(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587065
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】レジストパターンに塗布されるポリマー含有塗布液
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20191001BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20191001BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20191001BHJP
C08G 77/14 20060101ALI20191001BHJP
C08G 77/38 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
G03F7/40 511
G03F7/40
G03F7/40 521
G03F7/20 521
H01L21/30 569E
H01L21/30 570
C08G77/14
C08G77/38
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-505121(P2016-505121)
(86)(22)【出願日】2015年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2015052970
(87)【国際公開番号】WO2015129405
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2018年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-35855(P2014-35855)
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】志垣 修平
(72)【発明者】
【氏名】境田 康志
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
【審査官】
川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−256626(JP,A)
【文献】
特開2011−137050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/40
C08G 77/14
C08G 77/38
G03F 7/20
H01L 21/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層膜が形成された基板上にポジ型のレジスト溶液を塗布し、プリベークしてレジスト膜を形成する工程、
前記レジスト膜を露光する工程、
前記露光後のレジスト膜を加熱し、その後当該レジスト膜をアルカリ現像液で現像して前記下層膜が形成された基板上にレジストパターンを形成する工程、
少なくとも前記レジストパターンのパターン間を充填するように
下記式(1)で表される構造単位を有するポリマーと水及びアルコール類の混合物とを含み、レジストパターンに塗布される塗布液を塗布し、当該塗布液に含まれる前記ポリマー以外の成分及び前記アルカリ現像液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程、
前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの表面を露出させる工程、及び
前記レジストパターンを除去する工程、
を含む反転パターンの形成方法。
【化1】
(式中、R1は下記式(11)、式(12)又は式(13)で表される基を表し、Xは下記式(2)で表される有機基を表す。
【化2】
(式中、R5は直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、当該R5は前記式(1)中Si原子と結合し、R2及びR3はそれぞれ独立に直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、当該R2は前記式(1)中の酸素原子と結合し、R4は炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、アリルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、pは0、1又は2を表す。))
【請求項2】
前記ポリマーは下記式(3)で表される構造単位をさらに有する、請求項1に記載の
反転パターンの形成方法。
【化3】
(式中、2つのXはそれぞれ前記式(1)における定義と同義である。)
【請求項3】
前記ポリマーの原料化合物は、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物及び下記式(6)で表される化合物である、請求項2に記載の
反転パターンの形成方法。
【化4】
(式中、R
1は前記式(1)における定義と同義であり、Y及びZはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を表し、R
2、R
3、R
4及びpはそれぞれ前記式(2)における定義と同義である。)
【請求項4】
前記式(4)で表される化合物はβ−(2−トリエトキシシリルエチル)−γ−ブチロラクトンである、請求項3に記載の反転パターンの形成方法。
【請求項5】
前記R
1は下記式(11’)で表される基である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の
反転パターンの形成方法。
【化5】
【請求項6】
前記アルコール類は下記式(6)で表される化合物である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の
反転パターンの形成方法。
【化6】
(式中、R
2、R
3、R
4及びpはそれぞれ前記式(2)における定義と同義である。)
【請求項7】
前記ポリマーの重量平均分子量は、700乃至2000である請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の反転パターンの形成方法。
【請求項8】
前記ポリマーの濃度が0.5質量%乃至20質量%である請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の反転パターンの形成方法。
【請求項9】
前記塗布液はリンス液に該当する請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の反転パターンの形成方法。
【請求項10】
前記塗布液が塗布された前記基板をスピンドライし、又はスピンドライした後加熱することにより、当該塗布液に含まれる前記ポリマー以外の成分及び前記アルカリ現像液を除去し又は減少させる、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の反転パターンの形成方法。
【請求項11】
前記レジストパターンを除去する工程はドライエッチング又はアッシングにより行われる請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の反転パターンの形成方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の方法で反転パターンを形成した後、該反転パターンをマスクとして前記下層膜が形成された基板をエッチングする工程を含む半導体装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィープロセスに用いられる、レジストパターンに塗布されるポリマー含有塗布液(リンス液)に関する。また本発明は、前記塗布液を用いた反転パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスの製造において、レジスト組成物を用いたリソグラフィープロセスが行われている。リソグラフィープロセスにより形成されるレジストパターンの微細化に伴い、当該レジストパターンが倒壊しやすくなっている。特に、露光後のレジスト膜を現像し、その後リンス工程の際にリンス液が流動することにより、又はリンス液を乾燥させる際に、レジストパターンが倒れるという問題がしばしば発生した。従来、リンス液として、界面活性剤、有機酸等の添加剤を含む水、又は純水が用いられていた。
【0003】
特許文献1には、レジストパターン倒れによる不良の発生を抑制したパターン形成方法として、基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜に潜像を形成するために、前記レジスト膜にエネルギー線を選択照射する工程と、前記潜像が形成された前記レジスト膜からレジストパターンを形成するために、前記レジスト膜上に現像液(アルカリ現像液)を供給する工程と、前記基板上の現像液をリンス液に置換するために、前記基板上に前記リンス液を供給する工程と、前記基板上のリンス液の少なくとも一部を溶媒と前記レジスト膜とは異なる溶質とを含む塗布膜用材料に置換するために、前記基板上に前記塗布膜用材料を供給する工程と、前記基板上にレジスト膜を覆う塗布膜を形成するために、前記塗布膜用材料中の溶媒を揮発させる工程と、前記レジストパターン上面の少なくとも一部分を露出させる及び前記塗布膜で構成されたマスクパターンを形成するために、前記塗布膜の表面の少なくとも一部分を後退させる工程と、前記マスクパターンを用いて前記基板を加工する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、微細なパターンを形成するときにパターン倒れが生じない現像液として、レジスト膜を形成する硬化性樹脂とは異なる硬化性樹脂と、有機溶剤と、を含む現像液が開示されている。そして、上記現像液に含まれる硬化性樹脂として、ノボラック樹脂及びポリシロキサン樹脂が例示されている。
【0005】
特許文献3には、ケイ素化合物又はその縮合物と、分子内に1以上の水酸基又はアミノ基を有する水溶性化合物とを接触させた後に、酸性物質を接触させることで、安定性の高い水溶性ケイ素化合物を得る製造方法が開示されている。そして、上記水溶性化合物として、グリコール類が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−277052号公報
【特許文献2】国際公開第2012/128251号
【特許文献3】特開2010−7032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明は、基板上にリンス液を供給する工程を含むことから、依然としてレジストパターンが倒壊する問題が解決できていない。特許文献2に記載の発明は、現像液であり、露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成した後のリンス工程において、従来のリンス液の代わりに用いられるものではない。さらに、上記現像液のように、ポリシロキサン樹脂を含む溶液は、当該ポリシロキサン樹脂のポリマー分子がSi原子と結合したヒドロキシ基を複数有する場合、室温での保存安定性が良くないという問題がある。溶液の保存期間中、上記ヒドロキシ基を有するポリマー分子間での脱水縮合反応によりSi−O−Si結合を形成し、ポリシロキサン樹脂の平均分子量が増加するためである。特許文献3に記載の発明は、ケイ素化合物又はその縮合物と水溶性化合物とを接触させるのであって、ケイ素化合物又はその縮合物と水溶性化合物とを反応させることは意図していない。さらに特許文献3に記載の発明は、最後に酸性物質を接触させ、その後当該酸性物質は除去されないことが水溶性化合物を得るために必須であり、当該酸性物質を接触させない場合は所期の効果は得られない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造単位を有するポリマーと、水及び/又はアルコール類を含有する溶剤とを含む組成物を塗布液として用いることにより、当該塗布液が室温にて保存されたものであっても、レジストパターンに対するリンス工程で当該レジストパターンが倒壊する問題を解決できると共に、エッチング工程でマスクとして使用される反転パターンを形成できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される構造単位を有するポリマーと、水及び/又はアルコール類を含有する溶剤とを含む、レジストパターンに塗布される塗布液である。
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1乃至12の有機基を表し、Xは下記式(2)で表される有機基を表す。
【化2】
(式中、R
2及びR
3はそれぞれ独立に直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、該R
2は前記式(1)中の酸素原子と結合し、R
4は炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、アリルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、pは0、1又は2を表す。))
【0010】
前記ポリマーは、下記式(3)で表される構造単位をさらに有していてもよい。
【化3】
(式中、2つのXはそれぞれ前記式(1)における定義と同義である。)
【0011】
前記式(1)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位を有するポリマーは、例えば、下記式(4)で表される化合物及び下記式(5)で表される化合物の共加水分解縮合物に下記式(6)で表される化合物を反応させた生成物である。
【化4】
(式中、R
1は前記式(1)における定義と同義であり、Y及びZはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を表し、R
2、R
3、R
4及びpはそれぞれ前記式(2)における定義と同義である。)
【0012】
前記式(4)で表される化合物は、例えば、β−(2−トリエトキシシリルエチル)−γ−ブチロラクトンである。
【0013】
上記のように、式(4)で表される化合物及び式(5)で表される化合物の共加水分解縮合物に式(6)で表される化合物を反応させることにより、ポリマー分子中のSi原子と結合したヒドロキシ基の水素原子が、Xを定義する前記式(2)で表される有機基に置換される。その結果、反応前と比較して、ポリマー分子中のSi原子と結合したヒドロキシ基は減少する。
【0014】
前記R
1を定義する炭素原子数1乃至12の有機基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、フェニル基及び下記式(7)乃至式(13)で表される基からなる群から選択される。特に、該炭素原子数1乃至12の有機基として下記式(11)、式(12)又は式(13)で表される基が選択される場合、塗布液の保存安定性の改善において高い効果を示す。
【化5】
(式中、R
5は直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、当該R
5は前記式(1)中のSi原子と結合し、R
6は水素原子又はメチル基を表し、R
7及びR
8はそれぞれ独立に水素原子又はアリル基を表す。)
【0015】
前記式(11)で表される基は、例えば、下記式(11’)で表される基である。
【化6】
【0016】
前記直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至3のアルキレン基としてメチレン基(−CH
2−基)、エチレン基(−CH
2CH
2−基)、トリメチレン基(−CH
2CH
2CH
2−基)及びプロピレン基(−CH(CH
3)CH
2−基)が挙げられ、前記炭素原子数1乃至4のアルコキシ基としてメトキシ基(−OCH
3基)、エトキシ基(−OCH
2CH
3基)、n−プロポキシ基(−OCH
2CH
2CH
3基)、イソプロポキシ基(−OCH(CH
3)
2基)、n−ブトキシ基(−OCH
2CH
2CH
2CH
3基)、イソブトキシ基(−OCH
2CH(CH
3)
2基)、sec−ブトキシ基(−OCH(CH
3)CH
2CH
3基)及びtert−ブトキシ基(−OC(CH
3)
3基)が挙げられる。さらに、前記式(2)においてpが0を表す場合、R
2はR
4と単結合により結合する。
【0017】
前記水及び/又はアルコール類を含有する溶剤のうちのアルコール類は、例えば、下記式(6)で表される化合物である。
【化7】
(式中、R
2、R
3、R
4及びpはそれぞれ前記式(2)における定義と同義である。)
前記水及び/又はアルコール類を含有する溶剤の水として、例えば、純水及び超純水が挙げられる。前記水及び/又はアルコール類を含有する溶剤は、水、アルコール類、水とアルコール類との混合物、のいずれでもよく、前記アルコール類は、1種のみ、2種以上の混合物のいずれでもよい。前記水及び/又はアルコール類を含有する溶剤が水とアルコール類との混合物である場合、当該混合物中のアルコール類の含有割合は、例えば10質量%乃至70質量%、好ましくは30質量%乃至50質量%である。このアルコール類の含有割合は、水とアルコール類との混合物100質量%に対する数値である。
【0018】
本発明の塗布液中の前記ポリマーの濃度は、例えば0.5質量%乃至20質量%である。このポリマーの濃度は、本発明の塗布液100質量%に対する数値である。この濃度を、40質量%を上限として高くするほど、形成される塗膜の膜厚を厚くすることができる。
【0019】
本発明の塗布液は、従来のリンス液に代えて使用することができるため、リンス液と称することができる。
【0020】
本発明の他の態様は、下層膜が形成された基板上にポジ型のレジスト溶液を塗布し、プリベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記露光後のレジスト膜を加熱(PEB:Post Exposure Bake)し、その後当該レジスト膜をアルカリ現像液で現像して前記下層膜が形成された基板上にレジストパターンを形成する工程、少なくとも前記レジストパターンのパターン間を充填するように本発明の塗布液を塗布し、当該塗布液に含まれる前記ポリマー以外の成分及び前記アルカリ現像液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程、前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの表面を露出させる工程、及び前記レジストパターンを除去する工程、を含む反転パターンの形成方法である。
ここで、本発明の他の態様のうち好ましい態様の一つは、下層膜が形成された基板上にポジ型のレジスト溶液を塗布し、プリベークしてレジスト膜を形成する工程、
前記レジスト膜を露光する工程、
前記露光後のレジスト膜を加熱し、その後当該レジスト膜をアルカリ現像液で現像して前記下層膜が形成された基板上にレジストパターンを形成する工程、
少なくとも前記レジストパターンのパターン間を充填するように下記式(1)で表される構造単位を有するポリマーと水及びアルコール類の混合物とを含み、レジストパターンに塗布される塗布液を塗布し、当該塗布液に含まれる前記ポリマー以外の成分及び前記アルカリ現像液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程、
前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの表面を露出させる工程、及び
前記レジストパターンを除去する工程、
を含む反転パターンの形成方法である。
【化7】
(式中、R1は下記式(11)、式(12)又は式(13)で表される基を表し、Xは下記式(2)で表される有機基を表す。
【化8】
(式中、R5は直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、当該R5は前記式(1)中Si原子と結合し、R2及びR3はそれぞれ独立に直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、当該R2は前記式(1)中の酸素原子と結合し、R4は炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、アリルオキシ基又はヒドロキシ基を表し、pは0、1又は2を表す。))
【0021】
当該塗布液に含まれる前記ポリマー以外の成分及び前記アルカリ現像液を除去し又は減少させるには、例えば、前記塗布液が塗布された基板を、スピンドライし、又はスピンドライした後加熱することにより達成される。ここで、スピンドライとは、基板を回転させながら乾燥させることである。また、当該塗布液に含まれる前記ポリマー以外の成分とは、溶剤、及び必要に応じて添加される添加剤である。
【0022】
前記レジストパターンを除去する工程は、例えばドライエッチング又はアッシングにより行われる。ここで、アッシングを選択する場合は、前記レジストパターン以外、特に前記下層膜は除去されない条件で実施する必要がある。
【0023】
さらに本発明の他の態様は、本発明の方法により反転パターンを形成した後、該反転パターンをマスクとして前記下層膜が形成された基板をエッチングする工程を含む半導体装置の作製方法である。前記下層膜が形成された基板をエッチングする工程は、例えばドライエッチングにより行われる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の塗布液は、含有するポリマー分子中の、ヒドロキシ基の水素原子のうち少なくとも一部が、前記式(2)で表される有機基で置換されていることにより、保存安定性に優れるため、室温にて保存可能である。また、本発明の塗布液は、有機酸が添加されていなくても優れた保存安定性を示す。本発明の塗布液を用いることで、従来のリンス液を用いたリンス工程が必要ないので、レジストパターンの倒壊を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、調製例3の塗布液を用いてレジストパターンに塗膜を形成し、その塗膜をドライエッチングした後に得られた反転パターンのパターン形状を示す断面SEM像である。
【
図2】
図2は、調製例7の塗布液を用いてレジストパターンに塗膜を形成し、その塗膜をドライエッチングした後に得られた反転パターンのパターン形状を示す断面SEM像である。
【
図3】
図3は、調製例10の塗布液を用いてレジストパターンに塗膜を形成し、その塗膜をドライエッチングした後に得られた反転パターンのパターン形状を示す断面SEM像である。
【
図4】
図4は、調製例11の塗布液を用いてレジストパターンに塗膜を形成し、その塗膜をドライエッチングした後に得られた反転パターンのパターン形状を示す断面SEM像である。
【
図5】
図5は、リンス液として純水を用い現像後のリンスを行った後の、レジストパターンのパターン形状を示す断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<ポリマー>
前記式(1)で表される構造単位を有するポリマーは、前記式(4)で表される化合物を、水を含有する溶剤に溶解させ、触媒の存在下、加水分解縮合反応させて得られた溶液に、式(6)で表される化合物を加え、水を含有する溶剤、触媒等を減圧留去して得ることができる。前記式(1)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位を有するポリマーは、前記式(4)で表される化合物に加えて前記式(5)で表される化合物を用い、上記同様の方法で得ることができる。式(6)で表される化合物として、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール又は1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジイソプロピレングリコール及びトリエチレングリコールを挙げることができる。好ましい触媒として、例えば、塩酸、硝酸等の無機酸、及びギ酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、n−酪酸等の有機酸を挙げることができる。使用する触媒の量は、式(4)で表される化合物の質量、又は式(4)で表される化合物及び式(5)で表される化合物の全質量に対して、例えば0.001質量%乃至1質量%である。上記加水分解縮合反応及び共加水分解縮合反応は、例えば、30℃乃至80℃の温度条件にて実施される。
【0027】
本発明の塗布液に含まれるポリマーの、前記式(1)で表される構造単位と前記式(3)で表される構造単位は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体の何れの構造を形成してもよい。
【0028】
前記式(1)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位において、Xを定義する有機基の具体例を、下記式(2−1)乃至式(2−25)に示す。下記式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはn−プロピル基を表し、Buはn−ブチル基を表す。
【化8】
【0029】
<添加剤>
本発明の塗布液は、有機酸が添加されていてもよい。当該有機酸として、例えば、マレイン酸、ギ酸、酢酸、無水マレイン酸、シュウ酸、クエン酸及びリン酸が挙げられる。本発明の塗布液が有機酸を含む場合、その含有割合は、本発明の塗布液に対して、例えば0.1質量%乃至10質量%である。添加剤としての有機酸は、pH調製剤と表現することもできる。
【0030】
本発明の塗布液は、界面活性剤が添加されてもよい。当該界面活性剤は、本発明の塗布液の塗布性を向上させるための添加物である。ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤のような公知の界面活性剤を用いることができ、その含有割合は、本発明の塗布液に含まれるポリマーに対して、例えば0.1質量%以上5質量%以下である。
【0031】
上記界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R−30、同R−40、同R−40−LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、及びオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0032】
[反転パターンの形成方法]
本発明の反転パターンの形成方法は、前述のとおり、下層膜が形成された基板上にポジ型のレジスト溶液を塗布し、プリベークしてレジスト膜を形成する工程を有する。前記基板として、精密集積回路素子の製造に使用される基板(例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコン基板等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、無アルカリガラス基板、低アルカリガラス基板、結晶化ガラス基板、ITO膜が形成されたガラス基板)を挙げることができる。そして、前記基板には、下層膜として、反射防止能を有する有機膜及び/又は無機膜が形成されている。
【0033】
具体的には上記下層膜上に、ポジ型のレジスト溶液をスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布し、例えば80℃乃至180℃程度の温度でプリベークすることで当該ポジ型のレジスト溶液を乾燥させてレジスト膜を形成する。このときのレジスト膜の厚さは例えば10nm乃至1000nmである。上記ポジ型のレジスト溶液として、例えば、住友化学(株)製PAR710、同PAR855、及びJSR(株)製AR2772JNが挙げられる。
【0034】
次に、前記レジスト膜を露光する工程において、露光は、所定パターンのマスクを介して、可視光線(g線)、紫外線(i線,KrFエキシマレーザー,ArFエキシマレーザー)、極端紫外線(EUV)、電子線等の光源を用いて行われる。
【0035】
次に、前記露光後のレジスト膜をアルカリ現像液で現像して前記下層膜が形成された基板上にレジストパターンを形成する工程において、前記アルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液が挙げられる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩の水溶液、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液である。なお、本発明の場合、上記アルカリ現像液で現像した後、従来のリンス液で洗浄し乾燥する工程は必要ない。
【0036】
次に、少なくとも前記レジストパターンのパターン間を充填するように本発明の塗布液を塗布し、当該塗布液に含まれる前記ポリマー以外の成分及び前記アルカリ現像液を除去し又は減少させて塗膜を形成する工程において、本発明の塗布液は、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布される。前記ポリマー以外の成分及び前記アルカリ現像液を除去し又は減少させるために、スピンドライした後加熱する場合、例えば80℃乃至180℃で加熱することにより、塗膜中の溶剤を迅速に揮発させることができる。このときの加熱時間は、例えば10秒乃至300秒間である。上記塗膜の膜厚は特に限定されないが、例えば10nm乃至1000nmである。
【0037】
次に、前記塗膜をエッチバックして前記レジストパターンの表面を露出させる工程において、エッチバックは、例えば、CF
4などのフッ素系ガスを用いるドライエッチング、有機酸若しくは有機塩基の水溶液又は有機溶剤を用いるウェットエッチング、CMP法により行われ、処理条件は適宜調整可能である。
【0038】
さらに、前記レジストパターンを除去する工程において、例えば、O
2とN
2の混合ガス、又はO
2ガスが用いられる。前記レジストパターンを除去後に残った塗膜により、所望の反転パターンが形成される。ドライエッチングを行う際は、公知の装置を使用できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
なお、本明細書の下記合成例に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する。)による測定結果である。使用する測定装置及び測定条件等は次のとおりである。
[GPC条件]
GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕KF803L,KF802,KF801(昭和電工(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0mL/分
標準試料:ポリスチレン(昭和電工(株)製)
【0041】
<合成例1>
テトラエトキシシラン16.7g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン33.3g(70mol%)、アセトン100g及び超純水100gを500mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸4.8gをその混合溶液に滴下した。滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテル60.0gを加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で15質量%となるように調整した。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で700であった。
【0042】
<合成例2>
テトラエトキシシラン16.7g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン33.3g(70mol%)、アセトン100g及び超純水100gを500mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01mol/Lの塩酸4.8gをその混合溶液に滴下した。滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、反応溶液に1質量%のマレイン酸水溶液4.8gを添加し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル100gを加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で15質量%となるように調整した。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で1200であった。
【0043】
<合成例3>
テトラエトキシシラン5.8g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン6.7g(40mol%)、下記式(4−1)で表される化合物である5−(トリエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物9.2g(30mol%)、アセトン43g及び超純水43gを200mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01mol/Lの塩酸1.7gをその混合溶液に滴下した。滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテル24.0gを加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で15質量%となるように調整した。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で1000であった。
【化9】
【0044】
<合成例4>
テトラエトキシシラン5.8g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン6.7g(40mol%)、下記式(4−2)で表される化合物であるβ−(2−トリエトキシシリルエチル)−γ−ブチロラクトン7.7g(30mol%)、アセトン40g及び超純水40gを200mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01mol/Lの塩酸1.7gをその混合溶液に滴下した。滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテル24.0gを加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で15質量%となるように調整した。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で800であった。
【化10】
【0045】
<合成例5>
テトラエトキシシラン5.8g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン6.7g(40mol%)、下記式(4−3)で表される化合物である2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン6.9g(30mol%)、アセトン43g及び超純水43gを200mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01mol/Lの塩酸1.7gをその混合溶液に滴下した。滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテル24.0gを加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で15質量%となるように調整した。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で2000であった。
【化11】
【0046】
<合成例6>
テトラエトキシシラン5.8g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン6.7g(40mol%)、下記式(4−4)で表される化合物である3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン6.6g(30mol%)、アセトン43g及び超純水43gを200mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01mol/Lの塩酸1.7gをその混合溶液に滴下した。滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、その反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテル24.0gを加え、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。固形分濃度は140℃における固形残物換算で15質量%となるように調整した。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で2000であった。
【化12】
【0047】
<比較合成例1>
テトラエトキシシラン16.7g(30mol%)、メチルトリエトキシシラン33.3g(70mol%)、アセトン100g及び超純水100gを500mlのフラスコに入れ、そのフラスコ内の混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01mol/Lの塩酸4.8gをその混合溶液に滴下した。滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、アセトン、水及び塩酸、並びに反応副生物であるエタノールを反応溶液から減圧留去し濃縮して、共加水分解縮合物(ポリマー)の水溶液を得た。GPCによる重量平均分子量Mwはポリスチレン換算で600であった。
【0048】
〔塗布液の調製〕
上記合成例1乃至合成例6及び比較合成例1で得られたポリマー溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び水を下記表1に示す割合で含有する溶剤を加え、塗布液をそれぞれ調製した。水として超純水を用いた。表1に示すポリマーの含有割合は、ポリマー溶液ではなく、ポリマー溶液から溶剤を除いた固形分の含有割合を示す。各成分の含有割合は質量部で表す。表1中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルをPGMEと略記する。
【表1】
【0049】
以下に本発明の塗布液を用いた評価結果を示す。
〔塗布液の保存安定性〕
上記調製例1乃至調製例11及び比較調製例1の塗布液を、23℃の恒温槽で1ヶ月間保管し、これらの塗布液の1ヶ月後の保存安定性を目視により観察した。その結果を下記表2にまとめた。表2において、「良好」とは塗布液が透明な溶液を維持していることを表し、「不良」とは塗布液中に白色の沈殿物が生成し半透明な溶液に変化したことを表す。調製例1乃至調製例11の塗布液を用いた実施例1乃至実施例11のみ、「良好」と評価することができた。
【表2】
【0050】
〔ArF露光によるレジストパターンの埋め込み〕
シリコン基板上に市販のレジスト下層膜形成組成物(樹脂成分はメタクリレート共重合体)を、スピナーを用いて塗布し、205℃で60秒間加熱することにより膜厚28nmのレジスト下層膜を形成し、その膜上にArF用レジスト溶液(JSR(株)製、商品名:AR2772JN)を、スピナーを用いて塗布した。ホットプレート上で、110℃で90秒間加熱することにより、膜厚210nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザー用露光装置((株)ニコン製、S307E)を用い、そのレジスト膜に対し所定の条件で露光した。目的の線幅を65nm、スペース幅を195nmとした上記露光後、110℃で90秒間加熱(PEB)を行い、クーリングプレート上で上記シリコン基板を室温まで冷却した。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて現像して、レジストパターンが形成された。続いて、このレジストパターンに調製例3、調製例7、調製例10又は調製例11の塗布液を塗布し、現像に用いた2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液をこの塗布液に置き換えた。その後、上記シリコン基板を1500rpmで60秒間スピンして塗布液中の溶剤を乾燥させた後、100℃で60秒間加熱して塗膜を形成し、上記レジストパターンの埋め込みを行った。
【0051】
調製例3、調製例7、調製例10又は調製例11の塗布液を用いて形成した塗膜を、CF
4(流量50sccm)とAr(流量200sccm)の混合ガスを用いたドライエッチングによりエッチバックし、レジストパターンの上部を露出させた。その後、O
2(流量10sccm)とN
2(流量20sccm)の混合ガスを用いたドライエッチングにより上記レジストパターンを除去し、反転パターンを得た。
【0052】
調製例3、調製例7、調製例10、調製例11それぞれの塗布液にて埋め込みを行った結果を、断面SEMにより観察した。さらに、ドライエッチング後に得られた反転パターンのパターン形状を断面SEMにより観察した。
図1、
図2、
図3及び
図4にその結果を示す。さらに比較例2として、現像後のレジストパターンに調製例3、調製例7、調製例10又は調製例11の塗布液を塗布する替わりに、従来のリンス液として純水を用い現像後のリンスを行った後のレジストパターンのパターン形状を、断面SEMにより観察した。
図5にその結果を示す。下記表3に、パターンの埋め込み性及びパターン形状の評価結果をまとめた。表3において、「良好」とは、パターン埋め込み性に関してはボイドが発生することなくレジストパターンを埋め込めたことを表し、パターン形状に関してはパターンが倒れることなく反転パターンが形成されたことを表す。
【0053】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の塗布液は、例えば、紫外線用又は極端紫外線用レジスト溶液のリンス液、及び反転パターン形成用組成物に利用することができる。