(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(変性オレフィン重合体)
本発明の変性オレフィン重合体は、アルコキシシリル基と末端不飽和基を有し、下記(a)〜(g)を満たす。
(a)テトラリン溶媒中135℃にて測定した極限粘度[η]が0.01〜2.5dL/gである。
(b)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が観測されないかあるいは0〜100℃である。
(c)示差走査型熱量計(DSC)で測定される半結晶化時間が3分以上、または示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化ピークが観測されない。
(d)重量平均分子量(Mw)が1,000〜500,000である。
(e)アルコキシシリル基濃度が0.01〜50質量%である。
(f)1分子あたりの末端不飽和基数が0.4個以上である。
(g)重合体を構成するオレフィンモノマーの50モル%以上が炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーである。
【0013】
また、本発明に用いられる変性オレフィン重合体は、上記(a)〜(g)に加えて更に下記(h)〜(k)の少なくとも1つを満たすことにより、より低結晶性になり、0℃付近のTanδが小さくならず、グリップ性能が低下することがないので好ましい。
(h)メソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上80モル%未満、もしくはメソダイアッド分率[m]が45モル%以上、90モル%未満である。
(i)ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]が2.5モル%を超える。
(j)[mm]×[rr]/[mr]
2が2.0以下である。
(k)[rrrr]/(1−[mmmm])が0.1以下である。
【0014】
(極限粘度[η])
本発明の変性オレフィン重合体は、テトラリン中、135℃において測定した極限粘度[η]が0.01〜2.5dl/gであり、好ましくは0.1〜2.0dl/gであり、より好ましくは0.1〜1.5dl/gであり、更に好ましくは0.1〜1.0dl/g、更に好ましくは0.1〜0.8dl/gである。変性オレフィン重合体の極限粘度が高くなると、ゴムとの混合性が悪くなり、その結果、ゴム中のシリカの分散性が悪くなるため、ゴム組成物の低転がり抵抗とブレーキ性能のバランスが悪化する。
【0015】
極限粘度[η]は、135℃のテトラリン中、ウベローデ型粘度計で還元粘度(ηSP/c)を測定し、下記式(ハギンスの式)を用いて算出する。
ηSP/c=[η]+K[η]
2c
ηSP/c(dl/g):還元粘度
[η](dl/g):極限粘度
c(g/dl):ポリマー粘度
K=0.35(ハギンス定数)
【0016】
(融点(Tm−D))
変性オレフィン重合体の融点(Tm−D)は、変性オレフィン重合体のゴム組成物中の分散性を向上させる観点から、観測されないか又は0〜100℃である。融点が観測される場合には、同様の観点から、好ましくは50〜100℃、より好ましくは55〜90℃、更に好ましくは57〜80℃である。
なお、本発明では、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、商品名:「DSC−7」)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを融点(Tm−D)として定義する。
融点(Tm−D)は、モノマー濃度や反応圧力を適宜調整することで制御可能である。
【0017】
(半結晶化時間)
変性オレフィン重合体の示差走査型熱量計(DSC)で測定される半結晶化時間は、遅い結晶化速度の観点から、3分以上であるか又は示差走査型熱量計(DSC)で測定される結晶化ピークが観測されない。好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。半結晶化時間が60分を超えるような結晶化速度が遅い場合、明確な結晶化ピークが観測されない場合がある。
半結晶化時間が上記を満たすことにより、タイヤの冷却固化時に先にワックス成分が固まるため、変性オレフィン重合体の結晶化によるワックス成分のブリードアウトを防ぐことができる。
なお、本発明における「半結晶化時間」とは、以下に示す測定方法により測定されるものを示す。
【0018】
<半結晶化時間の測定方法>
示差走査型熱量計(DSC)(パーキン・エルマー社製、商品名:「DSC−7」)を用い、下記方法にて測定する。
(1)試料10mgを25℃で5分間保持し、320℃/秒で220℃に昇温し5分間保持する。320℃/秒で25℃に冷却し、300分間保持することにより、等温結晶化過程における、発熱量の時間変化を測定する。
(2)等温結晶化開始時から結晶化完了時までの発熱量の積分値を100%とした時、等温結晶化開始時から発熱量の積分値が50%となるまでの時間を半結晶化時間として定義する。
【0019】
(メソペンタッド分率[mmmm])
メソペンタッド分率[mmmm]は、オレフィン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると立体規則性が高くなる。
本発明において、変性される前のオレフィン重合体が単独重合体である場合、変性オレフィン重合体のメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは20〜80モル%、より好ましくは30〜80モル%、更に好ましくは40〜75モル%である。メソペンタッド分率[mmmm]が当該範囲内であると、低結晶性であり、また、結晶化速度が比較的遅く、成形時に固化するまでの時間が長くなる。低結晶性であることで、変性オレフィン重合体の結晶化によるシリカやワックス成分から分離するのを抑制できる。
【0020】
(メソダイアッド分率[m])
メソダイアッド分率[m]は、オレフィン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソダイアッド分率[m]が大きくなると立体規則性が高くなる。
本発明において、変性される前のオレフィン重合体がエチレンモノマーを含む共重合体である場合、変性オレフィン重合体のメソダイアッド分率[m]は、好ましくは45モル%以上、90モル%未満、より好ましくは50〜85モル%、更に好ましくは60〜80モル%である。メソダイアッド分率[m]が当該範囲内であると、低結晶性であり、また、結晶化速度が比較的遅く、成形時に固化するまでの時間が長くなる。
【0021】
変性オレフィン重合体のメソペンタッド分率[mmmm]及びメソダイアッド分率[m]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠して
13C−NMRを用いて測定される。また、後述するラセミペンタッド分率[rrrr]、ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]、メソトリアッド分率[mm]、ラセミトリアッド分率[rr]及びメソラセミトリアッド分率[mr]も上記方法により測定される。
変性される前のオレフィン系重合体がポリプロピレンを主成分(プロピレン90質量%以上)とするポリオレフィンである場合、以下の方法によりメソペンタッド分率[mmmm]を測定することができる。
【0022】
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型
13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0023】
メソペンタッド分率Mの算出方法は以下の通りである。
M=(m/S)×100
R=(γ/S)×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
【0024】
変性される前のオレフィン系重合体がポリブテンを主成分(ブテン90質量%以上)とするポリオレフィンである場合、以下の方法によりメソダイアッド分率[m]、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]、メソトリアッド分率[mm]、ラセミトリアッド分率[rr]及びメソラセミトリアッド分率[mr]は朝倉らにより報告された「ポリオレフィンlymer Journal,16,717(1984)」、J.Randallらにより報告された「Macromol.Chem.Phys.,C29,201(1989)」及びV.Busicoらにより報告された「Macromol.Chem.Phys.,198,1257(1997)」で提案された方法に準拠して測定することができる。
すなわち、
13C核磁気共鳴スペクトルを用いてメチレン基、メチン基のシグナルを測定することで、ポリ(1−ブテン)分子中のメソペンタッド分率を求めることができる。
13C核磁気共鳴スペクトルの測定は、上記装置及び条件にて行うことができる。
【0025】
オレフィン系重合体が炭素数6〜28のα−オレフィンを主成分とするポリオレフィンである場合、以下の方法によりメソダイアッド分率[m]、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]、メソトリアッド分率[mm]、ラセミトリアッド分率[rr]及びメソラセミトリアッド分率[mr]は、朝倉等により「Macromolecules,24,2334(1991)」で提案された方法に準拠し、
13C−NMRスペクトルのメチル基シグナルにより測定されるポリオレフィン分子中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。
13C核磁気共鳴スペクトルの測定は、上記装置及び条件にて行うことができる。
【0026】
(ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm])
ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、オレフィン系重合体の立体規則性のランダム性を表す指標であり、値が大きいほどオレフィン系重合体のランダム性が増加する。
本発明に用いられる変性オレフィン重合体のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は好ましくは2.5モル%を超え、より好ましくは2.6モル%以上、更に好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常、好ましくは10モル%程度であり、より好ましくは7モル%、更に好ましくは5モル%、特に好ましくは4モル%である。値が当該範囲内であると、ランダム性が増加して変性オレフィン重合体の結晶性を低下させ、ゴム組成物中での分散性が向上するができる。
【0027】
([mm]×[rr]/[mr]
2)
[mm]×[rr]/[mr]
2の値は、オレフィン系重合体のランダム性の指標を示し、1に近いほどランダム性が高くなる。
本発明に用いられる変性オレフィン重合体は、[mm]×[rr]/[mr]
2が好ましくは2.0以下、より好ましくは0.5〜1.8、更に好ましくは0.5〜1.5である。値が当該範囲内であると、変性オレフィン重合体の結晶性を低下させ、ゴム組成物中での分散性が向上する。なお、上記における[mm]、[rr]及び[mr]の単位は、モル%である。
【0028】
([rrrr]/(1−[mmmm]))
[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、メソペンタッド分率[mmmm]及びラセミペンタッド分率[rrrr]から求められ、オレフィン系重合体の規則性分布の均一さを示す指標である。変性される前のオレフィン系重合体が単独重合体である場合、変性オレフィン重合体の[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.001〜0.05、更に好ましくは0.001〜0.04、特に好ましくは0.01〜0.04である。値が当該範囲内であると、高結晶性分が少なくなり、ゴム組成物中での分散性が向上する。
【0029】
(重量平均分子量(Mw))
本発明の変性オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は、低温特性、ゴム組成物中での分散性向上の観点から、1,000〜500,000であり、より好ましくは1,000〜400,000、更に好ましくは1,000〜300,000、更に好ましくは1,000〜200,000、更に好ましくは1,000〜200,000、更に好ましくは1,000〜60,000である。
【0030】
(分子量分布(Mw/Mn))
本発明の変性オレフィン重合体は、ゴム組成物中での分散性向上の観点から、分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.2以下、更に好ましくは3.0以下である。当該分子量分布は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.2以上である。
【0031】
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算のものであり、分子量分布(Mw/Mn)は、これらの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
【0032】
<GPC測定装置>
カラム:東ソー(株)製「TOSO GMHHR−H(S)HT」
検出器:液体クロマトグラム用RI検出 ウォーターズ・コーポレーション製「WATERS 150C」
<測定条件>
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度:145℃
流速:1.0ml/分
試料濃度:2.2mg/ml
注入量:160μl
検量線:Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0033】
(アルコキシシリル基濃度)
本発明の変性オレフィン重合体はアルコキシシリル基を有する。
アルコキシシリル基は、特に限定されないが好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基を有するトリアルコキシシリル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基を有するトリアルコキシシリル基である。また、アルコキシ基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロピルオキシシリル基等が挙げられ、好ましくはトリメトキシシリル基、又はトリエトキシシリル基である。
【0034】
本発明の変性オレフィン重合体は、トリエトキシシリル基換算のアルコキシシリル基濃度が、0.01〜50質量%であり、好ましくは0.01〜30質量%であり、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは1.0〜4質量%である。
【0035】
本発明の変性オレフィン重合体において、トリエトキシシリル基換算のアルコキシシリル基濃度が0.01質量%以上であることで、架橋性能を高めることができ、硬化物が得られやすくなり、一方、50質量%以下であることで、適度な固さの硬化物が得られ、シリカ等の水酸基含有添加剤が適度に分散した状態で硬化が進行する。すなわち、アルコキシシリル基濃度が上記範囲内である変性オレフィン重合体は、これを用いて硬化性組成物を得た場合には、アルコキシシリル基の濃度が高いため、架橋速度が適度に速く、硬化後の硬化物の強度が高く、また、水酸基含有添加剤が高分散化し、物性バランスが向上する。
【0036】
上記トリエトキシシリル基換算のアルコキシシリル基濃度は、以下にしたがって求めることができる。
まず、シリル元素濃度を次の方法で測定する。
シリル元素濃度は、試料0.1gを電気炉で一晩加熱(550℃)後、灰分のアルカリ融解にてサンプル溶液を調製し、ICP発光分光分析(アジレント・テクノロジー株式会社、720−ES)にてSi元素の濃度を測定する。
測定したシリル元素濃度の値をa質量%とする。当該数値を用いて下記の式により換算する。
トリエトキシシリル基換算アルコキシシリル基濃度=a×163.3/28.1(質量%)
なお、変性オレフィン重合体中に、アルコキシシリル基が存在することは、
1H−NMRを用いて3.7〜4.1ppm付近に出現するアルコキシシリル基の酸素原子の隣の炭素原子上の水素原子由来のピーク(炭素数2以上のアルコキシ基を有するシリル基)、あるいは3.6ppm付近に出現するシングレットのピーク(トリメトキシシリル基の場合)の在否により確認できる。
【0037】
(末端不飽和基濃度)
本発明における末端不飽和基数は、ビニル基及びビニリデン基の総量の数を意味する。ビニル基のみ存在する場合は、ビニル基のみの濃度及び数を意味し、ビニル基及びビニリデン基両方含む場合は、両方の和の濃度及び数を意味する。
なお、末端不飽和基としては、ビニル基、ビニリデン基、トランス(ビニレン)基等が挙げられるが、本明細書で定義する末端不飽和基とは、ビニル基及びビニリデン基を意味する。ビニル基及びビニリデン基はラジカル重合性、各種反応の適用範囲が広く、多様な要求に対応できる。
本発明の変性オレフィン重合体は、1分子当りの末端不飽和基の数が0.4個以上である。0.4個未満である場合には、天然ゴムやスチレン/ブタジエン系ゴム存在下での加硫反応時に架橋反応が十分に進行しないため好ましくない。この観点から、0.5個以上が好ましく、0.6個以上がより好ましい。また、シリカの分散性に繋がる変性オレフィン重合体のゴム中の分散性を向上させる観点から2.0個以下が好ましく、1.5個以下がより好ましい。
【0038】
末端不飽和基濃度は、次のように測定され、算出される。
1H−NMR測定より得られるδ4.8〜4.6(2H)に出現する末端ビニリデン基、δ5.9〜5.7(1H)に出現する末端ビニル基及びδ1.05〜0.60(3H)に出現するメチル基に基づいて、末端不飽和基濃度(C)(モル%)を算出した。
ビニリデン基のCH
2(4.8〜4.6ppm)・・・(i)
ビニル基のCH(5.9〜5.7ppm)・・・(ii)
側鎖末端のCH
3(1.05〜0.60ppm)・・・(iii)
ビニリデン基量=[(i)/2]/[(iii)/3]×100モル%
ビニル基量=(ii)/[(iii)/3]×100モル%
末端不飽和基濃度(C)=[ビニリデン基量]+[ビニル基量]
【0039】
上記方法により算出した末端不飽和基濃度(C、モル%)と、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)より求めた数平均分子量(Mn)及びオレフィンモノマー分子量(M)から、下記式により1分子当りの末端不飽和基の数を算出した。
1分子当りの末端不飽和基の数(個)=(Mn/M)×(C/100)
【0040】
(固体時の動的粘弾性)
本発明の変性オレフィン重合体は、固体時の動的粘弾性が、0℃におけるTanδが0.1より大きく、60℃におけるTanδが0.1より小さい。
固体時の動的粘弾性が、上記を満たすとき後述するタイヤ用ゴム組成物に変性オレフィン重合体を添加した時に、ブレーキ性能に影響する10,000Hz付近のエネルギー吸収が大きく、転がり抵抗の低減に貢献する100Hz付近のエネルギー吸収が低くなり、タイヤの省エネルギー(低燃費)及びブレーキ性能のバランスに優れるタイヤ用ゴム組成物が得られることが期待できる。上記の観点から、0℃におけるTanδが好ましくは0.14より大きく、さらに好ましくは、0.16より大きい。また、60℃におけるTanδが好ましくは0.08より小さく、さらに好ましくは0.05より小さい。
【0041】
なお、上記動的粘弾性の範囲はタイヤ用ゴム組成物の動的粘弾性で通常求められている範囲である。すなわち、タイヤ用ゴム組成物に用いられる成分(変性オレフィン重合体)が上記動的粘弾性の範囲を持つことが好ましい。
【0042】
動的粘弾性は粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:DMS 6100(EXSTAR6000))を用いて、窒素雰囲気下で以下の条件で測定することができる。
<測定条件>
測定モード:引張モード
測定温度:−150℃〜230℃のうち、−50℃、25℃及び150℃の3点を観測した。
昇温速度:5℃/min
測定周波数:1Hz
試料サイズ:長さ10mm、幅4mm、厚さ1mm(プレス成形品)
【0043】
変性オレフィン重合体が常温(25℃)で液状である場合には、後述する硬化促進触媒を変性オレフィン重合体に100質量部に対して2質量部加えて、常温(25℃)、湿度50%で、24時間硬化させて得られた固体の動的粘弾性を測定する。
【0044】
本発明の変性オレフィン重合体は、低結晶性オレフィン重合体であり、ゴムに比べるとTgが高いので、転がり抵抗が減少する。また、0℃付近のTanδが高く、60℃付近のTanδが低いので、タイヤの低燃費とブレーキ性能のバランス向上に貢献すると考えられる。さらに、ワックス成分との親和性が高いのでそのブリードアウトを抑制し、ワックス成分枯渇によるタイヤのひび割れを抑制することができると考えられる。
【0045】
(オレフィンモノマー)
本発明の変性オレフィン重合体の原料であるオレフィン重合体を構成するオレフィンモノマーは、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーであり、炭素数3〜28のα−オレフィンが50モル%以上である。炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。α−オレフィンモノマーとしては好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3又は4のα−オレフィン(すなわちプロピレンモノマー、1−ブテンモノマー)、炭素数6〜12のα−オレフィンである。
本発明の変性オレフィン重合体におけるオレフィン構成単位の50モル%以上は炭素数3又は4のα−オレフィン(すなわちプロピレンモノマー、1−ブテンモノマー)から選択される少なくとも一種のモノマーであることが好ましく、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは75モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。
なお、本発明の変性オレフィン重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲でオレフィン以外のモノマーを含んでもよい。
【0046】
(変性オレフィン重合体の製造方法)
本発明に用いられる変性オレフィン重合体は、オレフィン重合体をシラン変性することで製造することができる。
オレフィン重合体は、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを重合して得られ、炭素数3〜28のα−オレフィンが50モル%以上であって、特に好ましいα−オレフィンは炭素数3又は4のα−オレフィン、炭素数6〜12のα−オレフィンであることは上述のとおりである。
【0047】
上記オレフィン重合体は、例えば下記成分(i)及び(ii)の組合せからなるメタロセン系触媒を用い、水素を分子量調節剤として用いることにより製造することができる。
更にメタロセン系触媒に下記成分(iii)を加えてもよい。
(i)シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基を有する周期律表第3族〜10族の金属元素を含む遷移金属化合物
(ii)(ii−1)該(i)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(ii−2)アルミノキサンから選ばれる成分
(iii)有機アルミニウム化合物
具体的には、WO2008/047860に開示の方法により製造できる。
【0048】
(i)成分のシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基又は置換インデニル基を有する周期律表第3〜10族の金属元素を含む遷移金属化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表される二架橋錯体が挙げられる。
【化2】
【0049】
上記一般式(I)において、Mは周期律表第3〜10族の金属元素を示し、具体例としてはチタン,ジルコニウム,ハフニウム,イットリウム,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,コバルト,パラジウム及びランタノイド系金属等が挙げられる。これらの中ではオレフィン重合活性等の点からチタン,ジルコニウム及びハフニウムが好適であり、オレフィン重合体の収率及び触媒活性の点から、ジルコニウムが最も好適である。
E
1及びE
2はそれぞれ、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基(−N<),ホスフィン基(−P<),炭化水素基(>CR−,>C<)及びケイ素含有基(>SiR−,>Si<)(但し、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基あるいはヘテロ原子含有基である)の中から選ばれた配位子を示し、A
1及びA
2を介して架橋構造を形成している。E
1及びE
2は互いに同一でも異なっていてもよい。このE
1及びE
2としては、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基及び置換インデニル基が好ましく、E
1及びE
2のうちの少なくとも一つは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基又は置換インデニル基である。
前記置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換へテロシクロペンタジエニル基の置換基としては、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6)の炭化水素基、ケイ素含有基又はヘテロ原子含有基等の置換基を示す。
Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E
1,E
2又はYと架橋していてもよい。このXの具体例としては、ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアミド基,炭素数1〜20のケイ素含有基,炭素数1〜40のホスフィド基,炭素数1〜20のスルフィド基,炭素数1〜20のアシル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭素数1〜20の炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。なかでもメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基やフェニル基等のアリール基が好ましい。
【0050】
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基等が挙げられる。炭素数1〜20のアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジプロピルアミド基、ジブチルアミド基、ジシクロヘキシルアミド基、メチルエチルアミド基等のアルキルアミド基や、ジビニルアミド基、ジプロペニルアミド基、ジシクロヘキセニルアミド基等のアルケニルアミド基;ジベンジルアミド基、フェニルエチルアミド基、フェニルプロピルアミド基等のアリールアルキルアミド基;ジフェニルアミド基、ジナフチルアミド基等のアリールアミド基が挙げられる。
炭素数1〜20のケイ素含有基としては、メチルシリル基、フェニルシリル基等のモノ炭化水素置換シリル基;ジメチルシリル基、ジフェニルシリル基等のジ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基等のトリ炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基等の炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基等のケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基等のケイ素置換アリール基等が挙げられる。なかでもトリメチルシリルメチル基、フェニルジメチルシリルエチル基等が好ましい。
【0051】
炭素数1〜40のホスフィド基としては、ジメチルホスフィド基、ジエチルホスフィド基、ジプロピルホスフィド基、ジブチルホスフィド基、ジヘキシルホスフィド基、ジシクロヘキシルホスフィド基、ジオクチルホスフィド基等のジアルキルホスフィド基;ジビニルホスフィド基、ジプロペニルホスフィド基、ジシクロヘキセニルホスフィド基等のジアルケニルホスフィド基;ジベンジルホスフィド基、ビスフェニルエチルホスフィド基、ビスフェニルプロピルホスフィド基等のビスアリールアルキルホスフィド基;ジフェニルホスフィド基、ジトリルホスフィド基、ビスジメチルフェニルホスフィド基、ビストリメチルフェニルホスフィド基、ビスエチルフェニルホスフィド基、ビスプロピルフェニルホスフィド基、ビスビフェニルホスフィド基、ビスナフチルホスフィド基、ビスメチルナフチルホスフィド基、ビスアントラセニルホスフィド基、ビスフェナントリルホスフィド基等のジアリールホスフィド基が挙げられる。
【0052】
炭素数1〜20のスルフィド基としては、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基、ヘキシルスルフィド基、シクロヘキシルスルフィド基、オクチルスルフィド基等のアルキルスルフィド基;ビニルスルフィド基、プロペニルスルフィド基、シクロヘキセニルスルフィド基等のアルケニルスルフィド基;ベンジルスルフィド基、フェニルエチルスルフィド基、フェニルプロピルスルフィド基等のアリールアルキルスルフィド基;フェニルスルフィド基、トリルスルフィド基、ジメチルフェニルスルフィド基、トリメチルフェニルスルフィド基、エチルフェニルスルフィド基、プロピルフェニルスルフィド基、ビフェニルスルフィド基、ナフチルスルフィド基、メチルナフチルスルフィド基、アントラセニルスルフィド基、フェナントリルスルフィド基等のアリールスルフィド基が挙げられる。
炭素数1〜20のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基等のアルキルアシル基、ベンゾイル基、トルオイル基、サリチロイル基、シンナモイル基、ナフトイル基、フタロイル基等のアリールアシル基、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等のジカルボン酸からそれぞれ誘導されるオキサリル基、マロニル基、スクシニル基等が挙げられる。
【0053】
一方、Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE
1,E
2又はXと架橋していてもよい。このYのルイス塩基の具体例としては、アミン類,エーテル類,ホスフィン類,チオエーテル類等を挙げることができる。アミンとしては、炭素数1〜20のアミンが挙げられ、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のアルキルアミン;ビニルアミン、プロペニルアミン、シクロヘキセニルアミン、ジビニルアミン、ジプロペニルアミン、ジシクロヘキセニルアミン等のアルケニルアミン;フェニルエチルアミン、フェニルプロピルアミン等のアリールアルキルアミン;フェニルアミン、ジフェニルアミン、ジナフチルアミン等のアリールアミンが挙げられる。
【0054】
エーテル類としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、n−アミルエーテル、イソアミルエーテル等の脂肪族単一エーテル化合物;メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチル−n−アミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチル−n−アミルエーテル、エチルイソアミルエーテル等の脂肪族混成エーテル化合物;ビニルエーテル、アリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテル等の脂肪族不飽和エーテル化合物;アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、ベンジルエーテル、フェニルベンジルエーテル、α−ナフチルエーテル、β−ナフチルエーテル等の芳香族エーテル化合物、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化トリメチレン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環式エーテル化合物が挙げられる。
【0055】
ホスフィン類としては、炭素数1〜20のホスフィンが挙げられる。具体的には、メチルホスフィン、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、ヘキシルホスフィン、シクロヘキシルホスフィン、オクチルホスフィン等のモノ炭化水素置換ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジプロピルホスフィン、ジブチルホスフィン、ジヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ジオクチルホスフィン等のジ炭化水素置換ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリ炭化水素置換ホスフィン等のアルキルホスフィンや、ビニルホスフィン、プロペニルホスフィン、シクロヘキセニルホスフィン等のモノアルケニルホスフィンやホスフィンの水素原子をアルケニルが2個置換したジアルケニルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルケニルが3個置換したトリアルケニルホスフィン;ベンジルホスフィン、フェニルエチルホスフィン、フェニルプロピルホスフィン等のアリールアルキルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアリール又はアルケニルが3個置換したジアリールアルキルホスフィン又はアリールジアルキルホスフィン;フェニルホスフィン、トリルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリメチルフェニルホスフィン、エチルフェニルホスフィン、プロピルフェニルホスフィン、ビフェニルホスフィン、ナフチルホスフィン、メチルナフチルホスフィン、アントラセニルホスフィン、フェナントリルホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルキルアリールが2個置換したジ(アルキルアリール)ホスフィン;ホスフィンの水素原子をアルキルアリールが3個置換したトリ(アルキルアリール)ホスフィン等のアリールホスフィンが挙げられる。チオエーテル類としては、前記のスルフィドが挙げられる。
【0056】
次に、A
1及びA
2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO
2−、−Se−、−NR
1−、−PR
1−、−P(O)R
1−、−BR
1−又は−AlR
1−を示し、R
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
このような架橋基のうち、少なくとも一つは炭素数1以上の炭化水素基からなる架橋基もしくは、ケイ素含有基であることが好ましい。このような架橋基としては、例えば下記一般式(a)で表されるものが挙げられ、その具体例としては、メチレン基,エチレン基,エチリデン基,プロピリデン基,イソプロピリデン基,シクロヘキシリデン基,1,2−シクロヘキシレン基,ビニリデン基(CH
2=C=),ジメチルシリレン基,ジフェニルシリレン基,メチルフェニルシリレン基,ジメチルゲルミレン基,ジメチルスタニレン基,テトラメチルジシリレン基,ジフェニルジシリレン基等を挙げることができる。これらの中で、エチレン基,イソプロピリデン基及びジメチルシリレン基が好適である。
【0057】
【化3】
(Dは周期律表第14族元素であり、例えば炭素,ケイ素,ゲルマニウム及びスズが挙げられる。R
2及びR
3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基で、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環構造を形成していてもよい。eは1〜4の整数を示す。)
【0058】
一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、WO2008/066168に記載の具体例が挙げられる。また、他の族の金属元素の類似化合物であってもよい。好ましくは周期律表第4族の遷移金属化合物であり、中でもジルコニウムの化合物が好ましい。
【0059】
上記一般式(I)で表される遷移金属化合物の中では、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【化4】
【0060】
上記一般式(II)において、Mは周期律表第3〜10族の金属元素を示し、A
1a及びA
2aは、それぞれ上記一般式(I)における一般式(a)で表される架橋基を示し、CH
2,CH
2CH
2,(CH
3)
2C,(CH
3)
2C(CH
3)
2C,(CH
3)
2Si及び(C
6H
5)
2Siが好ましい。A
1a及びA
2aは、互いに同一でも異なっていてもよい。R
4〜R
13はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基又はヘテロ原子含有基を示す。ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基及びケイ素含有基としては、上記一般式(I)において説明したものと同様のものが挙げられる。炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基としては、p−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロ)フェニル基、フルオロブチル基等が挙げられる。ヘテロ原子含有基としては、炭素数1〜20のヘテロ原子含有基が挙げられ、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の窒素含有基;フェニルスルフィド基、メチルスルフィド基等の硫黄含有基;ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基等の燐含有基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等の酸素含有基等が挙げられる。なかでも、R
4及びR
5としてはハロゲン原子、酸素、ケイ素等のヘテロ原子を含有する基、炭素数1〜20の炭化水素基が、重合活性が高く好ましい。R
6〜R
13としては、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。X及びYは一般式(I)と同じである。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
【0061】
上記一般式(II)で表される遷移金属化合物のうち、両方のインデニル基が同一である場合、周期律表第4族の遷移金属化合物としては、WO2008/066168に記載の具体例が挙げられる。また、第4族以外の他の族の金属元素の類似化合物であってもよい。好ましくは周期律表第4族の遷移金属化合物であり、中でもジルコニウムの化合物が好ましい。
【0062】
一方、上記一般式(II)で表される遷移金属化合物のうち、R
5が水素原子で、R
4が水素原子でない場合、周期律表第4族の遷移金属化合物としては、WO2008/066168に記載の具体例が挙げられる。また、第4族以外の他の族の金属元素の類似化合物であってもよい。好ましくは周期律表第4族の遷移金属化合物であり、中でもジルコニウムの化合物が好ましい。
【0063】
本発明で用いる触媒を構成する(ii)(ii−1)該(i)成分の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物としては、比較的低分子量の高純度末端不飽和オレフィン系重合体が得られる点、及び触媒高活性の点でボレート化合物が好ましい。ボレート化合物としては、WO2008/066168に記載の具体例が挙げられる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。後述する水素と遷移金属化合物とのモル比(水素/遷移金属化合物)が0である場合、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルカルベニウム及びテトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸メチルアニリニウム等が好ましい。
上記(ii)(ii−2)成分のアルミノキサンとしては、公知の鎖状アルミノキサンや環状アルミノキサンが挙げられる。
【0064】
オレフィン重合体の製造方法で用いる触媒は、上記(i)成分と(ii)成分との組み合わせでもよく、上記(i)成分及び(ii)成分に加えて(iii)成分として有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
(iii)成分の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルへキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド及びエチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルへキシルアルミニウム及びトリノルマルオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムが好ましく、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルへキシルアルミニウム及びトリノルマルオクチルアルミニウムがより好ましい。
【0065】
(i)成分の使用量は、通常0.1×10
−6〜1.5×10
−5mol/L、好ましくは0.15×10
−6〜1.3×10
−5mol/L、より好ましくは0.2×10
−6〜1.2×10
−5mol/L、特に好ましくは0.3×10
−6〜1.0×10
−5mol/Lである。(i)成分の使用量が0.1×10
−6mol/L以上であると、触媒活性が十分に発現され、1.5×10
−5mol/L以下であると、重合熱を容易に除去することができる。
(ii)(ii−1)成分を用いた場合の、(i)成分と(ii−1)成分との使用割合(i)/(ii−1)は、モル比で好ましくは10/1〜1/100、より好ましくは2/1〜1/10である。(i)/(ii−1)が10/1〜1/100の範囲にあると、触媒としての効果が得られると共に、単位質量ポリマー当たりの触媒コストを抑えることができる。また、目的とするオレフィン重合体中にホウ素が多量に存在するおそれがない。
(ii)(ii−2)成分を用いた場合の、(i)成分と(ii−2)成分との使用割合(i)/(ii−2)は、モル比で好ましくは1/1〜1/1000000、より好ましくは1/10〜1/10000の範囲が望ましい。この範囲を逸脱する場合は単位重量ポリマー当りの触媒コストが高くなり、実用的でない。
また、触媒成分(ii)としては(ii−1),(ii−2)を単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
(iii)成分を用いる場合の(i)成分と(iii)成分との使用割合(i)/(iii)は、モル比で好ましくは1/1〜1/10000、より好ましくは1/5〜1/2000、更に好ましくは1/10〜1/1000である。(iii)成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができる。(i)/(iii)が1/1〜1/10000の範囲にあると、(iii)成分の添加効果と経済性のバランスが良好であり、また、目的とするオレフィン重合体中にアルミニウムが多量に存在するおそれがない。
オレフィン重合体の製造方法においては、上述した(i)成分及び(ii)成分、あるいは(i)成分、(ii)成分及び(iii)成分を用いて予備接触を行うこともできる。予備接触は、(i)成分に、例えば(ii)成分を接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。このような予備接触により触媒活性の向上や、助触媒である(ii)成分の使用割合の低減等、触媒コストの低減に効果的である。
重合法としては、連続式、バッチ式、溶液重合、バルク重合等、いずれも適用できるが、本発明においては、モノマー濃度を低く制御し、末端不飽和基を生成しやすい、モノマーを連続的に供給する溶媒を用いた連続式やセミバッチ式が好ましい。
【0066】
本発明の変性オレフィン重合体は、オレフィン重合体と、ラジカル開始剤と、アルコキシシリル基及びエチレン性不飽和基を有するモノマー(以下、シラン変性モノマーと略記することがある。)とを反応させることで製造することができる。
【0067】
オレフィン重合体とシラン基及びエチレン性不飽和基を有するモノマーとの反応で使用されるラジカル開始剤としては特に制限はなく、従来公知のラジカル開始剤、例えば各種有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物等の中から、適宜選択して用いることができるが、これらの中で、有機過酸化物が好適である。
【0068】
この有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド,ジ−8,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド,ジラウロイルパーオキシド,ジデカノイルパーオキシド,ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキシド等のジアシルパーオキシド類、t−ブチルヒドロパーオキシド,キュメンヒドロパーオキシド,ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド,2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジ−t−ブチルパーオキシド,ジクミルパーオキシド,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン,2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシオクトエート,t−ブチルパーオキシピバレート,t−ブチルパーオキシネオデカノエート,t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート,ジイソプロピルパーオキシジカーボネート,ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート,t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート類等が挙げられる。これらの中では、ジアルキルパーオキシド類が好ましい。また、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル開始剤の使用量としては特に制限はないが、使用するα−オレフィン系重合体100質量部に対し、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲で用いられる。
【0069】
α−オレフィン系重合体と反応させるシラン基及びエチレン性不飽和基を有するモノマーの具体例としては、下記一般式(i)で表されるものが挙げられる。
(RO)
3−Si−Y ・・・(i)
(式中、Yは、エチレン性不飽和基であり、Rはアルキル基であり、3つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。)
上記エチレン性不飽和基はα−オレフィン系重合体中に発生した遊離ラジカル部位との反応性を有する。エチレン性不飽和基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンタジエニル基、(メタ)アクリロキシアルキル基等が挙られ、好ましくは、ビニル基、メタクリロキシアルキル基、及びアクリロキシアルキル基から選ばれる少なくとも一種である。
上記アルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜10のものがより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デカニル基等が挙げられ、これらの中でも、好ましくはメチル基及びエチル基から選ばれる少なくとも1種である。
上記シラン変性モノマーの具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0070】
シラン変性モノマーの使用量は、例えば、オレフィン重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0071】
上述のオレフィン重合体を、ラジカル開始剤及びシラン変性モノマーと反応させる方法としては、ロールミル、バンバリーミキサー、押出機などを用いて、100〜300℃程度の温度で溶融混練して反応させる方法、あるいはブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカヒドロナフタリンなどの炭化水素系溶剤、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤や、液化α−オレフィンなどの適当な有機溶剤中において、−50〜300℃程度の温度で溶液変性により反応させる方法を用いることができる。
アルコキシシリル基濃度を所定の範囲とするためには、ラジカルやシラン変性モノマーの濃度を高める観点から、無溶剤条件下にて、120〜200℃程度の高温下で反応させることが好ましい。
【0072】
本発明の変性オレフィン重合体は、上記してきたように、主として、タイヤ用ゴム組成物中にシランカップリング剤的な作用を有するものとして好適に使用できる。その際、変性オレフィン重合体の配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0073】
タイヤ用ゴム組成物に使用されるジエン系ゴムポリマーとしては、例えば、分子内にイソプレンユニット及び/又はブタジエンユニットを有する各種ゴムポリマーが挙げられ、具体的には、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、又は、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらのジエン系ゴムポリマーは、いずれか1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、又はブタジエンゴムを用いることが好ましく、より好ましくは天然ゴム又は合成イソプレンゴムを用いることである。
【0074】
タイヤ用ゴム組成物には、シリカを配合することができる。
シリカとしては、特に限定されず、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)等が挙げられるが、中でも乾式シリカが好ましい。シリカのコロイダル特性は特に限定しないが、BET法による窒素吸着比表面積(BET)150〜250m
2/gであるものが好ましく用いられ、より好ましくは180〜230m
2/gである。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。
【0075】
また、タイヤ用ゴム組成物には、シリカ以外の他のフィラーを含んでもよい。
他のフィラーとしては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、クレー、又は、タルクなどの各種無機充填剤を用いることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましく用いられる。
【0076】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、ゴム用補強剤として用いられているSAF、ISAF、HAF、FEFなどの各種グレードのファーネスカーボンブラックを用いることができる。
【0077】
タイヤ用ゴム組成物には、上記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲でオイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤、難燃剤、硬化促進触媒、シランカップリング剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0078】
上記加硫剤としては、硫黄、又は、硫黄含有化合物(例えば、塩化硫黄、二塩化硫黄、高分子多硫化物、モルホリンジスルフィド、及びアルキルフェノールジスルフィド等)が挙げられ、これらはいずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫剤の配合量は、特に限定するものではないが、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0079】
上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、又は、グアニジン系などの各種加硫促進剤を用いることができ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定するものではないが、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0080】
上記硬化促進触媒は、硫黄による硬化を促進し、硫黄によるマクロシランカップリング剤(変性オレフィン重合体)とジエン系ゴムとの反応を促進する。硬化促進触媒としては、有機金属触媒類、3級アミン類等を挙げることができる。
有機金属類としては、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、オクテン酸錫等の有機錫金属化合物や、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛等を挙げることができる。
3級アミン類としては、N−トリエチルアミン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物等を挙げることができる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。上記触媒の中で特に好ましいのはジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテートである。
本発明のタイヤ用ゴム組成物における硬化促進触媒の含有量は、本発明のタイヤ用ゴム組成物中、好ましくは0.005〜2.0質量%であり、より好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0081】
タイヤ用ゴム中のシリカの分散性を更に向上させる目的で、従来のシランカップリング剤を本発明の効果に影響がない程度に添加することができる。該シランカップリング剤としては、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、グリシドキシ系シランカップリング剤、ニトロ系シランカップリング剤、クロロ系シランカップリング剤等を挙げることができ、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物における上記シランカップリング剤の含有量は、本発明のタイヤ用ゴム組成物中含まれる全シリカ量に対して15質量%以下である。
【0082】
タイヤ用ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ジエン系ゴムポリマーに変性オレフィン重合体及びシリカとともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してタイヤ用ゴム組成物を調製することができる。
【0083】
本発明の変性オレフィン重合体は、タイヤ用ゴム組成物への添加成分以外に、樹脂の相溶化剤、ポリオレフィンのエマルジョン、反応型接着剤、反応型ホットメルト接着剤、その他接着剤、粘着剤、封止材、シーリング材、ポッティング材、反応性可塑剤、改質剤等の用途に用いることができる。
シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤は、イソシアネート基やアルコキシシラン基の水分との反応により湿気硬化し、接着剤としての機能を発現する。本発明の変性オレフィン重合体も湿気硬化成分(アルコキシシラン基)を含む構造であり、分子量も接着剤成分に比べて低いので、接着剤の粘度調整剤として好適に使用できる。
【実施例】
【0084】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各種物性の測定は上述した内容のほか、以下の測定を行った。
【0085】
(動的粘弾性の測定)
粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:DMS 6100(EXSTAR6000))を用いて、窒素雰囲気下で以下の条件で測定を行った。
<測定条件>
測定モード:引張モード
測定温度:−150℃〜230℃のうち、−50℃、25℃及び150℃の3点を観測した。
昇温速度:5℃/min
測定周波数:1Hz
試料サイズ:長さ10mm、幅4mm、厚さ1mm(プレス成形品)
【0086】
(融点(Tm−D)の測定)
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下、−10℃で5分間保持した後、−10℃まで、5℃/分で降温させ、10℃/分で昇温させることにより得られる融解吸熱量(ΔH−D)カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップの融点(Tm−D)を測定した。
【0087】
製造例1〔(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの製造〕
窒素気流下、200ミリリットルのシュレンク瓶に(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデン)2.5g(7.2ミリモル)とエーテル100ミリリットルを加えた。
−78℃に冷却しn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(1.6モル/リットル)を9.0ミリリットル(14.8ミリモル)加えた後、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン20ミリリットルで洗浄し減圧乾燥することによりリチウム塩を白色固体として定量的に得た。
シュレンク瓶中、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデン)のリチウム塩(6.97ミリモル)をTHF(テトラヒドロフラン)50ミリリットルに溶解し、室温でヨードメチルトリメチルシラン2.1ミリリットル(14.2ミリモル)をゆっくりと滴下し12時間攪拌した。
溶媒を留去し、エーテル50ミリリットル加えて飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。
分液後、有機相を乾燥し、溶媒を除去することにより(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.9ミリモル)を得た(収率84%)。
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に、上記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.9ミリモル)とエーテル50ミリリットルを加えた。−78℃に冷却し、n− ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(1.6モル/リットル)を7.4ミリリットル(11.8ミリモル)加えた後、室温で1 2 時間攪拌した。溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン4 0 ミリリットルで洗浄することによりリチウム塩をエーテル付加体として3.06gを得た。
窒素気流下、上記で得られたリチウム塩3.06gをトルエン50ミリリットルに懸濁させた。これを−78℃に冷却し、ここへ予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1ミリモル)のトルエン(20ミリリットル)懸濁液を滴下した。滴下後、室温で6 時間攪拌した。この反応溶液の溶媒を留去後、得られた残渣をジクロロメタンにより再結晶化することにより(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの黄色微結晶0.9g(1.33ミリモル)を得た(収率26%)。
上記で得られた黄色微結晶の
1H−NMRを求めたところ、次の結果が得られた。
1H−NMR(90MHz,CDCl
3):δ0.0(s,―SiMe
3−,18H),
1.02,1.12(s,−Me
2Si−,12H),2.51(dd,−CH
2−,4H),7.1−7.6(m,Ar−H,8H)
【0088】
製造例2(ポリブテン−1の重合)
加熱乾燥した2リットルオートクレーブに、ヘプタン600ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム0.6ミリモル、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを5.0マイクロモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート15.0マイクロモルを加え、さらに水素0.02MPa導入した。重合温度70℃に昇温しながら、ブテン−1を全圧で0.20MPaまで昇圧し、消費されたブテン−1を連続的に供給することにより、全圧を0.20MPaに保ちながら60分間重合した。重合反応終了後、反応物を減圧下で乾燥させることにより、ポリブテン−1を160g得た。
得られたポリブテン−1の極限粘度[η]は0.17デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は16,800、分子量分布(Mw/Mn)は2.0、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は64.7モル%、融点(Tm−D)は65.4℃であった。
【0089】
製造例3(ポリブテン−1の重合)
製造例2において重合温度を70℃に代えて、65℃に変更した以外は製造例2と同様に実施することにより、ポリブテン−1を65g得た。
得られたポリブテン−1の極限粘度[η]は0.41デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は53,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は71.6モル%、融点(Tm−D)は70.11℃であった。
【0090】
製造例4(ポリオクテン−1の重合)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、400ミリリットルのオクテン−1、トリイソブチルアルミニウム0.4ミリモル、製造例1で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを5マイクロモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート15マイクロモルを加え、さらに水素0.05MPa導入した。85℃にて120分間重合した。重合反応終了後、エタノール5ミリリットル投入し、反応を止め、反応物を110℃、減圧下で乾燥させることにより、ポリオクテン−1を80g得た。
得られたポリオクテン−1の極限粘度[η]は0.17デシリットル/g、GPC法により測定したポリプロピレン換算重量平均分子量(Mw)は35,900、分子量分布(Mw/Mn)は2.3、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は43.1モル%、DSC測定による融点(Tm−D)は観測されなかった。
【0091】
実施例1(ポリブテン−1のシラン変性)
窒素導入管およびジムロート管、撹拌装置付の0.5リットルセパラフラスコに製造例2で得られたポリブテン−1を60g投入し、窒素雰囲気下で、バス温を用い、130℃に昇温し、昇温後、内容物が溶融後、撹拌を開始した。その後、トリメトキシビニルシラン(5.0g)、パーヘキサ25B(日本油脂社製)を0.6g投入し、150℃に昇温後、さらに160℃に昇温し30分撹拌した。降温後、得られた反応物を加熱減圧下で乾燥することにより目的物を得た。
得られたシラン変性重合体の極限粘度[η]は0.17デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は19,700、Mnは8,500、分子量分布(Mw/Mn)は2.3、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は64.7モル%、融点(Tm−D)は64.5℃、半結晶化時間は85分であった。アルコキシシリル基濃度は1.8質量%、一分子あたりの末端不飽和基数は0.65個であった。
また、得られた重合体の動的粘弾性を測定したところ、0℃のTanδが0.20、60℃のTanδが0.06であった。
【0092】
実施例2(ポリブテン−1のシラン変性)
実施例1において製造例2のポリブテン−1に代えて、製造例3のポリブテン−1に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
得られたシラン変性重合体の極限粘度[η]は0.33デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は37,900、Mnは、18,100、分子量分布(Mw/Mn)は2.1、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は71.5モル%、融点(Tm−D)は67.5℃、半結晶化時間は68分であった。アルコキシシリル基濃度は5.1質量%、一分子あたりの末端不飽和基数は0.40個であった。
また、得られた重合体の動的粘弾性を測定したところ、0℃のTanδが0.22、60℃のTanδが0.05であった。
【0093】
実施例3(ポリオクテン-1のシラン変性)
実施例1において製造例2のポリブテン−1に代えて、製造例4のポリオクテン−1に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
得られたシラン変性重合体の極限粘度[η]は0.17デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は45,400、Mnは18,600、分子量分布(Mw/Mn)は2.4、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は43.1モル%、融点(Tm−D)および半結晶化時間は観測されなかった。アルコキシシリル基濃度は2.7質量%、一分子あたりの末端不飽和基数は0.83個であった。
なお、本材料は、常温で液状のため、本材料2gにジブチルチンジラウレートを0.04g投入して撹拌し、所定の金型を用いて25℃、湿度50%で24時間硬化させて成形した。
得られた成形物について動的粘弾性を測定したところ、0℃のTanδが0.14、60℃のTanδが0.05であった。
【0094】
実施例4(樹脂組成物の調製)
SBS(クレイトン社製 B1102JSZ)40.0g及びシリカ(Merck社製Silica gel 60)8.0g、実施例2で得られたシラン変性重合体3.24g、硫黄0.64g、プロセスオイル(出光興産株式会社製、PS−32)を、300mLのマヨネーズ瓶に投入し、オイルバス190℃にて溶融後、5分間スリーワンモーターおよび撹拌翼にて5分間撹拌し、樹脂組成物を得た。
【0095】
比較製造例1(ポリブテン−1の重合)
製造例2において重合温度を70℃に代えて、50℃に、水素0.02MPaに変えて0.1MPaに変更した以外は製造例2と同様に実施することにより、ポリブテン−1を21g得た。
得られたポリブテン−1の極限粘度[η]は0.61デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は73,800、分子量分布(Mw/Mn)は2.1、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は72.8モル%、融点(Tm−D)は71.2℃であった。
【0096】
比較例1(ポリブテン−1のシラン変性)
窒素導入管およびジムロート管、撹拌装置付の0.5リットルセパラフラスコに比較製造例1で得られたポリブテン−1を17g投入し、窒素雰囲気下で、バス温を用い、130℃に昇温し、昇温後、内容物が溶融後、撹拌を開始した。その後、トリメトキシビニルシラン(1.4g)、パーヘキサ25B(日本油脂社製)を0.14g投入し、150℃に昇温後、さらに160℃に昇温し30分撹拌した。降温後、得られた反応物を加熱減圧下で乾燥することにより目的物を得た。
得られたシラン変性重合体の極限粘度[η]は0.62デシリットル/g、重量平均分子量(Mw)は74,700、Mnは32,200、分子量分布(Mw/Mn)は2.3、立体規則性(メソペンタッド分率:mmmm)は72.8モル%、融点(Tm−D)は71.0℃、半結晶化時間は80分であった。アルコキシシリル基濃度は5.1質量%、一分子あたりの末端不飽和基数は0.20個であった。
また、得られたシラン変性重合体の動的粘弾性を測定したところ、0℃のTanδが0.21、60℃のTanδが0.06であった。
【0097】
比較例2(樹脂組成物の調製)
実施例4において、実施例2で得られたシラン変性重合体に代えて、上記比較例1で得られたシラン変性重合体を用いた以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0098】
比較例3(樹脂組成物の調製)
実施例4において、実施例2で得られたシラン変性重合体を用いない以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。
【0099】
<樹脂組成物の評価>
実施例4及び比較例2、3で得られた樹脂組成物を用いて、溶融温度230℃でプレス機にて10mm×30mm×1mmのプレス板をそれぞれ作製した。得られたプレス板を縦横約1〜2mm四方、高さ約3mm以上の角柱に切り出し、液体窒素に15分以上浸漬後、試料を取り出しすぐにカミソリで凍結割断した。室温にて乾燥後、Osコーティングによる導電処理を行い、プレス板の凍結割断面を、走査型電子顕微鏡(SEM:日本電子株式会社製JSM−6480LA)を用いて加速電電圧15kV、反射電子組成像、100倍で観察し、プレス板の断面のシリカの分散状態を評価した(
図1)。
【0100】
図1に、(a)実施例4の樹脂組成物、(b)比較例2の樹脂組成物、(c)比較例3の樹脂組成物からの試料の断面のSEM写真を示す。
図1から、不飽和基が少ないシランカップリング剤を用いた場合(b)やシランカップリング剤を入れなかった場合(c)に比べて、アルコキシシランおよび不飽和基を多く含有するシランカップリング剤を用いた場合(a)のシリカの分散性が、高いことがわかる(白色部分がシリカ)。
【0101】
以上の結果をまとめて、表1に示す。
【0102】
【表1】