(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合ガス供給路の上流側には、前記混合ガスを構成する複数種類のガスを前記混合ガス供給路に各々所定流量で供給するための複数の供給路及び流量制御器が、1種類のガスにつき1つずつ設けられている請求項1に記載の混合ガス複数系統供給システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム250及び基板処理装置の一例を示した図である。
図1において、混合ガス複数系統供給システム250と、これを含む基板処理装置300が示されている。
【0015】
混合ガス複数系統供給システム250は、混合ガス生成部200と、フロースプリッター210と、分岐配管221〜223と、インジェクタ131〜133とを有する。また、基板処理装置300は、更に処理容器1と、回転テーブル2とを有する。
【0016】
混合ガス複数系統供給システム250は、混合ガスを生成し、生成した混合ガスを複数系統に分岐させて処理容器1内の複数の領域にインジェクタ131〜133を用いて供給するシステムである。
【0017】
図1において、混合ガス生成部200にフロースプリッター210が接続され、フロースプリッター210から分岐配管221〜223を経てインジェクタ131〜133に生成される構成となっている。
【0018】
混合ガス生成部200は、複数種類の処理ガスを混合して混合ガスを生成する手段である。混合ガス生成部200は、ガス供給源161〜163と、流量制御器171〜173と、個別配管181〜183と、混合配管19とを備える。
【0019】
ガス供給源161〜163は、混合ガスを構成する各ガスを供給する手段であり、例えば、ガスを収容するタンク等で構成されてもよいし、必要に応じて、気化器等のガスを生成する手段を備えていてもよい。ガス供給源161〜163は、混合ガスを構成する複数種類のガスに対応して各々のガス供給源161〜163が設けられる。
【0020】
流量制御器171〜173は、ガスの流量を調整するための手段であり、例えば、マスフローコントローラ等で構成される。流量制御器171〜173も、混合ガスを構成する複数種類のガスに対応して設けられる。よって、ガス供給源161〜163に1対1に対応して設けられる。これにより、各ガスの流量を正確に設定及び調整することができる。なお、
図1においては、混合ガスを構成するガスは3種類であり、ガス供給源161〜163及び流量制御器171〜173は各々3個ずつ設けられている。
【0021】
個別配管181〜183は、流量制御器171〜173と混合配管190とを接続するための配管であり、混合ガスを構成する複数種類のガスに1対1に対応して設けられる。よって、
図1においては、流量制御器171〜173と同様、個別配管181〜183も3本設けられた例が示されている。
【0022】
混合配管190は、個別配管181〜183から供給された複数種類のガスを混合し、混合ガスを生成するための配管である。よって、混合配管190は1本のみ設けられ、各々の個別配管181〜183から供給された各ガスは、混合配管190で混合される。
【0023】
フロースプリッター210は、混合配管190から供給された混合ガスを複数の系統に分岐させるための分流手段である。その際、フロースプリッター210は、混合ガスを所定の流量比に設定することが可能である。よって、フロースプリッター210は、混合ガスを所定の流量比に調整して分岐配管221〜223に供給する。
【0024】
分岐配管221〜223は、各々所定の流量比で供給された混合ガスをインジェクタ131〜133に各々供給する手段である。なお、分岐配管221〜223は、各インジェクタ131〜133の各ガス導入口141〜143に接続される。
【0025】
インジェクタ131〜133は、処理容器1内の複数の領域に混合ガスを供給するための手段である。インジェクタ131〜133は、例えば、ノズル状に形成される。ノズル形状は、円筒形状であってもよいし、四角柱等の角柱形状であってもよい。よって、インジェクタ131〜133のことをガスノズル131〜133と呼んでもよい。
【0026】
インジェクタ131〜133は、処理容器1内の複数の領域、又はウエハW上の複数の領域に混合ガスを供給すべく、処理容器1内の複数の領域毎に1個ずつ対応して設けられる。よって、インジェクタ131〜133は全体としては複数設けられる。複数のインジェクタ131〜133は、各々1つのガス導入口141〜143と、少なくとも1つのガス吐出孔151〜153を有する。通常、ガス吐出孔151〜153は、各領域に複数個ずつ設けられる。
図1においては、模式的に各インジェクタ131〜133に3個ずつ設けられた例が示されている。実際には、1個のインジェクタ131〜133の各々に数十個設けられる場合が多い。ガス吐出孔151〜153を複数個設けることにより、孔径や位置を種々調整することが可能である。また、各インジェクタ131〜133が混合ガスを供給する複数の領域内で均一に分散するように混合ガスを供給することも可能となる。よって、各インジェクタ131〜133は、複数のガス吐出孔151〜153を備えることが好ましい。
【0027】
複数のインジェクタ131〜133は、フロースプリッター210により分岐した複数系統の分岐配管221〜223の各々に1対1に対応して設けられる。上述のように、フロースプリッター210は、複数系統の流量比を調整することが可能であるので、インジェクタ131〜133の流量比を調整可能である。
【0028】
図1において、複数のインジェクタ131〜133同士は、処理容器1内の異なる領域に各々設けられており、ウエハW上の異なる領域に混合ガスを供給可能に構成されている。処理容器1等を含めた基板処理装置300の構造により、ウエハWの特定の領域への基板処理が不足したり過大になったりする場合がある。そのような場合、混合ガスの流量比を適切に設定することにより、過不足を是正し、ウエハWの全面でより均一性の高い基板処理を行うことが可能となる。また、上述のように、流量比だけでなく、ガス吐出孔151〜153の孔径や配置を調整することによっても、面内均一性を高める基板処理を行うことが可能である。なお、
図1においては、矢印を用いて模式的に供給流量の大きさの相違を示しており、左側のインジェクタ131の流量が最も小さく、右側のインジェクタ133の流量が最も大きく、真中のインジェクタ132の流量がそれらの中間である例が示されている。
【0029】
このように、処理容器1内の複数の領域に設けられたインジェクタ131〜133の流量比を適切に設定することが可能である。
【0030】
なお、
図1においては、複数のインジェクタ131〜133同士で重なる領域が無く、総て異なる領域に混合ガスを供給する構成となっているが、例えば、隣接する領域同士が一部重なるように複数のインジェクタ131〜133を配置してもよい。
【0031】
処理容器1は、ウエハWを収納して所定の基板処理を行うための容器である。また、回転テーブル2は、ウエハを保持するための基板保持手段である。
図1においては、ウエハWを上面に載置して保持する回転テーブル2が一例として示されているが、ウエハWを処理可能に保持できれば種々の構成であってよく、必ずしも回転する必要は無く、例えば単なる載置台であってもよい。
【0032】
図1に示されるように、第1の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システムは、3種類の処理ガスを混合させ、混合ガスを3系統に分岐して供給する供給系統であるが、3本に分かれた配管は個別配管181〜183と分岐配管221〜223のみである。また、流量制御器171〜173も3個のみである。
【0033】
同様の供給システムを、上述の特許文献1に記載の構成で実現すると、最終の供給系統が3個あることから、各ガス供給源161〜163毎に設けられる流量制御器171〜173が3×3=9個、個別配管181〜183も3×3=9本必要となる。更に、混合配管190が3本必要であり、必要な配管の数が膨大となり、装置も大型化してしまう。
【0034】
これに比較して、第1の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システムは、ガス供給源161〜163からフロースプリッター210までの範囲の構成要素を各々1/3ずつに減らすことができ、大幅な省スペース化及びコスト低減が可能となっている。
【0035】
このように、本発明の第1の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム250及び基板処理装置300によれば、フロースプリッター210を有効に活用することにより、ガスユニット及び装置全体の大幅な簡素化を図ることができる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
図2は、本発明の第2の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム及び基板処理装置の一例を示した図である。なお、第2の実施形態において、混合ガス生成部200の構成については、第1の実施形態と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0037】
第2の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム251及び基板処理装置301は、インジェクタ130が全体として1本であり、内部を隔壁121、122で仕切ることにより、複数の室131a〜133aに分割している点で、第1の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム250及び基板処理装置300と異なっている。
【0038】
第2の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム251及び基板処理装置301は、実質的な機能としては、個別にインジェクタ131〜133が設けられた第1の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム250及び基板処理装置300と大きな相違点は無いが、インジェクタ130を1本に構成することにより、部品点数を減少させ、更なる装置の小型化を図ることができる。
【0039】
その他の点については、第1の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム250及び基板処理装置300と同様の機能及び効果を有するので、その説明を省略する。
【0040】
〔第3の実施形態〕
図3は、本発明の第3の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム252及び基板処理装置302の一例を示した図である。なお、第3の実施形態において、混合ガス生成部200の構成については、第1及び第2の実施形態と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0041】
第3の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム252及び基板処理装置302は、インジェクタ130aが全体として1本であり、内部を隔壁121a、122aで仕切ることにより、複数の室131a〜133aに分割している点では第2の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム251及び基板処理装置301と共通するが、隔壁121a、122aにオリフィス111、112が設けられている点で第2の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム251及び基板処理装置301と異なっている。
【0042】
ここで、オリフィス111、112は、インジェクタ130aの複数の室131a〜133a同士を連通可能とする連通口として機能する開口である。各室131a〜133aに異なる流量で混合ガスが供給される場合、流量に比例して圧力も異なる。その圧力差を利用して、系統数以上の分流割合変化を生じさせることが可能となる。即ち、隔壁121a、122aでインジェクタ130aの内部を完全に仕切るのではなく、隔壁121a、122aにオリフィス111、112を設けることにより、流量の多い室130a〜133aから流量の小さい室130a〜133a(圧力の高い室130a〜133aから圧力の低い室130a〜133a)に混合ガスの一部が流れ込む。各ガス吐出孔151〜153からのガス吐出量は、内部圧力に比例するため、オリフィス111.112付近のガス吐出孔151〜153からのガス吐出量は、オリフィス111、112から離れたガス吐出孔151〜153よりもオリフィス111、112を挟んだ隣接する室131a〜133aからの圧力影響を多く受け、フロースプリッターの分流数よりも滑らかな混合ガスの分流が行われる。
【0043】
図3の例では、室133a、室132a、室131aの順に流量及び圧力が高いので、室133a内の混合ガスは一部オリフィス112を介して室132aに流れ込み、室132a内の混合ガスは一部オリフィス111を介して室131aに流れ込む。そして、
図3の矢印に模式的に示されるように、3つの系統に分流された流量が、右側から左側に向かって徐々に流量が低下する分布となり、10段階の流量を吐出することができる。
【0044】
このように、第3の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム252及び基板処理装置302によれば、装置の小型化を実現しつつ、滑らかなガス分流による吐出供給を行うことができる。
【0045】
図4は、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム251、252及び基板処理装置301、302の吐出量の相違を説明するための図である。
【0046】
図4(a)は、第2の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム251及び基板処理装置301のインジェクタ130からの混合ガスの吐出量を示した図である。
図4(a)に示されるように、フロースプリッター210の流量比設定で、室131aに100sccm、室132aに200sccm、室133aに300sccmの流量が設定され、1:2:3の流量比が設定されているとする。この場合のガス吐出孔151〜153からの各吐出量が、100sccmの供給に対して25sccmの出力量とすると、室131aのガス吐出孔151からの吐出量は25sccm、室132aのガス吐出孔152からの吐出量は50sccm、室133aのガス吐出孔153からの吐出量は75sccmというように、やはり1:2:3の階段状の出力となる。
【0047】
図4(b)は、第2の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム252及び基板処理装置302のインジェクタ130aからの混合ガスの吐出量を示した図である。
図4(a)と同様に、フロースプリッター210の流量比設定で、室131aに100sccm、室132aに200sccm、室133aに300sccmの流量が設定され、1:2:3の流量比が設定されているとする。そして、やはり
図4(a)と同様に、基本的に、ガス吐出孔151〜153からの各吐出量が、100sccmの供給に対して25sccmの出力量とする。
【0048】
この場合、オリフィス112を介して、室133aの混合ガスの一部が隣接する室132aに流出し、オリフィス111を介して、室132aの混合ガスの一部が隣接する室131aに流出する。そうすると、最も右側のオリフィス112から離れた室133aのガス吐出孔153からは、ほぼ計算通りの75sccmが吐出されるが、左側に行くにつれて、オリフィス112の影響を受け、混合ガスの流れがガス吐出孔153とオリフィス112に分散され、吐出量が低下してゆく。
【0049】
一方、中央の室132aでは、右側のガス吐出孔152はオリフィス112を介して室133aから流入する混合ガスの影響を受け、吐出量が50sccmよりも多くなる。右から2番目のガス吐出孔は、ほぼ計算通りの50sccmとなるが、左側に行くほどオリフィス111の影響を受け、吐出量は徐々に低下する。同様な現象が左側の室131aでも発生し、オリフィス111から最も遠い左側のガス吐出孔151は計算通りの吐出量の25sccmであるが、右側に行くほどオリフィス111を介して隣の室132aから流入してくる混合ガスの影響を受け、吐出量が徐々に高くなる。
【0050】
その結果、全体として滑らかな吐出量の分布で混合ガスがガス吐出孔151〜153から吐出される。
【0051】
このように、隔壁121、122を完全な仕切板として構成すると、各室131a〜133aにおける吐出量は一定となり、階段状の分布となるが、オリフィス111,112を有する隔壁121a、122aに構成すると、滑らかな分布で混合ガスを吐出することができる。かかる性質を利用し、流量制御器を個別に設置せず、流量比のみ設定可能なフロースプリッターを用いても、所望のガス供給を実現することができる。
【0052】
〔第4の実施形態〕
以下の実施形態では、第1乃至第3の実施形態において説明した混合ガス複数系統供給システム250及び基板処理装置300〜302を、より具体的な基板処理装置に適用する例について説明する。第4の実施形態に係る基板処理装置303は、ALD(Atomic Layer Deposition、原子層成膜方法)成膜装置として構成されており、ALD法により成膜を行う装置である。
【0053】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム253及び基板処理装置303の一例を示した図である。
図5において、基板処理装置303の処理容器1内の内部構造が示されている。なお、処理容器1及び回転テーブル2は、第1乃至第3の実施形態に係る基板処理装置300〜302の処理容器1及び回転テーブルと同様の形状であるので、同一の参照符号を用いる。
【0054】
図5においては、処理容器1から天板を外したときに、処理容器1の側面及び底面を構成する容器本体12が示されている。容器本体12内の底面より上方に円盤状の回転テーブル2が設けられている。
【0055】
回転テーブル2の表面には、
図5に示すように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)ウエハWを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお
図4には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径(例えば300mm)よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWを凹部24に載置すると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。
【0056】
回転テーブル2の上方には、各々例えば石英からなるインジェクタ131c〜133c、反応ガスノズル32、及び分離ガスノズル41、42が配置されている。図示の例では、処理容器1の周方向に間隔をおいて、搬送口15(後述)から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、インジェクタ131c〜133c、分離ガスノズル42、及び反応ガスノズル32の順に配列されている。インジェクタ131c〜133cは、第1の実施形態で説明した複数の領域毎に別個独立に設けられたインジェクタ131〜133と類似している。
図5においては、回転テーブル2の半径方向において、回転テーブル2の中心側の領域にインジェクタ131c、回転テーブル2の外周側の領域にインジェクタ133c、回転テーブル2の半径方向の真中の領域にインジェクタ132が設けられている。回転テーブル2の回転により、回転テーブル2上に載置されたウエハWが回転方向に沿って移動し、インジェクタ131c〜133cのガス吐出孔151〜153から混合ガスを吐出することにより、複数枚(
図4では5枚)のウエハWの表面に、順次混合ガスが供給される。よって、3つのインジェクタ131c〜133cで、ウエハWの直径全体をカバーすることにより、ウエハWの全面に混合ガスは供給される。インジェクタ131c〜132cは、基本的に回転テーブル2の半径方向において、外周側、中央領域、中心側の異なる領域を重ならずにカバーしているが、隣接するインジェクタ131、132同士、及びインジェクタ132、133同士では、端部の領域が互いに重なっている。このような重なる部分を設けることにより、ウエハW上に混合ガスが供給されない領域を存在させず、ウエハWの全面に混合ガスを供給できることになる。
【0057】
混合ガスの各インジェクタ131c〜133cへの供給は、混合ガス生成部200により生成された混合ガスをフロースプリッター210で分岐し、分岐配管221〜223を介して、各々ガス導入口141〜143に供給することにより行われる。
図1及び3に示したように、処理容器1の上面から分岐配管221〜223が導入され、各インジェクタ131c〜133cの各ガス導入口141〜143に混合ガスが導入される。
【0058】
なお、回転テーブル2が回転すると、外周側の方が中心側より移動距離が大きいため、外周側の移動速度が中心側よりも速くなる。よって、回転テーブル2の外周側では、混合ガスがウエハWに吸着する時間が十分でない場合があり、外周側の流量を内周側の流量よりも多く設定する場合がある。本実施形態においても、インジェクタ133c、インジェクタ132c、インジェクタ131cの順で流量を大きく設定しており、そのような傾向に合致した例を挙げている。
【0059】
インジェクタ131c〜133c以外の他のノズル32、41、及び42は、それぞれの基端部であるガス導入ポート32a、41a、及び42aを容器本体12の外周壁に固定することにより、処理容器1の外周壁から処理容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して平行に伸びるように取り付けられている。
【0060】
これらのノズル32、41、42には、各々ガス供給源、及び必要に応じて流量制御器が接続され、プロセスに応じて種々のガスが供給されてよい。
【0061】
例えば、反応ガスノズル32には、シリコン系ガスを酸化してSiO
2を生成するために、オゾン(O
3)ガスを供給する供給源(不図示)が開閉バルブ及び流量調整器(ともに不図示)を介して接続されてもよい。
【0062】
また、分離ガスノズル41、42には、ArやHeなどの希ガスや窒素ガスなどの不活性ガスの供給源が開閉バルブ及び流量調整器(ともに不図示)を介して接続されてもよい。
図5においては、不活性ガスとしてN
2ガスが使用された例が示されている。
【0063】
図6は、インジェクタ131〜133から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った処理容器1の断面を示している。
図6に示されるように、インジェクタ131〜133には、処理容器1の天板11を貫通して分岐配管221〜223が接続され、ガス導入口141〜143に混合ガスが供給される。各インジェクタ131〜133の下面には、ガス吐出孔151〜153が形成されている。
【0064】
また、反応ガスノズル32には、回転テーブル2に向かって下方に開口する複数のガス吐出孔33が、反応ガスノズル32の長さ方向に沿って配列されている。インジェクタ131〜133の下方領域は、シリコン系ガス等の混合ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着された混合ガスを酸化させる第2の処理領域P2となる。
【0065】
図5及び
図6を参照すると、処理容器1内には2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された略扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、処理容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。図示のとおり、凸状部4は、天板11の裏面に取り付けられている。このため、処理容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在している。
【0066】
また、
図6に示すとおり、凸状部4には周方向中央において溝部43が形成されており、溝部43は、回転テーブル2の半径方向に沿って延びている。溝部43には、分離ガスノズル42が収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。なお、分離ガスノズル42にもガス吐出孔42hが形成されている。
【0067】
高い天井面45の下方の空間には、インジェクタ131c〜133c及び反応ガスノズル32がそれぞれ設けられている。これらのインジェクタ131c〜133c及び反応ガスノズル31、32は、天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。
【0068】
低い天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成している。分離ガスノズル42からN
2ガスが供給されると、このN
2ガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、N
2ガスにより分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間において、分離空間Hは圧力障壁を提供する。したがって、第1の領域P1からの3DMAS等の混合ガスと、第2の領域P2からのO
3ガスとが分離空間Hにより分離される。よって、処理容器1内において混合ガスとO
3ガスとが混合して反応することが抑制される。
【0069】
図7は、
図4のI−I'線に沿った断面図であり、天井面45が設けられている領域を示している断面図である。
【0070】
図7に示されるように、基板処理装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な処理容器1と、この処理容器1内に設けられ、処理容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。処理容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリングなどのシール部材13を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0071】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は処理容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が処理容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離される。
【0072】
回転テーブル2と容器本体の内周面との間において、空間481と連通する第1の排気口610と、空間482と連通する第2の排気口620とが形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、
図7に示すように各々排気管630を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ640に接続されている。なお、排気管630には、圧力調整器650が設けられている。
【0073】
回転テーブル2と処理容器1の底部14との間の空間には、
図7に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWが、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱される。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の下方の空間へガスが侵入するのを抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている。
【0074】
図7に示すように、ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっている。また、底部14を貫通する回転軸22の貫通孔の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通している。そしてケース体20にはパージガスであるN
2ガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。さらに、処理容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(
図7には一つのパージガス供給管73を示す)。
【0075】
また、処理容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN
2ガスを供給するように構成されている。
【0076】
更に、処理容器1の側壁には、
図5に示すように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。
【0077】
また、本実施形態による基板装置には、
図7に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する成膜方法を成膜装置に実施させるプログラムが格納されている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの媒体102に記憶されており、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールされる。
【0078】
このように、混合ガス複数系統供給システム250を、成膜処理を行う基板処理装置303に好適に適用することができ、これにより、インジェクタ131c〜133cの設けられた処理容器1内の各領域の混合ガスの流量を正確に制御し、面内均一性に優れた成膜処理を行うことができる。
【0079】
〔第5の実施形態〕
図8は、本発明の第5の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム254及び基板処理装置304の一例を示した図である。
図8において、フロースプリッター210に接続されたインジェクタ130dが1本となり、インジェクタ130dは、3つの領域となる室131d〜133dを有している。
【0080】
図9は、本発明の第5の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム254及び基板処理装置304のインジェクタ130dの一例を示した断面図である。第5の実施形態に係る基板処理装置は、
図5に示した第4の実施形態に係る基板処理装置303と同様の平面構成を有するが、インジェクタ130dの構造のみが異なっている。
【0081】
第5の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130dは、
図9に示されるように、完全な板状の隔壁121b、122bをインジェクタ130dの内部に設け、完全に室131d〜133dが分離されている。これは、第2の実施形態に係る混合ガス複数供給システム251及び基板処理装置301に類似した構成である。
【0082】
このように、完全な板状の隔壁121b、122bを1本のインジェクタ130dの内部に設け、各室131d〜133dを完全に分離する構成としてもよい。かかる構成によれば、3本の別個独立のインジェクタ131c〜133cを設けるよりも省スペース及び低コストでインジェクタ130dを構成することができる。
【0083】
なお、他の構成要素については、第2及び第4の実施形態に係る基板処理装置302、303と同様であるので、その説明を省略する。
【0084】
〔第6の実施形態〕
図10は、本発明の第6の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム及び基板処理装置のインジェクタ130eの一例を示した図である。
図10において、フロースプリッター210に接続されたインジェクタ130eが1本とであり、インジェクタ130eの内部は、隔壁121c、122cにより分割され、3つの室131e、132e、133eに分割されている。隔壁121c、122cには、連通口となるオリフィス111b、112bが形成され、各室131e〜132e同士が連通可能に構成されている。つまり、これは、第3の実施形態に係る基板処理装置302を具体的なALD成膜装置に適用した例である。このように、第6の実施形態に係る基板処理装置によれば、処理容器1内の各領域に対し、なめらかな流量分布で混合ガスを供給することができ、ALD成膜処理を行うことができる。
【0085】
なお、他の構成要素については、第3乃至第5の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム252、254及び基板処理装置302,304と同様であるので、その説明を省略する。
【0086】
〔第7の実施形態〕
図11は、本発明の第7の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム255及び基板処理装置305の一例を示した図である。第7の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム255及び基板処理装置305においては、インジェクタ130fが1本である点は第5及び第6の実施形態に係る基板処理装置304と共通するが、ガス導入ポート1130aが1個だけ容器本体12の外周に設けられている点で、第5及び第6の実施形態に係る基板処理装置303と異なっている。
【0087】
この場合、混合ガスは1箇所のガス導入ポート1130aから供給され、インジェクタ130bは、容器本体12の外周壁から処理容器1内に導入され、回転テーブル2と平行に外周側から中心側に向かって水平に延びて構成される。
【0088】
図12は、インジェクタ130fの一例の断面構成を示した図である。
図12に示されるように、インジェクタ130fの隔壁121d、122dは、インジェクタ130fの長手方向に垂直に存在して各室131f〜133fを長手方向に沿って分割する部分1210、1220に加えて、長手方向に沿って延び、三重管等の同心管の構造を有し、インジェクタ130fの径方向に沿って各室131f〜133fを分割する部分1211、1221をも有している。これに伴い、各室131f〜133fのガス導入口141a〜143aは、インジェクタ130fの長手方向において移動しており、長手方向の異なる位置に設けられている。具体的には、一番右奥(先端側)の室133fのガス導入口143aは右奥に移動し、2番目の室132fのガス導入口142aは真中よりやや左側(入口側)にあり、入口側の室131fのガス導入口141aはインジェクタ130fの全体のガス導入口と同じ最も入口側にある。
【0089】
このように、同心管状の部分1211、1221を有する隔壁121d、122dを用いて、インジェクタ130fの内部を三重管に構成してもよい。この場合は、他のノズル32、41、42と同様に、容器本体12の外周壁から混合ガスを導入することができる。
【0090】
他の構成要素については、第4乃至第6の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム253〜255及び基板処理装置303〜305と同様であるので、その説明を省略する。
【0091】
〔第8の実施形態〕
図13は、第8の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130gの一例を示した図である。第8の実施形態に係る混合ガス複数系統供給装置及び基板処理装置は、
図11に示した第7の実施形態に係る混合ガス複数系統供給装置255及び基板処理装置305と同様の平面構成を有するが、インジェクタ130gの構造のみが異なっている。
【0092】
第8の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130gは、
図13に示されるように、隔壁121e、122eにオリフィス111c、112cが形成されており、室131a〜133aが連通可能に構成されている点で、第6の実施形態に係る基板処理装置304のインジェクタ130bと異なっている。
【0093】
このように、隔壁121e、122eの一部にオリフィス111c、112cを設け、各室131g〜133gを連通する構成としてもよい。かかる構成によれば、3本の別個独立のインジェクタ131c〜133cを設けるよりも省スペース及び低コストでインジェクタ130gを構成することができることに加えて、ガス吐出孔151〜153からのガス吐出量をなめらかに分布させることができ、より高精度の流量制御を行うことができる。なお、各室131g〜133g同士が連通可能に構成されていれば、オリフィス111c、112cの位置や大きさは、用途に応じて種々調整することができる。
【0094】
なお、他の構成要素については、第4乃至第7の実施形態に係る基板処理装置303〜305と同様であるので、その説明を省略する。
【0095】
〔第9の実施形態〕
図14は、本発明の第9の実施形態に係る基板処理装置の一例を示した図である。第9の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム256及び基板処理装置306は、混合ガス生成部200及びフロースプリッター210を縦型熱処理装置に適用した例について説明する。
【0096】
図14は、本発明の第9の実施形態に係る基板処理装置306の一例を示す全体構成図である。図示のとおり、基板処理装置306は、ウエハWを複数枚収容することができる処理容器422を有している。この処理容器422は有天井の円筒体形状を有する縦長の内管424と、有天井の円筒体形状を有する縦長の外管426とにより構成される。外管426は、内管424の外周と外管426の内周との間に所定の間隔をおいて内管424を取り囲むように配置されている。また、内管424と外管426とは共に例えば石英により形成されている。
【0097】
外管426の下端部には、円筒体形状を有する例えばステンレススチール製のマニホールド428がOリング等のシール部材430を介して気密に接続されており、このマニホールド428により外管426の下端部が支持されている。マニホールド428は、図示しないベースプレートによって支持されている。またマニホールド428の内壁には、リング形状を有する支持台432が設けられており、この支持台432により、内管424の下端部が支持される。
【0098】
処理容器422の内管424内には、ウエハ保持部としてのウエハボート434が収容されている。ウエハボート434には、複数のウエハWが所定のピッチで保持される。本実施形態では、300mmの直径を有する、例えば50〜100枚程度のウエハWが略等ピッチでウエハボート434により多段に保持される。ウエハボート434は、昇降可能であり、マニホールド428の下部開口を通して、処理容器422の下方から内管424内へ収容され、内管424から取り出される。ウエハボート434は例えば石英より作製される。
【0099】
またウエハボート434が収容されているときには、処理容器422の下端であるマニホールド428の下部開口は、例えば石英やステンレス板よりなる蓋部436により密閉される。処理容器422の下端部と蓋部436との間には、気密性を維持するために例えばOリング等のシール部材438が介在される。ウエハボート434は、石英製の保温筒440を介してテーブル442上に載置されており、このテーブル442は、マニホールド428の下端開口を開閉する蓋部436を貫通する回転軸444の上端部に支持される。
【0100】
回転軸444と、蓋部436における回転軸444が貫通する孔との間には、例えば磁性流体シール446が設けられ、これにより回転軸444は気密にシールされつつ回転可能に支持される。回転軸444は、例えばボートエレベータ等の昇降機構448に支持されたアーム450の先端に取り付けられており、ウエハボート434及び蓋部436等を一体的に昇降できる。なお、テーブル442を蓋部436側へ固定して設け、ウエハボート434を回転させることなく、ウエハWに対して成膜処理を行うようにしてもよい。
【0101】
また、処理容器422の側部には、処理容器422を取り囲む例えばカーボンワイヤ製のヒータよりなる加熱部(図示せず)が設けられ、これにより、この内側に位置する処理容器422及びこの中のウエハWが加熱される。
【0102】
また、基板処理装置306には、混合ガスを供給する混合ガス生成部200と、反応ガスを供給する反応ガス供給源456と、パージガスとして不活性ガスを供給するパージガス供給源458とが設けられている。
【0103】
混合ガス生成部200は、例えば三種類の異なるガスを接続し、流量制御器171〜173及び開閉バルブ191〜193が設けられた個別配管181〜183(
図1乃至3参照)及び分岐配管221〜223を介してインジェクタ130dに接続されている。インジェクタ130dは、マニホールド428を気密に貫通し、処理容器422内でL字形状に屈曲して内管424内の高さ方向の全域に亘って延びている。インジェクタ130dには、所定のピッチで多数のガス吐出孔151〜153が形成されており、ウエハボート434に支持されたウエハWに対して横方向から原料ガスを供給することができる。インジェクタ130dは、例えば石英で作製することができる。
【0104】
反応ガス供給源456は、例えばアンモニア(NH
3)ガスを貯留し、流量制御器及び開閉バルブ(図示せず)が設けられた配管を介してガスノズル464に接続されている。ガスノズル464は、マニホールド428を気密に貫通し、処理容器422内でL字形状に屈曲して内管24内の高さ方向の全域に亘って延びている。ガスノズル464には、所定のピッチで多数のガス噴射孔464Aが形成されており、ウエハボート434に支持されたウエハWに対して横方向から反応ガスを供給することができる。ガスノズル464は、例えば石英で作製することができる。
【0105】
パージガス供給源458は、パージガスを貯留し、流量制御器及び開閉バルブ(図示せず)が設けられた配管を介してガスノズル468に接続されている。ガスノズル468は、マニホールド428を気密に貫通し、処理容器422内でL字形状に屈曲して内管424内の高さ方向の全域に亘って延びている。ガスノズル468には、所定のピッチで多数のガス噴射孔468Aが形成されており、ウエハボート434に支持されたウエハWに対して横方向からパージガスを供給することができる。ガスノズル468は、例えば石英で作製することができる。また、パージガスとしては、例えばAr、He等の希ガスや窒素ガスなどの不活性ガスを用いることができる。
【0106】
なお、インジェクタ130d及び各ガスノズル464、468は、内管424内の一側に集合させて設けられており(図示例ではスペースの関係よりガスノズル468を他のインジェクタ130d及びガスノズル464に対して反対側に記載している)、このインジェクタ130d及び各ガスノズル464、468に対して対向する内管424の側壁には複数のガス流通孔472が上下方向に沿って形成されている。このため、インジェクタ130d、及びガスノズル464、468から供給されたガスは、ウエハ間を通って水平方向に流れ、ガス流通孔472を通って内管424と外管426との間の間隙474に案内される。
【0107】
また、マニホールド428の上部側には、内管424と外管426との間の間隙474に連通する排気口476が形成されており、この排気口476には処理容器422を排気する排気系478が設けられている。
【0108】
排気系478は、排気口476に接続される配管480を有しており、配管480の途中には、弁体の開度が調整可能で、その弁体の開度を変えることにより処理容器422内の圧力を調整する圧力調整弁480Bと、真空ポンプ482とが順次設けられている。これにより、処理容器422内の雰囲気を圧力調整しつつ所定の圧力まで排気することができる。
【0109】
図15は、インジェクタ130hの一例の構成を示した断面図である。
図15に示されるように、縦長のインジェクタ130hは、内部が隔壁121f、122fにより3個の室131h〜133hに分割されている。隔壁121f、122fは、オリフィスは形成されておらず、各室131h〜133fは完全に分離されている。隔壁121f、122fは、インジェクタ130hの長手方向に垂直な部分1212、1222と、長手方向に平行な部分1213、1223とから構成され、長手方向に平行な部分1213、1223は同心状に延びて全体として三重管を構成している。
【0110】
各室131h〜133hのガス導入口141b〜143bの位置は、
図12に示したインジェクタ130fと同様であり、鉛直方向の低い位置からガス導入口141b、142b、143bの順にインジェクタ130hの長手方向(鉛直方向)に沿って配置されている。
【0111】
ガス吐出口151〜153は、鉛直方向に沿って配列され、内側にあるウエハWの方を向いている点を除けば、今までの構成と同様である。
【0112】
このように、縦型の熱処理装置においても、本実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム256を用いて、高さ方向において気化原料の流量比を高精度に調整し、積層されたウエハW間の面内均一性を高めることができる。
【0113】
〔第10の実施形態〕
図16は、本発明の第10の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム及び基板処理装置のインジェクタ130iの一例を示した図である。第10の実施形態に係る基板処理装置は、
図14に示した第9の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム256及び基板処理装置306と同様の全体構成を有するが、インジェクタ130iの構造のみが異なっている。
【0114】
第10の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130iは、
図16に示されるように、隔壁121g、122gの一部にオリフィス111d、112dが形成されており、室131i〜133iが連通可能に構成されている点で、第9の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム256及び基板処理装置306のインジェクタ130hと異なっている。なお、隔壁121g、122gは、インジェクタ130iの長手方向に垂直な部分1212a、1222aと、長手方向に平行な部分1213a、1223aとから構成され、長手方向に平行な部分1213a、1223aは同心状に延びて全体として三重管を構成している。そして、インジェクタ130iの長手方向に垂直な部分1212a、1222aにオリフィス111d、112dが形成されている。
【0115】
このように、隔壁121g、122gの一部にオリフィス111d、112dを各々設け、各室131i〜133iを連通する構成としてもよい。かかる構成によれば、3本の別個独立のインジェクタ131c〜133cを設けるよりも省スペース及び低コストでインジェクタ130iを構成することができることに加えて、ガス吐出孔151〜153からの吐出量をなめらかに分布させることができ、より高精度の流量制御を行うことができる。なお、各室131i〜133i同士が連通可能に構成されていれば、オリフィス111d、112dの位置や大きさは用途に応じて調整可能である。
【0116】
なお、他の構成要素については、第9の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム256及び基板処理装置306と同様であるので、その説明を省略する。
【0117】
〔第11の実施形態〕
図17は、本発明の第10の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム及び基板処理装置のインジェクタ131j〜133jの一例を示した図である。第11の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム及び基板処理装置は、
図14に示した第9の実施形態に係る基板処理装置306と類似した全体構成を有するが、
図17に示されるように、気化原料を供給するインジェクタ131j〜133jが複数本に増加するとともに、各インジェクタ131j〜133jが処理容器422の高さ方向において異なる領域に気化原料を供給可能なようにガス吐出孔151〜153が設けられている点で、第9及び第10の実施形態に係る混合ガス複数系統供給システム256及び基板処理装置306と異なっている。
【0118】
フロースプリッター210から分岐した分岐配管221〜223から、1対1に各インジェクタ131j〜133jのガス導入口141c〜143cに接続され、各々のインジェクタ131j〜133jが個別に設定された流量で気化原料を処理容器422内に供給する。第11の実施形態に係る基板処理装置は、第1の実施形態に係る基板処理装置300を縦型熱処理装置に適用したものと言える。
【0119】
このように、完全に独立した複数のインジェクタ131j〜133jを用いて、処理容器422内の複数の領域に個別に設定した流量で混合ガスを供給する構成としてもよい。
【0120】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る混合ガス複数系統供給装置は、処理容器内の複数領域に供給可能な種々のインジェクタを用いることにより、種々の態様の基板処理装置を構成することができ、簡素な構成を有しながらも、領域毎に高精度に流量制御を行うことができ、高精度の基板処理を行うことができる。
【0121】
なお、第1乃至第11の実施形態では、成膜処理を例に挙げて説明したが、本発明の実施形態に係る基板処理装置は、エッチングガス等、気化原料を用いる基板処理装置であれば、種々の基板処理装置に適用可能である。また、インジェクタの構成も、実施形態の例に限定されること無く、種々の形態のインジェクタを採用することが可能である。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。