【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「多様化・個別化社会イノベーションデザイン拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
塩川 裕介 Yusuke SHIOKAWA Yusuke SHIOKAWA,無信号交差点通過時における規範ドライバモデルの構築と規範速度制御系の開発 Development of Velocity Control System and Modeling of Expert Driver in Unsignalized Intersection,ロボティクス・メカトロニクス 講演会2015 講演論文集 Proceedings of the 2015 JSME Conference on Robotics and Mechatronics,一般社団法人日本機械学会,2015年 5月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
既に通過した無信号の第1の交差点の道路環境情報と、前記第1の交差点における各位置での危険度合いの大きさを示すモデル関数に基づいて算出した、前記第1の交差点を通過する車両の運転者における運転行動の特性を示すパラメータと、を対応付けた運転行動データの中から、前記車両が通過する無信号の第2の交差点の道路環境情報と類似する道路環境情報に対応した類似パラメータを複数取得し、前記類似パラメータの各々の重要度に応じて設定したパラメータを前記第2の交差点における推定パラメータとし、前記推定パラメータと前記モデル関数とに基づいて、前記車両が前記第2の交差点を通過する場合の各時刻における速度情報を、前記車両が前記第2の交差点を通過する前に予め生成する生成部
を備えた運転支援装置。
前記生成部は、前記類似パラメータの各々のうち何れか1つのパラメータと、前記何れか1つのパラメータとは異なる前記類似パラメータの残りのパラメータを補間して得た前記何れか1つのパラメータに対応する補間結果と、の誤差を、複数の補間手法毎に前記類似パラメータに含まれる全てのパラメータについて算出し、前記複数の補間手法のうち、前記類似パラメータの各々について最も前記誤差が小さい補間手法であると判定された数が最も多い補間手法を用いて前記重要度を決定する
請求項1記載の運転支援装置。
前記生成部は、前記運転行動データに含まれるパラメータのうち、対応する前記第1の交差点の道路環境情報によって表されるデータ空間上の第1の座標と、前記第2の交差点の道路環境情報によって表される前記データ空間上の第2の座標とのデータ間距離が短い方から順に取得した予め定めた数のパラメータを、前記類似パラメータとする
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の運転支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。なお、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。
【0021】
図1は、実施の形態に係る運転支援装置1のブロック図である。
図1に示すように、運転支援装置1は、道路環境計測部10、高精度道路地図情報20、運転行動解析部30、運転行動データベース40、最適運転行動生成部50及びブレーキ制御部60を含む。
【0022】
道路環境計測部10は、後述する各種センサを用いて、車両の状態情報及び車両周辺の道路情報を表す道路環境計測データを生成する。
【0023】
高精度道路地図情報20は、道路の接続形態及び位置等を表す道路接続情報、並びに道路を構成する各種要素に関する情報を表す道路付加情報を含み、車両の位置に応じた道路地図情報を提供する。
【0024】
運転行動解析部30は、道路環境計測データ及び高精度道路地図情報20を入力として、無信号交差点の各位置における危険度合いを予め定式化したリスクポテンシャルモデル(RPM:Risk Potential Model)に基づいて運転者の運転行動を解析し、無信号交差点における運転者の運転行動の特性を示すRPMパラメータを生成する。
【0025】
そして、運転行動解析部30は、生成したRPMパラメータと、当該RPMパラメータを生成した無信号交差点に関する道路情報である道路環境情報と、を対応付けた運転行動データを生成し、運転行動データベース40に記憶する。
【0026】
最適運転行動生成部50は、道路環境計測データ、高精度道路地図情報20及び運転行動データを入力として、RPMに基づいて車両がこれから通過しようとしている無信号交差点(以降、「通過予定無信号交差点」という)を通過する前に、車両が当該通過予定無信号交差点を通過した場合に得られるであろうRPMパラメータを推定する。そして、最適運転行動生成部50は、推定したRPMパラメータ(以降、「推定RPMパラメータ」という)及びRPMに基づいて、通過予定無信号交差点の通過に伴う危険度を低減する速度、すなわち、車両が通過予定無信号交差点を安全に通過することができる速度を算出する。
【0027】
ブレーキ制御部60は、車両が通過予定無信号交差点を通過する場合の速度が、最適運転行動生成部50によって算出された速度となるように減速量を算出し、当該減速量に合わせてブレーキ等の制動装置を制御する。
【0028】
次に、
図1に示した各ブロックの詳細について説明する。
【0029】
図2は、道路環境計測部10の構成例を示す図である。道路環境計測部10は、道路環境計測用センサ群110及びセンサデータ処理部120を含み、道路環境計測用センサ群110とセンサデータ処理部120は、CAN(Controller Area Network)131、LAN(Local Area Network)131及びIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394(以下、「シリアル回線133」という)といった通信規格の異なる複数の接続バスで接続される。なお、道路環境計測用センサ群110及びセンサデータ処理部120の接続形態は一例であり、前述した通信規格とは異なる通信規格に準拠した接続バスで接続してもよく、また、単一の通信規格を用いて接続してもよい。
【0030】
道路環境計測用センサ群110は、車速センサ111、3軸加速度センサ112、ハンドル角センサ113、ブレーキペダル操作量センサ114、アクセルペダル操作量センサ115、GNSS(Global Navigation Satellite Systems)受信機116、3次元レーザー距離センサ117及びカラー画像カメラ群118を含む。
【0031】
車速センサ111は、車両の速度を計測するセンサである。
【0032】
3軸加速度センサ112は、例えば車両の進行方向、車両の進行方向と直交する方向(以降、「車両の幅方向」という場合がある)及び車両の上下方向の各方向における加速度を計測するセンサである。
【0033】
ハンドル角センサ113は、例えば車両が直進するハンドル位置に対するハンドルの回転量を角度として出力するセンサである。
【0034】
ブレーキペダル操作量センサ114は、ブレーキペダルの踏み込み量を計測するセンサであり、例えばブレーキペダルの踏み込み量が“0”であれば、運転者はブレーキをかけていない状態を示し、ブレーキペダルの踏み込み量が大きくなるにしたがって、車両の減速量が増加していることを示す。
【0035】
アクセルペダル操作量センサ115は、アクセルペダルの踏み込み量を計測するセンサであり、例えばアクセルペダルの踏み込み量が“0”であれば、運転者はアクセルを踏んでいない状態を示し、アクセルペダルの踏み込み量が大きくなるにしたがって、エンジンへの燃料の供給量が増加していることを示す。
【0036】
GNSS受信機116は、GPS(Global Positioning System)等の人工衛星を利用した全地球測位システムが出力する情報を受信する機器であり、例えば車両の経緯度、地球の重心を座標系の原点として空間の位置を規定する世界測地系座標における車両の座標点及び時刻情報等をGPSから受信する。
【0037】
3次元レーザー距離センサ117は、例えば照射したレーザーが物体で反射して戻ってくるまでの時間差を計測することで、3次元レーザー距離センサ117から物体までの距離を計測するセンサである。3次元レーザー距離センサ117は、車両を中心に360度にわたってレーザーを照射することで、車両周辺の例えば縁石或いは電柱といった、車両の走行を妨げる障害物までの距離を計測する。
【0038】
カラー画像カメラ群118は、例えば車両進行方向の画像を撮影する。なお、カラー画像カメラ群118が撮影する画像の種類は、動画であっても静止画であってもよい。また、カラー画像カメラ群118は、車両進行方向の画像に加えて、例えば車両の後方や車両の幅方向の画像等、車両を中心に360度にわたる画像を撮影してもよい。
【0039】
なお、道路環境計測用センサ群110のうち、車速センサ111、3軸加速度センサ112、ハンドル角センサ113、ブレーキペダル操作量センサ114及びアクセルペダル操作量センサ115は、センサ値をCAN131経由でセンサデータ処理部120に送信する。
【0040】
また、GNSS受信機116及び3次元レーザー距離センサ117は、センサ値をLAN132経由でセンサデータ処理部120に送信する。
【0041】
更に、カラー画像カメラ群118は、撮影した画像データ列をシリアル回線133経由でセンサデータ処理部120に送信する。ここで画像データ列とは、カラー画像カメラ群118の画素毎の画素値を並べたデータ列であり、画像データ列からカラー画像カメラ群118で撮影した画像を再現することができる。
【0042】
なお、道路環境計測用センサ群110に含まれる各センサは、例えばセンサ毎に予め定められた時間間隔でセンサ値をセンサデータ処理部120に送信するが、これに限らず、例えばセンサデータ処理部120によって指定されたタイミングで、センサ値をセンサデータ処理部120に送信してもよい。
【0043】
一方、センサデータ処理部120は、センサデータ受信部121、時刻同期処理部122、データ統合部123及び歩行者車両認識部124を含む。
【0044】
センサデータ受信部121は、道路環境計測用センサ群110に含まれるカラー画像カメラ群118以外の各センサと接続され、道路環境計測用センサ群110から受信した各センサ値を記憶する。
【0045】
時刻同期処理部122は、センサデータ受信部121及びデータ統合部123と接続され、センサデータ受信部121が記憶したセンサ値の中から、GNSS受信機116が受信した時刻情報を取得する。そして、時刻同期処理部122は、センサデータ受信部121が記憶したセンサ値の各々が同じ時刻に計測されたセンサ値であることを示すため、取得した時刻情報をセンサ値の各々に対応付け、時刻情報が対応付けられたセンサ値をデータ統合部123に出力する。
【0046】
一方、歩行者車両認識部124は、道路環境計測用センサ群110のカラー画像カメラ群118及びデータ統合部123と接続され、カラー画像カメラ群118から画像データ列を受信する。そして、歩行者車両認識部124は、受信した画像データ列から歩行者及び他の車両を抽出して、車両から歩行者までの距離(以降、「歩行者位置」という)及び車両から他の車両までの距離(以降、「他車両位置」という)を算出し、画像データ列と共に、データ統合部123に出力する。
【0047】
なお、画像データ列から歩行者及び他の車両を抽出する手法には公知の技術が利用できる。例えば、画像の中の抽出対象であるパーツ(この場合、歩行者及び他の車両)の位置ずれ及びパーツの変形に対するコストを評価することにより、移動するパーツを画像から精度よく抽出することができるDeformable Part Modelを適用することができる。
【0048】
データ統合部123は、時刻情報が対応付けられたセンサ値の各々を時刻同期処理部122から受信すると共に、画像データ列、歩行者位置及び他車両位置を歩行者車両認識部124から受信する。そして、データ統合部123は、各種センサ値、画像データ列、歩行者位置及び他車両位置を統合して、
図3に示すデータを含む道路環境計測データ130を生成し、生成した道路環境計測データ130を出力する。
【0049】
なお、
図3において、「周辺3次元点群」の次元数が“69120”となっているが、これは、3次元レーザー距離センサ117は、一例として32個のレーザー送受信機を内蔵し、レーザー送受信機の各々は、360度回転しながら2160地点の距離、すなわち、全体として69120地点の距離を計測できるためである。
【0050】
また、「画像データ列」の次元数が“921600”となっている理由は、カラー画像カメラ群118に含まれる画素数が921600個あるためである。
【0051】
このように周辺3次元点群及び画像データ列の次元数は、使用する3次元レーザー距離センサ117及びカラー画像カメラ群118の仕様によって変化するため、
図3に示す次元数の値は一例である。
【0052】
次に、高精度道路地図情報20について説明する。高精度道路地図情報20は、道路接続情報210及び道路付加情報220を含む。
【0053】
図4は、道路接続情報210を説明するための模式図である。
図4に示すように、道路接続情報210は、世界測地系座標における3次元空間座標の座標点として表される地点(ノード201A〜ノード201I)と、2つのノード201を端点とする線であるリンク202との組み合わせによって表される。なお、ノード201とは、ノード201A〜ノード201Iの総称である。
【0054】
ノード201は交差点の中心の他、例えば予め定めた曲率半径以上の値を有するカーブ等、実際の道路形状に応じて交差点以外の道路上の地点にも配置することができる。また、リンク202は、一方のノード201と他方のノード201を繋ぐ道路の有無を表す。
【0055】
図4に示す道路接続情報210からは、例えばノード201Aからノード201Bへ行く経路として、ノード201A→ノード201C→ノード201Bの経路と、ノード201A→ノード201D→ノード201E→ノード201Bの経路とがあることがわかる。
【0056】
図5は、道路接続情報210に含まれる情報のデータ構造の一例を示した図である。
図5に示すように、道路接続情報210は、各ノード201の座標値と、リンク202によるノード201間の接続情報を含む。
【0057】
このように道路接続情報210は、道路の位置及び道路間の接続状況を表すことを目的とする情報である。一方、道路付加情報220は、道路を構成する各種要素に関する情報を表すことを目的とする情報である。
【0058】
図6は、道路付加情報220を説明するための模式図である。
図6に示すように、道路付加情報220は、車両通行帯と歩道との境界である道路端の位置、車両が通行する車線位置及び進行方向、一方の道路端から他方の道路端までの距離である道路幅、車両通行帯に設定されている車両の制限速度及び停止線の位置に関する情報が含まれる。なお、道路付加情報220に含まれる情報は一例であり、例えば道路名称や中央分離帯の有無など、他の情報を含んでもよい。
【0059】
図7は、道路付加情報220に含まれる情報のデータ構造の一例を示した図である。ここで、車線位置及び進行方向、並びに停止線情報の次元数がN(Nは自然数)となっているのは、任意の本数の車線及び停止線に関する情報が含まれるためである。
【0060】
このように高精度道路地図情報20は、例えば実際の道路を測量することによって予め作成される情報である。
【0061】
図8は、運転行動解析部30の構成例を示す図である。運転行動解析部30は、予め定められたRPM301及びRPMパラメータ推定アルゴリズム302を含み、道路環境計測部10が生成した道路環境計測データ130及び高精度道路地図情報20を入力として、RPMパラメータ推定アルゴリズム302を実行することで、無信号交差点におけるRPM301のRPMパラメータを生成する。
【0062】
ここで、RPM301について説明する。RPM301は、何らかのリスク要因から受けるリスク感を数式で表現したモデルであり、例えばロボットが障害物を回避する経路を決定したり、車両が交差点等の比較的危険性の高い地点を通過する場合の通過速度を決定したりする際に、リスク要因から斥力を計算する算出モデルとして広く用いられている。
【0063】
図9は、無信号交差点を通過する車両周辺の状況を表す図である。
【0064】
図9において、車両70は運転行動の解析対象の車両であり、他車両71は道路上の障害物となる車両を表す。また、点Oは、道路幅がW
rで表される優先道路73と非優先道路74とが交差する無信号交差点の中心位置を表し、車両70の進行方向における優先道路73上には、歩行者72が存在する。なお、以降では点Oを、中心点Oという。
【0065】
ここで、車両70の進行方向における各位置を“x”とした場合の位置xにおけるリスクポテンシャル関数をU(x)とすれば、無信号交差点におけるリスクポテンシャル関数から受ける斥力F(x)は(1)式で表される。
【0067】
なお、位置xは、車両70が中心点Oを通過するまでは負の値をとり、中心点Oで“x=0”となり、中心点Oを通過した後は正の値となる。そして、車両70が中心点Oに近い位置にいるほど、位置xの絶対値は小さい値をとるように定義される。換言すれば、位置xは、中心点Oからの距離を表す。
【0068】
一方、車両70が斥力F(x)を受けながら無信号交差点に接近する場合の各時刻tにおける車両速度v(t)は、運動方程式にしたがって(2)式で表される。
【0070】
ここで、v
0は車両70が無信号交差点に接近した際の車両70の速度(初期速度)であり、mは車両70の車体重量である。なお、車両70が無信号交差点に接近するとは、例えば、車両70が無信号交差点の中心点Oから無信号交差点の近傍として予め定めた距離だけ離れた位置まで来たことをいう。
【0071】
(2)式において、斥力F(x)は位置xの関数であるのに対して、車両速度v(t)は時刻tの関数であるため、(3)式のように(1)式の変数を変換して、(2)式に対して(3)式を代入することで(4)式を得る。
【0073】
(4)式の右辺第3項において、一般的に車両70の車体重量mを平方した値m
2は分子の値に比べて大きい値になるため、当該第3項は無視できる程度に小さい値となる。したがって、(4)式の右辺第3項を“0”として、(4)式を車両速度v(t)について解けば(5)式が得られる。
【0075】
(5)式は、時刻tにおけるリスクポテンシャル関数U(x)と車両速度v(t)との関係を表す式である。
【0076】
次に、本実施の形態で用いる無信号交差点におけるRPM301を具体的に説明する。
【0077】
(1)式で示したRPMは、1つのリスク要因を考慮したRPMの一例である。しかしながら、実際に無信号交差点を通過する場合には、複数のリスク要因が存在すると考えられる。したがって、リスクポテンシャル関数U(x)を拡張し、複数のリスク要因を考慮したリスクポテンシャル関数U(P,O(x))を(6)式に示す。
【0079】
ここで、W
i(iは自然数)は個々のリスク要因に対するリスクポテンシャル関数U
i(P
i,O(x))を結合する重み係数である。また、P
iは個々のリスク要因に対するリスクポテンシャル関数U
i(P
i,O(x))で用いられるパラメータである。
【0080】
本実施の形態の場合、重み係数W
i及びパラメータP
iをRPMパラメータとする。また、O(x)は、位置xにおける道路環境計測データ130を表している。
【0081】
一方、発明者は、無信号交差点を車両70で通過する際のリスク要因について検討した結果、2つのリスク要因が存在するとの知見を得た。1つ目のリスク要因は、無信号交差点の存在であり、2つ目のリスク要因は、他車両71及び歩行者72といった道路上に存在する交通参加者の存在である。
【0082】
こうしたリスク要因の存在により、例えば、優先道路73を走行する車両70の運転者は、無信号交差点で非優先道路74から出てくる他の車両と衝突しないよう車両速度v(x)を下げる傾向が見られる。また、車両70の運転者は、交通参加者の横を走行する場合にも、交通参加者との接触の可能性を低減するため車両速度v(x)を下げる傾向にある。
【0083】
そこで、まず、無信号交差点に対して定義したリスクポテンシャル関数U
1(P
1,O(x))を(7)式に示す。
【0085】
ここで、RPMパラメータ“μ”は、車両70が無信号交差点を通過する際に車両速度v(x)が最も遅くなる位置x
1と中心点Oとの距離を表す。また、RPMパラメータ“σ”は、車両速度v(x)の減速度合いを表し、例えば、“σ”の値が小さいほど減速度合いが大きいことを示す。
【0086】
次に交通参加者に対して定義したリスクポテンシャル関数U
2(P
2,O(x))を(8)式及び(9)式に示す。
【0088】
ここで、RPMパラメータ“μ
1”は、車両70が交通参加者の横を通過する際に車両速度v(x)が最も遅くなる位置x
2と中心点Oとの距離を表す。また、RPMパラメータ“σ
1”及び“σ
2”はRPMパラメータ“σ”と同様に、それぞれ距離d(x)及び幅s(x)に応じた車両速度v(x)の減速度合いを表すパラメータである。なお、EXP(a)は指数関数を表す表記(e
a)である。
【0089】
図9に示すように、距離d(x)とは、車両70から交通参加者(例えば他車両71)までの距離を表し、幅s(x)は、道路端から交通参加者までの距離、すなわち、車両70が交通参加者の横を走行する際に、実際に車両70が走行可能な道路幅を表す。
【0090】
したがって、本実施の形態で用いる無信号交差点におけるRPM301は、(6)式に基づいて(10)式のように表される。
【0092】
図10は、無信号交差点におけるリスクポテンシャル関数U(P,O(x))を示すグラフ77の一例である。
【0093】
図10に示すように、リスクポテンシャル関数U(P,O(x))の値は、車両70が無信号交差点に近づくにしたがって大きくなり、無信号交差点の中心点O付近で最大値となる。そして、車両70が無信号交差点を通り過ぎていくにしたがって、リスクポテンシャル関数U(P,O(x))の値が小さくなる傾向を示す。
【0094】
(10)式で表される無信号交差点におけるリスクポテンシャル関数U(P,O(x))に対して適切なRPMパラメータが与えられた場合、リスクポテンシャル関数U(P,O(x))と、位置xにおける車両70の車両速度v(t)との関係を示す(5)式を用いることで、車両70が無信号交差点を通過する際の各時刻tにおける車両速度v(t)を算出することができる。
【0095】
しかし、予め適切なRPMパラメータを準備することは困難であるため、
図8に示すRPMパラメータ推定アルゴリズム302は、実際に車両70で無信号交差点を通過した際の道路環境計測データ130及び高精度道路地図情報20から、RPMパラメータを生成する。
【0096】
具体的には、RPMパラメータ推定アルゴリズム302は、仮に設定したRPMパラメータを用いて計算した車両70の車両速度v(x)と、実際に車両70で無信号交差点を通過した際に計測した道路環境計測データ130に含まれる車両70の車両速度O
v(x)との差分を最小化する最小二乗問題を解くことにより、無信号交差点を通過した際に計測された道路環境計測データ130に対応するRPMパラメータを生成する。
【0097】
すなわち、RPMパラメータ推定アルゴリズム302は、(11)式を満たす重み係数W及びパラメータPを、無信号交差点を通過した際に計測された道路環境計測データ130に対応するRPMパラメータとして生成する。
【0099】
そして、運転行動解析部30は、車両70が無信号交差点を通過する毎にRPMパラメータ推定アルゴリズム302で生成されるRPMパラメータと、当該RPMパラメータの生成に用いた道路環境計測データ130が計測された無信号交差点の道路環境情報とを対応付けた運転行動データを、運転行動データベース40に記憶する。
【0100】
ここで、道路環境情報とは、無信号交差点を通過する際の車両速度に影響を与えると考えられる情報であり、例えば車両70が走行している道路の道路幅、制限速度及び見通し距離を含む。
【0101】
なお、見通し距離とは、車両70の運転者における視界の広さを表す指標であり、
図9において、例えば無信号交差点の角Qから道路沿いに設置されている建物または看板等の遮蔽物75までの距離V
rによって表される。見通し距離V
rが長いほど無信号交差点の見通しがよいことを示し、見通し距離V
rが短いほど無信号交差点の見通しが悪いことを示す。
【0102】
運転行動解析部30は、車両70が走行している道路の道路幅及び制限速度を高精度道路地図情報20から取得する。また、運転行動解析部30は、車両70が走行している道路の見通し距離を、例えば道路環境計測データ130に含まれる
図3に示した周辺3次元点群の情報から算出して取得する。
【0103】
図11は、運転行動データベース40に記録される運転行動データのデータ構造の一例を示す図である。
図11に示すように、車両70が通過した無信号交差点毎に、当該無信号交差点の道路環境情報とRPMパラメータとが対応付けられて、運転行動データベース40に記憶される。
【0104】
なお、RPMパラメータに対応付けられる道路環境情報のデータは一例であり、道路幅、制限速度及び見通し距離以外のデータを含めるようにしてもよい。例えば、走行時の天候に関するデータ、日中の走行なのか夜間の走行なのかを識別するための走行時刻、優先道路および非優先道路の何れを走行しているのかを示す優先情報等を含めてもよい。更に、運転者の年齢によって運転行動が変化する傾向があると考えられるため、道路環境情報に車両70の運転者の年齢を含めるようにしてもよい。
【0105】
図12は、最適運転行動生成部50の構成例を示す図である。最適運転行動生成部50は、類似事例検索アルゴリズム501及び最適運転行動生成アルゴリズム502を含み、道路環境計測部10が生成した道路環境計測データ130、高精度道路地図情報20及び運転行動データベース40に記憶される運転行動データを入力として、車両70が通過予定無信号交差点を安全に通過することができる速度の情報(以降、「交差点近傍走行速度列」という)を生成する。
【0106】
具体的には、最適運転行動生成部50は、類似事例検索アルゴリズム501を用いて、通過予定無信号交差点の道路環境情報と類似する複数の道路環境情報を運転行動データベース40から検索し、類似する複数の道路環境情報の各々に対応付けられたRPMパラメータを類似RPMパラメータ群として取得する。
【0107】
そして、最適運転行動生成部50は、最適運転行動生成アルゴリズム502を用いて、類似RPMパラメータ群に対応する各道路環境情報と、通過予定無信号交差点の道路環境情報との類似度に基づいて、類似RPMパラメータ群に含まれる各RPMパラメータの重要度を決定する。
【0108】
更に、最適運転行動生成部50は、類似RPMパラメータ群に含まれる各RPMパラメータの重要度を用いて、通過予定無信号交差点における推定RPMパラメータを生成する。
【0109】
そして、最適運転行動生成部50は、推定RPMパラメータを用いて、(10)式で示した無信号交差点におけるRPM301を構築することで、(5)式から通過予定無信号交差点を通過する場合の各時刻tにおける車両70の車両速度v(t)、すなわち、交差点近傍走行速度列を算出することができる。
【0110】
なお、最適運転行動生成部50での通過予定信号交差点に対する交差点近傍走行速度列の算出方法については、後ほど詳細に説明する
【0111】
図13は、最適運転行動生成部50で算出される交差点近傍走行速度列の一例を示す図である。
図13に示すように、最適運転行動生成部50は、例えば交差点近傍走行速度列を算出した時点の時刻(算出時刻)を“0.0ms”として、算出時刻からの経過時刻毎の目標車両速度を算出する。
【0112】
図14は、ブレーキ制御部60の構成例を示す図である。ブレーキ制御部60は、目標減速度計算部601、ブレーキ機構モデル602及びブレーキ制御システム603を含み、最適運転行動生成部50で算出される交差点近傍走行速度列、車速センサ11で計測される車両速度及びブレーキペダル操作量センサ114で計測されるブレーキペダル操作量を入力として、通過予定無信号交差点を通過する場合の各時刻における車両70の車両速度が交差点近傍走行速度列で示される目標車両速度となるように、ブレーキの制御を行う。
【0113】
具体的には、まず、目標減速度計算部601は、交差点近傍走行速度列で示される目標車両速度となるように、交差点近傍走行速度列及び車速センサ111で計測された車両速度を入力として、車両70の減速量を計算する。時刻tでの目標車両速度をV
tar(t)、車速センサ111で計測された車両速度をV
ego(t)とすれば、目標減速量A
t(t)は(12)式に示すV
d(t)の値に応じて、(13)式で算出できる。
【0115】
ここで、mは(2)式で説明したように、通過予定無信号交差点を通過する車両70の車体重量であり、F(x)は(1)式で説明したように、無信号交差点におけるリスクポテンシャル関数U(x)から受ける斥力である。
【0116】
そして、目標減速度計算部601は、(13)式に基づいて算出した目標減速量A
t(t)をブレーキ機構モデル602に出力する。
【0117】
ブレーキ機構モデル602は、目標減速度計算部601から目標減速量A
t(t)を受け付けると、車両70の車両速度とブレーキペダル操作量に基づいて、目標減速量A
t(t)を実現するための制御指令値G
t(t)を算出し、算出した制御指令値G
t(t)をブレーキ制御システム603に出力する。
【0118】
なお、目標減速量A
t(t)を実現するための制御指令値G
t(t)は(14)式で示される。
【0120】
ここで、関数F
Gは、車両速度v(t)、ブレーキペダル操作量k(t)及び目標減速量A
t(t)が与えられた場合に、目標減速量A
t(t)を実現するための制御指令値G
t(t)を算出する関数モデルである。
【0121】
ブレーキ機構モデル602は、(14)式で算出した制御指令値G
t(t)をブレーキ制御システム603に出力する。
【0122】
ブレーキ制御システム603は、ブレーキ等の制動装置を制御するシステムであり、ブレーキ機構モデル602から受け付けた制御指令値G
t(t)に応じた制動処理を実施して、車両70の車両速度v(t)を目標車両速度V
tar(t)に近づける制御を行う。
【0123】
図15は、
図1に示した運転支援装置1をコンピュータで実現するための構成の一例を示す図である。
図15に示すように、コンピュータ100は、CPU101、メモリ102および不揮発性の記憶部103を含む。CPU101、メモリ102および記憶部103は、バス104を介して互いに接続される。また、コンピュータ100は、通信装置106、入出力装置107及び道路環境計測用センサ群110とコンピュータ100とを接続するI/O(Input/Output)105を備え、I/O105はバス104に接続される。
【0124】
ここで、入出力装置107は、例えばボタン及びスイッチ等の入力デバイス、並びに、液晶モニタ等の表示装置を含む。また、入出力装置107は、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)またはメモリカード等の記録媒体に記録されるプログラム等のデータを読み取る読み取り装置を含む。
【0125】
通信装置106は、例えばインターネットに接続する通信プロトコルを含み、インターネット上のコンピュータとコンピュータ100とを接続してデータ通信を行う。なお、通信装置106は、運転支援装置1に必ずしも必要な装置ではないが、例えばインターネット経由で高精度道路地図情報20の更新等を行うことができるため、運転支援装置1は通信装置106を備えることが好ましい。
【0126】
なお、記憶部103は、フラッシュメモリまたはHDD(Hard Disk Drive)等によって実現できる。
【0127】
記憶部103には、コンピュータ100を
図1に示す運転支援装置1として機能させるための運転支援プログラム140と、高精度道路地図情報20が記憶される。CPU101は、運転支援プログラム140を記憶部103から読み出してメモリ102に展開し、メモリ102に展開された運転支援プログラム140を実行することで、コンピュータ100を
図1に示す運転支援装置1として動作させる。また、CPU101は、高精度道路地図情報20を記憶部103から読み出してメモリ102に展開する。
【0128】
なお、コンピュータ100は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することも可能である。
【0129】
次に、車両70が無信号交差点を通過する場合の、本実施の形態に係る運転支援処理について説明する。なお、この場合、運転行動データベース40には、複数の無信号交差点における運転行動データが記憶されているものとする。
【0130】
図16は、本実施の形態に係る運転支援処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0131】
まず、ステップS10において、最適運転行動生成部50は、道路環境計測データ130を道路環境計測部10から取得する。
【0132】
ステップS20において、最適運転行動生成部50は、ステップS10で取得した道路環境計測データ130に含まれる経緯度及び世界測地系座標を用いて、車両70の走行位置を高精度道路地図情報20から特定する。そして、最適運転行動生成部50は、複数のリンク202が交差するノード201を高精度道路地図情報20から探索することにより、車両70の進行方向に対して最も近い無信号交差点(以降、「最近傍無信号交差点」という、)を高精度道路地図情報20から特定する。
【0133】
最適運転行動生成部50は、特定した最近傍無信号交差点の道路幅W
r及び制限速度V
limを高精度道路地図情報20から取得すると共に、ステップS10で取得した道路環境計測データ130に含まれる、3次元レーザー距離センサ117によって取得した周辺3次元点群を用いて見通し距離V
rを算出する。すなわち、最適運転行動生成部50は、これから通過しようとする最近傍無信号交差点の道路環境情報を取得する。
【0134】
ステップS30において、最適運転行動生成部50は、ステップS20で取得した最近傍無信号交差点の道路環境情報と類似する道路環境情報に対応付けられた類似RPMパラメータ群を、運転行動データベース40から取得する。
【0135】
具体的には、最適運転行動生成部50は、運転行動データベース40に記憶されている運転行動データに含まれる各道路環境情報の中から、ステップS20で取得した最近傍無信号交差点の道路幅W
r、制限速度V
lim及び見通し距離V
rとのデータ間距離D
i(W
r,V
lim,V
r)が短い順にJ個の道路環境情報を抽出する。ここではJ=10として10個の道路環境情報を抽出するが、これは一例であり、状況に応じてJの値を10以外に設定してもよいことは言うまでもない。なお、データ間距離D
i(W
r,V
lim,V
r)は(15)式で算出可能である。
【0137】
ここで、DBW
r、DBV
lim及びDBV
rは、それぞれ運転行動データベース40に含まれる各運転行動データの道路幅、制限速度及び見通し距離である。
【0138】
そして、最適運転行動生成部50は、抽出した道路環境情報に対応付けられたJ個のRPMパラメータを、類似RPMパラメータ群として運転行動データベース40から取得する。
【0139】
このようにして取得された類似RPMパラメータ群は、これから通過しようとする最近傍無信号交差点のRPMパラメータと類似するRPMパラメータと考えることができる。
【0140】
したがって、類似RPMパラメータ群に含まれるJ個の類似RPMパラメータをそれぞれP
i(i=1〜J)とすれば、最適運転行動生成部50は、類似PRMパラメータP
iに対応する道路環境情報のデータ間距離D
i(W
r,V
lim,V
r)を用いて、類似RPMパラメータP
iの重要度を表す重み係数W
iを決定し、これから通過しようとする最近傍無信号交差点の推定RPMパラメータP
optを(16)式のように算出することができる。
【0142】
しかしながら、(16)式よって算出される推定RPMパラメータP
optは、重み係数W
iによって変化するため、重み係数W
iの決定方法が推定RPMパラメータP
optの算出精度に影響を与える。
【0143】
したがって、
図16に示す本実施の形態に係る運転支援処理では、類似RPMパラメータP
iのような離散データを補間する複数の補間手法のうち、類似RPMパラメータP
iの各々を最も精度よく補間する補間手法を用いて、重み係数W
iを決定する。
【0144】
そのため、ステップS40において、最適運転行動生成部50は、離散データに対する公知の補間手法である逆距離荷重法を用いた場合の類似RPMパラメータP
iの補間精度を、一個抜き交差検証法によって算出する。
【0145】
具体的には、最適運転行動生成部50は、まずステップS30で取得したJ個の類似RPMパラメータP
iから何れか1つの類似RPMパラメータを取り去る。そして、最適運転行動生成部50は、逆距離荷重法を用いて、残りの(J−1)個の類似RPMパラメータから、取り去った類似RPMパラメータに対応する推定RPMパラメータP
optを(16)式に基づいて算出し、算出した推定RPMパラメータP
optと取り去った類似RPMパラメータの差分、すなわちRPMパラメータの推定誤差(推定誤差1)を、取り去った類似RPMパラメータと対応付けて記録する。
【0146】
なお、取り去った類似RPMパラメータP
iに対する逆距離荷重法による重み係数Wi
iは、(17)式で表される。
【0148】
ここで、D
iは、データ間距離D
i(W
r,V
lim,V
r)を表す。そして、最適運転行動生成部50は、前述したRPMパラメータの推定誤差をステップS30で取得したJ個の類似RPMパラメータP
iの各々に対して算出し、類似RPMパラメータP
iと逆距離荷重法による当該類似RPMパラメータの推定誤差とを対応付ける。
【0149】
一方、ステップS50において、最適運転行動生成部50は、離散データに対する公知の補間手法であるKriging法を用いた場合の類似RPMパラメータP
iの補間精度を、一個抜き交差検証法によって算出する。
【0150】
Kriging法を用いた場合の類似RPMパラメータP
iの補間精度は、ステップS40と同様に、まずステップS30で取得したJ個の類似RPMパラメータP
iから何れか1つの類似RPMパラメータを取り去り、Kriging法を用いて、残りの(J−1)個の類似RPMパラメータから、取り去った類似RPMパラメータに対応する推定RPMパラメータP
optを(16)式に基づいて算出する。そして、算出した推定RPMパラメータP
optと取り去った類似RPMパラメータとの推定誤差(推定誤差2)を、取り去った類似RPMパラメータと対応付けて記録する処理を、J個の類似RPMパラメータP
iの各々に対して行う。
【0151】
なお、取り去った類似RPMパラメータP
iに対するKriging法による重み係数Wk
iは、(18)式で表される。
【0153】
ステップS60において、最適運転行動生成部50は、ステップS30で取得したJ個の類似RPMパラメータP
iの各々について、ステップS40で対応付けた逆距離荷重法による類似RPMパラメータの推定誤差1と、ステップS50で対応付けたKriging法による類似RPMパラメータの推定誤差2と比較し、推定誤差が小さい方の補間手法を、比較先の類似RPMパラメータP
iにおける補間手法として記録する。なお、推定誤差1と推定誤差2が同じ場合には、何れの補間手法を比較先の類似RPMパラメータP
iに対応付けてもよい。
【0154】
ステップS70において、最適運転行動生成部50は、J個の類似RPMパラメータP
iのうち、Kriging法が対応付けられた類似RPMパラメータP
iの数が、逆距離荷重法が対応付けられた類似RPMパラメータP
iの数以上である場合、すなわち、Kriging法による類似RPMパラメータP
iの補間精度の方が、逆距離荷重法による類似RPMパラメータP
iの補間精度に比べてよい場合にはステップS80に移行し、重み係数W
iの決定方法に用いる補間手法としてKriging法を選択する。
【0155】
一方、J個の類似RPMパラメータP
iのうち、Kriging法が対応付けられた類似RPMパラメータP
iの数が、逆距離荷重法が対応付けられた類似RPMパラメータP
iの数未満である場合、すなわち、逆距離荷重法による類似RPMパラメータP
iの補間精度の方が、Kriging法による類似RPMパラメータP
iの補間精度に比べてよい場合にはステップS90に移行し、最適運転行動生成部50は、重み係数W
iの決定方法に用いる補間手法として逆距離荷重法を選択する。
【0156】
ステップS100において、最適運転行動生成部50は、ステップS30で取得したJ個の類似RPMパラメータP
iを用いて、ステップS80又はS90で選択した補間手法に対応する(17)式又は(18)式によって重み係数W
iを決定し、これから通過しようとする最近傍無信号交差点の推定RPMパラメータP
optを(16)式から算出する。
【0157】
ステップS110において、最適運転行動生成部50は、算出した推定RPMパラメータP
optによって、(10)式で示した無信号交差点におけるRPM301を構築し、(5)式に基づいて最近傍無信号交差点を通過する場合の各時刻における車両70の交差点近傍走行速度列を算出する。
【0158】
ステップS120において、ブレーキ制御部60は、すでに説明した目標減速度計算部601、ブレーキ機構モデル602及びブレーキ制御システム603の処理によって、最近傍無信号交差点を通過する場合の各時刻における車両70の車両速度が、ステップS110で算出した交差点近傍走行速度列で示される目標車両速度となるように、ブレーキの制御を行う。
【0159】
以上により、
図16に示した運転支援処理を終了する。
【0160】
なお、
図16の運転支援処理では、ステップS40及びS50において、それぞれ逆距離荷重法及びKriging法による類似RPMパラメータP
iの補間精度を、一個抜き交差検証法によって算出した。
【0161】
しかし、
図16の運転支援処理を実行する前に、運転行動データベース40に含まれる全てのRPMパラメータから何れか1つのRPMパラメータを取り去り、残りのRPMパラメータから、取り去ったRPMパラメータに対応する推定RPMパラメータP
optをそれぞれ逆距離荷重法とKriging法とを用いて(16)式から算出し、取り去ったRPMパラメータにより近い値を示す推定RPMパラメータP
optが得られる補間手法を表す情報を、当該取り去ったRPMパラメータと予め対応付ける処理を繰り返すことで、運転行動データベース40に含まれる全てのRPMパラメータの各々に、他の補間手法に比べて補間精度が高い補間手法の情報を予め対応付けておくようにしてもよい。
【0162】
この場合、
図16のステップS40、S50及びS60の処理は不要となり、ステップS70において、J個の類似RPMパラメータP
iの各々に対応付けられている補間手法の数を比較すればよいため、
図16の運転支援処理に要する処理時間を短縮することができる。
【0163】
また、
図16の運転支援処理では、類似RPMパラメータP
iを最も精度よく補間する補間手法として、逆距離荷重法又はKriging法を用いる例を示したが、これらの補間手法以外の補間手法を用いてもよいことは言うまでもない。
【0164】
また、本実施の形態では車両70を例にした運転支援装置1の説明を行ったが、運転支援装置1は、例えばオートバイ等の自動二輪車、或いは電動立ち乗り二輪車等の移動体にも適用することができる。
【0165】
このように本実施の形態によれば、運転支援装置1は、運転行動データベース40から通過予定無信号交差点の道路環境情報と類似する道路環境情報と対応付けられた類似RPMパラメータP
iを複数取得し、類似RPMパラメータP
iと類似RPMパラメータP
iの重み係数W
iから、通過予定無信号交差点に対応する推定RPMパラメータP
optを取得する。そして、運転支援装置1は、推定RPMパラメータP
optをRPMに適用することで、車両70が通過予定無信号交差点を通過する場合の交差点近傍走行速度列を生成する。
【0166】
したがって、運転支援装置1は、未知の無信号交差点を車両で通過する場合であっても、通過に伴う危険度を低減する通過速度を算出することができる。
【0167】
逆距離荷重法は、RPMパラメータの距離が近いほど相関が強いものとして補間を行う補間手法であるため、そうした前提が成り立たない状況では補間精度が落ちる場合がある。また、Kriging法は、RPMパラメータの値が局所的に大きく変化するような分布状況では補間精度が落ちる場合がある。したがって、予め定めた1つの補間手法で、類似RPMパラメータP
iの各々を毎回精度よく補間することは困難である場合が多い。
【0168】
しかし、運転支援装置1は、複数の補間手法のうち、類似RPMパラメータP
iの各々を最も精度よく補間する補間手法を用いて、類似RPMパラメータP
iの重み係数W
iを決定する。
【0169】
したがって、予め定めた1つの補間手法で重み係数W
iを決定する場合と比較して、通過予定無信号交差点のRPMパラメータを精度よく推定することができる。
【0170】
また、運転支援装置1は、一個抜き交差検証法を用いて、複数の補間手法の中から、類似RPMパラメータP
iの各々を最も精度よく補間する補間手法を選択する。
【0171】
逆距離荷重法は、RPMパラメータの距離が近いほど相関が強いものとして補間を行う補間手法であるため、そのような前提が成り立たない状況では補間精度が落ちる場合がある。また、Kriging法は、RPMパラメータの値が局所的に大きく変化するような分布状況では補間精度が落ちる。したがって、予め定めた1つの補間手法で、類似RPMパラメータP
iの各々を毎回精度よく補間することは困難である場合が多い。
【0172】
したがって、類似RPMパラメータP
iの分布状況に応じた補間手法を選択することができる。
【0173】
また、運転支援装置1は、車両70が通過予定無信号交差点を通過する場合の各時刻における車両速度v(t)が、交差点近傍走行速度列で示される目標車両速度となるように目標減速量A
t(t)を算出すると共に、車両70の減速量が目標減速量A
t(t)に近づくように制動装置を制御する。したがって、運転支援装置1は、通過予定無信号交差点での車両70の車両速度v(t)を、通過に伴う危険度を低減する速度まで減速することができるため、単に運転者に通過予定無信号交差点の存在を警告する場合と比較して、通過予定無信号交差点における安全性を向上させることができる。
【0174】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で
図16に示した運転支援処理の順序を変更してもよい。