【0008】
はじめに、本発明の硬化性シリコーン組成物について詳細に説明する。
(A)成分は本組成物の主剤である、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2〜12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6〜20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7〜20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
(A)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、および三次元網状構造が例示される。(A)成分は、これらの分子構造を有する1種のオルガノポリシロキサン、あるいはこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサン混合物であってもよい。
このような(A)成分は、(A−1)一般式:
R
13SiO(R
12SiO)
mSiR
13
で表される直鎖状のオルガノポリシロキサンおよび/または(A−2)平均単位式:
(R
1SiO
3/2)
a(R
12SiO
2/2)
b(R
13SiO
1/2)
c(SiO
4/2)
d(XO
1/2)
e
で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
(A−1)成分において、式中、R
1は同じかまたは異なる一価炭化水素基であり、前記と同様のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、およびこれらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。ただし、一分子中、少なくとも2個のR
1はアルケニル基である。また、式中、mは5〜1,000の整数であり、好ましくは、50〜1,000の整数あるいは100〜1,000の整数である。
このような(A−1)成分としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。
また、(A−2)成分において、式中、R
1は同じかまたは異なる一価炭化水素基であり、前記と同様のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、およびこれらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。ただし、R
1の合計の0.01〜50モル%、0.05〜40モル%、あるいは0.09〜32モル%がアルケニル基であることが好ましい。これは、アルケニル基の割合が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の硬化性が良好であるからであり、一方、アルケニル基の割合が上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の機械的特性が良好であるからである。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、核磁気共鳴(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の分析によって求めることができる。
また、式中、Xは水素原子またはアルキル基である。このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1〜12個のアルキル基が例示され、好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基である。
また、式中、aは、式:R
1SiO
3/2で表されるシロキサン単位の割合を示す、0≦a≦1.0を満たす数であり、bは、式:R
12SiO
2/2で表されるシロキサン単位の割合を示す、0≦b≦1.0を満たす数であり、cは、式:R
13SiO
1/2で表されるシロキサン単位の割合を示す、0≦c<0.9を満たす数であり、dは、式:SiO
4/2で表されるシロキサン単位の割合を示す、0≦d<0.5を満たす数である。ただし、式中、a+b+c+d=1.0である。また、eはケイ素原子に結合する水酸基またはアルコキシ基を示す、0≦e<0.4を満たす数である。
(A)成分として、(A−1)成分、(A−2)成分、あるいは(A−1)成分と(A−2)成分の混合物を用いることができる。(A−1)成分と(A−2)成分の混合物を用いる場合、得られる組成物の取扱性が良好であることから、(A−2)成分の含有量は、(A−1)成分と(A−2)成分の合計量の90質量%以下あるいは60質量%以下であることが好ましい。また、得られる硬化物の機械的特性が良好であることから、(A−2)成分の含有量は、(A−1)成分と(A−2)成分の合計量の少なくとも10質量%であることが好ましい。
(A)成分は25℃で液状または固体状である。(A)成分が25℃で液状である場合、その25℃の粘度は1〜1,000,000mPa・sの範囲内あるいは10〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。なお、この粘度は、例えば、JIS K7117−1に準拠したB型粘度計を用いた測定により求めることができる。
(B)成分は本組成物の架橋剤である、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6〜20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7〜20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
(B)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、および三次元網状構造が例示され、好ましくは、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、または三次元網状構造である。
(B)成分は25℃で固体状または液状である。(B)成分が25℃で液状である場合は、その25℃の粘度は10,000mPa・s以下、0.1〜5,000mPa・sの範囲内、あるいは0.5〜1,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。なお、この粘度は、例えば、JIS K7117−1に準拠したB型粘度計を用いた測定により求めることができる。
このような(B)成分としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。
(B)成分の含有量は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量であり、好ましくは、0.5〜5モルとなる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の機械的特性が良好であり、一方、上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の硬化性が良好であるからである。なお、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、核磁気共鳴(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の分析によって求めることができる。
(C)成分は本組成物の硬化物に耐剥離性を付与するトリアゾール系化合物である。(C)成分としては、1H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸メチル、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、アミノベンゾトリアゾール、シクロヘキサノ[1,2−d]トリアゾール、4,5,6,7−テトラヒドロキシトリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、1−N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−[(1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]アミン、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]トリルトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチル]トリルトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(1−ブチル)アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(1−オクチル)アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−(2’,3’−ジ−ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−(2’,3’−ジ−カルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール−6−カルボン酸、1−オレオイルベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−オール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシアミド、4−アミノウラゾール、1,2,4−トリアゾール−5−オン、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。特に、(C)成分は、ベンゾトリアゾール、またはアルキル、カルボキシもしくはニトロ置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物であることが好ましく、さらには、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、および1H−ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸メチルからなる群より選択される少なくとも1種のベンゾトリアゾール系化合物であることが好ましい。
(C)成分の含有量は、本組成物に対して、質量単位で1ppm〜0.5%の範囲内となる量であり、好ましくは、5ppm〜0.3%の範囲内あるいは10ppm〜0.1%の範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、吸湿リフローに対する剥離を十分に抑制できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の機械的特性が良好となるからである。
(D)成分は本組成物の硬化物に耐剥離性を付与する金属系縮合反応触媒である。(D)成分としては、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機銅化合物、有機ニッケル化合物、有機クロム化合物、有機コバルト化合物、有機鉄化合物、有機インジウム化合物、有機ランタン化合物、有機錫化合物、有機ハフニウム化合物、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。有機アルミニウム化合物としては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、イソプロポキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のアルコキシ化合物;トリアセトキシアルミニウム、トリステアラートアルミニウム、トリブチラートアルミニウム等のアシロオキシ化合物;アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムtert−ブチレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)アルミニウム、トリスエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(n−プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(iso−プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−ブチルアセトアセテート)アルミニウム、トリスサリチルアルデヒドアルミニウム、トリス(2−エトキシカルボニルフェノラート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム等のキレート化合物が例示される。有機チタン化合物としては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブチロキシチタン等のテトラアルコキシチタン;チタン酸テトラエチレングリコール、チタン酸ジ−n−ブチルビス(トリエタノールアミン)、ビス(アセチルアセトン)酸ジ−イソプロポキシチタン、オクタン酸イソプロポキシチタン、トリメタクリル酸イソプロピルチタン、トリアクリル酸イソプロピルチタン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ブチル、メチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルジ(ジラウリルホスファイト)チタネート、ジメタクリルオキシアセテートチタネート、ジアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、トリ(ジオクチルリン酸)イソプロポキシチタン、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートが例示される。有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニルアセテート、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、ジルコニウムトリフルオロアセチルアセトナートが例示される。有機マグネシウム化合物としては、エチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(アセチルアセトナート)が例示される。有機亜鉛化合物としては、亜鉛ビス(エチルアセトアセテート)、亜鉛アセチルアセトナート、亜鉛ビス2−エチルヘキサノアート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛ネオデカノエート、亜鉛アセテート、亜鉛オクトエート、亜鉛サリチレートが例示される。有機銅化合物としては、銅ビス(エチルアセトアセテート)、銅ビス(アセチルアセトナート)が例示される。有機ニッケル化合物としては、ニッケルビス(エチルアセトアセテート)、ニッケルビス(アセチルアセトナート)が例示される。有機クロム化合物としては、クロムトリス(エチルアセトアセテート)、クロムトリス(アセチルアセトナート)が例示される。有機コバルト化合物としては、コバルトトリス(エチルアセトアセテート)、コバルトトリス(アセチルアセトナート)が例示される。有機鉄化合物としては、鉄トリス(エチルアセトアセテート)、鉄トリス(アセチルアセトナート)が例示される。有機インジウム化合物としては、インジウムトリス(エチルアセトアセテート)、インジウムトリス(アセチルアセトナート)が例示される。有機ランタン化合物としては、ランタントリス(エチルアセトアセテート)、ランタントリス(アセチルアセトナート)が例示される。有機錫化合物としては、錫テトラキス(エチルアセトアセテート)、錫テトラキス(アセチルアセトナート)が例示される。有機ハフニウム化合物としては、ハフニウムn−ブトキシド、ハフニウムt−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムイソプロポキシド、ハフニウムイソプロポキシドモノイソプロピレート、ハフニウムアセチルアセナート、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウムが例示される。特に、(D)成分は、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機亜鉛化合物、および有機鉄化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属系縮合反応触媒であることが好ましい。
(D)成分の含有量は、本組成物に対して、質量単位で20ppm〜0.1%の範囲内となる量であり、好ましくは、30ppm〜0.05%の範囲内あるいは50ppm〜0.03%の範囲内となる量である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、吸湿リフローに対する剥離を十分に抑制できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の保存安定性が向上できるからである。
(E)成分は本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒である。(E)成分としては、白金族元素触媒、白金族元素化合物触媒が例示され、具体的には、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、およびこれらの少なくとも2種の組み合わせが例示され、特に、本組成物の硬化を著しく促進できることから、白金系触媒であることが好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とジオレフィンの錯体、白金−オレフィン錯体、白金ビス(アセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)等の白金−カルボニル錯体、塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の塩化白金酸−アルケニルシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の白金−アルケニルシロキサン錯体、塩化白金酸とアセチレンアルコール類との錯体、およびこれらの2種以上の混合物が例示され、特に、本組成物の硬化を促進できることから、白金−アルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。
白金−アルケニルシロキサン錯体に用いられるアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマー、およびこれらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマーが例示され、特に、生成する白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンであることが好ましい。
また、白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させるため、これらの白金−アルケニルシロキサン錯体を、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンオリゴマーやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましく、特に、アルケニルシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましい。
(E)成分の含有量は本組成物の硬化を促進する量であり、具体的には、本組成物に対して、(E)成分中の触媒金属原子が質量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量、0.01〜100ppmの範囲内となる量、あるいは0.1〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の硬化性が良好であり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の着色が抑えられるからである。
本組成物には、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上させるため(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよい。(F)成分としては、1−エチニルシクロヘキサン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、および3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、およびメチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン等のアルキンオキシシラン;およびトリアリルイソシアヌレート系化合物が例示される。
(F)成分の含有量は限定されないが、本組成物100質量部に対して0.0001〜5質量部の範囲内あるいは0.01〜3質量部の範囲内であることが好ましい。
また、本組成物には、硬化中に接触している基材への接着性を更に向上させるために、接着促進剤を含有してもよい。この接着促進剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に1個以上有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、およびメトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、およびハロゲン化アルキル基等の前記と同様のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、および4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、および3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、および8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;イソシアネート基;イソシアヌレート基;並びに水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中の脂肪族不飽和炭化水素基又はケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合脂肪族不飽和炭化水素基またはケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。
接着促進剤の含有量は限定されないが、本組成物100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内あるいは0.1〜3質量部の範囲内であることが好ましい。
また、本組成物には、その他任意の成分として、蛍光体を含有してもよい。この蛍光体としては、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、青色発光蛍光体、およびこれらの少なくとも2種の混合物が例示される。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色〜黄色発光蛍光体、セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体、および、セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色〜黄色発光蛍光体が例示される。酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色〜緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するY
2O
2S系赤色発光蛍光体が例示される。
この蛍光体の含有量は特に限定されないが、本組成物中、0.1〜70質量%の範囲内あるいは1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他の任意の成分として、シリカ、ガラス、およびアルミナ等から選択される1種以上の無機質充填剤;シリコーンゴム粉末;シリコーン樹脂、およびポリメタクリレート樹脂等の樹脂粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、界面活性剤、溶剤等から選択される1種以上の成分を含有してもよい。
本組成物は、室温放置や、加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。加熱温度は、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。
本組成物は、硬化して、JIS K 6253に規定されるタイプAデュロメータ硬さが15〜99あるいは30〜95である硬化物を形成することが好ましい。これは、硬化性シリコーン組成物の硬化物の硬さが上記範囲の下限以上であると、強度を有し、これを光半導体素子の封止材または被覆材として用いた場合の保護性が優れるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物が柔軟となり、耐久性が優れるからである。
次に、本発明の光半導体装置を詳細に説明する。
本発明の光半導体装置は、光半導体素子が上記組成物の硬化物により封止、被覆、あるいは接着されていることを特徴とする。この光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
発光ダイオード(LED)は、光半導体素子の上下左右から発光が起きるので、発光ダイオード(LED)を構成する部品は、光を吸収するものは好ましくなく、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。そのため、光半導体素子が搭載される基板も、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。こうした光半導体素子が搭載される基板としては、例えば、銀、金、および銅等の導電性金属;アルミニウム、およびニッケル等の非導電性の金属;PPA、およびLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、およびシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、および窒化アルミナ等のセラミックスが例示される。硬化性シリコーン組成物の硬化物は、光半導体素子および基板に対して耐熱衝撃性が良好であるので、得られる光半導体装置は、良好な信頼性を示すことができる。
本発明の光半導体装置の一例である表面実装型LEDの断面図を
図1に示した。
図1で示されるLEDは、光半導体素子1がリードフレーム2上にダイボンドされ、この光半導体素子1とリードフレーム3とがボンディングワイヤ4によりワイヤボンディングされている。この光半導体素子1の周囲には、光反射材5が形成され、この光反射材5の内側の光半導体素子1は上記の硬化性シリコーン組成物の硬化物6により封止されている。
図1で示される表面実装型LEDを製造する方法としては、光反射材5の内側のリードフレーム2上に光半導体素子1をダイボンドし、この光半導体素子1とリードフレーム3とを金製のボンディングワイヤ4によりワイヤボンドし、次いで、光半導体素子1を、上記の硬化性シリコーン組成物で樹脂封止する方法が例示される。
【実施例】
【0009】
本発明の硬化性シリコーン組成物および光半導体装置を実施例および比較例により詳細に説明する。なお、硬化性シリコーン組成物の硬化物の硬さ、硬化性シリコーン組成物の硬化物の初期剥離率、および硬化物の吸湿リフロー後の剥離率を次のようにして測定した。
[硬さ]
硬化性シリコーン組成物を150℃で1時間、5MPaの圧力でプレス成形することによりシート状の硬化物を作製した。このシート状の硬化物の硬さをJIS K 6253に規定されるタイプAデュロメータにより測定した。
また、硬化性シリコーン組成物を用いて、150℃で1時間加熱することにより、
図1で示される光半導体装置を作製した。この光半導体装置に対する硬化性シリコーン組成物の耐剥離性を、次のようにして測定した。
[初期剥離率]
光半導体装置20個について、リードフレームおよびワイヤボンディングと硬化物との間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した割合(剥離した個数/20個)を剥離率とした。
[吸湿リフロー後の剥離率]
上記の光半導体装置20個を85C/85%RHオーブンに168時間保管し、280℃のオーブン内に30秒間置いた後、室温(25℃)下に戻して、リードフレームおよびボンディングワイヤと硬化物との間の剥離状態を光学顕微鏡で観察し、剥離した割合(剥離した個数/20個)を剥離率とした。
[実施例1〜6、比較例1〜8]
次の成分を表1および表2に示す組成(質量部)で均一に混合して実施例1〜6および比較例1〜8の硬化性シリコーン組成物を調製した。なお、式中、Viはビニル基を表し、Meはメチル基を示す。また、表1および表2において、SiH/Viは、硬化性シリコーン組成物において、(A)成分中のビニル基の合計1モルに対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計モル数を示す。
(A)成分として、次の成分を用いた。なお、粘度は25℃における値であり、JIS K7117−1に準拠したB型粘度計を用いて測定した。
(a−1−1)成分:粘度300mPa・sであり、平均式:
Me
2ViSiO(Me
2SiO)
150SiMe
2Vi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.48質量%)
(a−1−2)成分:粘度10,000mPa・sであり、平均式:
Me
2ViSiO(Me
2SiO)
500SiMe
2Vi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.15質量%)
(a−2−1)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性である、平均単位式:
(Me
2ViSiO
1/2)
0.15(Me
3SiO
1/2)
0.38(SiO
4/2)
0.47(HO
1/2)
0.01
で表される、一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=4.2質量%)
(a−2−2)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性である、平均単位式:
(Me
2ViSiO
1/2)
0.13(Me
3SiO
1/2)
0.45(SiO
4/2)
0.42(HO
1/2)
0.01
で表される、一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=3.4質量%)
(B)成分として、次の成分を用いた。なお、粘度は、25℃における値であり、JIS K7117−1に準拠したB型粘度計を用いて測定した。
(b−1)成分:平均式:
Me
3SiO(MeHSiO)
55SiMe
3
で表される、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.6質量%)
(b−2)成分:平均式:
Me
3SiO(MeHSiO)
15SiMe
3
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.42質量%)
(C)成分として、次の成分を用いた。
(c−1)成分:ベンゾトリアゾール
(c−2)成分:トリルトリアゾール
(c−3)成分:カルボキシベンゾトリアゾール
(D)成分として、次の成分を用いた。
(d−1)成分:ジルコニウムエチルアセトアセテート
(d−2)成分:イソプロピルトリイソステアロイルチタネート
(d−3)成分:アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート
(E)成分として、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約6000ppm)を用いた。
(F)成分として、1−エチニルシクロヘキサン−1−オールを用いた。
【表1】
【表2】
表1および表2の結果から、実施例1〜6の硬化性シリコーン組成物の硬化物は、光半導体装置におけるリードフレームやボンディングワイヤに対して高い耐剥離性を有することがわかった。