(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
路上を走行する車両から無線通信によって逐次送信される走行データを取得しながら、該走行データに基づいて供試体である車両又はその一部を模擬運転することで、路上における車両又はその一部の走行状態を再現する模擬運転システムであり、
前記供試体を自動で運転する自動運転装置と、
前記供試体に負荷を与えるダイナモメータと、
前記自動運転装置又は前記ダイナモメータを制御する制御装置とを具備し、
前記制御装置が、
前記無線通信に障害が生じたことを検知する通信障害検知部と、
前記通信障害検知部が前記障害を検知した場合に、前記供試体が所定の安全運転状態となるように前記自動運転装置又は前記ダイナモメータを制御する制御部とを有し、
前記通信障害検知部が、路上における車両又はその一部の走行状態と前記供試体によって再現される走行状態との間に生じる時間差よりも長く無線通信が途切れた場合に、前記障害として検知することを特徴とする模擬運転システム。
前記制御装置が、一連の前記走行データを分割して生成された分割データに基づいて前記自動運転装置又は前記ダイナモメータを制御することを特徴とする請求項1記載の模擬運転システム。
路上を走行する車両から無線通信によって逐次送信される走行データを取得しながら、該走行データに基づいて供試体である車両又はその一部を模擬運転することで、路上における車両又はその一部の走行状態を再現する模擬運転システムに用いられる制御装置であり、
前記供試体を自動で運転する自動運転装置及び前記供試体に負荷を与えるダイナモメータとともに用いられ、
前記無線通信に障害が生じたことを検知する通信障害検知部と、
前記通信障害検知部が前記障害を検知した場合に、前記供試体が所定の安全運転状態となるように前記自動運転装置又は前記ダイナモメータを制御する制御部とを有し、
前記通信障害検知部が、路上における車両又はその一部の走行状態と前記供試体によって再現される走行状態との間に生じる時間差よりも長く無線通信が途切れた場合に、前記障害として検知することを特徴とする制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような中で、本願発明者は、実走行をリアルタイムで再現できる模擬運転システムを開発すべく鋭意検討したところ、以下のような問題が生じることを見出した。
すなわち、実走行をリアルタイムに再現するためには、路上を走行する車両から走行データを無線通信によって逐次取得する構成が考えられるが、このような構成であると、無線通信が不測に途切れた場合に、ダイナモメータ上の車両を制御することができなくなる。そうすると、最悪の場合にはダイナモメータ上の車両が暴走してしまい、試験時の安全性を担保することができないという問題が生じる。
【0006】
このような問題は、車両の性能を試験するシステムに限られず、路上を走行する車両から走行データを取得しながら、エンジンやパワートレインなどの車両の一部を模擬運転して、その性能を試験するシステムにおいても生じ得る問題である。
【0007】
そこで本発明は、路上を走行する車両から走行データを逐次取得しながら供試体である車両又はその一部を模擬運転するとともに、試験時の安全性を担保することができる模擬運転システムを提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る模擬運転システムは、路上を走行する車両から無線通信によって逐次送信される走行データを取得しながら、該走行データに基づいて供試体である車両又はその一部を模擬運転することで、路上における車両又はその一部の走行状態を再現する模擬運転システムであり、前記供試体を自動で運転する自動運転装置と、前記供試体に負荷を与えるダイナモメータと、前記自動運転装置又は前記ダイナモメータを制御する制御装置とを具備し、前記制御装置が、前記無線通信に障害が生じたことを検知する通信障害検知部と、前記通信障害検知部が前記障害を検知した場合に、前記供試体が所定の安全運転状態となるように前記自動運転装置又は前記ダイナモメータを制御する制御部とを有することを特徴とするものである。
【0009】
このように構成された模擬運転システムによれば、路上を走行する車両から無線通信によって逐次送信される走行データを取得しながら、該走行データに基づいて供試体を模擬運転するので、模擬運転を路上における車両の実走行に追随させることができる。これにより、例えば試験室において実走行をほぼリアルタイムで再現することができ、海外等の遠隔地に行って現地試験を行うことなく、路上を走行する車両の性能を試験することが可能となる。
そのうえ、制御部が、無線通信に障害が生じた場合に、供試体が所定の安全運転状態となるように自動運転装置又はダイナモメータを制御するので、無線通信の障害によって走行データを取得することができなくなったとしても、供試体を安全運転状態とすることで、該供試体の暴走を防ぐことができ、試験時の安全性を担保することができる。
【0010】
路上における車両又はその一部の走行状態と供試体によって再現される走行状態との間に生じる時間差よりも長く無線通信が途切れた場合、供試体の模擬走行が無線通信の途切れた時点に到達してしまうと、それ以降の走行データは取得されておらず、供試体を模擬運転することができなくなってしまう。
一方、無線通信の途切れている時間が上述した時間差よりも短ければ、無線通信が再開されたときに途切れている間の走行データを送信することで、供試体の模擬走行が無線通信の途切れた時点に到達するまえに、それ以降の走行データを取得することができ、供試体を継続して模擬運転することができる。
そこで、前記通信障害検知部が、路上における車両又はその一部の走行状態と前記供試体によって再現される走行状態との間に生じる時間差よりも長く無線通信が途切れた場合に、前記障害として検知するように構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、不要に試験を中断することなく、必要な場合にのみ供試体が安全運転状態となるように制御することができる。
【0011】
前記制御装置が、一連の前記走行データを分割して生成された分割データに基づいて前記自動運転装置又は前記ダイナモメータを制御することが好ましい。
このような構成であれば、無線通信に障害が生じて走行データを取得できなくなったとしても、そのときの模擬運転に用いられている分割データは継続して使うことができる。これにより、無線通信に障害が生じた直後に供試体を制御できなくなることはなく、試験時の安全性を確実に担保することができる。
【0012】
前記制御装置が、路上の車両が発進してから停止するまでの時間毎に一連の前記走行データを分割するように構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、各分割データに基づく模擬走行が終了すると、車両又はその一部が必ず停止している状態となるので、試験時の安全性をより向上させることができる。
【0013】
安全運転状態の具体的な実施態様としては、車両が所定の車速となったときの状態又は車両が停止したときの状態が挙げられる。
【0014】
また、本発明に係る制御装置は、路上を走行する車両から無線通信によって逐次送信される走行データを取得しながら、該走行データに基づいて供試体である車両又はその一部を模擬運転することで、路上における車両又はその一部の走行状態を再現する模擬運転システムに用いられる制御装置であり、前記供試体を自動で運転する自動運転装置及び前記供試体に負荷を与えるダイナモメータとともに用いられ、前記無線通信に障害が生じたことを検知する通信障害検知部と、前記通信障害検知部が前記障害を検知した場合に、前記供試体が所定の安全運転状態となるように前記自動運転装置又は前記ダイナモメータを制御する制御部とを有することを特徴とするものである。
このような制御装置であれば、上述したような作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、路上を走行する車両から走行データを取得しながら車両又はその一部を模擬運転することで、実走行をほぼリアルタイムで再現しながらも、試験時の安全性を担保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る模擬運転システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る模擬運転システム100は、供試体たる車両V1の性能を試験するために用いられるものであり、例えば図示しない排ガス分析システム等とともに車両性能試験システムの一部を構成するものである。
なお、供試体は車両V1に限られず、エンジンやパワートレイン等の車両V1の一部であっても構わない。
【0020】
具体的に前記模擬運転システム100は、
図1に示すように、車両V1を自動で運転する自動運転装置10と、前記車両V1に負荷を与えるダイナモメータ20と、前記自動運転装置10及び前記ダイナモメータ20を制御する制御装置30とを具備している。
なお、車両V1、自動運転装置10、ダイナモメータ20及び制御装置30はいずれも、例えば試験室に設けられている。
【0021】
自動運転装置10は、アクセルペダル、クラッチペダル、ブレーキペダルの踏み込み量の操作や、シフトレバーの切替等を自動で行えるように構成されたものである。
具体的にこのものは、車両V1の運転室に搭載されてアクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等を操作する運転ロボット11を有し、この運転ロボット11に制御信号を与えることで、車両V1を自動運転することができるように構成されている。
【0022】
ダイナモメータ20は、電動機として働くことにより車両V1を駆動させる駆動装置として機能し、発電機として働くことにより車両V1に負荷を与える負荷装置として機能するものである。
具体的にこのものは、例えば前輪等の駆動輪が載せられる回転ドラムや無端ベルトなどのシャシローラ21と、シャシローラ21に接続されてシャシローラ21を回転させる図示しないモータとを有し、このモータに制御信号を与えることで、前記駆動輪を駆動させたり、前記駆動輪に負荷を与えたりすることができるように構成されている。
【0023】
制御装置30は、ダイナモメータ20上の車両V1を模擬運転して、当該車両V1の模擬走行を路上における車両V2の実走行に追随させることにより、前記車両V2の実走行をリアルタイムに再現するものである。
なお、ここでいうリアルタイムとは、路上における車両V2の走行状態と供試体である車両V1によって再現される走行状態との間に全く時間差がないという状態には限られず、前記車両V1の走行状態と前記車両V2の走行状態との間に時間差(以下、遅れ時間ともいう)が生じている状態を含む概念である。ここでは、制御装置30は、供試体である車両V1の走行状態が、所定の遅れ時間をおいて路上における車両V2の走行状態を追随するように、自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御する。
【0024】
具体的に前記制御装置30は、路上を走行する車両V2から走行に関する走行データをインターネットやイントラネット等の所定の通信網を利用した無線通信によって逐次取得しながら、当該走行データに基づいて、前記自動運転装置10及び前記ダイナモメータ20を制御するように構成されている。
【0025】
ここで、上述した走行データには、路上の車両V2に搭載されたECU、TCU、ドライビングレコーダ、車載型排ガス分析装置などにより取得された種々のデータが含まれており、具体的には、車速、エンジントルク、走行抵抗、外気温、タイヤ温度、風速、路上の傾き、排ガス分析結果などである。
なお、路上を走行する車両V2は、
図2に示すように、走行により得られる上述した種々の走行データを予め設定された単位時間毎に分割された単位データとして送信するように構成されている。
【0026】
本実施形態の制御装置30は、クライアント・サーバ型の無線通信を利用したものであり、路上を走行する車両V2から無線通信によって送信された走行データを、サーバSVを介して無線通信によって取得するように構成されている。
【0027】
前記サーバSVは、
図3に示すように、路上の車両V2から送信された単位データを取得するとともに、各単位データを結合して一連の走行データを生成する走行データ結合部SV1を有しており、前記走行データ結合部SV1が、一連の走行データをイントラネット等の無線通信によって制御装置30に送信するように構成されている。
【0028】
前記制御装置30は、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えたものであり、前記メモリの所定領域に格納されたプログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、
図3に示すように、分割データ生成部31、分割データ記憶部32、制御部33、通信障害検知部34としての機能を発揮するように構成されている。
【0029】
以下、前記各部31〜34の説明を兼ねて、前記制御装置30の動作について説明する。
【0030】
まず、分割データ生成部31は、路上を走行する車両V2から無線通信によって送信された走行データを、前記サーバSVを介して無線通信によって逐次取得するとともに、取得した一連の走行データを分割して分割データを生成する。
なお、本実施形態の分割データ生成部は、所定の条件で前記一連の走行データを分割して複数の分割データを生成するように構成されている。
【0031】
本実施形態では、試験の途中で無線通信が途切れたとしても、その後、無線通信が再開されることにより、途切れている間に路上の車両V2により得られた走行データが、サーバSVを介して分割データ生成部31に再送信されるようにしてある。つまり、本実施形態の分割データ生成部31は、全ての走行データを取得することができる。
このことに基づき、分割データ生成部31は、無線通信が途切れる前に取得した走行データと、無線通信が再開した後に取得する走行データとを合わせて、分割データを生成するように構成されている。
【0032】
上述した所定の条件は、少なくとも路上の車両V2が発進してから停止するまでの走行データが含まれるように設定されており、ここでは、
図4に示すように、路上の車両V2が発進してから停止するまでの時間、つまり車速がゼロの状態から再び車速がゼロの状態になるまでの時間毎に走行データを分割するように設定されている。
より詳細には、前記分割データ生成部31は、路上の車両V2から送信された一連の走行データのうち車速がゼロである停車時点を抽出するとともに、路上の車両V2が発進する直前の停車時点から当該車両V2が停止したときの停車時点までを分割データとして生成する。
そして、前記分割データ生成部31は、生成した各分割データを前記メモリの所定領域に設定されている分割データ記憶部32に逐次記憶させる。
【0033】
制御部33は、前記分割データ生成部31により生成された分割データを前記分割データ記憶部32から取得するとともに、各分割データに基づいて、自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御する。
本実施形態の制御部33は、供試体である車両V1の走行状態が、上述した所定の遅れ時間をおいて路上を走行する車両V2の走行状態を再現するように、前記自動運転装置10及び前記ダイナモメータ20を制御する。
【0034】
より具体的に前記制御部33は、分割データを生成された順に取得するとともに、各分割データの示す実走行をダイナモメータ20上の車両V1によって再現するように、自動運転装置10の運転ロボット11及びダイナモメータ20のモータに制御信号を送信する。
ここでは、前記制御部33は、分割データ生成部31により生成された分割データのうち、最新の分割データに基づいて前記制御信号を送信するように構成されている。これにより、路上における車両V2の実走行をほぼリアルタイムに再現するように、ダイナモメータ20上の車両V1を模擬運転することができる。
【0035】
通信障害検知部34は、路上を走行する車両V2とサーバSVとの間の無線通信、又は、サーバSVと制御装置30との無線通信の何れかに障害が生じた場合に、そのことを検知する。
より具体的には、何れかの無線通信が、上述した遅れ時間よりも長い間途切れた場合に、そのことを障害として検知するように構成されており、障害が検知されると障害検知信号を前記制御部33に送信する。
【0036】
そして、本実施形態では、前記制御部33が、前記障害検知信号を取得すると、供試体である車両V1が所定の安全運転状態となるように前記自動運転装置10及び前記ダイナモメータ20を制御する。
より詳細に前記制御部33は、障害検知信号を取得した場合、例えば車両V1の車速がゼロとなるように自動運転装置10及びダイナモメータ20に制御信号を送信するように構成されている。本実施形態の前記制御部33は、障害検知信号を受け取ると、そのとき既に分割データ記憶部32から取得した分割データを用いて自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御し、その制御が終了して車両V1の車速がゼロとなった状態を安全運転状態として、その安全運転状態を維持するように構成されている。
【0037】
次に、本実施形態の模擬運転システム100の具体的な動作について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
まず、路上を走行する車両V2は、走行データを予め定められた単位時間毎に分割し、この分割した単位データそれぞれを無線通信によってサーバSVに送信する。
【0039】
次に、サーバSVは、各単位データを結合して一連の走行データを生成するとともに、この一連の走行データを制御装置30に送信する。
【0040】
制御装置30は、取得した一連の走行データを所定の条件で分割して分割データを生成するとともに、各分割データに基づいて自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御する。
なお、前記分割データは、上述したように、路上の車両V2が発進してから停止するまでの時間、つまり車速がゼロの状態から再び車速がゼロの状態になるまでの時間毎に一連の走行データを分割したものである。
【0041】
続いて、制御装置30は、生成された分割データを全て用いたかどうかを判断するとともに、全ての分割データを用いた場合には、性能試験を終了する。
【0042】
そして、性能試験が継続している間は、前記制御装置30は、無線通信に障害が発生しているかを検知する。
具体的に本実施形態の制御装置30は、上述したように、遅れ時間よりも長く無線通信が途切れた場合に、そのことを障害として検知するように構成されている。
そして、制御装置30は、障害を検知した場合には、供試体である車両V1が安全運転状態になるように、自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御する。
【0043】
一方、無線通信の途切れた時間が前記遅れ時間よりも短い場合、つまり、遅れ時間以内に無線通信が再開された場合には、本実施形態の制御装置30は、無線通信が途切れている間に取得できなかった走行データを取得し始め、この走行データを用いて試験を中断させることなく、自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御する。
【0044】
このように構成された本実施形態に係る模擬運転システム100によれば、路上を走行する車両V2から走行データを無線通信によって取得しながら車両V1を模擬運転するので、模擬運転を路上における車両V2の実走行に追随させることができる。これにより、試験室において実走行をほぼリアルタイムで再現することができ、海外等の遠隔地に行って現地試験を行うことなく、路上を走行する車両V2の性能を試験することが可能となる。このことから、例えば遠隔地の車両V2が故障した場合には、試験室においてすぐに故障車の実走行を再現することができ、故障の原因を迅速に解明することが可能となる。
【0045】
また、制御部33が、無線通信に障害が生じた場合に、供試体である車両V1が安全運転状態となるように自動運転装置10又はダイナモメータ20を制御するので、無線通信の障害によって走行データを取得することができなくなったとしても、車両V1の暴走を防ぐことができ、試験時の安全性を担保することができる。
そのうえ、制御部33が各分割データに基づいて自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御するので、無線通信が途切れたとしても、そのときの制御に用いられている分割データは継続して使うことができる。これにより、無線通信が途切れてすぐに自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御できなることはなく、試験時の安全性を確実に担保することができる。
【0046】
また、制御装置30が、走行データを取得しながら自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御するので、オペレータが介在する操作を減らし、模擬運転や試験の自動化を図ることができる。
【0047】
さらに、分割データ生成部31としての機能を試験室の制御装置30に発揮させているので、サーバSVの設定や路上の車両V2に搭載された種々の機器の設定を変更することなく、分割データに関する設定を試験室で容易に変更することができる。
これにより、分割データの設定を変更するために、サーバSVや路上の車両V2のもとへ行く必要もない。
【0048】
分割データ生成部31が、無線通信が途切れる前に取得した走行データと、無線通信が再開した後に取得する走行データとを合わせて、分割データを生成するように構成されているので、無線通信が途切れたとしても、その後、無線通信が再開されることにより、模擬運転を継続させることができる。
【0049】
分割データ生成部31が、路上の車両V2が発進してから停止するまでの間に、当該車両V2から送信された一連の走行データを分割データとして生成するので、各分割データに基づく模擬運転が終了すると、ダイナモメータ20上の車両V1は必ず停止した状態となる。
これにより、試験の途中で無線通信が途切れたとしても、ダイナモメータ20上の車両V1が暴走することを未然に防ぐことができ、試験時の安全性をより向上させることができる。
【0050】
また、模擬運転システム100が、排ガス分析システム等とともに車両性能試験システムの一部を構成するので、前記排ガス分析システムにより得られた分析結果と、路上の車両V2に搭載された車載型排ガス分析装置により得られた分析結果とをほぼリアルタイムで比較して、例えば前記車載型排ガス分析装置の精度等を試験室で確認することができる。
【0051】
さらに、供試体である車両V1の走行状態を、路上における車両V2の走行状態に追随させているので、路上の車両V2に関する種々の走行データと、供試体である車両V1の種々の試験データとをリアルタイムに比較することができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、前記実施形態の制御装置30は、取得した走行データを分割して生成データを生成し、当該分割データに基づいて自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御するように構成されていたが、必ずしも分割データを生成する必要はない。
具体的には、制御装置30は、
図6に示すように、走行データを無線通信によって逐次取得する走行データ取得部35と、取得された走行データに基づいて自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御する制御部33と、例えばサーバSVから異常信号を取得して無線通信に障害が生じたことを検知する通信障害検知部34とを有しているものであっても良い。
そして、前記制御部33は、前記通信障害検知部35により障害が検知された場合に、自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御して、車両V1が所定の安全運転状態となるように車両V1を強制運転する。
【0054】
上述した安定運転状態とは、車両V1が停止した状態又は車両V1の車速が所定の速度となった状態である。
具体的には、例えば
図7(a)に示すように、制御部33は、前記通信障害検知部34により障害が検知された場合に、車両V1を車速がゼロになるまで減速させるように、自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御するように構成されたものが挙げられる。
また、例えば
図7(b)に示すように、制御部33は、前記通信障害検知部34により障害が検知された場合に、そのときの車両V1の車速を維持するように、自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御するように構成されていても構わない。
さらに、制御部33は、前記通信障害検知部34により障害が検知された場合に、車両V1の車速を所定の速度まで減速させてから、その車速を維持するように自動運転装置10及びダイナモメータ20を制御するようにしても良い。
【0055】
上述した構成によれば、路上の車両V2の走行をよりリアルタイムに実現することができるうえ、通信障害が検知された場合に、ダイナモメータ20上の車両V1が所定の安全運転状態となるように強制運転するので、試験時の安全性を担保することができる。
【0056】
また、前記実施形態では、分割データ生成部は、走行データを路上の車両が発進してから停止するまでの時間毎に分割していたが、路上の車両が発進してから次に発進するまでの時間毎に分割しても良いし、路上の車両が発進してから複数回停止するまでの時間毎に走行データを分割して構わない。さらに、分割データ生成部は、予め決められた一定の時間毎に走行データを分割するものであっても良い。
そのうえ、分割データ生成部は、例えば走行データを路上の車両が発進してから停止するまでの距離毎に分割するようにしても良いし、一定の距離毎に分割するようにしても良い。
【0057】
さらに、前記実施形態では、分割データ生成部及び分割データ記憶部としての機能を制御装置に発揮させているが、分割データ生成部及び分割データ記憶部の一方又は両方を、例えば、路上を走行する車両に搭載された装置やサーバに発揮させるようにしても良い。
もちろん、前記実施形態のサーバが有している走行データ結合部としての機能を、制御装置に発揮させるようにしても構わない。
【0058】
加えて、前記実施形態では、制御装置は、自動運転装置及びダイナモメータを制御するように構成されていたが、自動運転装置又はダイナモメータの何れか一方を制御するものであっても良い。
【0059】
そのうえ、前記実施形態の制御装置は、試験の途中で途切れた無線通信が再開された場合に、試験を途中から再開するように構成されているが、無線通信が再開された場合に、試験を始めからやり直すように構成されていても良い。
【0060】
また、前記実施形態の自動運転装置は、車両を自動で運転するものであったが、エンジンやパワートレイン等の車両の一部を自動で運転するものであっても良い。
このような自動運転装置としては、例えばエンジンの回転数を自動で制御するものや、パワートレインを自動で運転するものが挙げられる。
【0061】
さらに、前記実施形態の制御装置は、路上を走行する車両から無線通信によって送信された走行データを、サーバを介して無線通信で取得するものであったが、サーバと制御装置との間では必ずしも無線通信を行う必要はなく、制御装置が有線通信によってサーバから走行データを取得するようにしても良い。
【0062】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。