(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、胃壁の穿刺孔内にカテーテル部の遠位端部(ステント配置部)を挿入した際には、アウターシースの外周に胃壁が密着しており、ステントをリリース(拡径)させるために、該アウターシースを引き抜く方向にスライドさせると、該胃壁の該密着部が摩擦等によりアウターシースに追従して内側に導かれ(引っ張られ)、この状態でステントが拡径すると、ステントの遠位端部(肝臓側の端部)のみが胆管壁の穿刺孔内に留置され、ステントの近位端部(胃側の端部)は胃壁の穿刺孔内に留置されずにステントの近位側の開口が腹腔内に位置した状態となる場合があるという問題があった。このような不適切な状態で留置された場合には、胆汁や胃の内容物の腹腔内への漏出を生じる得るため、手技をやり直す必要がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、自己拡張型のステントを用いて管腔臓器間をバイパスする場合等に、ステントを適切な状態で留置することができるステントデリバリー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るステントデリバリー装置は、
管腔臓器壁に形成された穿刺孔に自己拡張型のステントを留置するステントデリバリー装置であって、
その遠位端近傍の外周面上に前記ステントを配置するためのステント配置部を有するインナーシースと、
前記インナーシースがスライド可能に挿通されるとともに、前記ステント配置部に配置された前記ステントを縮径させた状態で保持するアウターシースと、
前記アウターシースがスライド可能に挿通され、前記アウターシースを前記インナーシースに対して近位端側にスライドさせて該アウターシースの遠位端部を前記穿刺孔内から引き抜く際に、該穿刺孔の周囲の管腔臓器壁の少なくとも一部に当接する押さえ部をその遠位端部に有するストッパーチューブとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るステントデリバリー装置において、前記インナーシースの近位端部が取り付けられ、前記アウターシースの近位端部がスライド可能に取り付けられた操作部をさらに有し、
前記ストッパーチューブの近位端部を前記操作部に解除可能に固定する位置調整手段を備えることができる。
【0010】
本発明に係るステントデリバリー装置において、前記押さえ部としては、前記ストッパーチューブの遠位端部をその中心軸に直交する断面が半円または半円に満たない円弧状となるように切り欠いてなるものを用いることができる。
【0011】
本発明に係るステントデリバリー装置において、前記押さえ部として、前記ストッパーチューブの遠位端部に、前記ステントの拡径に伴って外側に弾性変形する少なくとも1つの突起部を設けてなるものを用いることができる。
【0012】
本発明に係るステントデリバリー装置において、前記押さえ部として、前記ストッパーチューブの遠位端部に、前記ステントが拡径した状態の径よりも大きい内径を有する大径部を設けてなるものを用いることができる。この場合において、前記大径部は、その遠位端からその中心軸に沿う方向にスリットを有することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のステントデリバリー装置によれば、管腔臓器壁に形成された穿刺孔内でアウターシースをインナーシースに対して近位端側にスライドさせて、ステントをリリース(拡径)させる際に、ストッパーチューブの押さえ部が、穿刺孔の周囲の管腔臓器壁の少なくとも一部に当接するので、アウターシースの近位端側へのスライドに伴う、当該管腔臓器壁の近位端側への位置の変化を少なくすることができる。したがって、ステントを適切な位置に留置させることができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態のステントデリバリー装置の全体構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態のステントデリバリー装置の遠位端部の構成を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施形態のステントデリバリー装置の遠位端部の構成を示す一部断面図である。
【
図4】本発明の実施形態のステントデリバリー装置のストッパーチューブの遠位端部の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態のステントデリバリー装置に適用されるステントの一例を示す側面図である。
【
図6】本発明の実施形態のステントデリバリー装置の操作部の構成を示す一部断面図である。
【
図7】本発明の実施形態のステントデリバリー装置の操作部の構成を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態のステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の動作(カテーテル部挿入)を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態のステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の動作(ステントのリリース途中)を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態のステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の動作(ステントのリリース完了)を示す図である。
【
図11】従来のステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の動作(カテーテル部挿入)を示す図である。
【
図12】従来のステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の動作(ステントのリリース途中)を示す図である。
【
図13】従来のステントデリバリー装置を用いてステントを穿刺孔に留置する際の動作(ステントのリリース完了)を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態のステントデリバリー装置のストッパーチューブの変形例を示す側面面である。
【
図15】本発明の実施形態のステントデリバリー装置のストッパーチューブの他の変形例を示す側面図である。
【
図16】本発明の実施形態のステントデリバリー装置のストッパーチューブのさらに他の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。本実施形態では、超音波内視鏡ガイド下経胃経肝的胆道ドレナージ(EUS−BD)、すなわち、胃と肝内胆管とをバイパス接続するバイパスチューブ(自己拡張型のステント)を留置する場合を例にとり説明する。但し、本発明は、胃と肝内胆管とをバイパスするものに限られず、十二指腸と総胆管等、管腔臓器と他の管腔臓器とをバイパスするものに広く適用することができる。
【0016】
まず、
図1を参照する。ステントデリバリー装置1は、不図示の内視鏡の処置具案内管を介して、患者の体内(管腔)に挿入される細長いカテーテル部2およびカテーテル部2の近位端側に接続され、体外側から体内のカテーテル部2を操作するための操作部3、ガイドワイヤ4および留置対象としてのステント5を概略備えて構成されている。なお、ステント5を含むカテーテル部2の遠位端近傍は、留置する部位の形状に応じて湾曲した状態にくせ付けされる場合があるが、本実施形態では、くせ付けされていない直線状のカテーテル部2が用いられている。
【0017】
カテーテル部2は、遠位端および近位端を有するインナーシース(内管)21と、遠位端および近位端を有するアウターシース(外管)22と、遠位端および近位端を有するストッパーチューブ23とを備えている。
【0018】
インナーシース21、アウターシース22およびストッパーチューブ23の遠位端近傍には、造影マーカー(不図示)がそれぞれ取り付けられている。造影マーカーは、X線透視によりその位置が検出されて体内における標識となるものであり、例えば金、白金、タングステン等の金属材料や、硫酸バリウムや酸化ビスマスがブレンドされたポリマー等により形成される。
【0019】
インナーシース21は可撓性を有する細長いチューブからなり、その内部にはカテーテル部2を患者の体内に挿入するためのガイドとして用いられるガイドワイヤ4が挿通されている。ガイドワイヤ4を体内に挿入して体外と体内との経路を確保した後、ガイドワイヤ4に沿ってカテーテル部2を押し込む(進行させる)ことにより、カテーテル部2の遠位端側を体内の目的部位に挿入することができる。インナーシース21(後述するステント5を配置する部分)の外径は0.5〜4.0mm程度である。
【0020】
インナーシース21の遠位端には、その先端(遠位端)に行くに従って細くなうように形成された先端チップ24が取り付けられている。先端チップ24はインナーシース21の内腔の遠位端に連通する開口24aをその中心軸に沿うように有しているとともに、その近位端部は、アウターシース22の内腔の遠位端部に挿入し得る程度の外径を有する細径部24bとなっている(
図2および
図3参照)。先端チップ24は、カテーテル部2の挿入抵抗を低減し、体内への挿入を容易にする役割を果たすものであり、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、およびポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等から形成することができる。
【0021】
インナーシース21の遠位端近傍には、固定リング25が一体的に固定されており、この固定リング25はステント5の近位端の位置を規定するためのものであり、この固定リング25から遠位端側の部分がステント配置部となっている。ステント配置部には、ステント5がインナーシース21を覆うように配置される。また、インナーシース21の固定リング25より近位端側の部分には、インナーシース21本体を構成する細長いチューブを覆うように、別の細長いチューブ(不図示)が同軸的に設けられていて、インナーシース21の固定リング25より近位端側の部分は、インナーシース21の固定リング25より遠位端側の部分よりも太くなっている。このようにインナーシース21の固定リング25より近位端側の部分が太くなっていることにより、インナーシース21のプッシャビリティが増して操作性が良好になるとともに、固定リング25の位置が近位端側にずれることが防止される。
【0022】
アウターシース22は可撓性を有する細長いチューブからなり、インナーシース21の外径よりも僅かに大きい内径を有しており、その内側にインナーシース21がスライド可能に挿通されている。アウターシース22の内径は0.5〜4.5mm程度であり、外径は1.0〜5.0mm程度である。アウターシース22は、操作部3を操作することにより、インナーシース21に対して軸方向にスライド(相対移動)可能となっている。
【0023】
インナーシース21、アウターシース22の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエステルポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂等の各種樹脂材料や、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の各種熱可塑性エラストマーを使用することがでる。これらのうち2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
ストッパーチューブ23は可撓性を有する細長いチューブからなり、アウターシース22がスライド可能に挿入される内腔を有している。ストッパーチューブ23としては、アウターシース22の外径よりも0.05〜1.0mm大きい内径を有し、肉厚が0.1〜1.0mmの範囲にあるチューブを用いることができる。ストッパーチューブ23の材料としてはポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレン等の合成樹脂やステンレス鋼等の金属等を用いることができる。ストッパーチューブ23は、操作部3を操作することにより、アウターシース22に対して軸方向にスライド(相対移動)可能となっている。
【0025】
ストッパーチューブ23は、その遠位端に、管腔臓器壁(本実施形態では、胃壁)に形成される穿刺孔内で、アウターシース22をインナーシース21に対して近位端側にスライドさせて、ステント5をリリース(拡径)させる際に、該穿刺孔の周囲の管腔臓器壁の少なくとも一部に当接する押さえ部を有している。
【0026】
この押さえ部の形状や構成は、ステント5をリリース(拡径)させる際に、該穿刺孔の周囲の管腔臓器壁の少なくとも一部に当接して、当該管腔臓器壁が近位端側に引っ張られることを抑制でき、かつステント5のリリースの支障とならないものであれば、特に限定されないが、本実施形態では、
図2〜
図4に示すように、ストッパーチューブ23の遠位端部をその中心軸に略直交する断面が半円状となるように切り欠いて切欠部23bを形成し、その残余の半割円筒状の部分を押さえ部23aとしている。切欠部23bのストッパーチューブ23の軸方向に沿った長さは、押さえ部23aが穿刺孔の周囲の管腔臓器壁に当接した時にストッパーチューブ23がステント5のリリースに支障とならない程度であればよく、例えば、3〜50mmの範囲で設定すればよい。なお、押さえ部23aとしては、ストッパーチューブ23の遠位端部にその中心軸に略直交する断面が半円に満たない円弧状となるように切り欠いた形状としてもよい。
【0027】
ステント5は、収縮状態から自己の弾性力によって拡径する自己拡張型のカバードステントであり、
図5に示すように、フレームにより形成される筒状のベアステント51と、ベアステント51の外周を覆う被覆フィルム部52とを有している。ベアステント51は、ニッケルチタン合金やコバルトクロム合金等の超弾性金属あるいは形状記憶金属等で形成されている。ベアステント51の表面は隣接するフレームの間を埋めるように広がったコーティング膜で覆われており、コーティング膜で覆われたベアステント51の外周が、ポリマーフィルム等の被覆フィルム部52によって覆われている。
【0028】
ステント5の全長は、バイパス接続すべき管腔臓器間の距離に応じて決定されるが、30〜200mm程度であり、拡径時の外径は、バイパス接続すべき管腔臓器の種類や大きさ等に応じて決定されるが、φ2〜φ20mm程度である。ステント5の縮径時の外径は、拡径時の外径に対して、数分の1程度である。なお、本実施形態では、ステント5をステントデリバリー装置1の構成部材の一つとして説明しているが、ステント5はステントデリバリー装置1とは別部材として交換可能であってもよい。
【0029】
図1に戻り、ガイドワイヤ4は、インナーシース21の内腔に挿通され、その遠位端はインナーシース21の先端チップ24の遠位端の開口24a(
図2および
図3参照)から突出しているとともに、その近位端は操作部3を貫通して配置されたインナーシース21の近位端の開口21aを介して外側に露出するように配置されている。
【0030】
操作部3は、
図6および
図7に示すように、略円筒状のリリースハンドル(ハウジング)31を有し、リリースハンドル31の遠位端側の開口部は、その中央部に貫通穴を有する遠位端側蓋部材31aが一体的に取り付けられることにより閉塞され、近位端側の開口部は、その中央部に貫通穴を有する近位端蓋部材31bが一体的に取り付けられることにより閉塞されている。
【0031】
リリースハンドル31の遠位端側蓋部材31aの貫通穴には、アウターシース22の近位端部がスライド可能に挿通され、アウターシース22の近位端はリリースハンドル31の内部に位置している。リリースハンドル31の側壁には、その中心軸に沿う方向に内外に貫通する溝33が形成されている。この溝33には、リリースハンドル31の外側に位置する頭部および該頭部の中央部に立設された足部32aを有するリリースレバー32の該足部32aが貫通して配置されている。
【0032】
リリースレバー32の足部32aの先端部(下端部)は、リリースハンドル31の内部に位置されたアウターシース22の近位端部に固定されており、リリースレバー32を溝33に沿って移動させることにより、リリースハンドル31(近位端側蓋部材31b)に固定されたインナーシース21に対してアウターシース22を、近位端側または遠位端側にスライドさせることができるようになっている。
【0033】
アウターシース22に挿通されたインナーシース21の近位端部はリリースハンドル31内を通過して、リリースハンドル31の近位端側蓋部材31bの貫通穴を貫通して、その近位端はリリースハンドル31の外部に位置している。インナーシース21は近位端側蓋部材31bに該貫通穴の部分で固定されている。
【0034】
リリースレバー32を溝33の遠位端まで移動させた状態では、アウターシース22の遠位端は、
図2および
図3に示すように、先端チップ24に至って、アウターシース22の内腔の遠位端部に先端チップ24の細径部24bが内挿されており、この状態で、インナーシース21のステント配置部に配置されたステント5を縮径させた状態でその内部に保持した状態となっている。この状態からリリースレバー32を溝33の近位端側に移動させると、これに伴いアウターシース22がインナーシース21に対して近位端側にスライドされて、ステント5がアウターシース22の遠位端から相対的に押し出され、ステント5が自己拡張力によってリリース(拡径)される。
【0035】
アウターシース22が内挿されたストッパーチューブ23の近位端は、リリースハンドル31の遠位端側蓋部材31aから遠位端側に突出するように設けられた突出筒部35の外側に位置している。この突出筒部35は、その内部にアウターシース22が挿通可能となる内径と、その外周側をストッパーチューブ23で覆うことができるような外径とを有している。そして、ストッパーチューブ23の近位端部には、位置調整ストッパー(位置調整手段)28が固定されている。位置調整ストッパー28は、ストッパーチューブ23をリリースハンドル31の突出筒部35に対して解除可能に固定するものであり、本実施形態では、ねじ部材28aを有し、ねじ部材28aをねじ込むと、ねじ部材28aが突出筒部35に係合することにより、アウターシース22のスライドの支障となることなく、ストッパーチューブ23をリリースハンドル31に対して固定できる。一方、ねじ部材28aを緩めることにより、リリースハンドル31に対するねじ部材28aの係合が解除され、ストッパーチューブ23のリリースハンドル31に対する相対位置を調整できるようになっている。
【0036】
位置調整ストッパー28(ねじ部材28a)をリリースハンドル31の突出筒部35の遠位端側に移動し、または近位端側に移動させることにより、突出筒部35の軸方向の長さの範囲内において、押さえ部23aの遠位端のステント5に対する位置を調整することができる。なお、突出筒部35の軸方向の長さは、例えば、5〜50mmの範囲で設定すればよい。
【0037】
次に、本実施形態のステントデリバリー装置を用いて、ステントを留置する手技について、
図8〜10を参照して説明する。例えば、胃内に挿入した内視鏡の処置具案内管を介して、腹腔内において胃と肝内胆管とをバイパスするようにステントを留置する場合には、
図8に示すように、胃壁61から腹腔63を経て胆管壁62に至るように穿刺針で穿刺し、ガイドワイヤを挿通して経路を確保し、必要に応じて胃壁61および胆管壁62の穿刺孔をダイレータ等で拡張した後に、カテーテル部2の遠位端部を該穿刺孔に挿通する。なお、この操作は、
図6および
図7に示す操作部3において、リリースレバー32を溝33の遠位端まで移動させて、アウターシース22の遠位端が先端チップ24に至るように、該アウターシース22を遠位端側にスライドさせた状態、すなわち、インナーシース21のステント配置部に配置されたステント5を縮径させた状態でアウターシース22の遠位端部の内側に保持した状態で行われる。
【0038】
次いで、
図6および
図7に示す操作部3において、位置調整ストッパー28のねじ部材28aを緩めた状態で、ストッパーチューブ23を適宜にスライドさせて、
図8に示すように、ストッパーチューブ23の押さえ部23aの遠位端が穿刺孔の周囲の胃壁61に当接するように位置させた状態で、ねじ部材28aを締め込んで、ストッパーチューブ23をリリースハンドル31に対して固定する。
【0039】
次いで、
図6および
図7に示す操作部3において、リリースレバー32を溝33の近位端側に移動させて、
図9に示すように、インナーシース21に対してアウターシース22を近位端側にスライドさせる。アウターシース22のスライドに伴い、ステント5はその遠位端側から徐々に露出・拡径され、リリースレバー32を溝33の近位端まで移動させることにより、
図10に示すように、ステント5が全体的に露出・拡径された状態となる。その後、カテーテル部2の遠位端を拡径されたステント5の内側を通過させて引き抜くことにより、ステント5の留置が完了する。
【0040】
ここで、本実施形態との比較のため、本実施形態のようなストッパーチューブ23を備えない従来のステントデリバリー装置を用いて、ステントを留置する場合を、
図11〜
図13を参照して簡単に説明する。
図11に示すように、胃壁61の穿刺孔から腹腔63を経て胆管壁62の穿刺孔に至るようにカテーテル部2の遠位端部を挿入した状態から、
図12に示すように、アウターシース22を引き抜くと、アウターシース22の引き抜きに伴い、穿刺孔の周囲の胃壁61が摩擦力によりこれに引きずられて、近位端側に引っ張られ、アウターシース22を完全に引き抜くと、
図13に示すように、ステント5の近位端部が胃壁61の穿刺孔から外れて腹腔63内において拡径し、ステント5の近位端側の開口が腹腔63内に位置した状態で留置される場合があり、このような不適切な状態で留置された場合には、胆汁や胃の内容物の腹腔63への漏出を生じる得るため、手技をやり直す必要がある。
【0041】
これに対して、本実施形態のステントデリバリー装置1では、
図8〜
図10に示すように、ステント5をリリースするために、アウターシース22を近位端側にスライドさせて、穿刺孔内から引き抜く際には、ストッパーチューブ23の押さえ部23aの遠位端が穿刺孔の周囲の胃壁61に当接しているので、アウターシース22の引き抜きに伴い、穿刺孔の周囲の胃壁61がこれに引きずられて、近位端側に引っ張られることが防止される。したがって、ステント5を適切な位置に留置させることができる。
【0042】
また、本実施形態のストッパーチューブ23は、その遠位端部にその中心軸に略直交する断面が半円状となるように切り欠いて切欠部23bを形成し、残余の半割円筒状の部分を押さえ部23aとしており、押さえ部23aの内側は切欠部23bとして開放されているので、ステント5が拡径する際に障害となることが少ない。
【0043】
次に、ストッパーチューブの遠位端部の押さえ部の変形例について、
図14〜
図16を参照して説明する。
図14に示す変形例では、押さえ部は、ストッパーチューブ23の遠位端部に該ストッパーチューブ23よりも大きい内径および外径を有する筒状部を配置し、この筒状部にその遠位端側からその中心軸に沿う方向に一対のスリット231bを形成して、残余の部分(一対の突起部)を押さえ部231aとしている。
【0044】
ここでは、スリット231bは互いに180度対向した位置に形成されており、したがって、略円弧状の断面を有する2つの押さえ部231aが設けられている。この押さえ部231aは、外側に弾性変形するように構成されており、ステント5が拡径された際に、このときの押圧力により外側に弾性変形して、ステント5の拡径の障害とならないようにしている。
【0045】
アウターシース22を穿刺孔内から引き抜く際には、ストッパーチューブ23の押さえ部231aの遠位端が穿刺孔の周囲の胃壁を囲むように2箇所で当接するので、アウターシース22の引き抜きに伴い、穿刺孔の周囲の胃壁がこれに引きずられて、近位端側に引っ張られることが防止される。
【0046】
なお、この変形例では、前記筒状部をストッパーチューブ23よりも大径としているが、ストッパーチューブ23と同径として、この同径の筒状部に複数のスリットを形成することにより、押さえ部を構成してもよい。また、スリット231bの数は、2つ以上として、押さえ部231aを3つ以上形成するようにしてもよい。また、押さえ部231aはその中心軸に略平行に配置されているが、押さえ部231aを外側に開くように塑性変形させて、予め開いた状態としておいてもよい。さらに、押さえ部231aの遠位端部を外側にカール(湾曲)させた形状としてもよい。
【0047】
図15に示す変形例では、押さえ部は、ストッパーチューブ23の遠位端部に該ストッパーチューブ23よりも大きい内径および外径を有する筒状部を配置し、この筒状部にその遠位端側からその中心軸に沿う方向に一対のスリット232bを形成して、残余の部分(一対の突起部)を押さえ部232aとしている。この変形例では、ストッパーチューブ23の遠位端部の筒状部を、
図14に示す変形例の筒状部よりも大径として、ステント5がリリースされた際の径よりも大きい値に設定している。
【0048】
なお、ここでは、スリット232bは互いに180度対向した位置に形成されており、したがって、略円弧状の断面を有する2つの押さえ部232aが設けられている。また、この変形例の押さえ部232aは、その内径がステント5の拡径時の外径よりも大きいため、そのままの状態でもステント5の拡径の障害とはならないため、必ずしも弾性変形するように構成する必要はない。
【0049】
アウターシース22を穿刺孔内から引き抜く際には、ストッパーチューブ23の押さえ部232aの遠位端が胃の穿刺孔の周囲の組織を比較的に広い範囲で囲むように2箇所で当接するので、アウターシース22の引き抜きに伴い、胃の穿刺孔の周囲の組織がこれに引きずられて、近位端側に引っ張られることが防止される。
【0050】
なお、スリット232bの数は、2つ以上として、押さえ部232aを3つ以上形成するようにしてもよい。但し、この変形例では、
図14の変形例とは異なり、押さえ部が外側に弾性変形する必要がないので、スリット232bの数を1つとし、またはスリット232bを全く設けなくてもよい。なお、スリット232bは、アウターシース22内に収容されたステント5を目視するための窓として役割を果たすものである。
【0051】
図16に示すさらに他の変形例では、ストッパーチューブ23の遠位端部に、螺旋状のコイルバネを設けて、このコイルバネを押さえ部233としている。コイルバネ233は、ストッパーチューブ23の遠位端からその径が徐々に拡大して、遠位端部側は、ステント5がリリースされた際の径よりも大きい内径となるように構成されている。ステント5が拡径された際に、その障害となることなく、コイルバネ233の付勢力により、穿刺孔の周囲の比較的に広い範囲を全体的に押さえ込むことができる。なお、コイルバネ233のその中心軸に沿う方向の伸縮を規制するための、単数または複数のはり部材を固定してもよい。
【0052】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。