(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586029
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部品およびそれを用いた半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
C23C 24/04 20060101AFI20190919BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20190919BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
C23C24/04
H01L21/302 101G
H01L21/205
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-27377(P2016-27377)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-145446(P2017-145446A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】日野 高志
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆
(72)【発明者】
【氏名】安藤 信
(72)【発明者】
【氏名】白濱 昌一
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−087341(JP,A)
【文献】
特表2007−508690(JP,A)
【文献】
特開2005−330517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/04
H01L 21/205
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に窒化物粒子または酸窒化物粒子を堆積させた窒化物粒子膜を設けた半導体製造装置用部品において、窒化物粒子は、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸窒化珪素、酸窒化アルミニウムから選ばれる1種であり、窒化物粒子の平均粒径が2μm以下であり、
基材と窒化物粒子膜が直接に接する界面をスポット径1μmでXRD分析したとき、窒化物の最大ピークに対する酸化物の最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が0.01以下(ゼロ含む)であることを特徴とする半導体製造装置用部品。
【請求項2】
基材と窒化物粒子膜が直接に接する界面をスポット径1μmでXRD分析したとき、窒化物の最大ピークに対する酸化物の最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が0.001以下(ゼロ含む)ことを特徴とする請求項1記載の半導体製造装置用部品。
【請求項3】
窒化物粒子の平均粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部品。
【請求項4】
窒化物粒子膜の膜厚が1μm以上200μm以下、膜密度が90%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部品。
【請求項5】
基材が、金属部材またはセラミックス部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部品。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部品を搭載したことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項7】
半導体の製造工程がCVD工程、PVD工程、エッチング工程のいずれか1種を具備することを特徴とする請求項6記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概ね、半導体製造装置用部品およびそれを用いた半導体製造装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程は、CVD(化学蒸着)工程、PVD(物理蒸着)工程、エッチング工程など様々な工程が使われている。シリコン基板上に導体薄膜の形成、絶縁膜の形成、露光、エッチング、などを行って半導体素子を製造している。
CVD工程は、反応系分子の気体、または、反応系分子の気体と不活性のキャリアーとの混合気体を基板上に流し、加水分解、自己分解、光分解、酸化還元などの反応による生成物を基板上に蒸着させる工程である。CVDは、反応温度を比較的低くすることができる。また、CVD工程では、プラズマ放電や光照射を利用して薄膜を形成することもできる。
PVD工程は、気相中で基板上に物理的手法により薄膜を堆積する方法である。PVD法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームデポジション法、スパッタリング法などが挙げられる。また、真空中や減圧下で加熱や電子ビームを使って薄膜を形成する。
また、エッチング工程は、薄膜をパターニングする工程である。エッチングには、大きく分けてウエットエッチングとドライエッチングがある。ウエットエッチングは、酸性またはアルカリ性の薬液を用いる方法である。また、ドライエッチングは、プラズマ中の反応種(イオン、高速中性粒子、ラジカルなど)を用いる方法である。そのため、ドライエッチングのことをプラズマエッチングともいう。
ウエットエッチングは、薬液による化学反応を利用しているため、広範囲のエッチングが可能となる。ドライエッチングは、化学反応、物理反応などの反応機構を制御することができる。このため、ドライエッチングは、ミクロン(μm)オーダー以下の微細加工に適している。
【0003】
このように半導体素子の製造工程は、CVD工程、PVD工程、エッチング工程を組合せて行われている。近年は配線の微細化に伴いプラズマなどの熱を伴う工程が主体になっている。また、工程の複雑化に伴い枚葉式の半導体製造装置が主体になっている。枚葉式の半導体製造装置は、それぞれの部屋でエッチング工程などの工程を行う。
従来の半導体製造装置用部品は、特許第4585260号公報(特許文献1)に示されたようなY
2O
3などの金属酸化物粒子からなる溶射膜を具備していた。Y
2O
3は耐プラズマ性に優れているため、パーティクルの発生を抑制できている。
金属酸化物粒子の溶射膜を具備する半導体製造装置用部品は、耐プラズマ性が優れている。一方で、金属酸化物は材料自体の物性として熱伝導率が低い。熱伝導率の低い材料でできた溶射膜は放熱性が低い。熱伝導率の低い溶射膜は、半導体製造装置を稼働した際の熱を十分に放熱することができない。
特許第5566891号公報(特許文献2)には、窒化物粒子からなる溶射膜を具備する半導体製造装置用部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4585260号公報
【特許文献2】特許第5566891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のように窒化物粒子(AlNなど)を使うことにより、パーティクルの抑制、ラジカル(塩素、フッ素など)への耐久性が向上することが開示されている。
一方で、窒化物粒子を加熱する溶射法では、大気中の酸素と反応して酸化物が形成され易くなっている。窒化物粒子膜中に、酸化物が存在すると、膜の熱伝導率が低下する。特に、基材と窒化物粒子膜の界面に酸化物が存在すると、放熱性への悪影響が大きかった。
本発明が解決しようとする課題は、放熱性の良い窒化物粒子膜を設けた半導体製造装置用部品を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる半導体製造装置用部品は、基材上に窒化物粒子または酸窒化物粒子を堆積させた窒化物粒子膜を設けた半導体製造装置用部品において、基材と窒化物粒子膜の界面をXRD分析したとき、窒化物の最大ピークに対する酸化物の最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が0.1以下(ゼロ含む)であることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態にかかる半導体製造装置用部品の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態にかかる半導体製造装置用部品は、基材上に窒化物粒子または酸窒化物粒子を堆積させた窒化物粒子膜を設けた半導体製造装置用部品において、基材と窒化物粒子膜の界面をXRD分析したとき、窒化物の最大ピークに対する酸化物の最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が0.1以下(ゼロ含む)であることを特徴とするものである。
図1に実施形態にかかる半導体製造装置用部品の一例を示した。図中、1は半導体製造装置用部品、2は基材、3は窒化物粒子(酸窒化物粒子)、4窒化物粒子膜、5は界面、である。
【0009】
基材上に、窒化物粒子または酸窒化物粒子を堆積した窒化物粒子膜を具備している。窒化物粒子は、金属窒化物または複合窒化物が挙げられる。酸窒化物粒子は、金属酸窒化物または複合酸窒化物が挙げられる。金属窒化物と金属酸窒化物を比較すると金属窒化物の方が熱伝導率が高いので好ましい。
また、窒化物粒子または酸窒化物粒子としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸窒化珪素、酸窒化アルミニウム、酸窒化ホウ素から選ばれる1種であることが好ましい。
また、窒化物粒子または酸窒化物粒子は平均粒径2μm以下であることが好ましい。さらには平均粒径1μm以下であることが好ましい。平均粒径を小さくすることにより、空隙の小さい緻密な窒化物粒子膜を得ることができる。なお、平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、0.01μm以上が好ましい。あまり、粒径が小さいと、成膜工程の管理が煩雑になる。そのため、平均粒径は、2μm以下、さらには0.01〜1μmの範囲が好ましい。
【0010】
また、平均粒径の測定方法は、窒化物粒子膜の任意の断面を拡大写真に撮る。拡大写真は、SEM(走査型電子顕微鏡Scanning Electron Microscope)写真を用いる。拡大写真に写る窒化物粒子の長径を測定し、粒径を求める。窒化物粒子50粒分の平均値を平均粒径と呼ぶ。
実施形態にかかる半導体製造装置用部品は、基材と窒化物粒子膜の界面をXRD分析したとき、窒化物の最大ピークに対する酸化物の最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が0.1以下(ゼロ含む)であることを特徴とする。
基材と窒化物粒子膜の界面とは、基材と窒化物粒子(酸窒化物粒子含む)が直接に接する箇所である。XRD分析する際に、界面を含む領域にX線を照射して測定するものとする。X線を照射するスポット径は100μm以下とする。また、スリットを用いてスポット径を1μm程度にしても良い。
また、XRDの測定条件は、Cuターゲット(Cu−Kα)、管電圧40kV、管電流40mA、走査範囲(2θ)20〜100°にて行うものとする。
【0011】
窒化物の最大ピークとは窒化物粒子膜を構成する窒化物粒子または酸窒化物粒子に基づくピークの中で最も大きなピークを示す。酸化物の最大ピークとは、窒化物または酸窒化物のピークとは別に検出される酸化物のピークの中で最も大きなピークである。
窒化物の最大ピークに対する酸化物の最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が0.1以下(ゼロ含む)であるということは、結晶になっている酸化物が少ないことを示している。XRD分析は、結晶化合物に特有のピークを検出するものである。ピークを検出することにより、結晶化合物の有無を確認できる。また、結晶化合物の存在量に応じてピークの高さが変わるものである。特定の結晶化合物の存在量が多いと、それに応じたピークが高くなる。メインピークとなる最大ピークは、このような傾向が強い。
【0012】
結晶性酸化物は、窒化物粒子または酸窒化物粒子に比べて熱伝導率が低い。また、結晶性酸化物が多いと、結晶性酸化物同士の粒界が多くなる。酸化物同士の粒界が増えると熱抵抗領域となり、放熱性が低下する。最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が0.1以下(ゼロ含む)にすることにより、基材と窒化物粒子膜の界面に存在する結晶性酸化物を少なくできる。これにより、窒化物粒子膜から基材への放熱性を向上させることができる。
最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が0.1以下(ゼロ含む)、さらには0.01以下(ゼロ含む)であることが好ましい。最大ピークの比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)がゼロに近いほど結晶性酸化物が少ないことを示す。
また、窒化物粒子膜の膜厚が1μm以上200μm以下であることが好ましい。膜厚が1μm未満では膜の耐久性が不十分となるおそれがある。また、200μmを超えて厚いと、製造コストの増大を招くおそれがある。そのため、窒化物粒子膜の膜厚は1μm以上200μm以下、さらには3μm以上100μm以下が好ましい。
また、膜密度は90%以上であることが好ましい。膜密度とは、窒化物粒子膜中に窒化物粒子がどれだけ詰まっているかを示すものである。言い換えると、窒化物粒子膜中の気孔が少ないことを示す。つまり、膜密度90%以上ということは気孔率10vol%以下であることを示す。膜密度が90%未満と小さいと膜の強度が低下するおそれがある。そのため、膜密度は90%以上、さらには95%以上100%以下が好ましい。
また、膜密度の測定方法は、窒化物粒子膜の任意の断面において、単位面積「膜厚×50μm」をSEM観察する。そのSEM写真に写る気孔の合計面積を単位面積で割った値を気孔率(vol%)とする。任意の単位面積3箇所の平均値を気孔率(vol%)とし、100から引いた値を膜密度とする。
【0013】
また、基材が、金属部材またはセラミックス部材であることが好ましい。実施形態に係る半導体製造装置用部品は上記窒化物粒子膜を具備していれば、その基材の材質が限定されるものではない。その一方で、基材に金属部材またはセラミックス部材を用いることにより、半導体製造装置用部品の放熱性や強度を向上させることができる。
金属部材としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、珪素(Si)またはこれらを主成分とする合金が挙げられる。また、セラミックス部材は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物またはこれらの複合化合物(酸窒化物など)が挙げられる。また、セラミックス部材は、必要に応じ、焼結助剤を添加したものであってもよい。
【0014】
以上のような半導体製造装置用部品は、ラジカルへの耐久性に優れ、その上で放熱性がよい。そのため、様々な半導体製造装置に用いることができる。半導体製造装置としては、CVD工程、PVD工程、エッチング工程のいずれか1種が好ましい。
CVD工程は、化学蒸着(chemical vapor deposition)を用いた工程のことである。CVD法は、反応系分子の気体(または反応系分子と不活性キャリアーとの混合気体)を加熱した基材上に流し、加水分解、自己分解、光分解、酸化還元、置換などの反応による生成物を基材上に蒸着させる成膜方法である。また、反応を促進させるために、プラズマ放電を利用するものをプラズマCVDという。プラズマCVDは、プラズマにより励起させているので成膜スピードを早くすることができる。
また、PVD工程は、物理蒸着(physical vapor deposition)は、真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱し気化もしくは昇華して、離れた位置に置かれた基材表面に付着させ、薄膜を形成するというものである。蒸着材料や基板の種類により、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法で加熱される。PVD法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームデポジション法などが挙げられる。
エッチング(Etching)工程は、化学薬品などによる腐食作用を利用した表面加工技術である。例えば、基材上に金属膜を形成し、必要な部分にエッチングレジストを塗布することにより、レジストを塗布していない箇所の金属薄膜を残すことができる。また、エッチング工程には、ウエットエッチング、ドライエッチングなどがある。
また、ウエットエッチングは、液体によるエッチングである。また、ドライエッチング(dry etching)は反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法である。また、反応性イオンエッチングは、反応性ガスをプラズマにより反応性ガスをイオン化・ラジカル化してエッチングする方法である。反応性イオンエッチングはドライエッチングの一種である。
【0015】
半導体製造工程では、CVD工程、PVD工程、エッチング工程の1種または2種以上を用いる。近年の半導体の製造工程では、微細加工や処理スピードの観点からプラズマを使った工程が使われるようになっている。プラズマを使った工程としては、プラズマCVD工程、スパッタリング工程、ドライエッチング工程が挙げられる。実施形態に係る半導体製造装置用部品は、耐プラズマ性に優れている。また、放熱性も優れている。プラズマの使用は加熱を伴うものである。半導体製造装置用部品の放熱性が高いと、熱を逃がし易くなる。放熱性が高くなると、窒化物粒子膜と基材の熱応力を緩和できるため半導体製造装置用部品の耐久性が高くなる。そのため、半導体の製造工程を歩留り良く行うことができる。また、半導体製造装置用部品の耐久性が高いため、交換頻度を少なくすることができる。
また、半導体製造装置用部品は、半導体製造装置内に搭載される部品であればよい。このような部品としては、マスク材、内壁、静電チャック、サセプタ、電極部材などが挙げられる。
【0016】
次に実施形態に係る半導体製造装置用部品の製造方法について説明する。実施形態に係る半導体製造装置用部品は上記構成を有していれば、その製造方法は特に限定されるものではないが歩留り良く得るための方法として次の方法が挙げられる。
窒化物粒子を堆積させる成膜方法としては、必要以上に原料粉末を熱しない成膜方法が好ましい。このような成膜方法としては、エアロゾルデポジション法(AD法)、超音速フリージェット−PVD法(SFJ−PVD法)、コールドスプレー法(CS法)、衝撃焼結法(CASP法)など挙げられる。例えば、溶射法は原料粉末を溶融状態にして堆積させる成膜方法である。原料粉末を溶融状態にすると、原料粉末が酸化され易くなる。原料粉末が酸化されると窒化物粒子膜と基材の界面に酸化物結晶が形成されてしまう。
AD法、SFJ−PVD法、CS法、CASP法は、いずれも原料粉末を溶融せずに、超音速レベルの噴射速度で飛ばすことができる。このため、原料粉末を溶融せずに窒化物粒子を堆積可能である。
また、AD法、SFJ−PVD法は真空プロセスであるため、原料粉末の酸化を抑制できる。その一方で、成膜工程を真空チャンバ内で行うため、大型化に向いていない。また、CASP法は、必ずしも真空中で行う必要がないため、大型化に向いている。
また、原料粉末は平均粒径2μm以下であることが好ましい。前述のように原料粉末が溶融しないようにしているため、原料粉末の平均粒径を2μm以下にしておけば、できあがった窒化物粒子膜の平均粒径も2μm以下にできる。また、原料粉末の平均粒径は2μm以下、さらには1μm以下が好ましい。
【0017】
また、原料粉末と同組成のターゲットを用いる方法も有効である。原料ターゲットにレーザなどの高エネルギーを照射し、ナノ粒子レベルの原料粉末を蒸発させる。蒸発により発生した原料粉末を基材に向けて飛ばすことができる。これにより、原料粉末の平均粒径を30nm以下にすることもできる。また、原料粉を小さくすることにより、膜密度を大きくすることも可能である。原料粉末の溶融を伴わない成膜方法の場合、原料粉末を超音速で飛ばしながら成膜すると、原料粉末と基材の衝突により原料粉末が粉砕する。同様に、原料粉末と窒化物粒子膜が衝突することによっても原料粉末が粉砕する。あまり原料粉末が粉砕しすぎると、膜密度の低下をまねくおそれがある。
また、成膜中の基材または原料粉末の酸化を防ぐために、成膜工程を真空中または不活性雰囲気中で行うことが有効である。また、基材の表面を予め清掃して、表面の酸化膜を除去しておくことも有効である。原料粉末として、窒化物を使用する場合は、この方法がよい。
また、原料として金属ターゲットを用いて、窒素雰囲気中で成膜する方法も挙げられる。例えば、AlN膜を形成する場合、AlターゲットからAlを蒸発させる。次に、窒素含有雰囲気にて成膜することにより、AlをAlNにして成膜することもできる。
【0018】
(実施例)
(実施例1〜3、比較例1)
基材として、金属Al板(縦50mm×横50mm×厚さ1mm)を用意した。次に、原料粉末としてAlN粉末を用意した。それぞれ表1に示す方法で成膜した。成膜範囲は縦20mm×横20mmの範囲とした。
表1に示したSFJ−PVD法は超音速フリージェット−PVD法、AD法はエアロゾルデポジション法、CASP法は衝撃焼結法である。また、基板の表面洗浄は、表面の酸化物を除去する工程を行ったものである。なお、SFJ−PVD法は純AlNターゲット(AlN−TG)を用いて、真空中にて成膜工程を行ったものである。また、AlNターゲットは平均結晶粒径30μmのものを用いた。
【0020】
得られた窒化物粒子膜を表2に示した。膜厚(μm)、窒化物粒子の平均粒径(μm)、膜密度(%)の測定は、窒化物粒子膜の厚み方向の任意の断面をSEM写真(倍率1000倍)で測定する。そのSEM写真から、単位面積「膜厚×50μm」を抜き出す。単位面積中の平均膜厚を「膜厚(μm)」とする。また、単位面積に写る窒化物粒子の長径を求め、50粒分の平均値を「窒化物粒子の平均粒径(μm)」とする。また、単位面積に写る気孔の合計面積を単位面積から除いた値を膜密度(%)とした。それぞれ、この作業を任意の単位面積「膜厚×50μm」3箇所分を行いその平均値を表2に示した。
また、基材と窒化物粒子膜の界面のXRDピーク比は、基材と窒化物粒子が直接に接する箇所をXRDにて分析した。また、XRDの測定条件は、Cuターゲット(Cu−Kα)、管電圧40kV、管電流40mA、走査範囲(2θ)20〜100°、スリットを用いてスポット径1μmにて行った。そのXRDチャートにて、酸化物結晶の最大ピークと、窒化物(AlN)の最大ピークの比を求めた。
【0022】
表から分かる通り、実施例に係る半導体製造装置用部品は最大ピーク比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)は0.1以下であった。それに対し、比較例1(CASP法)は原料粉末の平均粒径が大きいため、密度は低かった。また、基材表面の洗浄を行っていないため、最大ピーク比(酸化物の最大ピーク/窒化物の最大ピーク)が大きかった。
次に、実施例および比較例に係る半導体製造装置用部品においてプラズマ雰囲気中にさらして、その耐久性を示した。また、熱伝導率を測定した。その結果を表3に示した。
なお、熱伝導率はレーザフラッシュ法にて測定した。また、プラズマ雰囲気への耐久性は以下の条件にて行い、その膜減量を調べた。
・プラズマ雰囲気への耐久性試験
ガス:CF
4/O
2/Ar=80/20/10sccm、20mTorr
出力:ICP100W、Bias100W
曝露時間:12時間[(30分放電+10分冷却)×24回]
【0024】
表から分かる通り、プラズマへの耐久性が優れていた。これは窒化物粒子膜と基材の界面の酸化物の形成を抑制しているため、放熱性に優れているためである。また、膜密度が高いことも、効果を強化している。
このため、実施例に係る半導体製造装置用部品は耐久性に優れている。そのため、それを用いた半導体製造装置は、歩留り良く半導体を製造することが可能である。また、半導体製造装置用部品のメンテナンスの回数を低減することも可能である。
【0025】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…半導体製造装置用部品
2…基材
3…窒化物粒子(酸窒化物粒子)
4…窒化物粒子膜
5…界面