(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分割予定ラインを横断して所定の深さを有し、該分割予定ラインに直交する方向に延びる長穴形状の複数の凹部に電極が形成されるパッケージ基板を該分割予定ラインに沿って切削ブレードで切削するパッケージ基板の切削方法であって、
パッケージ基板を保持テーブルで保持する保持工程と、
該保持テーブルが保持するパッケージ基板の該分割予定ラインに沿って該凹部を完全切断しパッケージ基板を完全切断しない深さで切削溝を形成する第1の切削工程と、
該第1の切削工程で形成された該切削溝によって分断され上面視半円状の各凹部の側面を結んだ直線上、又は、上面視半円状の該各凹部の重心を結んだ直線上に高圧水噴射ノズルの中心を位置付け、該高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させ、該高圧水噴射ノズルとパッケージ基板を保持する該保持テーブルとを相対的に該分割予定ラインの延在方向で該第1の切削工程時の切削送り方向とは反対方向に移動させ、該切削溝と該凹部とに形成されるバリを除去するバリ除去工程と、
該バリ除去工程の後、該切削ブレードで該第1の切削工程で形成した該切削溝に沿って切削しパッケージ基板を完全切断する第2の切削工程と、からなるパッケージ基板の切削方法。
環状フレームに粘着テープを貼着し該環状フレームの中央の開口の該粘着テープにパッケージ基板を貼着させワークセットを形成するワークセット形成工程の後に、該粘着テープを介して該保持テーブルがパッケージ基板を保持する該保持工程を実施する請求項1または請求項2記載のパッケージ基板の切削方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板の上面には、分割予定ラインに交差するように凹部(キャビティ)が形成されている。このようなパッケージ基板が切削ブレードによって切削加工されると、凹部が分割予定ラインに沿って分断され、個々に分割されたチップの切断面(側面)に凹部が露出される。この結果、凹部のエッジ部分には、凹部の内側面に沿ってヒゲ状のバリが形成される。
【0005】
ここで、上記したパッケージ基板において、特許文献1及び特許文献2に記載の切削方法を適用することも考えられる。しかしながら、同じ切削溝を切削ブレードでなぞることで切削溝上のバリは除去されるものの、凹部の内側面に沿って形成されるバリまでは適切に除去することができないという問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、凹部を備えたパッケージ基板において、凹部に形成されるバリを適切に除去することができるパッケージ基板の切削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパッケージ基板の切削方法は、分割予定ラインを横断して所定の深さを有
し、分割予定ラインに直交する方向に延びる長穴形状の複数の凹部に電極が形成されるパッケージ基板を分割予定ラインに沿って切削ブレードで切削するパッケージ基板の切削方法であって、パッケージ基板を保持テーブルで保持する保持工程と、保持テーブルが保持するパッケージ基板の分割予定ラインに沿って凹部を完全切断しパッケージ基板を完全切断しない深さで切削溝を形成する第1の切削工程と、第1の切削工程で形成された切削溝に
よって分断され上面視半円状の各凹部の側面を結んだ直線上、又は、上面視半円状の各凹部の重心を結んだ直線上に高圧水噴射ノズルの中心を位置付け、高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させ、高圧水噴射ノズルとパッケージ基板を保持する保持テーブルとを相対的に分割予定ラインの延在方向
で第1の切削工程時の切削送り方向とは反対方向に移動させ、切削溝と凹部とに形成されるバリを除去するバリ除去工程と、バリ除去工程の後、切削ブレードで第1の切削工程で形成した切削溝に沿って切削しパッケージ基板を完全切断する第2の切削工程と、からなることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1の切削工程においてパッケージ基板が完全切断されない程度に切削溝が形成された後、バリ除去工程において切削溝に沿って高圧水が噴射されることにより、切削溝及び凹部に形成されるバリが除去される。そして、第2の切削工程においてパッケージ基板が切削溝に沿って完全切断されることにより、パッケージ基板が個々のチップに分割される。このように、切削溝に沿って高圧水が噴射されることにより、凹部にも高圧水が噴射される結果、凹部を備えたパッケージ基板であっても、凹部に形成されるバリを適切に除去することができる。また、パッケージ基板が完全切断されない状態で切削溝に高圧水が噴射されるため、高圧水によってチップが保持テーブルから脱落するのを気にする必要がなく、高圧水の圧力をより高めた状態でバリ除去工程を実施することができる。
【0009】
また、本発明の上記パッケージ基板の切削方法において、バリ除去工程では、切削
溝を挟んで2つに分断された上面視半円状の凹部に片側ずつ高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射してバリを除去する。
【0010】
また、本発明の上記パッケージ基板の切削方法においては、環状フレームに粘着テープを貼着し環状フレームの中央の開口の粘着テープにパッケージ基板を貼着させワークセットを形成するワークセット形成工程の後に、粘着テープを介して保持テーブルがパッケージ基板を保持する保持工程を実施する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切削溝に沿って高圧水が噴射されることにより、凹部を備えたパッケージ基板において、凹部に形成されるバリを適切に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係るパッケージ基板の切削方法に用いられる切削装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る切削装置の模式図である。
図1Aは本実施の形態に係る切削装置の斜視図を示し、
図1Bは本実施の形態に係るパッケージ基板の部分拡大図である。なお、本実施の形態に係る切削装置は、
図1に示す構成に限定されない。本発明は、パッケージ基板を切削可能な切削装置であれば、どのような切削装置にも適用可能である。
【0014】
図1に示すように、切削装置1は、切削手段2に対して保持テーブル3を相対移動させることで、保持テーブル3に保持されたパッケージ基板W1を個々のチップC(
図6参照)に分割するように構成されている。また、切削装置1は、パッケージ基板W1に形成される切削溝に向かって高圧水噴射ノズル4から高圧水を噴射することにより、切削溝の周辺に形成されたバリを除去するように構成されている。
【0015】
本実施の形態に係るパッケージ基板W1は、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)等のパッケージ基板W1であり、IC、LSI等の回路が作り込まれた複数の半導体チップを配列させ、モールド樹脂等で封止して略長方形の板状に形成されている。より具体的には、パッケージ基板W1は、PCB基板等で形成される長方形の樹脂基板10の表面に複数(
図1では2つ)の樹脂製の凸部11が長手方向に並んで設けて構成される。また、パッケージ基板W1は、凸部11に形成される半導体デバイス用の複数のデバイス領域と、デバイス領域の周囲の余剰領域とに分けられている。
【0016】
各デバイス領域は格子状の分割予定ラインLによって複数の領域に区画され、各領域に半導体デバイス(不図示)が配設されている。また、
図1Bに示すように、デバイス領域(凸部11)の表面には、分割予定ラインLを横断して所定の深さの凹部12(キャビティ)が形成されている(
図1Aにおいては不図示)。凹部12は、分割予定ラインLに直交する方向に延びる長穴形状を有しており、凹部12の短手方向の中心線と分割予定ラインLとが直交している。凹部12は、例えば、長手方向の幅が400μmで、短手方向の幅が100μmの寸法で所定の深さに形成される。
【0017】
パッケージ基板W1は、円形状の粘着テープTを介して環状フレームFに貼着されて、1つのワークセットWを形成する。このパッケージ基板W1(ワークセットW)は、余剰領域が端材として除去され、デバイス領域が分割予定ラインLに沿って個々のチップに分割される。なお、パッケージ基板W1は、半導体デバイス用の基板に限らず、LEDデバイス用の金属基板でもよい。また、チップ搭載後の基板に限らず、チップ搭載前の基板でもよい。パッケージ基板W1の凸部11は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂で形成されるが、樹脂基板10に凸部11を形成可能であれば、どのような樹脂でもよい。
【0018】
保持テーブル3は、円形状に形成されており、表面にはポーラスセラミック材によって保持面が形成されている。パッケージ基板W1は、保持面に生じる負圧によって吸引保持される。保持テーブル3の周囲には、エアー駆動式の4つのクランプ部30が設けられ、各クランプ部30によってパッケージ基板W1の周囲の環状フレームFが挟持固定される。また、保持テーブル3は、図示しない回転手段によって自転可能に構成されると共に、図示しないボールネジ式の移動手段によってX軸方向(切削送り方向)に移動可能に構成されている。
【0019】
切削手段2は、保持テーブル3の上方に設けられており、スピンドル20の先端に切削ブレード21を装着して構成される。パッケージ基板W1の表面から切削ブレード21を切り込ませてパッケージ基板W1を切削することにより、切削ブレード21の厚みに応じた幅の切削溝がパッケージ基板W1に形成される。切削手段2は、図示しない割出し送り手段によってY軸方向に割出し送り可能に構成されると共に、図示しない昇降手段によってZ軸方向に移動可能に構成される。
【0020】
高圧水噴射ノズル4は、例えば、ウォータージェットソーに用いられるウォータージェットノズルで構成され、図示しない固定部によって切削手段2に固定されている。これにより、高圧水噴射ノズル4は、切削手段2と一体的に移動可能に構成される。高圧水噴射ノズル4は、鉛直方向に延びる円柱形状を有しており、下端には、パッケージ基板W1に向かって高圧水を噴射する噴射口(不図示)が形成されている。
【0021】
噴射口は、高圧水噴射ノズル4の内部に形成される流路(不図示)に連通されており、当該流路には、配管40を介して高圧水供給源(不図示)が接続されている。高圧水供給源は、コンプレッサ(不図示)によって圧力が高められた高圧水を高圧水噴射ノズル4に供給する。なお、噴射口は凹部12の幅より大きく形成され、例えば、300μmの外径を有している。なお、高圧水噴射ノズル4から噴射される高圧水の圧力は、パッケージ基板W1の凹部12を破壊しない程度に調整されることが好ましい。
【0022】
ところで、上記したように、加工対象となるパッケージ基板W1の凸部11の表面には、分割予定ラインL上で交差するように凹部12(キャビティ)が形成されている。この凹部12には、パッケージ基板W1が個々のチップに分割された後に電極が形成され、当該電極が、チップに形成される回路との接続端子となる凹部電極として機能する。分割予定ラインLに沿ってパッケージ基板W1を切削して個々のチップに分割した場合、凹部12が分割予定ラインLに沿って分断され、チップの切断面(側面)には凹部12が露出される。このとき、凹部12のエッジ部分には、凹部12の内側面に沿ってバリが形成される(
図4参照)。上記したように凹部12には、後の製造工程において電極が形成されるため、バリが形成されたまま製造工程が進んでしまうと、適切に電極を形成することができない。このため、凹部12周辺のバリは除去されることが好ましい。
【0023】
ここで、バリを除去するために、切削ブレード21の回転方向を切削加工時とは反対にし、先に切削した切削溝を再度なぞることが考えられるが、凹部12の内側面に沿って形成されるバリまでは適切に除去することができない。また、分割後にチップの上方から洗浄水を噴射してバリを洗い流すことも考えられるが、洗浄水の勢いによってチップが保持テーブル3(粘着テープT)から脱落してしまうおそれがあり、バリを十分に除去することができないという問題がある。
【0024】
そこで、本実施の形態に係るパッケージ基板W1の切削方法は、第1の切削工程においてパッケージ基板W1が完全切断されない程度に切削溝を形成し、バリ除去工程において切削溝に沿って高圧水を噴射した後、第2の切削工程においてパッケージ基板W1を完全切断するように構成している。これにより、バリ除去工程では、パッケージ基板W1が完全切断されない状態で切削溝に高圧水が噴射されるため、高圧水によってチップが保持テーブル3(粘着テープT)から脱落するのを気にする必要がない。この結果、一般的に用いられる高圧水洗浄ノズル(例えば、水圧が1MPa)とは異なり更に高圧タイプのウォータージェットノズル(例えば、水圧が20〜60MPa)を用いることができ、高圧水の圧力をより高めた状態で切削溝及び凹部12周辺のバリを適切に除去することが可能になる。
【0025】
次に、
図2から
図6を参照して、本実施の形態に係るパッケージ基板の切削方法について説明する。
図2は、本実施の形態に係るパッケージ基板のワークセット形成工程の一例を示す図である。
図3は、本実施の形態に係る保持工程の一例を示す図である。
図4は、本実施の形態に係る第1の切削工程の一例を示す図である。
図4Aは第1の切削工程の側面図であり、
図4Bは第1の切削工程の上面図の部分拡大図であり、
図4Cは
図4BのA−A線に沿う断面図である。
図5は、本実施の形態に係るバリ除去工程の一例を示す図である。
図5Aはバリ除去工程の側面図であり、
図5Bはバリ除去工程の上面図の部分拡大図であり、
図5Cはバリ除去工程の部分斜視図である。
図6は、本実施の形態に係る第2の切削工程の一例を示す図である。
図6Aは第2の切削工程の側面図であり、
図6Bは分割後のパッケージ基板の部分斜視図及びチップの拡大図である。なお、本実施の形態に係るパッケージ基板の切削方法は、以下に示す構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0026】
本実施の形態に係るパッケージ基板の切削方法は、ワークセット形成工程(
図2参照)と、保持工程(
図3参照)と、第1の切削工程(
図4参照)と、バリ除去工程(
図5参照)と、第2の切削工程(
図6参照)とがこの順番に実施されることにより、パッケージ基板W1を個々のチップCに分割するように構成されている。
【0027】
ワークセット形成工程では、粘着テープTを介して環状フレームFにパッケージ基板W1が貼着されることにより、ワークセットWが形成される。保持工程では、ワークセットW(パッケージ基板W1)が保持テーブル3に保持される。第1の切削工程では、パッケージ基板W1が分割予定ラインLに沿って切削され、所定の深さで切削溝Gが形成される。バリ除去工程では、切削溝Gに沿って高圧水が噴射される。第2の切削工程では、切削溝Gに沿ってパッケージ基板W1が完全切断されるまで切削される。以下、パッケージ基板W1の切削方法の各工程について説明する。
【0028】
先ず、ワークセット形成工程が実施される。
図2に示すように、ワークセット形成工程では、環状フレームFの下面に、粘着面を上方に向けた粘着テープTが貼着される。そして、環状フレームFの中央の開口の粘着テープTの上にパッケージ基板W1が貼着される。これにより、環状フレームF、粘着テープT及びパッケージ基板W1が一体となった1つのワークセットWが形成される。
【0029】
次に、保持工程が実施される。
図3に示すように、保持工程では、図示しない搬送手段により、パッケージ基板W1が保持テーブル3の中央に位置するように、ワークセットWが保持テーブル3に載置される。そして、各クランプ部30によってパッケージ基板W1の周囲の環状フレームFが挟持固定されると共に、保持面に生じる負圧によってパッケージ基板W1が粘着テープTを介して保持テーブル3に吸引保持される。
【0030】
次に、第1の切削工程が実施される。
図4Aに示すように、第1の切削工程では、パッケージ基板W1が保持テーブル3に保持された状態で、保持テーブル3が回転され、パッケージ基板W1の分割予定ラインLと保持テーブル3の切削送り方向(X軸方向)とが平行に合わせられる。そして、切削手段2がY軸方向に割出送りされ、パッケージ基板W1の分割予定ラインL上に切削ブレード21が位置付けられるように切削手段2の位置調整がなされる。
【0031】
次に、図示しない昇降手段によって切削手段2がZ軸方向に移動され、凹部12を完全切断可能であってパッケージ基板W1を完全切断しない高さまで切削ブレード21が降下される。そして、切削ブレード21や加工位置に切削水が供給されながら、高速回転する切削ブレード21に対して保持テーブル3がX軸方向に移動(切削送り)される。これにより、パッケージ基板W1が分割予定ラインLに沿って切削(ハーフカット)され、パッケージ基板W1には、分割予定ラインLに沿う切削溝Gが所定のカーフ幅(例えば、300μm)で形成される。このとき、切削溝Gは、凹部12の深さD1より大きくかつパッケージ基板W1の厚みT1を越えない深さD2で形成される(
図4C参照)。
【0032】
切削溝Gが形成された結果、
図4Bに示すように、凹部12が切削溝Gによって上面視半円状に分断され、パッケージ基板W1の切断面13a、13bに凹部12が露出される。このとき、切断面13a、13b(特に凹部12のエッジ部分)には、複数のバリBが形成される。このバリBは、保持テーブル3に対する切削ブレード21の切削送り方向(切削ブレード21の進行方向)に延びている。より具体的には、バリBは、切削送り方向手前側の凹部12のエッジ部分を基端として、凹部12の内側面に沿って巻き込まれるように形成され、ヒゲ状に渦巻いた形状を有している。
【0033】
なお、
図4においては、凹部12がパッケージ基板W1の厚みの約三分の一の深さを有しているが、この構成に限定されない。凹部12の深さは、後の製造工程で形成される電極の形状に応じて適宜変更が可能である。また、第1の切削工程では、凹部12が完全切断可能な深さD2でパッケージ基板W1をハーフカットする(切削溝Gを形成する)ことができればよい。
【0034】
一列の分割予定ラインLの切削が終了したら、切削手段2がY軸方向に割出し送りされ、隣接する分割予定ラインL上に切削ブレード21が位置付けられる。そして、新たな分割予定ラインLに沿って切削加工が実施される。この動作が一方向(長手方向)の全ての分割予定ラインLに沿って実施され、この結果、長手方向の分割予定ラインLに沿う所定深さの切削溝Gが形成される。
【0035】
次に、バリ除去工程が実施される。
図5に示すように、バリ除去工程では、第1の切削工程によって形成された切削溝Gの上方に高圧水噴射ノズル4の先端が位置付けられるように、切削手段2(
図1参照)のY軸方向の位置合わせがなされる(
図5A参照)。より具体的には、
図5Bに示すように、第1の切削工程において左右に分断された凹部12のうち、一方の凹部12側(右側)の上方に高圧水噴射ノズル4が位置付けられる。
【0036】
このとき、
図5Bに示すように、パッケージ基板W1の上面視において、凹部12の長手方向(パッケージ基板W1の短手方向)の凹み量が最も大きい各凹部12の側面位置を結んだ直線14上(
図5B中の二点鎖線参照)に高圧水噴射ノズル4の中心が位置付けられる。すなわち、切断面13aから距離X1(例えば、50μm)だけ離れた各凹部12の側面位置を結んだ直線14上に高圧水噴射ノズル4の中心が位置付けられる。
【0037】
そして、高圧水噴射ノズル4の先端からパッケージ基板W1の上面に向かって垂直に高圧水を噴射しながら保持テーブル3が切削送りされることにより、高圧水噴射ノズル4とパッケージ基板W1とが直線14に沿って相対移動される。なお、バリ除去工程においては、高圧水噴射ノズル4の進行方向が、第1の切削工程時の切削ブレード21の進行方向とは反対になるように切削送りされる。また、このとき、高圧水噴射ノズル4から噴出される高圧水は、パッケージ基板W1の上面を破損させない圧力でかつ、凹部12に形成されるバリBを除去できる圧力が必要である。
【0038】
高圧水噴射ノズル4が凹部12の真上に位置しない場合、高圧水はパッケージ基板W1(凸部11)の上面に噴射される。一方、高圧水噴射ノズル4が凹部12の真上に位置する場合、高圧水は凹部12の上面視半円部分の頂点位置付近に向かって直線状に噴射される。凹部12に噴射された高圧水は、凹部12の底面や内側面衝突し、跳ね返りながら凹部12の底面や内側面に沿って切削溝Gに向かって流れ込む。このとき、高圧水噴射ノズル4がバリBの形成される方向(第1の切削工程時の切削ブレード21の進行方向)とは反対に切削送りされるため、高圧水が凹部12の内面に沿ってバリBの先端から基端に向かって流れ込み易くなっている。これにより、高圧水でバリBを除去しつつ、当該バリBを凹部12から切削溝Gに向かって移動させることができる。
【0039】
高圧水噴射ノズル4がパッケージ基板W1の端まで相対的に切削送りされたら、高圧水噴射ノズル4(切削手段2)をY軸方向に割出し送りして、高圧水噴射ノズル4の中心が、上面視半円状の凹部12の底面上を通る直線上に位置合わせされる。より具体的には、切断面13aと直線14との間であって、切断面13aから距離X2だけ離れた直線15上に高圧水噴射ノズル4の中心が位置付けられる(
図5B参照)。直線15は、例えば、上面視半円状の各凹部12の重心を結んだ直線であることが好ましい。
【0040】
そして、高圧水噴射ノズル4の先端からパッケージ基板W1の上面に向かって垂直に高圧水を噴射しながら、第1の切削工程時の切削ブレード21の進行方向とは反対方向に保持テーブル3が切削送りされる。上記したように、高圧水噴射ノズル4が凹部12の真上に位置する場合は、凹部12の上面視半円部内に向かって高圧水が直線状に噴射される。凹部12内に噴射された高圧水は、凹部12の底面や内側面衝突し、跳ね返りながら凹部12の底面や内側面に沿って切削溝Gに向かって流れ込む。
【0041】
また、高圧水噴射ノズル4の中心を各凹部12の重心を結んだ直線15上に相対移動させることにより、らせん状に渦巻くバリBの基端ではなくバリBの先端部分に集中して高圧水を噴射することができる。バリBの先端に高圧水が衝突することで、バリBは基端部を支点とした梃子の力が作用し、バリBが凹部12から切り離され易くなる。また、凹部12の内側面に沿って高圧水がバリBの基端部に向かって上面視円弧状に流れ込むことによっても、バリBが凹部12から切り離され易くなる。このように、高圧水を切削溝Gの片側面(切断面13a)ずつバリBに向かって集中的に噴射(狙い撃ち)することにより、バリBを破壊しながら効果的に除去することが可能になる。バリBは、凹部12から除去された後、高圧水と共に切削溝Gに流れ込みパッケージ基板W1から洗い流される。
【0042】
切削溝Gの一方の側面(切断面13a)に対して高圧水を噴射しながらパッケージ基板W1が切削送りされた後、およそ凹部12の長手方向の長さ分だけ切削手段2(高圧水噴射ノズル4)が割出し送りされ、再び、切削溝Gに対して高圧水を噴射しながらパッケージ基板W1が切削送りされる。これにより、切削溝Gの他方の側面(切断面13b)においてもバリBが除去される結果、一列の切削溝Gの両側面(両切断面13a、13b)に対してバリ除去工程が実施される。そして、分割予定ラインLのピッチ分だけ切削手段2(高圧水噴射ノズル4)が割出し送りされ、隣接する分割予定ラインLに対しても高圧水噴射と切削送りとが繰り返される。この結果、パッケージ基板W1の長手方向における全ての分割予定ラインLにおいてバリ除去工程が実施される。
【0043】
次に、第2の切削工程が実施される。
図6に示すように、第2の切削工程では、バリBが除去された後の切削溝Gが再び切り込まれ、パッケージ基板W1が分割される深さまで切り込まれる。具体的には、上記した切削溝Gに対して切削ブレード21がY軸方向に位置合わせされ、切削ブレード21が、粘着テープTの厚みの途中まで切込み可能な高さまで降下される。そして、保持テーブル3(パッケージ基板W1)が切削送りされることにより、パッケージ基板W1がさらに切り込まれ、切削溝Gの深さが拡大された結果、パッケージ基板W1が分割される。
【0044】
上記したように、第1の切削工程において、切削溝Gが凹部12の深さD1より大きい深さD2で形成され、凹部12に形成されたバリBはバリ除去工程において除去されている。このため、第2の切削工程において切削溝Gの再び切削されて深さが拡大されても、新たに凹部12内にバリBが形成されることはない。そして、分割予定ラインLのピッチ分だけ切削手段2が割出し送りされ、隣接する分割予定ラインLに対しても切削ブレード21の対する保持テーブル3の切削送りが繰り返されることにより、パッケージ基板W1の長手方向における全ての分割予定ラインLにおいてパッケージ基板W1が分割される。
【0045】
第2の切削工程が終わった後、保持テーブル3を90°回転させ、パッケージ基板W1の短手方向の全ての分割予定ラインLについても、粘着テープTの厚みの途中まで切込む深さでパッケージ基板W1を切削することにより、
図6Bに示すように、パッケージ基板W1を個々のチップCに分割することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態に係るパッケージ基板W1の切削方法によれば、第1の切削工程においてパッケージ基板W1が完全切断されない程度に切削溝Gが形成された後、バリ除去工程において切削溝Gに沿って高圧水が噴射されることにより、切削溝G及び凹部12に形成されるバリBが除去される。そして、第2の切削工程においてパッケージ基板W1が切削溝Gに沿って完全切断されることにより、パッケージ基板W1が個々のチップCに分割される。このように、切削溝Gに沿って高圧水が噴射されることにより、凹部12にも高圧水が噴射される結果、凹部12を備えたパッケージ基板W1であっても、凹部12に形成されるバリBを適切に除去することができる。また、パッケージ基板W1が完全切断されない状態で切削溝Gに高圧水が噴射されるため、高圧水によってチップが保持テーブル3から脱落するのを気にする必要がなく、高圧水の圧力をより高めた状態でバリ除去工程を実施することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0048】
例えば、上記した実施の形態において、凹部12が上面視長穴形状に形成される構成としたが、この構成に限定されない。凹部12は、例えば、上面視矩形状に形成されてもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態において、高圧水噴射ノズル4(噴射口)が凹部12の短手方向の幅より大きい外径を有する構成としたが、この構成に限定されない。高圧水噴射ノズル4の外径は、凹部12の短手方向の幅に等しくてもよく、又は、凹部12の短手方向の幅より小さくしてもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態において、バリ除去工程では、高圧水ノズル4を直線14に沿って相対的に切削送りした後、直線15に沿って相対的に切削送りする構成としたが、この構成に限定されない。バリ除去工程では、高圧水ノズル4を直線15に沿って相対的に切削送りした後、直線14に沿って相対的に切削送りしてもよい。この場合、バリBを効果的に破壊しながら除去した後に、バリBを凹部12の内側面から綺麗に洗い流すことが可能になる。
【0051】
また、上記した実施の形態において、パッケージ基板W1の長手方向の分割予定ラインLに沿って切削加工した後に、短手方向の分割予定ラインLに沿って切削加工する構成としたが、この構成に限定されない。先に短手方向の分割予定ラインLに沿って切削加工する構成としてもよい。