(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の面に凹部を有する絶縁材料と、前記絶縁材料における前記凹部以外の部分の少なくとも一部を被覆するキャップ材料と、前記絶縁材料及び前記キャップ材料の上部に位置する部分を有するバリア金属と、前記凹部を充填し、かつ、前記バリア金属を被覆する導電性物質と、を備える基板を研磨する研磨方法であって、
前記導電性物質を研磨して前記バリア金属を露出させる第1の研磨工程と、
前記バリア金属及び前記キャップ材料を研磨して前記絶縁材料を露出させる第2の研磨工程と、を備え、
前記絶縁材料がlow−k材料を含み、
前記キャップ材料が二酸化珪素を含み、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の研磨液を少なくとも前記第2の研磨工程で用いる、研磨方法。
一方の面に凹部を有する絶縁材料と、前記絶縁材料における前記凹部以外の部分の少なくとも一部を被覆するバリア金属と、前記凹部を充填し、かつ、前記バリア金属を被覆する導電性物質と、を備える基板を研磨する研磨方法であって、
前記導電性物質を研磨して前記バリア金属を露出させる第1の研磨工程と、
前記バリア金属を研磨して前記絶縁材料を露出させる第2の研磨工程と、を備え、
前記絶縁材料が二酸化珪素を含み、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の研磨液を少なくとも前記第2の研磨工程で用いる、研磨方法。
前記バリア金属が、タンタル系金属、チタン系金属、タングステン系金属、ルテニウム系金属、コバルト系金属及びマンガン系金属からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の研磨方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような方法で砥粒の分散性を高めた場合であっても、研磨液中に含有させることができる砥粒含有量は、高い場合であっても8質量%程度が限界であり、これ以上の含有量の砥粒を用いると、保存条件をいくら調整しても砥粒の凝集又は沈降が起こる可能性が高くなる。
【0011】
これに対し、研磨液中での砥粒のゼータ電位を正又は負に大きくする方法については、砥粒以外の成分の配合比を一定に維持したまま砥粒のゼータ電位だけを変化させることが難しいこと、砥粒の種類を調整する場合に砥粒の種類が研磨特性に影響を及ぼすこと等から、ゼータ電位を変化させることのみに着目して砥粒を選択することができないこと等の制約がある。
【0012】
添加剤を加える方法については、充分な砥粒分散効果を得るために必要量の添加剤を添加すると、添加剤の含有量が研磨特性に影響する。例えば、バリア金属用研磨液に添加剤を多量に添加すると、層間絶縁材料の研磨速度が極端に低下する場合がある。
【0013】
研磨液の保存温度を低温に調整する方法については、低温保存のための装置及びスペースが必要であり、プロセス面及びコスト面での負担を強いられる。
【0014】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、優れた砥粒の分散安定性を有する研磨液を提供することを目的とする。また、本発明は、前記研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記研磨方法を用いて製造される半導体基板及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決するために種々の検討を行った結果、砥粒の溶媒親和性を調整することで、優れた砥粒の分散安定性を得ることができることを見出した。
【0016】
本発明に係る研磨液は、砥粒、有機溶媒及び水を含有し、下記式(1)で求められる前記砥粒の溶媒親和性の値Aが25℃において1.35以下である。
A={(前記研磨液のNMR緩和時間の逆数)/(前記砥粒を除く前記研磨液のNMR緩和時間の逆数)−1}/前記砥粒の表面積 ・・・(1)
【0017】
本発明に係る研磨液は、優れた砥粒の分散安定性(保管安定性)を有している。溶媒親和性の値Aが上記範囲であることにより、砥粒と研磨液中の液状成分(有機溶媒、水等)との親和性が好適に制御されることで、従来と比較して(例えば、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを含有する研磨液と比較して)研磨液中の砥粒の凝集又は沈降を大幅に抑制可能であり、優れた砥粒の分散安定性が得られると推測される。本発明に係る研磨液によれば、高い砥粒含有量(例えば、研磨液の全質量基準で8質量%以上の砥粒含有量)の研磨液を安定化させることができる。本発明に係る研磨液は、低温保存等の方法を用いることなく、室温(例えば25℃)程度で保管した場合であっても優れた砥粒の分散安定性を有している。そのため、本発明に係る研磨液は、保存利便性及び保管安定性が高く、プロセス又はコスト低減に柔軟に対応することができる。また、本発明に係る研磨液は、砥粒の分散安定性に優れるため、添加剤を用いた場合に、砥粒の分散安定性の向上効果と、添加剤の添加効果(研磨速度の向上効果、平坦性の向上効果等)とを容易に両立することができる。
【0018】
前記有機溶媒は、モノアルコール、ジアルコール及びセロソルブ類からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。これにより、更に優れた研磨液の保管安定性を得ることができる。
【0019】
前記砥粒は、コロイダルシリカを含むことが好ましい。これにより、導電性物質(配線金属等)、バリア金属又は層間絶縁材料の良好な研磨速度を得ることができる。
【0020】
本発明に係る研磨液は、金属防食剤を更に含有してもよい。前記金属防食剤は、トリアゾール骨格を有する化合物を含むことが好ましい。これにより、金属の腐食を更に効果的に抑えることができる。
【0021】
本発明に係る研磨液は、酸化剤を更に含有してもよい。これにより、金属の研磨速度を更に向上させることができる。
【0022】
本発明に係る研磨液は、酸化金属溶解剤を更に含有することが好ましい。これにより、金属の研磨速度を向上させることができる。
【0023】
本発明に係る研磨液は、水溶性ポリマーを更に含有してもよい。これにより、被研磨面が保護されるために腐食が抑制され、傷等のディフェクトの発生を抑制することができる。
【0024】
本発明に係る研磨液のpHは、2.0〜5.0であることが好ましい。これにより、金属の研磨速度を更に向上させることができる。
【0025】
本発明に係る研磨方法の第1実施形態は、一方の面に凹部を有する絶縁材料と、前記絶縁材料における前記凹部以外の部分の少なくとも一部を被覆するキャップ材料と、前記絶縁材料及び前記キャップ材料の上部に位置する部分を有するバリア金属と、前記凹部を充填し、かつ、前記バリア金属を被覆する導電性物質と、を備える基板を研磨する研磨方法であって、前記導電性物質を研磨して前記バリア金属を露出させる第1の研磨工程と、前記バリア金属及び前記キャップ材料を研磨して前記絶縁材料を露出させる第2の研磨工程と、を備え、前記絶縁材料がlow−k材料を含み、前記キャップ材料が二酸化珪素を含み、前記研磨液を少なくとも前記第2の研磨工程で用いる態様であってもよい。このような研磨方法によれば、金属の過度な腐食を抑制しつつ被研磨材料を更に高速に研磨することができる。
【0026】
本発明に係る研磨方法の第1実施形態は、前記low−k材料が、シリコン系材料及び有機ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、前記low−k材料の誘電率が2.9以下である態様であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る研磨方法の第2実施形態は、一方の面に凹部を有する絶縁材料と、前記絶縁材料における前記凹部以外の部分の少なくとも一部を被覆するバリア金属と、前記凹部を充填し、かつ、前記バリア金属を被覆する導電性物質と、を備える基板を研磨する研磨方法であって、前記導電性物質を研磨して前記バリア金属を露出させる第1の研磨工程と、前記バリア金属を研磨して前記絶縁材料を露出させる第2の研磨工程と、を備え、前記絶縁材料が二酸化珪素を含み、前記研磨液を少なくとも前記第2の研磨工程で用いる態様であってもよい。このような研磨方法によれば、金属の過度な腐食を抑制しつつ被研磨材料を更に高速に研磨することができる。
【0028】
前記導電性物質は、銅、銅合金、銅の酸化物及び銅合金の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0029】
前記バリア金属は、タンタル系金属、チタン系金属、タングステン系金属、ルテニウム系金属、コバルト系金属及びマンガン系金属からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0030】
本発明に係る研磨方法は、前記第2の研磨工程において露出した前記絶縁材料の一部を研磨する工程を更に備えていることが好ましい。これにより、前記研磨液の特性を充分に活用することができる。そのため、層間絶縁材料を高速に研磨することができると共に、研磨終了後の面を平坦化することが可能であるため信頼性に優れる基板を得ることができる。
【0031】
本発明に係る半導体基板は、本発明に係る研磨方法を用いて製造されるものである。本発明に係る電子機器は、本発明に係る研磨方法を用いて製造されるものである。このようにして製造された半導体基板及び電子機器は、微細化及び薄膜化が可能であり、かつ、寸法精度及び電気特性に優れ、信頼性が高い。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、優れた砥粒の分散安定性を有する研磨液を提供することができる。また、本発明によれば、前記研磨液を用いた研磨方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、前記研磨方法を用いて製造される半導体基板及び電子機器を提供することができる。
【0033】
本発明は、半導体基板の製造への研磨液の使用を提供する。本発明は、電子機器の製造への研磨液の使用を提供する。本発明に係る研磨液は、金属配線を研磨するために用いることができる。本発明は、金属配線の研磨への研磨液の使用を提供する。本発明に係る研磨液は、半導体基板の配線形成工程に用いることができる。本発明は、半導体基板の配線形成工程への研磨液の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0036】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、研磨時に被研磨面に触れる組成物であり、例えばCMP研磨液である。本実施形態に係る研磨液は、砥粒、有機溶媒及び水を含有し、下記式(1)で求められる前記砥粒の溶媒親和性の値A(以下、「溶媒親和性A」という)が25℃において1.35以下である。砥粒を除く研磨液は、研磨液から砥粒を除いた組成物である。
A={(前記研磨液のNMR緩和時間の逆数)/(前記砥粒を除く前記研磨液のNMR緩和時間の逆数)−1}/前記砥粒の表面積(総表面積) ・・・(1)
【0037】
(砥粒)
砥粒の構成成分としては、シリカ、セリウム系化合物(セリア、セリウム水酸化物等)、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ムライト、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化珪素、炭化ホウ素などが挙げられる。砥粒としては、シリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等の公知のものを使用することができる。砥粒としては、後述するシラノール基密度、平均粒径、会合度及びゼータ電位を有するシリカ粒子の入手が容易な観点、及び、導電性物質(配線金属等)、バリア金属又は層間絶縁材料の良好な研磨速度が得られる観点から、コロイダルシリカが好ましい。なお、本実施形態に係る研磨液において、砥粒は、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
[砥粒の溶媒親和性]
砥粒の溶媒親和性は、バルク溶液と、バルク溶液及び砥粒を含む粒子分散液とにおける核磁気共鳴(NMR)緩和時間から求めることができる。核における、磁気モーメントを有している原子を静磁場の中に入れると、磁気モーメントは磁場の作用により歳差運動する。この運動の周期と同じ周波数の電磁場を静磁場に対して垂直方向から加えると、磁気モーメントの運動の振幅は電磁場のエネルギーを吸収して変化する。これがNMRである。NMR緩和時間は、試料にラジオ波のパルスを照射し、平衡磁化を逆転させて非平衡状態を作り、平衡磁化に戻るまでの時間である(例えば、上記非特許文献1参照)。
【0039】
本実施形態において、式(1)で求められる砥粒の溶媒親和性Aは、25℃において1.35以下である。溶媒親和性Aは、砥粒表面に吸着した溶媒の吸着量に相関する指標である。砥粒の溶媒親和性は、例えば、パルスNMR方式粒子界面特性評価装置(例えば、日本ルフト株式会社製、商品名:Acron Area)で測定した値である。砥粒と溶媒との親和性は、砥粒表面に吸着している溶媒の磁場変化に対する応答と、砥粒表面に吸着していない自由な状態の溶媒の磁場変化に対する応答との差に基づくものである。砥粒表面に吸着している溶媒分子は、分子運動の制限を受ける。一方、砥粒表面に吸着していない溶媒分子は、分子運動の制限を受けにくい。そのため、砥粒表面に吸着している溶媒分子のNMR緩和時間は、砥粒表面に吸着していない溶媒分子のNMR緩和時間よりも短時間となる。溶媒親和性Aが大きいほど、砥粒と溶媒との親和性が大きく、溶媒親和性Aが小さいほど、砥粒と溶媒との親和性が小さい。
【0040】
式(1)で求められる砥粒の溶媒親和性Aは、優れた砥粒の分散安定性が得られる観点から、1.35以下である。このような溶媒親和性を満たす場合には、研磨液の保管安定性が向上する。溶媒親和性Aは、砥粒の分散安定性が更に向上する観点、及び、研磨液の保管安定性が更に向上する観点から、1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましく、1.20以下が更に好ましい。
【0041】
[シラノール基密度]
本実施形態に係る研磨液に使用可能なシリカ粒子のシラノール基密度は、5.0個/nm
2以下であることが好ましい。これにより、層間絶縁材料の更に良好な研磨速度を得ることができると共に、砥粒の分散安定性に更に優れた研磨液を得ることができる。
【0042】
前記シラノール基密度は、研磨液(CMP研磨液等)として使用したときの層間絶縁材料の研磨速度が更に優れる観点から、4.5個/nm
2以下が好ましい。
【0043】
本実施形態においてシラノール基密度(ρ[個/nm
2])は、以下のような滴定により測定及び算出することができる。
[1]15g(固形分含量)のシリカ粒子(例えばコロイダルシリカ)を含む粒子含有液をポリボトルに量りとる。
[2]0.1mol/Lの塩酸を添加し、pHを3.0〜3.5に調整する。このとき、添加した0.1mol/Lの塩酸の質量[g]を測定しておく。
[3]前記[2]でpH調整が完了した粒子含有液の質量(シリカ粒子(例えばコロイダルシリカ)の質量と、0.1mol/Lの塩酸の質量との合計。ポリボトルの質量は含まない)を算出する。
[4]前記[3]で得られた質量の1/10にあたる分を別のポリボトルに量りとる。
[5]そこに塩化ナトリウムを30g添加した後、超純水を添加して全量を150gに調整する。
[6]0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液でpHを4.0に調整し、滴定用サンプルを得る。
[7]0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を、pHが9.0になるまでこの滴定用サンプルに滴下し、pHが4.0から9.0になるまでに要した水酸化ナトリウム量(B[mol])を求める。
[8]下記式(2)より、シリカ粒子のシラノール基密度を算出する。
ρ=B×NA/A×S
BET ・・・(2)
[ここで、式(2)中のNA[個/mol]はアボガドロ数、A[g]はシリカ粒子の量、S
BET[m
2/g]はシリカ粒子のBET比表面積をそれぞれ示す。]
【0044】
前記シリカ粒子のBET比表面積S
BETは、BET比表面積法に従って求めることができる。具体的な測定方法としては、例えば、まず、シリカ粒子(コロイダルシリカ等)を乾燥機に入れる。150℃で乾燥させた後、測定セルに入れる。120℃で60分間真空脱気して測定用試料を得る。BET比表面積測定装置を用い、窒素ガスを吸着させる1点法又は多点法によりこの測定用試料のBET比表面積を求めることができる。より具体的には、上記のとおり、150℃で乾燥した後のシリカ粒子を乳鉢(磁製、100mL)で細かく砕き、その後、測定セルに入れて真空脱気することにより測定用試料を得る。そして、BET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製、商品名:NOVE−1200)を用いて、測定用試料のBET比表面積S
BETを測定する。
【0045】
シラノール基密度の前記算出方法の詳細については、例えば、Analytical Chemistry、1956年、第28巻、12号、p.1981−1983、及び、Japanese Journal of Applied Physics、2003年、第42巻、p.4992−4997に開示されている。
【0046】
[平均粒径]
砥粒の平均粒径は、更に良好な研磨速度を得ることができる観点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましい。砥粒の平均粒径は、更に良好な研磨速度を得ることができる観点から、100nm以下が好ましく、90nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましい。砥粒の平均粒径は、更に良好な研磨速度を得ることができる観点から、10〜100nmが好ましく、20〜90nmがより好ましく、40〜80nmが更に好ましい。
【0047】
本実施形態において、「砥粒の平均粒径」とは、砥粒の二次粒径を意味する。砥粒の平均粒径は、例えば、光回折散乱式粒度分布計(例えば、BECKMAN COULTER社製の商品名:COULTER N5型)で測定した値である。COULTER N5型の測定条件としては、測定温度20℃、溶媒屈折率1.333(水に相当)、粒子屈折率Unknown(設定)、溶媒粘度1.005mPa・s(水に相当)、Run Time200sec、レーザ入射角90°である。また、Intensity(散乱強度、濁度に相当)が5E+04〜4E+05の範囲に入るように調整し、4E+05よりも高い場合には水で希釈して測定する。
【0048】
60℃で6日間保管した後の砥粒の粒径変化率(成長率)は、50%以下であることが好ましい。砥粒の粒径変化率は、下記式から求められる。砥粒の平均粒径は光回折散乱式粒度分布計により測定できる。なお、「作製直後」とは、作製してから30分以内をいう(以下同じ)。
粒径変化率(%)=(「保管後の平均粒径」−「作製直後の平均粒径」)/「作製直後の平均粒径」×100
【0049】
[会合度]
本実施形態に係る研磨液に使用される砥粒の会合度(粒子の会合度)は、更に好ましい層間絶縁材料の研磨速度が得られる観点から、1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.3以上が更に好ましい。
【0050】
なお、本実施形態において、「会合度」とは、前記平均粒径を二軸平均一次粒径で除した値(平均粒径/二軸平均一次粒径)を意味する。会合度は、上述したように、砥粒が液体に分散した状態における二次粒子の「平均粒径」を測定し、この平均粒径を二軸平均一次粒径で除することにより得ることができる。
【0051】
[ゼータ電位]
研磨液中における砥粒のゼータ電位は、砥粒の分散安定性に更に優れ、層間絶縁材料の更に良好な研磨速度が得られる観点から、+5mV以上が好ましく、+10mV以上がより好ましい。ゼータ電位の上限は、特に制限はないが、約80mV以下であれば、好適な研磨特性が容易に得られる。
【0052】
本実施形態においてゼータ電位(ζ[mV])は、ゼータ電位測定装置において測定サンプルの散乱強度が1.0×10
4〜5.0×10
4cps(ここで、「cps」とは、counts per second、すなわち、カウント毎秒を意味し、粒子の計数の単位である。)となるように研磨液を純水で希釈した後、ゼータ電位測定用セルに入れて測定する。散乱強度を前記範囲に調整する方法としては、例えば、研磨液を希釈して砥粒含有量を1.7〜1.8質量%に調整する方法が挙げられる。
【0053】
[含有量]
砥粒の含有量は、更に良好な研磨速度を得る観点から、研磨液の全質量を基準として、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。砥粒の含有量は、更に良好な研磨速度を得る観点から、研磨液の全質量を基準として、5.0質量%以下が好ましい。砥粒の含有量は、更に良好な研磨速度を得る観点から、研磨液の全質量を基準として、1.0〜5.0質量%が好ましく、2.0〜5.0質量%がより好ましい。
【0054】
(有機溶媒)
本実施形態に係る研磨液は、有機溶媒を含有する。有機溶媒は、モノアルコール、ジアルコール及びセロソルブ類からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。これにより、砥粒の分散安定性が非常に良好であり、研磨液の保管安定性に更に優れる。このような効果を有する理由は必ずしも明らかではない。有機溶媒は、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
モノアルコール(例えば、エーテル結合、エステル結合等を含まないモノアルコール)としては、メタノール、エタノール、プロパノール(2−プロパノール等)、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0056】
ジアルコール(例えば、エーテル結合、エステル結合等を含まないジアルコール)としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0057】
セロソルブ類は、エチレングリコールと炭素鎖(アルキレン鎖等)とがエーテル結合した化合物である。セロソルブ類としては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソブトキシエタノール等が挙げられる。
【0058】
有機溶媒の含有量は、研磨液中の砥粒の凝集又は沈降を更に効果的に抑制できる観点から、研磨液の全質量を基準として、7質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、14質量%以上が更に好ましい。
【0059】
(水)
本実施形態に係る研磨液で用いられる水としては、特に制限されるものではないが、純水が好ましい。水は、前述した研磨液の構成材料の残部として配合されていればよく、水の含有量は特に制限はない。
【0060】
(金属防食剤)
本実施形態に係る研磨液は、金属防食剤を含有してもよい。金属防食剤としては、特に制限はなく、金属に対する防食作用を有する従来公知の化合物がいずれも使用可能である。金属防食剤としては、具体的には、トリアゾール化合物、ピリジン化合物、ピラゾール化合物、ピリミジン化合物、イミダゾール化合物、グアニジン化合物、チアゾール化合物、テトラゾール化合物、トリアジン化合物、及び、ヘキサメチレンテトラミンからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。ここで、「化合物」とは、その骨格を有する化合物の総称であり、例えば、「トリアゾール化合物」とは、トリアゾール骨格を有する化合物を意味する。金属防食剤としては、トリアゾール化合物を含むことが好ましい。金属防食剤は、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
トリアゾール化合物としては、1,2,3−トリアゾ−ル、1,2,4−トリアゾ−ル、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル、ベンゾトリアゾ−ル(BTA)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、1−ヒドロキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、4−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾ−ルメチルエステル(1H−ベンゾトリアゾール−4−カルボン酸メチル)、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾ−ルブチルエステル(1H−ベンゾトリアゾール−4−カルボン酸ブチル)、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾ−ルオクチルエステル(1H−ベンゾトリアゾール−4−カルボン酸オクチル)、5−ヘキシルベンゾトリアゾ−ル、(1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル)(1,2,4−トリアゾリル−1−メチル)(2−エチルヘキシル)アミン、トリルトリアゾ−ル、ナフトトリアゾ−ル、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸、3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−オール、1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、1−アセチル−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、3−ヒドロキシピリジン、1,2,4−トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン、2−メチル−5,7−ジフェニル−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、2−メチルサルファニル−5,7−ジフェニル−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、2−メチルサルファニル−5,7−ジフェニル−4,7−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン等が挙げられる。なお、トリアゾール骨格と、トリアゾール骨格以外の骨格とを一分子中に有する化合物は、トリアゾール化合物に該当するものとする。
【0062】
ピリジン化合物としては、ピリジン、8−ヒドロキシキノリン、プロチオナミド、2−ニトロピリジン−3−オール、ピリドキサミン、ニコチンアミド、イプロニアジド、イソニコチン酸、ベンソ[f]キノリン、2,5−ピリジンジカルボン酸、4−スチリルピリジン、アナバシン、4−ニトロピリジン−1−オキシド、ピリジン−3−酢酸エチル、キノリン、2−エチルピリジン、キノリン酸、アレコリン、シトラジン酸、ピリジン−3−メタノール、2−メチル−5−エチルピリジン、2−フルオロピリジン、ペンタフルオロピリジン、6−メチルピリジン−3−オール、ピリジン−2−酢酸エチル等が挙げられる。
【0063】
ピラゾール化合物としては、ピラゾール、1−アリル−3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジ(2−ピリジル)ピラゾール、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3,5−ジメチル−1−ヒドロキシメチルピラゾール、3,5−ジメチル−1−フェニルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール、4−メチルピラゾール、N−メチルピラゾール、3−アミノピラゾール、3−アミノピラゾール等が挙げられる。
【0064】
ピリミジン化合物としては、ピリミジン、1,3−ジフェニル−ピリミジン−2,4,6−トリオン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2,4,5,6−テトラアミノピリミジンサルフェイト、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4,6−トリクロロピリミジン、2,4,6−トリメトキシピリミジン、2,4,6−トリフェニルピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシルピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、2−アセトアミドピリミジン、2−アミノピリミジン、4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジン等が挙げられる。
【0065】
イミダゾール化合物としては、イミダゾール、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0066】
グアニジン化合物としては、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0067】
チアゾール化合物としては、チアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール等が挙げられる。
【0068】
テトラゾール化合物としては、テトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾール等が挙げられる。
【0069】
トリアジン化合物としては、トリアジン、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,4−トリアジン等が挙げられる。
【0070】
金属防食剤を使用する場合、金属防食剤の含有量は、導電性物質のエッチングを抑制し、かつ、研磨後の表面に荒れが生じることを防ぎやすくなる観点から、研磨液の全質量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。金属防食剤の含有量は、導電性物質及びバリア金属の研磨速度を更に実用的な研磨速度に保つことができる観点から、研磨液の全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0071】
(酸化剤)
本実施形態に係る研磨液は、酸化剤(金属酸化剤)を含有することができる。酸化剤としては、前記導電性物質を酸化する能力を有していれば特に制限はないが、具体的には例えば、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられる。その中でも、過酸化水素が好ましい。酸化剤は、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
基板が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。但し、オゾン水は、組成の時間変化が激しいため、過酸化水素が好ましい。なお、適用対象の基板が半導体素子を含まないガラス基板等である場合は、不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
【0073】
酸化剤を使用する場合、酸化剤の含有量は、金属の酸化が不充分となりCMP速度が低下することを防ぐ観点から、研磨液の全質量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。酸化剤の含有量は、被研磨面に荒れが生じることを防ぐことができる観点から、研磨液の全質量を基準として、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、酸化剤の含有量は、研磨液の全質量を基準として0.01〜50質量%が好ましい。なお、酸化剤として過酸化水素を使用する場合、通常過酸化水素水として入手できるので、過酸化水素が最終的に前記範囲になるように過酸化水素水を配合する。
【0074】
(酸化金属溶解剤)
本実施形態に係る研磨液は、導電性物質及びバリア金属等の金属の良好な研磨速度を更に得やすくなる観点から、酸化金属溶解剤を含有することが好ましい。ここで、「酸化金属溶解剤」とは、少なくとも導電性物質を水に溶解させるのに寄与する物質として定義される。酸化金属溶解剤としては、例えば、キレート剤、エッチング剤等として知られる物質が挙げられる。
【0075】
酸化金属溶解剤としては、アミノ酸、有機酸(但し、アミノ酸に含まれるものを除く)、有機酸エステル、有機酸の塩等の有機酸化合物;無機酸、無機酸の塩等の無機酸化合物などが挙げられる。前記の塩としては、特に制限はないが、アンモニウム塩であることが好ましい。酸化金属溶解剤は、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
酸化金属溶解剤は、実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できる観点から、有機酸化合物が好ましく、有機酸がより好ましい。前記有機酸としては、ギ酸、酢酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、乳酸、マンデル酸、ビニル酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、フタル酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、オキサロ酢酸、クエン酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メリト酸、イソクエン酸、アコニット酸、オキサロコハク酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、オクタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アクリル酸、プロピオール酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、安息香酸、ケイヒ酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、グリコール酸、サリチル酸、クレオソート酸、バニリン酸、シリング酸、ピロカテク酸、レソルシル酸、ゲンチジン酸、プロトカテク酸、オルセリン酸、没食子酸、タルトロン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、シトラマル酸、キナ酸、シキミ酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、カフェー酸、フェルラ酸、イソフェルラ酸、シナピン酸等の有機酸;無水マレイン酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の有機酸の酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、酸化金属溶解剤は、ギ酸、マロン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸及びアジピン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。有機酸化合物は、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
酸化金属溶解剤は、導電性物質の高い研磨速度が得られやすい観点から、無機酸が好ましい。無機酸としては、具体的には、塩酸等の一価の酸;硫酸、クロム酸、炭酸、モリブデン酸、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、セレン酸、テルル酸、亜テルル酸、タングステン酸、ホスホン酸等の二価の酸;リン酸、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、バナジン酸等の三価の酸;ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等の四価以上の酸などが挙げられる。無機酸化合物は、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
酸化金属溶解剤を使用する場合、酸化金属溶解剤の含有量は、導電性物質及びバリア金属等の金属に対して良好な研磨速度が得られやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましい。酸化金属溶解剤の含有量は、エッチングを抑制し被研磨面に荒れが生じることを防ぎやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、3質量%以下が特に好ましい。これらの観点から、酸化金属溶解剤の含有量は、研磨液の全質量を基準として0.001〜20質量%が好ましい。
【0079】
(水溶性ポリマー)
本実施形態に係る研磨液は、少なくとも一種の水溶性ポリマーを含有することが好ましい。これにより、腐食の抑制効果、膜表面の保護効果、ディフェクト発生の低減効果等が更に効果的に達成できる。ここで、「水溶性」とは、25℃において、水100gに対して0.1g以上溶解するものとして定義される。
【0080】
水溶性ポリマーとしては、カルボン酸基及びカルボン酸塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する化合物、当該化合物のエステル及び塩等が挙げられる。このような水溶性ポリマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のカルボン酸基を有するモノマーの単独重合体;当該単独重合体のカルボン酸基の部分がカルボン酸塩基(カルボン酸アンモニウム塩基等)となった単独重合体などが挙げられる。また、水溶性ポリマーとしては、カルボン酸基を有するモノマー、及び、カルボン酸塩基を有するモノマーからなる群より選ばれる少なくとも一種と、カルボン酸のアルキルエステル等の誘導体との共重合体も好ましい。水溶性ポリマーとしては、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸のカルボン酸基の少なくとも一部がカルボン酸アンモニウム塩基に置換されたポリマー(以下、「ポリアクリル酸アンモニウム塩」という)、ポリメタクリル酸のカルボン酸基の少なくとも一部がカルボン酸アンモニウム塩基に置換されたポリマー(以下、「ポリメタクリル酸アンモニウム塩」という)等が挙げられる。
【0081】
上記以外のその他の水溶性ポリマーとしては、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、プルラン等の多糖類;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩、ポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマーなどが挙げられる。
【0082】
研磨対象の基板が半導体集積回路用基板等の場合は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染を回避する観点から、上記水溶性ポリマーは、酸性基を有するポリマー又はそのアンモニウム塩であることが好ましい。但し、研磨対象の基板が、ガラス基板等である場合はその限りではない。
【0083】
前記水溶性ポリマーの中でも、カルボン酸基又はカルボン酸塩基を有する化合物、ペクチン酸、寒天、ポリリンゴ酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、これらのエステル及び塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の水溶性ポリマーが好ましく、カルボン酸基又はカルボン酸塩基を有する化合物、当該化合物のエステル及び塩がより好ましく、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸塩が更に好ましく、ポリアクリル酸アンモニウム塩及びポリメタクリル酸アンモニウム塩が特に好ましい。水溶性ポリマーは、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、500〜1000000が好ましく、1000〜500000がより好ましく、2000〜200000が更に好ましく、5000〜150000が特に好ましい。
【0085】
前記重量平均分子量は、例えば、以下の条件に基づいてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリアクリル酸換算した値を使用して測定することができる。
【0086】
{条件}
試料:10μL
標準ポリアクリル酸:日立化成テクノサービス株式会社製、商品名「PMAA−32」
検出器:株式会社日立製作所製、RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレーター:株式会社日立製作所製、GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所製、商品名「L−6000」
脱気装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/分
測定時間:45分
【0087】
水溶性ポリマーを使用する場合、水溶性ポリマーの含有量は、良好な腐食抑制性を確保することができる観点から、研磨液の全質量を基準として、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましい。水溶性ポリマーの含有量は、充分な研磨速度を維持することができる観点から、研磨液の全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましい。水溶性ポリマーの含有量は、研磨液の全質量を基準として0.001〜10質量%が好ましい。
【0088】
(pH)
本実施形態に係る研磨液は、バリア金属及び二酸化珪素の良好な研磨速度が得られ、かつ、low−k材料を適切な速度で研磨できることを特長とする。但し、前記のように、バリア金属の研磨においてオーバー研磨する場合の研磨液(CMP研磨液等)として好適に使用するためには、さらに、導電性物質の研磨速度も良好な値に保つことが好ましい。このような観点から、本実施形態に係る研磨液のpH(25℃)は、5.0以下であることが好ましい。
【0089】
研磨液のpHは、導電性物質が過剰に研磨されることに起因するディッシングを抑制しやすくなる観点から、2.0以上が好ましく、2.3以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましい。酸化金属溶解剤として有機酸化合物又は無機酸化合物を使用する場合、pHをこの範囲に調整することが特に好ましい。また、酸性が強すぎる場合と比較しても取り扱いが容易になる。研磨液のpHは、導電性物質に対して良好な研磨速度を有し、かつ、バリア金属に対しても良好な研磨速度を得ることができる観点から、5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4.0以下が更に好ましい。導電性物質の研磨速度が良好であることにより、バリア金属の研磨においてオーバー研磨する場合の研磨液として好適に使用できる。pHは、前記の上限及び下限によって限定される範囲であることが好ましい。
【0090】
研磨液のpHは、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd.)製のModel F−51)で測定される。例えば、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液pH6.86(25℃)及びホウ酸塩pH緩衝液pH:9.18(25℃))を用いて3点校正した後、電極を研磨液に入れ、3分以上経過して安定した後の値を測定することができる。
【0091】
(分液保存)
本実施形態に係る研磨液は、少なくとも砥粒を含むスラリと、砥粒以外の成分を含む添加液と、に分けて保存することができる。例えば、砥粒及び酸化剤を含有する研磨液の場合、砥粒の分散安定性に影響を与える可能性がある酸化剤と、砥粒とを分けて保存することができる。すなわち、酸化剤及び水を含む添加液と、砥粒及び水を含有するスラリとに分けることができる。
【0092】
(濃縮保存)
本実施形態に係る研磨液は、使用時よりも濃縮されてなる研磨液用濃縮液として保存又は運搬できる。例えば、研磨液用濃縮液中の水の含有量は、研磨液中の水の含有量の1/3以下とすることができる。但し、濃縮液中の砥粒の分散安定性を確保するため、研磨液用濃縮液中の水の含有量は、研磨液中の水の含有量の1/5以上であることが好ましい。
【0093】
例えば、少なくとも砥粒を含む研磨液用濃縮液と、それ以外の成分を含む添加液と、希釈液とに分けて保存し、研磨工程の直前又は研磨時に、含有成分が所望の含有量になるように研磨液用濃縮液と添加液と希釈液とを混合することで所望の研磨液を得ることができる。希釈液としては、例えば、水、有機溶媒、及び、水と有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。
【0094】
(用途)
本実施形態に係る研磨液は、半導体基板又は電子機器を製造するための研磨工程に適用することができる。すなわち、本実施形態に係る半導体基板又は電子機器の製造方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて、本実施形態に係る研磨方法により研磨を行う研磨工程を備えている。本実施形態に係る研磨液は、より具体的には、半導体基板における配線の形成に適用できる。例えば、導電性物質層(導電性物質で構成された層)、バリア層(バリア金属で構成された層)及び絶縁膜(絶縁材料で構成された膜)を備える基板のCMPに使用することができる。ここで、「層」及び「膜」との語句は、局所的に層状又は膜状であればよいことを意味し、例えば基板全面において層状又は膜状であることを必ずしも意味するものではない。
【0095】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて被研磨対象を研磨する研磨工程を備える。本実施形態に係る研磨方法は、例えば、基板の研磨方法である。
【0096】
第1実施形態に係る研磨方法は、一方の面に凹部を有する絶縁材料(層間絶縁材料)と、前記絶縁材料における前記凹部以外の部分の少なくとも一部を被覆(キャップ)するキャップ材料と、前記絶縁材料及び前記キャップ材料の上部に位置する部分を有するバリア金属と、前記凹部を充填し、かつ、前記バリア金属を被覆する導電性物質(配線金属)と、を備える基板を研磨する研磨方法であって、前記導電性物質を研磨して前記バリア金属(凹部以外の部分の上部に位置するバリア金属)を露出させる第1の研磨工程と、前記バリア金属(凹部以外の部分の上部に位置するバリア金属)及び前記キャップ材料を研磨して前記絶縁材料を露出させる第2の研磨工程と、を備える。絶縁材料は、例えば、凹部と、当該凹部以外の部分として凸部とを一方の面に有しており、キャップ材料が前記凸部を被覆していてもよい。バリア金属は、例えば、絶縁材料の凹凸に追従するように絶縁材料及びキャップ材料上に配置されている。前記絶縁材料は、例えばlow−k材料を含んでおり、例えばlow−k材料からなる。前記キャップ材料は、例えば二酸化珪素を含んでおり、例えば二酸化珪素からなる。第1実施形態に係る研磨方法では、例えば、本実施形態に係る研磨液を少なくとも前記第2の研磨工程で用いる。例えば、少なくとも前記第2の研磨工程で、本実施形態に係る研磨液を供給しながら研磨する。なお、第1実施形態に係る研磨方法は、第2の研磨工程において露出した絶縁材料の一部を研磨して平坦化させる、いわゆるオーバー研磨を行う工程を更に備えることもできる。
【0097】
第2実施形態に係る研磨方法は、一方の面に凹部を有する絶縁材料(層間絶縁材料)と、前記絶縁材料における前記凹部以外の部分の少なくとも一部を被覆するバリア金属と、前記凹部を充填し、かつ、前記バリア金属を被覆する導電性物質(配線金属)と、を備える基板を研磨する研磨方法であって、前記導電性物質を研磨して前記バリア金属(凹部以外の部分の上部に位置するバリア金属)を露出させる第1の研磨工程と、前記バリア金属(凹部以外の部分の上部に位置するバリア金属)を研磨して前記絶縁材料を露出させる第2の研磨工程と、を備える。絶縁材料は、例えば、凹部と、当該凹部以外の部分として凸部とを一方の面に有しており、バリア金属が前記凸部を被覆していてもよい。バリア金属は、例えば、絶縁材料の凹凸に追従するように絶縁材料上に配置されている。前記絶縁材料は、例えば二酸化珪素を含んでおり、例えば二酸化珪素からなる。第2実施形態に係る研磨方法では、例えば、本実施形態に係る研磨液を少なくとも前記第2の研磨工程で用いる。例えば、少なくとも前記第2の研磨工程で、本実施形態に係る研磨液を供給しながら研磨する。なお、第2実施形態に係る研磨方法は、第2の研磨工程において露出した絶縁材料の一部を研磨して平坦化させる、いわゆるオーバー研磨を行う工程を備えることもできる。
【0098】
導電性物質の構成材料としては、例えば、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物等の銅系金属;タングステン、窒化タングステン、タングステン合金等のタングステン系金属;銀;金などが挙げられる。これらの中でも、銅、銅合金、銅の酸化物及び銅合金の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の銅系金属が好ましく、銅がより好ましい。導電性物質は、公知のスパッタ法、メッキ法等により形成することができる。導電性物質は、前記構成材料を主成分として含んでいてもよく、例えば、銅系金属(銅等)を主成分として含んでいてもよい。「主成分」とは、当該物質の含有量が50質量%を超えることを意味する。
【0099】
絶縁材料の構成材料としては、例えば、シリコン系材料、有機ポリマー等が挙げられる。絶縁材料は、膜状(絶縁膜。例えば層間絶縁膜)であってもよい。絶縁膜としては、シリコン系被膜、有機ポリマー膜等が挙げられる。絶縁膜は、CVD法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法等によって形成することができる。
【0100】
前記シリコン系材料としては、シリカ系材料、low−k材料(低誘電率材料)等が挙げられる。シリカ系材料としては、二酸化珪素;フルオロシリケートグラス;トリメチルシラン又はジメトキシジメチルシランを出発原料として得られるオルガノシリケートグラス;ポーラスオルガノシリケートグラス;シリコンオキシナイトライド;水素化シルセスキオキサン等が挙げられる。low−k材料としては、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド等が挙げられる。
【0101】
前記有機ポリマーとしては、全芳香環系low−k材料(全芳香族系低誘電率絶縁材料)等のlow−k材料などが挙げられる。
【0102】
これらの中でも、オルガノシリケートグラスが好ましい。なお、配線間容量を下げる観点から、low−k材料の誘電率は、2.9以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。誘電率の下限は、特に限定されないが、2.2以上が好ましい。low−k材料は、これらの誘電率を有すると共に、シリコン系材料及び有機ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、low−k材料の誘電率は、例えば、水銀プローバを用いて測定することができる。low−k材料は、例えば膜状(low−k膜。例えば二酸化珪素膜)である。
【0103】
バリア金属は、絶縁材料中に導電性物質が拡散することを防止するため、及び、絶縁材料と導電性物質との密着性を向上させるために形成される。バリア金属を構成するバリア金属材料としては、タンタル系金属、チタン系金属、タングステン系金属、ルテニウム系金属、コバルト系金属及びマンガン系金属からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。具体的には、例えば、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金等のタンタル系金属;チタン、窒化チタン、チタン合金等のチタン系金属;タングステン、タングステン合金等のタングステン系金属;ルテニウム、ルテニウム合金等のルテニウム系金属;コバルト、コバルト合金等のコバルト系金属;マンガン、マンガン合金等のマンガン系金属などが挙げられる。バリア金属材料は、一種類単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、バリア金属は、二層以上積層することもできる。
【0104】
以下、半導体基板における配線層の形成工程の一例を示す
図1を用いて、第1実施形態に係る研磨方法について更に説明する。なお、第1実施形態に係る研磨方法はこれに限られないことは言うまでもない。
【0105】
まず、
図1(a)に示すように、シリコン基板11上に絶縁膜としてlow−k膜(オルガノシリケートグラス膜等)13を成膜した後、low−k膜13上にキャップ層(二酸化珪素膜等)15を積層することにより、low−k膜13からなる絶縁膜と、キャップ層15とが形成された基板100aを得る。次いで、レジスト層(図示せず)を形成し、エッチング等の公知の手段を用いて、low−k膜13及びキャップ層15を加工し、所定パターンの凹部(基板露出部)17aを形成する(
図1(b))。これにより、凹部17aと、low−k膜13及びキャップ層15からなる凸部(凹部以外の部分)17bとを有する基板100bが形成される。次に、
図1(c)に示すように、凹部17a及び凸部17bからなる凹凸に沿って基板100bを被覆するようにバリア金属(タンタル等)を蒸着又はCVD等により成膜してバリア層19を形成することにより基板100cを得る。
【0106】
さらに、
図1(d)に示すように、凹部17aを充填し、かつ、バリア層19を被覆するように、配線金属(銅等)を用いて、蒸着、めっき、CVD等の方法により導電性物質層21を形成することにより基板100dを得る。low−k膜13及びキャップ層15からなる凸部17b、バリア層19、並びに、導電性物質層21の厚さは、それぞれ10〜2000nm、1〜100nm、10〜2500nm程度が好ましい。
【0107】
次に、
図2を用いて、本実施形態に係る研磨液を用いて基板100d(
図1(d))を研磨する方法について説明する。まず、例えば、導電性物質/バリア金属の研磨速度比が充分大きい第1の研磨液を用いて、基板100dの表面の導電性物質層21をCMPにより研磨する(第1の研磨工程)。これにより、
図2(a)に示すように、凸部17b上のバリア層19を露出させると共に、凹部17aに導電性物質層21が残された所望の導体パターンを有する基板100eを得る。
【0108】
次に、導電性物質層21、バリア層19及びキャップ層15を研磨できる第2の研磨液を用いて基板100eを研磨する(第2の研磨工程)。第2の研磨工程では、まず、少なくとも、露出しているバリア層19、凹部17aの導電性物質層21の表層部を研磨する。これにより、凸部17bを被覆するバリア層19を除去してキャップ層15を全て露出させる。
【0109】
さらに、キャップ層15及びlow−k膜13の一部を除去して研磨を終了し、
図2(b)に示すように、基板100fを得る。基板100fは、金属配線として導電性物質層21が凹部17aに埋め込まれており、導電性物質層21とlow−k膜13との境界にバリア層19の断面が露出している。
【0110】
同様の工程を所定数繰り返すことにより、所望の配線層数を有する半導体基板を製造することができる(図示せず)。本実施形態に係る研磨液は、前記第1の研磨液及び第2の研磨液のどちらにも使用することができる。また、第2実施形態に係る研磨方法は、前記low−k膜(絶縁膜)13及びキャップ層15からなる凸部17bに代えて、絶縁膜(二酸化珪素膜等)からなる凸部を用いること以外は第1実施形態に係る研磨方法と同様に行うことができる。
【0111】
本実施形態に係る研磨液は、半導体基板に形成された珪素化合物膜の研磨だけでなく、その他の膜の研磨にも好適に使用できる。例えば、所定の配線を有する配線板に形成された酸化珪素、ガラス、窒化珪素等からなる無機絶縁膜;フォトマスク、レンズ、プリズム等の光学ガラス;ITO等の無機導電膜;ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路、光スイッチング素子、光導波路;光ファイバの端面;シンチレータ等の光学用単結晶;固体レーザ単結晶;青色レーザ用LEDサファイア基板;SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶;磁気ディスク用ガラス基板;磁気ヘッド等の基板などを研磨するためにも使用することができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例えば、研磨液の材料の種類又は配合比率は、本実施例記載の種類又は配合比率以外の種類又は配合比率でも差し支えない。また、研磨対象の組成又は構造は、本実施例記載の組成又は構造以外の組成又は構造でも差し支えない。
【0113】
<I.CMP研磨液用濃縮液の調製>
表1に示す物性を有するコロイダルシリカを準備した。容器に、フタル酸を1.0質量部、及び、ベンゾトリアゾール(BTA)を0.5質量部入れた後、超純水をX質量部注いだ。その後、攪拌及び混合して両成分を溶解させた。次に、表2の配合量の有機溶媒を入れた後に攪拌した。さらに、水溶性ポリマーとしてポリメタクリル酸アンモニウム塩(日立化成テクノサービス株式会社製、分子量8000)を0.1質量部入れて溶解させた。その後、シリカ粒子としてそれぞれ10質量部に相当する量の前記コロイダルシリカを添加してCMP研磨液用濃縮液を得た。なお、コロイダルシリカは、それぞれ固形分(シリカ粒子の含有量)が相違するため、前記超純水のX質量部は、合計が100質量部になるよう計算して求めた。表2中、「MMB」は3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを表し、「IBEE」は2−(2−イソブトキシエトキシ)エタノールを表す。
【0114】
<II.評価>
(砥粒の溶媒親和性の測定)
前記CMP研磨液用濃縮液を20g量り取り、80gの水で希釈(5倍希釈)して測定サンプルA(CMP研磨液)を調製した。また、測定サンプルAを遠心分離し、砥粒を除く測定サンプルB(砥粒を除く研磨液)を調製した。次に、これらの測定サンプルA,B、及び、パルスNMR方式粒子界面特性評価装置(日本ルフト株式会社製、商品名:Acron Area)を用いてそれぞれの緩和時間(25℃)を測定した。そして、下記式(1)より砥粒の溶媒親和性を求めた。
A={(測定サンプルAのNMR緩和時間の逆数)/(測定サンプルBのNMR緩和時間の逆数)−1}/砥粒の総表面積 ・・・(1)
【0115】
[砥粒の平均粒径の測定]
前記CMP研磨液用濃縮液を0.5g量り取り、99.5gの水で希釈(200倍希釈)して測定サンプルを調製した。次に、光回折散乱式粒度分布計(BECKMAN COULTER社製、商品名:COULTER N5型)を用いてこの測定サンプルの測定を行い、D50の値をCMP研磨液中の平均粒径として得た。
【0116】
[粒子体積比の算出]
粒子体積比は、砥粒を真球と仮定し、粒子重量濃度、粒子密度(g/cm
2)、及び、測定サンプルBの比重(g/cm
2)を用いて、下記式(3)より求めた。
粒子体積比=(「粒子重量濃度」×「測定サンプルBの比重」)/{(1−「粒子重量濃度」)×粒子密度} ・・・(3)
【0117】
[砥粒の総表面積の算出]
前記測定により求めた砥粒の平均粒径(μm)及び粒子体積比と、粒子密度(g/cm
2)とを用いて、下記式(4)より砥粒の総表面積(m
2)を求めた。
砥粒の総表面積=(6×粒子体積比)/(砥粒の平均粒径×粒子密度) ・・・(4)
【0118】
(砥粒の分散安定性の評価)
前記CMP研磨液用濃縮液のそれぞれについて、作製直後における二次粒子の平均粒径と、濃縮液を60℃の恒温槽で6日間保管した後における二次粒子の平均粒径とを、上記と同様の方法により測定した。下記式より粒径変化率(%)を求めた。
結果を表2に示す。
粒径変化率(%)=(「保管後の平均粒径」−「作製直後の平均粒径」×100)/「作製直後の平均粒径」
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
<III.評価結果>
砥粒の溶媒親和性Aが1.35以下である実施例では、砥粒を60℃/6日間保管した場合であっても砥粒の粒径変化率が50%以下であり、砥粒の分散安定性(保管安定性)が良いことが明らかになった。また、実施例6〜8より、有機溶媒の添加量が多い方が砥粒の分散安定性が高まることが明らかになった。
【0122】
一方、砥粒の溶媒親和性Aが1.35より大きい比較例では、砥粒を60℃/6日間保管した場合の砥粒の粒径変化率は50%を超えており、砥粒の分散安定性が劣ることが明らかになった。