特許第6591565号(P6591565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591565
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】質量分析装置及びそのイオン検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/06 20060101AFI20191007BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   H01J49/06
   G01N27/62 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-562223(P2017-562223)
(86)(22)【出願日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2016051636
(87)【国際公開番号】WO2017126067
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 真一
(72)【発明者】
【氏名】照井 康
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−298637(JP,A)
【文献】 特開昭63−318062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00−49/48
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分離部に印加する電圧を変化させて所望のイオンを選択的に抽出することでチャンネルスキャン測定を行う質量分析装置であって、
前記質量分離部で分離されたイオンを検出し電気信号を出力するイオン検出部と、
該イオン検出部の出力からイオン量を測定するイオン量測定部と、
イオン量測定部の出力からイオン検出量を補正するイオン量補正部を設け、
前記イオン量補正部は、チャンネルスキャンの過程において、1チャンネル前のイオン検出量に基づいて現チャンネルで検出されたイオン検出量の補正を行ない、1チャンネル前のイオン検出量、1チャンネルの測定時間およびチャンネル切り替えに要するインターバル時間をもとに、現チャンネルのイオン補正量を決定することを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
質量分離部に印加する電圧を変化させて所望のイオンを選択的に抽出することでチャンネルスキャン測定を行う質量分析装置であって、
前記質量分離部で分離されたイオンを検出し電気信号を出力するイオン検出部と、
該イオン検出部の出力からイオン量を測定するイオン量測定部と、
イオン量測定部の出力からイオン検出量を補正するイオン量補正部を設け、
前記イオン量補正部は、チャンネルスキャンの過程において、1チャンネル前のイオン検出量に基づいて現チャンネルで検出されたイオン検出量の補正を行ない、
濃度が異なる複数の測定試料について、イオンを遮断した時のイオン検出量の減衰過程を測定し、イオン遮断前のイオン検出量に関連付けて補正量を算出する補正情報算出部を備え、
該補正情報算出部は、イオン遮断前のイオン検出量と補正量の関係を数式近似し、導出された近似式の情報を記憶する補正情報記憶部を備えることを特徴とする質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置及びそのイオン検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2011−102714号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、「MSスペクトルを採取する行程にノイズ検出行程を設けたので、イオン検出信号と検出されたノイズとを比較することにより、ノイズを除去することができ、また、測定中に変化するサンプル並びにキャリアガスの変動に対応する中性粒子ノイズの除去を行なうことができる。」ことが記載されている。加えて、「スペクトルアクイジッション期間とノイズアクイジッション期間で検出した信号とノイズの比較演算を行って、ノイズ成分の除去を行なうことができる。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−102714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
質量分析装置として四重極マスフィルタを用いた四重極型質量分析計は、小型で比較的安価であることから最も広く利用されている質量分析装置の一つである。四重極型質量分析計は、4本の円柱状電極から構成される。円柱状電極は横断面において円の中心を正方形の頂点に置いて組み合わされる。固定された円柱状電極の隣り合った電極に、それぞれに正負の直流電圧と交流電圧を重畳して印加すると、電荷を持ったイオンが円柱状電極の中を通過する際に振動しながら通過し、電圧及び周波数に応じて特定のイオンのみが安定な振動をして電極内を通過する。一方、それ以外のイオンは電極内を通過中に振動が大きくなり、電極に衝突し通過することができなくなる。この直流電圧と交流電圧の比を一定に保ちつつ交流電圧を変化させる事で、特定の質量電荷比(m/z)を有するイオンのみが四重極マスフィルタを通過し、所定の質量電荷比に対するイオン量を収集することができる。
【0005】
質量分析装置におけるイオンの検出方法には、四重極マスフィルタを通過したイオンを多段のダイノードで構成された二次電子増倍管を用いて直接検出する方式や、質量の大きなイオンを適切な感度で検出可能なシンチレータを用いた検出方式がある。シンチレータを用いた検出方式では、四重極マスフィルタを通過したイオンは、まずコンバージョンダイノード(CD)に衝突する。次に、CDの表面から放出された電子は、シンチレータに衝突して光に変換され、これを光電子増倍管で検出するものである。前者の直接検出方式は構成が簡単であり、後者のシンチレータ方式は高感度・長寿命の点で優れているという特徴がある。
【0006】
特許文献1に記載の従来技術は、測定中に変化するサンプル並びにキャリアガスの変動に対応する中性粒子ノイズの除去を行なうことが述べられているが、イオン検出器の特性が起因となるノイズ成分については考慮されていない。
【0007】
特に、チャンネルスキャン測定において、例えば、イオン検出量が多いチャンネル1からイオン検出量が少ないチャンネル2に切り替わる場合、高濃度チャンネルからのクロストークにより低濃度チャンネルのイオン量検出精度が低下する。シンチレータ方式では、チャンネル1の入射電子によるシンチレータの残光がチャンネル2の測定区間まで影響を及ぼし、チャンネル2のイオン検出量にチャンネル1の残光成分が加わり、チャンネル2のイオン検出精度が低下する。また、シンチレータへの入射電子を遮断してから、シンチレータの発光が減衰して停止するまでに数ms〜数十msを要する。このため、スキャンサイクル中に適宜ノイズを測定する従来技術の場合、減衰過程を含めたノイズ量を検出することは困難であるという課題があった。また、直接検出方式の場合も、測定インターバルをより短くすると同様の問題がある。
【0008】
本発明の目的は、他チャンネルからのクロストークによるイオンの誤検出を取り除くことにより、イオン量の検出精度を高めることができる質量分析装置及びそのイオン検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、その一例を挙げるならば、質量分離部に印加する電圧を変化させて所望のイオンを選択的に抽出することでチャンネルスキャン測定を行う質量分析装置であって、質量分離部で分離されたイオンを検出し電気信号を出力するイオン検出部と、イオン検出部の出力からイオン量を測定するイオン量測定部と、イオン量測定部の出力からイオン検出量を補正するイオン量補正部を設け、イオン量補正部は、チャンネルスキャンの過程において、1チャンネル前のイオン検出量に基づいて現チャンネルで検出されたイオン検出量の補正を行うように構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イオン量を高精度に検出可能な質量分析装置及びそのイオン検出方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例における質量分析装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】本実施例におけるチャンネルスキャン測定の動作シーケンスである。
図3】本実施例における補正情報の取得方法を示すフローチャートである。
図4】本実施例におけるイオン遮断時におけるイオン検出量の変動の一例を示すグラフである。
図5】本実施例におけるイオン遮断前のイオン検出量と区間ΔT2のイオン検出量の関係の一例を示すグラフである。
図6】本実施例における補正情報記憶部に記憶されるデータベースの一例である。
図7】本実施例における表示部に表示されるイオン検出量補正情報の一例である。
図8】本実施例における補正量カーブの表示方法の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本実施例における質量分析装置100の構成を示すブロック図である。図1において、ガスクロマトグラフや液体クロマトグラフなどの前処理によって生成された測定試料、あるいは他の方法により供給された測定試料は、イオン導入部101で測定試料に電荷が与えられてイオン化が行われる。イオン化の方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、電子イオン化(EI)や化学イオン化(CI)などが考えられ、測定試料の性質に応じたイオン化方法が選択される。
【0014】
イオン化された測定試料は、質量分離部102においてイオンの質量電荷比(m/z)に応じて分離される。ここで、mはイオンの質量、zはイオンの帯電価数である。質量分離部102は、4本の円柱状電極から構成される四重極型質量分析計であり、固定された円柱状電極の隣り合った電極に、直流電圧と交流電圧の比を一定に保ちつつ交流電圧を変化させることで、特定の質量電荷比(m/z)を有するイオンのみが四重極マスフィルタを通過する。四重極型質量分析計に印加される直流電圧及び交流電圧は、電圧発生部108より供給される。
【0015】
なお、質量分離部102は、3つの四重極型質量分析計から構成されるトリプル四重極型質量分析計など、より質量選択性を高める構成であってもよい。トリプル四重極型質量分析計では、まず第1の四重極型質量分析計によって測定試料由来の特定イオンのみを取り出し、次に取り出したイオンを第2の四重極型質量分析計によってガスなどに衝突させることで解離させ、フラグメントイオンを発生させる。そして、フラグメントイオンを第3の四重極型質量分析計によって質量分離を行い、目的イオン成分のみを通過させるものである。トリプル四重極型質量分析計の場合、電圧発生部108によって、第1〜第3の四重極型質量分析計の各々に対し、目的イオン成分のみが四重極マスフィルタを通過するように適切な直流電圧及び交流電圧が印加される。
【0016】
質量分離部102を通過したイオンは、イオン検出部103に供給される。イオン検出部103は、イオンの衝突により二次電子を放出するコンバージョンダイノードと、コンバージョンダイノードから放出された二次電子を入射して光に変換するシンチレータと、シンチレータの出力光を検出する光検出器を備えており、イオンがパルス状の電気信号(以下、パルス信号)となって、イオン量測定部104に出力される。なお、イオン検出部103は、シンチレータを用いず、二次電子イオンを光検出器を用いて直接検出する方式でも良い。
【0017】
イオン量測定部104では、所定の間隔(例えば、1us、10us、100usなど)で、受信したパルス信号の数、またはパルス信号の強度(面積)の総和を算出し、イオン量補正部105に出力する。
【0018】
イオン量補正部105は、検出量補正部106、補正量取得部107、補正情報算出部109、補正情報記憶部110を含み、イオン量測定部104から供給されたイオン検出量に対し、後述する補正処理を加え、制御部111に出力する。
【0019】
制御部111は、受信したイオン検出量を用いて各種のデータ解析処理を行い、マススペクトルなどに代表される解析結果をモニタ画面などで構成される表示部112に出力する。
【0020】
次に、本実施例の前提となる、チャンネルスキャン測定の動作シーケンスについて説明する。図2は3種類のイオンについて、イオン量を時分割で繰り返して検出するチャンネルスキャン測定の様子を示している。1スキャンサイクルは、1チャンネルの測定区間とインターバル区間から構成され、測定区間の測定時間とインターバル区間のインターバル時間はユーザによって決定することができるパラメータである。
【0021】
本実施例の質量分析装置100では、測定を実施する前に、イオン検出量の補正に必要な補正情報の算出・記憶を行う必要がある。以下、制御部111により実行される補正情報を取得するための動作を説明する。
【0022】
制御部111は、およその濃度が異なる複数の測定試料(例えば、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppmなど)をイオン導入部101より質量分離部102に供給し、それぞれの濃度の測定試料について、イオン検出部103へのイオンの供給を遮断した際のイオン量測定部104において測定されるイオン検出量の減衰特性を取得し、この結果をもとに補正情報を算出するものである。
【0023】
図3は、本実施例の質量分析装置100における補正情報の取得方法を示すフローチャートである。図3において、制御部111は、まずイオン導入部101より補正情報取得用の測定試料を質量分離部102に導入する(S201)。補正情報算出部109では、このときにイオン量測定部104において検出されたイオン量を取得する(S202)。次に、制御部111は、電圧発生部108に対して、質量分離部102において全てのイオンが遮断する(通過しない)電圧を印加し、イオン検出部103へのイオンの供給を遮断する(S203)。イオン量測定部104は、質量分離部102がイオンを遮断したタイミングでイオン量の測定を開始し、補正情報算出部109では測定されたイオン量を所定の時間(例えば、100msなど)取得する(S204)。そして、制御部111は、上記処理を他の濃度の測定試料に対しても同様に実行する(S205)。この結果、補正情報算出部109では、各濃度の測定試料ごとに、イオンを遮断した時のイオン検出量の減衰特性が得られ、この情報を用いて補正情報を算出し、補正情報記憶部110に格納する(S206)。
【0024】
次に、図4図6を用いて、補正情報の算出方法を説明する。
【0025】
図4は、補正情報算出部109において受信したイオン検出量の時刻変動を示すグラフである。図4(a)は、測定試料の濃度が高くイオン遮断前のイオン検出量が多い場合、(c)は測定試料の濃度が低くイオン検出量が少ない場合、(b)は(a)と(c)の中間のイオン検出量であった場合を示している。ここで、図中のT0はイオンを遮断した時刻、ΔT1=(T1−T0)はスキャンサイクルにおけるチャンネル間のインターバル時間、ΔT2=(T2−T1)は1チャンネルの測定時間である。本実施例の質量分析装置100では、1チャンネルの測定時間とインターバル時間(以下、測定パラメータ)は、複数の組合せが提供され、表示部112を介してユーザが任意に選択することができる。補正情報算出部109では、各測定パラメータごとに決定される区間ΔT2を設定し、区間ΔT2に含まれるイオン検出量の総和を求める。
図5は、一測定パラメータにおけるイオン遮断前のイオン検出量と区間ΔT2のイオン検出量の関係を示したグラフであり、実測した各測定点(a,b,c)をもとに近似式を計算し、近似式の係数情報を補正情報記憶部110に記憶する。ここで、区間ΔT2のイオン検出量は、スキャンサイクルにおける次チャンネルのイオン検出量に影響を与える誤差であり、すなわち、補正量となる。
図6は、補正情報記憶部110に記憶されるデータベースの一例である。図6では、全ての測定パラメータについて、近似式の係数情報(α、β)が記憶されている。この例では、図5で示したイオン遮断前のイオン検出量と区間ΔT2のイオン検出量(補正量)の関係を直線近似(ΔT2のイオン検出量=α×遮断前のイオン検出量+β)で表現しているが、これに限定するものではなく、さらに複数の測定点を実測して求め、曲線近似で表現してもよい。
【0026】
次に、上記のように補正情報記憶部110に補正情報がデータベース化されている状態において、本実施例における質量分析装置100の動作を説明する。なお、測定を開始する前に測定パラメータについては、表示部112を介してユーザからの指示に基づいて選択されているものとする。
【0027】
図1において、イオン導入部101では測定試料がイオン化され、質量分離部102に供給される。質量分離部102では、電圧発生部108より適切な電圧が印加され、目的イオン成分のみが四重極マスフィルタを通過する。質量分離部102を通過したイオンは、イオン検出部103に供給され、イオンがパルス状の電気信号(パルス信号)に変換され、イオン量測定部104に出力される。イオン量測定部104では、1チャンネルの測定時間において受信したパルス信号の数、またはパルス信号の強度(面積)の総和をイオン検出量として算出し、イオン量補正部105に出力する。
【0028】
イオン量測定部104より出力されたイオン検出量は、イオン量補正部105に含まれる検出量補正部106及び補正量取得部107に供給される。補正量取得部107では、受信したイオン検出量をもとに、補正情報記憶部110より補正値を取得し、検出量補正部106に出力する。具体的には、補正情報記憶部110に記憶されているデータベース(図6)を参照し、対象測定パラメータの係数情報(α、β)を取得する。そして、近似式(補正値=α×イオン検出量+β)を用いて、補正値を算出する。
【0029】
検出量補正部106では、イオン量測定部104より受信したイオン検出量と、補正量取得部107より受信した1チャンネル前のイオン検出量に基づく補正値を減算し、減算結果を制御部111に供給する。制御部111は、受信したイオン検出量をもとに各種データ解析処理を行い、マススペクトルなどの解析結果をモニタ画面などで構成される表示部112に出力する。
【0030】
図7は、表示部112におけるイオン検出量の補正処理に関連する情報を示す表示例である。図7において、イオン検出量の補正処理を適用するかどうかをユーザが選択できるようにしたことに加え、測定パラメータ(1チャンネルの測定時間、インターバル時間)を選択することで、補正処理後のイオン検出量と補正値の関係(補正量カーブ)を図示し、ユーザに提示することも可能である。
【0031】
図8は、図7における補正量カーブに対し、検出器異常エリアを付加したものである。図8において、イオン検出器の動作が正常の場合は、補正量カーブは検出器異常エリアを含まないが、図示したような検出器異常エリアが含まれる補正結果が得られた場合は、イオン量の遮断特性が異常であると判断し、イオン検出器の点検あるいは交換をユーザに促すことができる。検出器異常の原因として、例えば、シンチレータの動作不良や経年劣化により、シンチレータの発光特性が変化したことが挙げられる。
【0032】
以上、本実施例の質量分析装置は、測定前に、複数の異なる濃度のイオンについて、イオン遮断時におけるイオン検出量の減衰特性を遮断前のイオン検出量に関連付けて記憶する。そして、測定時は、現チャンネルのイオン検出量から、1チャンネル前のイオン検出量に基づく補正値を減算する構成とした。したがって、特に、チャンネル切り替えによってイオン検出量が大きく減少した場合に、1チャンネル前の高濃度チャンネルによる残留パルス(主にシンチレータの残光が起因)によって低濃度の現チャンネルのイオン検出精度が低下する問題を回避し、低濃度チャンネルであっても高精度な定量測定を実現することができる。
【0033】
以上のように、本実施例は、質量分離部に印加する電圧を変化させて所望のイオンを選択的に抽出することでチャンネルスキャン測定を行う質量分析装置であって、質量分離部で分離されたイオンを検出し電気信号を出力するイオン検出部と、イオン検出部の出力からイオン量を測定するイオン量測定部と、イオン量測定部の出力からイオン検出量を補正するイオン量補正部を設け、イオン量補正部は、チャンネルスキャンの過程において、1チャンネル前のイオン検出量に基づいて現チャンネルで検出されたイオン検出量の補正を行うように構成する。
【0034】
また、質量分離して抽出したイオンを測定することでチャンネルスキャン測定を行う質量分析装置のイオン検出方法であって、チャンネルスキャンの過程において、質量分離して抽出したイオンの現チャンネルで検出されたイオン検出量を、1チャンネル前のイオン検出量に基づいて補正するように構成する。
【0035】
また、質量分離して抽出したイオンを測定することでチャンネルスキャン測定を行う質量分析装置であって、1チャンネルの測定時間とインターバル時間を選択する設定値入力画面を有するように構成する。
【0036】
これにより、イオン量を高精度に検出可能な質量分析装置及びそのイオン検出方法を提供することができる。
【0037】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
100…質量分析装置、101…イオン導入部、102…質量分離部、103…イオン検出部、104…イオン量測定部、105…イオン量補正部、106…検出量補正部、107…補正量取得部、108…電圧発生部、109…補正情報算出部、110…補正情報記憶部、111…制御部、112…表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8