特許第6589085号(P6589085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6589085
(24)【登録日】2019年9月20日
(45)【発行日】2019年10月9日
(54)【発明の名称】含硫黄化合物除去用の組成物
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/00 20060101AFI20191001BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20191001BHJP
   C10G 29/24 20060101ALI20191001BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20191001BHJP
【FI】
   B01D17/00
   B01D53/14 210
   C10G29/24
   C10L3/10
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-532168(P2019-532168)
(86)(22)【出願日】2019年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2019006305
【審査請求日】2019年6月14日
(31)【優先権主張番号】特願2018-35746(P2018-35746)
(32)【優先日】2018年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】源 直也
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼田 拓大
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/121747(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/003623(WO,A1)
【文献】 米国特許第5152916(US,A)
【文献】 国際公開第2015/141535(WO,A1)
【文献】 米国特許第5284576(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0299100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00
B01D 53/14
C10G 29/24
C10L 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記組成物が、アルデヒドと、水中25℃における共役酸のpKa値が11.3以上のアミンと、を含有する、組成物。
【請求項2】
前記アミンが、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【化1】

(上記式(1)及び(2)中、R〜R11はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、RはRと、RはRと、RはRと、RはR11と、それぞれ互いに連結して炭素数2〜6のアルキレン基を構成してもよい。)
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)の少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物が、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(TBD)及び7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(MTBD)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルデヒドが、α,β−不飽和アルデヒドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記α,β−不飽和アルデヒドが、アクロレイン、セネシオアルデヒド及びシトラールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記液体及び気体のそれぞれが、炭化水素である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記液体及び気体のそれぞれが、天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、サワーガス、乾性ガス、湿性ガス、油田ガス、随伴ガス、テールガス、ジメチルエーテル、原油、ナフサ、重質芳香族ナフサ、ガソリン、ケロシン、ディーゼル油、軽油、潤滑油、重油、A重油、B重油、C重油、ジェット燃料油、FCCスラリー、アスファルト、コンデンセート、ビチューメン、超重質油、タール、ガス液化油(GTL)、石炭液化油(CTL)、アスファルテン、芳香族炭化水素、アルキレート、基油、ケロジェン、コークス、黒油、合成原油、改質ガソリン、異性化ガソリン、再生重油、残油、白油、ラフィネート、ワックス、バイオマス燃料、バイオマス液化油(BTL)、バイオガソリン、バイオエタノール、バイオETBE及びバイオディーゼルからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去する方法であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物と、前記液体及び気体の少なくとも一方と、を接触させる、方法。
【請求項10】
前記組成物と、前記含硫黄化合物とを、−30℃〜150℃の範囲で接触させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、液化天然ガス、サワーガス、原油、ナフサ、重質芳香族ナフサ、ガソリン、ケロシン、ディーゼル油、軽油、重油、FCCスラリー、アスファルト、油田濃縮物等の化石燃料や精製石油製品等の炭化水素は、しばしば硫化水素や−SH基を含有するさまざまな化合物(典型的には各種メルカプタン類)等の含硫黄化合物を含む。
【0003】
中でも、硫化水素の毒性はよく知られており、化石燃料や精製石油製品を扱う産業では、硫化水素の含有量を安全なレベルまで低減させるために、相当の費用と努力が払われている。例えば、パイプラインガスに対しては、硫化水素の含有量が4質量ppmを超えないことが一般的な規制値として要求されている。
【0004】
また、硫化水素や−SH基を含有するさまざまな化合物は、その揮発性のために、大気中に漏出する傾向にある。そのため、炭化水素の貯蔵場所や、その周辺、パイプライン、及び出荷システムにおいては、該化合物の悪臭が問題となっている。また、硫化水素や−SH基を含有するさまざまな化合物は、下水等の水中にも存在し、それらに由来する悪臭がしばしば問題となっている。
【0005】
上記のような含硫黄化合物に由来する問題を解決するため、例えば特許文献1及び2では、アクロレイン等を用いた硫化水素の除去方法が提案されている。しかしながら、これらの方法でも、硫化水素等の含硫黄化合物の除去効率は、未だ十分ではなく、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4680127号明細書
【特許文献2】米国特許第3459852号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物(硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つ、以下においても同じである。)の除去効率に優れた組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アルデヒドと、水中25℃における共役酸のpKa値が11.3以上のアミンとを併用することにより、アルデヒドを単独で用いる場合に比べて、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物の除去効率が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記組成物が、アルデヒドと、水中25℃における共役酸のpKa値が11.3以上のアミンと、を含有する、組成物。
[2] 前記アミンが、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも1つを含む、上記[1]に記載の組成物。
【化1】

(上記式(1)及び(2)中、R〜R11はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、RはRと、RはRと、RはRと、RはR11と、それぞれ互いに連結して炭素数2〜6のアルキレン基を構成してもよい。)
[3] 前記一般式(1)で表される化合物が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)の少なくとも1つである、上記[2]に記載の組成物。
[4] 前記一般式(2)で表される化合物が、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(TBD)及び7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(MTBD)からなる群から選択される少なくとも1つである、上記[2]に記載の組成物。
[5] 前記アルデヒドが、α,β−不飽和アルデヒドである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6] 前記α,β−不飽和アルデヒドが、アクロレイン、セネシオアルデヒド及びシトラールからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[5]に記載の組成物。
[7] 前記液体及び気体のそれぞれが、炭化水素である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[8] 前記液体及び気体のそれぞれが、天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、サワーガス、乾性ガス、湿性ガス、油田ガス、随伴ガス、テールガス、ジメチルエーテル、原油、ナフサ、重質芳香族ナフサ、ガソリン、ケロシン、ディーゼル油、軽油、潤滑油、重油、A重油、B重油、C重油、ジェット燃料油、FCCスラリー、アスファルト、コンデンセート、ビチューメン、超重質油、タール、ガス液化油(GTL)、石炭液化油(CTL)、アスファルテン、芳香族炭化水素、アルキレート、基油、ケロジェン、コークス、黒油、合成原油、改質ガソリン、異性化ガソリン、再生重油、残油、白油、ラフィネート、ワックス、バイオマス燃料、バイオマス液化油(BTL)、バイオガソリン、バイオエタノール、バイオETBE及びバイオディーゼルからなる群から選択される少なくとも1つである、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[9] 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去する方法であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の組成物と、前記液体及び気体の少なくとも一方と、を接触させる、方法。
[10] 前記組成物と、前記含硫黄化合物とを、−30℃〜150℃の範囲で接触させる、上記[9]に記載の方法。
[11] 液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、
前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物の除去効率に優れた組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物であって、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンと、を含有することを特徴とする。
ここで、「含硫黄化合物」は、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。また、アミンの「pKa値」は、水中25℃における共役酸の酸解離定数(pKa)の値である。なお、特に断らない限り、以下において同じである。
【0012】
本発明の組成物は、アルデヒド及びpKa値が11.3以上のアミンを有効成分として含有することに起因して、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物の除去効率(以下、単に「除去率」ということがある。)に優れる。
【0013】
なお、本発明において「組成物」とは、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとが、同じ系内で共存している状態を指す。ここで、「アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとが、同じ系内で共存している状態」とは、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとが、同じ系内で混合されている状態を指し、少なくとも本発明の組成物を用いる対象となる含硫黄化合物を含む液体及び気体の少なくとも一方に接触する時点において、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとが混合されていればよい。すなわち、該液体等に接触させる前の時点では、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとは、それぞれ個別の成分として存在していてもよく、例えば該液体に対して、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとを、それぞれ個別に添加し、該液体中でこれらが混合されることで、組成物を構成してもよい。また、該液体等に接触させる前に予め、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとを混合しておくことで、組成物を構成してもよい。
【0014】
アルデヒドを含有する従来の含硫黄化合物除去剤に比べ、本発明の組成物が、含硫黄化合物の除去効率に優れる理由は必ずしも明らかではないが、アルデヒドと含硫黄化合物が反応する際に、pKa値が11.3以上のアミンの存在により含硫黄化合物の脱プロトン化が促進され、反応速度が向上することが要因の1つと考えられる。
【0015】
本発明の組成物は、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するためのものである。
本発明においては、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を、別の化合物に変換する等して、液体又は気体中の含硫黄化合物の含有量を当初の量から低減させることも「除去する」ことに含めるものとする。別の化合物に変換された後の変換物は、系中に存在したままにしてもよいし、系外に分離してもよい。
なお、典型的な除去方法としては、例えば後述するように、本発明の組成物と、含硫黄化合物を含む液体及び気体の少なくとも一方とを接触させ、その後、接触後の組成物と、接触後の液体及び気体とを分離することで、結果として、液体又は気体中の含硫黄化合物の含有量を、当初の量から低減させる方法等が挙げられる。
【0016】
本発明の組成物を用いる対象となる液体及び気体のそれぞれは、特に制限はないが、例えば水や炭化水素等が挙げられ、炭化水素が好ましい。また、液体及び気体のそれぞれの具体例としては、例えば天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、サワーガス、乾性ガス、湿性ガス、油田ガス、随伴ガス、テールガス、ジメチルエーテル、原油、ナフサ、重質芳香族ナフサ、ガソリン、ケロシン、ディーゼル油、軽油、潤滑油、重油、A重油、B重油、C重油、ジェット燃料油、FCCスラリー、アスファルト、コンデンセート、ビチューメン、超重質油、タール、ガス液化油(GTL)、石炭液化油(CTL)、アスファルテン、芳香族炭化水素、アルキレート、基油、ケロジェン、コークス、黒油、合成原油、改質ガソリン、異性化ガソリン、再生重油、残油、白油、ラフィネート、ワックス、バイオマス燃料、バイオマス液化油(BTL)、バイオガソリン、バイオエタノール、バイオETBE、バイオディーゼル等が挙げられる。液体及び気体のそれぞれは、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0017】
本発明において除去する対象となる含硫黄化合物は、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。すなわち、除去する対象は、硫化水素だけであってもよいし、−SH基を含有する化合物だけであってもよいし、これらの混合物であってもよい。ここで、−SH基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、化学式「R−SH」で示されメルカプタン類として分類される含硫黄化合物が挙げられる。当該化学式「R−SH」で示されるメルカプタン類としては、例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、sec−ブチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−アミルメルカプタン等のRがアルキル基であるもの;フェニルメルカプタン等のRがアリール基であるもの;ベンジルメルカプタン等のRがアラルキル基であるもの等が挙げられる。除去する対象となる−SH基を含有する化合物は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0018】
本発明において用いられるアルデヒドは特に制限されず、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ベンズアルデヒド等のモノアルデヒド;アクロレイン、セネシオアルデヒド、シトラール等のα,β−不飽和アルデヒド;グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、1,6−ヘキサンジアール、エチルペンタンジアール、1,7−ヘプタンジアール、メチルヘキサンジアール、1,8−オクタンジアール、メチルヘプタンジアール、ジメチルヘキサンジアール、エチルヘキサンジアール、1,9−ノナンジアール、2−メチル−1,8−オクタンジアール、エチルヘプタンジアール、1,10−デカンジアール、ジメチルオクタンジアール、エチルオクタンジアール、ドデカンジアール、ヘキサデカンジアール、1,2−シクロヘキサンジカルボアルデヒド、1,3−シクロヘキサンジカルボアルデヒド、1,4−シクロヘキサンジカルボアルデヒド、1,2−シクロオクタンジカルボアルデヒド、1,3−シクロオクタンジカルボアルデヒド、1,4−シクロオクタンジカルボアルデヒド、1,5−シクロオクタンジカルボアルデヒド等のジアルデヒド等が挙げられる。前記アルデヒドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
中でも、含硫黄化合物の除去効率の観点からは、α,β−不飽和アルデヒドが好ましく、より好ましくはアクロレイン、セネシオアルデヒド及びシトラールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。また、低毒性、生分解性、取扱いの安全性、耐熱性、低金属腐食性等の観点からは、セネシオアルデヒド及びシトラールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物がさらに好ましい。
【0020】
前記アルデヒドが含硫黄化合物と反応することで、液体又は気体中から含硫黄化合物が除去される。当該反応の形態に特に制限はないが、例えばアルデヒドがα,β−不飽和アルデヒドである場合は、含硫黄化合物が炭素−炭素二重結合に対し付加反応し得る。またその他のアルデヒドの場合は含硫黄化合物がホルミル基に対し付加反応し得る。
【0021】
本発明において用いられるアミンは、pKa値が11.3以上であり、好ましくは11.4以上であり、更に好ましくは11.5以上である。上記のようなpKaをもつアミンを用いることにより含硫黄化合物の除去効率が向上する。一方、pKa値が11.3未満のアミンを用いた場合には、含硫黄化合物の除去効率が十分に得られない。
ここで、pKa値(水中25℃における共役酸の酸解離定数(pKa)の値)は、任意の適切な測定装置を用いて測定してもよいし、「CRC HANDBOOK of CHEMISTRY and PHYSICS」等の文献からも知ることができる。具体的な測定方法としては、例えばpHメーターを用いて水素イオン濃度を測定し、該当物質の濃度と水素イオン濃度から算出する等の方法が挙げられる。
【0022】
また、本発明において用いられるpKa値が11.3以上のアミンは特に制限されず、例えば、アミジン骨格又はグアニジン骨格を有するものが好ましく、具体的には下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられ、一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
上記一般式(1)及び(2)中、R〜R11はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。ただし、RはRと、RはRと、RはRと、RはR11と、それぞれ互いに連結して炭素数2〜6のアルキレン基を構成してもよい。
【0025】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)等が挙げられる。
【0026】
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えばグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカン−5−エン(MTBD)等が挙げられる。
【0027】
前記アミンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記アミンは市販品を用いてもよいし、公知の方法で製造してもよい。公知の方法としては、例えば、DBUは、ε−カプロラクタムをシアノエチル化し、得られるN−(2−シアノエチル)カプロラクタムを水素付加し、このようにして得られたN−(3−アミノプロピル)カプロラクタムをさらに脱水環化反応することにより製造できる。また、TMGはテトラメチルチオ尿素からS−メチル化及びアミノ化することで製造できる。
【0028】
本発明の組成物におけるアルデヒドとpKa値が11.3以上のアミンとの含有量の合計は使用態様に応じて適宜設定することができる。含有量の合計は0.1質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。また、含有量の合計は90質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0029】
本発明の組成物におけるアルデヒドとpKa値が11.3以上のアミンとの含有量の比は、アルデヒドをA(質量部)、pKa値が11.3以上のアミンをB(質量部)とした場合に、通常A:B=0.1:99.9〜99.9:0.1であり、費用対効果の観点から好ましくはA:B=20:80〜99.5:0.5であり、より好ましくはA:B=40:60〜99:1であり、更に好ましくはA:B=41:59〜85:15である。
【0030】
本発明の組成物は、アルデヒドとpKa値が11.3以上のアミン以外に、本発明の効果を損なわない限り、界面活性剤、腐食防止剤、脱酸素剤、鉄分制御剤、架橋剤、ブレーカー、凝集剤、温度安定剤、pH調整剤、脱水調整剤、膨潤防止剤、スケール防止剤、殺生物剤、摩擦低減剤、消泡剤、逸泥防止剤、潤滑剤、粘土分散剤、加重剤、ゲル化剤、pKa値が11.3以上のアミン以外の含窒素化合物等の任意成分を更に含んでもよい。
【0031】
また本発明の組成物は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−ブテンー1−オール、プレノール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3―ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3―プロパンジオール、1,3―ブタンジオール、1,5―ペンタンジオール、3−メチル−1,5―ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の多価アルコール;ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、ケロシン、ソルベントナフサ等の炭化水素;ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2―エチルヘキシル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソヘキサデシル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル等のエステル化合物;メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジエーテル;重質芳香族ナフサ、石油蒸留物、水等の適当な溶媒を任意成分として含んでいてもよい。
【0032】
本発明の組成物が溶媒を含む場合、溶媒として、常温で液体、高沸点、アルデヒドおよびアミンに対して低反応性といった観点から、オクタン、ノナン、デカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、ケロシン、ソルベントナフサ等の炭化水素;カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2―エチルヘキシル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソヘキサデシル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル等のエステル化合物;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジエーテルが好ましく、溶解性の観点からケロシン、ソルベントナフサ、ラウリン酸メチル、ジエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましく、ジエチレングリコールジメチルエーテルがさらに好ましい。本発明の組成物が溶媒を含むことにより、アルデヒドを安定に保存できる上に、含硫黄化合物の除去効率に優れる。
【0033】
本発明の組成物の有効成分中における、前記アルデヒド及び前記水中25℃における共役酸のpKa値が11.3以上のアミンの合計含有量は、含硫黄化合物の除去効率の観点から、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%、よりさらに好ましくは90〜100質量%である。
ここで、有効成分とは、溶媒を除く成分のことをいう。
また、本発明の組成物が溶媒を含有する場合、組成物中における溶媒の含有量は、含硫黄化合物の除去効率を維持すると共に組成物中におけるアルデヒドを安定に保存させる観点から、好ましくは10〜95質量%、さらに好ましくは30〜95質量%、よりさらに好ましくは40〜95質量%である。
【0034】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば(I)本発明の組成物を用いる対象となる液体に対し、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンと、さらに必要に応じて前記任意成分と、をそれぞれ個別に添加して、該液体中でこれらを混合する方法、(II)上記液体等に接触させる前に予め、アルデヒドに対し、pKa値が11.3以上のアミンを添加して、さらに必要に応じて前記溶媒等の任意成分を添加して、混合する方法、(III)上記液体等に接触させる前に予め、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンと、さらに必要に応じて前記任意成分と、を混合する方法等によって製造できる。
【0035】
本発明の組成物は、本発明の組成物を用いる対象となる含硫黄化合物を含む液体及び気体の少なくとも一方に接触する時点において、アルデヒドと、上記アミンとが混合されていればよいが、取り扱いのし易さ等の観点から、上記方法(II)及び(III)のように、本発明の組成物を用いる対象となる液体等に添加する前に、予め組成物を形成しておくことが好ましい。
【0036】
本発明の組成物は好適には液状であるが、液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するために使用する形態に応じて、適宜担体等に担持させ、粉体、流体等の固体状としてもよい。
【0037】
本発明の組成物を用いて液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するにあたっては、本発明の組成物と、液体及び気体の少なくとも一方とを接触させればよい。含硫黄化合物の除去方法に係る好ましい具体的な実施態様の例としては、(i)含硫黄化合物の除去に十分な量の本発明の組成物を、含硫黄化合物を含む液体及び気体の少なくとも一方へ添加する方法、(ii)本発明の組成物が充填された容器に対して含硫黄化合物を含む気体(例えば炭化水素)を流通させる方法、(iii)含硫黄化合物を含む気体へ本発明の組成物をミスト状にして噴射する方法等が挙げられる。
【0038】
本発明の組成物を用いて液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するにあたっては、本発明の組成物中に含まれるアルデヒドの量が、液体又は気体中に含まれる含硫黄化合物1質量部に対し、好ましくは0.1〜5000質量部、より好ましくは2〜1000質量部となるように、本発明の組成物と、液体及び気体の少なくとも一方とを接触させればよい。例えば、前述したような、本発明の組成物が充填された容器に対して含硫黄化合物を含む気体を流通させる方法(ii)では、流通させる気体全量中の含硫黄化合物1質量部に対し、使用されるアルデヒドの量が前記範囲内となるよう、本発明の組成物の使用量を調整すればよい。また、気体及び液体の両方に含まれる含硫黄化合物を除去する際には、気体及び液体の両方に含まれる含硫黄化合物の全量を1質量部として、これに対し、使用されるアルデヒドの量が前記範囲内となるよう、本発明の組成物の使用量を調整すればよい。
【0039】
また、本発明の組成物と、液体及び気体の少なくとも一方とを接触させる際の温度は、特に制限はないが、好ましくは−30℃〜150℃の範囲内、より好ましくは0℃〜130℃の範囲内である。
【0040】
本発明の組成物と液体及び気体の少なくとも一方とを接触させた後、必要に応じて接触後の組成物と接触後の液体及び気体とを分離してもよい。特に上記したような本発明の組成物が充填された容器に対して含硫黄化合物を含む気体(例えば炭化水素)を流通させる方法(ii)等のように、接触後の組成物と接触後の気体とを容易に分離できる場合や、あるいは、液体中の含硫黄化合物を除去する場合であっても、接触後の組成物と接触後の液体とで相分離できるような場合等に、このような方法を採用することもできる。このようにすることで、液体又は気体中の含硫黄化合物の含有量を当初の量から低減させることができ、液体又は気体の品質を向上できる。
【0041】
本発明の組成物を用いて液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去する際のさらに具体的な態様としては、以下のようなものを例示できる。すなわち、本発明の組成物を用いて水中の含硫黄化合物を除去する際においては、例えば下水処理場等で本発明の組成物を貯水槽に注入する等の手段を採用できる。
また、本発明の組成物を用いて炭化水素中の含硫黄化合物を除去する際においては、炭化水素が液体である場合には、その貯留タンク、輸送のためのパイプライン、精製のための蒸留塔等に注入する等の公知の手段で添加することができる。炭化水素が気体である場合には、上述の如く気体と接触させるように本発明の組成物を設置するか、又は本発明の組成物を充填した吸収塔に気体を通過させる等の手段を取ることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0044】
なお、実施例及び比較例で用いた各種材料を以下に示す。
<炭化水素>
・ケロシン:和光純薬工業株式会社製、密度=0.8g/cm
・原油:石油資源開発製、密度=0.8g/cm
<含硫黄化合物>
・n−ブチルメルカプタン(BuSH):和光純薬工業株式会社製、密度=0.83g/cm
・エチルメルカプタン(EtSH):和光純薬工業株式会社製、密度=0.84g/cm
<アルデヒド>
・セネシオアルデヒド(SAL):特開昭60−224652号公報に記載の方法に準じ、プレノールから合成したもの(純度:98.1質量%)、密度=0.87g/cm
・アクロレイン:東京化成工業株式会社製、純度>95質量%、安定剤としてヒドロキノン含有、密度=0.84g/cm
・シトラール:特開昭52−148009号公報に記載の方法に準じ、プレノールから合成したもの(純度:97.0質量%)、密度=0.89g/cm
<アミン>
・1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU):和光純薬工業株式会社製、pKa=11.5、密度=1.02g/cm
・1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG):和光純薬工業株式会社製、pKa=13.6、密度=0.92g/cm
・トリエチルアミン:和光純薬工業株式会社製、pKa=10.8、密度=0.73g/cm
・N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA):和光純薬工業株式会社製、pKa=9.1、密度=0.83g/cm
【0045】
<溶媒>
・ソルベントナフサ:三協化学株式会社製(ソルベント#100)、密度=0.88g/cm
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:和光純薬工業株式会社製、密度=0.94g/cm
・ラウリン酸メチル:和光純薬工業株式会社製、密度=0.87g/cm
【0046】
(実施例1)
100mLの三口フラスコに、ケロシンを50mL加え、そこにBuSHを50μL(1000体積ppm、0.46mmol)添加し、含硫黄化合物を含むケロシン溶液を得た。
次に、上記ケロシン溶液に、SALを250μL(2.59mmol)、DBUを250μL(1.71mmol)添加し、該溶液を、室温(20℃±5℃、以下においても同じである。)で、800rpmにて撹拌して、含硫黄化合物の除去反応を行った。
反応1日後に、三口フラスコ内の液相部のメルカプタン濃度を測定したところ、メルカプタン濃度は122体積ppmであり、除去率は88%であった。
【0047】
なお、液相部のメルカプタン濃度は、ガスクロマトグラフィー分析により、検量線法で測定した。ガスクロマトグラフィー分析は、以下の条件で行った。
(ガスクロマトグラフィー分析)
分析機器:GC−SCD(アジレント・テクノロジー株式会社製)
検出器:SCD(化学発光硫黄検出器)
使用カラム:DB−sulfur SCD(長さ:60m、膜厚4.2μm、内径0.32mm)(アジレント・テクノロジー株式会社製)
分析条件:Inject.Temp.250℃、Detect.Temp.250℃
昇温条件:35℃(3分間保持)→(10℃/分で昇温)→250℃(15分間保持)
内部標準物質:硫化ジフェニル
【0048】
(比較例1)
アミンを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に含硫黄化合物の除去反応を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2並びに比較例2及び3)
DBUに代えて表1に示すアミンをそれぞれ使用したこと以外は、実施例1と同様の含硫黄化合物の除去反応を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
DBUの添加量を250μLから25μL(0.17mmol)に変更したこと以外は、実施例1と同様の含硫黄化合物の除去反応を行った。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
SALに代えてアクロレインを使用すると共に、反応時間を1日から2時間に変更したこと以外は、実施例3と同様の含硫黄化合物の除去反応を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例4)
アミンを使用せず、反応時間を2時間から1日に変更したこと以外は、実施例4と同様の含硫黄化合物の除去反応を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例5)
BuSHに代えてEtSHを使用したこと以外は、実施例3と同様の含硫黄化合物の除去反応を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例6)
ケロシンに代えて原油を使用したこと以外は、実施例3と同様の含硫黄化合物の除去反応を行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例7)
100mLの三口フラスコに、原油を50mL加え、そこにEtSHを30μL(596質量ppm、0.36mmol)添加し、含硫黄化合物を含む原油溶液を得た。
次に、上記原油溶液に、別途調製したSAL80質量%、DBU20質量%の組成からなる混合物を300μL(SALとして2.59mmol)添加し、該溶液を、室温で、800rpmにて撹拌して、含硫黄化合物の除去反応を行った。
反応7時間後に、三口フラスコ内の液相部のメルカプタン濃度を測定したところ、メルカプタン濃度は145質量ppmであり、除去率は76%であった。
【0057】
実施例1〜7で示されるように、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとを併用した場合には、アルデヒド単独で用いる場合(比較例1及び4)、又はアルデヒドとpKa値が11.3未満のアミンとを併用した場合(比較例2及び3)に比べて、液体中のメルカプタン(含硫黄化合物)をより効率よく除去できることが確認された。
【0058】
(実施例8)
100mLの三口フラスコに、原油を50mL加え、硫化水素ガス(硫化水素99.99体積%)を10mL/minの流速で45分間流通させて、硫化水素を吸収した原油溶液を得た。上記原油溶液を、別の100mLの三口フラスコに移し、さらに原油で希釈して50mLとした。希釈後の原油溶液の液相部の硫化水素濃度は、465質量ppm(0.53mmol)であった。
次に、上記希釈後の原油溶液に、別途調製したSAL91質量%、DBU9質量%の組成からなる混合物を75μL(SALとして0.62mmol)添加し、該溶液を、室温で、三口フラスコ内を800rpmにて撹拌して、含硫黄化合物の除去反応を行った。
反応3時間後に、三口フラスコ内の液相部の硫化水素濃度を測定したところ、303質量ppmであり、除去率は35%であった。
なお、液相部の硫化水素濃度は、メルカプタン濃度の場合と同様に上記ガスクロマトグラフィー分析により、検量線法で測定した。
【0059】
実施例8で示されるように、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとを併用した場合には、液体中の硫化水素の除去率にも優れることが確認された。
【0060】
(実施例9)
100mLの三口フラスコに、ケロシンを30mL加え、硫化水素1体積%、窒素99体積%の組成からなる混合ガスを50mL/minの流速で流通させ、800rpmで撹拌しながら三口フラスコ内の気体を置換した。1時間後に混合ガスの流通を止め、三口フラスコを密閉した後、三口フラスコ内の気相部の硫化水素濃度を測定したところ、8400体積ppmであった。
次に、上記ケロシン溶液に、別途調製したSAL90質量%、DBU10質量%の組成からなる混合物を1g(SALとして10.7mmol)添加した後、該溶液を、室温で、三口フラスコ内を800rpmにて撹拌して、含硫黄化合物の除去反応を行った。
反応30分後に三口フラスコ内の気相部の硫化水素濃度を測定したところ、0体積ppmであり、除去率は100%であった。
なお、気相部の硫化水素濃度は、北川式ガス検知管(光明理化学工業株式会社製の硫化水素ガス検知管をガス採取器「AP−20」に取り付けて使用)を用いて測定した。具体的には、まず、上記三口フラスコ内の気相部から、ガス試料を4mL採取し、これを空気96mLで希釈して、測定用サンプル100mLを調製した。次に、該測定用サンプルを、上記ガス採取器に流入し、1分後の上記ガス検知管の指示値を観察した。その後、該指示値に対して希釈倍率をかけて補正し、補正後の値を気相部の硫化水素濃度とした。
【0061】
(実施例10)
SAL90質量%、DBU10質量%の組成からなる混合物を、シトラール90質量%、DBU10質量%の組成からなる混合物(シトラールとして5.91mmol)に変更すると共に、反応時間を30分から1時間に変更したこと以外は、実施例9と同様の含硫黄化合物の除去反応を行った。
実施例10では、反応開始前の気相部の硫化水素濃度が4800体積ppmであり、反応1時間後、気相部の硫化水素濃度は140体積ppmであり、除去率は97%であった。
【0062】
実施例9及び10で示されるように、アルデヒドと、pKa値が11.3以上のアミンとを併用することで、液体及び気体中の硫化水素(含硫黄化合物)を効率よく除去できることが確認された。
【0063】
(参考例1)
9mLのサンプル管に、ケロシンを2g加え、SAL90質量%、DBU10質量%の組成からなる混合物を2gを添加し混合したところ、混合液の外観は均一であった。
【0064】
(参考例2)
ケロシンに代えてソルベントナフサを使用したこと以外は、参考例1と同様に評価した。得られた混合液の外観は均一であった。
【0065】
(参考例3)
ケロシンに代えてジエチレングリコールジメチルエーテルを使用したこと以外は、参考例1と同様に評価した。得られた混合液の外観は均一であった。
【0066】
(参考例4)
ケロシンに代えてラウリン酸メチルを使用したこと以外は、参考例1と同様に評価した。得られた混合液の外観は均一であった。
【0067】
(参考例5)
500mLのナスフラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテルを360g加え、SAL90質量%、DBU10質量%の組成からなる混合物を40gを添加し混合したところ、混合液の外観は均一であった。
【0068】
(参考例6)
参考例5で得られた混合液を室温にて7日間保管した後、ガスクロマトグラフィー分析にてSALの含有量を分析したところ、初期に対し残存量は97%であった。
【0069】
(実施例11)
250mLのガス洗浄瓶(焼結フィルター付き)に参考例5で得られた混合液を200mL加え、硫化水素0.1体積%、窒素99.9体積%の組成からなる混合ガスを100mL/minの流速で流通させた。流通1時間後、ガス洗浄瓶の出口の気相部の硫化水素濃度を測定したところ、7体積ppmであり、除去率は99%であった。
【0070】
参考例1〜6で示されるように、本発明の組成物がこれらの溶媒を含有していても均一な溶液が得られ、かつアルデヒドを劣化させることなく保管することができることが分かる。また、実施例11で示されるように、溶媒を添加した組成物であっても、含硫黄化合物の除去効率に優れることが分かる。
【要約】
液体及び気体の少なくとも一方に含まれる含硫黄化合物を除去するための組成物であって、前記含硫黄化合物が、硫化水素及び−SH基を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記組成物が、アルデヒドと、水中25℃における共役酸のpKa値が11.3以上のアミンと、を含有する、組成物。