【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
(層状ペロブスカイト型複合酸化物の調製方法)
このガスセンサ用材料の複合酸化物の製造方法について説明する。一般式(1)で示される層状ペロブスカイト型複合酸化物を調整する為の出発原料としては、高純度で水溶性の化合物であれば使用可能であるが、ここでは所定の量の硝酸塩を用い、溶媒エチレングリコール(EG)に溶解し、アセチルアセトン(AcAc)ポリビニルピロリドン(PVP)を加え、超音波分散後、高分子前駆体溶液を得て、この前駆体溶液を蒸発乾固させ、メノウ乳鉢で30分間粉砕後、700〜750℃の温度にて大気雰囲気下で2時間焼成することにより、平均粒径0.2μmの粉体を得た。例えば、La
1.9Ce
0.1CuO
4を調製する為に、硝酸ランタン(和光純薬工業(株)社製、99.9%)9.5モル部に対して、硝酸セリウム(キシダ化学(株)社製、特級)0.5モル部、硝酸銅(和光純薬工業(株)社製、99.9%)を5モル部を溶媒エチレングリコール(和光純薬工業(株)社製、特級グレード)0.5モル部(EGに溶解させ、アセチルアセトン(AcAc)(和光純薬工業(株)社製、特級)30モル部およびポリビニルピロリドン(PVP)(キシダ化学(株)社製、K−90)15重量%を加え、以下は前記同様に処理し、平均粒径0.2μmの粉体を得た。
【0021】
前駆体および得られた粉末のキャラクタリゼーションは、XRD,BETおよびXPSなどにより行った。また、COおよびNO
2吸着量をパルス測定によって評価した。
図1に、合成した各酸化物粉末のXRDパターンと、それらBET比表面積を示す。XRDパターンによると、均質な結晶をほぼ単相で得られたことが分かった。部分置換を行った場合でも、結晶構造の変化はほとんど見られなかったが、部分置換を行うことで比表面積が大きくなった。一方、BET比表面積の測定においては、部分置換により比表面積が増加することが確認された。また、Ceなどの高価数の4価を有する元素で置換したものは、Cuが低価数に変化していることがXPSから確認された。
【0022】
(酸化物厚膜インピーダンス検出型ガスセンサの作成方法とガス測定方法)
このようにして合成したペロブスカイト型複合酸化物粉末をポリビニールピロリドン(PVP)(キシダ化学(株)社製、K−90グレード)1重量部とα−テルピノール(和光純薬工業(株)社製、99%)9重量部を用いてペーストを作製し、櫛形金電極付きアルミナ基板(ミタニマイクロニクス九州株式会社製、)にスクリーンプリントし、750−850℃で、焼き付けることにより
図2に示す構造の酸化物厚膜インピーダンス検出型ガスセンサを作製した。このようにして作成したセンサをLCRメーターに接続し、反応管内に挿入後昇温し、主にベースガスを合成乾燥空気でCO、NO
2などのガスを酸素分圧0.21atm一定で流し、印加電圧1V,周波数40Hz―5MHzでインピーダンスの抵抗、容量等の応答特性評価を行った。
【0023】
(実施例1)
図3にLa
1.9Ce
0.1CuO
4を複合酸化物として用いた前記酸化物厚膜インピーダンス検出型センサの50Hz、400℃でのCO応答性測定結果を示す。短時間での良好な応答性と濃度依存性を示している。Rは抵抗成分を、Cは容量成分を表している。
【0024】
(実施例2)
また、
図4に同じくLa
1.9Ce
0.1CuO
4を複合酸化物として用いた前記酸化物厚膜インピーダンス検出型センサの50Hz、400℃でのCO、CO
2、NO、NO
2ガスに対する濃度依存性を示す。図縦軸のS
RとS
Cは、夫々、検知ガス測定値と空気測定値の抵抗成分と容量成分の比を表しており、S
R=Rgas(検知対象ガスの抵抗測定値)/Rair(空気の抵抗測定値)、容量成分については、S
C=Cgas(検知ガスの容量測定値)/Cair(空気の容量測定値)で示される。本センサは、
図4に示す様にインピーダンスの抵抗成分、容量成分ともにCO、NO
2に対して高い選択性を示した。また、H
2に対する感度もほとんどなかったので高性能なCO、NO
2センサとなることが分かった。COセンサ応答はCuの酸化還元および吸着酸素の反応性が影響すると考えられる。表面でCOがCu
+サイトを介してCO
2へ酸化されるため、抵抗値が上昇し安定したセンサ応答がみられると考えられる。NO
2に対する良好なセンサ応答は、La
1.9Ce
0.1CuO
4素子のNO
2に対する良好な負電荷吸着特性によるものと考えられる。CO
2とNOに対しても応答が見られたが、COやNO
2程の感度ではなかった。これはこれらのガスとLa
1.9Ce
0.1CuO
4素子との反応性の低さによるものと考えられる。
【0025】
(実施例3と比較例1〜5)
前記の方法で表1に記載の実施例及び比較例の各種層状ペロブスカイト型複合酸化物を調整し、同じく前記酸化物厚膜インピーダンス検出型ガスセンサの作成方法とガス測定方法により、測定した600ppmの一酸化炭素(CO)に対する感度の空気との比較を表1に示す。抵抗成分については、S
R=Rgas(検知対象ガスの抵抗測定値)/Rair(空気の抵抗測定値)、容量成分については、S
C=Cgas(検知ガスの容量測定値)/Cair(空気の容量測定値)で示している。本発明のAサイトの一部をCe置換のものは、抵抗成分、容量成分ともに、1から夫々、正及び負に大きく偏位し、一酸化炭素(CO)に対して特異的に応答しているのに対して、Aサイトを無置換のLa
2CuO
4(比較例5)は、一酸化炭素(CO)に対して弱い応答しか示さなかった。また、AサイトをCeに替わってSrやBaで置換した場合(比較例1〜4)では、無置換のものと比較し応答の向上はあまり見られないか、又はかえって性能が低下した。AサイトのLaの一部をSrで置換し、且つBサイトのCuの一部をZrで置換したもの(比較例2)は、Bサイトを一部置換しないもの(比較例3)よりは少々性能が向上したが、十分な性能ではなかった。Ce置換で応答性能が向上し、他のランタナイド元素で向上しないのは、これは、Sr等の他のランタナイド元素が2価であり、Ceがランタナイド元素の中で最も高電子価の3価及び4価であることから、高電子価のCeで置換すると、Cuの低価数への変化と、酸素の低エネルギー側へのシフトが一酸化炭素(CO)応答特性向上に寄与することが示唆された。
【0026】
【表1】
【0027】
(固体電解質インピーダンス検出型センサの作成方法;実施例4)
本発明の層状ぺロブスカイト型構造を有する複合酸化物のガスセンサ用材料は、固体電解質インピーダンス検知型センサデバイスのレセプタ材料としても利用可能である。前述の方法で調製したLa
1.9Ce
0.1CuO
4粉末をポリビニールピロリドン(PVP)(メーカー、純度)1重量部とα−テルピノール((メーカー、純度)9重量部の比率で混合したものをペースト状になるまで粉末に加えながら混練してペーストを作製し、固体電解質基板(YSZ等)にスクリーンプリントし、750−850℃で、焼き付けることにより
図5に示す固体電解質インピーダンス検出型センサを作製し、100kHz、500℃で測定したLa
1.9Ce
0.1CuO
4/YSZ固体電解質インピーダンス検出型センサのCO応答性測定結果を
図6に示す。短時間での良好な応答性と濃度依存性を示している。