(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸と、該回転軸を回転させるモータと、該モータで回転される該回転軸の回転開始位置と該回転軸が該回転開始位置から360度以上回転した回転完了位置とを検出する検出手段と、を備え、該回転軸が該回転開始位置と該回転完了位置との間を回転する回転機構であって、
該検出手段は、
該回転軸の該回転開始位置を検出する原点センサと、
該回転軸の該回転完了位置を検出する終点センサと、
該回転軸に連結され該回転軸の回転により該回転軸の周囲を回動し該原点センサ及び該終点センサを反応させるドグと、
該回転軸の回転により該回転軸の周囲を回動する該ドグを該回転軸の軸方向に平行な上下方向に移動させる螺旋案内部と、を備え、
前記原点センサ及び前記終点センサは、異なる高さで設けられ、
該回転軸を少なくとも360度回転させることで前記ドグが前記原点センサ及び前記終点センサを反応させる回転機構。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1を参照して、本実施の形態に係る回転機構について説明する。
図1は、本実施の形態に係る回転機構の分解斜視図である。なお、以下においては、回転機構が切断装置に適用される構成について説明するが、この構成に限定されない。以下に示す回転機構は、どのような装置に適用されてもよく、例えば、研削装置や切削装置、テープマウンタ等、その他のタイプの装置にも適用可能である。
【0011】
一般にウエーハは円形状を有しており、ウエーハに対して研削加工や切削加工等、所定の加工を施す場合には表面を保護するために保護テープが貼着される。
図1に示すように、本実施の形態に係る回転機構1は、ウエーハW(
図2参照)の表面に貼着された保護テープT(
図2参照)をウエーハWの形状に沿って切断する切断装置に適用されるものである。
【0012】
回転機構1は、鉛直方向に回転軸20を有するモータ2の下端にカッタ等の刃具3を取り付けて構成される。刃具3は回転軸20に対して偏心した位置に設けられており、刃具3の先端を保護テープTに接触させ、モータ2の回転軸20を360度回転させることで保護テープTが円形状に切断される。
【0013】
具体的に回転機構1は、インダクションモータで構成されるモータ2の回転軸20を下方に向け、回転軸20の下端に支持シャフト4を連結して構成される。モータ2は、通電のオンオフだけで回転軸20の回転及び停止を制御することができる。支持シャフト4は、鉛直方向に延びており、回転軸20と支持シャフト4とは、カップリング5(軸継手)によって同軸上に連結される。
【0014】
また、詳細は後述するが、支持シャフト4には、ドグ72の移動を上下にガイドするガイドレール40が設けられている。ガイドレール40は、支持シャフト4の外面において、支持シャフト4の延在方向(鉛直方向)に沿って延びている。ガイドレール40には、上面視C字状のスライダ73が、ガイドレール40に沿って上下に摺動可能に設けられる。
【0015】
支持シャフト4の下端には、円板状のプレート6を介して刃具3が支持される。プレート6は、回転軸20と中心が一致するように取り付けられる。上記したように、刃具3は、プレート6の外周側において、回転軸20に対して偏心した位置に設けられる。より具体的に刃具3は、先端がウエーハWの外縁より外側に設けられると共に、先端が下方に向くように取り付けられる。また、刃具3には、図示しないヒータが接続されており、ヒータによって刃具3の温度が調節可能になっている。
【0016】
また、回転機構1は、モータ2の回転角度を検出する検出手段7を備えている。具体的に検出手段7は、回転軸20の回転開始位置を検出する原点センサ70と、回転軸20の回転完了位置を検出する終点センサ71と、原点センサ70及び終点センサ71を反応させるドグ72とによって構成される。
【0017】
原点センサ70及び終点センサ71は、発光部と受光部(共に不図示)を対向配置して、発光部から受光部に対する光の受光量変化から物体を検出する、いわゆる光学式センサである。具体的に原点センサ70及び終点センサ71は、発光部と受光部とを上下に対向配置して発光部と受光部との間が開口された側面視コの字状に形成されている。また、詳細は後述するが、原点センサ70及び終点センサ71は、それぞれ異なる高さで上面視において同一の箇所に設けられており、終点センサ71の直下に原点センサ70が配置されている。
【0018】
ドグ72は、上面視矩形状の板状体で形成され、上記したスライダ73と一体的に固定される。スライダ73は、リング状のブロックの一部が開口された上面視C字状に形成されており、ドグ72は、スライダ73の外面(円弧面)から水平方向に向かって板状に突出している。このとき、ドグ72の厚み方向は、鉛直方向と一致している。スライダ73には、上記した支持シャフト4が挿通され、スライダ73の開口部分がガイドレール40に対して遊びを設けた状態で嵌まり込む。これにより、スライダ73及びドグ72がガイドレール40に沿って上下に摺動可能に構成される。
【0019】
ドグ72は、上記した発光部と受光部との間に入り込むことで発光部からの光を遮る。このとき原点センサ70及び終点センサ71は、受光部の受光量変化によって反応し、回転軸20の回転開始位置又は回転完了位置を検出する。
【0020】
ところで、一般的に回転軸の回転角度を制御する回転機構では、パルスモータが用いられる。パルスモータは、回転軸を所定角度(例えば360度)回転させるために必要なパルスを受信することで回転軸を所定角度回転させる。この場合、パルスモータに対して所定のパルスを伝送するには、専用のコントローラが必要となる。このため、パルスを生成するための制御構成が複雑化し、装置全体のコストアップの要因となってしまう。特に、ミニマルタイプのウエーハ(例えば外径が数十mmのウエーハ)に貼着された保護テープをウエーハの外周に沿って切断する切断装置においては、装置全体としての構成簡略化が望まれている。
【0021】
また、パルスモータの場合、機械的な負荷によるパルス溜まりがあると、回転軸の回転不足が生じてしまうという問題もある。そこで、パルスモータではなく、インダクションモータを用いて、モータに対する通電のオンオフだけでモータの駆動を制御することが考えられる。その方法として、まず、回転軸の回転開始位置と回転完了位置を検出するセンサが必要となる。
【0022】
回転開始位置検出用のセンサ単体では、回転完了位置を検出することができないので、回転開始位置検出用のセンサと回転完了位置検出用のセンサとが別々に必要となる。この場合、360度を検出しようとしても、2つのセンサを同一平面上の同一箇所に設けることができない。このため、2つのセンサを隣接して設けなくてはならず、この結果、厳密には360度より大きい角度でモータ駆動を制御することになる。よって、回転軸が必要以上に回転される結果、タクトタイムが長くなってしまうという問題がある。
【0023】
そこで、本実施の形態では、上記した原点センサ70及び終点センサ71をそれぞれ異なる高さで上面視において同一の箇所に設けると共に、ドグ72を螺旋状に上下動させる構成とした。具体的には、ガイドレール40を有する支持シャフト4の周囲に、ドグ72を上下に移動させる螺旋案内部8が設けられている。螺旋案内部8は、パイプを螺旋状に曲げて形成され、螺旋の中心軸がモータ2の回転軸20と一致するように設けられる。
【0024】
詳細は後述するが、ドグ72の下面が螺旋案内部8の外面に当接するように、スライダ73が螺旋案内部8の内側に設けられる。回転軸20が回転されると、ドグ72はガイドレール40及び螺旋案内部8に沿って螺旋状に案内される。そして、上下に配置された原点センサ70及び終点センサ71をドグ72が反応させることで、回転軸20の回転角度を所定の角度(360度)で制御することが可能になる。
【0025】
このように、ドグを螺旋状に移動させ、原点センサ70及び終点センサ71を上下に配置したことで、原点センサ70及び終点センサ71を上面視で同一の箇所に配置することができ、回転軸20の回転角度を360度丁度で制御することが可能になった。また、インダクションモータを用いることで、パルスモータのように複雑な制御構成を要することもなくなった。以上より、簡易な構成でモータ2(回転軸20)を所定角度で回転させることが可能になった。
【0026】
次に、
図2を参照して、本実施の形態に係る回転機構の動作について説明する。
図2は、本実施の形態に係る回転機構の動作説明図である。
図2Aはドグ72が回転開始位置にある場合を示し、
図2Bはドグが回転開始位置と回転完了位置との中間位置にある場合を示し、
図2Cはドグが回転完了位置にある場合を示している。なお、
図2においては、ウエーハの上面に貼着された保護テープをウエーハの形状に沿って円形状に切断する動作について説明する。また、
図2においては説明の便宜上、ウエーハ及び保護テープの斜視図も示しており、保護テープの切断箇所を太線で示している。
【0027】
図2に示すように、ウエーハWの上面には保護テープTが貼着されている。また、ウエーハWの上方には、刃具3を備えた回転機構1が位置付けられている。回転機構1は、図示しない昇降手段によって、刃具3の先端が保護テープTを僅かに貫通する高さに位置付けられる。このとき、刃具3の先端は、ウエーハWの外周より僅かに外側に位置付けられる。また、刃具3は、ヒータ(不図示)によって温められており、保護テープTが刃具3の熱によっても切断され易くなっている。
【0028】
先ず、保護テープTの切断を開始する前に、刃具3が原点位置に位置付けられる。すなわち、
図2Aに示すように、モータ2が所定角度回転され、ドグ72が原点センサ70に検出される位置(回転開始位置)に位置付けられる。この回転開始位置から保護テープTの切断が開始される。このとき、ドグ72は、螺旋案内部8の下側に位置しており、ドグ72の下面が螺旋案内部8の外面に当接している。
【0029】
原点センサ70によって回転開始位置が検出されると、モータ2が通電され、回転軸20が回転駆動される。これにより、回転軸20に連結される支持シャフト4、プレート6及び刃具3も一緒に回転される。また、支持シャフト4等を介して回転軸20に連結されるドグ72及びスライダ73も、支持シャフト4と一緒に回転される。
【0030】
図2Bに示すように、ドグ72及びスライダ73は、螺旋案内部8によって螺旋状に移動がガイドされるため、支持シャフト4と一緒に回転されるだけでなく、ガイドレール40に沿って上方に移動される。すなわち、ドグ72及びスライダ73は、モータ2の回転方向においては支持シャフト4と一体的に回転すると共に、モータ2の軸方向(鉛直方向)においては支持シャフト4に対して上方に移動される。
【0031】
そして、
図2Cに示すように、回転軸20が360度回転されると、ドグ72は、終点センサ71の発光部と受光部との隙間に入り込み、終点センサ71が反応する。これにより、ドグ72、すなわち、回転完了位置が終点センサ71によって検出される。回転完了位置が検出されることでモータ2の通電がオフされ、この結果、回転軸20の回転が停止される。このようにして、回転軸20の回転が所定の角度(360度)で制御される。
【0032】
なお、仮に回転完了位置でドグ72が終点センサ71によって検出されず、ドグ72が終点センサ71に対してオーバーランしたとしても、スライダ73の上面がカップリング5の下面に当接して回転軸20の回転が機械的に停止される。このように、カップリング5がメカストッパとして機能する。
【0033】
上記したように、回転軸20が360度回転されることで、刃具3も360度回転される。この結果、ウエーハWの上面に貼着された保護テープTがウエーハWの外周に沿って円形状に切断される。保護テープTが切断された後は、回転軸20が逆転駆動され、ドグ72が点位置に検出される位置(回転開始位置)に復帰される。すなわち、保護テープTを切断する際には回転軸20が正転駆動され、保護テープTの切断後に原点復帰する際には、回転軸20が逆転駆動される。
【0034】
このように、回転軸20は、回転開始位置と回転完了位置との間(360度)で往復回転可能に構成される。この場合、刃具3を温めるヒータの配線は、刃具3が360度正転回転されることで引っ張られるが、原点復帰の際に刃具3(回転軸20)が逆転駆動されることで、配線の引っ張られた状態が解消される。このため、ヒータの配線が巻き付いて絡まるのを防止することができる。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、回転軸20は、原点センサ70によってドグ72が検出された位置を回転開始位置として、当該回転開始位置から回転完了位置まで360度(以上)回転される。このとき、ドグ72は、螺旋案内部8に沿って螺旋状に移動する。つまり、回転軸20を中心にドグ72を周回させると共に、螺旋案内部8に案内され上昇する。このため、原点センサ70がドグ72により遮光されて検出される回転開始位置から360度(以上)回転しても再度ドグ72を検出することがない。
【0036】
これに対して、原点センサ70で回転開始位置と回転完了位置を検出させる場合には、ドグ72の幅が作用して、360度を検出できない。つまり、ドグ72の一方の側面が原点センサ70を遮光した位置を回転開始位置とし、回転軸20を回転させドグ72の他方の側面が原点センサを遮光した位置を回転完了位置となるため、ドグ72の幅が要因となり360度を検出することができない。
【0037】
上記したように、本実施の形態では、螺旋案内部8でドグ72を上下動させたことにより、同じ原点センサ70で回転完了位置を検出することが無く、簡易な構成でモータ2(回転軸20)を所定の角度(360度)で回転させることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0039】
例えば、上記した実施の形態では、モータ2としてインダクションモータを用いる構成としたが、この構成に限定されない。モータ2は、他のタイプのモータで構成されてもよい。
【0040】
また、上記した実施の形態では、検出手段7が原点センサ70及び終点センサ71を備える構成としたが、この構成に限定されない。検出手段7が原点センサ70のみを備える構成としてもよい。この場合、モータ2をパルスモータとし、更にモータ2に対して所定のパルスを伝送する制御部が設けられることが好ましい。
【0041】
また、上記した実施の形態では、原点センサ70を終点センサ71の直下に設ける構成としたが、この構成に限定されない。原点センサ70の直下に終点センサ71を設けてもよい。この場合、螺旋案内部8の巻き方向を逆にすることが好ましい。さらに、保護テープTを切断する際、すなわちモータ2を正転駆動させる際には、ドグ72を螺旋案内部8に沿って下に移動させ、原点復帰させる際、すなわちモータ2を逆転駆動させる際には、ドグ72を螺旋案内部8に沿って上に移動させることが好ましい。
【0042】
また、上記した実施の形態では、原点センサ70及び終点センサ71を上面視において同一の箇所に設ける構成としたが、この構成に限定されない。上面視における原点センサ70及び終点センサ71の位置は、必ずしも同一でなくてよい。
【0043】
また、上記した実施の形態では、回転軸20を回転開始位置と回転完了位置との間で丁度360度回転させる、すなわち、回転開始位置から360度回転した位置を回転完了位置に設定する構成としたが、この構成に限定されない。回転完了位置の角度は、回転開始位置から360度より小さくてもよく、回転開始位置から360度より大きくてもよい。
【0044】
また、上記した実施の形態では、原点センサ70及び終点センサ71として光学式センサを用いる構成としたが、この構成に限定されない。原点センサ70及び終点センサ71は、他のタイプのセンサ、例えば磁気センサや接触式のセンサや近接センサで構成されてもよい。
【0045】
また、上記した実施の形態では、螺旋案内部8がパイプで形成される構成としたが、この構成に限定されない。螺旋案内部8は、ドグ72を螺旋状に案内することができれば、どのように形成されてもよい。