(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585977
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】半導体装置および発振回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20190919BHJP
H03L 7/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
H03B5/32 D
H03L7/00 210
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-185719(P2015-185719)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-60120(P2017-60120A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓介
【審査官】
石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−146571(JP,A)
【文献】
特開平11−298248(JP,A)
【文献】
特開2013−102371(JP,A)
【文献】
特開平09−093040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/00− 5/42
H03L 7/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電流が調整可能な電流源と、水晶振動子に接続され且つ前記電流源の出力電流が供給されるインバータと、を含み、第1の発振信号を生成する第1の発振回路と、
前記第1の発振信号の発振停止を検出する検出回路と、
前記第1の発振信号の発振停止が検出された場合に、第2の発振信号を生成する第2の発振回路と、
前記第2の発振信号のパルス数をカウントしたカウント値が、所定期間に対応する所定値を超えた場合にオーバーフロー信号を出力するカウンタと、
前記オーバーフロー信号に基づいて前記電流源の出力電流を増加させる電流制御回路と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
前記カウンタは、前記電流源の出力電流が増加された場合に前記カウント値をリセットし、リセット後における前記カウント値が前記所定値を超える度に前記オーバーフロー信号を出力し、
前記電流制御回路は、前記オーバーフロー信号が出力される度に前記電流源の出力電流を増加させる
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の発振信号及び前記第2の発振信号のいずれか一方を選択的に出力するセレクタ
を更に含む請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記セレクタは、前記電流源の出力電流が最大値まで増加された後、前記第1の発振信号の発振停止状態が前記所定期間継続した場合には前記第2の発振信号を出力し、前記電流源の出力電流が最大値に増加される前または前記電流源の出力電流が最大値に増加されてから前記所定期間が経過する前に前記第1の発振信号が発振状態となった場合に前記第1の発振信号を出力する
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電流制御回路は、前記オーバーフロー信号が出力される度にインクリメントされる指令値によって前記電流源の出力電流を制御し、
前記セレクタは、前記指令値が最大となった場合に、前記第2の発振信号を選択して出力する
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の発振回路は、CR発振回路である
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記カウンタが前記オーバーフロー信号を出力するカウント値に対応する値を書き込みおよび書き換え可能なレジスタを更に含み、
前記カウンタは、前記第2の発振信号のパルス数のカウント値が、前記レジスタに書き込まれた値に達した場合に、前記オーバーフロー信号を出力する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
出力電流が調整可能な電流源と、水晶振動子に接続され且つ前記電流源の出力電流が供給されるインバータと、を含む第1の発振回路から出力される第1の発振信号の発振停止を検出し、
前記第1の発振信号の発振停止が検出された場合に、第2の発振信号を生成し、
前記第2の発振信号のパルス数をカウントしたカウント値が、所定期間に対応する所定値を超えた場合にオーバーフロー信号を出力し、
前記オーバーフロー信号に基づいて前記電流源の出力電流を増加させる
発振回路の制御方法。
【請求項9】
前記電流源の出力電流が最大値まで増加された後、前記第1の発振信号の発振停止状態が前記所定期間継続した場合には前記第2の発振信号を出力し、前記電流源の出力電流が最大値に増加される前または前記電流源の出力電流が最大値に増加されてから前記所定期間が経過する前に前記第1の発振信号が発振状態となった場合に前記第1の発振信号を出力する
請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記所定期間を可変とする
請求項8または請求項9に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および発振回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子を用いた発振回路に関する技術として以下の技術が知られている。例えば、特許文献1には、CMOSインバータ、抵抗および水晶発振子を含む水晶発振器と、電源電圧源と水晶発振器との間に挿入されたMOSトランジスタと、水晶発振器における発振停止状態を検出して第1の制御信号を出力し、水晶発振器における発振状態を検出して第2の制御信号を出力して、第1および第2の制御信号を介してMOSトランジスタの導通状態を制御する発振停止検出器と、を含む水晶発振回路が記載されている。
【0003】
特許文献2には、並列接続された水晶振動子およびインバータと、インバータに電流を供給する電流源と、を備えた発振器において、電流源およびインバータの電源端子に接続され、出力要求信号が与えられたタイミングでオン状態に切り換えることにより電流源およびインバータの電源端子に所定の電圧を印加し、出力停止信号が与えられたタイミングでオフ状態に切り換えることにより電流源およびインバータの電源端子に所定の電圧を印加することを制限するスイッチを備えたものが記載されている。
【0004】
特許文献3には、外付けされる外部発振回路の発振動作を発振停止信号により制御し、外部発振回路からの信号を第1のクロック信号として出力する制御手段と、第2のクロック信号を生成し出力する発振手段と、第1のクロック信号または第2のクロック信号を切り替え信号に基づいて選択し、内部クロック信号として出力する選択手段を有する半導体装置が記載されている。
【0005】
特許文献4には、水晶振動子を用いた発振動作によりクロック信号を形成する水晶発振回路と、内部回路が正常に動作可能な周波数のクロック信号を形成するための内蔵発振器と、水晶発振回路で形成されたクロック信号の周波数が、内部回路の正常動作の周波数範囲よりも上昇したことを検出可能な異常高速発振検出回路と、異常高速発振検出回路での検出結果に基づいて、水晶発振回路で形成されたクロック信号に代えて、内蔵発振器で形成されたクロック信号を内部回路に供給するための制御回路と、を含む半導体集積回路装置が記載されている。
【0006】
特許文献5には、水晶振動子に並列接続されたインバータの高電位側および低電位側の各々に複数の異なる利得パスを設けることにより、インバータにおける増幅利得を可変としたCMOS発振器回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−216644号公報
【特許文献2】特開2009−290380号公報
【特許文献3】特開2008−72383号公報
【特許文献4】特開2013−102371号公報
【特許文献5】特開平6−224637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水晶発振回路の重要な特性の1つである発振余裕度は、水晶発振回路から出力される発振信号が、発振している状態から発振停止に至るまでのマージン(余裕)を表したものであり、水晶振動子の抵抗値(信号を減衰する能力)に対し、水晶振動子を除く回路側がどれだけの信号増幅能力を有しているかを示す指標である。理論上は発振余裕度が1よりも大であれば発振可能であるが、発振余裕度が1に近い場合には、発振しない、または発振開始時間が異常に長くなり、セットが正常に動作しない場合がある。これらの発振不良は、発振余裕度を大きくすることによって改善できるが、発振余裕度を大きくすると回路電流が増大する。すなわち、発振余裕度と回路電流とはトレードオフの関係にある。
【0009】
従来の水晶発振回路では、ノイズやプリント基板の結露等の一時的な外的要因によって発振が停止するという問題があった。水晶発振回路において発振が停止した場合に内蔵CR発振回路の出力信号を水晶発振回路の出力信号に代えて用いるという対処方法が考えられる。しかしながら、CR発振回路における発振周波数の精度は、水晶発振回路における発振周波数の精度よりも著しく低く、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter)などの高い周波数精度が要求されるシステムにおいては、上記の対処方法を適用することは好ましくないと考えられる。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、水晶発振回路によって生成される発振信号が発振停止状態となった場合に、回路電流の増大を最小限に抑えつつ発振停止状態を解消することができる半導体装置および発振回路の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に係る半導体装置は、出力電流が調整可能な電流源と、水晶振動子に接続され且つ前記電流源の出力電流が供給されるインバータと、を含み、第1の発振信号を生成する第1の発振回路と、
前記第1の発振信号の発振停止を検出する検出回路と、前記第1の発振信号の発振停止が検出された場合に、第2の発振信号を生成する第2の発振回路と、前記第2の発振信号のパルス数をカウントしたカウント値が、所定期間に対応する所定値を超えた場合にオーバーフロー信号を出力するカウンタと、前記オーバーフロー信号に基づいて前記電流源の出力電流を増加させる電流制御回路と、を含む。
【0012】
本発明の第2の態様に係る発振回路の制御方法は、出力電流が調整可能な電流源と、水晶振動子に接続され且つ前記電流源の出力電流が供給されるインバータと、を含む第1の発振回路から出力される第1の発振信号の発振停止
を検出し、前記第1の発振信号の発振停止が検出された場合に、第2の発振信号を生成し、前記第2の発振信号のパルス数をカウントしたカウント値が、所定期間に対応する所定値を超えた場合にオーバーフロー信号を出力し、前記オーバーフロー信号に基づいて前記電流源の出力電流を増加させることを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水晶発振回路によって生成される発振信号が発振停止状態となった場合に、回路電流の増大を最小限に抑えつつ発振停止状態を解消することができる半導体装置および発振回路の制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の構成を示す図である。
【
図4】発振余裕度と発振開始時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の構成を示す図である。半導体装置100は、半導体装置100の外部に接続される水晶振動子13およびキャパシタCd、Cgを含んで構成される水晶発振回路10を有する。水晶振動子13およびキャパシタCgの一端は、半導体装置100の外部接続端子31に接続され、水晶振動子13の他端およびキャパシタCdの一端は、半導体装置100の外部接続端子32に接続されている。
【0017】
水晶発振回路10は、半導体装置100の内部に収容される部分として、インバータ12、抵抗素子Rfおよび電流源11を有する。インバータ12および抵抗素子Rfは、外部接続端子31、32を介して、水晶振動子13に並列接続されている。電流源11から出力される出力電流I1は、インバータ12に供給される。電流源11は、後述する電流制御回路24から供給されるトリミングコード値S6に応じた大きさの出力電流I1を出力する。すなわち、出力電流I1は、可変である。水晶発振回路10の発振余裕度は、電流源11の出力電流I1が大きくなる程大きくなる。水晶発振回路10は、インバータ12の出力端から第1の発振信号S1を出力する。第1の発振信号S1は、発振停止検出回路21およびセレクタ26の一方の入力端に入力される。
【0018】
発振停止検出回路21は、水晶発振回路10から供給される第1の発振信号S1が発振停止状態である場合には、ハイレベルの検出信号S2を出力し、第1の発振信号S1が発振状態である場合には、ローレベルの検出信号S2を出力する。ここで、第1の発振信号S1が発振停止状態であるとは、第1の発振信号S1が発振していない状態および第1の発振信号S1の振幅が所定値よりも小さい場合を含む。検出信号S2は、CR発振回路22、AND回路25の一方の入力端およびカウンタ23に供給される。発振停止検出回路21は、電流制御回路24から供給されるリセット信号S7に応じて第1の発振信号S1の発振停止状態の検出動作を一旦終了させた後、検出動作を再開する。
【0019】
CR発振回路22は、抵抗素子とキャパシタを含んで構成される発振回路である。CR発振回路22は、第1の発振信号S1が発振停止状態にあることを示すハイレベルの検出信号S2が入力されている間、第2の発振信号S3を出力する。第2の発振信号S3の周波数は、第1の発振信号S1の周波数と略一致するように調整されているが、周波数精度は、第1の発振信号S1の方が、第2の発振信号S3よりも高い。第2の発振信号S3は、セレクタ26の他方の入力端およびカウンタ23に入力される。
【0020】
カウンタ23は、検出信号S2が第1の発振信号S1が発振停止状態であることを示すハイレベルを呈する間、第2の発振信号S3のパルス数をカウントアップする。カウンタ23は、第2の発振信号S3のパルス数のカウント値が所定値に達した場合に、オーバーフロー信号S4を出力する。すなわち、発振信号S1の発振停止状態が所定期間継続した場合にオーバーフロー信号S4が出力される。カウンタ23は、電流制御回路24から供給されるリセット信号S7に応じてカウント値をリセットし、リセット後における第2の発振信号S3のパルス数のカウント値が所定値を超える度にオーバーフロー信号S4を出力する。オーバーフロー信号S4は、電流制御回路24に供給される。
【0021】
電流制御回路24は、電流源11の出力電流I1の大きさを指定するトリミングコード値S6を出力する。電流制御回路24は、カウンタ23からオーバーフロー信号S4が出力される度にトリミングコード値S6を1ステップずつインクリメントする。これにより、電流源11の出力電流I1は、段階的に増加する。電流制御回路24は、トリミングコード値S6をインクリメントした後に、リセット信号S7を発振停止検出回路21およびカウンタ23に供給することで、これらをリセットする。電流制御回路24は、電流源11の出力電流I1を最大とするトリミングコード値をさらに1ステップインクリメントした値をトリミングコード値の最大値として生成し得る。電流制御回路24は、トリミングコード値が最大となった場合にハイレベルに遷移する限界報知信号S8をAND回路25の他方の入力端に供給する。
【0022】
AND回路25は、限界報知信号S8と検出信号S2の論理積を選択信号S9として出力し、選択信号S9をセレクタ26に供給する。すなわち、AND回路25は、電流源11の出力電流I1を最大としても第1の発振信号S1の発振停止状態が継続している場合にハイレベルの選択信号S9を出力する。一方、AND回路25は、第1の発振信号S1が発振状態である場合には、ローレベルの選択信号S9を出力する。
【0023】
セレクタ26は、ローレベルの選択信号S9が入力された場合(すなわち、第1の発振信号S1が発振状態である場合)には、一方の入力端に入力される第1の発振信号S1を選択し、これを出力端から出力する。一方、セレクタ26は、ハイレベルの選択信号S9が入力された場合(すなわち、電流源11の出力電流I1を最大としても第1の発振信号S1の発振停止状態が継続している場合)には、他方の入力端に入力される第2の発振信号S3を選択し、これを出力端から出力する。セレクタ26から選択的に出力される第1の発振信号S1および第2の発振信号S3は、半導体装置100内の他の回路または半導体装置100の外部の回路に供給され得る。
【0024】
以下に、半導体装置100の動作について説明する。
図2は、半導体装置100の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図2には、上から順に、第1の発振信号S1、検出信号S2、第2の発振信号S3、カウンタ23のカウント値、オーバーフロー信号S4、トリミングコード値S6、リセット信号S7および電流源11の出力電流I1が示されている。
【0025】
時刻t1において、水晶発振回路10から出力された第1の発振信号S1が発振停止状態となると、発振停止検出回路21は、ハイレベルの検出信号S2を出力する。検出信号S2がハイレベルに遷移すると、CR発振回路22は、動作を開始し、第2の発振信号S3を生成する。
【0026】
カウンタ23は、検出信号S2が第1の発振信号S1が発振停止状態であることを示すハイレベルを呈する間、CR発振回路22から出力される第2の発振信号S3のパルス数をカウントアップする。カウンタ23は、第2の発振信号S3のパルス数のカウント値が、時刻t2において所定値に達すると、オーバーフロー信号S4を出力し、これを電流制御回路24に供給する。
【0027】
電流制御回路24は、オーバーフロー信号S4を受信すると、トリミングコード値を初期値である[A]から1ステップインクリメントして[A+1]とする。これにより、時刻t3において、電流源11の出力電流I1は、1ステップ増加する。電流制御回路24は、トリミングコード値をインクリメントした後、リセット信号S7を発振停止検出回路21およびカウンタ23に供給する。
【0028】
発振停止検出回路21は、リセット信号S7を受信すると、第1の発振信号S1における発振停止状態の検出動作を一旦リセットする。これにより、検出信号S2は、一旦ローレベルに遷移する。これにより、CR発振回路22は、第2の発振信号S3の出力を一旦停止させる。発振停止検出回路21は、その後、検出動作を再開する。カウンタ23は、リセット信号S7を受信すると、第2の発振信号S3のパルス数のカウント値をリセットする。
【0029】
図2に示すように、電流源11の出力電流I1が、トリミングコード値[A+1]に対応する大きさに増加された後においても発振信号S1において発振停止状態が継続している場合には、検出信号S2は再びハイレベルに遷移する。これにより、CR発振回路22から第2の発振信号S3が出力され、カウンタ23は、第2の発振信号S3のパルス数のカウントを改めて実施する。カウンタ23のカウント値が、時刻t4において再び所定値に達すると、カウンタ23は、オーバーフロー信号S4を再度出力し、これを電流制御回路24に供給する。
【0030】
電流制御回路24は、オーバーフロー信号S4を再度受信すると、トリミングコード値を[A+1]から更に1ステップインクリメントして[A+2]とする。これにより、時刻t5において、電流源11の出力電流I1は、更に1ステップ増加する。電流制御回路24は、トリミングコード値をインクリメントした後、リセット信号S7を発振停止検出回路21およびカウンタ23に供給する。
【0031】
図2に示すように、電流源11の出力電流I1が、トリミングコード値[A+2]に対応する大きさに増加された後、カウンタ23のカウント値が所定値に達する前の時刻t6において、第1の発振信号S1の発振停止状態が解消され、発振状態となった場合には、検出信号S2はローレベルに遷移し、CR発振回路22およびカウンタ23は、その動作を停止させる。そして、電流制御回路24において、トリミングコード値[A+2]が保持される。これにより、水晶発振回路10を構成するインバータ12には、トリミングコード値[A+2]に対応する大きさの電流の供給が維持される。検出信号S2がローレベルとなることで、AND回路25の出力信号である選択信号S9はローベルとなり、セレクタ26は、水晶発振回路10によって生成された第1の発振信号S1を選択して出力する。
【0032】
一方、電流源11の出力電流I1が調整範囲の最大値にまで増加された後においても、第1の発振信号S1の発振停止状態が解消されない場合には、電流制御回路24は、カウンタ23から出力されるオーバーフロー信号S4基づいて、トリミングコード値をさらに1ステップインクリメントした値をトリミングコード値の最大値として生成する。電流制御回路24は、トリミングコード値が最大となった場合に、ハイレベルを呈する限界報知信号S8を生成し、これをAND回路25に供給する。これにより、AND回路25の出力信号である選択信号S9はハイレベルとなり、セレクタ26は、CR発振回路22によって生成された第2の発振信号S3を選択して出力する。
【0033】
以上のように、本発明の実施形態に係る半導体装置100は、第1の発振信号S1の発振停止状態が所定期間継続した場合に、電流源11の出力電流I1を増加させる。また、電流源11の出力電流I1が増加された後、第1の発振信号S1の発振停止状態が所定期間継続した場合に電流源11の出力電流I1を更に増加させる処理を繰り返し実施する。すなわち、半導体装置100は、第1の発振信号S1の発振停止状態が継続している間、電流源11の出力電流I1を段階的に増加させることにより、発振停止状態の解消を試みる。
【0034】
本発明の実施形態に係る半導体装置100によれば、水晶発振回路10によって生成される第1の発振信号S1が、ノイズや基板の結露等の外的要因によって発振停止状態になった場合でも、電流源11の出力電流I1を増加させ、発振余裕度を大きくする方向に自動調整されるので、発振停止状態を自動的に解消させることができる。従って、高信頼性が要求させるシステムに本実施形態に係る半導体装置100を適用することが可能である。
【0035】
また、本発明の実施形態に係る半導体装置100によれば、電流源11の出力電流I1は、段階的に増加するので、出力電流I1の増加量を、発振停止状態を解消させるために必要な最小限の増加量に抑えることができる。すなわち、本実施形態に係る半導体装置100によれば、回路電流の増大を最小限に抑えつつ第1の発振信号S1における発振停止状態を解消させることができる。
【0036】
ここで、水晶発振回路の発振余裕度は、水晶発振回路を構成するキャパシタの種類、水晶発振回路を搭載するプリント基板の容量および配線パターン等の影響を大きく受ける。このため、メーカ側で設定された発振余裕度は、ユーザ側で再現されない場合がある。従って、発振回路の信頼性を重視する場合には、メーカ側で発振余裕度を高めに設定しておくという対処方法が考えられる。しかしながら、この場合、回路電流が規格値を超えてしまう場合がある。また、ユーザ側で、所望の発振余裕度が得られるように、キャパシタの選定や、プリント基板の配線パターンの調整を何度も繰り返すことがなされていた。
【0037】
本実施形態に係る半導体装置100によれば、キャパシタの種類、プリント基板の容量および配線パターン等が変化した場合でも、第1の発振信号S1が発振状態を維持するように、電流源11の出力電流I1が自動調整されるので、発振余裕度を高めに設定しておくといった対処が不要となり、回路電流の増大を抑えることができる。また、本実施形態に係る半導体装置100によれば、発振余裕度は、外的要因に対して適応的に調整されるので、キャパシタの選定やプリント基板の配線パターンの調整を何度も繰り返すといった作業が不要となる。
【0038】
また、本発明の実施形態に係る半導体装置100は、CR発振回路22を内蔵し、電流源11の出力電流I1が最大値に増加された後、第1の発振信号S1の発振停止状態が所定期間継続した場合には、CR発振回路22によって生成された第2の発振信号S3を出力する。一方、半導体装置100は、電流源11の出力電流I1が最大値に増加される前または電流源11の出力電流I1が最大値に増加されてから所定期間が経過する前に第1の発振信号S1が発振状態となった場合には、水晶発振回路10によって生成された第1の発振信号S1を出力する。
【0039】
すなわち、本実施形態に係る半導体装置100によれば、第1の発振信号S1における発振停止状態の解消を試みた結果、発振停止状態が解消されない場合に、CR発振回路22による第2の発振信号S3が出力される。このように、CR発振回路22によって生成される第2の発振信号S3を補助的に使用することで、システムが停止してしまうことを防止することができる。また、CR発振回路22によって生成される第2の発振信号S3が出力されるのは、第1の発振信号S1において、発振停止状態が解消されない場合に限られるので、第1の発振信号S1が発振停止状態になった場合に直ちに第2の発振信号S3を出力する場合と比較して、周波数精度のより高い第1の発振信号S1の使用率を高めることができる。
【0040】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置101の構成を示す図である。半導体装置101は、カウンタ23がオーバーフロー信号S4を出力するカウント値に対応する値を書き込みおよび書き換え可能なコンペアレジスタ27を更に含む。すなわち、半導体装置101において、カウンタ23は、第2の発振信号S3のパルス数のカウント値が、コンペアレジスタ27に書き込まれた値に達した場合に、オーバーフロー信号S4を出力する。なお、カウンタ23とコンペアレジスタ27との関係は、一般的なMCUに搭載されるコンペアマッチタイマと略同じ構成となっている。
【0041】
また、本実施形態に係る半導体装置101において、電流制御回路24から出力されるトリミングコード値を半導体装置101の外部から設定することが可能となっている。すなわち、電流源11の出力電流I1の大きさを半導体装置101の外部から設定することが可能となっている。
【0042】
コンペアレジスタ27への値の書き込み、書き換えおよびトリミングコード値の設定は、例えば、半導体装置101の外部に設けられたCPU200からの指令に基づいて行うことが可能である。コンペアレジスタ27は、外部接続端子33およびデータバス210を介してCPU200に接続可能となっている。同様に、電流制御回路24は、外部接続端子34およびデータバス210を介してCPU200に接続可能となっている。また、カウンタ23から出力されるオーバーフロー信号S4は、外部接続端子35およびデータバス210を介してCPU200に供給可能となっている。
【0043】
本実施形態に係る半導体装置101によれば、コンペアレジスタ27に例えば1000を書き込んだ場合には、カウンタ23は、第2の発振信号S3のパルス数を1000カウントしたときにオーバーフロー信号S4を出力する。すなわち、本実施形態に係る半導体装置101によれば、第1の発振信号S1が発振停止状態となってからオーバーフロー信号S4が出力されるまでの時間および電流源11の出力電流I1が増加されてからオーバーフロー信号S4が出力されるまでの時間(以下、これらをオーバーフロー時間と称する)を、半導体装置101の外部から任意の時間に設定することが可能である。
【0044】
本実施形態に係る半導体装置101によれば、電流源11の出力電流I1を一定に維持したまま、コンペアレジスタ27に書き込む値を順次変化させ、各書込み値に対してオーバーフロー信号S4が出力されるか否かをモニタすることで、第1の発振信号S1における発振開始時間を推定することができる。ここで、発振開始時間とは、
図4に示すように、水晶発振回路10が起動またはリセットされてから、第1の発振信号S1の振幅が所定値に達するまでの時間である。例えば、電流源11の出力電流I1を一定に維持した状態で、コンペアレジスタ27に1000を書き込んだ場合にオーバーフロー信号S4が出力され、コンペアレジスタ27に1100を書き込んだ場合にオーバーフロー信号S4が出力されない場合には、水晶発振回路10における当該出力電流I1での発振開始時間は、1000カウントと1100カウントの間の時間であると推定できる。
【0045】
ここで、水晶発振回路10における発振開始時間と発振余裕度とは相関があることが知られている。例えば、
図4に示すように、発振余裕度が相対的に小さい場合における発振開始時間T1は、発振余裕度が相対的に大きい場合にける発振開始時間T2よりも長くなる。すなわち、本実施形態に係る半導体装置101によれば、発振開始時間と発振余裕度との関係を予め取得しておくことで、上記のようにして推定した発振開始時間から発振余裕度を推定することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る半導体装置101によれば、オーバーフロー時間を任意の値に設定することができるので、発振開始時間の上限をユーザ側で設定することができる。換言すれば、コンペアレジスタ27に書き込む値によって、水晶発振回路10の発振余裕度の下限をユーザ側で設定することができ、ユーザの利便性を高めることができる。また、本実施形態に係る半導体装置101によれば、キャパシタCd、Cgおよびプリント基板の配線パターンの影響を加味した状態で発振余裕度を決定することができるので、所望の発振余裕度を得るために、部品の選定や配線パターンの変更を繰り返すといった作業が不要となる。
【0047】
なお、水晶発振回路10は、本発明における第1の発振回路の一例である。発振停止検出回路21、CR発振回路22、カウンタ23、電流制御回路24、AND回路25およびセレクタ26を含む回路群は、本発明における制御回路の一例である。発振停止検出回路21は、本発明における検出回路の一例である。CR発振回路22は、本発明における第2の発振回路の一例である。カウンタ23は、本発明におけるカウンタの一例である。電流制御回路24は、本発明における電流制御回路の一例である。セレクタ26は、本発明におけるセレクタの一例である。コンペアレジスタ27は、本発明におけるレジスタの一例である。
【符号の説明】
【0048】
10 水晶発振回路
11 電流原
12 インバータ
13 水晶振動子
21 発振停止検出回路
22 CR発振回路
23 カウンタ
24 電流制御回路
26 セレクタ
27 コンペアレジスタ
100、101 半導体装置