(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載されているようなレーザー加工装置を用いても、加工溝に付着した粉状のCuを含むデブリの完全な除去は困難である。しかし、Cuを含むデブリは加工溝内に存在している限りにおいては、デバイスに影響を与えないため完全除去する必要はないと考えられていた。
【0008】
しかし、このCuを含むデブリは、シリコン及び空気中の水分と反応することが分かってきた。すなわち、Cuを含むデブリがグルービング加工で露出したシリコン基板に接触し、核となるCu
3Siを加工溝の壁及び底に形成する。このCu
3Siが空気中において水分と反応し、Cu
3Siの表面にCu
2OとCuとからなる層が形成されていく。さらに、Cu
2OとCuとからなる層の表面にSiO
2の層が形成されていくことで、デブリが肥大化していく。その結果、特に加工溝の壁(露出しているシリコン基板部分からなる壁)部分で肥大化したデブリは、その表面が配線層に接触することがあり、この肥大化したデブリが配線層に接触したウエーハから作製されたデバイスは、配線が短絡しデバイスが破損する可能性がある。
【0009】
そして、シリコン基板に付着したCu自体は、洗浄水による洗浄やドライエッチングなどでは除去できず、薬液洗浄やウエットエッチングで除去する必要があるため、除去することが困難となる。特に、問題となる加工溝の露出したシリコン基板部分からなる壁部分で肥大化したデブリは、加工溝の幅が切削ブレードの刃厚以上であることから、切削加工後においても、そのままの状態で残存して成長を続けていく可能性が高い。
【0010】
そこで、レーザー光線の照射によって加工溝を形成するウエーハの分割方法においては、Cuを含むデブリを加工溝内で成長させず、ウエーハを分割して作製されたデバイスの配線層にデブリが接触しないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、
基板の上面にCuを含む配線層を備え
、該配線層を含んだ分割予定ラインで区画された領域にデバイスが形成されたウエーハを分割するウエーハの分割方法であって、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を該配線層側から照射して分割予定ラインに沿って該配線層を
切断して該基板に到る加工溝を形成するレーザー加工溝形成工程と、該レーザー加工溝形成工程の実施後、該加工溝に沿って該加工溝の最外幅よりも幅が狭い切削ブレードをウエーハに切り込ませウエーハを完全切断する切削工程と、該レーザー加工溝形成工程の実施後において、少なくとも該加工溝
内の該配線層が切断された部分をドライエッチングする
ことにより該レーザー加工溝形成工程で生成された該Cuを含むデブリを除去し該デブリの成長を防ぐドライエッチング工程と、からなるウエーハの分割方法である。
【0012】
本発明に係るウエーハ分割方法においては、前記ドライエッチング工程の実施前までに前記デバイスの上面を保護する保護膜を形成する保護膜形成工程を行うと好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るウエーハ分割方法においては、
基板の上面にCuを含む配線層を備え
、配線層を含んだ分割予定ラインで区画された領域にデバイスが形成されたウエーハの分割にあたって、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を配線層側から照射して分割予定ラインに沿って配線層を
切断して基板に到る加工溝を形成するレーザー加工溝形成工程と、レーザー加工溝形成工程の実施後、加工溝に沿って加工溝の最外幅よりも幅が狭い切削ブレードをウエーハに切り込ませウエーハを完全切断する切削工程と、レーザー加工溝形成工程の実施後において、少なくとも加工溝
内の配線層が切断された部分をドライエッチングするドライエッチング工程とを実施し、Cuを含むデブリが付着している部分のシリコン基板をドライエッチングすることにより、Cuを含むデブリをシリコン基板から離脱可能にさせ、Cuを含むデブリを加工溝内で成長させず、ウエーハを分割して作製されたデバイスの配線層にデブリが接触しないようにすることができる。
【0014】
また、ドライエッチング工程の実施前までに前記デバイスの上面を保護する保護膜を形成する保護膜形成工程を行うことで、ドライエッチング工程におけるデバイスの上面に対する悪影響をより低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、
図1〜11を用いて、
図1に示すウエーハWを本発明に係る分割方法により分割する場合の各工程について説明する。
【0017】
図1に示すウエーハWは、例えば、その外形が略円板形状であり、結晶方位を示すオリエンテーションフラットOFが、外周の一部をフラットに切欠くことで形成されている。ウエーハWの表面W2aは、格子状に配列された分割予定ラインSで複数の領域に区画されており、各領域にはIC等のデバイスDがそれぞれ形成されている。
【0018】
ウエーハWの層構造は、
図2に示すように、Siからなる基板W1(シリコン基板W1)の上面W1a上に、少なくともCuを含む配線層W2が積層されて構成されている。この配線層W2の表面W2aが、ウエーハWの表面W2aとなる。分割予定ラインSは、例えば、幅Swを有しており、ウエーハWの表面W2aから配線層W2の厚み方向(Z軸方向)の中間部に到達する深さで形成されている。
【0019】
(1)保護膜形成工程
本発明に係るウエーハの分割方法においては、まず、デバイスDの上面(ウエーハWの表面W2a)を保護する保護膜W3(
図4において図示)を形成する保護膜形成工程を実施する。
【0020】
保護膜形成工程においては、
図3に示すスピンコータ40に備える回転可能なスピンナーテーブル400上に、ウエーハWを載置し、スピンコータ40に接続された図示しない吸引手段を作動することによりスピンナーテーブル400上でウエーハWを吸引保持する。次に、スピンナーテーブル400上で吸引保持されたウエーハWの表面W2aの中心部に保護膜剤供給ノズル41から所定量の保護膜剤を滴下し、スピンナーテーブル400を所定速度で回転させることにより、滴下された保護膜剤がウエーハWの外周部まで遠心力により流動しレベリングされる。この液状の保護膜剤を乾燥させることで、
図4に示すように、ウエーハWの表面W2a上にほぼ一様な厚さの保護膜W3が形成される。なお、後述するレーザー加工溝形成工程で加工溝Mを形成すると、加工溝Mが形成される部分の保護膜W3が除去される。
【0021】
(2)レーザー加工溝形成工程
保護膜形成工程を実施した後、例えば、ウエーハWに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を配線層W2側から照射して分割予定ラインSに沿って配線層W2を除去し加工溝M(
図8において図示)を形成するレーザー加工溝形成工程を行う。
【0022】
レーザー加工溝形成工程においては、まず、
図5に示すように、ウエーハWを粘着テープTに貼着しリングフレームFにより支持された状態にする。
【0023】
次いで、粘着テープTを介してリングフレームFに支持された状態のウエーハWが、
図6に示すレーザー加工装置1のチャックテーブル11上に搬送され、保持される。
【0024】
レーザー加工溝形成工程において用いられる
図6に示すレーザー加工装置1は、ウエーハWを保持するチャックテーブル11と、チャックテーブル11上に保持されたウエーハWに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段12と、チャックテーブル11上に保持されたウエーハWの加工溝M(
図8において図示)を形成すべき分割予定ラインSを検出するアライメント手段13とを少なくとも備える。
【0025】
チャックテーブル11は、例えば、その外形が円形状であり、ウエーハWを吸着する吸着部110と、吸着部110を支持する枠体111とを備える。吸着部110は図示しない吸引源に連通し、吸着部110の露出面である保持面110aでウエーハWを吸引保持する。チャックテーブル11は、X軸方向に往復移動が可能であるとともに、チャックテーブル11の底面側に配設された回転手段112により回転可能に支持されている。
【0026】
レーザー光線照射手段12は、Y軸方向及びZ軸方向に往復移動可能であり、例えば、チャックテーブル11に対して水平に配置された円柱状のハウジング120を備えている。そして、ハウジング120内には、レーザー発振器120aが配設され、ハウジング120の先端部には、レーザー発振器から発振されたレーザー光線を集光するための集光器121が装着されている。集光器121は、レーザー発振器120aから発振したレーザー光線を、集光器121の内部に備えたミラー121aにおいて反射させ、集光レンズ121bに入光させることで、レーザー光線をウエーハWの表面W2aの面方向に沿う任意の方向に走査できる。
【0027】
アライメント手段13は、ウエーハWの表面W2aを撮像する撮像手段130を備えており、撮像手段130により取得した画像に基づきウエーハWの加工溝Mを形成すべき分割予定ラインSを検出することができる。アライメント手段13とレーザー光線照射手段12とは一体となって構成されており、両者は連動してY軸方向及びZ軸方向へと移動する。
【0028】
ウエーハWのチャックテーブル11による吸引保持を行う際には、まず、
図6に示すチャックテーブル11の保持面110aとウエーハWの裏面W1bとが対向するように位置合わせを行い、粘着テープTを介してリングフレームFに支持されたウエーハWをチャックテーブル11上に載置する。そして、チャックテーブル11に接続された図示しない吸引源が作動することで生み出された吸引力が、チャックテーブル11の保持面110aに伝達されることで、配線層W2が上側となった状態でウエーハWがチャックテーブル11上に吸引保持される。なお、
図6においては、リングフレームFは省略して示している。
【0029】
次いで、チャックテーブル11に保持されたウエーハWが−X方向(往方向)に送られるとともに、アライメント手段13により分割予定ラインSが検出される。すなわち、撮像手段130により分割予定ラインSが撮像され、撮像された分割予定ラインSの画像により、アライメント手段13がパターンマッチング等の画像処理を実行し、分割予定ラインSの位置が検出される。
【0030】
分割予定ラインSが検出されるのに伴って、レーザー光線照射手段12がY軸方向に移動し、レーザー光線を照射する分割予定ラインSと集光器121とのY軸方向における位置あわせがなされる。この位置あわせは、例えば、集光器121に備える集光レンズ121bの光軸が、分割予定ラインSの中心線から幅方向にずらした位置に位置するように行われる。
【0031】
レーザー光線照射手段12では、レーザー発振器120aから、ウエーハWに対して吸収性を有する波長に設定されたレーザー光線を発振する。そして、レーザー発振器120aから発振したレーザー光線がミラー121aで反射し、集光レンズ121bに入光する。集光レンズ121bでは、
図4に示すシリコン基板W1の上面W1aから厚み方向(Z軸方向)に向かって僅かに下方にある位置に集光点を合わせて、集光させたレーザー光線を
図7に示す所定の集光スポット径M1w(形成する加工溝M1の幅)で、ウエーハWに対して配線層W2側から照射する。
【0032】
レーザー光線を分割予定ラインSに沿って照射しつつ、ウエーハWを−X方向に所定の速度で加工送りしていくことで、ウエーハWを分割予定ラインSに沿ってアブレーションさせ、
図7に示すように、加工溝M1を形成し、その部分の配線層W2を保護膜W3ごと除去できる。例えば、一本の分割予定ラインSに対してレーザー光線を照射し終えるX軸方向の所定の位置までウエーハWが−X方向に進行すると、ウエーハWの−X方向(往方向)での加工送りを一度停止させる。ウエーハWの分割予定ラインSには
図7に示すように、配線層W2の厚さより深い深さで幅がM1wの加工溝M1が形成される。
【0033】
次に、集光器121を+Y方向へ移動させ、集光器121に備える集光レンズ121bの光軸を、分割予定ラインSの中心線から加工溝M1とは反対の方向にずらした位置にあわせる。そして、所定の集光スポット径M2w(形成する加工溝M2の幅)を有するレーザー光線をウエーハWに対して配線層W2側から照射しつつ、ウエーハWを+X方向(復方向)に所定の速度で加工送りしていくことで、ウエーハWを分割予定ラインSに沿ってアブレーションさせ、
図7に示すように、加工溝M2を形成し、その部分の配線層W2を保護膜W3ごと除去する。そうすると、分割予定ラインSの中心線の両側に、2本の加工溝M1,M2が形成される。2本の加工溝M1、M2は、双方とも、ストリートSの幅Swの範囲に形成される。
【0034】
次いで、
図6に示す集光器121を+Y方向へ移動させ、2本の加工溝M1,M2が形成された分割予定ラインSの隣に位置する分割予定ラインS上における中心線からずれた位置と集光器121とのY軸方向の位置あわせを行う。そして、上記と同様に、往復向及び復方向の加工送りをしつつレーザー光線を照射することによって、分割予定ラインSに2本の加工溝M1,M2を形成する。そして、順次同様のレーザー光線の照射を行うことにより、同方向の全ての分割予定ラインSに2本の加工溝M1,M2が形成される。さらに、チャックテーブル11を90度回転させてから同様のレーザー光線の照射を行うと、縦横全ての分割予定ラインSに沿って加工溝M1,M2が形成される。ここで、加工溝M1の−Y方向側の側壁と加工溝M2の+Y方向側の側壁との距離をMwとする。
【0035】
次に、集光器121に備える集光レンズ121bの光軸が分割予定ラインSの中心線に位置するように位置合わせし、その状態で、ウエーハWを−X方向(往方向)に加工送りしつつ、レーザー光線をワイドビームに変更し、分割予定ラインSに沿って、所定の集光スポット径(形成する加工溝Mの幅Mw以下でよい)を有するワイドビームを照射する。そうすると、配線層W2のうち2本の加工溝M1,M2の間に残された部分がその上方の保護膜W3とともにアブレーション加工され、
図8に示すように、最外幅Mwを有する加工溝Mが形成される。この結果、配線層W2は、加工溝Mによって分断される。また、
図8に示すように、レーザー光線の照射によって溶解した配線層W2の一部が、加工溝Mの側壁に付着して、Cuを含むデブリGとなる。
【0036】
次いで、
図6に示す集光器121を+Y方向へ移動させて、加工溝Mが形成された分割予定ラインSの隣に位置し加工溝Mが形成されていない分割予定ラインSと集光器121とのY軸方向における位置あわせを行う。そして、ウエーハWを+X方向(復方向)へ加工送りし、往方向でのレーザー光線の照射と同様に分割予定ラインSに沿ってレーザー光線が照射される。順次同様のレーザー光線の照射を行うことにより、同方向の全ての分割予定ラインSにレーザー光線が照射される。さらに、チャックテーブル11を90度回転させてから同様のレーザー光線の照射を行うと、縦横全ての分割予定ラインSに沿ってレーザー光線が照射され、縦横全ての分割予定ラインSに沿って配線層W2が除去され加工溝Mが形成される。
【0037】
(3)ドライエッチング工程
レーザー加工溝形成工程の実施後において、例えば、
図8に示す加工溝Mをドライエッチングするドライエッチング工程を行う。本工程においては、加工溝Mにおける露出しているシリコン基板W1部分をエッチングしていくが、特に、加工溝Mにおいてシリコン基板W1で形成された側壁部分に対するエッチングが重要となる。
【0038】
本ドライエッチング工程では、例えば
図9に示すプラズマエッチング装置9を用いる。プラズマエッチング装置9は、ウエーハWを保持する静電チャック(ESC)90と、ガスを噴出するガス噴出ヘッド91と、静電チャック(ESC)90及びガス噴出ヘッド91を内部に収容したチャンバ92とを備えている。
【0039】
静電チャック(ESC)90は、支持部材900によって下方から支持されている。静電チャック(ESC)90の内部には電極901が配設されており、この電極901は、整合器94a及びバイアス高周波電源95aに接続されている。高周波電源95aが、電極901に直流電圧を印加することで、静電吸着力を静電チャック(ESC)90の保持面に発生させてウエーハWを保持できる。
【0040】
チャンバ92の上部に軸受け919を介して昇降自在に配設されたガス噴出ヘッド91の内部には、ガス拡散空間910が設けられており、ガス拡散空間910の上部にはガス導入口911が連通し、ガス拡散空間910の下部にはガス吐出口912が連通している。ガス吐出口912の下端は、静電チャック(ESC)90側に向けて開口している。
【0041】
ガス導入口911には、ガス配管913を介してガス供給部93が接続されている。ガス供給部93は、エッチングガスと希ガスとをそれぞれ蓄えている。
【0042】
ガス噴出ヘッド91には、整合器94を介して高周波電源95が接続されている。高周波電源95から整合器94を介してガス噴出ヘッド91に高周波電力を供給することにより、ガス吐出口912から吐出されたガスをプラズマ化することができる。
【0043】
チャンバ92の下部には排気管96が接続されており、この排気管96には排気装置97が接続されている。この排気装置97を作動させることにより、チャンバ92の内部を所定の真空度まで減圧することができる。
【0044】
チャンバ92の側部には、ウエーハWの搬入出を行うための搬入出口920と、この搬入出口920を開閉するゲートバルブ921とが設けられている。
【0045】
プラズマエッチング装置9は、制御部98を備えており、制御部98による制御の下で、各ガスの吐出量や時間、高周波電力等の条件がコントロールされる。
【0046】
ドライエッチング工程では、まず、ゲートバルブ921を開け、搬入出口920からウエーハWを搬入し、貼着された粘着テープT側を下に向けてウエーハWを静電チャック(ESC)90上に載置する。電極901に高周波電源95aから直流電圧を印加して、静電チャック(ESC)90の保持面上に静電吸着力を発生させる。また、排気装置97によってチャンバ92内を排気し、チャンバ92内の圧力を、例えば0.10〜0.15Paとするとともに、ガス供給部93に蓄えられたエッチングガスを、ガス配管913及びガス導入口911を介してガス吐出部912から噴出させる。なお、
図9においては、リングフレームFは省略して示している。
【0047】
チャンバ92内にエッチングガスを導入するとともに、静電チャック(ESC)90の温度を、例えば粘着テープTからガスが発生しない温度である70℃以下とし、高周波電源95からガス噴出ヘッド91に高周波電力を印加することにより、ガス噴出ヘッド91と静電チャック(ESC)90との間に高周波電界を生じさせ、エッチングガスをプラズマ化させる。
【0048】
エッチングガスとして、例えばSF
6、CF
4、C
2F
6、C
2F
4等のフッ素系ガスを用いるとよい。また、プラズマ支援ガスとして、Ar、He等の希ガスを用いてもよい。例えば、ウエーハWの直径が300mmである場合、高周波電力の出力を3kW、高周波電力の周波数を13.56MHz、Ar等の希ガスは、エッチングガスのプラズマ化をアシストする。なお、チャンバ92への希ガスの導入は、エッチングガスの導入前に行う。
【0049】
本工程における具体的な実施条件としては、ウエーハWの直径が300mmである場合、以下の条件Aでエッチングが可能となる。すなわち、本工程においては、レーザー加工溝形成工程において生じた
図8に示すCuを含むデブリGの中でも、特に加工溝Mにおける露出しているシリコン基板W1の側壁部分に付着したデブリGを除去することを目的とする。なぜならば、シリコン基板W1の側壁部分に付着したデブリGは、成長した場合に、Cuを含む配線層W2に接触する可能性が最も高いデブリとなるためである。そして、シリコン基板W1の側壁部分に付着したデブリG自体はエッチングされないものの、このデブリGはシリコン基板W1の側壁表面に僅かな接触面積で付着しているだけであることから、シリコン基板W1の側壁部分を僅かに幅方向(図におけるY軸方向)にエッチングするのみで、シリコン基板W1の側壁部分から離脱させることができる。すなわち、ドライエッチングによる等方性の形状は保たれつつ(すなわち、Y軸方向とZ軸方向とが均等のエッチングレート)、等方性エッチングにおいて横方向(Y軸方向)へのエッチングによって、少なくとも、シリコン基板W1の側壁部分に付着したデブリGを離脱させることができる。もしくは、離脱可能なように僅かに接合される接合部を残す程度にエッチングされる。つまり、接合部によりデブリGは離脱しない場合であっても、シリコン基板W1とデブリGとが反応する事がない。
(条件A)
エッチングガス: SF
6ガス
プラズマ支援ガス: Arガス
エッチングガス供給量:1500cc/分
プラズマ支援ガス供給量:1000cc/分
高周波電力の出力: 3kW
【0050】
エッチングガスは、デバイスDの配線層W2を保護する保護膜W3はほとんどエッチングせずに、ウエーハWの表面W2aに形成された加工溝Mに対応する部分のみを等方性エッチングをしていく。なお、加工溝Mにおいては、露出しているCuを含む配線層W2の側壁部分(配線層W2の端面)もエッチングされる。また、加工溝Mにおける露出しているシリコン基板W1の側壁部分も横方向にエッチングされ、シリコン基板W1の底部分も、下方にエッチングされていく。この結果、
図10に示すように、少なくとも、加工溝Mのシリコン基板W1の側壁部分からは、デブリGが除去されやすい状態となる。
【0051】
ドライエッチングを適宜行った後、高周波電力の印加を止めて、
図9に示す搬入出口920からウエーハWを搬出する。なお、本実施形態のように、(1)保護膜形成工程を先に実施している場合には、ドライエッチング工程を終えた後、ウエーハWの保護膜W3を除去してもよい。保護膜の形成および除去を簡単に行うため、水溶性樹脂を用いて保護膜W3を形成し、ドライエッチング工程を終えた後にはウエーハWを水洗浄すると容易に保護膜W3を除去する事ができる。
【0052】
(4)切削工程
本実施形態においては、ドライエッチング工程を実施後、加工溝Mに沿って加工溝Mの最外幅Mwよりも幅が狭い
図11に示す切削ブレード60をウエーハWに切り込ませウエーハWを完全切断する切削工程を実施する。水溶性樹脂を用いて保護膜W3を形成しているので、保護膜W3は切削工程において切削水により溶解しウエーハWから除去される。
【0053】
切削工程において用いられる
図11に示す切削装置2は、ウエーハWを保持するチャックテーブル30と、チャックテーブル30上に保持されたウエーハWを切削する切削ブレード60を備えた切削手段6と、チャックテーブル30上に保持されたウエーハWの切削ブレード60を切り込ませるべき加工溝Mを検出するアライメント手段61とを少なくとも備える。アライメント手段61は、ウエーハWの表面W2aを撮像する撮像手段610を備えており、撮像手段610により取得した画像に基づき加工溝Mを検出することができる。アライメント手段61と切削手段6とは一体となって構成されており、両者は連動してY軸方向及びZ軸方向へと移動する。チャックテーブル30は、ウエーハを保持面30aで吸引保持するように構成されており、底面側に配設された回転手段30bにより回転可能に支持されている。また、図示しない切削送り手段によってX軸方向での移動可能が可能となっている。
【0054】
切削手段6のスピンドルハウジング62中にはスピンドル63が回転可能に収容されており、スピンドル63の軸方向はX軸方向に対し水平方向に直交する方向(Y軸方向)となっている。スピンドル63の先端部は、スピンドルハウジング62から−Y方向に突出しており、切削ブレード60はこの先端部にスピンドル63と同軸的に回転可能に装着されている。そして、図示しないモータによりスピンドル63が回転駆動されることに伴って、切削ブレード60も高速回転する。
図12に示すように、切削ブレード60の幅(刃厚)60wは、加工溝Mの最外幅Mwよりも狭く設定されている。
【0055】
切削工程においては、まず、チャックテーブル30の保持面30aとウエーハWの裏面W1bに貼着された粘着テープT側とが対向するように位置合わせを行い、次いで、粘着テープTを介してリングフレームF(図には不図示)に支持されたウエーハWをチャックテーブル30上に載置する。そして、チャックテーブル30に接続された図示しない吸引手段を作動してウエーハWをチャックテーブル30上に吸引保持する。なお、図示はしていないが、例えば、チャックテーブル30の周囲にはクランプ部が複数配設されており、クランプ部においてリングフレームFを固定する。
【0056】
さらに、図示しない切削送り手段により、チャックテーブル30に保持されたウエーハWが−X方向に送られるとともに、撮像手段610によってウエーハWの表面W2aが撮像されて切削すべき加工溝Mの位置が検出される。加工溝Mが検出されるのに伴って、切削手段6が図示しない割り出し送り手段によってY軸方向に駆動され、切削すべき加工溝Mと切削ブレード60とのY軸方向における位置付けがなされる。この位置づけは、加工溝Mの最大幅Mwの中点位置に対して、切削ブレード60の幅60wの中点位置が重なるように行われる。
【0057】
図示しない切削送り手段がウエーハWを保持するチャックテーブル30をさらに−X方向に送り出すとともに、図示しない切込み送り手段が切削手段6を−Z方向に降下させていく。また、図示しないモータがスピンドル63を高速回転させ、スピンドル63に固定された切削ブレード60がスピンドル63の回転に伴って高速回転をしながらウエーハWに切込み、加工溝Mを切削しウエーハWを完全に切断していく。
【0058】
切削ブレード60が分割予定ラインSを切削し終えるX軸方向の所定の位置までウエーハWが送られると、図示しない切削送り手段によるウエーハWの切削送りを一度停止させ、図示しない切込み送り手段が切削ブレード60をウエーハWから離間させ、次いで、図示しない切削送り手段がウエーハWを元の位置に戻す。そして、隣り合う加工溝Mの間隔ずつ切削ブレード60をY軸方向に割り出し送りしながら順次同様の切削を行うことにより、ウエーハWの表面W2aの同方向の全ての加工溝Mに切削ブレード60が切り込まれ、ウエーハWが完全切断される。さらに、ウエーハWを回転手段30bによって90度回転させてから同様の切削を行うことで、ウエーハWの表面W2aの全ての加工溝Mに切削ブレード60が切り込まれ、ウエーハWが完全切断され、デバイスDが作製される。
【0059】
本発明に係るウエーハの分割方法においては、上面W2aにCuを含む配線層W2を備え分割予定ラインSで区画された領域にデバイスDが形成されたウエーハWの分割にあたって、ウエーハWに対して吸収性の波長のレーザー光線を配線層W2側から照射させ分割予定ラインSに沿って配線層W2を除去し加工溝Mを形成するレーザー加工溝形成工程と、レーザー加工溝形成工程の実施後、加工溝Mに沿って加工溝Mの最外幅Mwよりも幅が狭い切削ブレード60をウエーハWに切り込ませウエーハWを完全切断する切削工程と、レーザー加工溝形成工程の実施後において、少なくとも加工溝Mをドライエッチングするドライエッチング工程とを実施(本実施形態においては、切削工程前に実施)することによって、Cuを含むデブリGが付着している部分のシリコン基板W1をドライエッチングすることにより、Cuを含むデブリGをシリコン基板W1から離脱させ、Cuを含むデブリGを加工溝M内で成長させず、ウエーハWを分割して作製されたデバイスDの配線層W2にデブリGが接触しないようにすることができる。
【0060】
なお、本発明に係るウエーハの分割方法は、本実施形態に限定されるものではない。また、添付図面に図示されているスピンコータ40、レーザー加工装置1、プラズマエッチング装置9及び切削装置2の各構成の大きさや形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
40:スピンコータ 400:スピンナーテーブル 41:保護膜剤供給ノズル
W:ウエーハ W1:シリコン基板 W2:Cuを含む配線層 W3:保護膜
S:分割予定ライン D:デバイス T:粘着テープ F:リングフレーム
1:レーザー加工装置
11:チャックテーブル 110:吸着部 110a:保持面 111:枠体
112:回転手段
12:レーザー加工手段 120:ハウジング 120a:レーザー発振器
121:集光器 121a:ミラー 121b:集光レンズ
13:アライメント手段 130:撮像手段 M:加工溝 G:Cuを含むデブリ
9:プラズマエッチング装置
90:静電チャック(ESC) 900:保持テーブル 901:電極
91:ガス噴出ヘッド 910:ガス拡散空間 911:ガス導入口
912:ガス吐出口 913:ガス配管
92:チャンバ 920:搬入出口 921:ゲートバルブ
93:ガス供給部 94,94a:整合器 95,95a:高周波電源
96:排気管 97:排気装置 98:制御部
2:切削装置
30:チャックテーブル 30a:保持面 30b:回転手段
6:切削手段 60:切削ブレード 61:アライメント手段 610:撮像手段
62:スピンドルハウジング 63:スピンドル