【実施例】
【0030】
[相分離構造、破壊靭性値、及び弾性率の比較]
以下の実施例1〜7及び比較例1〜4について、相分離構造の観察、破壊靭性値及び弾性率の測定を行った。
【0031】
アミン硬化剤は、以下に示す1級アミノ基を有する芳香族アミン硬化剤のいずれかを使用した。
・日本化薬(株)製「カヤハードAA」(HDAA)
・ジアミノジフェニルメタン(DDM)
・ジエチルトルエンジアミン(DETDA)
【0032】
アクリルブロック共重合体は、重合体ブロックAをPMMA(ポリメタクリル酸メチル、ガラス転移温度:100〜120℃)、重合体ブロックBをPnBA(ポリアクリル酸n−ブチル、ガラス転移温度:−40〜−50℃)とする以下のトリブロック共重合体のいずれかを使用した。
・クラレ(株)製「LA2140e」
PMMA含有率20重量%、重量平均分子量(Mw)=80000
・クラレ(株)製「LA2250」
PMMA含有率30重量%、重量平均分子量(Mw)=80000
・クラレ(株)製「LA4285」
PMMA含有率50重量%、重量平均分子量(Mw)=80000
【0033】
エポキシ樹脂は、いずれもビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(新日鉄住友金属(株)製「YDF−8170」)を使用した。
【0034】
(実施例1)
「カヤハードAA」100部に対し「LA4285」14部を容器に入れ、180℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を2時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤aを作製した。
【0035】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤a44.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0036】
(実施例2)
「カヤハードAA」100部に対し「LA4285」14部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を4時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤bを作製した。
【0037】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤b44.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0038】
(実施例3)
「カヤハードAA」100部に対し「LA2250」14部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を4時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤cを作製した。
【0039】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤c44.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0040】
(実施例4)
「カヤハードAA」100部に対し「LA2140e」14部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を4時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤dを作製した。
【0041】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤d44.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0042】
(実施例5)
「カヤハードAA」100部に対し「LA2140e」14部を容器に入れ、200℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を4時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤eを作製した。
【0043】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤e44.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0044】
(実施例6)
ジエチルトルエンジアミン100部に対し「LA2140e」18部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を4時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤fを作製した。
【0045】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤f32.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0046】
(実施例7)
ジアミノジフェニルメタン100部に対し「LA2140e」16部を容器に入れ、200℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を4時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤gを作製した。
【0047】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤g36部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0048】
(比較例1)
エポキシ樹脂100部、及び「LA4285」5.4部を容器に入れ、180℃に設定したオイルバスに漬浸して、その内容物を2時間攪拌した。その後、「カヤハードAA」39.4部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0049】
(比較例2)
エポキシ樹脂100部、及び「LA2250」5.4部を容器に入れ、180℃に設定したオイルバスに漬浸して、その内容物を2時間攪拌した。その後、「カヤハードAA」39.4部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0050】
(比較例3)
エポキシ樹脂100部、及び「LA2140e」5部を容器に入れ、180℃に設定したオイルバスに漬浸して、その内容物を2時間攪拌した。その後、ジエチルトルエンジアミン27.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0051】
(比較例4)
エポキシ樹脂100部、「カヤハードAA」39.4部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0052】
(相分離構造の測定)
相分離構造の測定は、以下のようにおこなった。まず、実施例1〜7及び比較例1〜4で作製したエポキシ樹脂組成物を板状に硬化(硬化条件:温度165℃、2時間)したエポキシ樹脂硬化物の表面をミクロトームで平滑にした後、当該表面を四酸化ルテニウム(RuO
4)の蒸気に曝すことにより染色した。そして、染色されたエポキシ樹脂硬化物の表面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察し、重合体ブロックBのサイズを測定した。
【0053】
(弾性率の測定)
弾性率(Gpa)の測定は、相分離構造の測定に用いたエポキシ樹脂硬化物と同様のものについて、粘弾性測定装置(Dynamic Mechanical Analyzer、DMA)により、常温(25℃)での弾性率を測定した。
【0054】
(破壊靭性値の測定)
破壊靭性値(MPam
1/2)の測定は、相分離構造の測定に用いたエポキシ樹脂硬化物と同様のものについて、長さ57.2mm×幅13.0mm×厚さ6.5mmの試験片を作製し、この試験片を用いて島津オートグラフAG−IS(島津製作所製)を使用して、ASTM D−5045−91(Standeard Test Methods for Plane−Strain Fracture Toughness and Strain Energy Release Rate of Plastic Materials)に基づき測定した。その際、作製した試験片の厚さ方向の中央部に剃刀で亀裂を導入した、初期亀裂長さは、倍率50倍の読み取り顕微鏡にて0.01mmまで5点測定して平均した。結果として生じた亀裂長さは、5.8mm〜6.9mmの範囲であった。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示したように、実施例1〜7は、ミクロ相分離構造を有しており、破壊靭性値も高い値となっている。一方、比較例1〜3は、マクロ相分離構造であり、破壊靭性値は低い値となっている。また、実施例1〜7は、比較例1〜4と比べても同程度の弾性率を有している。なお、比較例4は、ブロック共重合体を配合していないため、硬化物は均一となり相分離構造は生じない。
【0057】
[アクリルブロック共重合体の配合の違いによる相分離構造及び破壊靭性値の比較]
以下の実施例8〜10及び比較例5について、相分離構造及び破壊靭性値の測定を行った。アミン硬化剤は、日本化薬(株)製「カヤハードAA」を使用し、アクリルブロック共重合体は、クラレ(株)製「LA4285」を使用し、エポキシ樹脂は、新日鉄住友金属(株)製「YDF−8170」を使用した。
【0058】
(実施例8)
「カヤハードAA」100部に対し「LA4285」14部を容器に入れ、170℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を2時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤hを作製した。
【0059】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤h44.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0060】
(実施例9(実施例1と同じ))
「カヤハードAA」100部に対し「LA4285」14部を容器に入れ、180℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を2時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤aを作製した。
【0061】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤a44.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作成した。
【0062】
(実施例10)
「カヤハードAA」100部に対し「LA4285」14部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を2時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤iを作製した。
【0063】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤i44.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0064】
(比較例5(比較例1と同じ))
エポキシ樹脂100部、及び「LA4285」5.4部を容器に入れ、180℃に設定したオイルバスに漬浸して、その内容物を2時間攪拌した。その後、「カヤハードAA」39.4部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0065】
(相分離構造の測定、破壊靭性値の測定)
相分離構造の測定及び破壊靭性値の測定は、実施例1〜7及び比較例1〜4と同様の方法で行った。
図1Aは、実施例8の相分離構造をFE−SEMを使用して20000倍の倍率で撮影した写真である。
図1Bは、実施例8の相分離構造をFE−SEMを使用して40000倍の倍率で撮影した写真である。
図2Aは、実施例9の相分離構造をFE−SEMを使用して20000倍の倍率で撮影した写真である。
図2Bは、実施例9の相分離構造をFE−SEMを使用して40000倍の倍率で撮影した写真である。
図3Aは、実施例10の相分離構造をFE−SEMを使用して20000倍の倍率で撮影した写真である。
図3Bは、実施例10の相分離構造をFE−SEMを使用して40000倍の倍率で撮影した写真である。
図4は、比較例5の相分離構造をFE−SEMを使用して3000倍の倍率で撮影した写真である。
図4における円及び矢印は、重合体ブロックBの最大径を示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示したように、アミン硬化剤にアクリルブロック共重合体を配合したエポキシ樹脂硬化剤を用いてエポキシ樹脂を硬化させた場合(実施例8〜10)は、重合体ブロックBのサイズが200nm以下のミクロ相分離構造となり、破壊靭性値も高い値を示した。一方、比較例5のように、はじめにエポキシ樹脂にアクリルブロック共重合体を配合し、その後にアミン硬化剤を加える場合は、ミクロ相分離構造を取らず(比較例5では重合体ブロックBのサイズが6.5μmとなった)、破壊靭性値も低い値となった。
【0068】
[光透過性の比較]
上述の実施例8及びの比較例5について、光透過性の測定を行った。光透過性の測定は、実施例8及び比較例5のエポキシ樹脂硬化物について、長さ20mm×幅10mm×厚さ2mmの試験片を作製する。この試験片を格子模様が描かれたテストチャートの上に配し、試験片の撮影を行った。試験片が透明な場合、試験片の下に置かれたテストチャートの格子模様が確認できる。
【0069】
図5は、テストチャート上に配置された実施例8のエポキシ樹脂硬化物の上面から可視光を照射した状態を撮影した写真である。
図6は、テストチャート上に配置された比較例5のエポキシ樹脂硬化物の上面から可視光を照射した状態を撮影した写真である。
【0070】
図5に示されたように、実施例8のエポキシ樹脂硬化物は、可視光を透過する性質を有することがわかる。これは、相分離構造のサイズが可視光の波長よりも短いと、当該相分離構造を有するエポキシ樹脂硬化物は、光透過性を有することを示している(逆に言えば、光透過性を有するエポキシ樹脂硬化物は、ミクロ相分離構造を有する)。
【0071】
以上の実施例及び比較例から明らかなように、(A)アミン硬化剤に予め(B)アクリルブロック共重合体を混合したエポキシ樹脂硬化剤を用いてエポキシ樹脂を硬化させることにより、強靭性が高く、且つ弾性を有する(所望の弾性を損なわない)エポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
【0072】
[ブロック共重合体の構造について]
以下の実施例11〜17、比較例6及び比較例7について、カルボン酸含有量比及びアミド化合物含有量比の決定、反応性の測定、相分離構造の観察、破壊靭性値及び弾性率の測定を行った。
【0073】
アミン硬化剤は、上述の日本化薬(株)製「カヤハードAA」(HDAA)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)のいずれかを使用した。
【0074】
アクリルブロック共重合体は、上述のクラレ(株)製「LA2140e」、クラレ(株)製「LA2250」、クラレ(株)製「LA4285」のいずれかを使用した。
【0075】
エポキシ樹脂は、いずれもビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(新日鉄住友金属(株)製「YDF−8170」)を使用した。
【0076】
(実施例11)
「カヤハードAA」100部に対し「LA4285」18.7部を容器に入れ、180℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を2時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤jを作製した。
【0077】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤j46.9部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0078】
(実施例12)
「カヤハードAA」100部に対し「LA2250」18.7部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を4時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤kを作製した。
【0079】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤k46.9部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0080】
(実施例13)
「カヤハードAA」100部に対し「LA2140e」18.7部を容器に入れ、180℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を8時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤lを作製した。
【0081】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤l46.9部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0082】
(実施例14)
「カヤハードAA」100部に対し「LA2140e」18.7部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を4時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤mを作製した。
【0083】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤m46.9部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0084】
(実施例15)
「カヤハードAA」100部に対し「LA2140e」18.7部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を8時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤nを作製した。
【0085】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤n46.9部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0086】
(実施例16)
「カヤハードAA」100部に対し「LA2140e」18.7部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を16時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤oを作製した。
【0087】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤o46.9部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0088】
(実施例17)
ジアミノジフェニルメタン100部に対し「LA2140e」22部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに浸漬して、その内容物を1時間攪拌した。その後、容器をオイルバスから取り出して室温まで冷却しエポキシ樹脂硬化剤pを作製した。
【0089】
エポキシ樹脂100部に、エポキシ樹脂硬化剤p37.8部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0090】
(比較例6)
エポキシ樹脂100部、及び「LA2140e」7.4部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに漬浸して、その内容物を4時間攪拌した。その後、「カヤハードAA」39.4部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0091】
(比較例7)
エポキシ樹脂100部、及び「LA2140e」6.8部を容器に入れ、190℃に設定したオイルバスに漬浸して、その内容物を4時間攪拌した。その後、ジアミノジフェニルメタン31部を配合し、液状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0092】
(カルボン酸含有量比及びアミド化合物含有量比の決定)
カルボン酸含有量比とは、作製されたエポキシ樹脂硬化剤中のアクリルブロック共重合体に含まれるカルボン酸の割合(mol%)である。アミド化合物含有量比とは、作製されたエポキシ樹脂硬化剤中のアクリルブロック共重合体に含まれるアミド化合物の割合(mol%)である。カルボン酸及びアミド化合物の割合は、エポキシ樹脂硬化剤中に含まれるアクリルブロック共重合体を分離して核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)を用いて測定を行った。具体的には、カルボン酸及びアミド化合物をシリル化し、その合計量を測定した後、アミノ基に対して選択的に反応する誘導体化試薬(イソチオシアン酸フェニル)を用いてアミド化合物の量を測定した。
【0093】
(反応性の測定)
反応性とは、エポキシ樹脂を硬化させる性質(エポキシ樹脂とアミンの架橋により、三次元網目構造を構築する性質)のことをいう。たとえば、第1のエポキシ樹脂硬化剤を用いた場合、第2のエポキシ樹脂硬化剤を用いた場合よりもエポキシ樹脂が硬化する時間が短いとする。この場合、第1のエポキシ樹脂硬化剤は、第2のエポキシ樹脂硬化剤に比べて「反応性が高い(反応時間が短い)」と判断できる。反応性の測定は、粘度計を用い、120℃または100℃の温度条件下、初期(エポキシ樹脂組成物が測定温度に達した直後の状態)の粘度を測定した。その後、粘度を継続的に測定し、初期の粘度の5倍となった時間を反応時間として求めた。
【0094】
(相分離構造の測定、破壊靭性値の測定、弾性率の測定)
相分離構造の測定及び破壊靭性値の測定は、実施例1〜10及び比較例1〜5と同様の方法で行った。弾性率の測定は、実施例1〜7及び比較例1〜4と同様の方法で行った。
【0095】
【表3】
*エポキシ樹脂硬化剤j〜エポキシ樹脂硬化剤pの横に記載されている値は、アミンへの溶解温度及び溶解時間である。
【0096】
各実施例・比較例におけるカルボン酸含有量比及びアミド化合物含有量比は表3の通りである。
【0097】
また、表3から明らかなように、実施例11〜16は、比較例6と比較して反応時間が短くなった(反応性が高い)。また、実施例17は、比較例7と比較して反応時間が短くなった(反応性が高い)。
【0098】
ここで、
図7は、120℃の温度条件下における実施例12、14、15及び比較例6の反応性(反応時間)を示すグラフである。
図8は、100℃の温度条件下における実施例17及び比較例7の反応性(反応時間)を示すグラフである。いずれも、縦軸は粘度、横軸は経過時間である。
【0099】
図7のグラフから明らかなように、実施例12、14、15では、比較例6に比べてエポキシ樹脂組成物の作製から短い経過時間で粘度が高くなった(すなわち、硬化が進行した)。同様に、
図8のグラフから明らかなように、実施例17では、比較例7に比べてエポキシ樹脂組成物の作製から短い経過時間で粘度が高くなった(すなわち、硬化が進行した)。
【0100】
なお、エポキシ樹脂とアミンの架橋を促進するのは、メタクリル酸等のカルボン酸であることから、反応性はカルボン酸の含有量と関係がある。カルボン酸含有量は、望ましくは1〜8の範囲である。
【0101】
更に、表3から明らかなように、実施例11〜17においても、ミクロ相分離構造を有し、強靭性が高く、且つ弾性を有する(所望の弾性を損なわない)エポキシ樹脂硬化物を得ることができた。たとえば、
図9は、実施例13の相分離構造をFE−SEMを使用して5000倍の倍率で撮影した写真である。
図10は、実施例14の相分離構造をFE−SEMを使用して5000倍の倍率で撮影した写真である。
図9及び
図10から明らかなように、実施例13及び実施例14においても、エポキシ樹脂硬化物はミクロ相分離構造を有する。一方、比較例6及び比較例7におけるエポキシ樹脂硬化物はマクロ相分離構造を有する(表3参照)。