(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2記載の重金属等汚染対策材において、当該重金属等汚染対策材は、当該重金属等汚染対策材と水とを混合したスラリーのpHが8〜10で平衡状態となるものであることを特徴とする、重金属等汚染対策材。
請求項4記載の重金属等汚染対策工法において、重金属等汚染対策材と酸性土壌とを混合して得られた処理土壌の材齢180日後のpHが5.8〜8.6となること特徴とする、重金属等汚染対策工法。
【背景技術】
【0002】
従来より、土壌中における重金属等不溶化材としては、塩化第二鉄や硫酸第一鉄等の鉄粉系不溶化材、セメント系不溶化材、酸化マグネシウム(MgO)系不溶化材、生石灰や石膏系、高炉スラグ系材料などによる土壌固化材が知られている。
塩化第二鉄や硫酸第一鉄等の鉄粉系不溶化材は、不溶化できる重金属類が砒素などに限られているとともに、不溶化効果は十分ではない場合もあり、また、複合的な汚染について対応することが困難であるという問題がある。
【0003】
また、固化材として、セメント系固化材やMgO系の固化材または生石灰や高炉スラグ系材料による土壌固化材が提案されている。
しかし、これらの従来の土壌固化材は、セメントや生石灰等の影響で、改質後の土壌のpHが10以上とアルカリ性が強くなってしまい、不溶化土壌のpHが長期的に高い状態が続くため、降雨等により強アルカリ性の地下水が周辺環境へ流れ出てしまい、植生への影響が考えられる。
また重金属不溶化能力が低いため、中性領域では溶出していなかった重金属類が溶出する問題がある。
【0004】
酸化マグネシウム(MgO)系の固化材としては、特開2003−225640号公報(特許文献1)に、土壌強度向上用に有機高分子凝集剤や複数の不溶化助剤を添加した固化不溶化材が提案されている。
このような材料は固化・不溶化特性には優れるものの、pHが未処理土壌と比べてアルカリ性になりやすく、セメント系固化材等と同様に、周辺環境へ影響を及ぼす可能性があることから、改良土の適用範囲に制約を受けるという問題がある。
【0005】
土壌pHがアルカリ性になるのを防ぐため、特開2014−185300号公報(特許文献2)には、石膏や高炉スラグをベースとし、酸化マグネシウムや硫酸アルミニウムを添加してpHが中性になるように調整した土壌固化材が提案されている。
しかし、pHは中性に保持されるが、改良土のコーン指数は200〜400kN/m
2程度と低いため、改良土の使用用途が制限されている。また、コーン指数を200〜400kN/m
2まで向上させるには土壌1m
3あたり100kg以上の固化材の添加が必要になり、固化材量の増加及びコストの面で適切ではない。また、重金属の不溶化性能については記載されておらず、更に、石膏系固化材は水和生成物である二水石膏が水溶性であるため、雨水等の水分に長期的に暴露する環境ではコーン指数が低下するという問題がある。
【0006】
従来は重金属汚染土壌に対して土壌の強度向上等の改質を行う場合、不溶化材と固化材とを個別に添加していたが、固化性能と不溶化性能を一つの材料で発現させる材料が期待されている現状があり、更に、周辺環境への影響を抑制するため、改良土のpHが中性領域になる材料のニーズが高まっている。
【0007】
pH中性型固化不溶化材としては、特許第5748015号公報(特許文献3)に、軽焼MgOと硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄を組み合わせたpH中性型固化不溶化材が提案されており、特許第5315096号公報(特許文献4)には、焼石膏(半水石膏)とアルミニウム化合物とカルシウム成分及び/またはマグネシウム成分を含むpH中性型固化不溶化材が提案されている。
しかし、特許文献3に示される固化不溶化材は、中性以外の土壌に対する改質性能及び長期的な不溶化性能については記載されていない。また特許文献4に示される固化不溶化材は、pH中性型固化材と同様に石膏がベースのため、添加量を増やしても改良土のコーン指数が約200kN/m
2と低くなってしまうという欠点がある。
このように、従来の固化不溶化材は改良土の適用範囲に制約を受けるという問題がある。
【0008】
また、特開2017−179341号公報(特許文献5)には、土壌中の重金属を不溶化して、処理土壌の強度を向上させて固化性能と再泥化抑制機能を有し、改良土を中性に保つ性能を保持することができる重金属等汚染対策材が開示されている。
しかし、特許文献5の重金属等汚染対策材は、処理土壌を固化して強度を向上させた土壌が外的な水分によって再泥化することを抑制することに主眼が置かれており、長期的に酸性化する土壌に対するpH中性型固化不溶化性能については記載されていない。
【0009】
近年、酸性化土壌や、経時的に徐々に酸性化する土壌(長期的に酸性化する土壌)に適用可能なpH中性型固化不溶化材のニーズが高まっているが、長期的に酸性化する土壌に対しても十分な固化不溶化性能を発揮して中性化付近に土壌を保持できる固化不溶化材はこれまで開示されていない。
例えば、黄鉄鉱等の硫化物が含まれる土壌では、掘削直後にはpHが中性から弱アルカリ性であるが、長期的に野外に置かれた場合には、大気との接触により黄鉄鉱が徐々に酸化されて土壌が酸性化してしまい、掘削直後と比較してpH性状が大きく変化する。
したがって、掘削直後の土壌についてpHを中性に保持して固化不溶化できていた場合でも、長期的に土壌が酸性化してしまった場合には、重金属の再溶出などの問題がある。
【0010】
また、このような土壌を盛土等で使用した場合には、大気に接触する表層土壌は酸性化するが、内部は酸性化が進行しておらず中性〜弱アルカリ性であることが考えられる。
これより、酸性化の進行程度に関わらず、長期的に酸性化するリスクのある土壌を、長期的にpHを中性付近に保持して固化不溶化することが可能な材料が求められている。
土壌中の黄鉄鉱の酸化は数ヶ月単位で進行することがあるが、特許文献1〜5では長期的に酸性化する土壌に対する長期的なpH状態や長期的な固化不溶化性能や酸性土に対するpH状態や固化不溶化性能は記載されていない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の重金属等汚染対策材は、酸性土壌及び長期的に酸性化する土壌中の重金属等を固化不溶化する汚染対策材であって、ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩及び高分子材料を必須含有成分とし、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、酸性硫酸塩は1〜20質量%の割合で含有され、高分子材料は、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量に対して外割で0.1〜10質量%の割合で含有され、且つ、重金属等汚染対策材中にMgOを6〜12質量%含むことを特徴とする、重金属等汚染対策材である。
【0023】
本発明の重金属等汚染対策材は、好ましくは粉末形態である。粉末形態とすることで、施工現場での取扱や施工性が容易となり、また、土壌と混合した際に土壌中の水分と速やかに反応することが可能であり重金属等を効率的に吸着して不溶化することができる。
さらに、ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩及び高分子材料を必須含有成分として特定の配合比率で含む本発明の重金属等汚染対策材を粉末形態とすることで、土壌中の水分と接触して水和物が析出することや土壌を団粒化しやすくなることにより土壌の強度を向上することができ、効率的に土壌を改質することが可能となる。
【0024】
ここで、重金属等としては、重金属やハロゲンを意味し、重金属としては、例えば、マンガン、クロム、銅、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素、カドミウム等の1種若しくは2種以上のもので、かつ重金属単体及びその化合物が例示でき、またハロゲンとしてはフッ素、塩素等の単体及びその化合物が例示できる。さらにこれらに加え土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質に含まれるホウ素単体及びその化合物を例示することができるが、これらの重金属やハロゲンに限定されるものではない。
【0025】
また本発明の重金属等汚染対策材を適用する土壌は、酸性土壌や長期的に酸性化する土壌である。
かかる土壌に、本発明の重金属等汚染対策材を適用することで、上記pHを初期から長期的に中性付近に維持することが可能である等の上記効果を有するものである。
【0026】
本発明においては、重金属等汚染対策材中の必須含有材料として、ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩及び高分子材料を含有し、これらの各含有量を上記範囲内の量とすることで、重金属等を有効に不溶化することができるとともに、酸性土壌もしくは長期的に酸性化する土壌について処理土の強度を向上させる(固化性能の向上)ことにより土壌を改質でき、処理土のpHを長期的に中性付近に保持する上記効果を同時に奏することが可能となる。
【0027】
好適には、本発明の重金属等汚染対策材に用いられるドロマイト系化合物は、MgO、CaMg(CO
3)
2及びCaCO
3を必須含有成分とするものである。
当該成分を含有するドロマイト系化合物としては、例えば、MgO、CaCO
3、CaMg(CO
3)
2を主成分とする半焼成ドロマイトや、CaMg(CO
3)
2を主成分とするドロマイト、CaCO
3を主成分とする炭酸カルシウムが挙げられ、これらを1種又は2種以上配合して用いることができる。特に半焼成ドロマイト、ドロマイト、炭酸カルシウムを含むものが好適に使用され、特に好適には、ドロマイト系化合物には、半焼成ドロマイト、ドロマイト及び炭酸カルシウムが用いられる。
前記ドロマイトは、市場で入手し得る任意のものを用いることができ、産地は問わない。
また、半焼成ドロマイトも市場で入手し得る任意の半焼成ドロマイトや、市場で入手し得る任意のドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイトを用いることができ、産地や原料ドロマイトの組成等は問わない。半焼成ドロマイトは、分解反応が完全に完了するまでドロマイトを焼成して得られるものではなく、MgO、CaMg(CO
3)
2及びCaCO
3を必須成分として含むものである。
【0028】
ドロマイトは、石灰石CaCO
3とマグネサイトMgCO
3のモル比が1:1となる複塩構造を有しており、CO
32−基を挟んでCa
2+イオンとMg
2+イオンが交互に層を成して、一般に、MgCO
3の割合が10〜45質量%のものをいう。ドロマイトは、国内に多量に存在しており、ドロマイトを使用した重金属等吸着材は、コストや環境負荷の点からも有利である。
【0029】
ドロマイトは土壌中の水分と反応してカルシウム及びマグネシウムがイオンとして溶出する。溶出したカルシウムが土壌中のアルミニウム成分と反応してエトリンガイト様の水和物が析出することにより、土壌の粒子を結合して団粒化を促進し、土壌の強度を高めることができる。また、溶出したカルシウムが硫酸第一鉄等の酸性硫酸塩から溶出した硫酸イオンと反応することにより二水石膏が析出するため、土壌中の含水比が低減することにより土壌強度向上性能が向上する。同様に、溶出したマグネシウムが硫酸第一鉄等の酸性硫酸塩から溶出した硫酸イオンと反応することにより、硫酸マグネシウム六水和物が析出するため、土壌中の含水比が低減することにより土壌強度向上性能を高めることができる。
【0030】
ドロマイト系化合物に含まれるCaCO
3、CaMg(CO
3)
2は炭酸塩であり、炭酸−重炭酸緩衝作用によりpH緩衝効果を有する。
酸性化した土壌に対して本発明の重金属等汚染対策材を添加した場合、MgO及びドロマイト系化合物に含まれる炭酸塩により中和され、pHが中性付近にシフトする。長期的に酸性化する土壌に対しては、初期のpHが弱アルカリ性の状態では、重金属等汚染対策材の中で最も溶解度の高い硫酸第一鉄等の酸性硫酸塩が土壌中の水分に溶けることで土壌を中和し、pHを中性付近領域に下げることができる。その後に酸性化が進行しようとすると、ドロマイト系化合物に含まれる炭酸塩の酸緩衝効果により、pH低下を抑制し長期的に土壌pHを中性に維持することができるという優れた性能を有するものである。
【0031】
上記半焼成ドロマイトとしては、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO
3)
2相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)となる半焼成ドロマイトを好適に用いることができる。
半焼成ドロマイト中に含まれるCaMg(CO
3)
2相を定量して、上記範囲内のCaMg(CO
3)
2相残留量の半焼成ドロマイトを好適に用いることで、原料となるドロマイト鉱石の産地による組成の相違や、焼成温度等の焼成条件の設定などに関係なく、ドロマイトが最大に優れた重金属等吸着性能を有することが可能となる。
【0032】
ドロマイトは焼成することで、CaMg(CO
3)
2→MgO+CaCO
3+CO
2で表わされる分解反応を示す。また、ドロマイトの焼成による上記熱分解により、細孔が形成されて重金属等不溶化能を発揮しているものと考えられる。本発明においては、ドロマイトを焼成した半焼成ドロマイト中のドロマイト相(CaMg(CO
3)
2相)の残留量を粉末X線回折によるリートベルト法により解析して、残留CaMg(CO
3)
2相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)、好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)とすることで、特に好適に、重金属等を、より良好に不溶化することを実現することが可能となる。
【0033】
例えば、かかる好適な半焼成ドロマイトは、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO
3)
2相の含有量xが、好ましくは0.4≦x≦35.4(質量%)、より好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)となるように焼成することで製造することができる。
ドロマイトを焼成する温度は、特に限定されず、通常ドロマイトを焼成して半焼成ドロマイトを製造する温度、例えば650〜1000℃で焼成することができる。残留CaMg(CO
3)
2相の含有量が、0.4≦x≦35.4(質量%)となるように焼成すれば焼成時間も制限されるものではない。
【0034】
また、半焼成ドロマイトは含有するMgOの効果により重金属等不溶化性能を発現することに貢献しており、MgO単体や軽焼ドロマイトと比較してMgO含有量が低くpHが9〜10と弱アルカリ性であることから、本発明に好適に用いることができるものである。
【0035】
本発明の重金属等汚染対策材中のMgO含有量は、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析した値で6〜12質量%であり、好適には6〜9質量%である。
かかる重金属等汚染対策材中のMgOは、含有されるドロマイト系化合物由来のものであり、具体的には、ドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイト等由来のものであり、更に好ましくは半焼成ドロマイト由来のものである。
MgO含有量が6質量%未満では、鉛やフッ素等に対する不溶化能力及び酸性土壌の中和能力が低下し、12質量%を超えると、MgOのpHがアルカリ性であるため得られる重金属等汚染対策材のpHが10以上のアルカリ性を示し、土壌pHを中性にするのが困難になる。
また、かかる土壌のpHを調整するために酸性硫酸塩の配合量を増加させた場合、本発明の重金属等汚染対策材中に含まれるドロマイト系化合物の必須材料配合比率が低下してしまい、改良土の固化性能向上を抑制するおそれがある。
【0036】
本発明の重金属等汚染対策材に含まれるドロマイト系化合物は、必須含有成分MgO、CaMg(CO
3)
2、CaCO
3が含まれるように1種類及び/または2種類以上の材料を任意に混合することができる。
一例として21質量%のMgOを含有する半焼成ドロマイトを使用した場合においては、重金属等汚染対策材中の半焼成ドロマイト配合比を29〜57質量%とすることにより、本発明の重金属等汚染対策材中のMgOの含有量を6〜12質量%とすることができるが、使用するドロマイト系材料に応じて、上記配合比率の制約を受けるものではない。
【0037】
更に、本発明の重金属等汚染対策材には、酸性硫酸塩を必須材料として含む。
酸性硫酸塩としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム等が例示でき、
本発明においては硫酸第一鉄である。
酸性硫酸塩を含有することにより、硫酸第一鉄のようにその高い還元作用によって、砒素や六価クロム等の重金属等に対して、より有効に不溶化することができるとともに、酸性であるため、他の必須含有材料の配合比率を調整することで、本発明の重金属等汚染対策材を用いて処理した土壌を中性付近に保持することを可能とする。
また、酸性硫酸塩は無機凝集剤としての効果があると推測され、土中の細粒分を電気的に凝集させて団粒化しやすくするため、本発明の重金属等汚染対策材に含まれることによって、土壌を締め固めやすくする効果を有することも考えられる。
【0038】
また、本発明の重金属等汚染対策材に含まれる酸性硫酸塩は、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、内割で、酸性硫酸塩を1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の割合で含む。
かかる割合で、重金属等汚染対策材中に、ドロマイト系化合物と酸性硫酸塩とを含み、更に高分子材料を含むこと等により、上記本発明の効果を奏することが可能となる。
【0039】
本発明の重金属等汚染対策材には、更に、高分子材料を必須材料として含み、高分子材料の形態としては、土中の水分と反応する必要があるため粉末形態であることが望ましい。
本発明に用いる高分子材料の性状としては、冷水に溶けやすいこと、水溶液のpHが中性領域であること、種々の土壌に対応するために有効pH領域が弱酸〜弱アルカリ性の範囲をカバーすること、水に溶けると粘性が高くなることを備えるものを用いることが望ましい。
【0040】
高分子材料としては、土中の水分と反応して細粒分を凝集させて土壌を締め固めやすくする作用を有する高分子凝集剤や、土中の水分と反応し増粘することにより粒子を結合させる増粘剤を好適に用いることができる。前記有機高分子凝集剤の種類としてはアニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができ、特により好適なのは溶液pHが中性であり粘度が高いアニオン系高分子凝集剤である。前記有機高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリアミジン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、アクリル酸ソーダ−アクリルアミド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができ、特により好適なものは、ポリアクリルアミド系で、同一水量に溶解させたときに水溶液粘度が高いものである。
【0041】
また、前記増粘剤としては、セルロース誘導体、ポリアミド誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、グアーガム、デンプン、キサンタンガム及びプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができ、特に、好適なものはセルロース誘導体であるヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)である。
【0042】
また、上記高分子材料は、pHが中性であり、更に土壌中の微粒子を結合させ凝集粒子になることで、土壌を固化させることによる強度向上に寄与することができる。
その含有量は、前記ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量に対して、外割で0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
0.1質量%未満では十分な改質性能を得られない。10質量%を超えると、コストが高くなり経済的でない。また、過剰添加により土壌の改質性能が高くなりすぎて施工性が低下するリスクがある。さらに、土中への有機物の大量添加は環境的にも好ましくない。
【0043】
本発明の重金属等汚染対策材は、上記ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩及び高分子材料の必須含有材料を、上記割合で配合することで、酸性土壌及び長期的に酸性化する土壌に混合した際、環境庁告示46号(平成3年8月23日公布)に準拠した方法で調製した検液のpHが中性付近(環境省の一律排水基準である(5.8〜8.6))となるようにすることができるものであり、従って、例えば、材齢180日後の処理土壌のpHを中性付近に維持(5.8〜8.6)することが可能となる。
また、本発明の重金属等汚染対策材の固化不溶化性能等に影響を与えない範囲で、上記必須含有材料以外にも、消石灰などのpH調整用の任意の材料や、スラグなどの土壌改質用の任意の補助材を添加しても良い。
【0044】
本発明の重金属等汚染対策材は、上記ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩及び高分子材料を均一に混合することができれば、任意の方法を用いて混合して調製することができる。
本発明の重金属等汚染対策材は、当該重金属等汚染対策材と水とを混合したスラリーのpHが最終的に8〜10、好ましくは9〜10で平衡状態に、より好ましくは例えば28日以降には8〜10、好ましくは9〜10となるものである。更に、望ましくは、当該重金属等汚染対策材と水とを混合した初期のスラリーのpHは6〜8となるものである。
本発明の重金属等汚染対策材は、酸性土壌及び長期的に酸性化する土壌に対して添加した場合、添加直後から長期にわたり土壌pHを中性付近領域に保つことができ、重金属等の不溶化性能や土壌の固化性能の低下を抑制することが可能である。
【0045】
また、本発明の重金属等汚染対策工法は、重金属等汚染対策材と酸性土壌及び長期的に酸性化する汚染土壌とを混合する工法であるが、その混合方法については特に限定されず、例えば、土壌表層に重金属等汚染対策材を散布し、表面改質性能を有する重機による改良や、土壌との混合設備など従来の粉末不溶化材と同様の土壌混合設備を適用することができる。本発明の重金属等汚染対策工法を施工することで、土壌のpHを中性付近(5.8〜8.6)とすることができる。
【0046】
また、重金属等汚染対策材は、粉末の形態が望ましく用いられ、また、汚染土壌との混合装置としては、バックホウ、深層混合処理機、定置式ミキサー、パワーブレンダ等を用いて混合することが可能であり、処理土壌に対する重金属等汚染対策処理材の配合量は、土壌の含水率や、要求される処理土の固化強度等により変動し、任意に設計することができる。
【0047】
このように、重金属等汚染対策材を、重金属やフッ素等が溶出する酸性汚染土壌等と接触させることにより、汚染土壌から溶出する重金属等を不溶化するとともに、土壌の固化性能を向上させ、かつ処理土壌のpHを中性付近に長期的に保持することが可能となる。
例えば、土壌中の重金属等の溶出量は土壌汚染対策法に基づき測定した溶出量がすべて土壌溶出量基準以内となるとともに、環境庁告示46号(平成3年8月23日公布)に準拠した方法で調製した検液のpHは、例えば材齢180日後には、環境省の一律排水基準に規定される5.8〜8.6の範囲となり、更に、コーン指数は国土交通省の「発生土利用基準について」の土質区分基準の第3種建設発生土に規定される400kN/m
2以上とすることができ、確実に環境基準を満足するように設計することが可能である。
特に自然由来汚染土壌に多く含まれる鉛、砒素、フッ素の溶出量が土壌溶出量基準をわずかに超過した低濃度汚染レベルであれば、少ない添加量で不溶化と中性土壌改質性能の発現という効果を発揮する。
【実施例】
【0048】
本発明を次の実施例及び比較例により説明する。
(試験土壌)
試験土壌は砒素が溶出し、長期的に酸性化する土壌とした。試験土壌の含水比、湿潤密度、砒素溶出量及び溶出液pHについて、表1に示す。
なお、砒素の溶出量は、環境庁告示46号(平成3年8月23日公布)に準拠した方法で検液を作製し、検液中の砒素濃度はJIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定したものである。
【0049】
【表1】
【0050】
(使用原材料)
重金属等汚染対策材を調製するにあたり、以下の材料を用いた。
・半焼成ドロマイト(粉末):栃木県葛生産のドロマイトを焼成
・ドロマイト(粉末):栃木県葛生産
・炭酸カルシウム(粉末):栃木県葛生産
・酸性硫酸塩:硫酸第一鉄一水和物粉末
・高分子材料:アニオン系高分子凝集剤
【0051】
上記半焼成ドロマイト(粉末)、上記ドロマイト(粉末)及び上記炭酸カルシウム(粉末)について、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて各成分の含有量を測定した。
その結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
(重金属等汚染対策材)
上記各使用原材料を、下記表3に示す配合比で混合して、各重金属等汚染対策材を調製した。
なお、各原材料の混合順序は特に制限されないが、各原材料を同時に混合して、各重金属等汚染対策材を調製した。
なお、表3中、半焼成ドロマイト、硫酸第一鉄及びドロマイトは、半焼成ドロマイトと硫酸第一鉄とドロマイトの合量中の内割での配合割合(質量%)を示し、高分子凝集剤はドロマイト系化合物と硫酸第一鉄の合量に対して外割での配合割合(質量%)を示す。
また、各重金属等汚染対策材について、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて測定した重金属等汚染対策材中のMgOの含有量の測定結果、及び各重金属等汚染対策材5gとイオン交換水50gとを混合撹拌して得られた各スラリーについて、材齢1日、7日、28日のpHを測定した結果を下記表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
(試験例)
(試験例1:重金属等の不溶化試験)
上記表1の試験土壌1m
3に対して、表3に示す各重金属等汚染対策材50kgを添加し、ソイルミキサーにて低速で2.5分間練り混ぜた後、ソイルミキサーの容器とパドルに付着した土壌を掻き落とし、再度低速で2.5分間練り混ぜて、不溶化した試験土壌を調製した。
各不溶化土壌を調製後、材齢7日、28日、91日、180日の各土壌について、環境庁告示46号(平成3年8月23日公布)に準拠した方法で検液を作製し、検液pH及び検液中の重金属等の濃度を、JIS K 0102『工場排水試験方法』に準拠して、砒素溶出量を測定した。
【0056】
なお、比較例1として、上記表1の土壌に重金属等汚染対策材を混合しない当該土壌についても同様にして、検液pH及び砒素溶出量を測定した。
その結果を表4に示す。
【0057】
(試験例2:土壌の固化試験)
上記表1の長期的に酸性化する試験土壌1m
3に対して、表3に示す各種重金属等汚染対策材50kgを添加し、ソイルミキサーにて低速で2.5分間練り混ぜた後、ソイルミキサーの容器とパドルに付着した土壌を掻き落とし、再度低速で2.5分間練り混ぜて、不溶化した試験土壌を調製した。
各不溶化した試験土壌を調製した後、当該各土壌をJIS A 1210:2009「突固めによる土の締固め試験方法」に規定される10cmモールドに3層に分けて充填し、20℃で材齢7日まで密封養生した後、JIS A 1228「締固めた土のコーン指数試験方法」に準拠して材齢7日のコーン指数を測定した。
その結果を下記表4に示す。
【0058】
なお、砒素の溶出量は土壌汚染対策法に基づく土壌溶出量基準0.01mg/L以下であるものを合格とした。
また、溶出液検液pHは、環境省の一律排水基準にて規定される5.8〜8.6の範囲となるものを合格とした。
コーン指数は、国土交通省の「発生土利用基準について」の土質区分基準の第3種建設発生土に規定される400kN/m
2以上であるものを合格とした。
【0059】
【表4】
【0060】
上記表4より、ドロマイト系化合物、硫酸第一鉄及び高分子材料をすべて含む本発明の重金属等汚染対策材を用いた実施例においては、長期的に酸性化する土壌について、材齢7日〜180日の試験土壌中の砒素の溶出量がすべて土壌溶出量基準以内となるとともに、検液pHが一律排水基準範囲内となり、かつ材齢7日のコーン指数が400kN/m
2以上となり、本発明の上記効果を有効に発現できるものであることが明らかとなった。
【0061】
比較例2の高分子材料を含まない重金属等汚染対策材C1については、比較例1の試験土壌そのものと比べてコーン指数は若干増加したが、400kN/m
2未満であり、効果は不十分であった。
これは、ドロマイト系化合物から溶出するカルシウムイオン及びマグネシウムイオンや硫酸第一鉄から溶出する硫酸イオンによってエトリンガイトや水和物が析出したことにより、コーン指数は、比較例1と比較して若干向上するものの、高分子材料を含有しないことにより土壌中の細粒分の凝集効果を有さないため、固化性能が満足できるレベルに達しなかったと考えられる。
【0062】
比較例3に示す重金属等汚染対策材C2については、MgO含有量が少ないため、砒素に対する不溶化効果が低下した。
【0063】
比較例4に示す重金属等汚染対策材C3については、MgOの含有量が12.2質量%と高いため砒素不溶化効果に優れるが、C3がアルカリ性であるため、土壌溶出液pHが全材齢でアルカリ性となった。
【0064】
比較例5に示す硫酸第一鉄を含まない重金属等汚染対策材C4については、土壌溶出液pHが全材齢でアルカリ性となった。また、砒素の溶出量が土壌溶出量基準を超過した。
【0065】
比較例6に示す重金属等汚染対策材C5については、硫酸第一鉄の配合量が多いため、C5のpHが中性となった。そのため、土壌の酸性化が進行にするのに合わせてpHが酸性化し、材齢91日以降で土壌溶出液pHが酸性となった。
【0066】
比較例7に示す重金属等汚染対策材C6についてはドロマイト系化合物配合量が少なく、pH緩衝能のない半水石膏が60質量%含まれる。そのため、土壌の酸性化が進行にするのに合わせてpHが酸性化し、材齢91日以降で土壌溶出液pHが酸性となり、それに伴い砒素溶出量が増加した。
酸性土壌及び長期的に酸性化する土壌に対して、土壌中の重金属等を不溶化することができ、土壌を固化して強度を向上させるとともに、改良土のpHを中性領域に保持することができる、重金属等汚染対策材及び当該対策材を用いた重金属等汚染対策工法を提供する。
重金属等汚染対策材は、酸性土壌及び長期的に酸性化する土壌中の重金属等を固化不溶化する汚染対策材であって、ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩及び高分子材料を必須含有成分とし、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、酸性硫酸塩は1〜20質量%の割合で含有され、高分子材料は、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量に対して外割で0.1〜10質量%の割合で含有され、且つ、重金属等汚染対策材中にMgOを6〜12質量%含むものである。