(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6587895
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20191001BHJP
H02J 50/00 20160101ALI20191001BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20191001BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20191001BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/00
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-202062(P2015-202062)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-76654(P2017-76654A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年9月12日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成26年度文部科学省「地域イノベーション戦略支援プログラム(研究機能・産業集積高度化地域)・ひろしま医工連携ものづくりイノベーション推進地域」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝代 健次
(72)【発明者】
【氏名】山野上 耕一
(72)【発明者】
【氏名】川口 人士
【審査官】
鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−226889(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/125295(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/168239(WO,A1)
【文献】
特開2015−019551(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/122121(WO,A1)
【文献】
特表2013−523066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
B60L 5/00
B60M 7/00
H02J 7/00
H02J 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置された送電コイルと車体下面に設置された受電コイルとが対向して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で非接触給電を行う非接触給電システムであって、
前記送電コイルが1個のスパイラルコイルで構成されており、
前記受電コイルが複数のスパイラルコイルに分割されており、
前記送電コイルの外縁形状と前記受電コイルの外縁形状とは略同じであり、
前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を複数に分割した各形状を外縁形状として有し、
前記複数のスパイラルコイルは、互いに車幅方向に離間しており、
前記複数のスパイラルコイルがそれぞれ載置された複数のコイルコアは、互いに車幅方向に離間している
ことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を車幅方向に2等分した2個のスパイラルコイルである、請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を車幅方向に3分割した3個のスパイラルコイルである、請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
地上に設置された送電コイルと車体下面に設置された受電コイルとが対向して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で非接触給電を行う非接触給電システムであって、
前記送電コイルが1個のスパイラルコイルで構成されており、
前記受電コイルが複数のスパイラルコイルに分割されており、
前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を複数に分割した各形状を外縁形状として有し、
前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を車幅方向に3分割した3個のスパイラルコイルであり、
前記3個のスパイラルコイルのうち両端のスパイラルコイルの車幅方向の幅が前記送電コイルと前記受電コイルとの位置ずれ許容量に等しい
ことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項5】
地上に設置された送電コイルと車体下面に設置された受電コイルとが対向して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で非接触給電を行う非接触給電システムであって、
前記送電コイルが1個のスパイラルコイルで構成されており、
前記受電コイルが複数のスパイラルコイルに分割されており、
前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を複数に分割した各形状を外縁形状として有し、
前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を車長方向および車幅方向に4分割した4個のスパイラルコイルである、
ことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項6】
地上に設置された送電コイルと車体下面に設置された受電コイルとが対向して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で非接触給電を行う非接触給電システムであって、
前記送電コイルが1個のスパイラルコイルで構成されており、
前記受電コイルが複数のスパイラルコイルに分割されており、
前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を複数に分割した各形状を外縁形状として有し、
前記複数のスパイラルコイルのそれぞれに発生する起電力を整流する複数の整流回路を備え、
前記複数の整流回路の出力が直列接続されている、
ことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項7】
前記複数のスパイラルコイルのそれぞれに発生する起電力を整流する複数の整流回路を備え、
前記複数の整流回路の出力が並列接続されている、請求項1に記載の非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電システムに関し、特に、地上に設置された送電コイルと車体下面に設置された受電コイルとの間で非接触給電を行うプラグインハイブリッド車や電気自動車用の非接触給電システムに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
外部電力でバッテリ充電されるプラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)では、充電ケーブルの接続作業の煩わしさ、衣服の汚れ、雨天時の不安などから、ワイヤレスでの給電(非接触給電)のニーズが高くなっている。
【0003】
非接触給電には、地上側の1次コイルと車上側の2次コイルとの間の電磁誘導を利用する電磁誘導式と、磁界共鳴を利用する磁界共鳴式とがある。このうち電磁誘導式は、電力伝送効率が非常に高いが、1次コイルと2次コイルとを十分に近づけなければならないという特徴がある。一方、磁界共鳴式は、1次コイルと2次コイルとの距離がある程度大きくてもよいが、電磁誘導式に比べて電力伝送効率が低いという特徴がある。従来、給電部(1次コイル)と受電部(2次コイル)との位置ずれがあっても車体外の漏れ磁束の影響を抑制する電磁誘導式の非接触給電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、従来、複数の送受電コイルの組み合わせを持ち、車の位置ずれに応じて対抗するコイルを使用する非接触給電装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−49230号公報
【特許文献2】特開2015−19551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触給電システムで使用されるコイルのタイプとしてヘリカルコイルとスパイラルコイルがあるが、自動車用の非接触給電システムの国際標準化において、1次コイルおよび2次コイルとしてスパイラルコイルを採用することが決定した。スパイラルコイルは、ヘリカルコイルに比べて位置ずれ(横ずれ)に弱いため、コイルの位置ずれ対策が重要になる。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、自動車向けの非接触給電システムにおいて、1次コイルと2次コイルとの間に位置ずれが発生しても電力伝送効率を良好に保つことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従った非接触給電システムは、地上に設置された送電コイルと車体下面に設置された受電コイルとが対向して送電コイルと受電コイルとの間で非接触給電を行う非接触給電システムであって、送電コイルが1個のスパイラルコイルで構成されており、受電コイルが複数のスパイラルコイルに分割されており、
前記送電コイルの外縁形状と前記受電コイルの外縁形状とは略同じであり、前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を複数に分割した各形状を外縁形状として有
し、前記複数のスパイラルコイルは、互いに車幅方向に離間しており、前記複数のスパイラルコイルがそれぞれ載置された複数のコイルコアは、互いに車幅方向に離間しているものである。
【0008】
これによると、受電コイルが複数のスパイラルコイルに分割されていることにより、送電コイルに対して受電コイルが位置ずれしても、各スパイラルコイルで発生する起電力を足し合わせて受電コイル全体として大きな電力を発生させることができる。
【0009】
具体的には、複数のスパイラルコイルは受電コイルの外縁形状を車幅方向に2等分した2個のスパイラルコイルである。
【0010】
これによると、車幅方向の位置ずれに対応することができる。
【0011】
また、具体的には、複数のスパイラルコイルは受電コイルの外縁形状を車幅方向に3分割した3個のスパイラルコイルである。
【0012】
これによると、車幅方向の位置ずれにより細やかに対応することができる。
【0013】
本発明の他の局面に従った非接触給電システムでは、地上に設置された送電コイルと車体下面に設置された受電コイルとが対向して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で非接触給電を行う非接触給電システムであって、前記送電コイルが1個のスパイラルコイルで構成されており、前記受電コイルが複数のスパイラルコイルに分割されており、前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を複数に分割した各形状を外縁形状として有し、前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を車幅方向に3分割した3個のスパイラルコイルであり、3個のスパイラルコイルのうち両端のスパイラルコイルの車幅方向の幅を送電コイルと受電コイルとの位置ずれ許容量に等しくする。
【0014】
これによると、送電コイルと受電コイルとの位置ずれ許容範囲内で電力伝送効率を良好に保つことができる。
【0015】
また、
本発明の他の局面に従った非接触給電システムでは、地上に設置された送電コイルと車体下面に設置された受電コイルとが対向して前記送電コイルと前記受電コイルとの間で非接触給電を行う非接触給電システムであって、前記送電コイルが1個のスパイラルコイルで構成されており、前記受電コイルが複数のスパイラルコイルに分割されており、前記複数のスパイラルコイルが前記受電コイルの外縁形状を複数に分割した各形状を外縁形状として有し、複数のスパイラルコイルは受電コイルの外縁形状を車長方向および車幅方向に4分割した4個のスパイラルコイルである。
【0016】
これによると、車長方向および車幅方向の位置ずれに対応することができる。
【0017】
上記非接触給電システムは、複数のスパイラルコイルのそれぞれに発生する起電力を整流する複数の整流回路を備え、複数の整流回路の出力が直列接続または並列接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、送電コイル(1次コイル)と受電コイル(2次コイル)との間に位置ずれが発生しても電力伝送効率を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る非接触給電システムの概略図
【
図3】一例に係る受電コイル(2分割)の平面図および断面図
【
図4】複数に分割されたスパイラルコイルを電気的に直列接続した電気回路図
【
図5】複数に分割されたスパイラルコイルを電気的に並列接続した電気回路図
【
図7】送電コイルと受電コイルとの位置ずれがない場合とある場合の磁束を説明する図
【
図8】送電コイルと受電コイルとの位置ずれと結合係数との関係を示すグラフ
【
図9】別例に係る受電コイル(3分割)が設置された車体の下面図
【
図10】さらに別例に係る受電コイル(4分割)が設置された車体の下面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0021】
なお、発明者(ら)は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、図面に描かれた各部材の寸法、厚み、細部の詳細形状などは実際のものとは異なることがある。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る非接触給電システムの概略を示す。例えば、本実施形態に係る非接触給電システムは、プラグインハイブリッド車や電気自動車などの自動車100のバッテリ30をワイヤレスで充電する磁界共鳴式の非接触給電システムである。
【0023】
本実施形態に係る非接触給電システムにおいて、地上に地上装置200および送電ユニット60が設置されている。自動車100と地上装置200とは無線300により通信できるようになっている。自動車100は、バッテリ30の充電量を判断し、地上装置200に対して無線300を通じて適宜給電の開始/停止を要求する。地上装置200は、自動車100からの要求に従って自動車100への電気エネルギーの供給/停止をコントロールする。
【0024】
自動車100へ電気エネルギーを供給する場合、地上装置200は、商用電力(AC電源)から85kHz帯(81.38k〜90kHz)の3kWクラスの高周波電流を生成する。地上装置200が生成した高周波電流はケーブル201を通じて送電ユニット60に通電される。送電ユニット60には図略の送電コイル(1次コイル)が収容されており、当該送電コイルに高周波電流が通電されることで送電ユニット60に強力な磁界が発生する。
【0025】
一方、自動車100において、車体下面に受電ユニット10が設置されている。バッテリ30を充電する場合、受電ユニット10が送電ユニット60と上下に対向する位置に来るように自動車100を移動させる。受電ユニット10と送電ユニット60とのギャップは100〜160mmである。
【0026】
受電ユニット10には図略の受電コイル(2次コイル)およびコンデンサからなる共振回路が収容されており、当該受電コイルが送電ユニット60で発生した磁界に晒されることで当該共振回路が共鳴して受電ユニット10に高周波電流が発生する。受電ユニット10に発生した高周波電流は整流器20により直流電流に変換されてバッテリ30に充電される。このように、本実施形態に係るシステムでは、地上装置200から自動車100へ磁界共鳴によりワイヤレスで電気エネルギーが供給される。
【0027】
バッテリ30にはインバータ40が接続されている。自動車100を走行させる場合、インバータ40がバッテリ30に蓄電された直流電流を交流電流に変換して自動車100の動力源である電動モータ50を駆動する。
【0028】
図2は、一例に係る送電コイルの平面図および断面図である。送電ユニット60には送電コイル61が収容されている。送電コイル61は、直径5.4mmの絶縁被覆電線62を円形の渦巻き状に2段8回巻きしたスパイラルコイルであり、外径は350mm、内径は260mmである。送電コイル61は、フェライトなどの磁性体で形成された円盤状のコイルコア63上に取り付けられている。コイルコア63の直径は400mmである。
【0029】
図3は、一例に係る受電コイル(2分割)の平面図および断面図である。受電ユニット10には受電コイル11が収容されている。受電コイル11は、その円形の外縁形状(直径350mm)を2等分するように2個の半円形のスパイラルコイル11a、11bに分割されている。スパイラルコイル11a、11bは、いずれも直径5.4mmの絶縁被覆電線12を半円形の渦巻き状に1段8回巻きしたコイルであり、外形の半径は175mm、内径の半径は130mmである。スパイラルコイル11a、11bは、それぞれ、フェライトなどの磁性体で形成された半円盤状のコイルコア13a、13b上に取り付けられている。コイルコア13a、13bの半径は200mmである。
【0030】
なお、受電コイル11の形状は送電コイル61の形状と同じにする必要はない。例えば、受電コイル11の外径および内径を上記よりも100mmずつ小さく(外径250mm、内径160mm)してもよい。このように受電コイル11を小型化することで、受電ユニット10のコストを低減することができ、また、受電ユニット10の取り付け作業が容易になる。
【0031】
また、送電コイル61および受電コイル11ともに円形である必要はない。例えば、送電コイル61および/または受電コイル11を車幅方向に長い長円形や楕円形にしてもよい。
【0032】
図4は、複数に分割されたスパイラルコイルを電気的に直列接続した電気回路図の例である。スパイラルコイル11a、11bに共振コンデンサ14a、14bがそれぞれ接続され、LC共振回路を構成している。整流回路15a、15bにこれらLC共振回路がそれぞれ接続されている。整流回路15a、15bは、それぞれ、LC共振回路に発生した高周波電流を全波整流して直流電流を出力する。整流回路15aの正出力端子はリアクトル16の一端に接続され、整流回路15aの負出力端子は整流回路1
5bの正出力端子に接続されている。そして、平滑コンデンサ17が、リアクトル16の他端と整流回路1
5bの負出力端子に接続されている。
【0033】
図5は、複数に分割されたスパイラルコイルを電気的に並列接続した電気回路図の例である。スパイラルコイル11a、11bに共振コンデンサ14a、14bがそれぞれ接続され、LC共振回路を構成している。整流回路15a、15bにこれらLC共振回路がそれぞれ接続されている。整流回路15a、15bは、それぞれ、LC共振回路に発生した高周波電流を全波整流して直流電流を出力する。整流回路15a、15bの正出力端子はリアクトル16の一端に接続されている。そして、平滑コンデンサ17が、リアクトル16の他端と整流回路1
5a、1
5bの負出力端子に接続されている。
【0034】
このように、スパイラルコイル11a、11bが接続された整流回路1
5a、1
5bの出力を直列接続してもよいし、あるいは並列接続してもよい。
【0035】
なお、
図4および
図5に示した電気回路においてリアクトル16は省略可能である。
【0036】
図6は、
図3の受電コイルが設置された車体の下面図である。受電ユニット10は、例えば、車両後部の左右後輪の間に設置されている。自動車100の下面は鉄やアルミニウムなどでできたアンダーカバー101で覆われており、受電ユニット10に収容された受電コイル11はそのようなアンダーカバー101に取り付けられている。より詳細には、受電コイル11を構成するスパイラルコイル11a、11bが取り付けられたコイルコア13a、13bがアンダーカバー101に取り付けられている。
【0037】
ここで重要なのは、受電ユニット10が、スパイラルコイル11a、11bが車幅方向の左右に位置するような向きでアンダーカバー101に取り付けられるということである。すなわち、受電ユニット10が取り付けられた状態において、受電コイル11は、外縁形状を車幅方向に2等分した2個のスパイラルコイル11a、11bで構成される。
【0038】
このようにスパイラルコイル11a、11bを車幅方向の左右に配置する理由は、自動車100がバッテリ充電のために所定位置に駐車する場合、車長方向の位置は車止めにより規制できるのに対して車幅方向にはそのようなものがなく車幅方向の位置が規制できないため、送電ユニット60に対する受電ユニット10の車幅方向の位置ずれが発生し易いと考えられるからである。
【0039】
図7は、送電コイルと受電コイルとの位置ずれがない場合とある場合の磁束を説明する図である。同図は、送電コイル61と受電コイル11を平面視した図である。なお、便宜のため、受電コイル11を送電コイル61よりも小さく描いている。
【0040】
送電コイル61に高周波電流が通電されることで送電コイル61に磁束70で示したような磁界が発生する。送電コイル61で発生した磁束70がスパイラルコイル11a、11bに伝わることにより、磁界共鳴によりスパイラルコイル11a、11bのそれぞれに高周波電流が発生する。
【0041】
送電コイル61と受電コイル11との位置ずれがない場合、受電コイル11を構成するスパイラルコイル11a、11bに伝わる磁束70の向きは同じになる。一方、受電コイル11の位置がずれてスパイラルコイル11aが送電コイル61の平面視内側、スパイラルコイル11bが送電コイル61の平面視外側にあるとき、受電コイル11を構成するスパイラルコイル11a、11bに伝わる磁束70の向きは互いに逆向きになる。
【0042】
もし、受電コイル11が1個の円形のスパイラルコイルで構成されていた場合、送電コイル61と受電コイル11との位置ずれが大きくなると受電コイル11に伝わる磁束70が打ち消し合って弱まり、受電コイル11に発生する起電力が低下してしまう。一方、本実施形態のように受電コイル11を複数のスパイラルコイル(例えば、スパイラルコイル11a、11b)に分割することで、送電コイル61と受電コイル11との位置ずれが大きくなっても各スパイラルコイルにおいて互いに独立に起電力が発生する。したがって、各スパイラルコイルで発生した起電力を足し合わせることで、受電コイル11全体として大きな電力を発生させることができる。
【0043】
図7の例では、送電コイル61と受電コイル11との位置ずれがない場合とある場合とでスパイラルコイル11bに発生する起電圧の向きが反転するため、スパイラルコイル11aとスパイラルコイル11bの電気的な接続を切り替える必要がある。そこで、
図4および
図5に示したように、スパイラルコイル11a、11bともに直流に整流後に直列接続または並列接続することで、各スパイラルコイルに発生する起電圧の向きにかかわらず、各スパイラルコイルで発生した起電力を足し合わせることができるようになっている。
【0044】
次に、本実施形態に係る非接触給電システムにおける電力伝送効率の実証結果を示す。
図8は、送電コイルと受電コイルとの位置ずれと結合係数との関係を示すグラフである。ここで、送電コイル61および受電コイル11ともに外径を350mm、内径を260mmとする。「コイルずれ」は送電コイル61および受電コイル11の中心どうしのずれを指し、送電コイル61および受電コイル11の中心が合っている場合(
図7の「(a)コイル位置ずれなし」の状態)をコイルずれ0mmである。一方、
図7の「(b)コイル位置ずれあり」の状態はコイルずれ120mmに相当する。
【0045】
受電コイル11が1個の円形のスパイラルコイルで構成されている従来例、および、受電コイル11が2個のスパイラルコイル11a、11bに分割された本実施形態のいずれも、コイルずれが大きくなるに従って送電コイル61と受電コイル11との結合係数が低下する。しかし、コイルずれが70mmを超えた辺りから、本実施形態の方が従来例よりも結合係数を高めに維持することができている。すなわち、受電コイル11を2個のスパイラルコイル11a、11bに分割した効果が現れている。
【0046】
受電コイル11の分割数は3以上でもよい。受電コイル11を3個以上のスパイラルコイルに分割することで、送電コイル61と受電コイル11との位置ずれにより細やかに対応することができる。
【0047】
例えば、受電コイル11が送電コイル61に対して車幅方向にずれる場合、受電コイル11の右端または左端の一部が送電コイル61の平面視外側に出て受電コイル11の大部分は送電コイル61の平面視内側にあることが考えられる。そこで、受電コイル11を車幅方向に3分割してもよい。
図9は、別例に係る受電コイル(3分割)が設置された車体の下面図である。受電コイル11は、その円形の外縁形状を車幅方向に3分割した3個のスパイラルコイル11a、11b、11cを有する。ここで、両端のスパイラルコイル11a、11bよりも真ん中のスパイラルコイル11cを大きめにしておく。
【0048】
特に、両端のスパイラルコイル11a、11bの車幅方向の幅を、送電コイル61と受電コイル11との位置ずれ許容量(例えば100mm)に合わせることが好ましい。これにより、送電コイル61と受電コイル11との位置ずれ許容範囲内で電力伝送効率を良好に保つことができる。
【0049】
また、受電コイル11が送電コイル61に対して車長方向にずれることも考慮すると、受電コイル11を車長方向および車幅方向に4分割してもよい。
図10は、さらに別例に係る受電コイル(4分割)が設置された車体の下面図である。受電コイル11は、その円形の外縁形状を車長方向および車幅方向に4分割した4個のスパイラルコイル11a、11b、11c、11dを有する。各スパイラルコイルの形状および大きさは同じである。このように、受電コイル11を車長方向および車幅方向に4分割することで、車長方向のずれに対しても対応することができる。
【0050】
なお、受電コイル11をさらに多くのスパイラルコイルに分割することも可能であるが、スパイラルコイルの数が増えるとその分電気抵抗も大きくなるため、受電コイル11の分割数は2〜4が適当である。
【0051】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0052】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0053】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0054】
上記では、便宜のため、磁界共鳴式の非接触給電システムを例に本発明における技術を説明したが、本発明は、磁界共鳴式の非接触給電システムに限定されず、電磁誘導式の非接触給電システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
11 受電コイル
11a スパイラルコイル
11b スパイラルコイル
11c スパイラルコイル
11d スパイラルコイル
61 送電コイル
16a 整流回路
16b 整流回路