特許第6588274号(P6588274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6588274-搬送システム 図000002
  • 特許6588274-搬送システム 図000003
  • 特許6588274-搬送システム 図000004
  • 特許6588274-搬送システム 図000005
  • 特許6588274-搬送システム 図000006
  • 特許6588274-搬送システム 図000007
  • 特許6588274-搬送システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6588274
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20191001BHJP
【FI】
   B23P21/00 307E
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-168232(P2015-168232)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-42885(P2017-42885A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】西浦 崇郎
(72)【発明者】
【氏名】一村 洋平
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭62−061472(JP,B2)
【文献】 特開昭62−261583(JP,A)
【文献】 特開2009−286501(JP,A)
【文献】 特開2005−177905(JP,A)
【文献】 特開2001−195930(JP,A)
【文献】 特開2003−063489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
B61B 13/00
B65G 1/00− 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動作業台と、
該移動作業台の移動方向を規制するとともに、前記移動方向が変化する曲がり部が少なくともひとつ設けられたガイド機構とが備えられ、
前記移動作業台は、駆動手段、前記ガイド機構に係止する係止部、及び作業部を有し、
所定間隔を隔てて配置されるとともに、前記ガイド機構に対して複数係止するように複数の前記係止部が設けられ、
前記曲がり部より移動方向後方のガイド機構に前記係止部が脱出する複数の脱出路及び前記曲がり部より移動方向前方のガイド機構に前記係止部が進入する複数の進入路が設けられ、
前記移動方向前方の前記係止部は、前記移動方向後方の前記係止部より高く配置され、
前記脱出路には、
高く配置された前記移動方向前方の前記係止部が上方を通過し、前記移動方向後方の前記係止部を脱出方向にガイドする高さに形成したガイドが設けられ、
前記移動作業台が前記曲がり部で向きを変えることなく前記ガイド機構に沿って移動することを特徴とする
搬送システム。
【請求項2】
前記ガイド機構が少なくとも平面視コ字状であり、
前記移動作業台が、前記平面視コ字状の内側を移動する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
移動が同期した複数の前記移動作業台が備えられるとともに、
各移動作業台に、前記ガイド機構に沿って設定された複数の作業エリアに対する位置を検知する検知手段が備えられ、
前記曲がり部の近傍に、少なくとも前記移動作業台に対応する領域で、前記作業エリアを設定しない調整領域が設定され、
前記曲がり部を通過する前記移動作業台の速度が他の速度に比べて早く設定された
請求項1または2に記載の搬送システム。
【請求項4】
複数の前記移動作業台を識別し、各移動作業台の位置を制御する制御部が備えられた
請求項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記作業部が、水平な配索盤である
請求項1乃至のうちいずれかに記載の搬送システム。
【請求項6】
前記配索盤の平面視内側に、作業者が乗り込んで作業する内側作業部が設けられた
請求項に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の作業エリアでそれぞれ異なる作業を行い、ワイヤーハーネスなどの組立体を製造するようなライン作業を行うための搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に提案されるように、作業工程に応じた複数の作業エリアが搬送ラインに沿って設定され、各作業エリアでそれぞれの作業を行うため、搬送ラインに沿って部品を移動させる自走搬送車を備えた搬送システムがある。
【0003】
また、例えば、複雑な配索経路に沿って配索されるワイヤーハーネスは、特許文献2に示されるように、配索盤と呼ばれる作業台上で、実際の配索経路に即した配索状態で組み付けられ製造される。このようにして、配索盤上で組み付けられるワイヤーハーネスは複数の配索工程を経て製造されるため、作業台を上述のような搬送システムで移動させることで、製造効率の向上を図ることができると考えられる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような搬送システムの場合、搬送ラインに沿って自走搬送車が移動するため、その専有面積が大きくなる。スペースの有効活用やスペースの制限により搬送ラインに曲がり部を設けると、自走搬送車は搬送ラインに沿って移動するため、その向きが移動方向に伴って変化することとなる。自走搬送車の向きが移動に伴って変化すると、例えば上述のような配索作業を行うような大きな作業台の場合、その取り回しが大掛りになり、スペースの十分な有効活用が図れない、あるいはスペースの制限によって実現できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−66849号公報
【特許文献2】特開2005−222852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、配索盤のような大きな作業台を要する場合であっても、コンパクトなスペースで実現できる搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、移動作業台と、該移動作業台の移動方向を規制するとともに、前記移動方向が変化する曲がり部が少なくともひとつ設けられたガイド機構とが備えられ、前記移動作業台は、駆動手段、前記ガイド機構に係止する係止部、及び作業部を有し、所定間隔を隔てて配置されるとともに、前記ガイド機構に対して複数係止するように複数の前記係止部が設けられ、前記曲がり部より移動方向後方のガイド機構に前記係止部が脱出する複数の脱出路及び前記曲がり部より移動方向前方のガイド機構に前記係止部が進入する複数の進入路が設けられ、前記移動方向前方の前記係止部は、前記移動方向後方の前記係止部より高く配置され、前記脱出路には、高く配置された前記移動方向前方の前記係止部が上方を通過し、前記移動方向後方の前記係止部を脱出方向にガイドする高さに形成したガイドが設けられ、前記移動作業台が前記曲がり部で向きを変えることなく前記ガイド機構に沿って移動することを特徴とする搬送システムであることを特徴とする。
前記ガイド機構は、例えば搬送レールなど係止部が係止してガイドできればいずれの構造であってもよい。
【0008】
この発明により、例えば配索盤のような大きな作業台を要する場合であっても、搬送システムをコンパクトなスペースで実現することができる。
詳述すると、移動方向が変化する曲がり部が少なくともひとつ設けられた前記ガイド機構に対して係止部が係止して移動する移動作業台車が前記曲がり部で向きを変えることなくガイド機構に沿って移動するため、配索盤のようなサイズの大きな作業台であっても、大きな作業台を取り回す必要がなく、スペースの有効活用が可能となり、スペースの制限に対しても実現することができる。
【0009】
また、所定間隔を隔てて配置されるとともに、前記ガイド機構に対して複数係止するように複数の前記係止部が設けられ、前記曲がり部より移動方向後方のガイド機構に前記係止部が脱出する脱出路及び前記曲がり部より移動方向前方のガイド機構に前記係止部が進入する進入路を設けることにより、複数の係止部が所定間隔を隔てて係止するため、ガイド機構に沿って移動作業台が安定して移動することができる。
【0010】
また、曲がり部を通過して前方に移動した際、曲がり部より後方のガイド機構に係止したままの係止部があると、移動作業台の向きが変化することとなるが、曲がり部より後方の係止部が脱出路から脱出するため、移動作業台の向きを変化させることなく、移動作業台が曲がり部を通過することができる。
【0011】
さらに、曲がり部を通過した移動作業台の係止部を、曲がり部より前方のガイド機構に進入路から進入させることができるため、曲がり部を通過した後のガイド機構に対しても複数の係止部が係止し、曲がり部を通過した移動作業台も向きが安定した状態で移動することができる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記ガイド機構が少なくとも平面視コ字状であり、前記移動作業台が、前記平面視コ字状の内側を移動することができる。
上述の前記ガイド機構が少なくとも平面視コ字状であるとは、平面視U字状、平面視L字状、あるいは平面視J字状であってもよく、さらにはロ字状であってもよい。
【0013】
この発明により、さらにスペースを有効活用することができる。
詳述すると、前記平面視コ字状のガイド機構に沿って、平面視コ字状の外側を移動作業台が移動する場合、その移動範囲は前記平面視コ字状より大きくなり、平面視コ字状の内側がデッドスペースとなるが、平面視コ字状の内側を移動作業台が前記曲がり部で向きを変えることなくガイド機構に沿って移動することで、その移動範囲は平面視コ字状より狭くなり、デッドスペースを有効活用し、省スペース化を図ることができる。
【0014】
さらにまた、平面視コ字状のガイド機構が移動作業台の移動範囲の外側となるため、ガイド機構は移動作業台の移動範囲の明示として機能し、移動する移動作業台と作業者との接触などを防止して、安全に作業することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、移動が同期した複数の前記移動作業台が備えられるとともに、各移動作業台に、前記ガイド機構に沿って設定された複数の作業エリアに対する位置を検知する検知手段が備えられ、前記曲がり部の近傍に、少なくとも前記移動作業台に対応する領域で、前記作業エリアを設定しない調整領域が設定され、前記曲がり部を通過する前記移動作業台の速度を他の速度に比べて早く設定することができる。
【0016】
この発明により作業性の低い曲がり部での作業を行うことなく、複数の作業エリアを移動する他の移動作業台と同期させることができる。
詳述すると、作業性の低い曲がり部の近傍に作業エリアを設けると、曲がり部の作業エリアでの作業時間が長くなり、移動が同期された複数の移動作業台全体の移動に遅れが生じ、全体の製造効率が低下する。
【0017】
これに対し、曲がり部に作業エリアを設けないことで、全作業エリアでの作業効率を均一化することができる。また、作業エリアを設けない曲がり部を早く通過させることで全体の製造効率の向上を図るものの、複数の移動作業台の移動が同期されているため、曲がり部のみ移動作業台の移動速度を速くすると、移動方向前方の移動作業台と衝突するおそれがある。そこで、前記曲がり部の近傍に、少なくとも前記移動作業台に対応する領域で、前記作業エリアを設定しない調整領域を設けることで、曲がり部を早く通過させながら、移動が同期した他の移動作業台と衝突するなどの不具合が生じることなく、スムーズに移動させて全体の製造効率の向上を図ることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、複数の前記移動作業台を識別し、各移動作業台の位置を制御する制御部を備えることができる。
この発明により、各作業エリアを移動する複数の移動作業台を安全に管理・制御することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記作業部を、水平な配索盤とすることができる。
この発明により、配索作業にとって作業性の高い水平な配索盤上で効率よく、配索作業することができ、製造効率を向上させることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記配索盤の平面視内側に、作業者が乗り込んで作業する内側作業部を設けることができる。
この発明により、前記水平な配索盤の平面視内側からと外側とから配索作業ができるため、例えば車両一台分のワイヤーハーネスなど規模の大きな作業対象であっても効率よく作業することができる。
【0021】
なお、平面視内側に作業者が乗り込んで作業する内側作業部を設けることができる水平な配索盤としては、例えば、平面視H型、平面視略U字状、平面視コ字状、平面視L字状、平面視J字状、あるいは平面視S字状などが含まれる。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、配索盤のような大きな作業台を要する場合であっても、コンパクトなスペースで実現できる搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】移動作業台車の平面図。
図2】移動作業台車の説明図。
図3】搬送システムの概略ブロック図。
図4】搬送レール及び搬送システムの説明図。
図5】搬送レールの一部拡大平面図。
図6】搬送レールの一部拡大概略側面図。
図7】搬送レールの一部拡大概略斜視図。移動作業台の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は移動作業台車10の平面図を示し、図2は移動作業台車10の説明図を示していている、図2(a)は移動作業台車10の長手方向の側面図を示し、図2(b)は図2(a)におけるA−A断面図を示している。なお、図2において、作業状態をイメージしやすいように作業者Pを適宜図示している。
【0025】
また、図3は搬送システム1の概略ブロック図を示し、図4は搬送レール100及び搬送システム1の説明図を示している。詳しくは、図4(a)は搬送レール100の拡大平面図を示し、図4(b)は搬送システム1の概略図を示している。
【0026】
さらに、図5は搬送レール100の一部拡大平面図を示し、図6は搬送レール100の一部拡大概略側面図を示し、図7は搬送レール100の一部拡大概略斜視図を示している。なお、図7において手前側の側壁101の上側一部を透過状態で図示している。
【0027】
搬送システム1は、平面視略長方形状の搬送レール100と、搬送レール100に沿って移動する7台の移動作業台車10と、移動作業台車10を移動管理する管理装置200とで構成している。
【0028】
管理装置200は、7台の移動作業台車10の位置を制御するとともに、移動作業台車10の移動開始・停止を制御する管理用PCであり、CPU等で構成する制御部210と、マウスやキーボード等で構成する操作部220と、液晶モニタ等で構成する表示部230と、後述する移動作業台車10の送受信部80と無線通信する送受信部240と、適宜の制御プラグラムやログ情報を記憶する記憶部250とで構成している。
【0029】
移動作業台車10は、図1及び図2に示すように、平面視長方形状の台車20と、台車20上に配置された平面視H型の作業台30と、係止ベアリング40と、車輪50と、駆動部60と、作業台側制御部70と、送受信部80と、リーダ部90とで構成している。
【0030】
作業台30は、台車20上に配置され、図示省略する配索治具を上面に配置し、配索経路に沿って配索してワイヤーハーネス(図示省略)を製造する配索盤である。
なお、作業台30は、図1及び図2(a)に示すように、幅方向両側における長手方向の作業部と長手方向中央付近の幅方向の作業部とが形成され、内部で作業が可能な長手方向に向く平面視H型である。そのため、平面視H型の内側部分の台車20は、作業者Pが作業する内側作業部22とされている。
【0031】
台車20は、図示省略するフレーム構造であり、長手方向両側に手摺21を設け、底面側に、複数の車輪50と、駆動部60とを備え、さらに側方に突出するように係止ベアリング40を長手方向に適宜の間隔を隔てて設けている。なお、長手方向に手摺21を設けてもよく、あるいは安全上の問題がなければ手摺21を設けなくてもよい。
【0032】
係止ベアリング40は、台車20の幅方向両側において、幅方向外側向きに突出する態様で、長手方向に所定間隔を隔てて4つずつ配置している。なお、図1における上側の係止ベアリング40を係止ベアリング40R1〜40R4とし、図1における下側の係止ベアリング40を係止ベアリング40L1〜40L4としている。
【0033】
係止ベアリング40は、台車20に対して幅方向外向きに突出する平面視三角状の三角フレーム41と、三角フレーム41の外側頂点から下方に延びる支持軸42と、支持軸42の下端に回転自在に設けられたベアリング43とで構成している。
【0034】
また、長手方向両側の係止ベアリング40R1,40R4,40L1,40L4の支持軸42が最も短く、係止ベアリング40R2,40L2の支持軸42が最も長く形成している。詳しくは、支持軸42が最も長く形成された係止ベアリング40R2,40L2のベアリング43は、フロア面から適宜の間隔を隔てた高さに配置されている。
【0035】
係止ベアリング40R3,40L3の支持軸42は、係止ベアリング40R2,40L2のベアリング43よりその厚み分高くベアリング43が配置される長さに形成され、係止ベアリング40R1,R4,L1,L4の支持軸42は、係止ベアリング40R3,40L3のベアリング43よりその厚み分高くベアリング43が配置される長さに形成している。
【0036】
車輪50は、作業台30の底面側に配置された大車輪51と、その他の部分に配置された小車輪52とがあり、大車輪51及び小車輪52ともに平面方向に回転自在に設けられた従動輪である。
【0037】
駆動部60は、台車20の長手方向中央付近において、幅方向の両側に配置されている。駆動部60は、駆動モータ61と、駆動モータ61に連結した駆動輪62と、ふたつの補助輪63とで構成されている。なお、駆動部60の駆動モータ61は、作業台側制御部70に接続され、作業台側制御部70によって駆動制御されている。
【0038】
リーダ部90は、作業台側制御部70と接続され、作業台側制御部70の制御によって、搬送レール100に沿って設定された作業エリアSaに設けられた識別子(図示省略)を読み取るリーダである。具体的には、作業エリアSaに設けられた識別子は、バーコードやQRコード(登録商標)によって構成され、該当箇所の位置情報や、速度情報などの各種情報を有しており、リーダ部90は赤外線等によって、識別子が有する各種情報を読み取るように構成されている。
【0039】
送受信部80は、作業台側制御部70と接続され、作業台側制御部70の制御によって管理装置200の送受信部240と無線通信し、リーダ部90が読み取った情報を送信し、管理装置200からの開始制御情報や停止制御情報を受信する構成である。
【0040】
搬送レール100は、係止ベアリング40のベアリング43の直径よりわずかに広い幅を有する底面102と、底面102の両側から上方に突出し、ベアリング43の厚みの4倍程度の高さを有する側壁101とで構成する、上面が開放された断面コ字状のレールである。搬送レール100は、移動作業台車10の複数台分の長さを有するとともに、円弧状の円弧角部110を有する平面視略長方形状に形成されている。
【0041】
なお、図4において搬送レール100の下側を、左向き矢印で示す方向に移動作業台車10が移動する往路100aとし、搬送レール100の上側を右向き矢印で示す方向に移動作業台車10が移動する復路100bとする。
【0042】
また、図4(a)に示すように搬送レール100の適宜の箇所には、平面視略長方形の内側に突出する円弧状の脱出路120と、進入路130とを備えている。
詳述すると、搬送レール100を構成する内側の側壁101から、円弧状に突出する脱出路120と進入路130とを備えている。なお、脱出路120と進入路130とは、円弧角部110と同径の円弧状である。
【0043】
また、搬送レール100の往路100aと復路100bのそれぞれ前方に3つの脱出路120が設けられ、後方に3つの進入路130が設けられている。なお、3つの脱出路120及び進入路130は、係止ベアリング40の長手方向間隔に一致する間隔で設けられている。
【0044】
さらに、前方の3つの脱出路120のうち前方から順に、係止ベアリング40L3(40R3)のベアリング43が脱出する脱出路120L3(120R3)、係止ベアリング40L2(40R2)のベアリング43が脱出する脱出路120L2(120R2)、係止ベアリング40L1(40R1)のベアリング43が脱出する脱出路120L1(120R1)としている。
【0045】
また、後方の3つの進入路130のうち前方から順に、係止ベアリング40L4(40R4)のベアリング43が進入する進入路130L4(130R4)、係止ベアリング40L3(40R3)のベアリング43が進入する進入路130L3(130R3)、係止ベアリング40L2(40R2)のベアリング43が進入する進入路130L2(130R2)としている。
【0046】
さらに、脱出路120(120L3〜120L1,120R3〜120R1)には、円弧ガイド121(121L3〜121L1,121R3〜121R1)を設けている。円弧ガイド121は、脱出路120の径外側の側面が搬送レール100における底面102まで延長されており、適宜の高さで形成している。
【0047】
詳述すると、脱出路120L2(120R2)に設けられた円弧ガイド121L2(121R2)は、係止ベアリング40L4(40R4)及び係止ベアリング40L3(40R3)のベアリング43が上方を通過し、係止ベアリング40L2(40R2)のベアリング43が当接して内側に向かってガイドする高さに形成している。
【0048】
また、脱出路120L3(120R3)に設けられた円弧ガイド121L3(121R3)は、係止ベアリング40L4(40R4)のベアリング43が上方を通過し、係止ベアリング40L3(40R3)のベアリング43が当接して内側にガイドする高さに形成している。つまり、脱出路120L3(120R3)に設けられた円弧ガイド121L3(121R3)は、脱出路120L2(120R2)に設けられた円弧ガイド121L2(121R2)より、およそベアリング43の厚み分高く形成している。
【0049】
さらに、平面視長方形状の搬送レール100における長手方向両側の短辺部分にも、脱出路120と進入路130が設けられている。
詳しくは、図4(a)における左側の短辺の往路100aの前方に近い側には、係止ベアリング40R1のベアリング43が進入する進入路130R1が設けられ、復路100bの後方に近い側には、係止ベアリング40L4のベアリング43が脱出する脱出路120L4が設けられている。
【0050】
同様に、図4(a)における右側の短辺の往路100aの後方に近い側には、係止ベアリング40R4のベアリング43が脱出する脱出路120R4が設けられ、復路100bの前方に近い側には、係止ベアリング40L1のベアリング43が進入する進入路130L1が設けられている。
【0051】
このように構成された搬送レール100を用いる搬送システム1では、往路100aでは移動方向の後方から前方に向かって4つの作業エリアSa1〜Sa4が設定され、復路100bでは移動方向の後方から前方に向かって3つの作業エリアSa5〜Sa7が設定され、作業エリアSaの数に応じて7台の移動作業台車10を備えている。なお、復路100bにおける後方には、点線で示す移動作業台車10の一台分の作業エリアSaを設けない調整領域Xを設定している。
【0052】
そして、各作業エリアSaには、図示省略する識別子が適宜の箇所に設けられ、各Saにある移動作業台車10は、リーダ部90で識別子に盛り込まれた位置情報や移動速度情報などの各種情報を読み取る。
【0053】
なお、本実施形態の搬送システム1では、作業エリアSa4から作業エリアSa5への移動作業台車10の移動は、他の作業エリアSa間の移動作業台車10の移動速度より速く移動するように設定している。
【0054】
このように構成した搬送システム1における移動作業台車10の移動について詳細に説明する。
各作業エリアSaで作業できるように、各作業エリアSaにはそれぞれ移動作業台車10が配置され、管理装置200の制御によって、7台の移動作業台車10が次の作業エリアSaに向かって同期して移動する。ここでは、まず作業エリアSa1にある移動作業台車10に注目して、その移動について説明する。
【0055】
作業エリアSa1にある移動作業台車10は、係止ベアリング40L1〜40L4が搬送レール100に係止した状態であり、係止ベアリング40R1〜40R4は平面視略長方形状の搬送レール100の内側で無係止状態である。
【0056】
このように、係止ベアリング40L1〜40L4が搬送レール100に係止した移動作業台車10は、作業エリアSa1から作業エリアSa2、同様に作業エリアSa3を通って作業エリアSa4までそのままの状態で移動する。このとき、係止ベアリング40L4のベアリング43は、円弧ガイド121L2と円弧ガイド121L3の上方を通過し、係止ベアリング40L3のベアリング43は、円弧ガイド121L2の上方を通過する。
【0057】
そして、作業エリアSa4から、調整領域Xを通って作業エリアSa5に向かう移動作業台車10は、図4における左側の短辺を通過するため、係止ベアリング40L4のベアリング43が円弧角部110に差し掛かると、係止ベアリング40L3のベアリング43が円弧ガイド121L3にガイドされて脱出路120L3に誘導される。同様に、係止ベアリング40L2のベアリング43が円弧ガイド121L2にガイドされて脱出路120L2に誘導され、係止ベアリング40L1のベアリング43が円弧ガイド121L1にガイドされて脱出路120L1に誘導され、搬送レール100の内側に脱出する。さらに、係止ベアリング40R1のベアリング43が当該短辺に設けた進入路130R1から搬送レール100に進入する。この状態では、係止ベアリング40L4,40R1が短辺の搬送レール100に係止した状態となる。
【0058】
さらに、当該短辺を復路100b側に向かって進み、進入路130R1から進入した係止ベアリング40R1のベアリング43が復路100bの円弧角部110に差し掛かると、係止ベアリング40R2のベアリング43は進入路130R2から進入し、係止ベアリング40R3のベアリング43は進入路130R3から進入し、係止ベアリング40R4のベアリング43は進入路130R4から進入して、係止ベアリング40R1〜40R4が搬送レール100に係止した状態となる。
【0059】
このとき、係止ベアリング40L4のベアリング43は、短辺に設けた脱出路120L4から脱出し、搬送レール100の係止が解除される。なお、この作業エリアSa4から作業エリアSa5への移動は、他の作業エリアSa間の移動より高速移動している。
【0060】
詳しくは、調整領域Xを介して他の作業エリアSa間より長距離である作業エリアSa4から作業エリアSa5への移動では、他の作業エリアSa間の移動作業台車10の移動時間で移動可能な速度に設定しているため、他の移動作業台車10が作業エリアSa間を移動する時間で、長距離である作業エリアSa4から作業エリアSa5まで移動する。
【0061】
なお、作業エリアSa7まで移動した移動作業台車10は、作業エリアSa1に戻るためには、図4における右側の短辺を通過する必要があるため、上述したのと同様に、搬送レール100に係止している係止ベアリング40R1〜40Rのベアリング43は、脱出路120R1〜12から脱出し、40L〜L4が進入路130L〜L4から進入して、上述の初期状態となる。
【0062】
このように搬送システム1は、駆動部60、搬送レール100に係止する係止ベアリング40、及び作業台30を有する移動作業台車10と、移動作業台車10の移動方向を規制するとともに、移動方向が変化する円弧角部110が少なくともひとつ設けられた搬送レール100とが備えられ、移動作業台車10が円弧角部110で向きを変えることなく搬送レール100に沿って移動するため、大きな作業台30を有す移動作業台車10でも搬送システム1をコンパクトなスペースで実現することができる。
【0063】
詳述すると、移動方向が変化する円弧角部110を有する搬送レール100に係止ベアリング40が係止して移動する移動作業台車10が円弧角部110で向きを変えることなく搬送レール100に沿って移動するため、サイズの大きな作業台30を有する移動作業台車10であっても取り回す必要がなく、スペースの有効活用が可能となり、スペースの制限に対しても実現することができる。
【0064】
また、所定間隔を隔てて配置されるとともに、搬送レール100に対して複数係止するように複数の係止ベアリング40が設けられ、曲がり部110より移動方向後方の搬送レール100に係止ベアリング40が脱出する脱出路120と、曲がり部110より移動方向前方の搬送レール100に係止ベアリング40が進入する進入路130とを設けているため、複数の係止ベアリング40が所定間隔を隔てて係止するため、搬送レール100に沿って移動作業台車10が安定して移動することができる。
【0065】
また、円弧角部110を通過して前方に移動した場合において、円弧角部110より後方の搬送レール100に係止したままの係止ベアリング40があると、移動作業台車10の向きが変化することとなるが、円弧角部110より後方の係止ベアリング40が脱出路120から脱出するため、移動作業台車10の向きを変化させることなく、移動作業台車10が円弧角部110を通過することができる。
【0066】
さらに、円弧角部110を通過した移動作業台車10の係止ベアリング40を、円弧角部110より前方の搬送レール100に進入路130から進入させることができるため、円弧角部110を通過した後の搬送レール100に対しても複数の係止ベアリング40が係止し、円弧角部110を通過した移動作業台車10も向きが安定した状態で移動することができる。
【0067】
また、平面視略長方形状の搬送レール100の内側を移動作業台車10が移動するため、さらにスペースを有効活用することができる。
詳述すると、平面視略長方形状の搬送レール100の外側を移動作業台車10が移動する場合、その移動範囲は搬送レール100より大きくなり、平面視略長方形状の搬送レール100の内側がデッドスペースとなるが、搬送レール100の内側を移動作業台車10が円弧角部110で向きを変えることなく搬送レール100に沿って移動することで、その移動範囲は平面視略長方形状の搬送レール100より狭くなり、デッドスペースを有効活用し、省スペース化を図ることができる。
【0068】
さらにまた、平面視略長方形状の搬送レール100が移動作業台車10の移動範囲の外側となるため、搬送レール100は移動作業台車10の移動範囲の明示として機能し、移動する移動作業台車10と作業者Pとの接触などを防止して、安全に作業することができる。
【0069】
また、移動が同期した7台の移動作業台車10に、搬送レール100に沿って設定された作業エリアSa1〜Sa7に設けた識別子に有する情報を読み取るリーダ部90を備えている。また、搬送レール100における円弧角部110より移動方向の前方に調整領域Xが設定され、調整領域Xを通過して作業エリアSa4から作業エリアSa5まで移動する移動作業台車10の速度を他の作業エリアSa間を移動する速度に比べて早く設定しているため、作業性の低い円弧角部110の近傍での作業を行うことなく、複数の作業エリアSaを移動する他の移動作業台車10と同期させることができる。
【0070】
詳述すると、作業性の低い円弧角部110の近傍に作業エリアSaを設けると、円弧角部110の近傍の作業エリアSaでの作業時間が長くなり、移動が同期された7台の移動作業台車10の移動に遅れが生じ、全体の製造効率が低下するが、円弧角部110の近傍に調整領域Xを設定することで、全作業エリアSaでの作業効率を均一化することができる。
【0071】
また、作業エリアSaを設けない円弧角部110を早く通過させることで全体の製造効率の向上を図るものの、7台の移動作業台車10の移動が同期されているため、円弧角部110のみ移動作業台車10の移動速度を速くすると、移動方向前方の移動作業台車10と衝突するおそれがあるが、円弧角部110の近傍に調整領域Xを設けることで、円弧角部110を早く通過させながら、移動が同期した他の移動作業台車10と衝突するなどの不具合が生じることなく、スムーズに移動させて全体の製造効率の向上を図ることができる。
【0072】
また、7台の移動作業台車10を識別し、各移動作業台車10の位置を制御する制御部210を有する管理装置200を備えているため、各作業エリアSaを移動する7台の移動作業台車10を安全に管理・制御することができる。
【0073】
また、作業台30が水平な平面視H型の配索盤であるため、配索作業にとって作業性の高い水平な平面視H型の配索盤上で効率よく配索作業することができ、ワイヤーハーネスの製造効率を向上させることができる。
【0074】
また、平面視H型の内側に、作業者Pが乗り込んで作業する内側作業部22を設けているため、平面視H型の内側からと両外側とから配索作業ができるため、例えば車両一台分のワイヤーハーネスなど規模の大きなものであっても効率よく作業することができる。
【0075】
また、上述の説明では、係止ベアリング40によって搬送レール100に沿って移動作業台車10が移動する構成としたが、移動作業台車10に操舵輪を設け、作業台側制御部70や管理装置200で移動作業台車10を操舵制御し、搬送レール100に沿って移動作業台車10が移動するように構成してもよい。
【0076】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明のガイド機構は、搬送レール100に対応し、
以下同様に、
駆動手段は、駆動部60に対応し、
係止部は、係止ベアリング40に対応し、
作業部は、作業台30に対応し、
移動作業台は、移動作業台車10に対応し、
曲がり部は、円弧角部110に対応し、
平面視コ字状は、平面視略長方形状に対応し、
検知手段は、リーダ部90に対応し、
調整領域は、調整領域Xに対応するも、この発明は、前述の実施形態に限定されるものではない。
【0077】
上述の説明では、搬送レール100の内側を移動作業台車10が移動する構成であったが、搬送レール100の外側を移動作業台車10が移動する構成であってもよい。この場合、移動作業台車10が内側を移動する搬送システム1に比べて移動範囲は広くなるものの、搬送レール100に沿って移動する移動作業台車10は向きが変化しないため、上述の搬送システム1と同様の効果を奏することができる。
【0078】
また、搬送レール100を平面視略長方形状に形成したが、平面視略正方向形状であっても、その他、平面視略U字状、平面視コ字状、平面視L字状、平面視J字状などであってもよく、平面視略多角形状で構成してもよい。
【0079】
また、作業台30を水平な平面視H型の配索盤としたが、平面視略U字状、平面視コ字状、平面視L字状、平面視J字状、あるいは平面視S字状などであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…搬送システム
10…移動作業台車
22…内側作業部
30…作業台
40…係止ベアリング
60…駆動部
90…リーダ部
100…搬送レール
110…円弧角部
120…脱出路
130…進入路
210…制御部
Sa…作業エリア
X…調整領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7