(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588260
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】ポンプ及びこれを備えたポンプ機場
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20191001BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20191001BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20191001BHJP
F04D 29/046 20060101ALI20191001BHJP
F04D 13/16 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
F04D29/58 D
F04D29/00 B
F04D29/60 D
F04D29/046 C
F04D13/16 Y
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-138797(P2015-138797)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-20418(P2017-20418A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
(72)【発明者】
【氏名】内田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】小宮 真
(72)【発明者】
【氏名】中田 渉二朗
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和彦
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−083242(JP,A)
【文献】
実開昭56−136473(JP,U)
【文献】
特開2002−310088(JP,A)
【文献】
特開2001−073982(JP,A)
【文献】
特開2015−105569(JP,A)
【文献】
特開平04−269395(JP,A)
【文献】
実開昭57−063992(JP,U)
【文献】
特開2008−267215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/00 − 29/60
F04D 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚水を汲み上げるポンプであって、
一端側に羽根車が取り付けられる主軸と、
前記主軸の少なくとも一部を取り囲むポンプケーシングと、
前記主軸の他端側に接続される駆動軸を有し、前記ポンプケーシングの外側に配置される耐水電動機と、
前記耐水電動機の熱を前記揚水に伝達して前記耐水電動機を冷却するように構成される冷却ボックスと、
前記冷却ボックス内に前記揚水を供給するように構成される冷却給水管と、
前記冷却ボックス内に供給された前記揚水を排出するように構成される排出管と、
前記ポンプケーシング内に設けられ、前記主軸及び前記羽根車の重量並びに流体スラスト力を支持するためのスラスト軸受と、
前記主軸の他端側と前記駆動軸とを鉛直方向及び水平方向に変形裕度を有して連結するように構成された継手と、を有し、
前記耐水電動機は、前記耐水電動機から発生した熱を外部に放出するための放熱部を有し、
前記放熱部は、前記冷却ボックスの内部に配置され、前記冷却ボックスに供給される前記揚水に接触して前記揚水に前記熱を伝達するように構成され、
前記継手は、前記ポンプケーシングの外部に配置される、ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載されたポンプにおいて、
前記冷却ボックス内に水を供給するように構成される補給水管を有し、
前記冷却給水管及び前記補給水管は、開閉可能な弁を有する、ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたポンプにおいて、
前記冷却ボックスは、着脱可能なカバーを有する、ポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載されたポンプと、
前記ポンプを設置するための基礎床と、
前記ポンプに揚水される液体を貯留するための吸込水槽と、
前記ポンプにより揚水された液体を貯留するための吐水槽と、を有する、ポンプ機場。
【請求項5】
請求項4に記載されたポンプ機場において、
前記冷却給水管は、その一端が前記冷却ボックスに接続され、その他端が前記ポンプケーシングの吐出管又は前記吐水槽に接続され、
前記排出管は、その一端が前記冷却ボックスに接続され、その他端が、前記ポンプケーシングの前記吐出管、前記吸込水槽、又は前記吐水槽に接続される、ポンプ機場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ及びこれを備えた排水機場等の水を揚水するポンプ機場に関し、特に、津波や高潮等により電動機が冠水しても運転を継続可能なポンプ及びポンプ機場に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水ポンプ設備や排水ポンプ設備(治水)では、容量が比較的大きく、口径500mmを超える立軸ポンプ等が設置されている。立軸ポンプを駆動するための駆動機には、主として電動機が用いられている。
【0003】
図5は、従来の立軸ポンプを示す概略図である。図示のように、立軸ポンプ100は、立軸ポンプ100を設置する基礎床110の上方に設けられる電動機101と、電動機101によって回転される回転軸102と、回転軸102の下方先端に設けられる羽根車103とを有する。回転軸102は、駆動機101から、基礎床110の下に設けられる巨大な吸込水槽111に向かって鉛直下方に延在する。
【0004】
立軸ポンプ100はさらに、略円筒状の吊下げ管105と、吊下げ管105の上端に接続される曲管104と、吊下げ管105の下側端部に設けられるポンプボウル106と、ポンプボウル106の下端側に設けられる吸込ベルマウス107と、を有する。電動機101は、曲管104より上方に位置する。このため、回転軸102は、曲管104に設けられた開口部を通じて電動機101に接続される。この開口部と回転軸102との間は、曲管104内の水が漏れないように密封される。
【0005】
近年、地震による津波や巨大台風による高潮等により、通常のポンプ機場では、ポンプ等の設備機器が冠水して使用困難となることが増えてきた。そこで、地震による津波や巨大台風による高潮等の災害時においても運転を継続可能なポンプ設備が求められている。
【0006】
ところで、津波や高潮等によりポンプ機場内に水が浸入した場合でも継続的に運転できるようにするため、水中ポンプ等に用いられる耐水電動機を立軸ポンプの駆動機として用いた立軸ポンプが提案されている(特許文献1参照)。この立軸ポンプでは、ポンプの取り扱い流体で電動機が冷却される。
【0007】
図6は、特許文献1に記載された従来の立軸ポンプ内の流体の流れを説明する概略図である。図示のように、この立軸ポンプの曲管121は、その鉛直方向上方位置に開口を有し、この開口には耐水モータ120を取り付ける円筒状のモータ取付部122が形成される。モータ取付部122には、その開口を水密に覆うように耐水モータ120が取り付けられる。曲管121と耐水モータ120との間は、熱交換器123により区画される。立軸ポンプにより組み上げられた揚水は、熱交換器123に接触し、耐水モータ120の熱が揚水に伝達され、耐水モータ120が冷却される。耐水モータ120の出力軸124は、シャフトカップリング125によって、主軸126に一体的に連結されている。しかしながら、このような立軸ポンプには、以下に述べるいくつかの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−83242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第一に、立軸ポンプによる水の流れにおいては、通常であれば下方の羽根車から揚水された水が、曲管により滑らかに水平方向に向きを変えて吐き出される。しかしながら、特許文献1に開示された構造では、
図6の破線矢印で示される流れF1のように、流れが停滞するよどみ部が発生する。即ち、よどみ部が発生するということは、本来であれば、曲管によって滑らかに流れていた流れが、よどみ部によって滑らかに流れなくなることを意味する。したがって、ポンプ効率の低下を招くことになり、必要な揚程と流量を確保するには更に大きな電動機が必要になることもある。
【0010】
第二に、熱交換器123に接触して熱交換された流体が、よどみ部から適切に排出されないので、冷却効率が悪いという構造的な課題がある。特に、よどみ部は流体流路の上部に位置するので、熱が上部に滞留しやすく、強制的な流体移動を行わなければ熱交換効率が悪くなるという欠点がある。
【0011】
さらに、この立軸ポンプが、汚水ポンプ等の塵芥を含む流体を取り扱っているポンプである場合は、塵芥を含む流体が熱交換器123に接触する。上述したように、熱交換器123付近にはよどみ部が発生するので、熱交換器123が有するフィン等に塵芥が絡む虞がある。この場合、熱交換を行うことができなくなり、立軸ポンプに不具合が発生する虞がある。特に、水より比重の小さい物質や布等の塵芥は、高速の流体の流れに巻き込まれて立軸ポンプに吸い込まれ、流速の低下したよどみ部において浮遊滞留する。この塵芥が蓄積されると、熱交換が行われないという事態が生じる。
【0012】
第三に、ポンプケーシング(曲管121)に耐水モータ120が直接設置されるので、羽根車を含む回転体の重量及びポンプ運転時の流体スラスト力を受ける軸受を立軸ポンプ側に設けることができない。このため、耐水モータ120が、これらの荷重を受けることができるように設計される必要がある。したがって、耐水モータ120の設計が特殊となり、費用が増大し且つ納期が長くなる。また、耐水モータ120が特注品となるので、万が一故障が発生した場合に代替品の供給が困難になる等の課題がある。
【0013】
第四に、特許文献1に記載された立軸ポンプでは、
図6に示すように主軸126と耐水モータ120の出力軸124とがシャフトカップリング125によって直接接続されている。しかしながら、これらの軸を直接接続する方式では、ポンプ機場において主軸126と出力軸124の位置決め・組み立て・接合に高い精度が求められるので、接続作業が困難である。このため、主軸126と出力軸124との位置関係を調整するために、製作工場で予めこれらの軸を結合した状態にして、これらの軸をポンプ機場に搬出することが必要となる。しかしながら、通常は、耐水モータ120と立軸ポンプの製作場所(工場)は異なるので、耐水モータ120と主軸126の接合組み立てを行うために、いずれかの工場に耐水モータ120と主軸126を集める必要がある。したがって、これらの軸の接続作業の効率が悪くなる。
【0014】
また、電動機のメンテナンス・サイクルと立軸ポンプのメンテナンス・サイクルは必ずしも一致しない。このため、例えば電動機の巻線の劣化等、立軸ポンプに比べてメンテナンス・サイクルが短い電動機の整備時には、一般的には、現地において電動機を立軸ポンプから取り外し、電動機のみを搬出することが行われる。しかしながら、特許文献1に記載された立軸ポンプでは、耐水モータ120の分割搬出は困難であり、整備が不要な立軸ポンプ本体と共に搬出しなければならない等の課題がある。
【0015】
したがって、立軸ポンプの初期据付時及びメンテナンス時の両方において、耐水モータ120と立軸ポンプ本体とを組み立てた(結合した)状態で、搬入及び据え付けが行われる。このため、耐水モータ120及び立軸ポンプ本体を吊り上げるために、高い性能のク
レーンが必要となる。また、ポンプ機場の建屋に、耐水モータ120と立軸ポンプ本体のための吊り上げ高さが必要になるので、建屋の高さを高く設計しなければならない。
【0016】
第五に、耐水モータ120は、立軸ポンプの取扱液(揚水)のみを使用して冷却されるので、水を揚水しない空運転を行う先行待機型の立軸ポンプでは、耐水モータ120の冷却を行うことができない。
【0017】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、ポンプ効率に悪影響を与えることなく、電動機を冷却することである。
【0018】
また、本発明の他の目的の一つは、ポンプの運転に伴う冷却効率の低下を抑制しつつ、電動機を冷却することである。
【0019】
また、本発明の他の目的の一つは、ポンプ運転時の回転体の荷重及び流体スラスト力をスラスト軸受で適切に支持することである。
【0020】
また、本発明の他の目的の一つは、電動機と立軸ポンプの組み立て、据え付けを容易にすることである。
【0021】
また、本発明の他の目的の一つは、先行待機運転中でも、電動機を冷却することである。
【0022】
本発明は、上記の目的の少なくとも一つを解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一形態によれば、揚水を汲み上げるポンプが提供される。このポンプは、一端側に羽根車が取り付けられる主軸と、前記主軸の少なくとも一部を取り囲むポンプケーシングと、前記主軸の他端側に接続される駆動軸を有し、前記ポンプケーシングの外側に配置される耐水電動機と、前記耐水電動機の熱を前記揚水に伝達して前記耐水電動機を冷却するように構成される冷却ボックスと、前記冷却ボックス内に前記揚水を供給するように構成される冷却給水管と、前記冷却ボックス内に供給された前記揚水を排出するように構成される排出管と、を有する。本形態によれば、ポンプが汲み上げた揚水を、冷却給水管を通じて冷却ボックスに供給し、耐水電動機を冷却することができる。したがって、ポンプ内によどみ部が生じることがないので、ポンプ効率に悪影響を与えることなく、耐水電動機を冷却することができる。
【0024】
本発明によれば、上記ポンプの一形態において、前記耐水電動機は、前記耐水電動機から発生した熱を外部に放出するための放熱部を有し、前記放熱部は、前記冷却ボックスの内部に配置され、前記冷却ボックスに供給される前記揚水に接触して前記揚水に前記熱を伝達するように構成される。本形態によれば、放熱部が冷却ボックス内に配置され、揚水が放熱部に接触するので、より効率よく耐水電動機を冷却することができる。
【0025】
本発明によれば、上記ポンプの一形態において、ポンプは、前記主軸及び前記羽根車の重量並びに流体スラスト力を支持するためのスラスト軸受を有する。本形態によれば、スラスト軸受が主軸の軸方向に加わる力を支持するので、電動機に荷重を支持する設計を求める必要がなくなる。したがって、耐水電動機の設計を特殊なものにする必要が無くなり、費用の増大及び納期の長期化を防止することができる。また、耐水電動機を特注品にする必要がないので、万が一の故障の場合に代替品を容易に供給することができる。
【0026】
本発明によれば、上記ポンプの一形態において、ポンプは、前記主軸の他端側と前記駆
動軸とを鉛直方向及び水平方向に変形裕度を有して連結するように構成された継手を有する。本形態によれば、現地における駆動軸と主軸の位置決め、組立、及び据え付けに高い精度がなくても容易にこれらを結合/分離することができる。
【0027】
本発明によれば、上記ポンプの一形態において、ポンプは、前記冷却ボックス内に水を供給するように構成される補給水管を有し、前記冷却給水管及び前記補給水管は、開閉可能な弁を有する。本形態によれば、ポンプケーシング内に揚水が無く、気中でポンプが運転している状態でも、冷却ボックスへ水を供給することができる。また、冷却給水管及び補給水管の弁を開閉することにより、ポンプが揚水しているときは、冷却給水管を介して冷却ボックスに揚水を供給し、ポンプが気中運転をしているときは、補給水管から水を冷却ボックスに供給することができる。
【0028】
本発明によれば、上記ポンプの一形態において、前記冷却ボックスは、着脱可能なカバーを有する。この形態によれば、カバーを取り外すことで、冷却ボックスの内部を容易にメンテナンスすることができる。
【0029】
本発明の一形態によれば、ポンプ機場が提供される。このポンプ機場は、前記ポンプと、前記ポンプを設置するための基礎床と、前記ポンプに揚水される液体を貯留するための吸込水槽と、前記ポンプにより揚水された液体を貯留するための吐水槽と、を有する。
【0030】
本発明によれば、上記ポンプ機場の一形態において、前記冷却給水管は、その一端が前記冷却ボックスに接続され、その他端が前記ポンプケーシングの吐出管又は前記吐水槽に接続され、前記排出管は、その一端が前記冷却ボックスに接続され、その他端が、前記ポンプケーシングの前記吐出管、前記吸込水槽、又は前記吐水槽に接続される。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一つによれば、ポンプ効率に悪影響を与えることなく、電動機を冷却することができる。
【0032】
本発明の一つによれば、ポンプの運転に伴う冷却効率の低下を抑制しつつ、電動機を冷却することができる。
【0033】
本発明の一つによれば、ポンプ運転時の回転体の荷重及び流体スラスト力をスラスト軸受で適切に支持することができる。
【0034】
本発明の一つによれば、電動機と立軸ポンプの組み立て、据え付けを容易にすることができる。
【0035】
本発明の一つによれば、先行待機運転中でも、電動機を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本実施形態に係る立軸ポンプ及びポンプ機場を示す概略図である。
【
図2】冷却給水管を別の位置に接続した例を示す概略図である。
【
図3】冷却給水管を別の位置に接続した例を示す概略図である。
【
図6】従来の立軸ポンプ内の流体の流れを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面におい
て、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明のポンプの一例として立軸ポンプが説明される。
【0038】
図1は、本実施形態に係る立軸ポンプ及びポンプ機場を示す概略図である。本実施形態に係るポンプ機場50は、立軸ポンプ10と、立軸ポンプ10を設置するための基礎床51と、立軸ポンプ10に揚水される液体(水等)を貯留するための吸込水槽52と、立軸ポンプ10により揚水された液体を貯留するための吐水槽53とを有する。
【0039】
立軸ポンプ10は、基礎床51の上方に設けられる電動機11と、電動機11によって回転される回転軸12(主軸の一例に相当する)と、回転軸12の一端側に設けられる羽根車13と、前記回転軸12の少なくとも一部を取り囲むポンプケーシング20と、を有する。回転軸12は、電動機11から、基礎床51の下に設けられる巨大な吸込水槽52に向かって鉛直下方に延在する。基礎床51上には、電動機11を設置するための電動機架台14が設けられる。
【0040】
ポンプケーシング20は、下端に吸込孔を有し、略鉛直方向に延在する吊下げ管21と、略水平方向に延在する吐出管22と、吊下げ管21と吐出管22とを接続する曲管23と、を有する。曲管23は、その一端が吊下げ管21の上端に接続され、その他端が前記吐出管22に接続される。吊下げ管21は、その下側端部に設けられるポンプボウル17と、ポンプボウル17の下端側に設けられる吸込ベルマウス18と、を有する。ポンプボウル17及び吸込ベルマウス18は、羽根車13を収容する。
【0041】
電動機11は、ポンプケーシング20の外側に配置される。具体的には、電動機11は、電動機架台14に設置され、曲管23より上方に位置する。このため、回転軸12は、曲管23に設けられた開口部を貫通して電動機11に接続される。この開口部と回転軸12との隙間は、曲管23内の水が漏れないように密封される。
【0042】
電動機11は、その外郭がモータケーシング11aにより覆われており、モータケーシング11aの下面から出力軸11bが延在する。モータケーシング11aの内部には、空気が充填され、気密に維持される。即ち、電動機11は、モータケーシング11a内部に水が入り込まないように密閉された、耐水型の電動機である。また、モータケーシング11aの外部には、電動機11を冷却するための冷却媒体が流通する冷却ジャケット11cが密着して取り付けられる。即ち、電動機11は、内部循環式の電動機でもある。冷却ジャケット11c内の冷却媒体は、例えば冷却ジャケット11c内に設けられる図示しない循環手段により循環される。
【0043】
電動機11のモータケーシング11aの下面には、電動機11から発生した熱を外部に放出するための熱交換部11d(放熱部の一例に相当する)が設けられる。また、電動機11の下部には、電動機11の熱を揚水に伝達して電動機11を冷却するように構成される冷却ボックス30が設けられる。冷却ボックス30は、電動機11の熱交換部11dがその内部に配置されるように、電動機11のモータケーシング11aに密着して取り付けられる。冷却ボックス30内は空洞になっており、電動機11の出力軸11bがこの空洞を鉛直方向に貫通するように構成される。後述するように、冷却ボックス30内に供給される揚水又は水等が電動機11の熱交換部11dに接触することで、熱交換部11dを介して電動機11の内部及び冷却ジャケット11c内の冷却媒体が冷却される。したがって、電動機11の出力軸11bと冷却ボックス30との間は適切に密閉され、冷却ボックス30内の揚水又は水等が外部に漏れることが防止される。
【0044】
冷却ボックス30は、電動機11と結合した状態で、電動機架台14の頂部に据え付け
られる。なお、冷却ボックス30は、電動機架台14に据え付けられた電動機11に直接支持されてもよい。電動機架台14は、メンテナンス時等に作業員が出力軸11bに接触可能なように、図示しないメンテナンス用入口を有し、且つその内部に空間14aを有している。
【0045】
電動機架台14の頂部は、曲管23よりも高い位置にあり、曲管23から離間している。電動機11の出力軸11bは、継手16により結合/分離可能に回転軸12と接続される。継手16は、回転軸12と出力軸11bとを鉛直方向及び水平方向に変形裕度を有して連結可能に構成される、例えばたわみ継手又は自在継手等であることが好ましい。この継手16がたわみ継手又は自在継手等であることにより、現地における出力軸11bと回転軸12との位置決め、組立、及び据え付けに高い精度が無くても容易にこれらを結合/分離することができる。
【0046】
また、図示の例のように、立軸ポンプ10は、曲管23内部に、回転軸12及び羽根車13の荷重、並びにポンプ運転時の流体スラスト力を支持するスラスト軸受15を有することが好ましい。したがって、スラスト軸受15において、電動機11を立軸ポンプ10から分離することも可能である。また、スラスト軸受15が、回転軸12の軸方向に加わる力を支持するので、電動機11に荷重を支持する設計を求める必要がなくなる。したがって、電動機11の設計を特殊なものにする必要が無くなり、費用の増大及び納期の長期化を防止することができる。また、電動機11が特注品ではなくなるので、万が一の故障の場合の代替品の供給も容易に行うことができる。
【0047】
また、電動機架台14は、上述したように、図示しないメンテナンス用入口を有し、且つその内部に空間14aを有しているので、継手16を、曲管23と電動機架台14の頂部との間に配置することができる。また、この空間14aに作業員が入り込むことができるので、曲管23に設けられるスラスト軸受15に作業員が容易に接触することができる。したがって、出力軸11bと回転軸12とを、容易に分解及び組立を行うことができ、且つスラスト軸受15の交換等も容易に行うことができる。
【0048】
立軸ポンプ10の吐出管22は、吐出管22を開閉するための吐出弁22aを有する。また、吐出管22には、冷却ボックス30内に揚水の一部を供給するように構成される冷却給水管24が設けられる。具体的には、冷却給水管24は、一端が冷却ボックス30に接続され、他端が吐出管22に接続される。冷却給水管24の径は、吐出管22に比べて非常に小さい。立軸ポンプ10が吸込水槽52から揚水をくみ上げたとき、その揚水は、冷却給水管24を通じて冷却ボックス30内に供給される。冷却ボックス30内に供給された揚水は熱交換部11dに接触し、電動機11の熱が揚水に伝達される。
【0049】
また、冷却給水管24は、冷却給水管24を開閉するための弁24aを有する。弁24aを閉じることで、冷却ボックス30内への揚水の供給を停止させることができる。なお、冷却給水管24は、吐出管22ではなく、曲管23等のポンプケーシング20の他の部分に接続されていてもよい。また、この冷却給水管24は、立軸ポンプ10の空気抜き配管と兼用してもよい。
【0050】
冷却ボックス30は、冷却ボックス30内に供給された揚水を排出するように構成される排出管25を有する。具体的には、排出管25は、一端が冷却ボックス30に接続され、他端が吸込水槽52に接続される。冷却ボックス30において熱交換部11dと熱交換を行った揚水は、排出管25を通じて吸込水槽52に戻される。なお、排出管25は、吸込水槽52ではなく、吐水槽53又は吐出管22に接続されていてもよい。この場合、立軸ポンプ10が汲み上げた揚水を全て吐出側に排出することができ、より揚水効率の低下を抑制することができる。なお、排出管25の一端が吐出管22に接続される場合は、排
出管25の吐出管22との接続部分は、冷却給水管24の吐出管22との接続部分よりも下流側に位置する。
【0051】
また、排出管25は、排出管25を開閉するための弁25aを有する。弁25aを閉じることで、吸込水槽52への揚水の供給を停止させることができる。また、弁24a及び弁25aが、それぞれ冷却給水管24及び排出管25に設けられているので、電動機11を、弁24a及び弁25aを境界として、立軸ポンプ10から分離することができる。
【0052】
図示の例のように、立軸ポンプ10は、冷却給水管24とは別に、冷却ボックス30内に水を供給するように構成される補給水管26を有していてもよい。補給水管26は、一端が冷却ボックス30に接続され、他端が図示しない水源に接続される。補給水管26は、補給水管26を開閉するための弁26aを有する。弁26aを開けることで、冷却ボックス30へ水が供給される。この補給水管26により、ポンプケーシング20内に揚水が無く、気中で羽根車13が回転している状態でも、冷却ボックス30へ水を供給することができる。このため、立軸ポンプ10が先行待機運転を行っている最中であっても、電動機11の冷却を継続的に行うことができる。したがって、立軸ポンプ10は、先行待機型のポンプとしても使用可能である。なお、この補給水管26は必須ではなく、補給水管26がなくとも、立軸ポンプ10が揚水運転をしているときは、冷却給水管24により冷却ボックス30に揚水を供給することができる。
【0053】
上述したように、冷却給水管24及び補給水管26は、それぞれ弁24a及び弁26aを有している。このため、弁24a及び弁26aを開閉することにより、立軸ポンプ10が揚水しているときは、冷却給水管24を介して冷却ボックス30に揚水を供給し、立軸ポンプ10が気中運転をしているときは、補給水管26から水を冷却ボックス30に供給することができる。即ち、冷却ボックス30に揚水又は水を供給する供給ラインを切り替えることができる。したがって、立軸ポンプ10の運転状況に応じて、適切な系統の冷却水を使用して電動機11を冷却することができる。
【0054】
また、補給水管26は、立軸ポンプ10の通常の運転時には水を供給せず、熱交換部11dを定期的にフラッシングするために水を供給するように構成されてもよい。これにより、熱交換部11dの汚物が付着することによる熱交換性能の低下を防止することができる。また、立軸ポンプ10が、例えば海水等の液質の悪い流体を取り扱う場合は、熱交換部11dの腐食を予防することができ、熱交換部11dの長寿命化を図ることができる。
【0055】
次に、
図1に示した冷却給水管24を別の位置に接続する例を説明する。
図2及び
図3は、冷却給水管24を別の位置に接続した例を示す概略図である。
図2に示す例では、吐出管22は、逆止弁22bを有し、吐水槽53(
図1参照)に向かう立ち上がり配管22cを有する。この場合、
図2に示すように、冷却給水管24は、逆止弁22bの2次側(下流側)の吐出管22に接続されてもよい。
【0056】
図3に示す例では、吐出管22は、吐水槽53に接続され、その吐出口22eに開閉可能なフラップ弁22dが設けられる。この場合、
図3に示すように、冷却給水管24は、吐水槽53に接続されてもよい。
【0057】
図2に示すように吐出管22が逆止弁22bを有する場合は、逆止弁22bの2次側に流入した揚水は逆止弁22bの1次側に逆流しない。また、吐出管22は、立ち上がり配管22cを有しているので、立軸ポンプ10が気中運転をしているときでも、逆止弁22bの2次側に流入した揚水は、吐水槽53へ流入せずに溜まっている場合がある。この場合、立軸ポンプ10が気中運転をしているときでも、逆止弁の2次側に溜まっている揚水を冷却ボックス30に供給することができる。
【0058】
また、
図3に示すように、吐水槽53には吐出された揚水が貯留しているので、吐水槽53から冷却給水管24を通じて冷却ボックス30に継続的に揚水を供給することができる。したがって、立軸ポンプ10が気中運転をしているときでも、吐水槽53内に貯留された揚水を冷却ボックス30に供給することができる。
【0059】
なお、
図2及び
図3に示したように冷却給水管24が、それぞれ吐出管22及び吐水槽53に接続されている場合、立軸ポンプ10が通常運転をしているとき(揚水時)はそれぞれの接続箇所の圧力は吐出圧になっている。このため、通常の揚水時であっても、冷却給水管24を介して冷却ボックス30へ揚水を供給することができる。即ち、揚水時であっても気中運転時であっても、冷却用の揚水の供給ラインを変更することなく、継続して一つの供給ラインで揚水を冷却ボックス30へ供給することができる。
【0060】
次に、冷却ボックス30について詳細に説明する。
図4は、
図1に示した冷却ボックス30の拡大図である。図示の例のように、冷却ボックス30は、図示しない点検口をその側面に有し、この点検口を封止するための着脱可能なカバー30aを有することが好ましい。カバー30aを取り外すと、冷却ボックス30の点検口を介して、冷却ボックス30の内部のメンテナンスを行うことができる。したがって、この冷却ボックス30においては、点検口を介して熱交換部11dの清掃を容易に行うことができ、熱交換部11dの汚れによる熱交換性能の低下を防止することができる。また、カバー30aの少なくとも一部が、アクリル等の透明な板材から形成されていてもよい。この場合、カバー30aを冷却ボックス30に取り付けた状態で冷却ボックス30内を目視することができ、点検作業を容易に行うことができる。ひいては、立軸ポンプ10の信頼性を向上させることができる。
【0061】
以上で説明したように、立軸ポンプ10は、冷却給水管24により揚水を冷却ボックス30に供給し、冷却ボックス30により電動機11を冷却することができる。したがって、電動機11を冷却するために、ポンプケーシング20(曲管23)の形状を従来から変更する必要がないので、立軸ポンプ10の流体損失を増加させることがない。ひいては、ポンプケーシング内に流れのよどみ部は発生せず、ポンプ効率に与える悪影響がない。
【0062】
加えて、冷却ボックス30内にはよどみ部は発生せず、確実な流体の流れが発生するので、冷却ボックス30内には揚水中の塵芥が滞留せず、揚水又は水と電動機11との熱交換を確実に行うことができ、立軸ポンプ10の信頼性を向上させることができる。ひいては、立軸ポンプ10の運転に伴う、塵芥の滞留等による冷却効率の低下を抑制することができる。
【0063】
また、冷却給水管24の径は、吐出管22の径に対して非常に小さいので、揚水中の大きな塵芥が冷却給水管24内に入り込むことが抑制される。したがって、立軸ポンプ10が汲み上げた揚水中に含まれる比較的大きな塵芥が冷却ボックス30内の熱交換部11dに衝突して、熱交換部11dが損傷することが防止される。
【0064】
また、上述した立軸ポンプ10はスラスト軸受15を有するので、ポンプ運転時の回転軸12の荷重及び流体スラスト力をスラスト軸受15で適切に支持することができる。
【0065】
また、上述した立軸ポンプ10は、継手16及びスラスト軸受15を有するので、電動機11を回転軸12に対して容易に分離/結合することができる。ひいては、電動機11を立軸ポンプ10に容易に組立て及び据え付けを行うことができる。
【0066】
また、電動機11のみを分割して搬送することができる。したがって、立軸ポンプ10
をポンプ機場50に据え付けるときに必要なクレーンの性能及び吊り上げ高さを低減することができる。ひいては、ポンプ機場50全体としての経済性を向上し、製作性及び施工性を向上することができる。
【0067】
水撃対策のためのフライホイールを立軸ポンプ10又は電動機11の回転体(回転軸12、出力軸11b等)の任意の場所に取り付ける場合、電動機架台14の高さ及び大きさ等を調整することで、容易にフライホイールを回転体に取り付けることができる。また、比較的大きなフライホイールを回転体に取り付けることもできる。さらに、冷却ボックス30内にフライホイールの重量を支持する軸受を設けることもでき、電動機11又は立軸ポンプ10の特殊な設計を行うことなく、フライホイールの設置をすることができる。なお、フライホイールは電動機11や立軸ポンプ10と分離可能である。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 立軸ポンプ
11 電動機
11b 出力軸
11d 熱交換部
12 回転軸
13 羽根車
14 電動機架台
15 スラスト軸受
16 継手
20 ポンプケーシング
21 吊下げ管
22 吐出管
23 曲管
24 冷却給水管
24a,25a,26a 弁
25 排出管
26 補給水管
30 冷却ボックス
30a カバー
50 ポンプ機場
51 基礎床
52 吸込水槽
53 吐水槽