい。
【0108】
(DCS→MG)×n
1→MG→(DCS→MG)×n
4 ⇒ SiGeキャップ/Ge膜/SiGeシード
【0109】
本変形例によっても、
図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例と同様の効果が得られる。また、ガス供給系の構成を簡素化させ、基板処理コストを低減させることが可能となる。
【0110】
(変形例9)
図4(a)に示す成膜シーケンスや上述の変形例において、各種シード層や各種キャップ層を形成する際、サイクルの実施回数、各処理ガスの供給流量、各処理ガスの供給時間、処理室201内の圧力等のうち少なくともいずれかの処理条件を調整することで、シード層やキャップ層の組成を、その厚さ方向にわたって変化させる(グラデーションをつける)ようにしてもよい。これにより、変形例4,7と同様の効果(格子定数差の吸収)が得られるようになる。
【0111】
(変形例10)
第1処理ガスとしては、上述したように、DCSガス以外のクロロシラン原料ガスを用いてもよく、また、クロロゲルマン原料を用いてもよい。さらに、第1処理ガスとしては、これらのハロゲン系原料ガスの他、塩化水素(HCl)ガス、塩素(Cl
2)ガス、塩化硼素(BCl
3)ガス、フッ化塩素(ClF
3)ガス等のSiやGeを含まないハロゲン系ガスを用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を
図4(a)に示す成膜シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。
【0112】
(変形例11)
第2処理ガスとしては、上述の水素化ケイ素原料ガスの他、ブチルアミノシラン(BAS)ガス、ビスターシャリブチルアミノシラン(BTBAS)ガス、ジメチルアミノシラン(DMAS)ガス、ビスジメチルアミノシラン(BDMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)ガス、ジエチルアミノシラン(DEAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(BDEAS)ガス、ジプロピルアミノシラン(DPAS)ガス、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)ガス等のアミノシラン原料ガスを用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を
図4(a)に示す成膜シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。
【0113】
(変形例12)
第3処理ガス、第4処理ガスとしては、上述の水素化ゲルマニウム原料ガスの他、ジメチルアミノゲルマン(DMAG)ガス、ジエチルアミノゲルマン(DEAG)ガス、ビスジメチルアミノゲルマン(BDMAG)ガス、ビスジエチルアミノゲルマン(BDEAG)ガス、トリスジメチルアミノゲルマン(3DMAG)ガス等のアミノゲルマン原料ガスを用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を
図4(a)に示す成膜シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。
【0114】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0115】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0116】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0117】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0118】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0119】
上述の実施形態や変形例の手法により形成したGe膜をトランジスタのチャネルとして使用することにより、チャネルにおける電子の移動度を大幅に向上させることができ、電気特性を大幅に高めることが可能となる。
【0120】
上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0121】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0122】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板に対してシリコンまたはゲルマニウムを含みハロゲン元素を含む第1処理ガスを供給する工程と、前記基板に対してシリコンを含みハロゲン元素を含まない第2処理ガスを供給する工程と、前記基板に対してゲルマニウムを含みハロゲン元素を含まない第3処理ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、シリコンおよびゲルマニウムを含む第1シード層を形成する工程と、
前記基板に対してゲルマニウムを含みハロゲン元素を含まない第4処理ガスを供給することで、前記第1シード層上に、ゲルマニウムを含む膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0123】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1シード層を形成する工程では、前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第2処理ガスを供給する工程と、前記第3処理ガスを供給する工程と、をこの順に行うサイクルを所定回数行う。
【0124】
(付記3)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1シード層を形成する工程では、前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第3処理ガスを供給する工程と、前記第2処理ガスを供給する工程と、をこの順に行うサイクルを所定回数行う。
【0125】
(付記4)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1シード層を形成する工程では、前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第2処理ガスを供給する工程および前記第3処理ガスを供給する工程を同時に行う工程と、を交互に行うサイクルを所定回数行う。
【0126】
(付記5)
付記1〜4のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記ゲルマニウムを含む膜を形成する工程を行う前に、
前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第2処理ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、シリコンを含む第2シード層を形成する工程と、
前記第1シード層を形成する工程と、
を行う。
【0127】
(付記6)
付記5に記載の方法であって、好ましくは、
前記第2シード層を形成する工程では、
前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第2処理ガスを供給する工程と、を交互に行うサイクルを所定回数行う。
【0128】
(付記7)
付記1〜6のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1シード層を形成する工程を行った後、前記ゲルマニウムを含む膜を形成する工程を行う前に、
前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第3処理ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記第1シード層上に、ゲルマニウムを含む第3シード層を形成する工程を行う。
【0129】
(付記8)
付記7に記載の方法であって、好ましくは、
前記第3シード層を形成する工程では、
前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第3処理ガスを供給する工程と、を交互に行うサイクルを所定回数行う。
【0130】
(付記9)
付記5に記載の方法であって、好ましくは、
前記ゲルマニウムを含む膜を形成する工程を行う前に、前記第2シード層を形成する工程と、前記第1シード層を形成する工程と、を交互に繰り返す工程を行い、
その実施期間のうち前半の期間では、前記第2シード層を形成する工程でのサイクルの実施回数を、前記第1シード層を形成する工程でのサイクルの実施回数よりも大きくし、
前記実施期間のうち後半の期間では、前記第1シード層を形成する工程でのサイクルの実施回数を、前記第2シード層を形成する工程でのサイクルの実施回数よりも大きくする。
【0131】
(付記10)
付記1〜9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第2処理ガスを供給する工程と、前記第3処理ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記ゲルマニウムを含む膜上に、シリコンおよびゲルマニウムを含む第1キャップ層を形成する工程をさらに有する。
【0132】
(付記11)
付記10に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1処理ガスを供給する工程と、前記第2処理ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記第1キャップ層上に、シリコンを含む第2キャップ層を形成する工程をさらに有する。
【0133】
(付記12)
付記11に記載の方法であって、好ましくは、
前記ゲルマニウムを含む膜を形成する工程を行った後に、前記第1キャップ層を形成する工程と、前記第2キャップ層を形成する工程と、を交互に繰り返す工程を行い、
その実施期間のうち前半の期間では、前記第1キャップ層を形成する工程でのサイクルの実施回数を、前記第2キャップ層を形成する工程でのサイクルの実施回数よりも大きくし、
前記実施期間のうち後半の期間では、前記第2キャップ層を形成する工程でのサイクルの実施回数を、前記第1キャップ層を形成する工程でのサイクルの実施回数よりも大きくする。
【0134】
(付記13)
付記1〜12のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第4処理ガスは、前記第3処理ガスを構成する物質と同一の物質で構成される。すなわち、前記第4処理ガスは前記第3処理ガスと分子構造が同一である。
【0135】
(付記14)
本発明の他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して、シリコンまたはゲルマニウムを含みハロゲン元素を含む第1処理ガス、シリコンを含みハロゲン元素を含まない第2処理ガス、ゲルマニウムを含みハロゲン元素を含まない第3処理ガス、および、ゲルマニウムを含みハロゲン元素を含まない第4処理ガスを供給する供給系と、
付記1の処理を行わせるように、前記供給系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0136】
(付記15)
本発明のさらに他の態様によれば、
付記1の処理をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、又は、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。