【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/次世代パワーエレクトロニクス/SiC次世代パワーエレクトロニクスの統合的研究開発(研究開発項目I SiCに関する拠点型共通基盤技術開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2主面に対して垂直な方向において、前記第5主面は、前記第6主面と前記底部との間にある、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
前記第2主面に対して垂直な方向において、前記第5主面は、前記底部と前記第3主面との間にある、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
前記第2主面に対して垂直な方向において、前記第5主面は、前記第3主面と前記第1領域および前記第2領域の境界面との間にある、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、ゲート絶縁膜の底部における電界集中を緩和可能な炭化珪素半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、ゲート絶縁膜の底部における電界集中を緩和可能な炭化珪素半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【0009】
[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0010】
(1)本開示に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜21と、第1電極23と、第2電極20とを備えている。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域11と、第1不純物領域11上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域12と、第1不純物領域11から隔てられるように第2不純物領域12上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域13と、第3不純物領域13および第2不純物領域12を貫通し、第1不純物領域11に接し、かつ第2導電型を有する第4不純物領域14と、第1不純物領域11に接し、第1不純物領域11と第2主面2との間にあり、かつ第1導電型を有する第5不純物領域15と、第5不純物領域15と接し、かつ第2導電型を有する第6不純物領域16とを含む。第1主面1には、第3不純物領域13および第2不純物領域12を貫通して第1不純物領域11に至る側面SWと、側面SWと連なる底部BTとにより規定されるトレンチTRが設けられている。第6不純物領域16は、底部BTに対面する第3主面3を有する第1領域31と、第1領域31と接し、かつ第2主面2と対面する第4主面4を有する第2領域32とを有する。第1領域31の不純物濃度は、第2領域32の不純物濃度よりも高い。第4不純物領域14は、第2主面に対面する第5主面5を有する。第2不純物領域12は、第2主面2に対面する第6主面6を有する。第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第6主面6と第2主面2との間にある。ゲート絶縁膜21は、側面SWおよび底部BTに接する。第1電極23は、第1主面1において第3不純物領域13および第4不純物領域14と接する。第2電極20は、第2主面2と接する。
【0011】
上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100によれば、炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第5不純物領域15と、第5不純物領域15と接し、かつ第2導電型を有する第6不純物領域16とを含む。第5不純物領域15および第6不純物領域16は互いに電荷を補償し合うスーパージャンクション構造を構成する。そのため、炭化珪素半導体装置100の耐圧を向上することができる。
【0012】
また第6不純物領域16は、底部BTに対面する第3主面3を有する第1領域31と、第1領域31と接し、かつ第2主面2と対面する第4主面4を有する第2領域32とを有する。これにより、炭化珪素半導体装置に逆方向バイアスを印加した際、第2領域32が完全に空乏化した場合であっても、第1領域31が完全に空乏化することを抑制することができる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0013】
さらに第2主面2に対して垂直な方向において、第4不純物領域14の第5主面5は、第2不純物領域12の第6主面6と第2主面2との間にある。そのため、第4不純物領域14と第1領域31との間で等電位面が形成される。第4不純物領域14は第1電極23と繋がっているため、等電位面は第1電極23の電位(すなわち0V)に近づく。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。そのため、ゲート絶縁膜が破壊されることを抑制することができる。よって、ゲート絶縁膜の信頼性を向上することができる。
【0014】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100において、第1領域31の不純物濃度の最大値は、第2領域32の不純物濃度の平均値の10倍以上であってもよい。これにより、炭化珪素半導体装置に逆方向バイアスを印加した際、第1領域31が空乏化することをさらに抑制することができる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置100において、第1領域31は、底部BTから離間していてもよい。これにより、電流の流れる領域を広くすることができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
【0016】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2主面2に平行な方向において、第2領域32の幅は、底部BTの幅以上であってもよい。これにより、トレンチTRの底部BTの電界集中を緩和することができる。
【0017】
(5)上記(4)に係る炭化珪素半導体装置100において、第2主面2に平行な方向において、底部BTの幅は、第3主面3の幅以上であってもよい。これにより、電流の流れる領域を広くすることができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
【0018】
(6)上記(1)〜(3)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2主面2に平行な方向において、第3主面3の幅は、第2領域32の幅以下であってもよい。これにより、電流の流れる領域を広くすることができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
【0019】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、側面SWと、第1主面1とがなす角度θは、90°以上であってもよい。これにより、チャネル領域における移動度を高くすることができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
【0020】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第1不純物領域11の不純物濃度は、2×10
16cm
-3よりも高く1×10
18cm
-3未満であってもよい。これにより、オン抵抗を低減しながら、高い耐圧を維持することができる。
【0021】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第1領域31の不純物濃度は、第1不純物領域11の不純物濃度よりも高くてもよい。これにより、炭化珪素半導体装置に逆方向バイアスを印加した際、第1不純物領域11に空乏層を延ばすことができる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0022】
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第1不純物領域11の不純物濃度は、第5不純物領域15の不純物濃度よりも高くてもよい。これにより、オン抵抗を低減することができる。
【0023】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2不純物領域12の不純物濃度は、第1不純物領域11の不純物濃度よりも高くてもよい。これにより、第2不純物領域12と第1不純物領域11との境界から第2不純物領域12内に空乏層が広がることで、第2不純物領域12がパンチスルーすることを抑制することができる。
【0024】
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2主面2に対して垂直な方向において、第1領域31の厚みは、0.1μm以上であってもよい。第1領域31が完全に空乏化することを避けることができ、トレンチTRの底部BTに電界が集中することをさらに抑制することができる。
【0025】
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、ゲート絶縁膜21は、側面SWと接する第1部分21bと、底部BTと接する第2部分21cとを有していてもよい。第2部分21cの厚みは、第1部分21bの厚みよりも大きい。これにより、底部BTに高い電界が印加された場合であっても、ゲート絶縁膜が破壊されることを抑制することができる。
【0026】
(14)上記(1)〜(13)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第6主面6と底部BTとの間にあってもよい。これにより、電流が流れる領域が広くなるため、オン抵抗をさらに低減することができる。
【0027】
(15)上記(1)〜(13)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、底部BTと第3主面3との間にあってもよい。これにより、オン抵抗を低減しつつ、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0028】
(16)上記(1)〜(13)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第3主面3と第1領域31および第2領域32の境界面7との間にあってもよい。これにより、第4不純物領域14と第1領域31との間で等電位面が形成され易くなる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することをさらに抑制することができる。
【0029】
(17)本開示に係る炭化珪素半導体装置100の製造方法は、以下の工程を備えている。第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する炭化珪素基板10が準備される。側面SWおよび底部BTに接するゲート絶縁膜21が形成される。第1主面1において第3不純物領域13および第4不純物領域14と接する第1電極23が形成される。第2主面2と接する第2電極20が形成される。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域11と、第1不純物領域11上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域12と、第1不純物領域11から隔てられるように第2不純物領域12上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域13と、第3不純物領域13および第2不純物領域12を貫通し、第1不純物領域11に接し、かつ第2導電型を有する第4不純物領域14と、第1不純物領域11に接し、第1不純物領域11と第2主面2との間にあり、かつ第1導電型を有する第5不純物領域15と、第5不純物領域15と接し、かつ第2導電型を有する第6不純物領域16とを含む。第1主面1には、第3不純物領域13および第2不純物領域12を貫通して第1不純物領域11に至る側面SWと、側面SWと連なる底部BTとにより規定されるトレンチTRが設けられている。第6不純物領域16は、底部BTに対面する第3主面3を有する第1領域31と、第1領域31と接し、かつ第2主面2と対面する第4主面4を有する第2領域32とを有する。第1領域31の不純物濃度は、第2領域32の不純物濃度よりも高い。第4不純物領域14は、第2主面に対面する第5主面5を有する。第2不純物領域12は、第2主面2に対面する第6主面6を有する。第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第6主面6と第2主面2との間にある。
【0030】
上記(17)に係る炭化珪素半導体装置100の製造方法によれば、炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第5不純物領域15と、第5不純物領域15と接し、かつ第2導電型を有する第6不純物領域16とを含む。第5不純物領域15および第6不純物領域16は互いに電荷を補償し合うスーパージャンクション構造を構成する。そのため、炭化珪素半導体装置100の耐圧を向上することができる。
【0031】
また第6不純物領域16は、底部BTに対面する第3主面3を有する第1領域31と、第1領域31と接し、かつ第2主面2と対面する第4主面4を有する第2領域32とを有する。これにより、炭化珪素半導体装置に逆方向バイアスを印加した際、第2領域32が完全に空乏化した場合であっても、第1領域31が完全に空乏化することを抑制することができる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0032】
さらに第2主面2に対して垂直な方向において、第4不純物領域14の第5主面5は、第2不純物領域12の第6主面6と第2主面2との間にある。そのため、第4不純物領域14と第1領域31との間で等電位面が形成される。第4不純物領域14は第1電極23と繋がっているため、等電位面は第1電極23の電位(すなわち0V)に近づく。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。そのため、ゲート絶縁膜が破壊されることを抑制することができる。よって、ゲート絶縁膜の信頼性を向上することができる。
【0033】
(18)上記(17)に係る炭化珪素半導体装置100の製造方法において、炭化珪素基板10を準備する工程は、第1導電型の第1エピタキシャル層61を形成する工程と、第1エピタキシャル層61上に、第1導電型の第2エピタキシャル層62を形成する工程と、第2エピタキシャル層62に対して第1導電型を付与可能な不純物イオンを注入する工程とを含んでいてもよい。第2エピタキシャル層62は、活性領域となる第1部分17と、第1部分17を囲みかつ終端領域となる第2部分19とを有している。不純物イオンを注入する工程では、第2部分19に対して不純物イオンを注入することなく、第1部分17に対して不純物イオンが注入されることにより第1不純物領域11が形成される。活性領域となる第1部分17の不純物濃度を高くすることで、オン抵抗を低減することができる。終端領域となる第2部分19の不純物濃度を低くすることで、耐圧を高く維持することができる。
【0034】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0035】
まず、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の一例としてのMOSFET100の構成について説明する。
【0036】
図1に示されるように、本実施形態に係るMOSFET100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜21と、ゲート電極24と、層間絶縁膜22と、ソース電極23と、ドレイン電極20とを主に有している。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50および炭化珪素エピタキシャル層40は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板50は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含みn型(第1導電型)を有する。炭化珪素基板の第1主面1の最大径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。
【0037】
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000−1)面または(000−1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、たとえば<11−20>方向であってもよいし、<1−100>方向であってもよい。オフ角は、たとえば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0038】
炭化珪素エピタキシャル層40は、電流拡がり層11(第1不純物領域)と、ボディ領域12(第2不純物領域)と、ソース領域13(第3不純物領域)と、コンタクト領域14(第4不純物領域)と、第1ピラー領域15(第5不純物領域)と、第2ピラー領域16(第6不純物領域)とを主に有する。
【0039】
電流拡がり層11は、たとえば窒素などのn型不純物を含み、n型の導電型を有する。電流拡がり層11が含むn型不純物の濃度は、たとえば1×10
17cm
-3程度である。電流拡がり層11のn型不純物の濃度は、2×10
16cm
-3よりも高く1×10
18cm
-3未満であってもよい。電流拡がり層11のn型不純物の濃度は、3×10
16cm
-3以上であってもよいし、5×10
16cm
-3以上であってもよい。電流拡がり層11のn型不純物の濃度は、5×10
17cm
-3以下であってもよいし、1×10
17cm
-3以下であってもよい。電流拡がり層11のn型不純物の濃度は、たとえば第1ピラー領域15のn型不純物の濃度よりも高い。電流拡がり層11は、第1ピラー領域15および第2ピラー16領域上にある。電流拡がり層11の厚みは、たとえば0.5μm以上2.0μm以下である。
【0040】
ボディ領域12は電流拡がり層11上に設けられている。ボディ領域12は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。ボディ領域12のp型不純物の濃度は、たとえば1×10
18cm
-3程度である。ボディ領域12のp型不純物の濃度は、1×10
17cm
-3以上2×10
18cm
-3以下であってもよい。ボディ領域12の厚みは、たとえば0.2μm以上1.0μm以下である。好ましくは、ボディ領域12のp型不純物の濃度は、電流拡がり層11のn型不純物の濃度よりも高い。好ましくは、ボディ領域12のp型不純物の濃度は、電流拡がり層11のn型不純物の濃度の2倍以上である。ボディ領域12は、第2主面2に対面する第6主面6を有する。ボディ領域12は、第6主面6において電流拡がり層11と接する。
【0041】
ソース領域13は、ボディ領域12によって電流拡がり層11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、たとえば窒素またはリン(P)などのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有する。ソース領域13は、第1主面1を構成している。好ましくは、ソース領域13のn型不純物の濃度は、ボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高い。ソース領域13が含むn型不純物の濃度は、たとえば2×10
19cm
-3程度である。ソース領域13のn型不純物の濃度は、1×10
19cm
-3以上2×10
20cm
-3以下であってもよい。ソース領域13の厚みは、たとえば0.1μm以上0.5μm以下である。
【0042】
コンタクト領域14は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。コンタクト領域14のp型不純物の濃度は、たとえばボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高い。コンタクト領域14は、ソース領域13およびボディ領域12を貫通し、電流拡がり層11に接する。コンタクト領域14は、第2主面2に対面する第5主面5を有する。コンタクト領域14は、第1主面1を構成する。コンタクト領域14のp型不純物の濃度は、たとえば1×10
18cm
-3以上3×10
20cm
-3以下である。
【0043】
第1主面1におけるコンタクト領域14のp型不純物の濃度は、たとえば第5主面5におけるコンタクト領域14のp型不純物の濃度よりも高くてもよい。第1主面1におけるコンタクト領域14のp型不純物の濃度は、たとえば1×10
20cm
-3程度である。第5主面5におけるコンタクト領域14のp型不純物の濃度は、たとえば1×10
18cm
-3程度である。第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第6主面6と第2主面2との間にある。具体的には、第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、たとえば第6主面6と底部BTとの間にある。
【0044】
第1ピラー領域15は、電流拡がり層11に接する。第1ピラー領域15は、たとえば窒素などのn型不純物を含み、n型の導電型を有する。第1ピラー領域15は、電流拡がり層11と第2主面2との間にある。第1ピラー領域15のn型不純物の濃度は、たとえば3×10
16cm
-3程度である。第1ピラー領域15のn型不純物の濃度は、炭化珪素単結晶基板50のn型不純物の濃度よりも低い。
【0045】
第2ピラー領域16は、第1ピラー領域15と接する。第2ピラー領域16は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。第2ピラー領域16のp型不純物の濃度は、たとえば3×10
16cm
-3程度である。第1ピラー領域15と第2ピラー領域16とは、第2主面2と平行な方向において交互に繰り返し配置されている。第1ピラー領域15および第2ピラー領域16はスーパージャンクション構造を構成する。第1ピラー領域15の幅W4と第2ピラー領域16の幅W3との合計の値は、セルピッチCPである。第1ピラー領域15の幅W4が5μmであり、第2ピラー領域16の幅W3が2μmの場合、セルピッチCPは7μmである。セルピッチCPは、たとえば3μm以上10μm以下である。第2ピラー領域16の幅W3は、たとえばセルピッチCPの20%以上80%以下である。
【0046】
第1主面1には、側面SWと底部BTとにより規定されるトレンチTRが設けられている。側面SWは、ソース領域13およびボディ領域12を貫通して電流拡がり層11に至る。底部BTは、側面SWと連なる。底部BTは、電流拡がり層11に位置する。底部BTは、たとえば第2主面2と平行な平面である。側面SWと、第1主面1とがなす角度θは、たとえば90°である。角度θは、90°以上であってもよい。トレンチTRは、たとえば第2主面2と平行な方向に沿ってストライプ状に伸長している。側面SWは、たとえば{11−20}面(すなわちa面)または{1−100}面(すなわちm面)である。トレンチTRは、ハニカム状に伸長していてもよし、アイランド状に点在していてもよい。トレンチTRの深さは、たとえば0.5μm以上2.0μm以下である。
【0047】
第2ピラー領域16は、第1領域31と、第2領域32とを有する。第1領域31は、底部BTに対面する第3主面3を有する。第2領域32は、第1領域31と接する。第2領域32は、第2主面2と対面する第4主面4を有する。第2領域32は、第1領域31と第2主面2との間にある。第1領域31のp型不純物の濃度は、第2領域32のp型不純物の濃度よりも高い。第2ピラー領域16の伸長方向は、トレンチTRの底部BTの伸長方向と同じである。好ましくは、第2ピラー領域16は、トレンチTRの底部BTの全面に対面している。
【0048】
図2に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向Xにおいて、第1領域31におけるp型不純物の濃度が異なっていてもよい。たとえば、第1領域31は、第3主面3から第4主面4に向かうに従って、p型不純物の濃度が増加する領域と、最大値を示す位置と、p型不純物の濃度が減少する領域とを有している。第1領域31において、p型不純物の濃度が最大値を示す位置は、たとえば第3主面3と、第1領域31と第2領域32との境界面7(
図1参照)との間にある。
図2に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向Xにおいて、第2領域32におけるp型不純物の濃度は一定であってもよい。第1領域31のp型不純物の濃度の最大値N
A1は、たとえば第2領域32のp型不純物の濃度の平均値N
A2の10倍以上であり、好ましくは20倍以上であり、より好ましくは50倍以上である。第1領域31のp型不純物の濃度は、電流拡がり層11のn型不純物の濃度よりも高くてもよい。
【0049】
図1に示されるように、第1領域31は、底部BTから離間していてもよい。第2主面2に対して垂直な方向Xにおいて、第1領域31と底部BTとの間の距離H3は、たとえば0.1μm以上1μm以下である。第2主面2に対して垂直な方向Xにおいて、第1領域31の厚みH1は、たとえば0.1μm以上であり、好ましくは0.13μm以上であり、より好ましくは0.2μm以上である。第1領域31の厚みH1は、たとえば1μm以下である。典型的には、第2主面2に対して垂直な方向Xにおいて、第2領域32の厚みH2は、第1領域31の厚みH1よりも大きい。第2領域32の厚みH2は、たとえば3μm以上7μm以下である。耐圧仕様が1200Vの場合、第2領域32の厚みH2は、たとえば5μm以上7μm以下である。耐圧仕様が600Vの場合、第2領域32の厚みH2は、たとえば3μm以上5μm以下である。
【0050】
第2主面2に平行な方向Yにおいて、第2領域32の幅W3は、たとえば底部BTの幅W1と同じであってもよいし、底部BTの幅W1以上であってもよい。第2領域32の幅W3は、たとえば2μm以上3μm以下である。第2主面2に平行な方向Yにおいて、底部BTの幅W1は、第3主面3の幅と同じであってもよいし、第3主面3の幅以上であってもよい。本実施形態に係るMOSFET100においては、底部BTの幅W1は、第1領域31の幅とほぼ同じである。第1領域31の幅W2は、第2領域32の幅W3とほぼ同じである。
【0051】
図1に示されるように、ゲート絶縁膜21は、側面SWおよび底部BTに接する。ゲート絶縁膜21は、たとえば、側面SWと接する第1部分21bと、底部BTと接する第2部分21cと、第1主面1と接する第3部分21aとを有している。好ましくは、第2部分21cの厚みは、第1部分21bの厚みよりも大きい。第1部分21bの厚みとは、側面SWに対して垂直な方向における第1部分21bの厚みである。第2部分21cの厚みとは、底部BTに対して垂直な方向における第2部分21cの厚みである。好ましくは、第2部分21cの厚みは、第1部分21bの厚みの1.5倍以上20倍以下である。
【0052】
ゲート絶縁膜21は、たとえば酸化膜である。ゲート絶縁膜21は、たとえば二酸化珪素を含む材料により構成されている。第2部分21cは、底部BTにおいて電流拡がり層11と接する。第1部分21bは、側面SWにおいてソース領域13、ボディ領域12および電流拡がり層11の各々と接する。第3部分21aは、第1主面1においてソース領域13と接していてもよい。
【0053】
ゲート電極24は、ゲート絶縁膜21上に設けられている。ゲート電極24は、たとえば導電性不純物を含むポリシリコンから構成されている。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜21の第1部分21bと、第2部分21cと、第3部分21aとに接していてもよい。ゲート電極24は、トレンチTRの内部に配置されている。
【0054】
ソース電極23は、第1主面1上に設けられている。ソース電極23は、第1主面1において、ソース領域13およびコンタクト領域14に接している。ソース電極23は、たとえばTiと、Alと、Siとを含む材料から構成されている。ソース電極23は、ソース領域13とオーミック接合している。好ましくは、ソース電極23は、コンタクト領域14とオーミック接合している。
【0055】
ドレイン電極20は、第2主面2と接する。ドレイン電極20は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接している。ドレイン電極20は、第1ピラー領域15と電気的に接続されている。ドレイン電極20は、たとえばNiSiまたはTiAlSiを含む材料から構成されている。
【0056】
層間絶縁膜22は、ゲート電極24およびゲート絶縁膜21に接して設けられている。層間絶縁膜22は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜22は、ゲート電極24とソース電極23とを電気的に絶縁している。層間絶縁膜22の一部は、トレンチTRの内部に設けられていてもよい。
【0057】
次に、第1変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図3に示されるように、第2主面2に垂直な方向Xにおいて、コンタクト領域14の第5主面5は、第1領域31および第2領域32の境界面7と同じ位置にあってもよい。
図4および
図5に示されるように、コンタクト領域14は、接続部33により、第1領域31と電気的に接続されていてもよい。接続部33は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。接続部33の導電型は、コンタクト領域14および第1領域31の導電型と同じである。接続部33のp型不純物の濃度は、第1領域31のp型不純物の濃度と同じであってもよい。
【0058】
図4に示されるように、第1領域31の長手方向(伸長方向)は、コンタクト領域14の長手方向(伸長方向)と同じであってもよい。第1領域31は、底部BTに沿って設けられている。第2主面2に対して垂直な方向Xから見て、底部BTは、第1領域31と重なっている。接続部33は、第1領域31の長手方向の一方側の端面および他方側の端面において第1ピラー領域15と接している。言い換えれば、第2主面2に対して垂直な方向Xから見て、接続部33は、第1ピラー領域15に挟まれている。
【0059】
図5に示されるように、接続部33は、第2主面2に対して垂直な方向の一方側の端面において電流拡がり層11と接し、他方側の端面において第1ピラー領域15と接する。言い換えれば、第2主面2に対して垂直な方向Xおよび第2主面2に対して平行な方向Yの双方に対して垂直な方向から見て(以降、断面視とも称する)、接続部33は、電流拡がり層11および第1ピラー領域15に挟まれている。接続部33は、ボディ領域12に対面する。電流拡がり層11は、ボディ領域12と接続部33とに挟まれている。
【0060】
次に、第2変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図6に示されるように、第1領域31の第3主面3の幅W2は、底部BTの幅W1よりも大きくてもよい。同様に、第2領域32の幅W3は、底部BTの幅W1よりも大きくてもよい。第2主面2と平行な方向Yにおいて、第1領域31の側部は、トレンチTRの側面SWと、コンタクト領域14の側部との間にある。第1領域31の一部は、ボディ領域12に対面している。第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1領域31および第2領域32の一部は、ボディ領域12と重なっている。
【0061】
次に、第3変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図7に示されるように、第2主面2に平行な方向Yにおいて、第1領域31の第3主面3の幅W2は、底部BTの幅W1よりも小さくてもよい。第2主面2に平行な方向Yにおいて、第1領域31の第3主面3の幅W2は、第2領域32の幅W3以下であってもよいし、第2領域32の幅W3よりも小さくてもよい。第2領域32の幅W3は、底部BTの幅W1よりも大きい。第2主面2と平行な方向Yにおいて、トレンチTRの側面SWと、第1領域31の側部は、第2領域32の側部との間にある。第2領域32の一部は、ボディ領域12および底部BTに対面している。第2主面2に対して垂直な方向から見て、第1領域31は、底部BTに包含されていてもよい。
【0062】
次に、第4変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図8に示されるように、トレンチTRの側面SWと、第1主面1との角度θが90°よりも大きくてもよい。側面SWは、たとえば{0001}面に対して50°以上70°以下傾斜した面であってもよい。具体的には、側面SWは、(000−1)面に対して50°以上70°以下傾斜した面である。これにより、チャネル領域における移動度を高くすることができる。側面SWは、たとえば(0−33−8)面を含んでいてもよい。第2主面2から第1主面1に向かう方向においてトレンチTRの幅は広がっている。第1領域31は、底部BTおよび側面SWの双方に対して対面している。言い換えれば、第2主面2に対して垂直な方向において、底部BTおよび側面SWは、第1領域31と重なっている。
【0063】
次に、第5変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図9に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向において、コンタクト領域14の第5主面5は、底部BTと第3主面3との間にあってもよい。言い換えれば、第5主面5は、底部BTよりも第2主面2側に位置し、かつ第3主面3よりも1主面1側に位置する。コンタクト領域14の側面は、トレンチTRの角部Cに対面している。
【0064】
次に、第6変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図10に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第3主面3と、第1領域31および第2領域32の境界面7との間にあってもよい。言い換えれば、第5主面5は、第3主面3よりも第2主面2側に位置し、かつ境界面7よりも第1主面1側にある。コンタクト領域14の側面は、トレンチTRの角部Cと、第1領域31の側面とに対面している。コンタクト領域14の側面は、電流拡がり層11と、第1ピラー領域15とに接する。第5主面5は、第1ピラー領域15に接する。
【0065】
次に、第7変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図11に示されるように、第1領域31は、トレンチTRの底部BTに接していてもよい。第1領域31は、底部BTの一部に接していてもよいし、底部BTの全部に接していてもよい。第1領域31の幅W2は、底部BTの幅W1よりも広くてもよいし、狭くてもよいし、同じでもよい。第1領域31が底部BTと接していることにより、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを効果的に抑制することができる。
【0066】
図12に示されるように、第1領域31のp型不純物の濃度は、第3主面3から第4主面4に向かってほぼ一定であってもよい。たとえば第1領域31がエピタキシャル成長により形成される場合は、第1領域31のp型不純物の濃度はほぼ一定になる。第1領域31のp型不純物の濃度の平均値N
A1は、第2領域32のp型不純物の濃度の平均値N
A2よりも小さい。
【0067】
なお、上記各不純物領域におけるp型不純物の濃度およびn型不純物の濃度は、たとえばSCM(Scanning Capacitance Microscope)またはSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などにより測定可能である。また、第3主面3、第4主面4、第5主面5および第6主面6は、p型領域とn型領域との境界面である。p型領域とn型領域との境界面の位置は、たとえばSIMSにより特定することができる。
【0068】
次に、本実施形態に係るMOSFET100の製造方法について説明する。
まず、炭化珪素基板を準備する工程(S10:
図13)が実施される。たとえば昇華法によって製造された炭化珪素インゴット(図示せず)がスライスされることにより、炭化珪素単結晶基板50が準備される。次に、第1エピタキシャル層61を形成する工程(S11:
図14)が実施される。たとえば原料ガスとしてシラン(SiH
4)とプロパン(C
3H
8)との混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素(H
2)を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、炭化珪素単結晶基板50上に第1エピタキシャル層61が形成される(
図15参照)。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物が第1エピタキシャル層61に導入される。第1エピタキシャル層61は、n型の導電型を有する。第1エピタキシャル層61のn型不純物の濃度は、炭化珪素単結晶基板50のn型不純物の濃度よりも低い。
【0069】
次に、第2領域を形成する工程(S12:
図14)が実施される。たとえばRIE(Reactive Ion Etching)により、第1エピタキシャル層61の表面に凹部が設けられる。次に、たとえば原料ガスとしてシランとプロパンとの混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素を用いたCVD法により、第1エピタキシャル層61に設けられた凹部内にp型エピタキシャル層が形成される(
図16参照)。エピタキシャル成長の際、たとえばアルミニウムなどのp型不純物がp型エピタキシャル層に導入される。これにより、第2領域32が形成される。第2領域32の幅W3は、たとえば2μm以上3μm以下である。なお、p型エピタキシャル層を形成する代わりに、第1エピタキシャル層61に対してアルミニウムイオンなどのp型不純物イオンが注入されることにより、第2領域32が形成されてもよい。
【0070】
次に、第1領域を形成する工程(S13:
図14)が実施される。たとえば、アルミニウムなどのp型不純物イオンが、第2領域32の表層部に注入されることにより、第1領域31が形成される(
図17)。第1領域31が含むp型不純物の濃度は、第2領域32が含むp型不純物の濃度よりも高い。第1領域31の厚みH1は、たとえば0.1μm以上1μm以下である。第2領域32の厚みH2は、第1領域31の厚みH1よりも大きい。第2領域32の厚みH2は、たとえば3μm以上7μm以下である。第1エピタキシャル層61において、第1領域31および第2領域32以外の領域は、第1ピラー領域15となる。第1領域31および第2領域32は、第2ピラー領域16を構成する。
【0071】
次に、第2エピタキシャル層62を形成する工程(S14:
図14)が実施される。たとえば原料ガスとしてシランとプロパンとの混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素を用いたCVD法により、第1エピタキシャル層61上に第2エピタキシャル層62が形成される(
図18参照)。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物が第2エピタキシャル層62導入される。第2エピタキシャル層62は、n型の導電型を有する。
図19に示されるように、第2エピタキシャル層62は、活性領域となる第1部分17と、第1部分17を囲みかつ終端領域となる第2部分19とを有している。終端領域は、ガードリングまたはフィールドストップなどの耐圧構造が形成される領域である。
【0072】
次に、n型不純物イオンを注入する工程(S15:
図14)が実施される。たとえば、窒素などのn型を付与可能なn型不純物イオンが、矢印Aの方向に沿って第2エピタキシャル層62に対して注入される(
図20参照)。具体的には、第2部分19に対してn型不純物イオンを注入することなく、第1部分17に対してn型不純物イオンが注入される(
図21参照)。これにより、電流拡がり層11が形成される。
図21に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向から見て、電流拡がり層11は、第1部分17と第2部分19との境界部18に取り囲まれるように形成される。電流拡がり層11のn型不純物の濃度は、第2エピタキシャル層62の第2部分19のn型不純物の濃度よりも高い。
【0073】
次に、p型不純物イオンを注入する工程(S16:
図14)が実施される。たとえば、コンタクト領域14が形成される領域上に開口部を有するマスク層が形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンが第2エピタキシャル層62に注入される。これにより、第1p型領域14aが形成される(
図22参照)。
【0074】
次に、第3エピタキシャル層63を形成する工程(S17:
図14)が実施される。たとえば原料ガスとしてシランとプロパンとの混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素を用いたCVD法により、第2エピタキシャル層62上に第3エピタキシャル層63が形成される(
図18参照)。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物が第3エピタキシャル層63導入される。第3エピタキシャル層63は、n型の導電型を有する。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型不純物イオンが、第3エピタキシャル層63に対して注入されることにより、ボディ領域12が形成される。次に、ボディ領域12に対して、たとえばリンイオンなどのn型不純物イオンが、ボディ領域12よりも浅い深さで注入されることによりソース領域13が形成される。ボディ領域12およびソース領域13が第3エピタキシャル層63を構成する(
図23参照)。
【0075】
次に、p型不純物イオンを注入する工程(S18:
図14)が実施される。たとえば、コンタクト領域14が形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンが第3エピタキシャル層63に注入される。これにより、第2p型領域14bが形成される(
図22参照)。第2p型領域14bは、第1p型領域14aと繋がるように形成される。第1p型領域14aおよび第2p型領域14bは、コンタクト領域14を構成する。コンタクト領域14およびソース領域13は、第1主面1を構成する。
【0076】
次に、炭化珪素基板10に注入された不純物イオンを活性化するために活性化アニールが実施される。活性化アニールの温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。活性化アニールの時間は、たとえば30分程度である。活性化アニールの雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。
【0077】
次に、トレンチを形成する工程(S19:
図14)が実施される。まず第1主面1上に、開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。マスク層として、たとえばシリコン酸化膜などを用いることができる。開口部はトレンチTR(
図1)の位置に対応して形成される。次に、マスク層の開口部において、ソース領域13と、ボディ領域12と、電流拡がり層11の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング、特に誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとしてSF
6またはSF
6とO
2との混合ガスを用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、トレンチTRが形成される。トレンチTRは、第1主面1に対してほぼ垂直な側面SWと、側面SWと連なりかつ第1主面1とほぼ平行な底部BTとにより規定される。トレンチTRの底部BTの幅W1は、第2ピラー領域16の幅W3と同じであってもよいし、小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0078】
以上により、炭化珪素基板10が準備される(
図24参照)。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素基板10は、n型を有する電流拡がり層11と、電流拡がり層11上に設けられ、p型を有するボディ領域12と、電流拡がり層11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられ、かつn型を有するソース領域13と、ソース領域13およびボディ領域12を貫通し、電流拡がり層11に接し、かつp型を有するコンタクト領域14と、電流拡がり層11に接し、電流拡がり層11と第2主面2との間にあり、かつn型を有する第1ピラー領域15と、第1ピラー領域15と接し、かつp型を有する第2ピラー領域16とを含む。
【0079】
第1主面1には、ソース領域13およびボディ領域12を貫通して第1ピラー領域15に至る側面SWと、側面SWと連なる底部BTとにより規定されるトレンチTRが設けられている。第2ピラー領域16は、底部BTに対面する第3主面3を有する第1領域31と、第1領域31と接し、かつ第2主面2と対面する第4主面4を有する第2領域32とを有する。第1領域31のp型不純物の濃度は、第2領域32のp型不純物の濃度よりも高い。コンタクト領域14は、第2主面に対面する第5主面5を有する。ボディ領域12は、第2主面2に対面する第6主面6を有する。第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第6主面6と第2主面2との間にある。
【0080】
次に、ゲート絶縁膜を形成する工程(S20:
図13)が実施される。たとえば炭化珪素基板10を熱酸化することにより、ソース領域13と、ボディ領域12と、電流拡がり層11と、コンタクト領域14とに接するゲート絶縁膜21が形成される。具体的には、炭化珪素基板10が、酸素を含む雰囲気中において、たとえば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱される。これにより、第1主面1と、側面SWおよび底部BTに接するゲート絶縁膜21が形成される(
図25参照)。
【0081】
ゲート絶縁膜21は、たとえば、側面SWと接する第1部分21bと、底部BTと接する第2部分21cと、第1主面1と接する第3部分21aとを有している。第2部分21cの厚みは、第1部分21bの厚みよりも大きい。第2部分21cは、底部BTにおいて電流拡がり層11と接する。第1部分21bは、側面SWにおいてソース領域13、ボディ領域12および電流拡がり層11の各々と接する。第3部分21aは、第1主面1においてソース領域13およびコンタクト領域14に接する。
【0082】
次に、一酸化窒素(NO)ガス雰囲気中において炭化珪素基板10に対して熱処理(NOアニール)が行われてもよい。NOアニールにおいて、炭化珪素基板10が、たとえば1100℃以上1400℃以下の条件下で1時間程度保持される。これにより、ゲート絶縁膜21とボディ領域12との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。
【0083】
NOアニール後、雰囲気ガスとしてアルゴン(Ar)を用いるArアニールが行われてもよい。Arアニールの加熱温度は、たとえば上記NOアニールの加熱温度以上である。Arアニールの時間は、たとえば1時間程度である。これにより、ゲート絶縁膜21とボディ領域12との界面領域における界面準位の形成がさらに抑制される。なお、雰囲気ガスとして、Arガスに代えて窒素ガスなどの他の不活性ガスが用いられてもよい。
【0084】
次に、ゲート電極を形成する工程(S30:
図13)が実施される。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜21上に形成される。ゲート電極24は、たとえばLP−CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により形成される。ゲート電極24は、ソース領域13と、ボディ領域12と、電流拡がり層11との各々に対面するように形成される。
【0085】
次に、層間絶縁膜22を形成する工程(S40:
図13)が実施される。具体的には、ゲート電極24を覆い、かつゲート絶縁膜21と接するように層間絶縁膜22が形成される。層間絶縁膜22は、たとえば、CVD法により形成される。層間絶縁膜22は、たとえば二酸化珪素を含む材料である。層間絶縁膜22の一部は、トレンチTRの内部に形成されてもよい。
【0086】
次に、ソース電極を形成する工程(S50:
図13)が実施される。たとえば、層間絶縁膜22およびゲート絶縁膜21に開口部が形成されるようにエッチングが行われることにより、当該開口部にソース領域13およびコンタクト領域14が層間絶縁膜22およびゲート絶縁膜21から露出する(
図26参照)。次に、第1主面1においてソース領域13およびコンタクト領域14に接するソース電極23が形成される。ソース電極23は、たとえばスパッタリング法により形成される。ソース電極23は、たとえばTi、AlおよびSiを含む材料から構成される。
【0087】
次に、合金化アニールが実施される。ソース領域13およびコンタクト領域14と接するソース電極23が、たとえば900℃以上1100℃以下の温度で5分程度保持される。これにより、ソース電極23の少なくとも一部が、炭化珪素基板10が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域13とオーミック接合するソース電極23が形成される。好ましくは、ソース電極23は、コンタクト領域14とオーミック接合する。
【0088】
次に、ドレイン電極を形成する工程(S60:
図13)が実施される。たとえばスパッタリング法により、第2主面2と接するドレイン電極20が形成される。ドレイン電極20は、たとえばNiSiまたはTiAlSiを含む材料から構成されている。以上により、本実施形態に係るMOSFET100(
図1)が完成する。
【0089】
なお、側面SWと第1主面1とのなす角度θが90°よりも大きいトレンチTRを形成する場合においては、トレンチを形成する工程(S19:
図14)において、さらに熱エッチングが行われることが望ましい。熱エッチングは、たとえば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、たとえば、Cl
2、BCL
3、SF
6、またはCF
4を含む。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば700℃以上1000℃以下として、熱エッチングが行われる。反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素(N
2)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。上記熱エッチングにより、トレンチTRの側面SWは、(000−1)面に対して50°以上70°以下傾斜した面になる(
図8参照)。側面SWは、たとえば(0−33−8)面を含んでいてもよい。
【0090】
なお上記実施の形態では、n型を第1導電型とし、かつp型を第2導電型して説明したが、p型を第1導電型とし、かつn型を第2導電型としてもよい。また上記実施の形態では、炭化珪素半導体装置としてMOSFETを例に挙げて説明したが、炭化珪素半導体装置は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。
【0091】
次に、本実施形態に係るMOSFETの作用効果について説明する。
本実施形態に係るMOSFET100によれば、炭化珪素基板10は、n型を有する第1ピラー領域15と、第1ピラー領域15と接し、かつp型を有する第2ピラー領域16とを含む。第1ピラー領域15および第2ピラー領域16は互いに電荷を補償し合うスーパージャンクション構造を構成する。そのため、MOSFET100の耐圧を向上することができる。
【0092】
また第2ピラー領域16は、底部BTに対面する第3主面3を有する第1領域31と、第1領域31と接し、かつ第2主面2と対面する第4主面4を有する第2領域32とを有する。これにより、MOSFETに逆方向バイアスを印加した際、第2領域32が完全に空乏化した場合であっても、第1領域31が完全に空乏化することを抑制することができる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0093】
さらに第2主面2に対して垂直な方向において、コンタクト領域14の第5主面5は、ボディ領域12の第6主面6と第2主面2との間にある。そのため、コンタクト領域14と第1領域31との間で等電位面が形成される。コンタクト領域14はソース電極23と繋がっているため、等電位面はソース電極23の電位(すなわち0V)に近づく。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。そのため、ゲート絶縁膜が破壊されることを抑制することができる。よって、ゲート絶縁膜の信頼性を向上することができる。
【0094】
また本実施形態に係るMOSFET100によれば、第1領域31の不純物濃度の最大値は、第2領域32の不純物濃度の平均値の10倍以上である。これにより、MOSFET100に逆方向バイアスを印加した際、第1領域31が空乏化することをさらに抑制することができる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0095】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第1領域31は、底部BTから離間している。これにより、電流の流れる領域を広くすることができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
【0096】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に平行な方向において、第2領域32の幅は、底部BTの幅以上である。これにより、トレンチTRの底部BTの電界集中を緩和することができる。
【0097】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に平行な方向において、底部BTの幅は、第3主面3の幅以上である。これにより、電流の流れる領域を広くすることができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
【0098】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に平行な方向において、第3主面3の幅は、第2領域32の幅以下である。これにより、電流の流れる領域を広くすることができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
【0099】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、側面SWと、第1主面1とがなす角度θは、90°以上である。これにより、チャネル領域における移動度を高くすることができる。結果として、オン抵抗を低減することができる。
【0100】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、電流拡がり層11のn型不純物の濃度は、2×10
16cm
-3よりも高く1×10
18cm
-3未満である。これにより、オン抵抗を低減しながら、高い耐圧を維持することができる。
【0101】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第1領域31のp型不純物の濃度は、電流拡がり層11のn型不純物の濃度よりも高くてもよい。これにより、炭化珪素半導体装置に逆方向バイアスを印加した際、電流拡がり層11に空乏層を延ばすことができる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0102】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、電流拡がり層11の不純物濃度は、第1ピラー領域15の不純物濃度よりも高い。これにより、オン抵抗を低減することができる。
【0103】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、ボディ領域12の不純物濃度は、電流拡がり層11の不純物濃度よりも高い。これにより、ボディ領域12と電流拡がり層11との境界からボディ領域12内に空乏層が広がることで、ボディ領域12がパンチスルーすることを抑制することができる。また本実施形態に係るMOSFET100によれば、ソース領域13のn型不純物の濃度は、ボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高い。これにより、ボディ領域12とソース領域13との境界からボディ領域12内に空乏層が広がることで、ボディ領域12がパンチスルーすることを抑制することができる。
【0104】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に対して垂直な方向において、第1領域31の厚みは、0.1μm以上である。トレンチTRの底部BTに電界が集中することをさらに抑制することができる。
【0105】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、ゲート絶縁膜21は、側面SWと接する第1部分21bと、底部BTと接する第2部分21cとを有している。第2部分21cの厚みは、第1部分21bの厚みよりも大きい。これにより、底部BTに高い電界が印加された場合であっても、ゲート絶縁膜が破壊されることを抑制することができる。
【0106】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第6主面6と底部BTとの間にある。これにより、電流が流れる領域が広くなるため、オン抵抗をさらに低減することができる。
【0107】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、底部BTと第3主面3との間にあってもよい。これにより、オン抵抗を低減しつつ、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0108】
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に対して垂直な方向において、第5主面5は、第3主面3と第1領域31および第2領域32の境界面7との間にあってもよい。これにより、コンタクト領域14と第1領域31との間で等電位面が形成され易くなる。結果として、結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することをさらに抑制することができる。
【0109】
本実施形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板10は、n型を有する第1ピラー領域15と、第1ピラー領域15と接し、かつp型を有する第2ピラー領域16とを含む。第1ピラー領域15および第2ピラー領域16は互いに電荷を補償し合うスーパージャンクション構造を構成する。そのため、MOSFET100の耐圧を向上することができる。
【0110】
また第2ピラー領域16は、底部BTに対面する第3主面3を有する第1領域31と、第1領域31と接し、かつ第2主面2と対面する第4主面4を有する第2領域32とを有する。これにより、MOSFETに逆方向バイアスを印加した際、第2領域32が完全に空乏化した場合であっても、第1領域31が完全に空乏化することを抑制することができる。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。
【0111】
さらに第2主面2に対して垂直な方向において、コンタクト領域14の第5主面5は、ボディ領域12の第6主面6と第2主面2との間にある。そのため、コンタクト領域14と第1領域31との間で等電位面が形成される。コンタクト領域14はソース電極23と繋がっているため、等電位面はソース電極23の電位(すなわち0V)に近づく。結果として、トレンチTRの底部BTに電界が集中することを抑制することができる。そのため、ゲート絶縁膜が破壊されることを抑制することができる。よって、ゲート絶縁膜の信頼性を向上することができる。
【0112】
また本実施形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板10を準備する工程は、第1導電型の第1エピタキシャル層61を形成する工程と、第1エピタキシャル層61上に、第1導電型の第2エピタキシャル層62を形成する工程と、第2エピタキシャル層62に対して第1導電型を付与可能な不純物イオンを注入する工程とを含んでいる。第2エピタキシャル層62は、活性領域となる第1部分17と、第1部分17を囲みかつ終端領域となる第2部分19とを有している。不純物イオンを注入する工程では、第2部分19に対して不純物イオンを注入することなく、第1部分17に対して不純物イオンが注入されることにより第1不純物領域11が形成される。活性領域となる第1部分17の不純物濃度を高くすることで、オン抵抗を低減することができる。終端領域となる第2部分19の不純物濃度を低くすることで、耐圧を高く維持することができる。
【実施例1】
【0113】
まず、電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度が異なる4つのシミュレーションサンプルが準備された(
図27参照)。具体的には、サンプル1〜4に係るMOSFETの電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度を、それぞれ5×10
15cm
-3、1×10
16cm
-3、1×10
17cm
-3および1×10
18cm
-3とした。サンプル1〜4に係るMOSFETにおいて、電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度以外の構成は同じである。具体的には、
図27に示されるように、MOSFETの炭化珪素エピタキシャル層40は、電流拡がり層11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域14と、第1ピラー領域15と、第2ピラー領域16とを主に有している。
【0114】
電流拡がり層11の厚みH8を1μmとした。第2エピタキシャル層の厚みH6を1.5μmとした。第1ピラー領域15が含むn型不純物の濃度を3×10
16cm
-3とした。第1ピラー領域15の厚みH7を6μmとした。第1ピラー領域15の幅W4を5.0μmとした。第2ピラー領域16は、第1領域31と、第2領域32とを含んでいる。第1領域31が含むp型不純物の濃度を2×10
18cm
-3とした。第2領域32が含むp型不純物の濃度を7×10
16cm
-3とした。第2領域32の厚みH2を3μmとした。第2ピラー領域16の幅W3を2.0μmとした。コンタクト領域14は、第1コンタクト領域部14cと、第2コンタクト領域部14dとを有している。第1コンタクト領域部14cが含むp型不純物の濃度を1×10
20cm
-3とした。第1コンタクト領域部14cの厚みH4を0.5μmとした。第2コンタクト領域部14dが含むp型不純物の濃度を8×10
17cm
-3とした。第2コンタクト領域部14dの厚みH5を1.3μmとした。
【0115】
サンプル1〜4に係るMOSFETを用いて、電流拡がり層11とMOSFETの耐圧との関係を調べた。具体的には、ドレイン電極およびソース電極の間に印加される電圧V
DSとリーク電流との関係がシミュレーションにより求められた。
図28に示されるように、サンプル1および2に係るMOSFETの耐圧は、共に約800Vであった。サンプル3および4に係るMOSFETの耐圧は、それぞれ約600Vおよび約50Vであった。なお、リーク電流が1×10
-2A/cm
2におけるV
DSを耐圧と仮定した。電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度が1×10
17cm
-3の場合(サンプル3)には、耐圧を維持する能力があるけれども、電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度が1×10
18cm
-3の場合(サンプル4)には、耐圧を維持する能力が急激に低下する。以上の結果より、電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度を1×10
18cm
-3よりも低く設定することが望ましいことが明らかになった。
【実施例2】
【0116】
次に、電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度が異なる9つのシミュレーションサンプルが準備された(
図27参照)。具体的には、9種類のサンプルに係るMOSFETの電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度を、それぞれ1.3×10
16cm
-3、1.5×10
16cm
-3、2.0×10
16cm
-3、3.0×10
16cm
-3、5.0×10
16cm
-3、1.0×10
17cm
-3、2.0×10
17cm
-3、5.0×10
17cm
-3および1×10
18cm
-3とした。実施例2に係るMOSFETの電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度以外の構成は、実施例1に係るMOSFETの構成と同じである。
【0117】
実施例2に係るMOSFETを用いて、特性オン抵抗がシミュレーションにより計算された。ドレイン電極とソース電極との間の電圧を2Vとした。ゲート電圧を15Vとした。
図29に示されるように、上記9種類のサンプルに係るMOSFETの特性オン抵抗は、それぞれ3.5404mΩcm
2、1.0520mΩcm
2、0.3707mΩcm
2、0.1582mΩcm
2、0.0739mΩcm
2、0.0332mΩcm
2、0.0173mΩcm
2、0.0084mΩcm
2および0.0053mΩcm
2であった。MOSFETのオン抵抗は、チャネル抵抗、ドリフト抵抗、基板抵抗およびその他の抵抗に分けられる。
図27に示されるMOSFETのオン抵抗の合計を1mΩcm
2として規格化した場合、チャネル抵抗、ドリフト抵抗、基板抵抗およびその他の抵抗は、それぞれ0.4mΩcm
2、0.3mΩcm
2、0.2mΩcm
2および0.1mΩcm
2である。
図29に示されるように、領域A1においては、電流拡がり層の抵抗が他の要素の抵抗よりも大きくなり、電流拡がり層の抵抗が支配的になる。領域A2においては、電流拡がり層の抵抗が他の要素の抵抗と同程度になる。領域A3においては、電流拡がり層の抵抗が他の要素の抵抗に比べて小さくなり、不純物濃度の変化に対する電流拡がり層の抵抗の変化は、無視できる程度に小さい。
【0118】
電流拡がり層の抵抗は、ドリフト抵抗(つまり第1ピラー領域の抵抗)と同程度以下であることが望ましい。具体的には、電流拡がり層の抵抗は、0.3mΩcm
2以下であることが望ましい。この場合、電流拡がり層は、2.0×10
16cm
-3よりも高くなる。電流拡がり層の抵抗は、その他の抵抗と同程度以下であることがより望ましい。具体的には、電流拡がり層の抵抗は、0.1mΩcm
2以下であることがより望ましい。この場合、電流拡がり層は、5.0×10
16cm
-3以上となる。以上の結果より、電流拡がり層11におけるn型不純物の濃度を2×10
16cm
-3よりも高くすることが望ましいことが明らかになった。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。