(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分において、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位の含有比率[芳香族ビニル化合物に由来する構造単位/無水マレイン酸に由来する構造単位](モル比)が2〜9である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
さらに、(D)ラジカル反応開始剤、(E)硬化促進剤、(F)難燃剤及び(G)無機充填材からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、
(A)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂、
(B)水酸基を有するエポキシ変性ポリブタジエン、及び
(C)マレイミド化合物、
を含有してなる熱硬化性樹脂組成物である。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0013】
<(A)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂>
(A)成分は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂[以下、共重合樹脂(A)と称することがある]である。該(A)成分により、特に誘電特性が向上する。
該芳香族ビニル化合物としては、スチレン、1−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
(A)成分としては、特に、下記一般式(A−i)で表される芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と下記式(A−ii)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂が好ましい。
【0014】
【化6】
(式中、R
A1は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R
A2は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、水酸基又は(メタ)アクリロイル基である。xは、0〜3の整数である。但し、xが2又は3である場合、複数のR
A2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0015】
R
A1及びR
A2が示す炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。
R
A2が示す炭素数2〜5のアルケニル基としては、アリル基、クロチル基等が挙げられる。該アルケニル基としては、好ましくは炭素数3〜5のアルケニル基、より好ましくは炭素数3又は4のアルケニル基である。
R
A2が示す炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜12のアリール基、より好ましくは6〜10のアリール基である。
xは、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。
一般式(A−i)で表される芳香族ビニル化合物に由来する構造単位においては、R
A1が水素原子であり、且つxが0である下記式(A−i−1)で表される構造単位が好ましい。
【化7】
【0016】
共重合樹脂(A)中における、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位の含有比率[芳香族ビニル化合物に由来する構造単位/無水マレイン酸に由来する構造単位](モル比)は、好ましくは2〜9、より好ましくは4〜9、さらに好ましくは6〜9である。また、前記式(A−ii)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位に対する前記一般式(A−i)で表される芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有比率[(A−i)/(A−ii)](モル比)も同様に、好ましくは2〜9、より好ましくは4〜9、さらに好ましくは6〜9である。当該含有比率が2以上であれば、誘電特性及び耐熱性の改善効果が十分となる傾向にあり、9以下であれば、相容性が良好となる傾向にある。
共重合樹脂(A)中における、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位との合計含有量、及び、一般式(A−i)で表される芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と式(A−ii)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位との合計含有量は、それぞれ、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは実質的に100質量%である。
共重合樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000〜18,000、より好ましくは6,000〜17,000、さらに好ましくは8,000〜16,000、特に好ましくは10,000〜16,000、最も好ましくは12,000〜16,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、いずれも、溶離液としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(標準ポリスチレン換算)で測定された値である。
【0017】
なお、エポキシ樹脂を低誘電率化する手法としては、スチレンと無水マレイン酸の共重合樹脂を用いる方法があるが、この方法をプリント配線板用材料に応用すると、基材への含浸性及び銅箔との接着性が不十分となることより、一般的に避けられる傾向にある。そのため、前記共重合樹脂(A)を用いることも避けられがちであるが、本発明は、前記共重合樹脂(A)を用いながらも、(B)成分及び(C)成分を共に含有させることにより、誘電特性を優れたものとしながらも、銅箔との接着性を高めることに成功し、さらには、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性にも優れる熱硬化性樹脂組成物となることが判明して成し遂げられたものである。
【0018】
(共重合樹脂(A)の製造方法)
共重合樹脂(A)は、芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸とを共重合することにより製造することができる。
芳香族ビニル化合物としては、前述の通り、スチレン、1−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、前記芳香族ビニル化合物及び無水マレイン酸以外にも、各種の重合可能な成分を共重合させてもよい。各種の重合可能な成分としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、アクリロニトリル等のビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物などが挙げられる。
また、上記共重合によって得られた共重合体に、フリーデル・クラフツ反応、又はリチウム等の金属系触媒を用いた反応を通じて、アリル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、水酸基などの置換基(一般式(A−i)中のR
A2に相当する。)を導入してもよい。
【0019】
共重合樹脂(A)としては、市販品を用いることもでき、市販品としては、「SMA(登録商標)EF30」(スチレン/無水マレイン酸=3、Mw=9,500)、「SMA(登録商標)EF40」(スチレン/無水マレイン酸=4、Mw=11,000)、「SMA(登録商標)EF60」(スチレン/無水マレイン酸=6、Mw=11,500)、「SMA(登録商標)EF80」(スチレン/無水マレイン酸=8、Mw=14,400)[以上、サートマー社製]等が挙げられる。これらの中でも、「SMA(登録商標)EF80」が好ましい。
【0020】
<(B)水酸基を有するエポキシ変性ポリブタジエン>
(B)成分は、水酸基を有するエポキシ変性ポリブタジエン[以下、エポキシ変性ポリブタジエン(B)と称することがある]である。該(B)成分により、誘電特性を維持したまま銅箔との接着性を向上させる効果が発現する。銅箔との接着性を向上させるためには、極性基を有するエポキシ樹脂を用いることもできるが、その場合、誘電特性が悪化する傾向にある。しかし、本発明で用いる(B)成分であれば、前述のとおり、そのような問題を生じずに銅箔との接着性を向上させることができる。
また、(B)成分は、ポリブタジエンがエポキシ変性されていることにより、耐熱性の向上及び熱膨張係数の低下にも寄与する。
【0021】
エポキシ変性ポリブタジエン(B)が有する水酸基の位置に特に制限はないが、分子末端に水酸基を有することが好ましく、分子両末端に水酸基を有することがより好ましく、分子両末端にのみ水酸基を有することがさらに好ましい。また、エポキシ変性ポリブタジエン(B)が有する水酸基の数は1つ以上であれば特に制限はないが、1〜5つが好ましく、1つ又は2つがより好ましく、2つがさらに好ましい。
エポキシ変性ポリブタジエン(B)は、エポキシ基を含有するポリブタジエンであれば特に制限は無いが、銅箔との接着性、耐熱性、熱膨張係数及び柔軟性の観点から、下記一般式(B)で表されるエポキシ変性ポリブタジエンであることが好ましい。
【0022】
【化8】
(式中、a、b及びcはそれぞれ、括弧内の構造単位の比率を表しており、aは0.05〜0.40、bは0.02〜0.30、cは0.30〜0.80であり、さらに、a+b+c=1.00、且つ(a+c)>bを満たす。yは、括弧内の構造単位の数を表し、10〜250の整数である。)
【0023】
一般式(B)中の各構造単位の結合順序は順不同である。つまり、左に示された構造単位と、中心に示された構造単位と、右に示された構造単位とは、入れ違っていてもよく、それぞれを、(a)、(b)、(c)で表すと、−[(a)−(b)−(c)]−[(a)−(b)−(c)−]−、−[(a)−(c)−(b)]−[(a)−(c)−(b)−]−、−[(b)−(a)−(c)]−[(b)−(a)−(c)−]−、−[(a)−(b)−(c)]−[(c)−(b)−(a)−]−、−[(a)−(b)−(a)]−[(c)−(b)−(c)−]−、−[(c)−(b)−(c)]−[(b)−(a)−(a)−]−など、種々の結合順序があり得る。
銅箔との接着性、耐熱性、熱膨張係数及び柔軟性の観点から、aは好ましくは0.10〜0.30、bは好ましくは0.10〜0.30、cは好ましくは0.40〜0.80である。
エポキシ変性ポリブタジエン(B)は、例えば、分子両末端に水酸基を有するポリブタジエンを、過酸化水素又は過酸類によりエポキシ化することによって容易に製造され、前記一般式(B)で表されるエポキシ変性ポリブタジエンについても同様にして製造される。
原料である「分子両末端に水酸基を有するポリブタジエン」としては、下記一般式(B')で表される液状ポリブタジエンが好ましい。つまり、エポキシ変性ポリブタジエン(B)としては、下記一般式(B')で表される液状ポリブタジエンをエポキシ化して得られるものであることが好ましい。
【化9】
(式中、a、b、c及びyは、前記一般式(B)中のものと同じである。)
【0024】
原料である分子両末端に水酸基を有するポリブタジエン(前記一般式(B')で表される分子両末端に水酸基を有する液状ポリブタジエンを含む。)としては、市販品を使用できる。市販品としては、「Poly.BD R−15HT」、「Poly.BD R−45HT」(以上、出光興産株式会社製のポリブタジエン)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような水酸基を有するポリブタジエンは、水酸基を有し、且つ、ブタジエンの1,4−ビニル結合構造が1,2−ビニル結合構造よりも多く含まれること[(a+c)>b]により、接着剤に強靱性が付与されて、耐衝撃性及び銅箔との接着性が向上する傾向がある。
【0025】
一般式(B)において、a=0.20、b=0.20、c=0.60、及びy=10〜250の整数となるエポキシ化ポリブタジエンの市販品としては、「エポリード(登録商標)PB3600」(株式会社ダイセル製)等が挙げられ、柔軟性、耐衝撃性、機械的強度及び接着性の観点から、当該市販品を用いることが好ましい。
【0026】
<(C)マレイミド化合物>
(C)成分として、マレイミド化合物[以下、マレイミド化合物(C)と称する]を用いる。該(C)成分により、特に銅箔との接着性が向上する。マレイミド化合物(C)としては、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有する化合物が好ましい。
マレイミド化合物(C)の重量平均分子量(Mw)は、有機溶媒への溶解性の観点及び機械強度の観点から、好ましくは400〜3500、より好ましくは600〜1000、さらに好ましくは650〜950である。
また、マレイミド化合物(C)は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の剛性及び機械強度の観点から、酸性置換基を有するものであることが好ましい。具体的には、マレイミド化合物(C)は、後述するマレイミド化合物(c1)が、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)からなる群から選択される少なくとも1種で変性されたマレイミド化合物であることが好ましく、後述するマレイミド化合物(c1)が、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)で変性されたマレイミド化合物であることがより好ましい。
【0027】
(マレイミド化合物(c1))
マレイミド化合物(c1)は、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物である。
マレイミド化合物(c1)としては、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に脂肪族炭化水素基を有するマレイミド化合物[以下、脂肪族炭化水素基含有マレイミドと称する]であるか、又は、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に芳香族炭化水素基を含有するマレイミド化合物[以下、芳香族炭化水素基含有マレイミドと称する]が挙げられる。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、芳香族炭化水素基含有マレイミドが好ましい。芳香族炭化水素基含有マレイミドは、任意に選択した2つのマレイミド基の組み合わせのいずれかの間に芳香族炭化水素基を含有していればよい。
マレイミド化合物(c1)としては、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、1分子中に2個〜5個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、1分子中に2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物がより好ましい。また、マレイミド化合物(c1)としては、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、下記一般式(c1−1)〜(c1−5)のいずれかで表される芳香族炭化水素基含有マレイミドであることがより好ましく、下記一般式(c1−2)〜(c1−5)のいずれかで表される芳香族炭化水素基含有マレイミドであることがさらに好ましい。
【0029】
上記式中、R
C1〜R
C3は、各々独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。X
C1は、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、−O−、−C(=O)−、−S−、−S−S−又はスルホニル基を示す。p、q及びrは、各々独立に、0〜4の整数である。sは、0〜10の整数である。
R
C1〜R
C3が示す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、好ましくは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。
R
C1〜R
C3が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0030】
X
C1が示す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−ジメチレン基、1,3−トリメチレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
X
C1が示す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
X
C1としては、上記選択肢の中でも、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましい。さらに好ましいものは前述の通りである。
p、q及びrは、各々独立に、0〜4の整数であり、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、いずれも、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
sは、0〜10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0〜5の整数、より好ましくは0〜3の整数である。特に、一般式(c1−3)で表される芳香族炭化水素基含有マレイミド化合物は、s=0〜3の混合物であることが好ましい。
【0031】
マレイミド化合物(c1)としては、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素基含有マレイミド;m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(2−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2’−ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド等の芳香族炭化水素基含有マレイミドが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点からは、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミドが好ましい。
マレイミド化合物(c1)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、1種を単独で使用することが好ましい。
【0033】
(酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2))
酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)は、下記一般式(c2−1)で示されるモノアミン化合物であることが好ましい。
【化11】
【0034】
上記一般式(c2−1)中、R
C4は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基から選択される酸性置換基を示す。R
C5は、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子を示す。tは1〜5の整数、uは0〜4の整数であり、且つ、1≦t+u≦5を満たす。但し、tが2〜5の整数の場合、複数のR
C4は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、uが2〜4の整数の場合、複数のR
C5は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
R
C4が示す酸性置換基としては、溶解性及び反応性の観点から、好ましくは水酸基、カルボキシ基であり、耐熱性も考慮すると、より好ましくは水酸基である。
tは1〜5の整数であり、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
R
C5が示す炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。
R
C5が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
uは0〜4の整数であり、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。
酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)としては、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、より好ましくは下記一般式(c2−2)又は(c2−3)で表されるモノアミン化合物であり、さらに好ましくは下記一般式(c2−2)で表されるモノアミン化合物である。但し、一般式(c2−2)及び(c2−3)中のR
C4、R
C5及びuは、一般式(c2−1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。
【0036】
酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)としては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられる。これらの中でも、溶解性及び反応性の観点からは、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の観点からは、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノールが好ましく、誘電特性、熱膨張係数及び製造コストも考慮すると、p−アミノフェノールがより好ましい。
酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
(ジアミン化合物(c3))
ジアミン化合物(c3)は、少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物が好ましく、2つのアミノ基の間に少なくとも2個のベンゼン環を直鎖状に有するジアミン化合物がより好ましく、下記一般式(c3−1)〜(c3−3)のいずれかで表されるジアミン化合物がさらに好ましい。
【化13】
(X
C2は、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、−O−、スルホニル基、−C(=O)−、フルオレニレン基又はフェニレンジオキシ基である。R
C6及びR
C7は、各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示す。v及びwは、各々独立に、0〜4の整数である。
X
C3及びX
C4は、各々独立に、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数2〜5のアルキリデン基、−O−又はスルホニル基である。)
【0038】
X
C2が示す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
X
C2が示す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。該アルキリデン基としては、イソプロピリデン基が好ましい。
X
C2としては、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、−O−が好ましく、メチレン基、−O−がより好ましい。
【0039】
R
C6及びR
C7が示す炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。
R
C6及びR
C7が示す炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。該アルコキシ基としては、メトキシ基が好ましい。
R
C6及びR
C7が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
v及びwは、各々独立に、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
【0040】
X
C3及びX
C4が示す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
X
C3及びX
C4が示す炭素数2〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。該アルキリデン基としては、イソプロピリデン基が好ましい。
X
C3としては、単結合、炭素数2〜5のアルキリデン基、スルホニル基が好ましい。
X
C4としては、炭素数2〜5のアルキリデン基が好ましく、イソプロピリデン基がより好ましい。
【0041】
ジアミン化合物(c3)としては、具体的には、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルケトン、ベンジジン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、反応性、銅箔との接着性及び誘電特性の観点からは、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンが好ましく、4,4'−ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。また、製造コストの観点からは、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−ジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルが好ましく、4,4'−ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。
【0042】
マレイミド化合物(c1)、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)の反応は、好ましくは後述の有機溶媒の存在下、反応温度70〜200℃で0.1〜10時間反応させることにより実施することが好ましい。
反応温度は、より好ましくは70〜160℃、さらに好ましくは70〜130℃、特に好ましくは80〜120℃である。反応時間は、より好ましくは1〜6時間、さらに好ましくは1〜4時間である。
【0043】
酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)の使用量は、マレイミド化合物(c1)のモル数を1とすると、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)のモル数が0.25〜0.5の範囲で使用されることが好ましい。酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)の使用量が0.25以上であれば、反応性の低下を抑制できる傾向にあり、0.5以下であれば、耐熱性、誘電特性及びガラス転移温度が良好となる傾向にある。
ジアミン化合物(c3)の使用量は、マレイミド化合物(c1)のモル数を1とすると、ジアミン化合物(c3)のモル数が0.1〜0.25の範囲で使用されることが好ましい。ジアミン化合物(c3)の使用量が0.1以上であれば、反応性の低下を抑制できる傾向にあり、0.25以下であれば、耐熱性及び誘電特性が良好となる傾向にある。
また、マレイミド化合物(c1)、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)の反応において、三者の使用量は、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)が有する第1級アミノ基当量[−NH
2基当量と記す]の総和と、マレイミド化合物(c1)のマレイミド基当量との関係が、下記式を満たすことが好ましい。
1.5≦〔マレイミド基当量〕/〔−NH
2基当量の総和〕≦10
〔マレイミド基当量〕/〔−NH
2基当量の総和〕を1.5以上とすることにより、ゲル化し難く、且つ耐熱性が低下し難い傾向にあり、また、10以下とすることにより、有機溶媒への溶解性、銅箔との接着性及び耐熱性が低下し難い傾向にあるため、好ましい。
同様の観点から、より好ましくは、
2≦〔マレイミド基当量〕/〔−NH
2基当量の総和〕≦8 を満たし、
より好ましくは、
3≦〔マレイミド基当量〕/〔−NH
2基当量の総和〕≦6 を満たす。
さらに好ましくは、
4≦〔マレイミド基当量〕/〔−NH
2基当量の総和〕≦6 を満たす。
【0044】
(有機溶媒)
前述の通り、マレイミド化合物(c1)、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)の反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。
該有機溶媒としては、当該反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はない。有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒を包含する窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒を包含する硫黄原子含有溶媒;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、窒素原子含有溶媒が好ましく、低毒性であるという観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトンがより好ましく、揮発性が高く、プリプレグの製造時に残溶剤として残り難いことも考慮すると、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドがさらに好ましく、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒の使用量に特に制限はないが、溶解性及び反応効率の観点から、マレイミド化合物(c1)、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)の合計100質量部に対して、好ましくは25〜1000質量部、より好ましくは40〜700質量部、さらに好ましくは50〜250質量部、特に好ましくは50〜150質量部となるようにすればよい。マレイミド化合物(c1)、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)の合計100質量部に対して25質量部以上とすることによって溶解性を確保し易くなる傾向があり、1000質量部以下とすることによって、反応効率の大幅な低下を抑制し易い傾向がある。
【0045】
(反応触媒)
マレイミド化合物(c1)、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)及びジアミン化合物(c3)の反応は、必要に応じて、反応触媒の存在下に実施してもよい。反応触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン系触媒;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール系触媒;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。
反応触媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
反応触媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、マレイミド化合物(c1)と、酸性置換基を有するモノアミン化合物(c2)と、ジアミン化合物(c3)の質量の総和100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。
なお、特に反応触媒を使用しなくても十分に反応は進行する。
【0046】
〔熱硬化性樹脂組成物中の(A)成分〜(C)成分の含有量〕
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記(A)〜(C)成分を含有してなるものである。各成分の含有量(但し、各成分は必ずしもそのままの構造で熱硬化性樹脂組成物中に含有されているわけではなく、つまり反応している成分もあるが、ここでは便宜上、各成分の使用量を「含有量」と称する。)は、固形分換算の(A)〜(C)成分の質量の総和100質量部に対して、(A)成分は好ましくは5〜25質量部、より好ましくは10〜20質量部、(B)成分は好ましくは5〜30質量部、より好ましくは10〜25質量部、(C)成分は好ましくは45〜80質量部、より好ましくは60〜75質量部である。
固形分換算の(A)〜(C)成分の質量の総和100質量部に対して、(A)成分の含有量が5質量部以上であれば、誘電特性が良好となる傾向にあり、さらに溶解性が確保されて樹脂ワニス製作時に析出し難い傾向にある。また、25質量部以下であれば、未反応成分が残り難いため、銅箔との接着性の低下を抑制できる傾向にある。
固形分換算の(A)〜(C)成分の質量の総和100質量部に対して、(B)成分の含有量が5質量部以上であれば、銅箔との接着性が良好となる傾向にある。また、30質量部以下であれば、耐熱性が良好となる傾向にある。
固形分換算の(A)〜(C)成分の質量の総和100質量部に対して、(C)成分の含有量が45質量部以上であれば、耐熱性に優れる傾向にある。また、80質量部以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の流動性及び成形性が良好となる傾向にある。
【0047】
<その他の成分>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記(A)〜(C)成分以外のその他の成分を含有してなるものであってもよい。その他の成分としては、例えば、(D)ラジカル反応開始剤、(E)硬化促進剤、(F)難燃剤、(G)無機充填材、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、密着性向上剤、有機充填材等が挙げられるが、特にこれらに制限されない。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記(A)〜(C)成分に加えて、さらに、(D)ラジカル反応開始剤、(E)硬化促進剤、(F)難燃剤及び(G)無機充填材からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなるものであることが好ましい。
【0048】
((D)ラジカル反応開始剤)
ラジカル反応開始剤[以下、ラジカル反応開始剤(D)と称する]を含有させることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化反応が生じ易くなる。
ラジカル反応開始剤(D)は、銅張積層板又は多層プリント配線板を製造する際に熱硬化性樹脂組成物の硬化物の硬化反応を開始又は促進させる効果を有する。
ラジカル反応開始剤(D)としては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤;p−メンタハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。ラジカル反応開始剤(D)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、プレプリグとした時の成形性を高める観点から、半減期温度の異なるラジカル反応開始剤を組み合わせることもできる。誘電特性及び熱膨張係数等の観点から、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等のジアルキルパーオキサイド系ラジカル反応開始剤と、それらよりも高い反応開始温度をもったp−メンタハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド及びt−ヘキシルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系ラジカル反応開始剤とから選ばれる1種以上のラジカル反応開始剤を用いることが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物がラジカル反応開始剤(D)を含有してなるものである場合、その含有量は、固形分換算の(A)〜(C)成分の質量の総和100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0049】
((E)硬化促進剤)
硬化促進剤[以下、硬化促進剤(E)と称する]を含有させることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化反応を促進させることができる。
硬化促進剤(E)としては、イミダゾール類及びその誘導体;ホスフィン類及びホスホニウム塩、第三級ホスフィンとキノン類との付加物等の有機リン系化合物;第二級アミン、第三級アミン、及び第四級アンモニウム塩などが挙げられる。硬化促進剤(E)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤(E)としては、銅箔との接着性、耐熱性及び難燃性の観点から、イミダゾール類及びその誘導体が好ましい。
硬化促進剤(E)としては市販品を用いてもよい。市販品としては、イソシアネートマスクイミダゾール(第一工業製薬株式会社製、商品名:G−8009L)、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート(北興化学工業株式会社製、商品名:TPP−MK)、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン(北興化学工業株式会社製、商品名:TPP−S)等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤(E)を含有してなるものである場合、その含有量は、硬化促進効果及び保存安定性の観点から、固形分換算の(A)〜(C)成分の質量の総和100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1.5質量部、さらに好ましくは0.1〜0.8質量部である。
【0050】
((F)難燃剤)
難燃剤[以下、難燃剤(F)と称する]を含有させることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の難燃性が向上する。
難燃剤(F)としては、熱分解温度が300℃未満の水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の金属水和物;臭素、塩素等を含有する含ハロゲン系難燃剤;リン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤;三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機系難燃助剤などが挙げられる。これらの中でも、環境保護の観点から、含ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤が好ましく、耐熱性、銅箔との接着性、弾性率、熱膨張係数等の低下が少なく、且つ高難燃性を付与する観点からは、リン系難燃剤がより好ましい。難燃剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
リン系難燃剤としては、無機系のリン系難燃剤と、有機系のリン系難燃剤がある。
無機系のリン系難燃剤としては、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物;リン酸;ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
有機系のリン系難燃剤としては、芳香族リン酸エステル、1置換ホスホン酸ジエステル、2置換ホスフィン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩、有機系含窒素リン化合物、環状有機リン化合物、リン含有フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、芳香族リン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩が好ましい。ここで、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、チタン塩、亜鉛塩のいずれかであることが好ましく、アルミニウム塩であることが好ましい。また、有機系のリン系難燃剤の中では、芳香族リン酸エステルがより好ましい。
【0051】
芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
1置換ホスホン酸ジエステルとしては、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等が挙げられる。
2置換ホスフィン酸エステルとしては、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル等が挙げられる。
2置換ホスフィン酸の金属塩としては、ジアルキルホスフィン酸の金属塩、ジアリルホスフィン酸の金属塩、ジビニルホスフィン酸の金属塩、ジアリールホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。これら金属塩は、前述の通り、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、チタン塩、亜鉛塩のいずれかであることが好ましい。
有機系含窒素リン化合物としては、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物;リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム等が挙げられる。
環状有機リン化合物としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等が挙げられる。
これらの中でも、誘電特性及びガラス転移温度の観点から、芳香族リン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩及び環状有機リン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、芳香族リン酸エステル及び2置換ホスフィン酸の金属塩から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0052】
また、前記芳香族リン酸エステルは、誘電特性及びガラス転移温度の観点から、下記一般式(F−1)もしくは(F−2)で表される芳香族リン酸エステルであることが好ましく、前記2置換ホスフィン酸の金属塩は、下記一般式(F−3)で表される2置換ホスフィン酸の金属塩であることが好ましい。
【化14】
【0053】
(式中、R
F1〜R
F5は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子である。e及びfは各々独立に0〜5の整数であり、g、h及びiは各々独立に0〜4の整数である。
R
F6及びR
F7は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基である。Mは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、アルミニウム原子、チタン原子又は亜鉛原子である。jは、1〜4の整数である。)
【0054】
R
F1〜R
F5が示す炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。R
F1〜R
F5が示すハロゲン原子としては、フッ素原子等が挙げられる。
e及びfは、0〜2の整数が好ましく、2がより好ましい。g、h及びiは、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
R
F6及びR
F7が示す炭素数1〜5のアルキル基としては、R
F1〜R
F5の場合と同じものが挙げられる。
R
F6及びR
F7が示す炭素数6〜14のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基等が挙げられる。該芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
jは金属イオンの価数を表しており、つまり、Mの種類に対応して1〜4の範囲内で変化する。
Mとしては、アルミニウム原子が好ましい。なお、Mがアルミニウム原子である場合、jは3である。
【0055】
難燃剤(F)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、「PX−200」(1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)、リン含有量=9質量%、大八化学工業株式会社製)、「OP−935」(ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩、リン含有量=23.5質量%、クラリアント社製)等が挙げられる。
【0056】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が難燃剤(F)を含有してなるものである場合、その含有量は、難燃性の観点から、固形分換算の(A)〜(C)成分の質量の総和100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは1〜8質量部である。
【0057】
((G)無機充填材)
無機充填材[以下、無機充填材(G)と称する]により、本発明の熱硬化性樹脂組成物の熱膨張係数を低減し、弾性率、耐熱性及び難燃性を向上させることができる。
無機充填材(G)としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、石英粉末、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラス等が挙げられる。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。無機充填材(G)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性及び難燃性の観点からは、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。シリカとしては、破砕シリカ、フュームドシリカ、球状シリカが挙げられる。シリカは、熱膨張係数、及び熱硬化性樹脂組成物へ充填した際の流動性の観点から、球状シリカが好ましい。
シリカの平均粒子径に特に制限はないが、0.01〜30μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜6μmがさらに好ましい。シリカの平均粒子径を0.01μm以上にすることで、高充填した際にも流動性を良好に保てる傾向にあり、また、30μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らして粗大粒子に起因する不良の発生を抑えることができる傾向にある。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
また、シリカの比表面積は、好ましくは4cm
2/g以上、より好ましくは4〜9cm
2/g、さらに好ましくは5〜7cm
2/gである。なお、比表面積は、BET法で求めることができる。例えば、粉体試料表面に、窒素を液体窒素温度で吸着させ、その吸着量から粉体試料の比表面積を求めるBET法で求めることができる。
【0058】
無機充填材(G)は、カップリング剤で表面処理されたものであってもよい。つまり、直接、シリカ等の無機充填材(G)に乾式又は湿式で表面処理した後、配合時にそのまま又はスラリー化して用いる方法を採用することも好ましい。一方、(A)成分及び(B)成分を含む樹脂組成物中に表面未処理のシリカ等の無機充填材(G)を配合した後、表面処理剤を樹脂組成物中に添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式を採用してもよい。
該カップリング剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、シロキサン系カップリング剤、ヒドロシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
熱膨張係数の観点及び他の成分との密着性の観点からは、無機充填材(G)は、アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカであることが好ましい。
【0059】
アミノシラン系カップリング剤としては、具体的には、下記一般式(G−1)で表されるケイ素含有基と、アミノ基とを有するシランカップリング剤が好ましい。
【化15】
(式中、R
G1は、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数2〜4のアシル基である。zは、0〜2の整数である。)
【0060】
R
G1が示す炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
R
G1が示す炭素数2〜4のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、アクリル基が挙げられる。これらの中でも、アセチル基が好ましい。
zは好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0061】
アミノシラン系カップリング剤は、アミノ基を1つ有していてもよいし、2つ有していてもよいし、3つ以上有していてもよいが、通常は、アミノ基を1つ又は2つ有する。
アミノ基を1つ有するアミノシラン系カップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、2−プロピニル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメート等が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。
アミノ基を2つ有するアミノシラン系カップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア等が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0062】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が無機充填材(G)を含有してなるものである場合、その含有量は、難燃性の観点から、固形分換算の(A)〜(C)成分の質量の総和100質量部に対して、好ましくは20〜110質量部、より好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは30〜80質量部、特に好ましくは45〜70質量部である。
【0063】
(有機溶剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、希釈することによって取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグを製造し易くする観点から、有機溶剤を含有させてもよい。本明細書では、有機溶剤を含有させた熱硬化性樹脂組成物を、樹脂ワニスと称することがある。
該有機溶剤としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、窒素原子含有溶剤が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、トルエン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、N,N−ジメチルアセトアミドがさらに好ましく、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。併用する場合には、特に、ケトン系溶剤と芳香族系溶剤の併用が好ましく、メチルイソブチルケトンとトルエンの併用がより好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の取り扱いが容易になる程度に適宜調整すればよく、また、樹脂ワニスの塗工性が良好となる範囲であれば特に制限はないが、熱硬化性樹脂組成物の固形分濃度(有機溶剤以外の成分の濃度)が好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜80質量%となるようにする。
【0064】
(熱硬化性樹脂組成物の物性及び特性)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、銅箔との接着性、耐熱性及び誘電特性に優れ、高ガラス転移温度、低熱膨張係数を有し、且つ成形性に優れる。また、該熱硬化性樹脂組成物は、有機溶剤に対する溶解性にも優れている。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の銅箔との接着性については、実施例に記載の方法によって測定した銅箔のピール強度でいうと、0.70kN/m以上であることが好ましく、0.75kN/m以上であることがより好ましく、0.75〜0.95kN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の誘電特性は、実施例に記載の方法によって測定した比誘電率でいうと、4.0以下であることが好ましく、3.90以下であることがより好ましく、3.80〜3.90の範囲にあることがさらに好ましい。また、実施例に記載の方法によって測定した誘電正接は、0.009以下であることが好ましく、0.0085以下であることがより好ましく、0.0060〜0.0085の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法によって測定したTgでいうと、180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることが好ましく、193〜198℃の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の熱膨張係数は、実施例に記載の方法によって測定した熱膨張係数でいうと、50ppm/℃以下であることが好ましく、40〜49ppm/℃の範囲にあることが好ましい。より好ましくは45ppm/℃以下であり、さらに好ましくは40〜45ppm/℃である。
【0065】
[プリプレグ]
本発明は、前記熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグをも提供する。
本発明のプリプレグは、前記熱硬化性樹脂組成物をシート状補強基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)させて製造することができる。
プリプレグのシート状補強基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。シート状補強基材の材質としては、紙、コットンリンターのような天然繊維;ガラス繊維及びアスベスト等の無機物繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン及びアクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、難燃性の観点から、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いた織布又は短繊維を有機バインダーで接着したガラス織布;ガラス繊維とセルロース繊維とを混沙したもの等が挙げられる。より好ましくは、Eガラスを使用したガラス織布である。
これらのシート状補強基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有する。なお、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質及び形状を組み合わせることもできる。
【0066】
熱硬化性樹脂組成物をシート状補強基材に含浸又は塗工させる方法としては、次のホットメルト法又はソルベント法が好ましい。
ホットメルト法は、熱硬化性樹脂組成物に有機溶剤を含有させず、(1)該組成物との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする方法、又は(2)ダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工する方法である。
一方、ソルベント法は、熱硬化性樹脂組成物に有機溶剤を含有させて樹脂ワニスを調製し、該樹脂ワニスにシート状補強基材を浸漬して、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後、乾燥させる方法である。
【0067】
シート状補強基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性、耐湿性及び加工性の観点から好ましい。熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗工した後、通常、好ましくは100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥して半硬化(Bステージ化)させることにより、本発明のプリプレグを得ることができる。
得られるプリプレグは、1枚を用いるか、又は必要に応じて好ましくは2〜20枚を重ね合わせて用いる。
【0068】
[銅張積層板]
本発明の銅張積層板は、前記プリプレグと銅箔とを積層してなるものである。例えば、前記プリプレグを1枚用いるか又は必要に応じて2〜20枚重ね、その片面又は両面に銅箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。
銅張積層板の成形条件としては、電気絶縁材料用積層板及び多層板の公知の成形手法を適用することができ、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間で成形することができる。
また、本発明のプリプレグと内層用プリント配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
銅箔の厚みに特に制限はなく、プリント配線板の用途等により適宜選択できる。銅箔の厚みは、好ましくは0.5〜150μm、より好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは5〜50μm、特に好ましくは5〜30μmである。
【0069】
なお、銅箔にめっきをすることによりめっき層を形成することも好ましい。
めっき層の金属は、めっきに使用し得る金属であれば特に制限されない。めっき層の金属は、好ましくは、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金の中から選択されることが好ましい。
めっき方法としては特に制限はなく、公知の方法、例えば電解めっき法及び無電解めっき法が利用できる。
【0070】
[プリント配線板]
本発明は、前記銅張積層板を用いてなるプリント配線板をも提供する。
本発明のプリント配線板は、銅張積層板の金属箔に回路加工を施すことにより製造することができる。回路加工は、例えば、銅箔表面にレジストパターンを形成後、エッチングにより不要部分の銅箔を除去し、レジストパターンを剥離後、ドリルにより必要なスルーホールを形成し、再度レジストパターンを形成後、スルーホールに導通させるためのメッキを施し、最後にレジストパターンを剥離することにより行うことができる。このようにして得られたプリント配線板の表面にさらに上記の銅張積層板を前記したのと同様の条件で積層し、さらに、上記と同様にして回路加工して多層プリント配線板とすることができる。この場合、必ずしもスルーホールを形成する必要はなく、バイアホールを形成してもよく、両方を形成することができる。このような多層化は必要枚数行われる。
【実施例】
【0071】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。本発明に係る熱硬化性樹脂組成物を用いて、プリプレグ、さらに銅張積層板を作製し、作製された銅張積層板を評価した。評価方法を以下に示す。
【0072】
[評価方法]
<1.樹脂ワニス中の析出物の有無>
ナイロン製の#200篩いで樹脂ワニスを通し、目視にて析出物の有無の確認をした。
【0073】
<2.銅箔との接着性(銅箔ピール強度)>
各例で作製した銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより3mm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機「Ez−Test」(株式会社島津製作所製)を用いて銅箔のピール強度を測定し、銅箔との接着性の指標とした。値が大きいほど、銅箔との接着性に優れることを示す。特に、0.70kN/m以上が好ましく、0.75kN/m以上がより好ましい。
【0074】
<3.耐熱性(はんだ耐熱性)>
各例で作製した銅張積層板を25mm角に切断し、これを288℃のはんだ浴に浮かべ、目視にて観察し、基板が膨れるまでの時間(単位:分)を測定した。なお、最長で30分間の観察としたため、30分経っても膨れが観察されなかった場合は、一律、「>30」と示す。
時間が長いほど、耐熱性に優れることを示す。
【0075】
<4.誘電特性(比誘電率Dk、誘電正接Df)>
各例で作製した銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより銅箔を取り除いた後、2mm×85mmに切断し、ネットワークアナライザ「E8364B」(Aglient Technologies社製)を用い、空洞共振器摂動法により、5GHzでの銅張積層板の比誘電率及び誘電正接を測定した。
比誘電率及び誘電正接が小さいほど好ましい。特に、比誘電率は4.0以下が好ましく、誘電正接は0.009以下が好ましい。
【0076】
<5.ガラス転移温度(Tg)>
各例で作製した銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「Q400EM」(TAインスツルメンツ社製)を用い、評価基板の面方向(Z方向)の25〜280℃(昇温速度:10℃/分)における熱膨張特性を観察し、膨張量の変曲点をガラス転移温度とした。
該ガラス転移温度は、180℃以上が好ましく、190℃以上がより好ましい。
【0077】
<6.熱膨張係数>
各例で作製した銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「Q400EM」(TAインスツルメンツ社製)を用いて、評価基板の面方向(Z方向)の熱膨張係数(線膨張係数)を測定した。尚、試料が有する熱歪みの影響を除去するため、昇温−冷却サイクルを2回繰り返し、2回目の温度変位チャートの、30〜100℃の熱膨張係数[ppm/℃]を測定した。値が小さいほど好ましい。
測定条件 1st Run:室温→210℃(昇温速度10℃/min)
2nd Run:0℃→280℃(昇温速度10℃/min)
銅張積層板は、さらなる薄型化が望まれており、これに併せて銅張積層板を構成するプリプレグの薄型化も検討されている。薄型化されたプリプレグは、反りやすくなるため、熱処理時におけるプリプレグの反りが小さいことが好ましい。反りを小さくするためには、基材の面方向の熱膨張係数が小さいことが有効である。
該熱膨張係数は、特に、50ppm/℃以下であると好ましく、45ppm/℃以下であるとより好ましい。
【0078】
<7.成形性>
銅厚18μm及び残銅率60%のパターンを作製した成形性確認用基板の両面に厚さ0.05mmのプリプレグを1枚ずつ重ね、さらに両面に18μmの銅箔「YGP−18」(日本電解株式会社製)を1枚ずつ重ね、温度200℃、圧力25kgf/cm
2(=2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形して4層銅張積層板を作製した。この4層銅張積層板の外層銅を除去した後、樹脂の埋め込み性、ボイド、かすれ等を目視で確認した。樹脂の埋め込み性が良好で、ボイド及びかすれが無い場合に、成形性が良好であるとして評価した。
【0079】
以下、実施例及び比較例で使用した各成分について説明する。
【0080】
(A)成分:
・「SMA(登録商標)EF80」(スチレン/無水マレイン酸=8、Mw=14,400、サートマー社製)
【0081】
(B)成分:
・「エポリード(登録商標)PB3600」(エポキシ変性ポリブタジエン、分子両末端OH基、株式会社ダイセル製)
(比較用)
・「エポリード(登録商標)PB4700」(エポキシ変性ポリブタジエン、分子両末端H基、株式会社ダイセル製)
・「B−3000」(ポリブタジエン(未変性)、Mn=3,200、日本曹達株式会社製)
・「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量=283g/eq、大日本インキ化学工業株式会社製)
【0082】
(C)成分:下記製造例に従って製造したマレイミド化合物を用いた。
[製造例]
下記のマレイミド化合物(c1)1,000g、p−アミノフェノール(イハラケミカル工業株式会社製)[(c2)成分]72.5g(0.66mol)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(東京化成工業株式会社製)[(c3)成分]64.3g(0.32mol)及びN,N−ジメチルアセトアミド720gを混合(〔マレイミド基当量〕/〔−NH
2基当量の総和〕≒3.4〜4.5)し、100℃で100分間反応させ、マレイミド化合物の溶液を得、マレイミド化合物(C)[それぞれ、BMIの変性体(Mw=358.4)、BMI−2300の変性体(Mw=424)、BMI−4000の変性体(Mw=570.6)、BMI−5100の変性体(Mw=440.6)]として用いた。
(マレイミド化合物(c1))
・「BMI」(4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ケイ・アイ化成株式会社製、前記一般式(c1−2)に包含される。)
・「BMI−2300」(ポリフェニルメタンマレイミド、大和化成株式会社製、前記一般式(c1−3)に包含される。)
・「BMI−4000」(2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、大和化成株式会社製、前記一般式(c1−4)に相当する。)
・「BMI−5100」(3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成株式会社製、前記一般式(c1−5)に相当する。)
【0083】
(D)成分:ラジカル反応開始剤
・「パーブチル(登録商標)P」(α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、日油株式会社製)
【0084】
(E)成分:硬化促進剤
・「G−8009L」(イソシアネートマスクイミダゾール(ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2−エチル−4−メチルイミダゾールの付加反応物)、第一工業製薬株式会社製)
【0085】
(F)成分:難燃剤
・難燃剤1:「PX−200」(1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)、リン含有量=9質量%、大八化学工業株式会社製)
・難燃剤2:「OP−935」(ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩、リン含有量=23.5質量%、クラリアント社製)
【0086】
(G)成分:無機充填材
・無機充填材1:「Megasil 525 ARI」(アミノシラン系カップリング剤により処理された球状シリカ、平均粒子径=1.9μm、比表面積=5.8m
2/g、シベルコ・ジャパン株式会社製)
・無機充填材2:「F05−30」(非処理の破砕シリカ、平均粒子径=4.2μm、比表面積=5.8m
2/g、福島窯業株式会社製)
【0087】
[実施例1〜9、比較例1〜12]
上記に示した各成分を下記表1〜2の通りに配合(単位:質量部。但し、溶液の場合は固形分換算量を示す。)し、さらに溶液の不揮発分(無機充填材を含む。)が64質量%になるようにメチルエチルケトンを追加し、各実施例及び各比較例の熱硬化性樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製した。該熱硬化性樹脂組成物を用いて、前記方法に従って析出物の有無を確認した。
得られた各熱硬化性樹脂組成物を厚さ0.1mmのEガラスクロス「#3313」(型番、日東紡積株式会社製)に含浸させ、140℃で3.5分間、加熱乾燥してプリプレグ(樹脂分:57±2質量%)を得た。
このプリプレグ8枚を重ねたものの両面に18μmの銅箔「3EC−VLP−18」(三井金属株式会社製)を重ね、温度200℃、圧力25kgf/cm
2(=2.45MPa)にて80分間加熱加圧成形し、厚さ0.8mm(プリプレグ8枚分)の両面銅張積層板を作製した。
こうして作製した銅張積層板を用いて、前記方法に従って、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の測定及び評価を実施した。結果を表1〜2に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1から、実施例1〜9では銅箔との高い接着性を維持しつつ優れた誘電特性を示した。さらに、高い耐熱性及び高ガラス転移温度を有し、熱膨張係数も低い。また、ボイド及びかすれ等の異常は確認されず、成形性も良好であることがわかる。有機溶剤に対する溶解性にも優れていた。
一方、(B)成分の代わりに、分子末端に水酸基を有さないエポキシ化ポリブタジエンを使用した比較例1〜4では、銅箔との接着性が低下した。また、(B)成分の代わりに、エポキシ変性していないポリブタジエン樹脂を使用した比較例5〜8でも、さらに、銅箔との接着性が低下し、且つ耐熱性も低くなった。そして、(B)成分の代わりにエポキシ樹脂を使用した比較例9〜12では、誘電特性が悪化し、熱膨張係数は高まり、さらに、エポキシ樹脂の配合量としては少量であるため、銅箔との接着性が十分なものとはならなかった。