(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
天面を有し薄膜材料を収容する容器本体と、前記容器本体と連結し前記天面から突出して一軸方向に配置され、前記薄膜材料の気化物質を放出する開口部を有する複数のノズルとを備える蒸発源容器と、
前記容器本体を加熱する加熱装置と、
前記天面と離間して対向配置され、複数の前記ノズル毎に対応して設けられた各前記ノズルが貫通する前記ノズルの開口部よりも大きい第1の開口領域を有する複数の第1の開口部を備える第1の熱遮蔽板と、
前記容器本体と前記第1の熱遮蔽板との間に複数の前記ノズル各々に固定されて前記天面と離間して対向配置され、前記第1の開口領域よりも大きい外形を有し前記ノズルが貫通する第2の開口部を有する第2の熱遮蔽板と
を具備する蒸発源。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお各図においてX軸およびY軸方向は相互に直交する水平方向を示し、Z軸方向はこれらに直交する高さ方向を示している。
【0018】
(第1の実施形態)
[成膜装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る成膜装置の模式断面図である。
成膜装置1は、収容部としての真空槽2と、真空槽2の内部の底面側に配置されたリニアソース型の蒸発源3と、成膜対象物を保持する保持部としての基板ホルダ8と、真空排気系7と、膜厚センサ6と、温度測定センサ10と、コントローラ4と、電源5を具備する。
【0019】
真空槽2は、成膜対象物としてのガラス基板9を収容する。
基板ホルダ8は、真空槽2の内部の天面側に配置される。基板ホルダ8は成膜対象物としてのガラス基板9を成膜すべき面(成膜対象面)9aを下方に向けて保持する。リニアソース型の蒸発源3は、X軸方向に長手方向を有する略直方体形状の外形を有する。基板ホルダ8は、蒸発源3の長手方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向)に移動可能に構成される。
【0020】
蒸発源3は、薄膜材料(蒸発材料)36を収容し、該薄膜材料36を加熱して気化させ、薄膜材料36の気化物質(蒸気)を放出する。蒸発源3の詳細については後述する。
真空排気系7は真空槽2に接続される。真空排気系7は、真空槽2の内部を真空排気し、成膜に適した真空雰囲気を形成する。
【0021】
成膜装置1では、真空槽2の真空雰囲気を維持し、ガラス基板9を基板ホルダ8により保持した状態で移動させながら、蒸発源3から薄膜材料36の気化物質を放出させ、ガラス基板9の成膜対象面9a上に気化物質を付着させてガラス基板9上に所望の薄膜を成膜する。
【0022】
尚、本実施形態では、ガラス基板9を移動可能な構成としたが、ガラス基板9の位置を固定し、蒸発源3をY軸方向に移動可能に構成してもよい。また、ガラス基板9又は蒸発源3を移動させることなく、ガラス基板9及び蒸発源3を固定した状態で成膜してもよい。また、本実施形態では成膜対象物としてガラス基板を例にあげて説明するが、これに限定されず、可撓性のフィルム基材などが用いられてもよい。
【0023】
温度測定センサ10は、コントローラ4に接続され、後述する蒸発源3の蒸発源ケース35の温度を測定する。
膜厚センサ6は、蒸発源3からの蒸気(気化物質)の量を測定し、ガラス基板9上に成膜される薄膜の厚さ(あるいは成膜レート)を制御する。膜厚センサ6は、蒸発源3から放出される薄膜材料の気化物質がガラス基板9に到達するのを妨げないように配置される。膜厚センサ6の出力はコントローラ4へ入力される。
【0024】
コントローラ4は、膜厚センサ6及び温度測定センサ10の測定結果に基づいて、後述する蒸発源3に設けられる加熱装置としてのヒータ34に供給される電力の量を調整し、蒸発源容器としての蒸発源ケース35を所望の温度にし、放出される蒸気(気化物質)の量あるいは成膜レートが所望の値となるように制御する。
【0025】
次に蒸発源3について説明する。
[蒸発源の構成]
図1〜
図4を用いて蒸発源3について説明する。
図2は蒸発源3の模式上面図である。
図3は蒸発源3のノズル付近の部分拡大斜視図である。
図4Aは、
図3における蒸発源3のノズル付近の斜視図であり、後述する水冷板31の底面部313から天面部310にむかう方向からみた部分拡大斜視図である。
図4Bは
図4Aを更に拡大した斜視図である。
【0026】
図1に示すように、リニアソース型の蒸発源である蒸発源3は、蒸発源容器としての蒸発源ケース35と、加熱装置としてのヒータ34と、第1の熱遮蔽板としての水冷板31と、第2の熱遮蔽板としての追従リフレクタ33と、第3の熱遮蔽板としてのリフレクタ32と、固定支持部391と、可動支持部392を有する。
【0027】
ヒータ34は蒸発源ケース35を加熱する。蒸発源ケース35内に収容される薄膜材料36は、ヒータ34により加熱されて薄膜材料36の気化物質となる。ヒータ34は、蒸発源ケース35全体を取り囲むように、蒸発源ケース35とリフレクタ32との間に配置される。ヒータ34は、典型的には、抵抗加熱線で構成されるが、誘導加熱コイルで構成されてもよい。
【0028】
蒸発源ケース35は、容器本体351と複数のノズル37とを有する。
【0029】
容器本体351は、天面352を有し、薄膜材料36を収容する。容器本体351は直方体の外形を有し、その天面352はXY平面と平行な面である。天面352とガラス基板9の成膜対象面9aとが離間してZ軸方向に対向配置されるように、蒸発源ケース35及び基板ホルダ8は設けられる。容器本体351は、金属、グラファイト等の熱導電性の高い材料からなる。
【0030】
複数のノズル371〜377は、容器本体351の天面352から突出して容器本体351と連結して配置される。複数のノズル371〜377は、一軸方向(図面X軸方向)に一列配置される。
図2上、左から右に向かって順にノズル371、ノズル372、ノズル373、ノズル374、ノズル375、ノズル376、ノズル377が配置される。ノズル371〜377を一括してノズル37と称し、必要に応じて371〜377の符号を用いて説明する。
【0031】
ノズル37は、薄膜材料36の気化物質を放出する開口部(気化物質放出口)380を有する。容器本体351内で生成された薄膜材料36の蒸気は開口部380から蒸発源3の外部となる真空槽2内へ放出される。
【0032】
複数のノズル371〜377は共通の容器本体351に連結される。ノズル37には、タンタル、モリブデン、カーボンといった材料を用いることができる。容器本体351は、ノズル37が配列されるX軸方向に長手方向を持つ細長い直方体形状を有する。また、ノズル37はZ軸方向に垂直な断面が略円形を有する円筒状を有しているが、ノズル37の形状はこれに限定されない。
【0033】
水冷板(第1の熱遮蔽板)31は水冷冷却を行う熱遮蔽機能を有するものである。水冷板31は、内部に水が流れる水冷管等の水路が設けられている。水冷板31は、ヒータ34及びヒータ34により加熱された蒸発源ケース35からガラス基板9に放射される輻射熱を吸収し減少させるために設けられている。
【0034】
水冷板31は、天面部310と該天面部310と対向する底面部313と側面部314を有する直方体形状の外形を有し、水冷板31が蒸発源3の外形を構成する。水冷板31は、蒸発源ケース35、ヒータ34、リフレクタ32及び追従リフレクタ33を取り囲むように配置される。水冷板31の天面部310は、XY平面と略平行に配置され、蒸発源ケース35の容器本体351の天面352と離間して対向配置される。
【0035】
水冷板(第1の熱遮蔽板)31の天面部310には、複数の第1の開口部3111〜3117が設けられている。第1の開口部3111はノズル371に、第1の開口部3112はノズル372に、第1の開口部3113はノズル373に、第1の開口部3114はノズル374に、第1の開口部3115はノズル375に、第1の開口部3116はノズル376に、第1の開口部3117はノズル377に、それぞれ対応して設けられる。以下、第1の開口部3111〜3117を一括して第1の開口部311と称し、必要に応じて3111〜3117の符号を用いて説明する。
【0036】
第1の開口部311は対応するノズル37が貫通するように、ノズル37毎に設けられる。第1の開口部311はノズル37の開口部380よりも大きい第1の開口領域を有する。
【0037】
ノズル37が冷却されるとノズル37内を通過する薄膜材料の気化物質がノズル37内で冷却され、それが要因となってノズル37が詰まってしまう場合がある。このため、ノズル37が詰まらないように、水冷板31とノズル37とが接触しないように第1の開口部311は設けられる。
【0038】
第1の開口部311の平面形状は、複数のノズル37が配列される方向であるX軸方向に長手方向を有する。本実施形態においては、第1の開口部311は、X軸方向に沿った長軸とY軸方向に沿った短軸を有する略楕円又は長円形状であるが、形状はこれに限定されず、例えば矩形状であってもよい。
【0039】
複数のノズル37が一軸方向に共通の容器本体351に配置される構造を有する、細長い直方体形状を有するリニアソース型の蒸発源3では、成膜時のヒータ34による加熱により、容器本体351がその長手方向(ノズルの配列方向)に熱膨張して伸張し、これに伴い容器本体351に連結するノズル37の位置が常温の時から数mmずれる場合がある。第1の開口部311は、このノズル37の位置ずれ量を加味して形成される。すなわち、熱膨張によりノズル37の位置ずれが生じても第1の開口部311内にノズル37が位置するように、第1の開口部311は、伸張方向である容器本体351の長手方向に、長手方向を有する形状を有している。
【0040】
また、加熱により膨張する容器本体351では、その中央部から、蒸発源ケース35の長手方向(X軸方向)に沿って、端部にいくほど熱膨張に伴うノズル37の位置ずれ量が大きくなっていく。
【0041】
具体的には、蒸発源ケース35の中央部に位置するノズル374は、加熱によって蒸発源ケース35が熱膨張し伸張しても、加熱前の時と位置がほとんど変化しない。これに対し、ノズル371〜373及び375〜377は加熱による蒸発源ケース35の熱膨張に伴って位置が変化する。これらのノズル371〜373及び375〜377のうち、蒸発源ケース35の両端部に最も近く位置するノズル371及び377が最も位置の変化が大きく、その次にノズル372及び376の位置の変化が大きく、ノズル373及び375の位置の変化が最も小さくなる。
【0042】
このように、ノズル37が配置される位置によって成膜時の加熱によるノズル37の位置ずれ量は異なる。複数の第1の開口部311は、ノズル37の配置による位置ずれ量の違いを加味して、熱膨張によって位置ずれが生じてもノズル37が第1の開口部311内に位置するように形成される。
【0043】
図2は常温時における蒸発源3の模式上面図である。
図2に示すように、成膜前の蒸発源3では、蒸発源ケース35の中央に位置するノズル374は、対応する第1の開口部3114の略中央部に位置する。一方、蒸発源ケース35の中央部から図上右側に位置するノズル375〜377は、対応する第1の開口部3115〜3117内の左寄りに位置する。他方、蒸発源ケース35の中央部から図上左側に位置するノズル371〜373は、対応する第1の開口部3111〜3113内の右寄りに位置する。
【0044】
成膜時、蒸発源容器3が加熱され、蒸発源ケース35が熱膨張して伸張し、これに伴いノズル37の位置の変化が生じた際、各ノズル371〜377は、対応する第1の開口部3111〜3117の略中央部に位置するように、第1の開口部3111〜3113は配置される。
【0045】
本実施形態においては、ノズル37の先端部と、水冷板(第1の熱遮蔽板)31の天面部310の上面31aとは、同一XY平面上に位置するが、これに限定されない。例えば、ノズル37は水冷板31から第1の開口部311を通って上面31aから突出してもよい。
【0046】
リフレクタ(第3の熱遮蔽板)32は、ヒータ34及び蒸発源ケース35を取り囲むように配置される。リフレクタ32は水冷板31とヒータ34との間に配置される。水冷板31の天面部310と対向配置されるリフレクタ32の天面部分は、容器本体35の天面352と離間して対向配置され、XY平面と平行に配置される。
【0047】
リフレクタ32は、3枚の単体リフレクタ321、322、323が互いに離間して積層されて構成される。リフレクタ32は、ヒータ34及びヒータ34により加熱された蒸発源ケース35からガラス基板9に到達する輻射熱を減少させるために設けられる。複数枚の単体リフレクタ321〜323を設けることにより、水冷板31に到達する輻射熱の熱量を段階的に減少させることができる。リフレクタにはアルミニウム、ステンレス、モリブデン、タンタル等を用いることができる。
【0048】
例えば、薄膜材料として銀を用いて銀の蒸気を生成する場合、銀を1100℃程度に加熱する必要があり、水冷板31のみを熱遮蔽板として用いると水冷板31内を流れる水が沸騰してしまい、水冷板31は十分な冷却機能(熱遮蔽機能)を発揮することができない場合がある。
【0049】
これに対し、水冷板31と蒸発源ケース35との間にリフレクタ32を配置することにより、ヒータ34及びヒータ34により加熱された蒸発源ケース35からの輻射熱は、例えば単体リフレクタ321により900℃、単体リフレクタ322により500℃、単体リフレクタ323により300℃というように段階的に減少され、水冷板31に到達するときには、輻射熱は十分減少される。このように複数の熱遮蔽手段を用いることにより効率的に輻射熱を減少させることができる。
【0050】
リフレクタ32は、ノズル37毎に対応して設けられたノズル37が貫通する複数の第3の開口部324を有する。第3の開口部324は、ノズル37の開口部380よりも大きい第3の開口領域を有する。第3の開口部324は、水冷板31の第1の開口部311と同様に、容器本体351の熱膨張によるノズル37の位置ずれ量が加味されて設けられる。水冷板31と同様に、リフレクタ32は、ノズル詰まりを防止するために、リフレクタ32とノズル37とが接触しないように第3の開口部324は設けられる。第3の開口部324は、X軸方向に沿った長軸とY軸方向に沿った短軸を有する略楕円又は長円形の平面形状を有する。
【0051】
図2に示すように、蒸発源3の長手方向(X軸方向)の長さaは、例えば30cm〜3mほどあり、成膜対象物の大きさや成膜パターンによってノズル37の数及び蒸発源3の長手方向の長さaが決定する。
【0052】
水冷板31の天面部310に設けられる第1の開口部311の長径cは20mm、短径eは12mmである。ノズル37の外径dは10mmであり、ノズル37のピッチ(隣り合うノズルの中心間距離)bは10mm〜25mmである。
【0053】
ノズル37の数及び配置位置は任意に設定可能である。例えばノズル37は、蒸発源3の端部に配置されるノズル37のピッチが密となるように配置してもよく、これにより基板面内で均一な膜を成膜することができる。尚、本実施形態においては、便宜上、ノズル37の数を7つとし、ノズル37のピッチが均等となるように図示を行い説明している。
【0054】
図1〜
図4に示すように、追従リフレクタ(第2の熱遮蔽板)331〜337は、複数のノズル371〜377にそれぞれ対応してノズル371〜377に固定されて配置される。追従リフレクタ331〜337は、互いに分離して個別に設けられる。
【0055】
追従リフレクタ331はノズル371に、追従リフレクタ332はノズル372に、追従リフレクタ333はノズル373に、追従リフレクタ334はノズル374に、追従リフレクタ335はノズル375に、追従リフレクタ335はノズル375に、追従リフレクタ336はノズル376に、追従リフレクタ337はノズル377に固定される。
以下、追従リフレクタ331〜337を一括して追従リフレクタ33と称し、必要に応じて331〜337の符号を用いて説明する。
【0056】
追従リフレクタ33はノズル37に固定配置されているので、容器本体351の熱膨張によりノズル37の位置が変動しても、これに追従して追従リフレクタ33の位置は変動する。
【0057】
追従リフレクタ33は、Z軸方向において水冷板31の天面部310とリフレクタ32との間に、天面部310及びリフレクタ32それぞれと離間して配置される。追従リフレクタ33は、天面352と離間して対向配置される。
【0058】
追従リフレクタ33は、水冷板31の第1の開口部311の第1の開口領域よりも大きい外形を有する。追従リフレクタ33は、X軸方向に平行する横の長さが40mm、Y軸方向に平行する縦の長さが25mmの略矩形の板状を有する。複数の追従リフレクタ331〜337は同一のXY平面上で互いに離間して配置される。隣り合う追従リフレクタ33間の距離は例えば5mmである。容器本体351の熱膨張によりノズル37の位置が変動し、これに追従して追従リフレクタ33の位置が変動しても、隣り合う追従リフレクタ同士が接触しないように、隣り合う追従リフレクタ33間距離は設定される。
【0059】
追従リフレクタ33の略中央部には、対応するノズル37が貫通する第2の開口部330が設けられている。第2の開口部330は略円形の平面形状を有し、その開口端には、第2の開口部330の中心に向かって突出した3つの突出部38が形成されている。3つの突出部38は、互いに均等な間隔で配置される。
【0060】
突出部38は鋭角部38aを有し、3つの鋭角部38aにより3点でノズル37を支持することにより、ノズル37に追従リフレクタ33が固定配置される。尚、本実施形態では3点支持で追従リフレクタ33をノズル37に固定したが、支持点は3つに限定されない。
【0061】
本実施形態においては、Z軸方向に垂直な方向で切断した断面がどのXY平面で切断しても同じ円筒形状のノズル37を例にあげたが、これに限定されない。
例えば、Z軸方向に連続的にZ軸方向に垂直な方向で切断した断面形状が大きくなっていく外形がテーパ形状を有する筒型にしてもよい。そして、薄膜材料36の気化物質を蒸発源3の外部に放出する開口部380が、容器本体351に連結する側の開口部よりも小さくなるような外形がテーパ形状を有するノズル37とすることにより、追従リフレクタ33の第2の開口部330にノズル37を通して組み立てる際、追従リフレクタ33のZ軸方向の位置決めが容易となる。
また、本実施形態においては、ノズルを蒸発源ケースの天面に対してその長手方向が垂直となるように取り付けているが、角度をつけて天面に対して斜めに取り付けてもよい。
【0062】
水冷板(第1の熱遮蔽板)31、追従リフレクタ(第2の熱遮蔽板)33、リフレクタ(第3の熱遮蔽板)32を天面352に投影したとき、水冷板31の第1の開口領域(第1の開口部311)とリフレクタ32の第3の開口領域(第3の開口部324)とは互いにほぼ重なりあう。そして、第1の開口領域と第3の開口領域の内部に、ノズル37が位置するよう、第1の開口部311及び第3の開口部324は形成される。
【0063】
更に、追従リフレクタ33の矩形状の外形の投影領域内に、互いに重なりあう第1の開口領域及び第3の開口領域が位置するように、水冷板31、リフレクタ32及び追従リフレクタ33は配置される。この追従リフレクタ33の外形の投影領域内に第1の開口領域及び第3の開口領域が位置するという配置関係は、成膜時の加熱による容器本体351の熱膨張によりノズル37の位置が変動した場合においても維持されるよう追従リフレクタ33は配置される。
【0064】
蒸発源ケース35は、直方体形状の水冷板31の底面部313に、固定支持部391及び可動支持部392によって支持される。尚、本実施形態においては直方体形状の水冷板としたが、形状はこれに限定されない。ヒータ34及びヒータ34により加熱される蒸発源ケース35からの輻射熱の成膜対象物(本実施形態においてはガラス基板)9への到達を遮蔽するために、成膜対象物9とヒータ34により囲まれた蒸発源ケース35との間に、少なくとも水冷板が配置される形状となればよい。
【0065】
固定支持部391はY軸方向に長手方向を有する形状を有する。固定支持部391は、蒸発源ケース35の底面と水冷板31の底面部313との間に、蒸発源ケース35の中央部に配置される。固定支持部391により、蒸発源ケース35の底面の一部は、水冷板31の底面部313に設置固定される。このように、固定支持部391は、成膜時の加熱による容器本体351の熱膨張が生じても伸張による位置ずれがほとんど生じない蒸発源ケース35の中央部に配置される。
【0066】
可動支持部392は、蒸発源ケース35の底面と水冷板31の底面部313との間に配置される。可動支持部392は、固定支持部391を境にして蒸発源ケース35の長手方向における両端部付近にそれぞれ対向配置される。
【0067】
可動支持部392は、蒸発源ケース35の底面に設置固定され、水冷板31の底面部313上を可動可能に構成される。可動支持部392は、ヒータ34の加熱による容器本体351の熱膨張による容器本体351のX軸方向における伸張量に応じてX軸方向に移動可能に設けられる。例えば可動支持部392としてY軸方向に長軸方向を有するパイプローラを用いることができる。回転可能にパイプローラを蒸発源ケース35の底面に設置固定させ、パイプローラが水冷板31の底面部313上でX軸方向に沿って移動可能となるように構成することができる。
【0068】
このように、蒸発源ケース35は、固定支持部391及び可動支持部392を介して水冷板31の底面部313に支持される。固定支持部391及び可動支持部392は、蒸発源ケース35が水平に保持されるように、それぞれの高さが調整されて設けられる。
【0069】
このように、固定支持部391及び可動支持部392を設けることにより、成膜時の加熱による容器本体351の熱膨張により容器本体351が伸張しても、伸張に伴って可動支持部392がX軸方向にスライドするため、容器本体351に歪みが生じることがない。
【0070】
ここで、蒸発源ケース35が加熱時の熱膨張によって移動が生じないように、蒸発源ケース35の底面を設置固定させた場合、熱膨張により伸張した分、蒸発源ケースに歪みが生じる。これにより、蒸発源ケースの内底面の平滑性が失われ、薄膜材料の蒸発が面内で不均一となり、成膜される薄膜の膜厚のばらつきが生じてしまう。
【0071】
これに対し、本実施形態においては、固定支持部391及び可動支持部392によって蒸発源ケース35を水冷板31で支持するため、熱膨張により容器本体351が伸張しても、この伸張量に応じて可動支持部392により蒸発源ケース35がX軸方向に移動可能に構成されているので、蒸発源ケース35に歪みが生じない。従って、面内均一の膜厚の薄膜が成膜可能となる。
【0072】
尚、本実施形態においては、可動支持部392を蒸発源ケース35に設置固定し、直方体形状の水冷板31の内底面部上を可動支持部392が移動可能となるように構成したが、これに限定されない。例えば、可動支持部392を、蒸発源ケース35に設置固定せず、水冷板31の底面部313に設置固定し、可動支持部392により蒸発源ケース35を支持する構成としてもよい。この場合、熱膨張により容器本体351が伸張しても、可動支持部392が回転することによって容器本体351の伸張が妨げられることがなく、蒸発源ケース35に歪みが生じず、面内均一の膜厚の薄膜が成膜可能となる。
【0073】
以上のように、ヒータ34及びヒータ34により加熱される蒸発源ケース35からの輻射熱のうち、水冷板31(第1の熱遮蔽板)及びリフレクタ(第3の熱遮蔽板)32により遮蔽できない輻射熱を、追従リフレクタ33を設けることにより減少させることができる。
【0074】
図5及び
図7を用いて、追従リフレクタ33の有無による効果の違いを説明する。
図5及び
図7は、
図2の点線Aで囲まれたノズル37付近の部分拡大図に相当する。
図5は、追従リフレクタ33が設けられている本実施形態に係る蒸発源3の部分図である。
図5は、蒸発源3のノズル付近の加熱前後の様子を示す部分拡大上面図、及び、それに対応する断面図である。
【0075】
図7A及び
図7Bは、追従リフレクタ33が設けられていない比較例に係る蒸発源203の部分図である。
図7Aは、ノズル付近の加熱前後の様子を示す部分拡大上面図、及び、それに対応する断面図である。
図7Bは、加熱時の蒸発源から放射される輻射熱Bの様子を示す。
図7において、本実施形態に係る蒸発源3と同様の構成については同様の符号を付している。
【0076】
図7Aに示すように、成膜前の加熱前では、略楕円形の第1の開口部3115及び3116それぞれの内部の左寄りにノズル375及び376がそれぞれ位置する。これに対し、成膜時の加熱によって容器本体351が熱膨張しその長手方向に伸張し、これに伴ってノズル375及び376の位置が変動すると、第1の開口部3115及び3116それぞれの中央部にノズル375及び376がそれぞれ位置する。
【0077】
図7Bに示すように、ヒータ34及びヒータ34により加熱された蒸発源ケース35からの輻射熱Bは、水冷板31の天面部310に設けられている第1の開口部311及びリフレクタ32に設けられている第3の開口部324を通って、蒸発源203の外へ放射される。蒸発源203の外へ放射された輻射熱Bは、ガラス基板9に到達し、ガラス基板9を加熱する。
【0078】
ガラス基板9が加熱され、基板温度が高くなると、ガラス基板9に到達した薄膜材料の気化物質がガラス基板9上を動き回り適切に付着せず、また再蒸発をして成膜が適切に行われない。
【0079】
また、成膜対象物上にメタルマスクを介して薄膜を成膜する場合では、メタルマスクが輻射熱により膨張し、成膜パターンの位置ずれが生じる。特に高精細パターンの薄膜を成膜する場合には、この成膜パターンの位置ずれは、例えばガラス基板9が表示装置を構成する基板である場合には、表示装置としたときに表示特性に大きな影響を及ぼしてしまう。
【0080】
これに対し、本実施形態においては、
図5に示すように、ヒータ34及びヒータ34により加熱された蒸発源ケース35からガラス基板9へ向かう輻射熱のうち、水冷板31及びリフレクタ32により遮蔽できない輻射熱を、第1の開口部311及び第3の開口部324に対応して設けられた追従リフレクタ33により減少させることができる。
【0081】
追従リフレクタ33は、成膜時の加熱によるノズル37の位置の変動に追従して位置が変動可能となっている。これにより、成膜時の加熱により蒸発装置35が膨張しノズル37の位置が変動しても、水冷板31、リフレクタ32及び追従リフレクタ33を天面352に投影したとき、第1の開口領域と第3の開口領域は、追従リフレクタ33の外形の投影領域内に位置するように構成されているので、熱膨張が生じていないときと同様に追従リフレクタ33により輻射熱を減少させることができる。
【0082】
更に、加熱により蒸発源ケース35が膨張し、ノズル37毎に位置ずれ量が異なってノズル37の位置が変化しても、追従リフレクタ33は、ノズル37毎に互いに分離して個別に設けられているので、ノズル37の動きが妨げられることがない。
【0083】
このように、追従リフレクタ33を設けることによりヒータ34及びヒータ34により加熱された蒸発源ケース35からガラス基板9へ向かう輻射熱を遮蔽し又は減少させることができる。これにより、ガラス基板9の加熱が抑制され、ガラス基板9上に薄膜材料36の気化物質を付着させることができ、成膜を効率よく行うことができる。また、ガラス基板9上にメタルマスクを用いて薄膜パターンを形成する場合においては、輻射熱によるメタルマスクの膨張を抑制することができるので、高精度のパターン成膜が可能となる。
【0084】
ここで、ノズル37は薄膜材料の蒸気(気化物質)を放出するものである。ノズル37が冷却されてノズル37内を通過する薄膜材料の蒸気がノズル37内で冷却されて液化するとノズル詰まりが生じ、所望の薄膜を得ることができなくなってしまう。従って、ノズル37の動きに追従する熱遮蔽機能を有する追従リフレクタ33をノズル37に固定して設ける場合、ノズル37を極力冷却しない構成とすることが望ましい。
【0085】
本実施形態においては、ヒータ34及びヒータ34により加熱された蒸発源ケース35からガラス基板9へ向かう輻射熱を減少させつつ、ノズル37を極力冷却しないようにするために、追従リフレクタ33はノズル37に点接触で固定されるように構成している。このように点接触させて固定することにより、ノズル37と追従リフレクタ33との接触面積を少なくすることができ、これによりノズル37から追従リフレクタ33への熱伝導を阻害して、追従リフレクタ33によるノズル37の冷却を抑制することができる。
【0086】
追従リフレクタ33は、放射率が低い、例えば0.1以下の材料で形成することが望ましい。追従リフレクタ33の放射率を低くすることにより輻射による熱伝導が低くなり、ガラス基板9に到達する輻射熱の熱量を減少させることができる。また、ガラス基板9にメタルマスクを用いて薄膜パターンを形成する場合においては、輻射熱によるメタルマスクの膨張を抑制することができ、メタル膨張によるパターニングずれの発生を抑制することができる。尚、追従リフレクタ33を放射率が低い材料で形成する他、放射率が低い材料で表面をコーティングした追従リフレクタ33としてもよい。
【0087】
更に、追従リフレクタ33を、熱伝導率が低い、例えば10w/m・k以下の材料で形成することが望ましく、ノズル37の冷却を更に抑制することができる。
【0088】
熱伝導率が低く、放射率が低い、本実施形態の追従リフレクタ33に好ましい材料としては、タンタル、モリブデン、タングステン、ニッケル、コバルト、ステンレス、インコネル(登録商標。クロム、鉄、ケイ素等を含むニッケル合金。)等の放射率が低い金属を用いることができる。また、Al
2O
3(アルミナ)、BN(窒化ホウ素)、PBN(Pyrolytic Boron Nitride、減圧熱分解CVD(Chemical Vapor deposition)で製造される窒化ホウ素)、SiO
2(二酸化ケイ素)等の無機物、無機繊維系断熱材などを用いることができる。本実施形態においては、放射率が0.4のPBN又は放射率が0.15のインコネル(登録商標)を用いた。また、放射率を低くするために、追従リフレクタ33の表面の表面粗さを小さくし鏡面状態にしてもよい。
【0089】
以上のように、本実施形態においては、追従リフレクタ33を設けることにより、追従リフレクタ33を設けない場合と比較して、輻射熱の熱量を減少させることができる。したがって、蒸発源3から放射される輻射熱を減少させることができる。
【0090】
更に、追従リフレクタ33はノズル37毎に個別に設けられ、追従リフレクタ33はノズル37の位置の変動に追従するので、成膜時に蒸発源ケース35が膨張し各ノズル37の位置ずれ量が異なってその位置が変動しても、熱膨張前と変わらずに追従リフレクタ33により輻射熱の熱量を減少させることができる。
【0091】
(第2の実施形態)
上記の実施形態において、追従リフレクタ33は点接触でノズル37に固定され、追従リフレクタ33とノズル37との接触面積を小さくしてノズル37の冷却を抑制していたが、これに限定されない。例えば、追従リフレクタ33とノズル37との間にリング状の熱伝導率の低い間隙部材を設けてノズル37の冷却を抑制する構成としてもよい。
【0092】
図6は第2の実施形態に係る蒸発源103のノズル付近における部分拡大図である。
図6Aは蒸発源103のノズル付近の蒸発源103を上斜めの方向からみた部分拡大斜視図である。
図6Bは蒸発源103の部分拡大断面図である。以下、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。第1の実施形態と第2の実施形態とは、追従リフレクタの開口部の形状が異なる点、第2の実施形態では間隙部材が設けられている点で相違する。
【0093】
図6Bに示すように、蒸発源103では、Z軸方向に沿って、水冷板31の天面部310とリフレクタ32との間に、天面部310及びリフレクタ32とそれぞれ離間して、第2の熱遮蔽板としての追従リフレクタ1033が設けられている。更に、追従リフレクタ1033とノズル37との間にはリング状の間隙部材1038が設けられている。第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ノズル37毎に追従リフレクタ1033は個別に配置される。
【0094】
追従リフレクタ1033は、第1の実施形態における追従リフレクタ33と同様に矩形状の外形を有する。追従リフレクタ1033は、その略中央部に第2の開口部1330を有する。第2の開口部1330はXY平面上における形状が略円形を有する。ノズル37、追従リフレクタ1033、及び、リング状の間隙部材1038をXY平面に投影したとき、ノズル37の外形は、第2の開口部1330の投影領域内に位置し、ノズル37の外形と第2の開口部1330は同心円状に重なる。更に、投影図において、ノズル37の外形と第2の開口部1330との間隙を埋めるようにリング状の間隙部材1038が位置する。
【0095】
追従リフレクタ1033は、間隙部材1038を介してノズル37に固定配置される。このように追従リフレクタ1033がノズル37に固定されることにより、ノズル37の位置の変動に追従して追従リフレクタ1033も位置が変動する。そして、追従リフレクタ1033を設けることにより、水冷板31及びリフレクタ32では遮蔽しきれないヒータ34及びヒータ34により加熱された蒸発源ケース35からガラス基板9に向かう輻射熱の熱量を減少させることができる。
【0096】
追従リフレクタ1033は、放射率が低い材料で形成することが望ましく、第1の実施形態で記載した追従リフレクタ33と同様の材料を用いることができる。
【0097】
間隙部材1038には熱伝導率が低い材料を用いることが望ましく、例えば熱伝導率が30w/m・k以下の材料を用いるのが好ましい。具体的な材料としては、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニアなどを用いることができる。
【0098】
熱伝導率が低い材料を間隙部材1038に用いることにより、追従リフレクタ1033によるノズル37の冷却を抑制することができ、また、追従リフレクタ1033に用いる材料の選択範囲を広げることができる。
【0099】
尚、第1の実施形態で示した、突起部38により追従リフレクタ33をノズル37に固定する構造に加え、突起部38とノズル37との間に熱伝導率が低い材料からなる間隙部材を設ける構造としてもよい。
【0100】
(第3の実施形態)
第1の実施形態において、追従リフレクタ33は、3点でノズル37を支持しノズル37に固定され、点で支持することによりノズル37の冷却を抑制していたが、これに限定されない。
【0101】
例えば、追従リフレクタに設けられる第2の開口部の大きさとノズル37との外形をほぼ同等とし、追従リフレクタに設けられる第2の開口部にノズル37を貫通させ追従リフレクタとノズル37とを第2の開口部の側面で接触させ、追従リフレクタをノズル37に固定させてもよい。このような構造では、輻射熱を遮蔽し、かつ、追従リフレクタによるノズル37の冷却を抑制するために、追従リフレクタを、熱伝導率が低い、例えば30w/m・k以下で、更に、放射率が低い、例えば0.1以下材料を用いて形成することが望ましく、例えば放射率が0.4のPBN又は放射率が0.15のインコネル(登録商標)を用いることができる。
【0102】
(変形例)
上記実施形態においては、薄膜材料として銀を例に挙げて説明したが、これに限定されず、カラーフィルタ等の有機膜の成膜にも本発明を適用できる。
また、上述の実施形態においては、1つの開口部(気化物質放出口)を有するノズルに、1つの追従リフレクタを設けているが、これに限定されない。例えば連続して並んで配置される複数の開口部(気化物質放出口)を有するノズル1つに対して、1つの追従リフレクタを設けるようにしてもよい。例えば、連続して並んで配置される4つの開口部を有するノズル1つに対して1つの追従リフレクタを設けることができる。ここで、複数の開口部を有するノズルは、上記実施形態で示した構造である1つの開口部380を有するノズル37を複数ひとまとめにしたノズル群の形態も含む。