特許第6586694号(P6586694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6586694ガスセンサ用材料及びその製造方法、並びにこれを用いたガスセンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586694
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】ガスセンサ用材料及びその製造方法、並びにこれを用いたガスセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20191001BHJP
   C01G 3/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   G01N27/12 C
   C01G3/00
   G01N27/12 M
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-136382(P2015-136382)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2017-20815(P2017-20815A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年4月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年1月8日発行 第53回セラミックス基礎科学討論会実行委員会 「第53回セラミックス基礎科学討論会講演要旨集」に発表、2015年6月27日発行 日本化学会九州支部設立100周年記念国際シンポジウム 「第52回化学関連支部合同九州大会講演予稿集」に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山元 信佑
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 聡子
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−222028(JP,A)
【文献】 特開2009−175153(JP,A)
【文献】 特表2011−501127(JP,A)
【文献】 特開平03−080108(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0138259(US,A1)
【文献】 特開2003−107040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
C01G 1/00−23/08
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(1)、ACeBO・・・・・・・(1)(式中、Aが一種のランタノイド系元素で、0<≦0.2であり、BがCu、Zr、Zn、Ni、Ti,Nb、Mo、又はWから選ばれる一種又は二種の元素を示す)で示される複合酸化物を含有することを特徴とする一酸化炭素ガスセンサ用材料
【請求項2】
請求項1の複合酸化物においてAがLaであり、BがCuであることを特徴とする一酸化炭素ガスセンサ用材料
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の複合酸化物を構成する元素の水溶性の化合物を一般式(1)の化学量論比で溶媒に溶解させ混合する工程と、混合物を乾燥した後焼成し前駆体酸化物を得る工程と、前駆体酸化物を焼成する工程を含む一酸化炭素ガスセンサ用材料の複合酸化物の製造方法
【請求項4】
請求項3記載の複合酸化物をペーストとし、くし形金電極付き絶縁基板上にスクリーン印刷した後焼き付けることにより酸化物厚膜を形成する直流抵抗測定又は交流インピーダンス測定型の一酸化炭素ガスセンサの製造方法
【請求項5】
請求項3記載の複合酸化物をペーストとし、固体電解質上にスクリーン印刷した後焼き付けることにより酸化物層を形成する固体電解質インピーダンス検出型の一酸化炭素ガスセンサの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温領域でも安定して高感度、高選択的に使用できる複合酸化物ガスセンサ用材料及びその製造方法、並びにこれを用いたガスセンサの製造方法に関する。特に好適には、一酸化炭素(CO)及び二酸化窒素(NO)測定用のガスセンサ用材料及びその製造方法、並びにこれを用いたガスセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼生成物である一酸化炭素(CO)や二酸化窒素(NO)は中毒や大気汚染の原因となるために濃度監視が必要であり、小型で精度の高いセンサが必要とされている。特に一酸化炭素(CO)は、不完全燃焼の生成物であり、毒性が強いことや水素燃料中の不純物として触媒を被毒するため、高性能センサが必要とされている。従来の一酸化炭素濃度測定用センサは、半導体式、電気化学式が実用化されているが、前者は80℃程度の低温でしか感度を有しないため、定期的に高温に昇温して吸着雑ガスを排気させるヒートサイクル方式が、後者は、電解液を用いるため常温でしか使用されず中・高温度域での作動に問題があった。
【0003】
先行の非特許文献1では、主に単独酸化物を調べているが、水素の妨害を受けるなど難点があった。
【0004】
先行の非特許文献2では、本発明の素子と類似する構造のLaCuO/YSZ/Ptの起電力型センサを調べているが、主にNOガスセンサに対するものであり、妨害ガスとして検討されているCOガス感度も低く、安定性に課題があった。
【0005】
特許文献1では、高温域用のセンサ素子としてSb添加の内層のSnO膜と、Sb無添加の外層のSnO膜とを積層したCOと可燃性ガスセンサを紹介しているが、これは高温度域で検出する可燃性ガス感度の性能向上を目指したものであり、COは低温度域でしか感度を有しないため、高温度ではCOを検知できないという問題があった。
【0006】
特許文献2は、固体電解質型ガスセンサで、電極が基板表面上に配置されており、基板が固体電解質を含み、電極としてLaCuOを開示しており、電解質としてZrO、Bi、及びCeOを開示している。ガスが一種以上のNO,CO,及びSOであるとあり、ZrO、Bi、又はCeOが基板に含まれる電解質として用いられるとある。しかし、特許文献2は本発明のインピーダンス検出型とは異なり混成電位を検出する固体電解質型であること、非対称系であるから酸素分圧の影響やドリフトを不可避と言う問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】N.D.Cuong, D.Q.Khieu, T.T.Hoa,D.T.Quang, P.H.Viet, T.D.Lam, N.D.Hoa, N.V.Hieu,Materials Research Bulletin, 68(2015)302−307
【非特許文献2】E.R.Macam, B.M.White, B.M.Blackburn,E.D.Bartolomeo, E.Traversa, E.D.Wachsman, Sensors and Actuators B, 160(2011) 957−963
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−321231
【特許文献2】特表2011−501127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは高温領域でも安定して高感度で使用できる層状ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物ガスセンサ用材料及びその製造方法、並びに、これを用いたガスセンサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行なった。本発明のガスセンサ用材料として、一般式(1)、A2−XCeBO・・・・・・(1)(式中、Aが一種のランタノイド系元素で、0<≦0.2であり、BがCu、Zr、Zn、Ni、Ti,Nb、Mo、又はWから選ばれる一種又は二種の元素を示す)で示される層状ぺロブスカイト型構造を有する複合酸化物が一酸化炭素(CO)や二酸化窒素(NO)測定用のインピーダンス検出型ガスセンサ用材料として好適であることを見出した。その中でも特に、AサイトにLaをBサイトにCu用い、La1.9Ce0.1CuOとしたものが優れた性能を有することを見出した。
【0011】
この層状ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末を溶剤と高分子と混合してペーストとし、くし形金電極付きアルミナ基板上にスクリーンプリントし、焼き付けることで酸化物厚膜検出型ガスセンサを作製し、一定周波数の交流電流を流し、交流インピーダンス法用いてガス濃度を測定したところ、上記課題が解決できることを見出し、本発明を解決した。
【0012】
あるいは、この層状ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物粉末を溶剤と高分子と混合してペーストとし、固体電解質上にスクリーンプリントし、焼き付けることで酸化物レセプタ層を形成させた固体電解質インピーダンス検出型センサを作製し、固体電解質に一定高周波を印加し交流インピーダンス法用いてガス濃度を測定したところ、上記課題が解決できることを見出し、本発明を解決した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、層状ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物のAサイトが部分置換されることにより比表面積が大きくなり、ガス吸着量が増す。また、Aサイトが高価数のCeで部分置換されることにより、Bサイトが一部低価数に変化し、吸着したガス分子が酸化されるため抵抗値が上昇し、安定したセンサ応答が得られ、300℃から500℃付近までの高温域で特に高いセンサとすることができる。
【0014】
この複合酸化物厚膜型センサは、一酸化炭素応答特性を、交流インピーダンス法を用い、空気雰囲気中で種々のCO濃度に対して、400℃付近の高温域で、50Hzで測定したところ、安定して高感度の応答性が確認されたが、応答は抵抗成分、容量成分ともに得られ濃度依存性が確認された。Ce置換複合酸化物系では酸素の脱離開始温度が低く、化学吸着酸素の反応性が高いことや化学吸着酸素が多いためと考えられる。本センサは、300乃至500℃という高温で作動可能であるため、排気ガス中の直接測定などに有効である。この酸化物厚膜検出型ガスセンサでは交流インピーダンス法のみならず、直流電流を印加し直流抵抗値を測定することによってもガスセンサとして利用できる。また、複合酸化物粉末を溶剤と高分子と混合してペーストとし、固体電解質上にスクリーンプリントし、焼き付けることで複合酸化物レセプタ層を形成させた固体電解質インピーダンス検出型センサを作製し、固体電解質に一定高周波を印加し交流インピーダンス法によってもガスセンサとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】合成した各酸化物粉末のXRDパターンと、それらのBET比表面積
図2】センサ素子構造(酸化物厚膜インピーダンス検出型)
図3】La1.9Ce0.1CuOを用いた厚膜インピーダンス検出型センサのCO応答性測定結果(400℃、50Hz)
図4】La1.9Ce0.1CuOを用いた厚膜インピーダンス検出型センサのCO、CO2、NO、NO2ガスに対する濃度依存性
図5】センサ素子構造(固体電解質インピーダンス検出型)
図6】La1.9Ce0.1CuO/YSZ固体電解質インピーダンス検出型センサのCO応答性測定結果
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のガスセンサ用材料及びその製造方法、並びにこれを用いたガスセンサの製造方法について詳細に説明する。
【0017】
本発明のガスセンサ用材料は、一般式(1)、A2−XCeBO(0<≦0.2)・・・・(1)で表される層状ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物を含む。このように、A サイトの一部をCeで置換し欠損型とすることにより、酸素イオン伝導性のみならず、Cuの価数変化が生じることによりガス感度が著しく向上する。ここで、Aサイトの構成元素としては、一種のランタノイド系元素を用いるが、好ましくはLaであり、0<≦0.2であり、好ましくは、0.05≦≦0.15であり、より好ましくは、=0.1である。BとしてはCu、Zr、Zn、Ni、Ti,Nb、Mo、Wから選ばれる一種又は二種の元素を用いるが、Cuを主たる成分として用いるのが好ましく、他の元素で一部置換しても良い。
【0018】
一般式(1)で示される基本構造を有する層状ペロブスカイト型複合酸化物のAサイトを別のランタノイド元素で一部置換したものにおいては、部分置換を行うことで比表面積が大きくなり、ガス吸着量が増した。そして、特にAサイトにCeで一部置換したLaを、BサイトにCu用い、La1.9Ce0.1CuOとした材料を用いCOガスセンサとした場合、300℃から500℃付近までの高温域で特に高いセンサ応答を示した。Aサイトの元素を他の元素で部分置換を行うことで比表面積が大きくなっただけではなく、Ceは、ランタノイドで唯一+4価が安定な元素であり、高価数の4価の元素で置換することにより、Cuが低価数に変化していることがXPSから確認された。この低価数に変化したCuサイトでは、吸着したCO分子がCO2分子に酸化されるため、抵抗値が上昇し、安定したセンサ応答がみられると考えられる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
(層状ペロブスカイト型複合酸化物の調製方法)
このガスセンサ用材料の複合酸化物の製造方法について説明する。一般式(1)で示される層状ペロブスカイト型複合酸化物を調整する為の出発原料としては、高純度で水溶性の化合物であれば使用可能であるが、ここでは所定の量の硝酸塩を用い、溶媒エチレングリコール(EG)に溶解し、アセチルアセトン(AcAc)ポリビニルピロリドン(PVP)を加え、超音波分散後、高分子前駆体溶液を得て、この前駆体溶液を蒸発乾固させ、メノウ乳鉢で30分間粉砕後、700〜750℃の温度にて大気雰囲気下で2時間焼成することにより、平均粒径0.2μmの粉体を得た。例えば、La1.9Ce0.1CuOを調製する為に、硝酸ランタン(和光純薬工業(株)社製、99.9%)9.5モル部に対して、硝酸セリウム(キシダ化学(株)社製、特級)0.5モル部、硝酸銅(和光純薬工業(株)社製、99.9%)を5モル部を溶媒エチレングリコール(和光純薬工業(株)社製、特級グレード)0.5モル部(EGに溶解させ、アセチルアセトン(AcAc)(和光純薬工業(株)社製、特級)30モル部およびポリビニルピロリドン(PVP)(キシダ化学(株)社製、K−90)15重量%を加え、以下は前記同様に処理し、平均粒径0.2μmの粉体を得た。
【0021】
前駆体および得られた粉末のキャラクタリゼーションは、XRD,BETおよびXPSなどにより行った。また、COおよびNO吸着量をパルス測定によって評価した。図1に、合成した各酸化物粉末のXRDパターンと、それらBET比表面積を示す。XRDパターンによると、均質な結晶をほぼ単相で得られたことが分かった。部分置換を行った場合でも、結晶構造の変化はほとんど見られなかったが、部分置換を行うことで比表面積が大きくなった。一方、BET比表面積の測定においては、部分置換により比表面積が増加することが確認された。また、Ceなどの高価数の4価を有する元素で置換したものは、Cuが低価数に変化していることがXPSから確認された。
【0022】
(酸化物厚膜インピーダンス検出型ガスセンサの作成方法とガス測定方法)
このようにして合成したペロブスカイト型複合酸化物粉末をポリビニールピロリドン(PVP)(キシダ化学(株)社製、K−90グレード)1重量部とα−テルピノール(和光純薬工業(株)社製、99%)9重量部を用いてペーストを作製し、櫛形金電極付きアルミナ基板(ミタニマイクロニクス九州株式会社製、)にスクリーンプリントし、750−850℃で、焼き付けることにより図2に示す構造の酸化物厚膜インピーダンス検出型ガスセンサを作製した。このようにして作成したセンサをLCRメーターに接続し、反応管内に挿入後昇温し、主にベースガスを合成乾燥空気でCO、NOなどのガスを酸素分圧0.21atm一定で流し、印加電圧1V,周波数40Hz―5MHzでインピーダンスの抵抗、容量等の応答特性評価を行った。
【0023】
(実施例1)
図3にLa1.9Ce0.1CuOを複合酸化物として用いた前記酸化物厚膜インピーダンス検出型センサの50Hz、400℃でのCO応答性測定結果を示す。短時間での良好な応答性と濃度依存性を示している。Rは抵抗成分を、Cは容量成分を表している。
【0024】
(実施例2)
また、図4に同じくLa1.9Ce0.1CuOを複合酸化物として用いた前記酸化物厚膜インピーダンス検出型センサの50Hz、400℃でのCO、CO、NO、NOガスに対する濃度依存性を示す。図縦軸のSとSは、夫々、検知ガス測定値と空気測定値の抵抗成分と容量成分の比を表しており、S=Rgas(検知対象ガスの抵抗測定値)/Rair(空気の抵抗測定値)、容量成分については、S=Cgas(検知ガスの容量測定値)/Cair(空気の容量測定値)で示される。本センサは、図4に示す様にインピーダンスの抵抗成分、容量成分ともにCO、NOに対して高い選択性を示した。また、Hに対する感度もほとんどなかったので高性能なCO、NOセンサとなることが分かった。COセンサ応答はCuの酸化還元および吸着酸素の反応性が影響すると考えられる。表面でCOがCuサイトを介してCOへ酸化されるため、抵抗値が上昇し安定したセンサ応答がみられると考えられる。NOに対する良好なセンサ応答は、La1.9Ce0.1CuO素子のNOに対する良好な負電荷吸着特性によるものと考えられる。COとNOに対しても応答が見られたが、COやNO程の感度ではなかった。これはこれらのガスとLa1.9Ce0.1CuO素子との反応性の低さによるものと考えられる。
【0025】
(実施例3と比較例1〜5)
前記の方法で表1に記載の実施例及び比較例の各種層状ペロブスカイト型複合酸化物を調整し、同じく前記酸化物厚膜インピーダンス検出型ガスセンサの作成方法とガス測定方法により、測定した600ppmの一酸化炭素(CO)に対する感度の空気との比較を表1に示す。抵抗成分については、S=Rgas(検知対象ガスの抵抗測定値)/Rair(空気の抵抗測定値)、容量成分については、S=Cgas(検知ガスの容量測定値)/Cair(空気の容量測定値)で示している。本発明のAサイトの一部をCe置換のものは、抵抗成分、容量成分ともに、1から夫々、正及び負に大きく偏位し、一酸化炭素(CO)に対して特異的に応答しているのに対して、Aサイトを無置換のLaCuO(比較例5)は、一酸化炭素(CO)に対して弱い応答しか示さなかった。また、AサイトをCeに替わってSrやBaで置換した場合(比較例1〜4)では、無置換のものと比較し応答の向上はあまり見られないか、又はかえって性能が低下した。AサイトのLaの一部をSrで置換し、且つBサイトのCuの一部をZrで置換したもの(比較例2)は、Bサイトを一部置換しないもの(比較例3)よりは少々性能が向上したが、十分な性能ではなかった。Ce置換で応答性能が向上し、他のランタナイド元素で向上しないのは、これは、Sr等の他のランタナイド元素が2価であり、Ceがランタナイド元素の中で最も高電子価の3価及び4価であることから、高電子価のCeで置換すると、Cuの低価数への変化と、酸素の低エネルギー側へのシフトが一酸化炭素(CO)応答特性向上に寄与することが示唆された。
【0026】
【表1】
【0027】
(固体電解質インピーダンス検出型センサの作成方法;実施例4)
本発明の層状ぺロブスカイト型構造を有する複合酸化物のガスセンサ用材料は、固体電解質インピーダンス検知型センサデバイスのレセプタ材料としても利用可能である。前述の方法で調製したLa1.9Ce0.1CuO粉末をポリビニールピロリドン(PVP)(メーカー、純度)1重量部とα−テルピノール((メーカー、純度)9重量部の比率で混合したものをペースト状になるまで粉末に加えながら混練してペーストを作製し、固体電解質基板(YSZ等)にスクリーンプリントし、750−850℃で、焼き付けることにより図5に示す固体電解質インピーダンス検出型センサを作製し、100kHz、500℃で測定したLa1.9Ce0.1CuO/YSZ固体電解質インピーダンス検出型センサのCO応答性測定結果を図6に示す。短時間での良好な応答性と濃度依存性を示している。
【符号の説明】
【0028】
1 複合酸化物層2 Auワイヤー3 櫛形電極付きアルミナ基板4 Auスパッタ5 Auワイヤー6 YSZ(イットリウム安定化ジルコニア固体電解質)7 無機接着剤8 複合酸化物レセプタ層
図1
図2
図3
図4
図5
図6