(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0015] 本開示の様々な実施形態をこれより詳細に参照していく。これらの実施形態の一又は複数の例が図中に示されている。図面についての以下の説明の中で、同じ参照番号は、同じ構成要素を表している。概して、個々の実施形態に関する相違のみが説明される。各実施例は、本開示の説明のために提供されているが、本開示を限定することが意図されているわけではない。更に、1つの実施形態の一部として図示又は説明されている特徴は、更なる実施形態を創出するために、他の実施形態で使用されることも、他の実施形態と併用されることも可能である。本記載には、このような修正例及び変形例が含まれることが意図されている。
【0017】
[0016] 真空システムの真空チャンバ内で基板及び/又はマスクを保持し搬送するため、真空堆積システムなどの真空システム内ではキャリアが使用可能である。一実施例として、基板がキャリアによって支持される際に、一又は複数の材料層が基板上に堆積されうる。有機発光デバイスなどの用途では、基板上に堆積される有機層の高い純度及び均一性は利点になりうる。
【0018】
[0017] 本開示のキャリアは、キャリアの操作及び/又は運動を制御するために使用される制御デバイスなど、一又は複数の電子デバイスを収容するハウジングを有する。ハウジングは空間周囲のエンクロージャ又は凹部になりうる。ハウジング、エンクロージャ又は凹部は密閉可能である。幾つかの実施形態によれば、ハウジング又は空間は、キャリアが真空チャンバ内、すなわち、真空環境内に配置されている場合でも、気体環境を含む。本開示のキャリアは、ワイヤ又はケーブルによってキャリアの周囲に機械的に接続されていない、自律的な実体になりうる。キャリアの移動中の粒子生成は最小限に抑えられるため、基板上に堆積された層の純度及び均一性の改善が実現可能である。更に、気体環境を有するハウジング又は凹部、すなわち、エンクロージャは密閉されるため、真空チャンバ内部の真空は損なわれることはない。しかも、困難な領域内に、すなわち、一又は複数の電子部品を有する領域内に真空条件を確立する必要がないため、真空チャンバ内部の真空は改善することができる。更に、ハウジング又は凹部をしっかりと密封された真空に保つことによって、一又は複数の電子デバイスのガス放出は真空チャンバ内部の真空環境に影響しない。
【0019】
[0018]
図1Aは、本書に記載の実施形態による、真空システム内で使用するためのキャリア100の概略図を示す。
図1B及び
図Cは、
図1Aのキャリア100の断面図を示す。
【0020】
[0019] キャリア100は、真空処理中に使用される基板10及び/又はマスク(図示せず)を保持するように構成されている。幾つかの実装では、キャリア100は基板10とマスクの両方を支持するように構成可能である。更なる実装では、キャリア100は基板10又はマスクのどちらかを支持するように構成することもできる。このような場合、キャリア100はそれぞれ「基板キャリア」及び「マスクキャリア」と称されうる。
【0021】
[0020] キャリア100は支持面を提供する支持構造体又は本体110を含むことが可能で、支持面は、例えば、基板10の背面に接触するように構成された基本的に平坦な面になりうる。特に、基板10は、背面に向かい合い、真空堆積プロセスなどの真空処理中に層が堆積される前面(「処理面」とも称される)を有することができる。
【0022】
[0021] キャリア100は、一又は複数の電子デバイス130を収容するように構成されたハウジング120又は凹部(すなわち、空間のエンクロージャ)を含む。ハウジング又は凹部は、真空システム内でのキャリア100の使用中に、例えば、ハウジング120内部の気体環境を封じ込める(維持又は保持する)ために、密閉される。言い換えるならば、ハウジング120又は凹部は、気体が真空システムの真空チャンバへ漏れないように、ハウジング120内部に密閉された気体を封じ込める。ハウジング120は、気体環境が封じ込められる空間を囲む又は画定することができる。幾つかの実施形態によれば、気体環境は、大気、窒素、ヘリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される気体を封じ込めることができる。一実施例として、真空システムの真空チャンバに接続された漏れ検出器がキャリア100に漏れがあるかどうかを検出できるように、ヘリウムが使用できる。
【0023】
[0022] 本書のいたるところで使用されている「真空(vacuum)」という語は、例えば10mbar未満の真空圧を有する工業的真空の意味に理解されうる。真空チャンバ内の圧力は、10
−5mbarと約10
−8mbarとの間、具体的には、10
−5mbarと10
−7mbarとの間、より具体的には、約10
−6mbarと約10
−7mbarとの間であってよい。真空チャンバ内部に真空を発生させるために真空チャンバに接続された、ターボポンプ及び/又はクライオポンプなどの一又は複数の真空ポンプが提供されうる。
【0024】
[0023] 幾つかの実施形態によれば、気体環境の気体圧力、すなわち、ハウジング120内部の圧力は、真空チャンバ内の圧力の少なくとも2倍である。一実施例として、気体環境の気体圧力は10
−7mbar以上、具体的には10
−5mbar以上、具体的には10
−3mbar以上、具体的には1mbar以上、具体的には10mbar以上、及び更に具体的には100mbar以上である。幾つかの実施形態では、気体環境の気体圧力は、ほぼ環境気圧で、すなわち、15°Cでほぼ1barである。ハウジング内部の気体圧力は時間とともに変化しうること、例えば、層堆積プロセス中の温度上昇によって変化しうることを理解されたい。
【0025】
[0024] 幾つかの実施形態によれば、ハウジング120又はエンクロージャはキャリア100の本体110内の凹部によって提供されうる。他の実施形態では、ハウジング120は、キャリア100に取り付けられる(又は装着される)ボックスなどの、分離された要素として提供されうる。ハウジング120は、「大気ボックス(atmosphere box)」又は「大気的ボックス(atmospheric box)」とも称されうる。幾つかの実装では、ハウジング120、及びハウジング120によって囲まれた空間は、1cm
3以上、具体的には10cm
3以上、具体的には50cm
3以上、具体的には100cm
3以上、及び具体的には200cm
3以上を有しうる。
【0026】
[0025] キャリア100は、線形搬送路などの搬送路に沿って、真空チャンバを通って、具体的には堆積領域を通って搬送を行うように構成されうる。幾つかの実装では、キャリア100は、水平方向になりうる搬送方向2に搬送を行うように構成されている。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、キャリア100は、真空システム内で非接触浮上及び/又は非接触搬送を行うように構成されている。一実施例として、キャリア100は、搬送構成部を使用して、真空システム内に、具体的には真空チャンバ内に搬送されうる。搬送構成部は、真空チャンバ内でキャリアの非接触浮上及び/又はキャリアの非接触搬送を行うように構成可能である。
【0027】
[0026] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、キャリア100は、基板及び/又はマスクを実質的に垂直な配向に保持又は支持するように構成されている。本開示全体において使用される「実質的に垂直に」という表現は、特に基板の配向を指す場合、垂直方向又は配向から±20°以下(例えば、±10°以下)の偏差を許容することであると理解される。例えば、垂直配向からある程度の偏差を有する基板支持体がより安定した基板位置をもたらすことができるので、このような偏差が設けられうる。更に、基板が前方に傾いた場合、基板表面に達する粒子はより少なくなる。ただし、例えば、真空堆積処理中の基板配向は、実質的に垂直であるとみなされ、これは、水平の基板配向とは異なるとみなされる。水平の基板配向は、水平±20°以下であるとみなされうる。
【0028】
[0027] 「垂直方向」又は「垂直配向」という用語は、「水平方向」又は「水平配向」と区別されると理解される。つまり、「垂直方向」又は「垂直配向」は、例えば、キャリア及び基板10の、実質的に垂直な配向に関連し、正確な垂直方向又は垂直配向からの数度(例えば、10°まで、或いは15°までも可)の偏差は、依然として「実質的に垂直な方向」又は「実質的に垂直な配向」と見なされる。垂直方向は、重力に対して実質的に平行でありうる。
【0029】
[0028] ここで
図1B及び
図Cを参照すると、ハウジング120はそれぞれ開放された状態及び閉鎖された状態で示されている。具体的には、一又は複数の電子デバイス130の保守及び/又は交換のため、ハウジング120は開放可能である。ハウジング120は、例えば、保守又は修理のため、キャリア100が真空システムの外にあるときには、開放されうる。ハウジング120はまた、ハウジング120内部に気体を密閉するため閉鎖されうる。
【0030】
[0029] 幾つかの実施形態によれば、キャリア100、及び具体的にはハウジング120は、一又は複数の開口122を含む。一又は複数の開口122は、ハウジング120へのアクセス、及び具体的には、ハウジング内に提供される一又は複数の電子デバイス130へのアクセスを可能にするように構成されうる。一又は複数の開口122は、例えば、前面に載せられた基板10及び/又はマスクを有するキャリア100の側面又は表面に提供されうる。しかしながら、一又は複数の開口122は、
図1B及び
図1Cに示したように、例えば、前面に向かい合うキャリア100の背面など、キャリア100の別の場所に設けることもできる。
【0031】
[0030] 幾つかの実装では、キャリア100は、ハウジング120内部の気体環境を保つ又は維持するため、ハウジング120を密閉するように構成された閉鎖要素を含む。一実施例として、閉鎖要素124は、ハウジングを基本的に真空気密に密閉するように構成されうる。幾つかの実施形態では、閉鎖要素124は一又は複数の開口122を密閉するように構成されうる。一実施例として、1つの開口とその開口を密閉するように構成された1つの閉鎖要素が提供されうる。別の実施例では、複数の開口と複数の閉鎖要素が提供され、複数の閉鎖要素の各閉鎖要素は複数の開口の各開口を密閉するように構成されうる。
【0032】
[0031] 幾つかの実施形態では、閉鎖要素124は、ハウジング120、及び具体的には一又は複数の開口122を覆うように構成された蓋又はプレートを含む、或いは蓋又はプレートである。一実施例として、ハウジング120又はエンクロージャは、キャリア100の本体110の凹部として提供されうる。閉鎖要素124は、例えば、閉鎖要素124を凹部に挿入することによって、又は閉鎖要素124を凹部の上に置くことによって、凹部を覆うように構成されうる。別の実施例では、ハウジング120は、キャリア100、及び具体的には本体110に取り付けられる(又は装着される)ボックスなどの、分離された要素によって提供されうる。閉鎖要素124は、ボックスを閉じるための蓋であってもよい。
【0033】
[0032] 幾つかの実施形態によれば、キャリア100は、閉鎖要素124をキャリア100に締結して、ハウジング120又はエンクロージャを密閉するように構成された締結構成部140を含みうる。一実施例として、締結構成部140は、閉鎖要素124をキャリア100に、具体的には本体110に固定的に取りつけるように構成されうる。締結構成部140は、機械的締結デバイス、電気的締結デバイス、磁気的締結デバイス、及び電磁気的締結デバイスからなる群から選択される、一又は複数の締結デバイスを含みうる。機械的な第1のデバイスは、閉鎖要素124を機械的に固定するクランプ、ねじ、及びボルトのうちの少なくとも1つを含みうる。電気的締結デバイスは、電気的固定デバイスを含みうる。磁気的締結デバイス及び電磁気的締結デバイスは、磁気力又は電磁気力を使用して閉鎖要素を固定する、永久磁石及び/又は電磁石などの磁石を含みうる。
【0034】
[0033] 幾つかの実施形態によれば、ハウジング120又はエンクロージャ、例えば、凹部を密閉するため、一又は複数の密閉デバイスが閉鎖要素124に提供されうる。一実施例として、一又は複数の密閉デバイスが閉鎖要素124と本体110との間に配置されうる。一又は複数の密閉デバイスは、例えば、Oリング又は銅のシールであってよい。一又は複数の密閉デバイスは、ハウジング120をほぼ気密に又は真空気密に密閉するように構成されうる。ここで、ハウジングに注目する。ハウジングは、密閉可能なエンクロージャ又は凹部になりうる。
【0035】
[0034] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、キャリア100は、一又は複数の位置合わせデバイスを含む。一又は複数の位置合わせデバイスは、基板10とマスクとの間の相対位置を揃えるように構成されうる。一実施例として、一又は複数の位置合わせデバイスは電気アクチュエータ又は空気アクチュエータになりうる。2つ以上の位置合わせデバイスは、例えば、線形位置合わせアクチュエータになりうる。幾つかの実行形態では、一又は複数の位置合わせデバイスは、ステッパアクチュエータ、ブラシレスアクチュエータ、DC(直流)アクチュエータ、ボイスコイルアクチュエータ、及び圧電アクチュエータからなる群から選択された、少なくとも1つのアクチュエータを含みうる。「アクチュエータ(actuator)」という語は、ステッパモータなどのモータを表しうる。
【0036】
[0035] 2つ以上の位置合わせアクチュエータは、約±1マイクロメートル未満の精度で基板とマスクを互いに対して移動又は配置するように構成されうる。一実施例として、一又は複数の位置合わせデバイスは、マスク又はマスクを支持するマスク支持体を移動又は配置するように構成されうる。オプションにより、又は代替的に、一又は複数の位置合わせデバイスは、基板又は基板を支持する基板支持体を移動又は配置するように構成されうる。本開示のキャリアは、マスク支持体及び/又は基板支持体を含むことができる。位置合わせの精度は、z方向(例えば、垂直方向1)、x方向(例えば、搬送方向2)、及びy方向(方向3)のうちの少なくとも1つで、約±0.5マイクロメートルになりうる。
【0037】
[0036] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、一又は複数の電子デバイス130は、キャリア100の動きを制御するための第1の制御デバイス、キャリア100の一又は複数の操作パラメータを制御するための第2の制御デバイス、位置合わせ制御デバイス、無線通信デバイス、圧力センサ、及び電源からなる群から選択されうる。例えば、電源はバッテリ又はバッテリシステムになりうる。
【0038】
[0037] キャリア100の動きを制御する第1の制御デバイスは、線形搬送路などの搬送路に沿って、真空チャンバを介して、具体的には堆積領域を介してキャリア100の動きを制御するように構成されうる。第2の制御デバイスは、基板及び/又はマスクの保持動作を制御するように構成されうる。一実施例として、一又は複数の操作パラメータには、限定するものではないが、キャリア100で基板10及びマスクを保持するため、基板10及び/又はマスク上で作用する力が含まれうる。具体的には、キャリアは静電チャックであってもよく、一又は複数の操作パラメータは静電チャックの操作パラメータである。静電チャックの動作は
図2に関連して更に説明される。キャリアは「スマートキャリア」とみなされうる。一又は複数の電子デバイスは、例えば、バッテリの不具合を評価するように、及び/又は、ガラス基板などの基板の取り外しの不具合を評価するため、例えば、Eチャックの漏れ電流を測定するように、構成されうる。位置合わせ制御デバイスは、キャリア100、基板10、及びマスクのうちの少なくとも1つの位置合わせプロセスを制御するように構成されうる。一実施例として、位置合わせ制御デバイスは、基板10とマスクを互いに対して位置合わせするための一又は複数の位置合わせデバイスを制御するように構成されうる。オプションにより、又は代替的に、位置合わせ制御デバイスは、真空チャンバ内のキャリア100の配向を揃えるように構成されうる。
【0039】
[0038] 圧力センサは、特に真空システムのキャリアの使用中に、ハウジング120内部の気体圧力を測定するように構成されうる。圧力センサは、連続的に、又は所定の時間間隔で気体の圧力を測定することができる。測定された気体の圧力は、キャリア100から離れたモニタリングデバイスに送信されうる。一実施例として、真空チャンバによって提供される真空環境内にキャリア100がある間に、圧力センサがハウジング120内の圧力低下を測定した場合には、気体がハウジング120から真空環境へ漏れていると判断することが可能で、これによって適切な手段を取ることができる。
【0040】
[0039] 無線通信デバイスは、自律的キャリアの一又は複数の電子デバイス130とキャリア100の周囲との間の無線通信を提供するように構成されうる。例えば、キャリアの動きが抑制、又は回避されることにより、有線接続を提供する必要はなくなり、真空チャンバ内の粒子生成もない。一実施例として、無線通信デバイスは、圧力センサによって測定された気体の圧力をモニタリングデバイスに送信するように構成された送信機を含むことができる。オプションにより、又は代替的に、無線通信デバイスは、キャリア100の動き、位置合わせプロセス、及び/又は操作パラメータなど、制御のための制御コマンドなどのデータを受信するように構成された無線受信器を含みうる。
【0041】
[0040] ハウジング120内に含まれる電源は、一又は複数の電子デバイス130の電源となりうる。幾つかの実装では、電源は、基板10及び/又はマスクを取り付けるための保持力の生成に使用される静電チャックの電源になりうる。オプションにより、又は代替的に、電源は、圧力センサ及び/又は無線通信デバイスの動作のための電力を供給しうる。一実施例として、電源はバッテリ又はバッテリシステムになりうる。
【0042】
[0041] 本書に記載された実施形態は、例えば、OLEDディスプレイ製造のための大面積基板上の蒸着に利用されうる。特に、本書に記載の実施形態による構造体及び方法が提供の対象である基板は、大面積基板である。例えば、大面積基板又はキャリアは、約0.67m
2の表面積(0.73m×0.92m)に対応するGEN4.5、約1.4m
2の表面積(1.1m×1.3m)に対応するGEN5、約4.29m
2の表面積(1.95m×2.2m)に対応するGEN7.5、約5.7m
2の表面積(2.2m×2.5m)に対応するGEN8.5、又は更に約8.7m
2の表面積(2.85m×3.05m)に対応するGEN10になりうる。GEN11及びGEN12などの更に次の世代及びそれに相当する基板表面積を同様に実装してもよい。GEN世代の半分のサイズもOLEDディスプレイ製造において提供されうる。
【0043】
[0042] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、基板の厚さは、0.1〜1.8mmになりうる。基板の厚さは、約0.9mm以下、例えば、0.5mmになりうる。本書で使用される「基板」という用語は、具体的には、例えば、ウエハ、サファイアなどの透明結晶体のスライス、又はガラス板のような実質的非可撓性基板を含む。しかしながら、本開示はこれらに限定されず、「基板」という語は例えばウェブ又はホイル等の可撓性基板も包含しうる。「実質的非可撓性」という用語は、「可撓性」とは区別して理解される。具体的には、実質的非可撓性基板は、例えば、0.9mm以下(0.5mm以下等)の厚さを有するガラス板でも、ある程度の可撓性を有することができるが、実質的非可撓性基板の可撓性は、可撓性基板と比べて低い。
【0044】
[0043] 本書に記載の実施形態によれば、基板は、材料を堆積させるのに適した任意の材料から作られてもよい。例えば、基板は、ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスなど)、金属、ポリマー、セラミック、複合材料、炭素繊維材料、ならびに堆積プロセスによってコーティングできる任意の他の材料及び材料の組合せからなる群から選択された材料から作られたものとすることができる。
【0045】
[0044] 「マスキング」という用語は、基板10の一又は複数の領域の堆積を低減すること及び/又は妨げることを含みうる。マスキングは、例えば、コーティングされる領域を画定するときに有用になりうる。幾つかの用途では、基板10の一部だけがコーティングされ、コーティングすべきでない部分はマスクによって覆われる。
【0046】
[0045]
図2は、本書に記載の更なる実施形態による、真空システムで使用されるキャリア200の概略図を示す。本開示によるキャリア200は、キャリア200で基板10及び/又はマスク20を保持するための静電力を提供する静電チャック(Eチャック)になりうる。一実施例として、キャリア200は、基板10及びマスク20のうちの少なくとも1つに作用する引力を提供するように構成された電極構成部220を含む。ハウジング又はエンクロージャ、例えば、凹部(図示せず)は、電極構成部220に隣接するように提供されうる。
【0047】
[0046] 幾つかの実施形態によれば、キャリア100は、支持面212、支持面212で基板10及びマスク20のうちの少なくとも1つを保持するための引力をもたらすように構成された複数の電極を有する電極構成部220、並びにコントローラを含む。コントローラは、気体雰囲気を有するハウジング内部に配置された一又は複数の電子デバイスに含まれうる。コントローラは、引力(「チャック力」とも称される)を提供するため、電極構成部220に一又は複数の電圧を印加するように構成されうる。
【0048】
[0047] 電極構成部22の複数の電極222は、本体110に埋め込まれてもよく、本体110の上に配置するなどして提供されてもよい。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、本体110は誘電プレートなどの誘電体である。誘電体は、誘電材料、好ましくは、熱分解窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、アルミナ、又は等価材料などの高熱伝導性誘電体材料から製造されうるが、ポリイミドなどの材料からも作られうる。幾つかの実施形態では、ファインメタルストリップなどの複数の電極222は、誘電体プレートの上に配置され、薄い誘電体層で覆われてもよい。
【0049】
[0048] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、キャリア200は、複数の電極222に一又は複数の電圧を印加するように構成された、一又は複数の電源を含む。気体雰囲気を有するキャリア200の密閉されたハウジング内に配置された一又は複数の電子デバイスには、一又は複数の電源が含まれうる。幾つかの実装では、一又は複数の電源は、複数の電極222のうちの少なくとも幾つかの電極を接地するように構成されている。一実施例では、一又は複数の電源は、第1の極性を有する第1の電圧、第2の極性を有する第2の電圧を印加し、及び/又は複数の電極 222を接地するように構成されうる。
【0050】
[0049] 電極構成部220、及び特に複数の電極222は、チャック力などの引力をもたらすように構成されている。引力は、複数の電極222(又は支持面112)と基板10及び/又はマスク20との間のある相対距離で、基板10及び/又はマスク20に作用する力になりうる。引力は、複数の電極222に印加される電圧によってもたらされる静電力になりうる。引力の大きさは、電圧極性と電圧レベルによって決定されうる。引力は、電圧極性を変えること、及び/又は電圧レベルを変えることによって、変化しうる。
【0051】
[0050] 基板10はキャリア200(Eチャックになりうる)によって、支持面212に向かって(例えば、垂直方向1に直交する水平方向になりうる方向3に)もたらされる引力によって引き寄せされる。引力は、基板10を例えば、摩擦力によって垂直位置に保持できるほど十分に強力になりうる。具体的には、引力は、基板10が支持面212上で原則的に不動であるように固定するように構成されうる。例えば、摩擦力を利用して0.5mmガラス基板を垂直位置に保持するには、摩擦係数に応じて、約50〜100N/m
2(Pa)の引き付け圧力が使用されうる。
【0052】
[0051]
図3は、本書に記載の実施形態による真空処理システムのためのシステム300を示す。システム300は、「真空システム」とも称されるが、基板10の上に例えば、一又は複数の有機材料層を堆積するように構成されうる。
【0053】
[0052] システム300は、本書に記載の実施形態による真空チャンバ302、キャリア100、及び真空チャンバ302内でキャリア100を搬送するように構成された搬送構成部310を含む。幾つかの実施形態では、システム300は真空チャンバ302内に一又は複数の堆積源380を含む。キャリア100は、真空堆積プロセス中に基板10を保持するように構成されうる。システム300は、OLEDデバイスを製造するため、例えば、有機材料を蒸着させるように構成されうる。別の実施例では、システム300は、スパッタ堆積など、CVD又はPVD用に構成されうる。
【0054】
[0053] 幾つかの実装では、一又は複数の材料堆積源380は、蒸着源であってよく、特に、OLEDデバイスの層を形成するため、基板上に一又は複数の有機材料層を堆積するための蒸着源であってよい。例えば、層堆積プロセス中に基板10を支持するためのキャリア100は、真空チャンバ302の中へ、また、真空チャンバ302を経由して、具体的には線形搬送路などの搬送路に沿って、堆積領域を経由して、搬送されうる。
【0055】
[0054] 材料は、一又は複数の堆積源380から、コーディングされる基板10が配置される堆積領域に向かう放出方向に放出される。例えば、一又は複数の堆積源380は、一又は複数の材料堆積源380の長さに沿って少なくとも1つの線に配置された複数の開口及び/又はノズルを有する線源を提供しうる。材料は、複数の開口及び/又はノズルを介して吐出されうる。
【0056】
[0055]
図3で示されているように、更なるチャンバを真空チャンバ302の隣に設けてもよい。真空チャンバ302は、バルブハウジング304及びバルブユニット306を有するバルブによって、隣接するチャンバから分離されうる。矢印で示されているように、基板10が載せられたキャリア100が真空チャンバ302の中に挿入された後、バルブユニット306を閉じることができる。真空チャンバ302内の雰囲気は、例えば、真空チャンバ302に接続された真空ポンプによって、工業的真空を生成することによって、個別に制御されうる。
【0057】
[0056] 幾つかの実施形態によれば、キャリア100及び基板10は、堆積材料の堆積中には静的又は動的である。本書に記載の幾つかの実施形態によれば、動的堆積プロセスは、例えば、OLEDデバイスの製造のために提供されうる。
【0058】
[0057] 幾つかの実装では、システム300は、真空チャンバ302を通って延在する一又は複数の搬送路を含みうる。キャリア100は、例えば、一又は複数の堆積源380を通り過ぎ、一又は複数の搬送路に沿って搬送するように構成されうる。
図6には、矢印によって1つの搬送路が例示的に示されているが、本開示はこれに限定されるものではなく、2つ以上の搬送路が提供されうることを理解されたい。一実施例として、少なくとも2つの搬送路は、それぞれのキャリアの搬送に関して、実質的に平行に配置されうる。一又は複数の材料堆積源380は、2つの搬送路の間に配置されうる。
【0059】
[0058] 幾つかの実施形態によれば、搬送構成部310は、例えば、搬送方向2の一又は複数の搬送路に沿った真空チャンバ内での、キャリア100の非接触浮上、及び、キャリア100の非接触搬送のうちの少なくとも1つに対して構成されうる。キャリア100の非接触浮上、及び/又は非接触搬送は、搬送中に、例えば、ガイドレールとの機械的な接触による粒子の生成がない点で有利である。非接触浮上及び/又は非接触搬送を利用するときには、粒子の生成は最小限に抑えられるため、基板上に堆積された層の純度及び均一性の改善が実現可能である。
【0060】
[0059]
図4A及び
図4Bは、本書に記載の実施形態による、真空チャンバ内でキャリア410を搬送するための例示的な搬送構成部の概略図を示す。
【0061】
[0060] 一実施形態によると、
図4Aで示されているように、キャリア410の非接触搬送のための搬送構成部400が提供される。キャリア410は、キャリア410を浮上させる磁気浮上力を与えるために真空システムのガイド構造体470と磁気的に相互作用するように構成された第1の磁気ユニットを含みうる。具体的には、キャリア410は、第1の受動磁気ユニット450のような第1の磁気ユニットを含みうる。搬送構成部400は、キャリアアセンブリ搬送方向(水平方向でありうる搬送方向2など)で延在するガイド構造体470を含みうる。ガイド構造体470は、複数の受動磁気ユニット475を含みうる。キャリア410は、ガイド構造体470に沿って移動可能でありうる。第1の受動磁気ユニット450、例えば、強磁性材料のバー、及びガイド構造体470の複数の能動磁気ユニット475は、キャリア410を浮上させる第1の磁気浮上力を与えるように構成されうる。本書に記載の浮上のためのデバイスは、例えば、キャリア410を浮上させる非接触力をもたらすデバイスである。
【0062】
[0061] 本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、搬送構成部400は真空システムの真空チャンバ内に配置されうる。真空チャンバは真空堆積チャンバであってもよい。
【0063】
[0062] 幾つかの実装では、搬送構成部400は、駆動構造体480をさらに含みうる。駆動構造体480は、更なる能動磁気ユニットのような、複数の更なる磁気ユニットを含みうる。キャリア410は、真空システムの駆動構造体480と磁気的に相互作用するように構成された第2の磁気ユニットを含みうる。具体的には、キャリア410は、駆動構造体480の更なる能動磁気ユニット485と相互作用する第2の受動磁気ユニット460、例えば、強磁性材料のバーのような、第2の磁気ユニットを含みうる。
【0064】
[0063]
図4Bは、搬送構成部400の別の側面を示す。
図4Bには、複数の能動磁気ユニット475の能動磁気ユニットが示されている。能動磁気ユニットは、キャリア410の第1の受動磁気ユニット450と相互作用する磁力を供給する。例えば、第1の受動磁気ユニット450は、強磁性材料のロッドでありうる。ロッドは、支持構造体412に接続されたキャリア410の一部でありうる。支持構造体412は、キャリア410の本体によって設けられうる。ロッド又は第1の受動磁気ユニットは、それぞれ、基板10を支持する支持構造体412と一体的に形成されてもよい。キャリア410は、例えば、更なるロッドなどの第2の受動磁気ユニット460を更に含みうる。更なるロッドは、キャリア410に接続されうる。ロッド又は第2の受動磁気ユニットは、それぞれ、支持構造体412と一体的に形成されてもよい。
【0065】
[0064] 「受動(passive)」磁気ユニットという用語は、本書では、「能動(active)」磁気ユニットという概念と区別するために使用される。受動磁気ユニットとは、少なくとも搬送構成部400の動作中には、能動制御又は調節の対象とはならない磁気的特性を有する要素のことを指す場合がある。例えば、受動磁気ユニット(例えば、キャリアのロッド又は更なるロッド)の磁気的特性は、概して真空チャンバ又は真空システムを通過するキャリアの運動中には、能動制御の対象ではない。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、搬送構成部400のコントローラは、受動磁気ユニットを制御するように構成されていない。受動磁気ユニットは、磁場(例えば、静磁場)を生成するように適合されうる。受動磁気ユニットは、調節可能な磁場を生成するように構成されない場合がある。受動磁気ユニットは、強磁性材料などの磁性材料、永久磁石であってもよく、又は永久磁石特性を有してもよい。
【0066】
[0065] 能動磁気ユニットによって発生した磁場の調整可能性及び制御可能性を考慮すると、受動磁気ユニットと比較して、能動磁気ユニットはより高い適応性及び精度を提供する。本書に記載の実施形態によれば、能動磁気ユニットによって生成される磁場は、キャリア410の位置合わせを実現するように制御されうる。例えば、調節可能な磁場を制御することにより、キャリア410に作用する磁気浮上力を高精度に制御することができ、それにより、能動磁気ユニットによって、キャリア、ひいては基板を非接触で位置合わせすることが可能となる。
【0067】
[0066] 本書に記載の実施形態によれば、複数の能動磁気ユニット475は、第1の受動磁気ユニット450に、及びその結果としてキャリア410に磁力を提供する。複数の能動磁気ユニット475は、キャリア410を浮上させる。更なる能動磁気ユニット485は、例えば、搬送方向2に沿って、真空チャンバの内部でキャリア410を駆動させることができる。複数の更なる能動磁気ユニット485は、キャリア410の上に位置する複数の能動磁気ユニット475によって浮上している間、搬送方向2にキャリア410を移動させるための駆動構造体を形成する。更なる能動磁気ユニット485は、第2の受動磁気ユニット460と相互作用して、搬送方向2に沿って力を供給することができる。例えば、第2の受動磁気ユニット460は、交互に変わる極性で配置された複数の永久磁石を含みうる。第2の受動磁気ユニット460から得られる磁場は、複数の更なる能動磁気ユニット485と相互作用し、浮上中のキャリア410を移動させることができる。
【0068】
[0067] 複数の能動磁気ユニット475でキャリア410を浮上させ、及び/又は、複数の更なる能動磁気ユニット485でキャリア410を移動させるため、能動磁気ユニットを制御して調節可能な磁場を供給することができる。調整可能磁場は、静磁場又は動磁場でありうる。本書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、能動磁気ユニットは、垂直方向1に沿って延在する磁気浮上力を供給するための磁場を生成するように構成される。本書に記載の更なる実施形態と組み合わせることができる他の実施形態によれば、能動磁気ユニットは、横方向に沿って延在する磁力を供給するように構成されうる。本書に記載の能動磁気ユニットは、電磁デバイス、ソレノイド、コイル、超伝導磁石、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択された要素であってもよく、又はその要素を含みうる。
【0069】
[0068] 本書に記載の実施形態は、キャリア、基板、及び/又はマスクの非接触浮上、搬送、及び/又は位置合わせに関する。本開示は、基板を支持するキャリア、基板のないキャリア、基板、又は支持体によって支持された基板からなる群の一又は複数の要素を含みうるキャリアに言及している。本開示全体を通じて使用される「非接触(contactless)」という語は、キャリアと基板などの重量が、機械的接触又は機械的な力によって保持されず、磁力によって保持されるという意味に、理解されうる。特に、機械的な力の代わりに磁力を用いて、キャリアが浮上した状態又は浮動した状態で保持される。一実施例として、本書に記載された搬送構成部は、キャリアの重量を支持する機械的レールなどの機械的デバイスを有しない場合がある。幾つかの実装では、浮上中に、また、例えば真空システム内のキャリアの運動中に、キャリアと装置のそれ以外の部分との間の機械的接触は全くありえない。
【0070】
[0069] 本開示の実施形態によれば、浮上すること又は浮上は、機械的な接触又は支持を伴わずにユニットが浮動している、ユニットの状態を表す。更に、ユニットの移動とは、推進力(例えば、浮上力とは異なる方向の力)を加えて、ユニットが一方の位置から別の異なる位置へと移動することを指す。例えば、キャリアなどのユニットを、重力に逆らう力によって浮上させることができ、浮上中、重力と平行な方向とは異なる方向に移動させることができる。
【0071】
[0070] 本明細書に記載の実施形態による、キャリアの非接触浮上、搬送、及び/又は位置合わせは、キャリアの搬送又は位置合わせの間、キャリアと、機械的レールなどの搬送構成部400のセクションとの間の機械的接触により粒子が生成されることはないという点において有益である。したがって、具体的には非接触の浮上、搬送、及び/又は位置合わせを使用すると粒子の発生が最小限に抑えられることから、本書に記載の実施形態は、基板への層堆積の純度及び均一性の向上をもたらす。
【0072】
[0071] キャリアを誘導するための機械的デバイスに比べて、更なる利点は、本書に記載された実施形態が、キャリアの運動の直線性及び/又は精度に影響を与える摩擦によって悩まされることはないことである。キャリアの非接触搬送によってキャリアの無摩擦運動が可能となり、マスクに対するキャリアアセンブリの位置合わせを高精度に制御し維持することができる。更に浮上は、キャリア速度の加速又は減速の迅速化及び/又はキャリア速度の微調節を可能にする。
【0073】
[0072] 更に、機械的レールの材料には、典型的には、チャンバの排出によって、また、温度、使用、摩耗などによって引き起こされうる、変形が発生する。このような変形は、キャリアの位置に影響を与え、またその結果として、堆積された層の品質に影響を与える。それとは対照的に、本明細書に記載された実施形態は、例えば、本書に記載されたガイド構造体に存在する潜在的な変形の補正を可能にする。キャリアが浮上して搬送されるという非接触の態様を考えると、本書に記載された実施形態は、キャリアの非接触の位置合わせを可能にする。したがって、マスクに対する、改善された及び/又はより効率的な基板の位置合わせを提供することができる。
【0074】
[0073]
図5は、本書に記載の更なる実施形態による、基板10の真空処理のための装置500の概略図を示す。
【0075】
[0074] システム500は、2つ以上の処理領域と、基板10とオプションによりマスクを支持するキャリア501を2つ以上の処理領域まで順次搬送するように構成された搬送構成部560とを含む。一実施例として、搬送構成部560は、基板処理のための2つ以上の処理領域を通って、搬送方向2に沿ってキャリア501を搬送するように構成されうる。言い換えるならば、複数の処理領域を通る基板10の搬送に同一のキャリアが使用される。具体的には、基板10は、処理領域内での基板処理と処理領域後の基板処理との間は、キャリア501から取り除かれない。すなわち、2つ以上の基板処理手続きでは、基板は同一キャリア上に留まる。幾つかの実施形態によれば、キャリア501は本書に記載の実施形態によって構成されうる。オプションにより、又は代替的に、搬送構成部560は、例えば、
図4A及び
図4Bに関連して説明されているように構成されうる。
【0076】
[0075]
図5に例示的に示したように、2つ以上の処理領域は、第1の堆積領域508と第2の堆積領域512を含むことができる。オプションにより、第1の堆積領域508と第2の堆積領域512との間に転送(transfer)領域510を設けることができる。2つ以上の処理領域と転送領域など、複数の領域を真空チャンバ内に設けることができる。代替的に、複数の領域は、互いに接続された異なる真空チャンバ内に設けることができる。一実施例として、各真空チャンバは1つの領域を提供することができる。具体的に、第1の真空チャンバは第1の堆積領域508を提供することができ、第2の真空チャンバは転送領域510を提供することができ、第3の真空チャンバは第2の堆積領域512を提供することができる。幾つかの実装では、第1の真空チャンバと第3の真空チャンバは「堆積チャンバ」と称されうる。第2の真空チャンバは「処理 チャンバ」と称されうる。更に、真空チャンバ又は領域は、
図5の実施例に示した領域に隣接して提供されうる。
【0077】
[0076] 真空チャンバは、バルブハウジング504及びバルブユニット505を有するバルブによって、隣接する領域から分離されうる。基板10が載せられたキャリア501が領域(第2の堆積領域512など)の中に挿入された後、バルブユニット505を閉じることができる。領域内の雰囲気は、例えば、当該領域に接続された真空ポンプで工業的真空を生成することによって、及び/又は、例えば、第1の堆積領域508及び/又は第2の堆積領域512に一又は複数の処理ガスを注入することによって、個別に制御可能である。線形搬送路などの搬送路は、基板10を載せたキャリア501を領域内へ、領域を通過して外へ搬送するように提供されうる。搬送路は、2つ以上の処理領域(第1の堆積領域508、第2の堆積領域など)を少なくとも部分的に通って延在し、オプションにより転送領域510を通過しうる。
【0078】
[0077] システム500は転送領域510を含みうる。幾つかの実施形態では、転送領域510は除外されうる。転送領域510は、回転モジュール、中継(transit)モジュール、又はこれらの組み合わせによって提供されうる。
図5は、回転モジュールと中継モジュールの組み合わせを示す。回転モジュールでは、トラック構成部とその上に配置されたキャリアは、垂直回転軸などの回転軸の周りに回転可能である。一実施例として、キャリアはシステム500の左端からシステム500の右端まで、或いはその逆方向に搬送されうる。中継モジュールは、キャリアが中継モジュールを経由して別の方向へ、例えば互いに直交する方向へ搬送されるように、交差トラックを含みうる。
【0079】
[0078] 第1の堆積領域508及び第2の堆積領域512などの堆積領域内では、一又は複数の堆積源が提供されうる。一実施例として、第1の堆積源530は第1の堆積領域508内に提供されうる。第2の堆積源550は第2の堆積領域512内に提供されうる。一又は複数の堆積源は、OLEDデバイス用の有機層スタックを形成するため、基板10の上に一又は複数の有機層を堆積するように構成された蒸着源になりうる。
【0080】
[0079]
図6は、本書に記載の実施形態による基板の真空処理する方法600のフロー図である。本方法は、本開示によるキャリア及びシステムを利用することができる。
【0081】
[0080] 方法600は、ブロック610で、真空チャンバ内のキャリアであって、一又は複数の電子デバイスを収容するハウジング又は空間を含むキャリア上に、基板及びマスクのうちの少なくとも1つを支持すること、並びに、ブロック620で、真空チャンバ内での基板の真空処理中に、ハウジング又は空間内部に気体環境を封じ込めること又は維持することを含む。幾つかの実装では、方法600は更に、真空チャンバ内でキャリア100を非接触で保持すること、及び/又は搬送することを含む。例えば、磁気力及び/又は電磁気力は、キャリア100を吊した状態で、或いは浮上した状態で保持するために使用することができる。具体的には、キャリア100は、磁気力及び/又は電磁気力を利用して、上方から保持されうる。ハウジングは、密閉可能なエンクロージャ又は凹部になりうる。
【0082】
[0081] 幾つかの実施形態によれば、方法600は更に、一又は複数の電子デバイスのうちの少なくとも1つの電子デバイスを使用して、ハウジング内部の気体圧力を測定すること、及び、その気体圧力をキャリアから遠く離れたモニタリングデバイスまで無線送信することを含む。一実施例として、キャリアが真空環境内にある間に、キャリアの密閉されたハウジング内に圧力低下が検出された場合には、ハウジング内の気体が真空環境に漏れ出していると結論されうる。更に実施形態は、Eチャックの漏れ電流、バッテリの不具合、及び/又は、ガラス基板などの基板の取り外しを評価しうる。
【0083】
[0082] 本書に記載の実施形態によれば、真空処理ための方法は、コンピュータプログラムと、ソフトウェアと、コンピュータソフトウェア製品と、大面積基板を処理するために装置の対応する構成要素と通信可能なCPU、メモリ、ユーザインターフェース、及び入出力デバイスを有しうる、相互関連コントローラとを使用して、実施されうる。
【0084】
[0083] 本開示のキャリアは、キャリアの操作及び/又は運動を制御するために使用される制御デバイスなど、一又は複数の電子デバイスを収容するハウジング又は空間を有する。ハウジングは、キャリアが真空チャンバ内部に、すなわち、真空環境内に配置されている場合であっても、気体環境を封じ込める。本開示のキャリアは、例えば、ワイヤ又はケーブルによってキャリアの周囲に機械的に接続されていない、自律的な実体になりうる。キャリアの移動中の粒子生成は最小限に抑えられるため、基板上に堆積された層の純度及び均一性の改善が実現可能である。更に、気体環境を有するハウジングが密封されているため、真空チャンバ内部の真空は損なわれない。しかも、困難な領域内に、言い換えるならば、一又は複数の電子部品を有する領域内に真空条件を確立する必要はないため、真空チャンバ内部の真空は改善可能である。
【0085】
[0084] 以上の記述は、本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてよく、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲によって決定される。