(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
羽根車を支持する主軸がポンプケーシングを貫通する部分にメカニカルシールを備え、前記主軸とモータのモータ軸とをポンプ側軸継手とモータ側軸継手を用いて連結したターボ形ポンプであって、
前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合い状態から前記主軸を単独で移動させて前記ポンプ側軸継手との嵌め合いを解除できるように構成し、
前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合い部分の寸法は、前記主軸の軸端と前記ポンプケーシングの内面との対向距離に略等しいか又は短く設定されていることを特徴とするターボ形ポンプ。
前記ポンプ側軸継手とモータ側軸継手間にスペーサを介在させ、前記スペーサに前記主軸を移動させるねじ機構を設け、前記スペーサを回転させることにより前記主軸を移動させることを特徴とする請求項1記載のターボ形ポンプ。
前記ねじ機構は、前記スペーサの中央部に形成された凹部に頭部を嵌合させたボルトと、前記主軸の軸方向に形成された雌ねじとからなることを特徴とする請求項2記載のターボ形ポンプ。
前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合いを解除させたときに、前記主軸の軸端は前記ポンプケーシングの内面に当接することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のターボ形ポンプ。
前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合いを解除させたときに、前記主軸と前記羽根車との間に介装されたキーの端部は、羽根車側のキー溝の端部に嵌合した状態にあることを特徴とする請求項4記載のターボ形ポンプ。
前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合いを解除させた状態で、前記ポンプ側軸継手と前記スペーサとを取り外し、前記モータ側軸継手と前記主軸との間に前記メカニカルシール交換用のスペースを形成したことを特徴とする請求項2または3記載のターボ形ポンプ。
【背景技術】
【0002】
ポンプケーシング内で羽根車を回転させることにより、液体にエネルギーを与えるターボ形ポンプにおいては、羽根車を支持する主軸がポンプケーシングを貫通する部分に、軸封装置としてメカニカルシールが多く用いられている。
このようなターボ形ポンプの一種である遠心式ポンプでは、メンテナンス時に電動機を取り外さずにメカニカルシールを交換するため、2つ割りカップリング構造を採用し、メカニカルシール交換スペースを設けているものがある(特許文献1)。
【0003】
2つ割りカップリング構造では、剛性を出すため、長大化・重量化しているが、大出力機種では、カップリングが重いため、作業性・組立性が悪くなる。また、2つ割りカップリングは同心度や直角度を出しにくく、製造コストが高くなってしまう。現実的な製造コストで2つ割りカップリングを製作すると、同心度や直角度が十分に出ず、同心度・直角度不足によりポンプの振動や騒音が大きくなる。また、ポンプ羽根車のオーバーハングにより、2つ割りカップリングを採用すると、主軸先端に水中軸受け構造が必要になる。
【0004】
このように、特許文献1に記載されたような2つ割りカップリング構造には、作業性・組立性および性能の面から種々の問題点がある。
上記2つ割りカップリング構造のような問題点が少なく、メンテナンス時に電動機を取り外さずにメカニカルシールを交換できる構造として、特許文献2には、羽根車を支持するポンプ軸にポンプ側軸継手を固定し、モータのモータ軸にモータ側軸継手を固定し、ポンプ側軸継手とモータ側軸継手との間にスペーサを介在せしめたポンプが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献2に記載されているモータ側軸継手とポンプ側軸継手との間にスペーサを介在せしめたカップリング構造について検討を重ねた結果、この構造には、下記の課題があることを見出した。
特許文献2に記載されているようなモータ側軸継手とポンプ側軸継手との間にスペーサを介在せしめたカップリング構造は、長尺のメカニカルシールを交換するためのスペースをスペーサのみによって確保しているために、スペーサはメカニカルシール以上の長さを必要とする。そのため、スペーサが長尺で大型化することは勿論のこと、カップリング構造の外周側に配置されモータを支持するためのモータ台が長尺で大型化するという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、モータ側軸継手とポンプ側軸継手とを備えたカップリング構造において、スペーサを用いた場合には、スペーサの厚さ(軸方向の長さ)を最小にすることによりカップリング構造の小型化を図ることができ、またカップリング構造の外周側に配置されモータを支持するためのモータ台の小型化を図ることができるターボ形ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明のターボ形ポンプは、羽根車を支持する主軸がポンプケーシングを貫通する部分にメカニカルシールを備え、前記主軸とモータのモータ軸とをポンプ側軸継手とモータ側軸継手を用いて連結したターボ形ポンプであって、前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合い状態から前記主軸を単独で移動させて前記ポンプ側軸継手との嵌め合いを解除できるように構成し、前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合い部分の寸法は、前記主軸の軸端と前記ポンプケーシングの内面との対向距離に略等しいか又は短く設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、主軸を単独で移動させてポンプ側軸継手との嵌め合いを解除することができる。そして、この嵌め合い解除のための主軸の移動の際に、主軸とポンプ側軸継手との嵌め合い部分の寸法は、主軸の軸端とポンプケーシングの内面との対向距離に略等しいか又は短く設定されているため、ポンプケーシングの内面によって、主軸の移動が制限されることはない。ここで、前記嵌め合い部分の寸法と前記対向距離とが略等しいとは、主軸とポンプ側軸継手との嵌め合いが解除されたときに、主軸の軸端がポンプケーシングの内面に当接する場合を言う。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記ポンプ側軸継手とモータ側軸継手間にスペーサを介在させ、前記スペーサに前記主軸を移動させるねじ機構を設け、前記スペーサを回転させることにより前記主軸を移動させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ねじ機構は、前記スペーサの中央部に形成された凹部に頭部を嵌合させたボルトと、前記主軸の軸方向に形成された雌ねじとからなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合いを解除させたときに、前記主軸の軸端は前記ポンプケーシングの内面に当接することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合いを解除させたときに、前記主軸と前記羽根車との間に介装されたキーの端部は、羽根車側のキー溝の端部に嵌合した状態にあることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記主軸と前記ポンプ側軸継手との嵌め合いを解除させた状態で、前記ポンプ側軸継手と前記スペーサとを取り外し、前記モータ側軸継手と前記主軸との間に前記メカニカルシール交換用のスペースを形成したことを特徴とする。
【0012】
本発明の実施形態によれば、羽根車を支持する主軸がポンプケーシングを貫通する部分にメカニカルシールを備え、前記主軸とモータのモータ軸とをポンプ側軸継手とモータ側軸継手と両軸継手間に介在させたスペーサとにより連結したターボ形ポンプであって、前記スペーサを板状体で形成し、前記ポンプ側軸継手と前記スペーサと前記モータ側軸継手とを締結具で結合し、前記スペーサの中央部に形成された凹部に頭部を嵌合させたボルトを、前記主軸の軸方向に形成された雌ねじに螺合させ、前記スペーサと前記主軸とを連結した。
上記実施形態によれば、ポンプ側軸継手とスペーサとモータ側軸継手とを結合している締結具を取り外し、ボルトを緩める方向に回転させることにより、ボルトと主軸に形成された雌ねじとの螺合を解除してスペーサと主軸との連結を解けば、ポンプ側軸継手とスペーサとをモータ側軸継手および主軸から取り外すことができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記ボルトは六角ボルトからなり、前記スペーサの凹部は六角形の水平断面を有する。
本発明の実施形態によれば、前記締結具を取り外した状態で、前記スペーサを回転させることにより前記ボルトをスペーサとともに回転させることが可能である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記ボルトが緩む方向に前記スペーサを回転させることにより、ねじの推力により前記ボルトは頭部が前記モータ側軸継手の下端面に当接するまで上昇する。
本発明の実施形態によれば、前記ボルトの頭部が前記モータ側軸継手の下端面に当接した状態で、前記スペーサを回転させることにより、ねじの推力により前記主軸を下降させる。
本発明の実施形態によれば、前記主軸の下降時に前記羽根車が下降しないように、前記羽根車は前記ポンプケーシングにより保持されている。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記主軸の下降により前記ボルトと前記主軸の雌ねじとの螺合が解除されたときに、前記主軸の更なる下降を制限するストッパを前記ポンプケーシングの内面に設けた。
本発明の実施形態によれば、前記ボルトと前記主軸の雌ねじとの螺合が解除されたときに、前記主軸は前記ポンプ側軸継手から離脱する。
本発明の実施形態によれば、前記主軸を前記ポンプ側軸継手から離脱させた状態で、前記ポンプ側軸継手と前記スペーサとを取り外し、前記モータ側軸継手と前記主軸との間に前記メカニカルシール交換用のスペースを形成した。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)メカニカルシールは、モータおよびモータ側軸継手を取り外さずに、ポンプ側軸継手を取り外すことにより交換可能である。
(2)モータ側軸継手とポンプ側軸継手との間にスペーサを介在せしめたカップリング構造において、スペーサの厚さ(軸方向の長さ)を最小にすることによりカップリング構造の小型化を図ることができ、またカップリング構造の外周側に配置されモータを支持するためのモータ台の小型化を図ることができる。
(3)羽根車を支持する主軸を、主軸の軸方向に延びる1本のボルトで吊下する構造であるため、主軸に高い軸方向荷重が掛かっても、主軸が脱落する恐れはない。また、ポンプ側軸継手の半径方向から、ポンプ側軸継手とポンプ軸とを固定するためのビスや止めネジ等は不要な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るターボ形ポンプを示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すターボ形ポンプの要部拡大図であり、ポンプ軸とモータ軸とを結合するカップリング構造とポンプ部の詳細を示す断面図である。
【
図3】
図3は、メカニカルシールの交換手順の第1ステップを示す図であり、ポンプ側軸継手を支えるための支えピースを設置する工程を示す断面図である。
【
図4】
図4は、メカニカルシールの交換手順の第2ステップを示す図であり、スペーサを含む下方のユニットをモータ側軸継手から切り離す工程を示す断面図である。
【
図5】
図5は、メカニカルシールの交換手順の第3ステップを示す図であり、スペーサを回転させることにより、ボルトを上昇させる工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、メカニカルシールの交換手順の第4ステップを示す図であり、スペーサを回転させることにより、ポンプ軸を下降させる工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、メカニカルシールの交換手順の第5ステップを示す図であり、スペーサを回転させることにより、ポンプ軸を下降させてポンプ軸の雌ねじをボルトのねじ部から離脱させる工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、メカニカルシールの交換手順の第6ステップを示す図であり、ポンプ側軸継手とモータ側軸継手を取り外す工程を示す断面図である。
【
図9】
図9は、メカニカルシールの交換手順の第7ステップを示す図であり、ポンプ側軸継手とスペーサを取り外したスペースを利用してメカニカルシールをポンプ軸から取り外す工程を示す断面図である。
【
図10】
図10(a),(b)は、
図1および
図2に示す本発明に係るカップリング構造を用いたターボ形ポンプと、特許文献2に記載されているようなカップリング構造を用いたターボ形ポンプとを対比して示す図であり、
図10(a)は
図1および
図2に示す本発明に係るカップリング構造を用いたターボ形ポンプを示す断面図、
図10(b)は特許文献2に記載されているようなカップリング構造を用いたターボ形ポンプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るターボ形ポンプの実施形態を
図1乃至
図10を参照して説明する。
図1乃至
図10において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るターボ形ポンプを示す断面図である。
図1に示すように、ターボ形ポンプは、吸込み口1aと吐出し口1bを有するケーシング1と、ケーシング1に固定されたモータ台6とを備えている。ケーシング1およびモータ台底部6aにより構成されるポンプケーシング内には羽根車3が配置されている。
【0019】
図1に示すように、羽根車3はポンプ軸(主軸)4に支持されている。ポンプ軸4がポンプケーシングを構成するモータ台底部6aを貫通する部分には、軸封装置としてカートリッジ型メカニカルシール5が設けられている。以下、カートリッジ型メカニカルシールは、メカニカルシールと称する。ケーシング1の上方に設けられたモータ台6は、ポンプ部のケーシングカバーを構成するモータ台底部6aと、モータ(図示せず)を支持するための上部6bと、モータ台底部6aと上部6bの中間の側部6cとを有する。
図1では、モータは図示を省略しているが、モータのモータ軸7が示されている。羽根車3の上下端部とポンプケーシングの間隙には、ライナーリング8,8が設けられている。
【0020】
図1に示すように、羽根車3を支持するポンプ軸4の上部にポンプ側軸継手10を設け、モータのモータ軸7にモータ側軸継手11を固定し、ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11との間にスペーサ12を介在せしめている。すなわち、ポンプのポンプ軸4とモータのモータ軸7とを結合するカップリング構造は、ポンプ側軸継手10、モータ側軸継手11およびスペーサ12を備えている。ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11とスペーサ12とは、複数のボルト21およびナット22によって結合されている。このカップリング構造によれば、重量物であるモータを一切動かすことなく、ポンプ側軸継手10およびスペーサ12を取り外すのみの作業でメカニカルシール5の点検および交換が可能となる。なお、モータ台6には、メカニカルシール5の点検および交換をする際の作業用の窓6wが形成されている。
【0021】
図2は、
図1に示すターボ形ポンプの要部拡大図であり、ポンプ軸4とモータ軸7とを結合するカップリング構造とポンプ部の詳細を示す断面図である。
図2に示すように、羽根車3を支持するポンプ軸4の上部にポンプ側軸継手10を設け、モータのモータ軸7にモータ側軸継手11を固定し、ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11との間にスペーサ12を介在せしめている。すなわち、ポンプのポンプ軸4とモータのモータ軸7とを結合するカップリング構造は、ポンプ側軸継手10、モータ側軸継手11およびスペーサ12を備えている。ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11とスペーサ12とは、複数のボルト21およびナット22によって結合されている。モータ側軸継手11はモータ軸7に止めネジ16およびキー17を介して固定されている。
【0022】
スペーサ12は薄肉円板などの板状体で形成されている。ポンプ軸4とスペーサ12とは、ポンプ軸4の軸方向に延びるボルト15によって連結されている。すなわち、ボルト頭部15aがスペーサ12の凹部12aに嵌合され、ねじ部15bがポンプ軸4の軸方向に形成された雌ねじ4sに螺合されることにより、ポンプ軸4とスペーサ12とはボルト15によって連結されている。したがって、ポンプ軸4は、スペーサ12にボルト頭部15aが固定された1本のボルト15によって吊下されており、1本のボルト15でポンプ軸4に加わる軸方向荷重を支える構造になっている。それゆえ、ポンプ側軸継手10の半径方向から、ポンプ側軸継手10とポンプ軸4とを固定するためのビスや止めネジ等は不要な構造である。ポンプ側軸継手10とポンプ軸4とは嵌め合いになっており、ポンプ側軸継手10とポンプ軸4との間にはキー18(点線で図示)が介装されている。
【0023】
次に、ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11とスペーサ12とを一体に結合する締結構造について説明する。
図2に示すように、ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11とスペーサ12とは、複数のボルト21およびナット22によって結合されている。モータ側軸継手11のボルト孔11hとボルト21とは、嵌め合いになっており、ポンプ側軸継手10のボルト孔10hとボルト21とは、嵌め合いになっている。そして、スペーサ12のボルト孔12hは、ボルト21の直径より大きい孔径を有する、いわゆるバカ孔になっている。なお、ボルト孔12hは、ボルト21の直径より大きい溝幅の円弧状の長孔であってもよい。
【0024】
次に、羽根車3および羽根車3の周辺部の構造について説明する。
図2に示すように、ポンプ軸4の端部には羽根車3が嵌合されている。ポンプ軸4と羽根車3との間にはキー19が介装されている。ポンプ軸4の軸端部には雄ねじ4fが形成されており、雄ねじ4fにナット20が螺合されることにより、羽根車3はポンプ軸4に固定されている。
図2に示すように、ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11とスペーサ12とが一体に結合され、ボルト15がポンプ軸4の雌ねじ4sに螺合されている状態においては、羽根車3の吸込口下端3eと、ケーシング1においてライナーリング8を収容している部分の上端面1eとの間には、スキマ(隙間)が形成されている。
【0025】
次に、
図1に示すターボ形ポンプにおけるメカニカルシール5の交換手順を
図2乃至
図10を参照して説明する。
図2は、メカニカルシール5がポンプ軸4に装着されていてメカニカルシール5を交換する前の初期状態(正規状態)を示す断面図である。
図2に示すように、ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11とスペーサ12とは複数のボルト21およびナット22によって結合されている。モータ側軸継手11はモータ軸7に止めネジ16およびキー17を介して固定されている。ポンプ軸4とスペーサ12とは、ポンプ軸4の軸方向に延びるボルト15によって連結されている。すなわち、ボルト頭部15aがスペーサ12の凹部12aに嵌合され、ねじ部15bがポンプ軸4の軸方向に形成された雌ねじ4sに螺合されることにより、ポンプ軸4とスペーサ12とはボルト15によって連結されている。
【0026】
図2に示すように、ポンプ軸4とポンプ側軸継手10との嵌め合い部分の寸法L1は、ポンプ軸4の軸端4eとケーシング1の内面(ケーシング1に設けた凸部1t)との対向距離L2に略等しいか又は短く設定されている。すなわち、L1≦L2の関係に設定されており、この関係を利用してポンプ側軸継手10をポンプ軸4から取り外すことができる(後述する)。
【0027】
図3は、メカニカルシール5の交換手順の第1ステップを示す図であり、ポンプ側軸継手10を支えるための支えピースを設置する工程を示す断面図である。
図3の矢印で示すように、メカニカルシール5のフランジ部5bをモータ台底部6aに固定しているボルト23を取り外した後に、二つ割り等の分割型の支えピース24をメカニカルシール5のフランジ部5b上に設置する。このとき、支えピース24の上面とポンプ側軸継手10の下端との間にはわずかなスキマ(隙間)l
1がある。支えピース24の上面とポンプ側軸継手10の下端との間のスキマl
1は、羽根車3の吸込口下端3eと、ケーシング1においてライナーリング8を収容している部分の上端面1eとの間のスキマl
2に略等しいか又は長く設定されている。すなわち、l
1≧l
2の関係に設定されている。
【0028】
図4は、メカニカルシール5の交換手順の第2ステップを示す図であり、スペーサ12を含む下方のユニットをモータ側軸継手11から切り離す工程を示す断面図である。
図4の矢印で示すように、ポンプ側軸継手10とモータ側軸継手11とスペーサ12とを一体に結合しているボルト21およびナット22を取り外すことにより、スペーサ12を含む下方のユニット、すなわち、スペーサ12、ボルト15、ポンプ側軸継手10、ポンプ軸4、メカニカルシール5、羽根車3からなるロータユニットをモータ側軸継手11から切り離す。モータ側軸継手11から切り離されることにより、スペーサ12を含むロータユニット(スペーサ12、ボルト15、ポンプ側軸継手10、ポンプ軸4、メカニカルシール5、羽根車3)が落下する。このとき、ポンプ側軸継手10の下端が支えピース24の上面に当たるとともに、羽根車3の吸込口下端3eがライナーリング8を収容しているケーシング部分の上端面1eに当たる(l
1=l
2の場合)。ロータユニットは支えピース24に支えられて、これ以上落下することはない。このとき、モータ側軸継手11の下面とスペーサ12の上面との間には、スキマ(隙間)が形成される。なお、支えピース24がない場合であっても、吸込口下端3eと上端面1eとの接触でロータユニットを支持できるため、分解可能である。
【0029】
図4の右側上部には、ボルト頭部15aを収容するスペーサ12の凹部12aが図示されている。図示のように、スペーサ12の凹部12aは六角形の水平断面を有しており、六角ボルトからなるボルト15のボルト頭部15aが凹部12aに嵌合されるようになっている。これにより、スペーサ12を回転させることにより、ボルト15も共回り(一緒に回転)するようになっている。
【0030】
図5は、メカニカルシール5の交換手順の第3ステップを示す図であり、スペーサ12を回転させることにより、ボルト15を上昇させる工程を示す断面図である。
図5に示すように、スペーサ12をボルト15が緩む方向に回転させると、ボルト15が共回りしてねじの推力によりボルト15が上昇する。ボルト頭部15aがモータ側軸継手11の下面に当接すると、ボルト15の上昇は停止する。
【0031】
図6は、メカニカルシール5の交換手順の第4ステップを示す図であり、スペーサ12を回転させることにより、ポンプ軸4を下降させる工程を示す断面図である。
図6に示すように、ボルト頭部15aがモータ側軸継手11の下面に当接した状態でスペーサ12を更に回転させると、ボルト15はもう上昇できないため、今度は、ねじの推力はポンプ軸4を押し下げる方向に働き、ポンプ軸4が下降し始める。このとき、ポンプ軸4とポンプ側軸継手10との間に介装されたキー18およびポンプ軸4と羽根車3との間に介装されたキー19がポンプ軸4の下降を案内する。なお、羽根車3は、吸込口下端3eとケーシング部分の上端面1eとが当接しているため、下降することはない。
【0032】
図7は、メカニカルシール5の交換手順の第5ステップを示す図であり、スペーサ12を回転させることにより、ポンプ軸4を下降させてポンプ軸4の雌ねじ4sをボルト15のねじ部15bから離脱させる工程を示す断面図である。
図7に示すように、スペーサ12を更に回転させると、ねじの推力によりポンプ軸4は更に下降してポンプ軸4の雌ねじ4sがボルト15のねじ部15bから離脱してポンプ軸4の軸端4eがケーシング1の底部内面に設けた凸部1tに当接する。凸部1tは、ポンプ軸4の下降を制限するストッパとして機能する。このとき、ポンプ軸4とポンプ側軸継手10との嵌め合い部分の寸法L1は、ポンプ軸4の軸端4eとケーシング1の内面(ケーシング1に設けた凸部1t)との対向距離L2に略等しいか又は短く設定されているため(
図2参照)、ポンプ軸4とポンプ側軸継手10との嵌め合いが解除される。ポンプ軸4はポンプ側軸継手10に保持されたキー18からも離脱する。一方、ポンプ軸4と羽根車3との間に介装されたキー19は、ポンプ軸4の下降時にポンプ軸4とともに下降するが、ポンプ軸4が最下位置まで下降しても(すなわち、ポンプ軸4の軸端4eがケーシング1の凸部1tに当接しても)、キー19の上端部は羽根車3のキー溝3gの下端部に嵌合した状態にある。このように、キー19とキー溝3gとが嵌合した状態にあるため、ポンプ軸4を上昇させれば再組立て可能である。
【0033】
図7に示す工程において、ポンプ軸4が下がりきらない場合には、モータ側軸継手11の下端とボルト頭部15aとの間のスキマ(隙間)に板状の工具を横から挿入してボルト頭部15aを押し下げることにより、ポンプ軸4を下げきることが可能である。
一方、ボルト頭部15aの下面とスペーサ12の凹部12aの上面との間にスキマ(隙間)があることで、組立時にスペーサ12を回転させれば、ボルト15のねじ部15bの下端がポンプ軸4の雌ねじ4sの上端に螺合し、ポンプ軸4を引き上げることが可能である。
【0034】
図8は、メカニカルシール5の交換手順の第6ステップを示す図であり、ポンプ側軸継手10とスペーサ12を取り外す工程を示す断面図である。
図8の矢印で示すように、ポンプ側軸継手10とスペーサ12とを側方にずらして取り外す。このとき、ボルト頭部15aはスペーサ12の凹部12aに嵌合されており、ボルト15はスペーサ12と一体になっている。
次に、メカニカルシール5のフランジ部5bの上に設置された支えピース24を側方にずらして取り外した後に、メカニカルシール5の穴部5aとフランジ部5bとに工具を引っ掛けてメカニカルシール5を上に抜く。このとき、メカニカルシール5の下部にあるOリング5cとポンプ軸4との嵌合部が密着しているが、この嵌合部の距離10mm程度上に動かせば、あとはメカニカルシール5をポンプ軸4から容易に引き抜くことができる。
【0035】
図9は、メカニカルシール5の交換手順の第7ステップを示す図であり、ポンプ側軸継手10とスペーサ12を取り外したスペースを利用してメカニカルシール5をポンプ軸4から取り外す工程を示す断面図である。
図9に示すように、ポンプ側軸継手10とスペーサ12を取り外したスペースを利用して、矢印(垂直方向)で示すようにメカニカルシール5をポンプ軸4から上に引き抜き、その後、矢印(水平方向)で示すように、メカニカルシール5を側方にずらす。これにより、メカニカルシール5をポンプ軸4から完全に取り外すことができる。交換対象のメカニカルシール5をポンプ軸4に装着するには、
図2乃至
図9に示す交換手順と逆の手順で行えばよい。
【0036】
図10(a),(b)は、
図1および
図2に示す本発明に係るカップリング構造を用いたターボ形ポンプと、特許文献2に記載されているようなカップリング構造を用いたターボ形ポンプとを対比して示す図であり、
図10(a)は
図1および
図2に示す本発明に係るカップリング構造を用いたターボ形ポンプを示す断面図、
図10(b)は特許文献2に記載されているようなカップリング構造を用いたターボ形ポンプを示す断面図である。
図10(a)に示す本発明のカップリング構造によれば、スペーサ12とポンプ側軸継手10とをポンプ軸4から一体に取り外し、この取り外したスペースを長尺のメカニカルシール5を交換するためのスペースとして利用することができる。ポンプ側軸継手10は、メカニカルシール5を交換するためのスペースを確保できる程度に軸方向に長尺である。そのため、スペーサの厚さ(軸方向の長さ)hは、ボルト頭部15aを収容できる厚さで且つポンプ軸4に加わる軸方向荷重に耐える強度を確保できる厚さがあれば充分であり、スペーサの厚さ(軸方向の長さ)hを最小限とすることができる。したがって、カップリング構造の外周側に配置されモータを支持するためのモータ台6の高さ(軸方向の長さ)Hを低く(短く)することができる。
【0037】
これに対して、
図10(b)に示す特許文献2に記載されているようなカップリング構造では、長尺のメカニカルシール5を交換するためのスペースをスペーサ12のみによって確保しているために、スペーサ12の厚さ(軸方向の長さ)hは、メカニカルシール以上の長さを必要とする。したがって、スペーサ12が長尺で大型化することは勿論のこと、カップリング構造の外周側に配置されモータを支持するためのモータ台6の高さ(軸方向の長さ)Hが高くなり(長尺になり)、大型化する。
【0038】
本発明は、単段・多段の立型ラインポンプを含む他の形式のターボ形ポンプに適用可能である。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。