特許第6586722号(P6586722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586722
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】冷凍機油、冷凍機油組成物、及び冷凍機
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20191001BHJP
   C10M 137/04 20060101ALN20191001BHJP
   C10M 107/24 20060101ALN20191001BHJP
   C09K 5/04 20060101ALN20191001BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20191001BHJP
【FI】
   C10M169/04
   !C10M137/04
   !C10M107/24
   !C09K5/04 A
   C10N30:06
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-175820(P2014-175820)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50242(P2016-50242A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 知也
(72)【発明者】
【氏名】金子 正人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆司
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/118708(WO,A1)
【文献】 特開2010−209360(JP,A)
【文献】 特開2013−189506(JP,A)
【文献】 特開2011−162766(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/112417(WO,A1)
【文献】 特開2012−131994(JP,A)
【文献】 特開2011−178990(JP,A)
【文献】 特開2006−275013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00〜177/00
C10N10/00〜80/00
C09K 5/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含酸素有機化合物を含む基油と、下記一般式(1)で表されるリン系化合物とを含み、前記含酸素有機化合物が、ポリビニルエーテル類から選択される1種以上であり、前記ポリビニルエーテル類の1つの末端が下記一般式(A−1−i)で表され、残りの末端が下記一般式(A−1−ii)で表され、冷媒環境下で使用される冷凍機油。
【化1】

(ただし、式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Arは炭素数2〜20の二価の炭化水素基を表す。)
【化2】

(式(A−1−i)中、R6a,R7a及びR8aは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R9aは炭素数2〜10の二価の炭化水素基、R10aは炭素数1〜10の炭化水素基、r1はその平均値が0〜10の数を示し、R9aOが複数ある場合には複数のR9aOは同一であっても異なっていてもよい。)
【化3】

(式(A−1−ii)中、R11a,R12a及びR13aは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、R14aは炭素数2〜10の二価の炭化水素基、R15aは炭素数1〜10の炭化水素基、r2はその平均値が0〜10の数を示し、R14aOが複数ある場合には複数のR14aOは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記リン系化合物が、冷凍機油全量に対して0.3〜10.0質量%である請求項1に記載の冷凍機油。
【請求項3】
一般式(1)においてArがアリーレン基を含む請求項1又は2に記載の冷凍機油。
【請求項4】
一般式(1)においてArが以下の一般式(2)又は一般式(3)で表されるいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷凍機油。
【化4】
【請求項5】
冷媒と、請求項1〜4のいずれか1項に記載される冷凍機油とを含む冷凍機油組成物。
【請求項6】
前記冷媒が、フッ化炭化水素、二酸化炭素、炭化水素、及びアンモニアの中から選択される1種又は2種以上を含む請求項5に記載の冷凍機油組成物。
【請求項7】
前記フッ化炭化水素が、炭素数1〜3の飽和フッ化炭化水素化合物を2種以上混合した混合冷媒である請求項6に記載の冷凍機油組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載される冷凍機油、又は請求項5〜7のいずれか1項に記載される冷凍機油組成物が充填された冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油、並びにその冷凍機油を使用した冷凍機油組成物及び冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒空調器やカーエアコン等の冷凍機では、例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)等の冷媒が使用されてきた。しかし、CFC冷媒は、環境問題の原因となる塩素原子を含む化合物であるため、ハイドロフルオロカーボン(HFC)等の塩素原子を含有しないフッ化炭化水素冷媒への切り替えが行われつつある。HFC冷媒としては、R32(ジフロオロエタン)やR134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)、さらには混合冷媒であるR410A(ジフルオロエタンとペンタフルオロエタンの混合物)等も使用されている。
【0003】
冷凍機では、冷媒と冷凍機油との混合物(以下、「冷凍機油組成物」ともいう)が密閉された系内を循環する構造となっているため、冷凍機油には冷媒との相溶性や、冷凍機油の安定性及び潤滑性能が要求される。これら要求性能が満たされやすくするために、HFC冷媒に対しては、ビニルエーテル化合物、ポリオキシアルキレングリコール等の含酸素有機化合物を主成分として含む冷凍機油が一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
また、冷凍機油の安定性及び潤滑性能をより改善するために、これら含酸素有機化合物を主成分として含む冷凍機油に各種添加剤を添加することが知られている。例えば、特許文献2には、トリクレジルホスフェート(TCP)等のリン系化合物を、ポリオキシアルキレングリコール系の冷凍機油に添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−128578号公報
【特許文献2】特開平10−130683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、各種冷凍機には省エネルギー化の要求が高まりつつあり、成績係数(COP)を向上させることが求められている。冷凍機油には、COP向上のために、冷凍機油の安定性及び潤滑性能の改善に加え、冷凍機の摺動部分における摩擦係数を低くすることも求められる。しかしながら、リン系化合物としてTCPを添加した冷凍機油では、摩擦係数を十分に低くすることが難しく、更なる改善が要求されている。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、含酸素有機化合物を基油として含む冷凍機油を使用した場合に、摺動部分における摩擦係数を低下させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、含酸素有機化合物を含む基油に、一分子中に少なくとも2つ以上のリン原子を有する所定のリン系化合物を含有させることにより、摺動部分における摩擦係数を低減できることを見出し、以下の[1]を完成させた。
[1]含酸素有機化合物を含む基油と、下記一般式(1)で表されるリン系化合物とを含み、冷媒環境下で使用される冷凍機油。
【化1】
(ただし、式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1〜R8は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Arは炭素数2〜20の二価の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基油に所定のリン系化合物を含有させることで、摺動部分における摩擦係数を下げることが可能となるので、成績係数(COP)の高い冷凍機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、実施形態を用いて説明する。
本発明の一実施形態に係る冷凍機油は、基油と、リン系化合物とを含み、冷媒環境下で使用されるものである。以下、冷凍機油に含有される各成分について詳細に説明する。
【0010】
[基油]
本実施形態における基油は、含酸素有機化合物を含むものである。含酸素有機化合物としては、分子中にエーテル基、ケトン基、エステル基、カーボネート基、ヒドロキシル基などを含有する合成油、さらにはこれらの基とともにヘトロ原子(硫黄原子,リン原子,フッ素原子,塩素原子,珪素原子,窒素原子など)を含有する合成油が挙げられる。より具体的には、ポリビニルエーテル類(PVE)、ポリオキシアルキレングリコール類(PAG)、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体(エチレンコポリマー:ECP)、及びポリオールエステル類(POE)から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中では、ポリビニルエーテル類(PVE)及びポリオキシアルキレングリコール類(PAG)から選ばれる1種以上が好ましく、中でも、ポリビニルエーテル類(PVE)から選ばれる1種以上がより好ましい。
含酸素有機化合物は、冷凍機油の主成分となるものであり、含酸素有機化合物は、冷凍機油全量に対して、70〜99.7質量%含有されることが好ましく、90〜99.5質量%含有されることがより好ましい。
【0011】
以下、基油として使用されるPVE、PAG、ECP、POEについてより詳細に説明する。
<ポリビニルエーテル類(PVE)>
ポリビニルエーテル類(PVE)は、ビニルエーテル由来の構成単位を有する重合体であり、具体的には、下記一般式(A−1)で表される構成単位を有するポリビニル系化合物が挙げられる。
【0012】
【化2】
【0013】
上記一般式(A−1)におけるR1a、R2a及びR3aはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。ここで炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基などのアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基などのアリールアルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。また、R1a、R2a及びR3aは水素原子あるいは炭素数3以下のアルキル基がより好ましい。
【0014】
4aは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基を示すが、ここで炭素数2〜10の二価の炭化水素基としては、具体的にはエチレン基、フェニルエチレン基、1,2−プロピレン基、2−フェニル−1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基などの二価の脂肪族炭化水素基;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式炭化水素基;各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレンなどの二価の芳香族炭化水素基;トルエン、エチルベンゼンなどのアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分にそれぞれ一価の結合部位を有するアルキル芳香族炭化水素基;キシレン、ジエチルベンゼンなどのポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有するアルキル芳香族炭化水素基などがある。これらの中で炭素数2〜4の脂肪族炭化水素基がより好ましい。また複数のR4aOは同一でも異なっていてもよい。
【0015】
さらに、一般式(A−1)におけるR5aは炭素数1〜10の炭化水素基を示すが、この炭化水素基とは、具体的にはメチル基,エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基,各種フェニルブチル基などのアリールアルキル基を示す。この中で炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0016】
上記一般式(A−1)で表される構成単位を有するポリビニル系化合物の中でも、R1a,R2a及びR3aがいずれも水素原子、rが0であって、R5aがエチル基である構成単位を50〜100モル%、R5aが炭素数3もしくは4のアルキル基である構成単位を0〜50モル%を含む重合体又は共重合体が好ましい。
5aがエチル基である構成単位の割合は、70〜100モル%であるとともに、R5aが炭素数3もしくは4のアルキル基である構成単位の割合は0〜30モル%であることがより好ましく、前者が80〜95%であるとともに後者が5〜20モル%であることがさらに好ましい。
また、前記R5aの炭素数3もしくは4のアルキル基としては、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が使用できるが、特にイソブチル基が好ましい。
【0017】
ポリビニルエーテル系化合物は、上記一般式(A−1)で表される構成単位を有するものであるが、その繰り返し数は、所望する動粘度に応じて適宜選択すればよい。また、上記ポリビニルエーテル系化合物は、対応するビニルエーテル系モノマーの重合により製造することができる。ここで用いることのできるビニルエーテル系モノマーは、以下の一般式(A−2)で示されるものである。
【0018】
【化3】
(式中、R1a,R2a,R3a,R4a及びR5a及びrは前記と同じである。)
【0019】
このビニルエーテル系モノマーとしては、上記ポリビニルエーテル系化合物に対応する各種のものがあるが、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニル−イソプロピルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−イソブチルエーテル、ビニル−sec−ブチルエーテル、ビニル−tert−ブチルエーテル、ビニル−n−ペンチルエーテル、ビニル−n−ヘキシルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル、ビニル−2−エトキシエチルエーテル、ビニル−2−メトキシ−1−メチルエチルエーテル、ビニル−2−メトキシ−プロピルエーテル、ビニル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル、ビニル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル、ビニル−1,4−ジメチル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル、ビニル−1,4,7−トリメチル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル、ビニル−2,6−ジオキサ−4−ヘプチルエーテル、ビニル−2,6,9−トリオキサ−4−デシルエーテル、1−メトキシプロペン、1−エトキシプロペン、1−n−プロポキシプロペン、1−イソプロポキシプロペン、1−n−ブトキシプロペン、1−イソブトキシプロペン、1−sec−ブトキシプロペン、1−tert−ブトキシプロペン、2−メトキシプロペン、2−エトキシプロペン、2−n−プロポキシプロペン、2−イソプロポキシプロペン、2−n−ブトキシプロペン、2−イソブトキシプロペン、2−sec−ブトキシプロペン、2−tert−ブトキシプロペン、1−メトキシ−1−ブテン、1−エトキシ−1−ブテン、1−n−プロポキシ−1−ブテン、1−イソプロポキシ−1−ブテン、1−n−ブトキシ−1−ブテン、1−イソブトキシ−1−ブテン、1−sec−ブトキシ−1−ブテン、1−tert−ブトキシ−1−ブテン、2−メトキシ−1−ブテン、2−エトキシ−1−ブテン、2−n−プロポキシ−1−ブテン、2−イソプロポキシ−1−ブテン、2−n−ブトキシ−1−ブテン、2−イソブトキシ−1−ブテン、2−sec−ブトキシ−1−ブテン、2−tert−ブトキシ−1−ブテン、2−メトキシ−2−ブテン、2−エトキシ−2−ブテン、2−n−プロポキシ−2−ブテン、2−イソプロポキシ−2−ブテン、2−n−ブトキシ−2−ブテン、2−イソブトキシ−2−ブテン、2−sec−ブトキシ−2−ブテン、2−tert−ブトキシ−2−ブテン等が挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。
【0020】
一般式(A−1)で示される重合体の末端部分には、公知の方法により、飽和の炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、アミド、ニトリル等に由来の一価の基を導入してもよい。
中でも、ポリビニルエーテル系化合物としては、次の(1)〜(4)の末端構造を有するものが好適である。
(1)その1つの末端が下記一般式(A−1−i)で表され、残りの末端が下記一般式(A−1−ii)で表されるもの
【化4】
(式中、R6a,R7a及びR8aは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R9aは炭素数2〜10の二価の炭化水素基、R10aは炭素数1〜10の炭化水素基、r1はその平均値が0〜10の数を示し、R9aOが複数ある場合には複数のR9aOは同一であっても異なっていてもよい。)
【化5】
【0021】
(式中、R11a,R12a及びR13aは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、R14aは炭素数2〜10の二価の炭化水素基、R15aは炭素数1〜10の炭化水素基、r2はその平均値が0〜10の数を示し、R14aOが複数ある場合には複数のR14aOは同一であっても異なっていてもよい。)
【0022】
(2)その一つの末端が上記一般式(A−1-i)で表され、かつ残りの末端が一般式(A−1-iii)で表されるもの
【化6】
(式中、R16a、R17a及びR18aは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R19a及びR21aはそれぞれ独立に炭素数2〜10の二価の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、R20a及びR22aはそれぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、r3及びr4はそれぞれその平均値が0〜10の数を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、また複数のR19aOがある場合には複数のR19aOは同一であっても異なっていてもよいし、複数のR21aOがある場合には複数のR21aOは同一であっても異なっていてもよい。)
【0023】
(3)その一つの末端が上記一般式(A−1-i)で表され、かつ残りの末端がオレフィン性不飽和結合を有するもの
(4)その一つの末端が上記一般式(A−1-i)で表され、かつ残りの末端が一般式(A−1-iv)で表されるもの
【化7】
(式中、R23a,R24a及びR25aは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
【0024】
ポリビニルエーテル系混合物は、前記(1)〜(4)の末端構造を有するものの中から選ばれた二種以上の混合物であってもよい。このような混合物としては、例えば前記(1)のものと(4)のものとの混合物、及び前記(2)のものと(3)のものとの混合物を好ましく挙げることができる。
ポリビニルエーテル系化合物は、後述する好ましい粘度範囲のポリビニルエーテル系化合物となるように、重合度、末端構造等を選定することが好ましい。また、ポリビニルエーテル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記一般式(A−1)で表される構成単位を有するポリビニル系化合物の中では、特に1つの末端が上記一般式(A−1−i)で表され、残りの末端が上記一般式(A−1−ii)で表されるものが好ましい。
中でも、式(A−1−i)及び式(A−1−ii)において、R6a,R7a、R8a、R11a,R12a及びR13aが水素原子であるとともに、r1及びr2のいずれもが0であり、R10a,R15aが炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。
【0026】
<ポリオキシアルキレングリコール類(PAG)>
ポリオキシアルキレングリコール類(PAG)としては、下記一般式(B−1)で表される化合物が挙げられる。なお、基油中にPAGが含まれる場合、当該PAGは、単独で又は2種以上を併用してもよい。
1b−[(OR2bm−OR3bn (B−1)
【0027】
(式中、R1bは水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、炭素数2〜10のアシル基、結合部2〜6個を有する炭素数1〜10の炭化水素基又は炭素数1〜10の酸素含有炭化水素基、R2bは炭素数2〜4のアルキレン基、R3bは水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又は炭素数2〜10のアシル基又は炭素数1〜10の酸素含有炭化水素基、nは1〜6の整数、mはm×nの平均値が6〜80となる数を示す。)
【0028】
上記一般式(B−1)において、R1b及びR3bの各々における炭素数1〜10の1価の炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該炭化水素基はアルキル基が好ましく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。上記1価の炭化水素基は、炭素数を10以下とすることで冷媒との相溶性が良好となる。そのような観点から、1価の炭化水素基の炭素数は、より好ましくは1〜4である。
また、R1b及びR3bの各々における炭素数2〜10のアシル基が有する炭化水素基部分は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アシル基の炭化水素基部分は、アルキル基が好ましく、その具体例としては、上述のR1b及びR3bとして選択し得るアルキル基のうち炭素数1〜9のものが挙げられる。該アシル基の炭素数が10以下とすることで冷媒との相溶性が良好となる。好ましいアシル基の炭素数は2〜4である。
1b及びR3bが、いずれも炭化水素基又はアシル基である場合には、R1bとR3bは同一であってもよいし、互いにに異なっていてもよい。
【0029】
さらにnが2以上の場合には、1分子中の複数のR3bは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
1bが結合部位2〜6個を有する炭素数1〜10の炭化水素基である場合、この炭化水素基は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。結合部位2個を有する炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。その他の炭化水素基としては、ビフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールAなどのビスフェノール類から水酸基を除いた残基を挙げることができる。また、結合部位3〜6個を有する炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,3−トリヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどの多価アルコールから水酸基を除いた残基を挙げることができる。
この脂肪族炭化水素基の炭素数が10以下とすることで冷媒との相溶性が良好となる。この脂肪族炭化水素基の好ましい炭素数は2〜6である。
【0030】
さらに、R1b及びR3bの各々における炭素数1〜10の酸素含有炭化水素基としては、エーテル結合を有する鎖状の脂肪族基や環状の脂肪族基(例えば、テトラヒドロフルフリル基)などを挙げることができる。
上記R1b及びR3bの少なくとも一つはアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0031】
前記一般式(B−1)中のR2bは炭素数2〜4のアルキレン基であり、繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。1分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよいし、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよいが、1分子中に少なくともオキシプロピレン単位を含むものが好ましく、オキシアルキレン単位中に50モル%以上のオキシプロピレン単位を含むものがより好ましい。
前記一般式(B−1)中のnは1〜6の整数で、R1bの結合部位の数に応じて定められる。例えばR1bがアルキル基やアシル基の場合、nは1であり、R1bが結合部位2,3,4,5及び6個を有する脂肪族炭化水素基である場合、nはそれぞれ2,3,4,5及び6となる。また、mはm×nの平均値が6〜80となる数である。該平均値は80以下となることで相溶性が良好になる。また、nは、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは1である。ただし、m×nの平均値は、後述する基油の粘度が所望の範囲となるように適宜設定されることが好ましい。
前記一般式(B−1)で表されるポリオキシアルキレングリコール類は、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレングリコールを包含するものであり、該水酸基の含有量が全末端基に対して、50モル%以下になるような割合であれば、含有していても好適に使用することができる。
【0032】
<ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体>
本実施形態の冷凍機油において、基油として用いることのできるポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体としては、以下の一般式(C−1)で表される共重合体、及び一般式(C−2)で表される共重合体(以下、それぞれをポリビニルエーテル系共重合体I及びポリビニルエーテル系共重合体IIと称する。)が挙げられる。なお、ポリ(オキシ)アルキレングリコールとは、ポリアルキレングリコール及びポリオキシアルキレングリコールの両方を指す。
【0033】
【化8】
【0034】
上記一般式(C−1)におけるR1c、R2c及びR3cはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、R5cは炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R6cは炭素数1〜20の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数1〜20の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、炭素数2〜20のアシル基又は炭素数2〜50の酸素含有炭化水素基、R4cは炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R1c〜R6cはそれらが複数ある場合にはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
ここでR1c〜R3cのうちの炭素数1〜8の炭化水素基とは、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基、各種ジメチルフェニル基などのアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基などのアリールアルキル基を示す。なお、これらのR1c,R2c及びR3cの各々としては、特に水素原子が好ましい。
【0035】
一方、R5cで示される炭素数2〜4の二価の炭化水素基としては、具体的にはメチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基などの二価のアルキレン基がある。
なお、一般式(C−1)におけるvは、R5cOの繰り返し数を示し、その平均値が1〜50、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5の範囲の数である。R5cOが複数ある場合には、複数のR5cOは同一でも異なっていてもよい。vは構成単位毎に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、wは1〜50、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1、uは0〜50、好ましくは2〜25、さらに好ましくは5〜15、の数を示し、wおよびuはそれらが複数ある場合にはそれぞれブロックでもランダムでもよい。
【0036】
さらに、一般式(C−1)におけるR6cは、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基または炭素数2〜50の酸素含有炭化水素基を示す。
この炭素数1〜10のアルキル基とは、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などを示す。
また、炭素数2〜10のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピパロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基などを挙げることができる。
さらに、炭素数2〜50の酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、1,1−ビスメトキシプロピル基、1,2−ビスメトキシプロピル基、エトキシプロピル基、(2−メトキシエトキシ)プロピル基、(1−メチル−2−メトキシ)プロピル基などを好ましく挙げることができる。
【0037】
一般式(C−1)において、R4cで示される炭素数1〜10の炭化水素基とは、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基などのアリールアルキル基等を示す。
前記一般式(C−1)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系共重合体Iは共重合体にすることにより、相溶性を満足しつつ潤滑性、絶縁性、吸湿性等を向上させることができる。
【0038】
一方、前記一般式(C−2)で表されるポリビニルエーテル系共重合体IIにおいて、R1c〜R5c、及びvは前記と同じである。R4c,R5cはそれらが複数ある場合にはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。x及びyは、それぞれ1〜50の数を示し、xおよびyはそれらが複数ある場合にはそれぞれブロックでもランダムでもよい。Xc,Ycは、それぞれ独立に水素原子、水酸基又は、炭素数1〜20の炭化水素基を示す。
なお、一般式(C−1)、(C−2)における繰り返し数u、w、x、yは、後述する根所望の粘度となるように適宜選択されることが好ましい。また、ポリビニルエーテル系共重合体I、IIの製造方法については、それが得られる方法であればよく、特に制限はない。
【0039】
一般式(C−1)で表されるビニルエーテル系共重合体Iは、その一つの末端が、以下の一般式(C−3)又は(C−4)で表され、かつ残りの末端が以下の一般式(C−5)又は一般式(C−6)で表される構造を有するポリビニルエーテル系共重合体Iとすることができる。
【化9】
(上記(C−3)、(C−4)において、R1c〜R6c及びvは前記と同じである。)
【化10】
(上記(C−5)、(C−6)において、R1c〜R6c及びvは前記と同じである。)
【0040】
<ポリオールエステル類>
冷凍機油において、基油として用いることのできるポリオールエステル類としては、ジオールあるいは水酸基を3〜20個程度有するポリオールと、炭素数1〜24程度の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。ここで、ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。ポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトースなどの糖類、並びにこれらの部分エーテル化物、及びメチルグルコシド(配糖体)などが挙げられる。これらの中でもポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールが好ましい。
【0041】
脂肪酸としては、特に炭素数は制限されないが、通常炭素数1〜24のものが用いられる。炭素数1〜24の脂肪酸の中でも、潤滑性の点からは、炭素数3以上のものが好ましく、炭素数4以上のものがより好ましく、炭素数5以上のものがさらにより好ましい。また、冷媒との相溶性の点からは、炭素数18以下のものが好ましく、炭素数12以下のものがより好ましく、炭素数9以下のものがさらにより好ましい。
また、直鎖状脂肪酸、分岐状脂肪酸の何れであってもよく、潤滑性の点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の点からは分岐状脂肪酸が好ましい。更に、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
【0042】
脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸などの直鎖または分岐のもの、あるいはα炭素原子が4級である、いわゆるネオ酸などが挙げられる。さらに具体的には、イソ酪酸、吉草酸(n−ペンタン酸)、カプロン酸(n−ヘキサン酸)、エナント酸(n−ヘプタン酸)、カプリル酸(n−オクタン酸)、ペラルゴン酸(n−ノナン酸)、カプリン酸(n−デカン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3−メチルブタン酸)、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸などが好ましい。
なお、ポリオールエステルとしては、ポリオールの全ての水酸基がエステル化されずに残った部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、また部分エステルと完全エステルの混合物であってもよいが、完全エステルであることが好ましい。
【0043】
このポリオールエステルの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトールのエステルがさらにより好ましく、冷媒との相溶性及び加水分解安定性に特に優れることからペンタエリスリトールのエステルが最も好ましい。
【0044】
好ましいポリオールエステルの具体例としては、ネオペンチルグリコールとイソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種又は二種以上の脂肪酸とのジエステル、トリメチロールエタンとイソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種又は二種以上の脂肪酸とのトリエステル、トリメチロールプロパンとイソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種又は二種以上の脂肪酸とのトリエステル、トリメチロールブタンとイソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種又は二種以上の脂肪酸とのトリエステル、ペンタエリスリトールとイソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種又は二種以上の脂肪酸とのテトラエステルが挙げられる。
【0045】
なお、二種以上の脂肪酸とのエステルとは、一種の脂肪酸とポリオールのエステルを二種以上混合したものでもよく、二種以上の混合脂肪酸とポリオールのエステル、特に混合脂肪酸とポリオールとのエステルは、低温特性や冷媒との相溶性に優れる。
【0046】
冷凍機油に含有される基油の40℃動粘度は、5〜150mm2/sであることが好ましい。この動粘度が5mm2/s以上であれば良好な潤滑性能が発揮されると共に、シール性もよくなる。また、150mm2/s以下であれば冷媒と冷凍機油との相溶性に優れ、省エネルギー性が良好になる。以上の観点から、基油の40℃動粘度は、より好ましくは10〜120mm2/s、さらに好ましくは20〜100mm2/sである。
なお、基油は、本発明の目的を阻害しない限り、鉱油、上記含酸素有機化合物以外の合成油、又はこれらの両方を含有していてもよい。なお、上記含酸素有機化合物以外の基油は、冷凍機油全量に対して、10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることがさらに好ましい。
【0047】
[リン系化合物]
本実施形態の冷凍機油に含有されるリン系化合物は、以下の一般式(1)で表されるものである。
【化11】
(ただし、式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1〜R8は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Arは炭素数2〜20の二価の炭化水素基を表す。)
本実施形態では、含酸素有機化合物を含む基油に上記のリン系化合物を含有させることで、冷凍機油の安定性や潤滑性能を維持しつつ、摺動部分における摩擦係数を低減することが可能である。
【0048】
一般式(1)においてR1〜R8におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基などが挙げられる。
1〜R8は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0049】
一般式(1)におけるArは、アルキレン基、アリーレン基、又はアリーレン基及びアルキレン基からなる炭化水素基が好ましく、また、アリーレン基を含むことが好ましい。ここで、Arがアルキレン基である場合、そのアルキレン基は、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、イコサレン基等が挙げられ、これらは直鎖状であってもよく、各種の分岐状のものでもよい。また、アルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、ジシクロペンチレン基、トリシクロペンチレン基等の環状のアルキレン基でもよい。
【0050】
また、アリーレン基としては、置換又は無置換のいずれでもよく、具体的には、置換若しくは無置換のフェニレン基、置換若しくは無置換のナフチレン基、置換若しくは無置換のビフェニル基等が挙げられるが、アリーレン基としては無置換のほうが好ましい。また、これらの中ではフェニレン基が好ましい。
さらに、Arがアリーレン基とアルキレン基からなる場合、アリーレン基は上記と同じであるとともに、アルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の炭素数1〜14のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基や上記したものと同様のものが使用できる。また、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜5のアルキレン基であることが好ましく、具体的にはメチレン基、1,1−エチレン、1,2−エチレン等の各種エチレン基、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、2,2−プロピレン等の各種プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基が挙げられ、これらの中では2,2−プロピレン基(-C(CH32-)がより好ましい。
また、一般式(1)において、nは、1〜8が好ましく、nが特定の一種からなる単体であってもよいし、nが特定の二種以上からなる混合物であってもよい。ここで、n=1の単体とすることにより、分子量が小さくなるため、基油に対する溶解度を高めやすくなる。また、摩擦係数を低減させやすくなる。
【0051】
また、Arの好適な具体例としては、以下の一般式(2)〜(4)で表される基が好ましいが、摩擦係数をより有効に低減させるためには、一般式(2)又は(3)で表される基がより好ましい。なお、一般式(2)は、オルト体、メタ体、パラ体のいずれでもよいが、メタ体が好ましい。
【化12】
【0052】
また、好ましいリン系化合物の具体例としては例えば以下の一般式(5)及び(6)で示される化合物が挙げられる。
【化13】
式(5)において、nは1〜10の整数を表し、好ましくは1〜8、より好ましくは1である。
【化14】
【0053】
本実施形態で使用されるリン系化合物は、冷凍機油全量に対して、0.3〜10.0質量%であることが好ましい。本実施形態では、リン系化合物を0.3質量%以上含有させることで、冷凍機油の安定性及び潤滑性能を維持しつつ、摺動部分における摩擦係数を効果的に低減させることが可能である。また、10.0質量%以下とすることで、リン系化合物を基油に溶解させやすくなり、含有量に応じた効果を発揮させやすくなる。
ここで、摺動部における摩擦係数を効果的に低減させることを考慮すると、下限値は0.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、冷凍機油の安定性を考慮すると、上限値は8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
[その他の添加剤]
本実施形態に係る冷凍機油は、上記リン系化合物以外にも、さらに、酸化防止剤、酸捕捉剤、消泡剤、極圧剤、油性剤、酸素捕捉剤、金属不活性化剤、及び防錆剤等の各種添加剤のいずれか1種又は2種以上を含有してもよく、これらの中では、酸化防止剤、酸捕捉剤、及び消泡剤のいずれか1種又は2種以上を含有することが好ましい。リン系化合物以外の添加剤は、冷凍機油全量に対して、好ましくは15質量%以下,より好ましくは0〜5質量%程度含有される。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のフェノール系、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N'−ジ−フェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤が挙げられるが、フェノール系の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤は、効果及び経済性などの点から、冷凍機油全量に対して、通常0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%である。
【0055】
酸捕捉剤としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α−オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物を挙げることができる。中でも相溶性の点でフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α−オレフィンオキシドが好ましい。
このアルキルグリシジルエーテルのアルキル基、及びアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン基は、分岐を有していてもよく、炭素数は通常3〜30、好ましくは4〜24、特に好ましくは6〜16のものである。また、α−オレフィンオキシドは全炭素数が一般に4〜50、好ましくは4〜24、特に6〜16のものを使用する。本実施形態においては、上記酸捕捉剤は1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、効果及びスラッジ発生の抑制の点から、冷凍機油全量に対して、通常0.005〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%である。
本実施形態においては、酸捕捉剤を含有させることにより、冷凍機油の安定性を向上させることができる。
また、消泡剤としては、例えば、シリコーン油やフッ素化シリコーン油などを挙げることができる。消泡剤は、冷凍機油全量に対して、通常0.005〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。
【0056】
極圧剤としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩などのリン系極圧剤を挙げることができる。
これらのリン系極圧剤は、その分子中にリン原子を1つ有するものであり、極圧性、摩擦特性などの点からトリクレジルホスフェート、トリチオフェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイトなどが挙げられる。
【0057】
また、極圧剤としては、カルボン酸の金属塩が挙げられる。ここでいうカルボン酸の金属塩は、好ましくは炭素数3〜60のカルボン酸、さらには炭素数3〜30、特に12〜30の脂肪酸の金属塩である。また、前記脂肪酸のダイマー酸やトリマー酸並びに炭素数3〜30のジカルボン酸の金属塩を挙げることができる。これらのうち炭素数12〜30の脂肪酸及び炭素数3〜30のジカルボン酸の金属塩が特に好ましい。
一方、金属塩を構成する金属としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属が好ましく、特に、アルカリ金属が最適である。
さらに、上記以外の極圧剤として、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チオカーバメート類、チオテルペン類、ジアルキルチオジプロピオネート類などの硫黄系極圧剤を挙げることができる。
上記極圧剤の含有量は、潤滑性及び安定性の点から、冷凍機油全量に基づき、通常0.001〜5質量%、特に0.005〜3質量%が好ましい。
これら極圧剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
油性剤の例としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和および不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、グリセリン、ソルビトールなどの多価アルコールと脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸との部分エステル等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、冷凍機油全量に基づき、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲で選定される。
【0059】
酸素捕捉剤としては、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジフェニルスルフィド、ジオクチルジフェニルスルフィド、ジアルキルジフェニレンスルフィド、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、ベンゾチアピラン、チアピラン、チアントレン、ジベンゾチアピラン、ジフェニレンジスルフィド等の含硫黄芳香族化合物、各種オレフィン、ジエン、トリエン等の脂肪族不飽和化合物、二重結合を持ったテルペン類等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えばN−[N,N'−ジアルキル(炭素数3〜12のアルキル基)アミノメチル]トリアゾール等を挙げることができる。
防錆剤としては、例えば金属スルホネート、脂肪族アミン類、有機亜リン酸エステル、有機リン酸エステル、有機スルフォン酸金属塩、有機リン酸金属塩、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等を挙げることができる。
本実施形態に係る冷凍機油には、さらに本発明の目的を阻害しない範囲で、他の公知の各種添加剤を含有させることができる。
【0060】
[冷媒]
本実施形態に係る冷凍機油は、冷媒環境下で使用されるものであり、具体的には冷媒と混合されて冷凍機で使用されるものである。すなわち、本実施形態では、冷凍機油と冷媒とを含有する冷凍機油組成物の形態で冷凍機に使用される。冷凍機油組成物において、冷媒と冷凍機油の使用量については、冷媒/冷凍機油の質量比で99/1〜10/90、更に95/5〜30/70の範囲にあることが好ましい。この質量比を上記範囲内とすると、冷凍機における冷凍能力、及び潤滑性を適切にできる。
使用される冷媒としては、フッ化炭化水素冷媒や、自然系冷媒である二酸化炭素、炭化水素、及びアンモニアの中から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0061】
<フッ化炭化水素冷媒>
フッ化炭化水素冷媒としては、飽和フッ化炭化水素化合物(HFC)や不飽和フッ化炭化水素化合物(HFO)が挙げられる。
飽和フッ化炭化水素化合物としては、通常、炭素数1〜4のアルカンのフッ化物であり、炭素数1〜3のアルカンのフッ化物が好ましく、炭素数1〜2のアルカン(メタン又はエタン)のフッ化物がより好ましい。具体的なメタン又はエタンのフッ化物としては、トリフルオロメタン(R23)、ジフルオロメタン(R32)、1,1−ジフルオロエタン(R152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)、1,1,2−トリフルオロエタン(R143)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(R125)が挙げられ、これらの中ではジフルオロメタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタンが好ましい。
これらの飽和フッ化炭化水素化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。ここで、2種以上組み合わせて用いる場合の例として、炭素数1〜3の飽和フッ化炭化水素化合物を2種以上混合した混合冷媒や、炭素数1〜2の飽和フッ化炭化水素化合物を2種以上混合した混合冷媒が挙げられる。
具体的な混合冷媒としては、R32とR125の混合物(R410A)、R125とR143aとR134aの混合物(R404A)、R32とR125とR134aの混合物(R407A、R407C、R407E等)、R125とR143aの混合物(R507A)等が挙げられる。
【0062】
不飽和フッ化炭化水素化合物としては、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜6の鎖状オレフィンや炭素数4〜6の環状オレフィンのフッ素化物など、炭素−炭素二重結合を有するものが挙げられる。
より具体的には、1〜3個のフッ素原子が導入されたエチレン、1〜5個のフッ素原子が導入されたプロペン、1〜7個のフッ素原子が導入されたブテン、1〜9個のフッ素原子が導入されたペンテン、1〜11個のフッ素原子が導入されたヘキセン、1〜5個のフッ素原子が導入されたシクロブテン、1〜7個のフッ素原子が導入されたシクロペンテン、1〜9個のフッ素原子が導入されたシクロヘキセンなどが挙げられる。
これらの不飽和フッ化炭化水素化合物の中では、プロペンのフッ化物が好ましく、フッ素原子が3〜5個導入されたプロペンがより好ましく、フッ素原子が4個導入されたプロペンが最も好ましい。具体的には、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)が好ましい化合物として挙げられる。
これらの不飽和フッ化炭化水素化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいし、不飽和フッ化炭化水素化合物以外の冷媒と組み合わせて使用してもよい。ここで、不飽和フッ化炭化水素化合物以外の冷媒と組み合わせて用いる場合の例として、飽和フッ化炭化水素化合物と不飽和フッ化炭化水素化合物の混合冷媒が挙げられる。具体的な混合冷媒としては、R−32とHFO1234zeとR152aの混合冷媒(AC5、混合比は13.23:76.20:9.96)等が挙げられる。
【0063】
<自然系冷媒>
自然系冷媒としては、二酸化炭素(炭酸ガス)や、プロパン、n−ブタン、イソブタン、2−メチルブタン、n−ペンタン、シクロペンタンイソブタン、ノルマルブタン等の炭化水素や、アンモニアが挙げられ、これらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいし、自然系冷媒以外の冷媒と組み合わせてもよい。ここで、自然系冷媒以外の冷媒と組み合わせて用いる場合の例としては、飽和フッ化炭化水素化合物及び/又は不飽和フッ化炭化水素化合物との混合冷媒が挙げられる。具体的な混合冷媒としては、二酸化炭素とHFO1234zeとR134aの混合冷媒(AC6、配合比は5.15:79.02:15.41)等が挙げられる。
【0064】
[冷凍機]
本実施形態に係る冷凍機油又は冷凍機油組成物は、冷凍機内部に充填して使用されるものである。ここで、冷凍機とは、圧縮機、凝縮器、膨張機構(膨張弁など)及び蒸発器、あるいは圧縮機、凝縮器、膨張機構、乾燥器及び蒸発器を必須とする構成からなる冷凍サイクルを有する。冷凍機油は、例えば圧縮機等に設けられる摺動部分を潤滑するために使用されるものである。
なお、摺動部分は特に限定されないが、摺動部分のいずれかが鉄等の金属を含むことが好ましく、金属−金属間で摺動するものであることが好ましい。
また、上記冷凍機油及び冷凍機油組成物は、より具体的には、例えばカーエアコン、ガスヒートポンプ(GHP)、空調、冷蔵庫、自動販売機、ショーケース、給湯機、床暖房などの各種冷凍機システム、給湯システム、及び暖房システムに用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明を、実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、基油の性状、冷凍機油及び冷凍機油組成物の諸特性は、以下に示す要領に従って求めた。
【0066】
(1)40℃動粘度
JIS K2283−1983に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定した。
(2)冷媒環境下における冷凍機油組成物の摩擦係数
密閉式にしたブロックオンリング摩擦試験機(LFW−1)を用いて、R410A(R32:R125=50:50)冷媒環境下で、各冷凍機油組成物の摺動部分の摩擦係数を以下の条件で測定した。
リング:FC250 ブロック:SKH51 回転数:1000rpm
馴らし:荷重300N×1分間 荷重:500N 時間:30分 油温:80℃
冷媒圧力:0.3MPa
(3)冷凍機油のファレックス焼付き荷重
ピン/ブロックをセットし、試料油(冷凍機油)の焼付き荷重を以下の条件で測定した。
ピン:AISI−3125、ブロック:AISI−1137
馴らし:荷重1112N×1分間
回転数:290rpm
油温:室温
【0067】
実施例1〜16、比較例1〜4
表1、2に示す各実施例、比較例の冷凍機油、及びその冷凍機油を使用した冷凍機油組成物を各々調整して、各冷凍機油に対して焼付き荷重を、各冷凍機油組成物に対して摩擦係数をそれぞれ測定した。その結果を表1、2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
※各実施例、比較例において、基油、添加剤(市販品)は以下のとおりである。
基油:エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルとの共重合体(モル比9:1、40℃動粘度63.3mm2/s)、両末端はそれぞれ一般式(A−1−i)及び一般式(A−1−ii)に示すものであり、R6a〜R8a、R11a〜R13aが水素原子となるとともに、r1及びr2のいずれもが0であり、R10a及びR15aはエチル基又はイソブチル基である。
酸化防止剤:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(DBPC)
酸捕捉剤:2−エチルヘキシルグリシジルエーテル
消泡剤:シリコーン系消泡剤
リン系化合物1:上記一般式(5)においてnが1となる化合物
リン系化合物2:上記一般式(5)においてnが1〜8の混合物である化合物
リン系化合物3:上記一般式(6)で示される化合物
リン系化合物4:上記一般式(1)で示される化合物であって、R1、R3、R5、R7が水素原子であり、R2、R4、R6、R8が炭素数1〜20のアルキル基、Arが炭素数2〜20の二価の炭化水素基、nが1〜8の混合物である化合物。
TCP:トリクレジルホスフェート
【0071】
実施例1〜16と比較例1〜4に示すように、分子中にリン原子を2つ以上有するリン系化合物1〜4を含有させることで、同じ含有量でTCPを含有させた場合と比べて、冷媒環境下における摺動部の摩擦係数を低くできた。また、実施例1〜16と比較例1〜4に示すように、分子中にリン原子を2つ以上有するリン系化合物1〜4を含有させた場合であっても、同じ含有量でTCPを含有させた場合と比べて、冷凍機油の焼付き荷重は同等以上であった。