(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池接着層用組成物は、本発明の非水系二次電池用接着層を形成する際に用いることができる。また、本発明の非水系二次電池用接着層は、電池部材同士を接着する際に用いることができる。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用接着層を備えることを特徴とする。
【0017】
(非水系二次電池接着層用組成物)
本発明の非水系二次電池接着層用組成物は、粒子状重合体と、フッ素系重合体とを含み、粒子状重合体は、コア部と、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有する。そして、粒子状重合体は、コア部が電解液膨潤度5倍以上30倍以下のコア部重合体からなり、シェル部が電解液膨潤度1倍超4倍以下のシェル部重合体からなり、フッ素重合体は、ガラス転移温度が30℃以下であることを特徴とする。
【0018】
<フッ素重合体>
ガラス転移温度が30℃以下のフッ素重合体は、本発明の非水系二次電池接着層用組成物を用いた接着層に優れた接着性を発揮させると共に、当該接着層を備える二次電池に優れた電気特性を発揮させる。
【0019】
[フッ素重合体の組成]
ここで、フッ素重合体は、フッ素含有単量体単位を含む重合体である。具体的には、フッ素重合体としては、1種類以上のフッ素含有単量体の単独重合体または共重合体や、1種類以上のフッ素含有単量体とフッ素を含有しない単量体(以下、「フッ素非含有単量体」と称する。)との共重合体が挙げられる。
ここで、フッ素重合体におけるフッ素含有単量体単位の割合は、通常50質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましい。また、フッ素重合体におけるフッ素非含有単量体単位の割合は、通常50質量%以下であり、30質量%以下であることが好ましい。
なお、本明細書において「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
【0020】
そして、フッ素含有単量体単位を形成し得るフッ素含有単量体としては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、三フッ化塩化ビニル、フッ化ビニル、パーフルオロアルキルビニルエーテル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロヘキシルエチルアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、フッ素含有単量体としては、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンが好ましい。
【0021】
また、フッ素非含有単量体単位を形成し得るフッ素非含有単量体としては、フッ素含有単量体と共重合可能なフッ素を含まない単量体、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの1−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸などのカルボキシル基を含有するビニル化合物;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有不飽和化合物;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有不飽和化合物;3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパン硫酸などの硫酸基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−リン酸プロピル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸などのリン酸基含有不飽和化合物などが挙げられる。
なお、本明細書において「(メタ)アクリロ」とは、アクリロおよび/またはメタクリロを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味する。
【0022】
そして、フッ素重合体としては、フッ素含有単量体としてフッ化ビニリデンを用いた重合体が好ましい。
具体的には、フッ素重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)およびフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体が好ましく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体がより好ましい。
なお、上述したフッ素重合体は、一種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0023】
[フッ素重合体のガラス転移温度]
フッ素重合体のガラス転移温度は、30℃以下であることが必要であり、20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−100℃以上であることが好ましく、−80℃以上であることがより好ましく、−60℃以上であることが更に好ましい。フッ素重合体のガラス転移温度を上記範囲の上限値以下とすることで、接着層の電解液中での接着性および電解液への浸漬前の接着性の双方を向上させることができる。また、フッ素重合体のガラス転移温度を上記範囲の下限値以上とすることで、接着層の耐ブロッキング性を向上させることができる。なお、フッ素重合体のガラス転移温度は、重合に用いる単量体の種類を変更することによって調整可能である。
【0024】
[フッ素重合体の質量平均分子量]
ここで、フッ素重合体の質量平均分子量(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによるポリスチレン換算値)は、100,000〜2,000,000が好ましく、200,000〜1,000,000がより好ましい。
フッ素重合体の質量平均分子量を上記範囲とすることで、接着層用組成物の粘度調整が容易になる。
【0025】
[フッ素重合体の製造方法]
上述したフッ素重合体の製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。
また、重合方法としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。また、重合開始剤としては、既知の重合開始剤を用いることができる。
【0026】
そして、フッ素重合体は、分散媒に分散された分散液または溶解された溶液の状態で使用される。フッ素重合体の分散媒としては、フッ素重合体を均一に分散または溶解し得るものであれば、特に制限されず、水や有機溶媒を用いることができ、有機溶媒を用いることが好ましい。なお、有機溶媒としては、特に限定されることなく、接着層用組成物の分散媒として用いる有機溶媒を用いることができる。
【0027】
<粒子状重合体>
所定のコアシェル構造および電解液膨潤度を有する粒子状重合体は、本発明の非水系二次電池接着層用組成物を用いた接着層に優れた耐ブロッキング性を発揮させると共に、上述したフッ素重合体と併用することで、接着層に電解液中で優れた接着性を発揮させ、かつ、接着層を備える二次電池に優れた電気特性を発揮させる。特に、本発明の非水系二次電池接着層用組成物を用いて形成された接着層は、粒子状重合体を含有せずフッ素重合体のみを含有する非水系二次電池接着層用組成物を用いて形成された接着層と比較して、耐ブロッキング性を顕著に向上させることができる。
【0028】
なお、上記粒子状重合体を使用することで上述したような優れた効果が得られる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。
即ち、粒子状重合体のシェル部を構成するシェル部重合体は、電解液に膨潤していない状態においては、通常、接着性を有さず、電解液に膨潤することにより初めて接着性を発現する。そのため、粒子状重合体は、電解液に膨潤していない状態において、通常、接着性を発現しない。そのため、この粒子状重合体を含む接着層を備える電池部材は、電解液への浸漬前であっても優れた接着性を発揮する上記フッ素重合体を接着層が含む場合であっても、ブロッキングを生じ難いものと推察される。なお、粒子状重合体は、電解液に膨潤しない限りは接着性を全く発揮しないというものではなく、電解液に膨潤していない状態であっても、例えば一定温度以上(例えば50℃以上)に加熱されることにより、接着性を発現し得る。
【0029】
また、シェル部重合体は、電解液に対して膨潤する。このとき、例えば膨潤したシェル部重合体が有する官能基が活性化して電池部材(例えば、セパレータ、電極等)の表面にある官能基と化学的または電気的な相互作用を生じるなどの要因により、シェル部は電池部材と強固に接着できる。そのため、粒子状重合体を含む接着層は、電池部材同士を電解液中において強力に接着することが可能となっているものと推察される。
【0030】
また、粒子状重合体を含む接着層を使用した場合、上述したように電解液中において電池部材同士を強力に接着することができるので、当該接着層を備える二次電池では、接着層を介して接着された電池部材間(例えば、セパレータと電極との間)に空隙を生じ難い。そのため、粒子状重合体を含む接着層を使用した二次電池では、二次電池内において正極と負極との距離が大きくなり難く、二次電池の内部抵抗を小さくできると共に、電極における電気化学反応の反応場が不均一になり難い。更に、当該二次電池では、充放電を繰り返してもセパレータと電極との間に空隙ができ難く、電池容量が低下しにくい。これにより、優れた電気特性が実現できるものと推察される。
【0031】
更に、粒子状重合体のコア部を構成するコア部重合体は、電解液に対して大きく膨潤する。そして、重合体は、電解液に大きく膨潤した状態では、重合体の分子間の隙間が大きくなり、その分子間をイオンが通り易くなる。また、粒子状重合体のコア部重合体は、シェル部によって完全に覆われてはいない。そのため、電解液中においてイオンがコア部を通りやすくなるので、粒子状重合体は高いイオン拡散性を発現できる。従って、上記粒子状重合体を含む接着層は、抵抗の上昇を抑制し、低温出力特性の低下を抑制することが可能であると推察される。
【0032】
[粒子状重合体の構造]
上述した通り、粒子状重合体は、コア部と、コア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有している。また、シェル部は、コア部の外表面を部分的に覆っている。即ち、粒子状重合体のシェル部は、コア部の外表面を覆っているが、コア部の外表面の全体を覆ってはいない。外観上、コア部の外表面がシェル部によって完全に覆われているように見える場合であっても、シェル部の内外を連通する孔が形成されていれば、そのシェル部はコア部の外表面を部分的に覆うシェル部である。したがって、例えば、シェル部の外表面(即ち、粒子状重合体の周面)からコア部の外表面まで連通する細孔を有するシェル部を備える粒子状重合体は、上記粒子状重合体に含まれる。
【0033】
ここで、粒子状重合体のシェル部は、複数のシェル部構造体からなることが好ましい。
具体的には、粒子状重合体の一例の断面構造を
図1に示すように、粒子状重合体100は、コア部重合体からなるコア部110およびシェル部重合体からなる複数のシェル部構造体120で形成されたシェル部を備えるコアシェル構造を有することが好ましい。ここで、コア部110は、この粒子状重合体100においてシェル部よりも内側にある部分である。また、シェル部構造体120は、コア部110の外表面110Sを覆い、当該シェル部構造体120からなるシェル部は、通常は粒子状重合体100において最も外側にある部分である。そして、シェル部構造体120からなるシェル部は、コア部110の外表面110Sの全体を覆っているのではなく、コア部110の外表面110Sを部分的に覆っている。
【0034】
[[被覆率]]
ここで、粒子状重合体では、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(以下「被覆率」という。)は、10%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、55%以上であることが更に好ましく、99%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、85%以下であることが更に好ましい。被覆率を上記範囲の下限値以上とすることにより、接着層の耐ブロッキング性、接着層の電解液中での接着性、および二次電池の高温サイクル特性をそれぞれ向上させることができる。また、被覆率を上記範囲の上限値以下とすることにより、イオン拡散性を高め、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。
【0035】
なお、被覆率は、粒子状重合体の観察結果から測定しうる。具体的には、以下に説明する方法により測定しうる。
まず、粒子状重合体を常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分に分散させた後、包埋し、粒子状重合体を含有するブロック片を作製する。次に、ブロック片を、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ80nm〜200nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製する。その後、必要に応じて、例えば四酸化ルテニウムまたは四酸化オスミウムを用いて測定用試料に染色処理を施す。
次に、この測定用試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)にセットして、粒子状重合体の断面構造を写真撮影する。透過型電子顕微鏡の倍率は、粒子状重合体1個の断面が視野に入る倍率が好ましく、具体的には10,000倍程度が好ましい。
撮影された粒子状重合体の断面構造において、コア部の外表面に相当する周の長さD1、および、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を測定する。そして、測定された長さD1および長さD2を用いて、下記の式(1)により、その粒子状重合体のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合Rcを算出する。
被覆割合Rc(%)=(D2/D1)×100 ・・・(1)
上記の被覆割合Rcを、20個以上の粒子状重合体について測定し、その平均値を計算して、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)とする。
ここで、上記の被覆割合Rcは、断面構造からマニュアルで計算することもできるが、市販の画像解析ソフトを用いて計算することもできる。市販の画像解析ソフトとして、例えば「AnalySIS Pro」(オリンパス株式会社製)を用いることができる。
【0036】
[[体積平均粒子径D50]]
また、粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることが更に好ましく、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。粒子状重合体の体積平均粒子径D50を上記範囲の下限値以上にすることにより、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、粒子状重合体の体積平均粒子径D50を上記範囲の上限値以下にすることにより、接着層の電解液中での接着性および二次電池の高温サイクル特性をそれぞれ向上させることができる。
なお、粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、固形分濃度15質量%に調整した粒子状重合体の水分散液について、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて粒子径分布を湿式測定し、得られた粒子径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径として求めうる。
【0037】
なお、粒子状重合体は、所期の効果を著しく損なわない限り、上述したコア部およびシェル部以外に任意の構成要素を備えていてもよい。具体的には、例えば、粒子状重合体は、コア部の内部に、コア部とは別の重合体で形成された部分を有していてもよい。具体例を挙げると、粒子状重合体をシード重合法で製造する場合に用いたシード粒子が、コア部の内部に残留していてもよい。ただし、所期の効果を顕著に発揮する観点からは、粒子状重合体はコア部およびシェル部のみを備えることが好ましい。
【0038】
[コア部]
[[コア部重合体の電解液膨潤度]]
粒子状重合体のコア部は、電解液に対して所定の膨潤度を有するコア部重合体からなる。具体的には、コア部重合体の電解液膨潤度は、5倍以上であることが必要であり、7倍以上であることが好ましく、8倍以上であることがより好ましく、30倍以下であることが必要であり、28倍以下であることが好ましく、25倍以下であることがより好ましい。コア部重合体の電解液膨潤度を上記範囲の下限値以上にすることにより、イオン拡散性を高め、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、コア部重合体の電解液膨潤度を上記範囲の上限値以下にすることにより、接着層の電解液中での接着性および二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。
【0039】
なお、コア部重合体の電解液膨潤度を調整する方法としては、例えば、当該コア部重合体を製造するための単量体の種類および量を適切に選択することが挙げられる。一般に、重合体のSP値が電解液のSP値に近い場合、その重合体はその電解液に膨潤しやすい傾向がある。他方、重合体のSP値が電解液のSP値から離れていると、その重合体はその電解液に膨潤し難い傾向がある。
【0040】
ここでSP値とは、溶解度パラメータのことを意味する。
そして、SP値は、Hansen Solubility Parameters A User’s Handbook,2ndEd(CRCPress)で紹介される方法を用いて算出することができる。
また、有機化合物のSP値は、その有機化合物の分子構造から推算することも可能である。具体的には、SMILEの式からSP値を計算できるシミュレーションソフトウェア(例えば「HSPiP」(http=//www.hansen−solubility.com))を用いて計算しうる。このシミュレーションソフトウェアでは、Hansen SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook SecondEdition、Charles M.Hansenに記載の理論に基づき、SP値が求められている。
【0041】
[[コア部重合体のガラス転移温度]]
また、コア部重合体のガラス転移温度は、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましく、150℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが更に好ましい。コア部重合体のガラス転移温度を上記範囲の下限値以上にすることにより、接着層の耐ブロッキング性を向上させることができる。また、コア部重合体のガラス転移温度を上記範囲の上限値以下にすることにより、接着層の電解液中での接着性および二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。
【0042】
[[コア部重合体の組成]]
コア部重合体を調製するために用いる単量体としては、コア部重合体の電解液膨潤度が上記範囲となるものを適宜選択して用いうる。そのような単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、水酸基を有する単量体等の酸基含有単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体;1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記の単量体の中でも、コア部重合体の調製に用いられる単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を用いることがより好ましい。即ち、コア部重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位または(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含むことがより好ましく、メタクリル酸メチル由来の単量体単位を含むことが特に好ましい。これにより、コア部重合体の膨潤度の制御が容易になる。
【0044】
また、コア部重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位の割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、98質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることが更に好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位の割合を上記範囲の下限値以上にすることにより、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位の割合を上記範囲の上限値以下にすることにより、接着層の電解液中での接着性および二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。
【0045】
また、コア部重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0046】
そして、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
また、水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0047】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
また、コア部重合体における酸基含有単量体単位の割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましい。酸基含有量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、粒子状重合体の調製時に、コア部重合体の分散性を高め、コア部重合体の外表面に対し、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を形成し易くすることができる。
【0049】
また、コア部重合体は、上記単量体単位に加え、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体とは、加熱またはエネルギー線の照射により、重合中または重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。架橋性単量体単位を含むことにより、コア部重合体の膨潤度を、上記の範囲に容易に収めることができる。
【0050】
架橋性単量体としては、例えば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。これらの中でも、コア部重合体の電解液膨潤度を容易に制御する観点から、エチレングリコールジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートが好ましく、エチレングリコールジメタクリレートがより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
ここで、一般に、重合体において架橋性単量体単位の割合が増えると、その重合体の電解液膨潤度は小さくなる傾向がある。したがって、架橋性単量体単位の割合は、使用する単量体の種類および量を考慮して決定することが好ましい。コア部重合体における架橋性単量体単位の具体的な割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。架橋性単量体単位の割合を上記範囲の下限値以上にすることにより、接着層の電解液中での接着性および二次電池のサイクル特性を向上させることができる。また、架橋性単量体単位の割合を上記範囲の上限値以下にすることにより、粒子状重合体の調製時の重合安定性が確保され、得られる粒子状重合体を好適な粒子状とすることができる。
【0052】
更に、コア部の径は、粒子状重合体の体積平均粒子径100%に対して、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましく、97%以下であることが更に好ましく、95%以下であることが特に好ましい。コア部の径を上記範囲内とすることにより、接着層の電解液中での接着性を向上させることができる。
【0053】
ここで、コア部の径は、粒子状重合体の製造過程において得られる、シェル部を形成する前の粒子状の重合体の体積平均粒子径D50として測定することができる。このようなシェル部を形成する前の粒子状の重合体は、コア部を構成する重合体(コア部重合体)に相当する。なお、シェル部を形成する前の粒子状の重合体の体積平均粒子径D50は、上記粒子状重合体の体積平均粒子径D50と同様に測定しうる。
【0054】
[シェル部]
[[シェル部重合体の電解液膨潤度]]
粒子状重合体のシェル部は、コア部重合体の電解液膨潤度よりも小さい所定の電解液膨潤度を有するシェル部重合体からなる。具体的には、シェル部重合体の電解液膨潤度は、1倍超であることが必要であり、1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、4倍以下であることが必要であり、3.5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。シェル部重合体の電解液膨潤度を1倍超にすることにより、イオン拡散性を高め、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、接着層の電解液中での接着性および二次電池のサイクル特性を向上させることができる。更に、シェル部重合体の電解液膨潤度を上記範囲の上限値以下にすることにより、接着層の電解液中での接着性および二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。
【0055】
ここで、シェル部重合体の電解液膨潤度を調整する方法としては、コア部重合体と同様に、例えば、当該シェル部重合体を製造するための単量体の種類および量を適切に選択することが挙げられる。
【0056】
[[シェル部重合体のガラス転移温度]]
また、シェル部重合体のガラス転移温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましく、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましい。シェル部重合体のガラス転移温度を上記範囲の下限値以上にすることにより、接着層の耐ブロッキング性を向上させることができる。また、ガラス転移温度を上記範囲の上限値以下にすることにより、接着層の電解液中での接着性および二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。
【0057】
[[コアシェル比率]]
更に、シェル部は、粒子状重合体の体積平均粒子径D50に対して、所定の範囲に収まる平均厚みを有することが好ましい。具体的には、粒子状重合体の体積平均粒子径D50に対するシェル部の平均厚み(コアシェル比率)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることが更に好ましく、30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。シェル部の平均厚みを上記範囲の下限値以上にすることにより、接着層の電解液中での接着性および二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。また、シェル部の平均厚みを上記範囲の上限値以下とすることにより、二次電池の低温出力特性を向上させることができる。
【0058】
ここで、シェル部の平均厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子状重合体の断面構造を観察することにより求められる。具体的には、TEMを用いて粒子状重合体の断面構造におけるシェル部の最大厚みを測定し、任意に選択した20個以上の粒子状重合体のシェル部の最大厚みの平均値を、シェル部の平均厚みとする。ただし、シェル部が重合体の粒子によって構成されており、かつ、粒子状重合体の径方向で、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成している場合は、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径をシェル部の平均厚みとする。
【0059】
[[シェル部の形態]]
また、シェル部の形態は特に制限されないが、シェル部は、重合体の粒子によって構成されていることが好ましい。シェル部が重合体の粒子によって構成されている場合、粒子状重合体の径方向にシェル部を構成する粒子が複数重なり合っていてもよい。ただし、粒子状重合体の径方向では、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成していることが好ましい。
【0060】
更に、シェル部が重合体の粒子によって構成されている場合、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましい。個数平均粒子径を上記範囲に収めることにより、接着層の電解液中での接着性を向上させることができる。
【0061】
なお、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子状重合体の断面構造を観察することにより求められる。具体的には、粒子状重合体の断面構造におけるシェル部を構成する粒子の最長径を測定し、任意に選択した20個以上の粒子状重合体のシェル部を構成する粒子の最長径の平均値を、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径とすることができる。
【0062】
[[シェル部重合体の組成]]
シェル部重合体を調製するために用いる単量体としては、シェル部重合体の電解液膨潤度が上記範囲となるものを適宜選択して用いうる。そのような単量体としては、例えば、コア部重合体を製造するために用いうる単量体として例示した単量体と同様の単量体が挙げられる。また、このような単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0063】
これらの単量体の中でも、シェル部重合体の調製に用いられる単量体としては、芳香族ビニル単量体が好ましい。即ち、シェル部重合体は、芳香族ビニル単量体単位を含むことが好ましい。芳香族ビニル単量体を用いれば、シェル部重合体の電解液膨潤度を制御し易い。また、接着層の接着性を一層高めることができる。そして、芳香族ビニル単量体の中でも、スチレンおよびスチレンスルホン酸等のスチレン誘導体がより好ましく、二次電池の低温出力特性を更に向上させる観点からは、スチレンが更に好ましい。
【0064】
そして、シェル部重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99.5質量%以下である。芳香族ビニル単量体単位の割合を上記範囲内とすることにより、電解液中での接着層の接着性を高め、二次電池の高温サイクル特性などの電気的特性を更に向上させることができる。
【0065】
また、シェル部重合体は、芳香族ビニル単量体単位以外に、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体としては、コア部が含み得る酸基含有単量体単位を構成しうる単量体と同様の単量体が挙げられる。
【0066】
中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
シェル部重合体中の酸基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。酸基含有単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、接着層中での粒子状重合体の分散性を向上させ、特に電解液中において接着層全面に渡って良好な接着性を発現させることができる。
【0068】
また、シェル部重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体としては、例えば、コア部重合体に用いうる架橋性単量体として例示したものと同様の単量体が挙げられる。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0069】
[粒子状重合体の製造方法]
上述したコアシェル構造を有する粒子状重合体は、例えば、コア部重合体の単量体と、シェル部重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、製造することができる。具体的には、粒子状重合体は、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法および多段階懸濁重合法によって製造することができる。
【0070】
そこで、以下に、多段階乳化重合法により上記コアシェル構造を有する粒子状重合体を得る場合の一例を示す。
【0071】
重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
【0072】
そして、重合手順としては、まず、水などの重合溶媒に、コア部を形成する単量体および乳化剤を混合し、その後重合開始剤を入れ、一括で乳化重合することによってコア部を構成する粒子状の重合体を得る。さらに、このコア部を構成する粒子状の重合体の存在下にシェル部を形成する単量体の重合を行うことによって、上述したコアシェル構造を有する粒子状重合体を得ることができる。
【0073】
この際、コア部の外表面をシェル部によって部分的に覆う観点から、シェル部重合体を形成する単量体は、複数回に分割して、もしくは、連続して重合系に供給することが好ましい。シェル部重合体を形成する単量体を重合系に分割して、もしくは、連続で供給することにより、シェル部を構成する重合体が粒子状に形成され、この粒子がコア部と結合することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
【0074】
ここで、シェル部重合体を形成する単量体を複数回に分割して供給する場合には、単量体を分割する割合に応じてシェル部を構成する粒子の粒子径およびシェル部の平均厚みを制御することが可能である。また、シェル部重合体を形成する単量体を連続で供給する場合には、単位時間あたりの単量体の供給量を調整することで、シェル部を構成する粒子の粒子径およびシェル部の平均厚みを制御することが可能である。
【0075】
また、シェル部重合体を形成する単量体として重合溶媒に対して親和性の低い単量体を用いると、コア部を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる傾向がある。従って、重合溶媒が水の場合、シェル部重合体を形成する単量体は、疎水性単量体を含むことが好ましく、芳香族ビニル単量体を含むことが特に好ましい。
【0076】
更に、シェル部の重合に用いる乳化剤量を少なくすると、コア部を部分的に覆うシェル部を形成し易くなる傾向がある。従って、適宜乳化剤量を調整することによっても、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
【0077】
なお、コア部を構成する粒子状の重合体の体積平均粒子径、シェル部を形成した後の粒子状重合体の体積平均粒子径、および、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径は、例えば、乳化剤の量、単量体の量などを調整することで、所望の範囲にすることができる。
【0078】
更に、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、コア部を構成する粒子状の重合体の体積平均粒子径に対応させて、例えば、乳化剤の量、および、シェル部重合体を形成する単量体の量を調整することで、所望の範囲にすることができる。
【0079】
<各重合体の配合量>
上述したフッ素重合体および粒子状重合体を含む非水系二次電池接着層用組成物におけるフッ素重合体の配合量は、粒子状重合体100質量部当たり、50質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましく、120質量部以上であることが更に好ましく、250質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、170質量部以下であることが更に好ましい。フッ素重合体の配合量を上記範囲の下限値以上にすることにより、接着層の接着性、二次電池の高温サイクル特性、低温出力特性を向上させることができる。また、フッ素重合体の配合量を上記範囲の上限値以下にすることにより、接着層の耐ブロッキング性を向上させることができる。
なお、非水系二次電池接着層用組成物中のフッ素重合体および粒子状重合体の合計の配合量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。
【0080】
<その他の成分>
非水系二次電池接着層用組成物は、上述した粒子状重合体、フッ素重合体以外にも、任意のその他の成分を含んでいてもよい。これらのその他の成分としては、例えば、濡れ剤、粘度調整剤、電解液添加剤などの既知の添加剤が挙げられる。これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
<非水系二次電池接着層用組成物の調製方法>
ここで、非水系二次電池接着層用組成物の調製方法は、特に限定はされないが、例えば、粒子状重合体と、フッ素重合体と、濡れ剤などのその他の成分とを有機溶媒に溶解または分散させて接着剤組成物を調製する。具体的には、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の分散機を使用し、粒子状重合体と、フッ素重合体と、その他の成分とを有機溶媒中に分散または溶解させて非水系二次電池接着層用組成物を調製する。なお、粒子状重合体を調製する際に重合溶媒として水を用いた場合には、粒子状重合体は、乾燥させた後に有機溶媒に添加してもよいし、溶媒置換を行ってから有機溶媒に添加してもよい。
【0082】
[有機溶媒]
ここで、有機溶媒としては、上記各成分の溶解または分散状態が確保可能な極性を有する有機溶媒を用いることができる。中でも、有機溶媒としては、粒子状重合体を、粒子状重合体のコアシェル構造を維持したまま分散可能であり、且つ、フッ素重合体を溶解可能な有機溶媒を用いることが好ましい。
具体的には、有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどを用いることができる。これらの中でも、取扱い易さ、安全性、合成の容易さなどの観点から、有機溶媒としてはアセトンが最も好ましい。
なお、これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。
【0083】
(非水系二次電池用接着層)
本発明の非水系二次電池用接着層は、上述した非水系二次電池接着層用組成物を用いて形成される。そして、本発明の非水系二次電池用接着層は、本発明の非水系二次電池を製造する際に用いられる。具体的には、本発明の非水系二次電池用接着層は、電池部材間に設けられ、互いの電池部材を接着するために用いられる。そして、本発明の非水系二次電池用接着層は、上述した粒子状重合体およびフッ素重合体を含んでいるので、耐ブロッキング性および電解液中での接着性に優れ、かつ、当該接着層を備える二次電池の電気特性を優れたものとすることができる。
なお、本発明の非水系二次電池用接着層中のフッ素重合体および粒子状重合体の合計量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
なお、本発明の非水系二次電池用接着層は、電池部材と、アルミニウム包材外装などの電池容器(外装体)との接着に用いてもよい。
【0084】
<非水系二次電池用接着層の形成方法>
本発明の非水系二次電池用接着層は、例えば、上述した非水系二次電池接着層用組成物を電池部材(電極(正極もしくは負極)またはセパレータなど)上に塗布し、塗布した接着層用組成物を乾燥させることにより形成することができる。
【0085】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用接着層を備え、当該非水系二次電池用接着層を介して電池部材同士を接着したことを特徴とする。そして、本発明の非水系二次電池は、電池部材同士が良好に接着しており、かつ、電気特性に優れている。
具体的には、本発明の非水系二次電池は、例えば、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備え、正極上、負極上およびセパレータ上の少なくとも1つ以上に上述した非水系二次電池用接着層を形成したものである。そして、本発明の非水系二次電池の一例では、非水系二次電池用接着層を介して、正極とセパレータ、および/または、負極とセパレータが接着されて一体化される。
【0086】
なお、上述した正極、負極およびセパレータ、並びに、電解液としては、非水系二次電池において用いられている既知の正極、負極、セパレータおよび電解液を使用することができる。
【0087】
具体的には、電極(正極および負極)としては、電極合材層を集電体上に形成してなる電極を用いることができる。なお、集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料からなるものを用いることができる。これらの中でも、負極用の集電体としては、銅からなる集電体を用いることが好ましい。また、正極用の集電体としては、アルミニウムからなる集電体を用いることが好ましい。更に、電極合材層としては、電極活物質と結着材とを含む層を用いることができる。
【0088】
また、電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましく、LiPF
6が特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0089】
更に、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類を用いることが好ましく、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物を用いることが更に好ましい。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができ、例えば0.5〜15質量%することが好ましく、2〜13質量%とすることがより好ましく、5〜10質量%とすることが更に好ましい。また、電解液には、既知の添加剤、例えばフルオロエチレンカーボネートやエチルメチルスルホンなどを添加してもよい。
【0090】
また、上述したセパレータとしては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
【0091】
<非水系二次電池の製造方法>
本発明の非水系二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。非水系二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0092】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の上記重合体における割合は、特に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例および比較例において、電解液膨潤度、ガラス転移温度、粒子状重合体のコアシェル比率、粒子状重合体の被覆率、粒子状重合体の体積平均粒子径D50、接着層の電解液中での接着性、二次電池の高温サイクル特性、二次電池の低温出力特性、並びに接着層の耐ブロッキング性は、下記の方法で測定および評価した。
【0093】
<電解液膨潤度>
粒子状重合体のコア部およびシェル部の調製に用いた単量体および各種添加剤等を使用し、コア部およびシェル部の重合条件と同様の重合条件で、コア部重合体およびシェル部重合体を含む水分散液をそれぞれ調製した。次に、この水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥し、乾燥により得られた粉末を200℃で熱プレスすることで厚み0.5mmのフィルムを得た。そして、得られたフィルムを1cm角に裁断し、試験片を得た。この試験片の質量W0を測定した。また、前記試験片を、電解液に60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬後の試験片の質量W1を測定した。そして、これらの質量W0およびW1を用いて、電解液膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて求めた。
なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)との混合溶媒(体積比:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm
3)
1/2)に、支持電解質としてLiPF
6を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用いた。
【0094】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度の測定にあたり、コア部重合体およびシェル部重合体については、各重合体の調製に使用した単量体組成物を使用し、当該重合体の重合条件と同様の重合条件で、測定試料となる重合体を含む水分散液をそれぞれ作製し、当該水分散液を乾燥させることで測定試料を得た。また、フッ素重合体についてはフッ素重合体のアセトン溶液(濃度5%)を乾燥させて測定試料を得た。
次に、示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、製品名「EXSTAR DSC6220」)を用い、乾燥させた測定試料10mgをアルミパンに計量し、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲−100℃〜500℃の間で、昇温速度10℃/分、常温常湿下で、DSC曲線を測定した。この昇温過程で、微分信号(DDSC)が0.05mW/分/mg以上となるDSC曲線の吸熱ピークが出る直前のベースラインと、吸熱ピーク後に最初に現れる変曲点でのDSC曲線の接線との交点から、ガラス転移温度を求めた。
【0095】
<粒子状重合体のコアシェル比率>
調製した粒子状重合体を、可視光硬化性樹脂(日本電子株式会社製「D−800」)に十分分散させた後、包埋し、粒子状重合体を含有するブロック片を得た。次に、得られたブロック片を、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ100nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製した。その後、四酸化ルテニウムを用いて測定用試料に染色処理を施した。
次に、染色処理を施した測定用試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEM−3100F」)にセットして、加速電圧80kVにて、粒子状重合体の断面構造を写真撮影した。透過型電子顕微鏡の倍率は、視野に粒子状重合体1個の断面が入るように設定した。その後、撮影された粒子状重合体の断面構造を観察し、観察されたシェル部の構成に応じて、以下の手順で粒子状重合体のシェル部の平均厚みを測定した。そして、測定されたシェル部の平均厚みを粒子状重合体の体積平均粒子径D50で割ることにより、コアシェル比率(%)を求めた。
[シェル部が粒子形状を有している場合]
粒子状重合体の断面構造から、シェル部重合体の粒子の最長径を測定した。シェル部重合体の粒子の最長径を、任意に選択した20個の粒子状重合体について測定し、その最長径の平均値をシェル部の平均厚みとした。
[シェル部が粒子状以外の形状を有している場合]
粒子状重合体の断面構造から、シェル部の最大厚みを測定した。シェル部の最大厚みを、任意に選択した20個の粒子状重合体について測定し、その最大厚みの平均値をシェル部の平均厚みとした。
【0096】
<粒子状重合体の被覆率>
上記粒子状重合体のコアシェル比率の測定方法と同様にして、粒子状重合体の断面構造を写真撮影し、撮影された粒子状重合体の断面構造において、コア部の周の長さD1、および、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を計測し、その粒子状重合体のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合(被覆割合)Rc(%)=(D2/D1)×100を算出した。
そして、被覆割合Rcを、任意に選択した20個の粒子状重合体について測定し、その平均値を、粒子状重合体のコア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)とした。
【0097】
<粒子状重合体の体積平均粒子径D50>
固形分濃度15質量%に調整した水分散溶液を準備し、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製「SALD−3100」)により粒子径分布を測定した。そして、得られた粒子径分布について、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を求め、体積平均粒子径D50とした。
【0098】
<接着層の電解液中での接着性>
正極及びセパレータを備える積層体、並びに、負極及びセパレータを備える積層体を、それぞれ10mm幅に切り出して、試験片を得た。この試験片を電解液中に温度60℃で3日間浸漬した。この際、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)との混合溶媒(体積比EC/DEC/VC=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm
3)
1/2)に、支持電解質としてLiPF
6を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用いた。
その後、試験片を取り出し、表面に付着した電解液を拭き取った。その後、この試験片を、電極(正極又は負極)の表面を下にして、電極の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を、正極及びセパレータを備える積層体並びに負極及びセパレータを備える積層体でそれぞれ3回、合計6回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度(N/m)とし、以下の基準で評価した。このピール強度の値が大きいほど、接着層の電解液中での接着性が優れていることを示す。
A:ピール強度が5.0N/m以上
B:ピール強度が3.0N/m以上5.0N/m未満
C:ピール強度が0.5N/m以上3.0N/m未満
D:ピール強度が0.5N/m未満
【0099】
<二次電池の高温サイクル特性>
製造した容量800mAhの捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。
さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。
そして、サイクル前後での容量維持率ΔCを、ΔC=(C1/C0)×100(%)にて計算し、下記の基準で評価した。この容量維持率ΔCの値が大きいほど、二次電池が高温サイクル特性に優れ、長寿命であることを示す。
A:容量維持率ΔCが84%以上
B:容量維持率ΔCが80%以上84%未満
C:容量維持率ΔCが75%以上80%未満
D:容量維持率ΔCが75%未満
【0100】
<二次電池の低温出力特性>
製造した容量800mAhの捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cの充電レートで5時間の充電の操作を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、−15℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。
そして、電圧変化ΔVを、ΔV=V0−V1にて計算し、下記の基準で評価した。この電圧変化ΔVの値が小さいほど、二次電池が低温出力特性に優れることを示す。
A:電圧変化ΔVが350mV未満
B:電圧変化ΔVが350mV以上500mV未満
C:電圧変化ΔVが500mV以上650mV未満
D:電圧変化ΔVが650mV以上
【0101】
<接着層の耐ブロッキング性>
接着層を設けたセパレータを、幅5cm×長さ5cm、幅4cm×長さ4cm、にそれぞれ正方形に切って試験片とする。これらを接着層とセパレータとが向かい合うように二枚重ね合わせたサンプル(未プレス状態のサンプル)と、重ね合わせた後に40℃、10g/cm
2の加圧下に置いたサンプル(プレス状態のサンプル)とを作製した。これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。そして、セパレータ同士が接着しているか確認した。また、24時間放置後のサンプルにおいてセパレータ同士が接着している場合、重ね合わせられたセパレータの1枚全体を固定し、もう1枚を0.3N/mの力で引っ張り、剥離可能か否かを確認した。そして、耐ブロッキング性を以下の基準で評価した。
A:プレス状態、未プレス状態の両方で、セパレータ同士が接着していない
B:プレス状態ではセパレータ同士が接着するが剥離可能であり、未プレス状態ではセパレータ同士は接着しない
C:プレス状態ではセパレータ同士が接着して剥がれなかったが、未プレス状態ではセパレータ同士が接着するが剥離可能である
D:プレス状態、未プレス状態の両方で、セパレータ同士は接着して剥がれなかった。
【0102】
(実施例1)
<粒子状重合体の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、コア部の製造に用いる単量体組成物として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としてのメタクリル酸メチル75部、カルボン酸基を有する単量体としてのメタクリル酸4部、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート1部、;乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部;イオン交換水150部;並びに、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になるまで重合を継続させることにより、コア部を構成する粒子状の重合体(コア部重合体)を含む水分散液を得た。
次いで、この水分散液に、シェル部の製造に用いる単量体組成物として、芳香族ビニル単量体としてのスチレン19部及び酸基含有単量体としてのメタクリル酸1部の混合物を連続添加し、70℃に加温して重合を継続した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止することにより、粒子状重合体を含む水分散液を製造した。そして、粒子状重合体のコアシェル比率、被覆率および体積平均粒子径D50を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
<非水系二次電池接着層用組成物の作製>
ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)(質量平均分子量≒400,000、数平均分子量≒130,000、SIGMA−ALDRICH社製)をアセトンに濃度5質量%となるように加え、60℃の温度で12時間以上混合し、溶解させてPVDF−HFP溶液を得た。また、上記で得られた粒子状重合体を含む水分散液を50℃で12時間乾燥させ、粒子状重合体を得た。PVDF−HFPの質量:粒子状重合体の質量=150:100となるように粒子状重合体100部をPVDF−HFP溶液3000部(PVDF−HFP量150部)に加え、混合することで、非水系二次電池接着層用組成物を作製した。
【0104】
<接着層を設けたセパレータの作製>
得られた非水系二次電池接着用組成物を、ディップ・コート法を用いて厚さ12μmのポリエチレンセパレータの両面にそれぞれ4μmの厚さにて塗布した。非水系二次電池接着用組成物を塗布したセパレータを約90℃のお湯に浸し乾燥させることで、空隙率60%の多孔膜からなる非水系二次電池用接着層を設けたセパレータを作製した。
【0105】
<負極の作製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって前記の混合物から未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、粒子状結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100部、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、および、イオン交換水を加えて固形分濃度が68%となるように調整した後、25℃で60分間混合して、混合液を得た。この混合液に、イオン交換水を加えて固形分濃度が62%となるように調整した後、更に25℃で15分間混合した。次いで、この混合液に、上記の粒子状結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部入れ、更にイオン交換水を加えて最終固形分濃度が52%となるように調整し、更に10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い二次電池負極用スラリー組成物を得た。
そして、前記二次電池負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
【0106】
<正極の作製>
正極活物質としてのLiCoO
2(体積平均粒子径D50:12μm)100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS−100」)を2部、および、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、製品名「#7208」)を固形分相当で2部混合し、これにN−メチルピロリドンを加えて全固形分濃度を70%にした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、二次電池正極用スラリー組成物を得た。
そして、前記二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚みが80μmのプレス後の正極を得た。
【0107】
<電極およびセパレータを備える積層体の作製>
上記得られた正極、負極、および接着層を設けたセパレータを、それぞれ、直径13mm、14mm、および18mmの円形に切り抜き、円形の正極、円形の負極、および円形のセパレータを得た。次いで、円形のセパレータの接着層が設けられた面に、円形の正極の正極合材層側の面を沿わせた後、温度70℃、圧力0.5MPaで10秒間、加熱プレス処理を施して、正極をセパレータに圧着して、正極およびセパレータを備える積層体を調製した。更に、別の円形のセパレータの接着層が設けられた面に、円形の負極の負極合材層側の面を沿わせた後、温度70℃、圧力0.5MPaで10秒間、加熱プレス処理を施して、負極をセパレータに圧着して、負極およびセパレータを備える積層体を調製した。
そして、得られた電極(正極または負極)およびセパレータを備える積層体を用い、電解液浸漬前の接着層の耐ブロッキング性および電解液浸漬後の接着層の接着性を評価した。結果を表1に示す。
【0108】
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記で得られた正極を49cm×5cmに切り出した。次いで、上記で得られたセパレータを55cm×5.5cmに切り出し、これを、切り出した正極の正極合材層上に配置した。更に、上記で得られた負極を50cm×5.2cmに切り出し、これを、前記セパレータの正極が配置された側とは反対側の面上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。その後、これを10MPa、70℃で120秒間、加熱プレスした。これを捲回機によって捲回し、捲回体を得た。この捲回体を70℃、0.5MPaで更にプレスし、扁平体とした。この扁平体を電池の外装としてのアルミニウム包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート(体積比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF
6)を空気が残らないように注入した。更に、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口した。これにより、放電容量800mAhのプレス前捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。更に、プレス前捲回型リチウムイオン二次電池を90℃、0.5MPaでプレスし、非水系二次電池としての捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性および低温出力特性を評価した。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例2)
粒子状重合体の調製時に、コア部の製造に用いる単量体組成物について、メタクリル酸メチルの量を71.5部に、エチレングリコールジメタクリレートの量を4.5部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
(実施例3)
粒子状重合体の調製時に、コア部の製造に用いる単量体組成物について、メタクリル酸メチルの量を71部に、エチレングリコールジメタクリレートの量を5部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
(実施例4)
粒子状重合体の調製時に、コア部の製造に用いる単量体組成物について、メタクリル酸メチルの量を43部に、メタクリル酸の量を1部にそれぞれ変更し、更に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としてのアクリル酸ブチル35部を新たに加えた以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0112】
(実施例5)
粒子状重合体の調製時に、コア部の製造に用いる単量体組成物について、メタクリル酸メチルの量を34部に変更し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としてのアクリル酸ブチル41部を新たに加えた以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例6)
粒子状重合体の調製時に、シェル部の製造に用いる単量体組成物について、スチレンの量を18部に変更し、不飽和ニトリル化合物としてのアクリロニトリル1部を新たに追加した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例7)
粒子状重合体の調製時に、シェル部の製造に用いる単量体組成物について、スチレンの量を15部に、メタクリル酸の量を0.5部にそれぞれ変更し、不飽和ニトリル化合物としてのアクリロニトリル4.5部を新たに追加した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例8)
粒子状重合体の調製時に、シェル部の製造に用いる単量体組成物について、スチレンの量を16部に変更し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としてのアクリル酸ブチル3部を新たに追加した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
(実施例9)
非水系二次電池接着層用組成物の調製時に、PVDF−HFPの質量:粒子状重合体の質量=100:100に変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
(実施例10)
非水系二次電池接着層用組成物の調製時に、PVDF−HFPの質量:粒子状重合体の質量=180:100に変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
(比較例1)
非水系二次電池接着層用組成物の調製時に、粒子状重合体をPVDF−HFP溶液に加えず、非水系二次電池接着層用組成物中のPVDF−HFP量を固形分換算で250部に変更した以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
(比較例2)
非水系二次電池接着層用組成物の調製時に、PVDF−HFP溶液を用いず、非水系二次電池接着層用組成物中の粒子状重合体量が固形分換算で250部になるように乾燥した粒子状重合体をアセトンに添加した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
(比較例3)
粒子状重合体の調製時に、コア部の製造に用いる単量体組成物について、メタクリル酸メチルの量を60.8部に、エチレングリコールジメタクリレートの量を0.2部にそれぞれ変更し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としてのアクリル酸ブチル5部を新たに追加し、シェル部の製造に用いる単量体組成物について、スチレンの量を30部に変更し、メタクリル酸を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
(比較例4)
粒子状重合体の調製時に、コア部の製造に用いる単量体組成物について、メタクリル酸メチルの量を35部に変更し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としての2−エチルヘキシルアクリレート30部を新たに追加し、シェル部の製造に用いる単量体組成物について、スチレンの量を30部に変更し、メタクリル酸を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
(比較例5)
粒子状重合体の調製時に、コア部の製造に用いる単量体組成物について、メタクリル酸メチルの量を35部に変更し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としてのアクリル酸ブチル30部を新たに追加し、シェル部の製造に用いる単量体組成物について、スチレンの量を20部に変更し、メタクリル酸を添加せず、不飽和ニトリル化合物としてのアクリロニトリル10部を新たに追加した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、非水系二次電池接着層用組成物、接着層を設けたセパレータ、負極、正極、電極とセパレータとを備える積層体、およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
なお、表1中、「MMA」はメタクリル酸メチルを示し、「BA」はアクリル酸ブチルを示し、「2−EHA」は2−エチルヘキシルアクリレートを示し、「MAA」はメタクリル酸を示し、「EDMA」はエチレングリコールジメタクリレートを示し、「ST」はスチレンを示し、「AN」はアクリロニトリルを示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1の実施例1〜10より、電解液膨潤度が5倍以上30倍以下のコア部重合体からなるコア部と、電解液膨潤度が1倍超4倍以下のシェル部重合体からなるシェル部とを備えるコアシェル構造を有する粒子状重合体と、ガラス転移温度が30℃以下であるフッ素重合体とを含む組成物から形成される接着層は、耐ブロッキング性および電解液中での接着性に優れることが分かる。加えて、当該接着層を備える二次電池は、高温サイクル特性および低温出力特性に優れることが分かる。
一方、表1の実施例1および比較例1より、粒子状重合体を含有しない場合には、耐ブロッキング性に優れた接着層を得られないことが分かる。
また、表1の実施例1および比較例2より、フッ素重合体を含有しない場合には、低温出力特性に優れた二次電池を得られないことが分かる。
さらに、表1の比較例3および4より、コア部重合体の電解液膨潤度が5倍未満である場合には、低温出力特性に優れた二次電池を得られず、コア部重合体の電解液膨潤度が30倍超の場合には、電解液中での接着性に優れた接着層および高温サイクル特性に優れた二次電池を得られないことが分かる。
そして、表1の比較例5より、シェル部重合体の電解液膨潤度が4倍超の場合には、電解液中での接着性に優れた接着層および高温サイクル特性に優れた二次電池を得られないことが分かる。