(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メンブレインタイプでは、膜と薬剤の種類によっては、薬剤が容器内に残留する可能性がある。これに対して、薬剤容器に収容される薬剤を揮散させ、揮散した薬剤を外部に放出するタイプの薬剤揮散器も提案されている。しかしながら、このタイプの薬剤揮散器では、液体である薬剤が用いられるため、同様に、薬剤が薬剤容器に残留する可能性がある。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、薬剤の残留を防止することができ、最後まで使い切ることが可能な、薬剤容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1の薬剤容器は、上部に開口を有し、液状の薬剤が収容された容器本体を備え、前記容器本体は、底面と、当該底面の周縁から上方に延びる外周面と、を備え、前記容器本体の内壁面には、前記底面から前記外周面の少なくとも一部に亘って延びる少なくとも1つの突条又は溝が形成されている。
【0006】
この構成によれば、容器本体の外周面から底面に亘って、少なくとも1つの突条又は溝が形成されているため、薬剤は突条又は溝を伝うことで、底面まで流れ落ちやすくなる。その結果、薬剤の残量が少なくなっても、底面に薬剤を集めることができ、薬剤を使い切りやすくすることができる。また、薬剤の残量が視認しやすくなるという効果も得ることができる。
【0007】
本発明に係る第2の薬剤容器は、上部に開口を有し、液状の薬剤が収容された容器本体を備え、前記容器本体は、底面と、当該底面の周縁から上方に延びる外周面と、を備え、前記容器本体の内壁面には、前記外周面から前記開口に向かって延びる少なくとも1つの突条又は溝が形成されている。
【0008】
この構成によれば、例えば、容器本体を逆さに向けると、薬剤は外周面から開口へと向かうが、このとき、薬剤は、外周面から突条又は溝を伝って、開口へ流れやすくなる。したがって、薬剤の残量が少なくなっても、開口側に薬剤を集めることができ、薬剤を使い切りやすくすることができる。
【0009】
本発明に係る第3の薬剤容器は、上部に開口を有し、液状の薬剤が収容された容器本体を備え、前記容器本体は、底面と、当該底面の周縁から上方に延びる外周面と、を備え、前記容器本体の内壁面には、前記底面から前記外周面の少なくとも一部に亘って延びる少なくとも1つの第1突条又は第1溝と、前記外周面から前記開口に向かって延びる少なくとも1つの第2突条又は第2溝と、が形成されている。
【0010】
この構成によれば、上記第1及び第2の薬剤容器の双方の効果を得ることができる。
【0011】
上記各薬剤容器においては、溝を、前記突条の少なくとも1つの一部又は全部に、形成することができる。このようにすると、薬剤が表面張力により溝に集まりやすくなり、突条をより伝いやすくなる。
【0012】
本発明に係る薬剤揮散器は、上述したいずれかに記載の薬剤容器と、前記薬剤容器の開口に差し込まれる吸液芯と、を備えている。
【0013】
上記薬剤揮散器において、前記薬剤容器は、前記開口の直下に形成された底面と、当該底面の周縁から上方へ延びる外周面と、を備え、前記吸液芯の下端部の少なくとも一部が、前記底面の周縁のいずれかに当接するように構成することができる。
【0014】
このような薬剤容器においては、外周面を伝って底面に流れた薬剤は、表面張力により底面の周縁に貯まりやすいが、上記のように、吸液芯の下端部の少なくとも一部を、底面の周縁のいずれかに当接するようすれば、側面の周縁に貯まった薬剤も確実に吸い上げることができる。その結果、薬剤の最後まで使い切ることができる。
【0015】
上記各薬剤揮散器においては、支持体を取付対象物に直接取り付けることもできるが、例えば、前記支持体を、取付対象物に取り付けるための固定部を備えることができる。
【0016】
また、前記固定部は、前記支持体に対し、停止することなく回転できるように連結することができる。
【0017】
この構成によれば、支持体が振動を受けた場合、支持体は固定部に対して回転するようになっている。したがって、例えば、取付対象物が傾いたとしても、支持体の重心が、支持体と固定部との連結部分の鉛直下方に位置するように、支持体は回転する。そのため、薬剤容器は、開口が上方を向いた状態に維持されるため、薬剤がこぼれるのを防止することができる。
【0018】
なお、「停止することなく」とは、固定部に対する支持体の回転時に、支持体が抵抗を受けて完全に停止するのを除く意味である。したがって、取付対象物が傾き、支持体が固定部に対して回転するときに、多少の抵抗を受けたとしても、完全に停止することなく、支持体の重心が、支持体と固定部との連結部分の鉛直下方に移動するのであれば、本発明の「停止することなく」に含まれる。また、本発明に係る「回転」とは、360度以上の回転のみらならず、半回転などの360度よりも小さい角度での回転を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、薬剤の残留を防止することができ、最後まで使い切ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る薬剤揮散器の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、説明の便宜のため、
図2の左側を正面側または前側、右側を背面側または後側と称する。また、
図3の上下方向を幅方向と称する。そして、他の図面についてもこの方向にしたがって、説明を行う。但し、これらの方向は、本発明を限定するものではない。
【0022】
図1は本実施形態に係る薬剤揮散器の斜視図、
図2は
図1の側面図、
図3は
図1の平面図、
図4は薬剤揮散器を後方から見た斜視図である。
図1〜
図4に示すように、本実施形態に係る薬剤揮散器は、液状の薬剤が収容された薬剤容器1と、この薬剤容器1に差し込まれ、薬剤を含浸する吸液芯2と、薬剤容器1を支持する支持体3と、この支持体3を取付対象物に取り付けるための固定部4と、を有している。以下、これら各部材について詳細に説明する。
【0023】
<1.薬剤容器>
図5は薬剤容器の正面図、
図6は薬剤容器の底面図、
図7は
図5のA−A線断面図である。
図5〜
図7に示すように、本実施形態に係る薬剤容器1は、正面視逆三角形状の本体部11と、この本体部11の上端に連結された首部12と、を備えており、これらは一体的に形成されている。本体部11は、底面111、一対の側面112a,112b、前面113、背面114、及び上面115によって囲まれた内部空間を有しており、この内部空間に薬剤が収容される。底面111は、平面視矩形状に形成され、左右の縁部(周縁)は凸状に湾曲している。また、一対の側面112は、底面111の左右の縁部1111からそれぞれ斜め上方に向かって互いに離れるように延びている。前面113及び背面114は、底面111の前側及び後側の縁部からそれぞれ上方に向かって延びている。上面115は、一対の側面112、前面113、及び背面114の上端縁をつなぐように概ね水平に延びる矩形状に形成されている。そして、上面115の中央には、上述した首部12が連結されている。なお、上記本体部11と首部12とで、本発明の容器本体を構成する。
【0024】
首部12は、上端に開口121を有する円筒状に形成されており、底面111の直上に配置されている。首部12の外周面において、上面115に近接する位置には、環状の突部13が形成されており、この突部13と上面115との間の隙間に、後述する保持部が配置される。また、首部12の外周面において、突部13よりも上方には、螺旋状の雄ねじ14が形成されている。この雄ねじ14は,図示を省略するキャップの雌ねじが螺合するようになっている。すなわち、首部12には、キャップが取り付けられ、使用時に取り外すようになっている。
【0025】
本体部11の内壁面は、次のように構成されている。まず、底面111及び一対の側面112には、左右方向に延びる突条(第1突条)16が形成されている。この突条16は、底面111及び側面112の前後方向の中心付近を、一方の側面112aの上下方向の中心付近から、底面111を経て、他方の側面112bの上下方向の中心付近まで延びている。また、この突条16には、溝が形成されており、突条16に沿って延びている。
【0026】
また、上面115の内壁面にも一対の突条(第2突条)17a,17bが形成されている。各突条17a,17bは、上面115の前後方向の中心付近を通過しており、上面115の左右の端部付近から首部12に向かって延び、首部12の内壁面を開口121の縁部まで上方に向かって延びている。これらの突条17a,17bにも、溝が形成されており、突条17a,17bに沿って延びている。
【0027】
以上のような薬剤容器1は、種々の材料により形成することができるが、樹脂材料により形成することができる。この場合、例えば、前後方向の中心付近で分割した状態(形成される突条16,17a,17bも前後方向の中心付近で分割されている)に形成したものを張り合わせたり、また、ブロー法(例えば、インジェクションブロー法、ダイレクトブロー法)により成形した後、底面111及び側面112の内壁面を削ったり、突条を貼り付けたりして薬剤容器1を形成することができる。ブロー法のうち、特にダイレクトブロー法により薬剤容器1を成形する場合には、筒状のパリソンを用い、2つの成形型でパリソンの上部を挾み、雄ねじ14及び突部13が形成された首部12のみを先に成形し、続いて、成形された首部12よりも下方の部分を2つの成形型で挾み、パリソンに空気を注入しつつ本体部11を成形する。首部12よりも下方の部分を2つの成形型で挟む際、互いの成形型が接する箇所の樹脂材料が盛り上がるようにすることで、突条16,17a,17bを成形することができる。
【0028】
また、薬剤容器1は、内部の薬剤が視認できるように透明または半透明の材料で形成することが好ましい。薬剤容器1に収容される液状の薬剤としては、用途に応じて、公知の芳香液、消臭液、アロマオイルなど、種々のものを用いることができる。
【0029】
<2.吸液芯と薬剤容器への取付構造>
次に、吸液芯2及び薬剤容器1への取付構造について説明する。まず、薬剤容器1には、吸液芯2の取付部材5が取り付けられており、この取付部材5を介して、吸液芯2が薬剤容器1に取り付けられている。取付部材5は、薬剤容器1の首部12の内壁面に圧入される円筒状の取付本体51と、この取付本体51の上縁から径方向外方に延びるフランジ部52とを備えている。そして、取付本体51の内部には、吸液芯2が挿入される。また、フランジ部52は、首部12の開口周縁を上方から覆うように配置される。
【0030】
また、取付本体51の内壁面には、上下方向に沿って延びる溝(図示省略)が形成されており、吸液芯2が挿入されたときに、この溝によって吸液芯2と取付本体51との間に隙間が形成される。この隙間は、薬剤容器1の内部空間と外部とを連通する。これにより、例えば、高温の環境で薬剤容器1を用い、薬剤容器1の内圧が上昇したとき、薬剤容器1内の空気が隙間を通じて外部に排出されるようになっている。一方、このような隙間が設けられていないと、内圧が上昇したとき、吸液芯2を通じて薬剤が過剰に押し出されるおそれがある。
【0031】
続いて、吸液芯2について説明する。吸液芯2は、円柱状に形成されており、上述したように、取付本体51の内壁面に密着した状態で、取付本体51に挿入される。そして、吸液芯2の長さは、次のように設定されている。すなわち、吸液芯2の下端部が薬剤容器1の底面111に当接したとき、吸液芯2の上端部は、首部12から突出した状態となるように設定されている。このとき、吸液芯2の下端部21の下面が底面に接しつつ、下端部21の周縁が底面の左右の縁部1111にも接するようになっている。
【0032】
吸液芯2を構成する材料は、薬剤を吸い上げ、首部12から突出している部分から薬剤を外部に揮散させることができるような材料であれば、特には限定されない。例えば、紙、布など種々の材料を用いることができる。
【0033】
<3.支持体>
続いて、支持体3について、
図8〜
図12を参照しつつ説明する。
図7は第2のポジションにある支持体の斜視図、
図9は
図8の正面図、
図10は第2のポジションにおいて薬剤容器が装着された支持体の側面図、
図11は
図10の正面図、
図12は
図10の背面図である。但し、
図12では説明の便宜上、固定部を取り外した状態を示している。
【0034】
図8〜
図12に示すように、支持体3は、薬剤容器1を保持する支持本体31と、この支持本体31に取り付けられ、薬剤容器1を覆うカバー32と、を備えており、カバー32は薬剤容器1を覆う第1のポジション(
図1〜
図4)と薬剤容器1を取り外し可能な第2のポジション(
図8〜
図12)とを取り得る。以下では、説明の便宜のため、支持体3が第1のポジションを取りうる場合と第2のポジションを取りうる場合との両方を参照しつつ、支持体3について説明する。まず、支持本体31について説明する。
【0035】
支持本体31は、上方から下方に向かって配置された上端部311、中間部312、及び下端部313が一体的に形成された板状の部材であり、上端部311と中間部312との間には板状の保持部314が連結されている。上端部311は、正面視台形状の板状に形成されており、その中央には背面側に突出する環状の取付部315が形成されている。
図10に示すように、この取付部315は、下側に切欠き3151が形成されており、後述する固定部4の軸部が切欠き3151から取付部315の穴に取り付けられる。また、上端部311の左右の辺には、それぞれ、前面側に第1係止部3111が形成され、背面側に第2係止部3112が形成されている。また、第1係止部3111は、中間部312側に配置され、第2係止部3112は、第1係止部3111よりも上方に配置されている。そして、これら第1係止部3111及び第2係止部3112によって、後述するカバー32の一部が挟まれる。また、上端部311の上辺にはヒンジ316が形成され、このヒンジ316を介して、カバー32が揺動自在に取り付けられている。
【0036】
中間部312は、正面視矩形状の板状に形成されており、上端部311の下端に連結されている。そして、上端部311と中間部312との間には、上述したように、薬剤容器1の首部12を保持する保持部314が連結されている。保持部314は、板状に形成された一対の保持片3141a,3141bを備えており、これら保持片3141は前方に向かって延びている。そして、これら保持片3141は、左右方向の中央に隙間を空けて配置されており、この隙間に薬剤容器1の首部12が保持される。より詳細に説明すると、両保持片3141a,3141bの隙間は、首部12の外周面に沿うように平面視円形状に形成されているが、両保持片3141a,3141bの前端部間の隙間は、首部12の直径よりも狭くなっている。これにより、首部12の抜け止めを形成している。なお、保持部314の前後方向の長さは、薬剤容器1の前後方向の幅の半分よりも長いことが好ましい。
【0037】
また、中間部312は、薬剤容器1の背面114に当接するように構成されており、薬剤容器1の本体部11の上端から、本体部11の上下方向の中間部付近まで延びている。より詳細には、
図10に示すように、中間部312は、薬剤容器1の重心Gと対応する上下方向の位置を越えて、下方に延びている。
【0038】
下端部313は、中間部312の背面の下端から下方に延びる正面視矩形状の板状に形成されている。これにより、下端部313は、中間部312よりも後方に配置され、中間部312に当接している薬剤容器1の背面114との間に隙間が形成される。また、下端部313の左右方向の幅は、中間部312よりも狭くなっており、保持部314に薬剤容器1が保持されたときには、薬剤容器1に遮られて正面からは下端部313が見えないようになっている。そして、下端部313の前面の中央には上下方向に延びる棒状の突部317が形成されており、この突部317の前面は中間部312の前面よりも後側にある。また、下端部313の下端縁には、平面視矩形状の板状の底面支持部318が連結されている。この底面支持部318は、保持部314と概ね同じ長さで前方に突出しており、薬剤容器1の底面111に当接するように構成されている。
【0039】
続いて、カバー32について説明する。カバー32は、ヒンジ316を介して支持本体31に連結されることにより、上記のように薬剤容器1を覆う使用時の第1ポジションと、薬剤容器1を取り付けたり、あるいは取り外すときの第2ポジションを取り得る。
【0040】
カバー32は、支持本体31の前側に配置される前壁部321と、前壁部321の上端縁に連結され,前後方向に延びる上壁部322と、上壁部322の後端縁から上下方向に延び、支持本体31の上端部311の周囲を囲む背壁部323と、を備えている。
【0041】
前壁部321は、正面視菱形状に形成されており、前面には装飾が施されている。前壁部321は、支持本体31に保持される薬剤容器1がほぼ隠れるような大きさに、形成されている。上壁部322は、前壁部321の上端部に沿うように正面視へ字状に形成されており、薬剤容器1に差し込まれた吸液芯2を上方から覆うように配置される。そして、上壁部322の上端付近には、開口が形成されるとともに、この開口の一部を塞ぐように前後方向に延びる複数の棒状部材3221が平行に配置されている。棒状部材3221の配置されている間隔は、吸液芯2の直径よりも小さくなっている。これにより、上壁部322からは、吸液芯2から揮発する薬剤は通過するが、吸液芯2が抜け出さないようになっている。
【0042】
背壁部323は、上壁部322の後端縁に沿うように正面視へ字状に形成されており、上述したように、支持本体31の上端部311の周囲を囲むように板状に形成されている。まず、支持本体31の上端部311の上辺が、ヒンジ316を介して背壁部323に連結されている。また、背壁部323の両側の内周縁は、支持本体31の上端部311に形成された第1係止部3111及び第2係止部3112によって挟まれる。これにより、背壁部323が支持本体31に固定され、カバー32が第1ポジションに保持される。
【0043】
続いて、カバー32が第2ポジションにあるときについて、説明する。第1ポジションでは、
図1〜
図4に示すように、カバー32が薬剤容器1を覆うため、前壁部321は支持本体31と概ね平行になるように上下方向に延びるように配置される。この状態から、前壁部321を上方に向けて傾斜させると、第1係止部3111及び第2係止部3112と背壁部323との係止状態が解除され、カバー32がヒンジ316を中心として揺動可能となる。そして、例えば、
図10に示すように、カバー32は、前壁部321が支持本体31の上方で水平に延びる状態まで揺動し、第2ポジションとなる。この状態で、薬剤容器1は外部に露出するため、取り外し可能となる。
【0044】
<4.固定部>
次に、固定部4について、
図13も参照しつつ説明する。
図13は固定部の側面図である。固定部4は、支持本体31における上端部311の取付部315から背面側に延びるように形成されている。より詳細には、取付部315に回転自在に連結される連結部43と、この連結部43から後方に延びる板状の第1固定片41と、この第1固定片41の下側に平行に延びる板状の第2固定片42と、を備えており、これらは一体的に形成されている。連結部43は、小径の軸部431と、その前側に取り付けられ、軸部431よりも径の大きい円形の抜け止め部432とを備えており、軸部431が、取付部315の穴に切欠き3151を介して取り付けられる。取付部315の内径は、軸部431とほぼ同じであるが、抜け止め部432よりは小さいため、連結部43は、取付部315において前後方向に延びる軸周りに回転自在に取り付けられる(
図4参照)。また、切欠き3151の幅は、軸部431の径よりも小さいため、切欠き3151は軸部431の抜け止めになる。このとき、連結部43は、ほぼ抵抗なく取付部315に対して回転するようになっており、これによって、例えば、支持体3が振動を受けた場合、支持体3は固定部4に対して回転するようになっている。
【0045】
第1固定片41及び第2固定片42は連結部43に対して、弾性変形可能となっており、これにより、両固定片41,42は、互いに近接離間するように変形可能である。初期状態では、両固定片41,42の後端部は接しており、これを弾性力に抗して押し広げることで、両固定片41,42の間には、取付対象物を弾性的に挟むことができるようになっている。
【0046】
<5.薬剤揮散器の使用方法>
次に、上記のように構成された薬剤揮散器の使用方法について説明する。まず、薬剤容器1のキャップを取り外し、吸液芯2を露出させる。続いて、支持体3のカバー32を開いて第2ポジションとし、保持部314を露出させる。これに続いて、保持部314の両保持片3141a,3141bの間に、薬剤容器1の首部12を挿入する。具体的には、首部12の突部13と本体部11の上面115との隙間に、両保持片3141a,3141bの内縁が係合するようにする。この状態で、両保持片3141a,3141bの前端側の隙間は、首部12の径よりも狭いので、これが抜け止めになって、首部12が保持部314から離脱するのが防止される。こうして、首部12が保持部314に装着されると、薬剤容器1の本体部11の背面114は、支持本体31の中間部312に当接するとともに、本体部11の底面111が底面支持部318に当接する。
【0047】
このように、保持部314は首部12の突部13と本体部11の上面115との隙間に係合するが、これが上下方向のいずれかにずれると、本体部11の底面111が底面支持部318に当接せず、例えば、本体部11が底面支持部318に当たって、薬剤容器1が支持体3に装着できないようになっている。そのため、底面支持部318は、薬剤容器1を正しい位置に装着するためのガイドとしても機能する。
【0048】
こうして、薬剤容器1が装着されると、カバー32を第1ポジションに戻す。これにより、薬剤容器は1、カバー32の前壁部321により前方への移動が規制され、支持本体31から離脱するのが防止される。また、カバー32の上壁部322が吸液芯2を上方から覆うため、吸液芯2が薬剤容器1から離脱するのを防止することができる。
【0049】
続いて、固定部4を取付対象部に取り付ける。すなわち、固定部4の両固定片41、42で取付対象物を挟むようにする。こうして、薬剤揮散器の取り付けが完了する。なお、取付対象物は特には限定されないが、例えば、自動車のエアコンやデフロスターの排気口など、振動を伴うものとすることができる。但し、振動が生じるような取付対象物は、上記のような排気口以外でもよく、特には限定されない。その後、薬剤容器1内の薬剤は、吸液芯2に吸い上げられ、吸液芯2を伝って、薬剤容器1の外部へと揮散する。これにより、芳香効果等を得ることができる。
【0050】
<6.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次の特徴を有している。
【0051】
<6−1>
本実施形態に係る薬剤揮散器では、以下の理由から、薬剤容器1内の薬剤の量が少なくなっても、最後まで薬剤を使い切ることができる。まず、吸液芯2の下端部21は、薬剤容器1の底面111に接しており、さらに、吸液芯2の下端部21の少なくとも一部が、底面111の縁部1111に接している。そのため、側面112から流れ落ち、底面111に達した薬剤のうち、表面張力によって底面111の縁部付近に残留する薬剤も吸引することができる。また、本体部11の側面112から底面111に亘って、溝を有する突条16が形成されているため、薬剤はこの突条16を伝うことで、底面111まで流れ落ちやすくなる。その結果、吸液芯2によって流れ落ちた薬剤を吸い上げやすくなる。さらに、例えば、薬剤容器1を逆さに向けると、薬剤は本体部11の上面115に溜まるが、この薬剤は、上面115の突条17a,17bを伝って、首部12へと流れ、吸液芯2に吸引される。
【0052】
このように、吸液芯2が底面111の縁部に接していること、及び突条16,17が形成されていることから、本実施形態の薬剤容器1では、薬剤が容器内に残留するのを防止することができ、薬剤を最後まで使い切ることができる。
【0053】
<6−2>
薬剤を収容する薬剤容器1の首部12が、支持体3の保持部314により左右から挟まれるように保持されているため、薬剤容器1が横方向からの振動を受けても、薬剤容器1が支持体から離脱するのを防止することができる。その結果、薬剤容器1から薬剤がこぼれるのを防止することができる。
【0054】
<6−3>
首部12の外周面に、突部13が形成されており、突部13と本体部11の上面115との隙間に、314保持部が係合するため、薬剤容器1の上下方向の移動が拘束される。そのため、薬剤容器1が上下方向の振動を受けても、支持体3から離脱するのを防止することができる。
【0055】
<6−4>
薬剤容器1の本体部11は、上下方向において、保持部314と底面支持部318との間に挟まれた状態となっているため、一旦、薬剤容器1が支持体3に装着されると、斜め上方あるいは斜め下方には移動できないようになっており、薬剤容器1の離脱を防止することができる。
【0056】
<6−5>
薬剤容器1の本体部11の外周面全体が支持本体31に支持されているのでなく、薬剤容器1は、支持本体31のうち、中間部312と当接し、下端部313とは隙間を空けている。そのため、薬剤容器1が振動を受けても、その振動の少なくとも一部を下端部313との隙間で吸収することができる。その結果、振動を受けたとき、薬剤容器1が支持本体31からの衝撃で破損するのを防止することができる。また、下端部313には棒状の突部317が形成されているため、薬剤容器1が隙間側へ移動したときには、この突部317がクッションとなって接触する。
【0057】
さらに、中間部312は、薬剤容器1の重心Gと対応する上下方向の位置において、薬剤容器1の本体部11の外周面と当接しているため、振動を受けたとき(特に薬剤容器内の薬剤の残量が少なくなったとき)でも、薬剤容器1が支持本体31に対して大きく揺れるのを防止することができる。
【0058】
<6−6>
支持体3には、固定部4が回転自在に取り付けられているため、次のような効果がある。すなわち、支持体3が振動を受けた場合、支持体3は固定部4に対して回転するようになっている。したがって、例えば、取付対象物7が
図14(a)に示す水平な状態から、
図14(b)に示す傾いた状態になったとしても、支持体3の重心が、支持体3と固定部4との連結部分の鉛直下方に位置するように、支持体3は回転する。そのため、薬剤容器1は、開口121が上方を向いた状態に維持されるため、薬剤がこぼれるのを防止することができる。
【0059】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組合わせ可能である。
【0060】
<7−1>
上記実施形態では、本発明に係る薬剤容器を薬剤揮散器に用いた態様を示したが、薬剤揮散器としては、支持体や固定部を用いることなく、薬剤容器の上部開口に吸液芯を刺し込んだものを用いることもできる。また、吸液芯も用いることなく、薬剤容器を単独で用いることもできる。この場合には、例えば、点眼薬用の容器として、本発明に係る容器本体の上部開口に、点眼用の排出部を取り付け、これを薬剤容器とすることもできる。
【0061】
<7−2>
上記実施形態では、底面111から側面112に亘って延びる突条16と、上面115から首部12に亘って延びる突条17と、を設けているが、いずれか一方でもよい。また、これら突条は、1つだけでなく、複数設けることもできる。突条の長さは、特には限定されず、例えば、底面111全体に亘って設ける必要はなく、底面111と側面112(あるいは前面113または背面114)とが突条16によってつながっていればよい。また、側面112(あるいは前面113または背面114)のいずれかの位置から、首部12の途中、あるいは上部開口121まで突条17が延びていればよい。
【0062】
<7−3>
薬剤容器1の形態は、種々のものが可能であり、上記実施形態に示したものに限定されない。例えば、上記実施形態の薬剤容器1では、本発明に係る薬剤容器の外周面を、一対の側面112、前面113、背面114、及び上面115により構成されていたが、種々の態様が可能である。例えば、上面115を設けず、一対の側面112、前面113、及び背面114から首部12、あるいは上部開口121に直接つながるような形態であってもよい。また、首部12も必ずしも必要ではなく、少なくとも上部開口121が設けられていればよい。
【0063】
さらに、本発明の外周面は、種々の断面形状が可能であり、上記のような矩形状のほか、円形、楕円形、多角形状など、種々の態様が可能である。そして、この外周面から開口121に亘って、あるいは、底面111から外周面に亘って、少なくとも1つの突条が形成されていればよい。
【0064】
<7−4>
上記実施形態では、溝は、突条の全体に亘って設けられているが、突条の一部のみに設けられてもよい。また、
図15に示すように、溝が全く設けられずに突条17のみであっても、
図16に示すように、突条を設けずに溝18のみ(第1溝)であってもよい。なお、
図15及び
図16の例では、薬剤容器1の底面111に設けられる突条について説明したが、首部12に向かう突条についても同様であり、溝を設けず突条のみにしたり、あるいは溝のみ(第2溝)でもよい。
【0065】
<7−5>
上記実施形態では、薬剤容器1をダイレクトブロー法により成形することで、薬剤容器1の内壁面に突条16,17を形成しているが、このような成型方法を用いることなく、成形型などで突条を成形することもできる。
【0066】
<7−6>
上記実施形態においては、
図6に示すように、吸液芯2の下端部21は、薬剤容器の底面111の左右の縁部1111に接しているが、少なくとも一部が接していればよい。例えば、
図17(a)に示すように、吸液芯2の下端部21の径が小さく、一方の縁部1111にのみ接していてもよいし、
図17(b)に示すように、底面111のいずれかの縁部(この例では背面側)に接していてもよい。また、底面111の形状も特には限定されず、吸液芯2の下端部21の一部が縁部のいずれかに接するような形状であればよい。但し、このような構成は、必ずしも必要ではないが、設けられていることが好ましい。