【文献】
Miki, Yuya; Hirano, Koji; Satoh, Tetsuya; Miura, Masahiro,Copper-catalyzed electrophilic amination of arylsilanes with hydroxylamines,Organic Letters,2013年,Vol.15 No.1,172-175
【文献】
Iwata, Masaaki; Kuzuhara, Hiroyoshi,Design and synthesis of macromonocyclic polyamines composed of natural methylene arrays,Bulletin of the Chemical Society of Japan,1989年,Vol.62 No.1,198-210
【文献】
Snider, Barry B.; Harvey, Thomas C.,Synthesis of a bicyclic model for the marine hepatotoxin cylindrospermopsin,Tetrahedron Letters,1995年,Vol.36 No.26,4587-4590
【文献】
Corriu, Robert J. P.; Moreau, Joel J. E.; Pataud-Sat, Magali,Silyliron carbonyl complexes in organic synthesis: selective conversion of nitriles into N,N-bis(silyl) enamines,Organometallics,1985年,4,623-629
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、一実施形態によれば、下記一般式(III)で表される末端にアミノ基を有
するポリアルキレングリコール誘導体の製造方法であって、下記に示す[工程2]、[工
程3]、及び[工程4]を含む方法である。また本発明は、好ましい実施形態によれば、
下記一般式(III)で表される末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコール誘導
体の製造方法であって、下記に示す[工程1]〜[工程4]を順次経る方法である。
【0017】
[工程1]下記一般式(IV)で表される化合物を、M、M
+H
−、R
X−M
+、[R
Y]
・−M
+、及びR
ZO
−M
+から選択されるアルカリ金属又はアルカリ金属化合物(
式中、Mはアルカリ金属を表し、R
xは炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜2
0のアリールアルキル基を表し、R
Yは置換基を有していてもよい芳香族化合物を表し、
R
Zは炭素数1〜6のアルキル基を表す)と反応させることにより、下記一般式(V)で
表される化合物を得る工程;
[工程2]前記一般式(V)で表される化合物を、重合溶媒中で、アルキレンオキシド
と反応させることにより、下記一般式(VI)で表される化合物を得る工程;
[工程3]前記一般式(VI)で表される化合物を、下記一般式(I)で表される求電
子剤と反応させることにより、下記一般式(II)で表される化合物を得る工程;及び
[工程4]前記一般式(II)で表される化合物を、重金属触媒を用いることなく脱保
護し、下記一般式(III)で表される化合物を得る工程。
【0019】
上記一般式(I)及び(II)中、R
A1a及びR
A1bは互いに独立にアミノ基の保
護基を示すか、一方が水素原子を示し、他方がアミノ基の保護基を示すか、又はR
A1a
及びR
A1bは互いに結合してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基を示し
、かつ前記保護基は重金属触媒を使用することなく脱保護できる保護基である。R
A1a
及びR
A1bの具体例は後述の[工程3]の説明中に記載するとおりである。
【0020】
上記一般式(I)〜(III)中、R
A2は炭素数1〜6の直鎖状、又は炭素数3〜6
の分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基である。R
A2の具体例としては、メチル基、
エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−
ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シク
ロペンチル基、シクロヘキシル基のそれぞれから、水素原子が一つ脱離した基などが挙げ
られ、好ましくはエチル基、n−プロピル基のそれぞれから、水素原子が一つ脱離した基
が挙げられる。
【0021】
上記一般式(II)〜(VI)中、R
A3は炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜
20の分岐状もしくは環状の炭化水素基である。R
A3の具体例としては、メチル基、エ
チル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブ
チル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、
デシル基、ドデシル基、フェニル基、0−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,
3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,
4−キシリル基、3,5−キシリル基、メシチル基、ビニル基、アリル基等が挙げられ、
好ましくはメチル基、エチル基が挙げられる。
【0022】
上記一般式(II)〜(VI)中、R
A4は炭素数2〜8のアルキレン基である。中で
も、炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。即ち、エチレン基又はプロピレン基が好ま
しい。(R
A4O)
nは1種のオキシアルキレン基、例えばオキシエチレン基、又はオキ
シプロピレン基のみで構成されていてもよいし、二種以上のオキシアルキレン基が混在し
ていてもよい。2種以上のオキシアルキレン基が混在している場合、(R
A4O)
nは2
種以上の異なるオキシアルキレン基がランダム重合したものであってもよいし、ブロック
重合したものであってもよい。
【0023】
上記一般式(I)中、Xは脱離基を表す。Xの脱離基の具体例としては、Cl、Br、
I、トリフルオロメタンスルホナート(以下TfOと記す)、p−トルエンスルホナート
(以下TsOと記す)、メタンスルホナート(以下MsOと記す)などが挙げられるが、
これらに限定はされない。
【0024】
上記一般式(II)、(III)及び(VI)中、nは3〜450の整数である。好ま
しくはn=10〜400、さらに好ましくはn=20〜350である。
【0025】
上記一般式(IV)及び(V)中、k=2〜5である。一般式(V)における(R
A4
O)の繰り返し単位は重合溶媒への溶解性を高めるという効果を有しており、その観点か
らするとkは2以上であることが好ましい。また、前記一般式(IV)で表される化合物
を、高純度で、かつ蒸留できる沸点とすることを考えると、k=2〜4とすることが好ま
しい。
【0026】
上記一般式(V)及び(VI)中、Mはアルカリ金属である。Mのアルカリ金属の具体
例としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ナトリウム−カリウム合金等を
挙げることができる。
【0027】
以下の実施形態の説明においては、時系列に沿って、[工程1]〜[工程4]の順に説明す
る。
【0028】
[工程1]では、前記一般式(IV)で表される化合物を、アルカリ金属又はアルカリ
金属化合物と反応させることにより、下記一般式(V)で表される化合物を合成する。
R
A3O(R
A4O)
kH
(IV)
R
A3O(R
A4O)
k−1R
A4O
−M
+ (V)
【0029】
[工程1]において、一般式(IV)で表される化合物と反応させるアルカリ金属又は
アルカリ金属化合物とは、Mで表されるアルカリ金属、M
+H
−で表されるアルカリ金属
の水素化物、R
X−M
+、[R
Y]
・−M
+で表される有機アルカリ金属(R
Xは炭素数
1〜20のアルキル基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、R
Yは置換基
を有していてもよい芳香族化合物を表す)、及びR
ZO
−M
+で表される1価アルコール
のアルカリ金属塩(R
Zは、炭素数1〜6のアルキル基を表す)からなる群より選択され
る物質をいうものとする。
【0030】
Mのアルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ナ
トリウム−カリウム合金等を挙げることができる。M
+H
−の具体例としては、水素化ナ
トリウム、水素化カリウム等を挙げることができる。R
X−M
+の具体例としては、エチ
ルリチウム、エチルナトリウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、ter
t−ブチルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−
メチルペンチルリチウム、1,1−ジフェニルメチルカリウム、クミルナトリウム、クミ
ルカリウム、クミルセシウム等を挙げることができる。[R
Y]
・−M
+の具体例としては
、リチウムナフタレニド、ナトリウムナフタレニド、カリウムナフタレニド、アントラセ
ンリチウム、アントラセンナトリウム、アントラセンカリウム、ビフェニルナトリウム、
ナトリウム2−フェニルナフタレニド、フェナントレンナトリウム、ナトリウムアセナフ
チレニド、ナトリウムベンゾフェノンケチル、ナトリウム1−メチルナフタレニド、カリ
ウム1−メチルナフタレニド、ナトリウム1−メトキシナフタレニド、カリウム1−メト
キシナフタレニド等を挙げることができ、これらの化合物は1種単独で、または2種以上
を混合して用いることもできる。R
ZO
−M
+におけるR
Zの具体例としては、メチル基
、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、te
rt−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられるが、
これらに限定はされない。中でも、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物としては、副反
応を抑制する観点から、ナトリウム、カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムが好
ましく、また反応性の高さの観点から、ナトリウムナフタレニド、カリウムナフタレニド
、アントラセンナトリウム、アントラセンカリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメ
トキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドが好ましい。
【0031】
[工程1]において使用されるアルカリ金属、M
+H
−、R
X−M
+、[R
Y]
・−M
+
、及び/又はR
ZO
−M
+の使用量は、上記一般式(IV)で表される化合物のモル数に
対し、0.5〜3.0当量、好ましくは0.8〜2.0当量、さらに好ましくは0.9〜
1.0当量である。特に使用するアルカリ金属化合物が後の[工程2]で重合開始剤とし
ても働きうる場合には、アルカリ金属化合物の使用量を1.0当量以下とする必要がある
。また、例えばカリウムメトキシドのように開始剤原料アルコールと反応した後にアルコ
ールを生成するアルカリ金属化合物を使用する場合には、[工程1]で生成するメタノー
ルを一般式(V)で表される化合物の合成後に減圧留去する必要もあり、平衡反応により
生成するカリウムメトキシドが後の[工程2]において重合開始剤として働かないように
する必要がある。
【0032】
[工程1]において、前記一般式(V)で表される化合物を合成する際には、例えば適
切な溶媒に、一般式(IV)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物と
を添加し混合することにより反応させてもよいし、一般式(IV)で表される化合物中に
アルカリ金属又はアルカリ金属化合物を適切な溶媒中に混合したものを滴下してもよいし
、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物を適切な溶媒中に混合したものに一般式(IV)
で表される化合物を滴下してもよい。[工程1]において使用する溶媒の具体例としては
、THFや1、4−ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香
族炭化水素類が例示できる。溶媒としては、金属ナトリウム等の脱水剤を用いて蒸留した
ものを使用することができる。溶媒の使用量は特に限定されないが、前記一般式(IV)
で表される化合物の質量に対して、例えば1〜50倍量、好ましくは2〜10倍量、さら
に好ましくは2〜5倍量である。また、[工程1]の反応は、例えば、−78〜150℃
の温度、好ましくは0℃〜用いた溶媒の還流温度(例えば、0℃〜THFの還流温度であ
る66℃)で行う。必要に応じて反応系の冷却や加熱を行ってもよい。
【0033】
中でも、[工程1]において使用する溶媒としては、後の[工程2]で重合溶媒として用
いる溶媒と同じものを使用することが好ましい。[工程1]で合成された重合開始剤が[
工程2]で使用する重合溶媒に溶解するかどうかを、[工程1]の重合開始剤合成時に予
め確認することができるためである。具体的には、例えば[工程1]の反応溶媒としてT
HFを、アルカリ金属化合物として水素化カリウム(例えば上記一般式(IV)で表され
る化合物に対して1.0当量以下の水素化カリウム)を、[工程2]の重合溶媒としてT
HFを使用する場合、重合開始剤の重合溶媒への溶解性を以下のように確認することがで
きる。[工程1]における反応が進行し粉末状の水素化カリウムが減少するとともに水素
が発生する。このとき生成する上記一般式(V)で表される重合開始剤が、[工程1]の
反応溶媒であるTHFに析出せずに、また、最終的に水素化カリウムが全て反応したとき
に反応溶液中に塩の析出及び白濁がないかどうかを確認することで、後の[工程2]にお
ける重合開始剤の重合溶媒への溶解性を事前に確認することができる。
【0034】
また、[工程2]で使用する重合溶媒への一般式(V)で表される重合開始剤の溶解性
を予め確認する別法としては、下記方法が例示できるが、これに限定はされない。上記の
ように一般式(IV)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物とを反応
させて一般式(V)で表される重合開始剤を合成し、その後一般式(V)で表される重合
開始剤以外の溶媒や試薬を常法により除去して、一般式(V)で表される重合開始剤を取
り出す。得られた一般式(V)で表される重合開始剤を、例えば20wt%の濃度で後の
[工程2]で使用する重合溶媒に溶解させ、目視により塩の析出や白濁が見られないかを
確認することができる。
【0035】
上述の通り、重合開始剤の原料である一価アルコールが水分を含んだ状態で重合開始剤
を調製し、その重合開始剤を用いてアルキレンオキシドとの重合を行うと、ジオールポリ
マーが副生する。ジオールポリマーは目的物から分離することが極めて難しく、また、ジ
オールポリマーやそれ由来の不純物を含むポリマーをそのまま使用すると、ポリマーミセ
ル化剤の目的の性能が得られなくなる可能性が高い。そのため、後の[工程2]において
重合反応を行う際には、一般式(V)で表される化合物(重合開始剤)を溶解させた反応
系の水分を極力低く抑えることが好ましい。これに関して、一般式(V)で表される化合
物の前駆体である前記一般式(IV)で表される化合物は、例えば、R
A3=CH
3、R
A4=CH
2CH
2、k=2の場合、沸点が194℃と高く、水との沸点差が十分にある
ため、減圧乾燥を行うことにより水を分離することが可能である。そのため、[工程1]
における一般式(IV)で表される化合物とアルカリ金属又はアルカリ金属化合物との反
応前には、前記一般式(IV)で表される化合物に対して、十分に減圧乾燥を行った後に
蒸留を行うことが好ましい。その場合、蒸留後の一般式(IV)で表される化合物の含水
率は、例えば50ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以
下となるようにする。このように重合開始剤の原料である一般式(IV)で表される化合
物を水分を極力含まない状態とすることにより、得られた重合開始剤を用いて重合反応を
行う際に、ジオールポリマーの副生をより良く抑えることができる。
【0036】
なお、[工程1]で使用した一般式(IV)で表される原料アルコールの物質量と[工
程1]終了後の反応溶液の全体の重さから、[工程1]終了後の反応溶液(重合開始剤合
成後の反応溶液)中の、重合開始剤として働きうる物質の濃度(mmol/g)を求める
ことができる。すなわち、[工程1]終了後の反応溶液中の、重合開始剤として働きうる
物質の濃度は、「使用した原料アルコール(IV)の物質量(mmol)/[工程1]終
了後の反応溶液全体の重さ(g)」で求めることができる。[工程1]終了後の反応溶液
中に一般式(IV)で表される原料アルコールが残っている場合には、その原料アルコー
ルも重合開始剤として働くためである。(次工程2における反応は平衡反応であるため、
一般式(V)で表される化合物が重合開始剤として反応し生成したポリマー末端アルコキ
シドが原料アルコール(IV)のプロトンを引き抜き、アルコキシド(重合開始剤)とし
て働かせる。)ただし後述のように、[工程1]の終了後の反応溶液中の原料アルコール
残量はできるだけ少ないことが望ましい。[工程1]の終了後の反応溶液は、そのまま後
の[工程2]における重合開始剤溶液として用いることができる。
【0037】
従来、一般的に用いられている重合開始剤は、THFなどの重合溶媒に単独では溶解し
ないことが多い。例えば、アルキレンオキシドの重合をTHF中で行う場合、重合末端を
メチル基にしたい時に従来から一般的に用いられる重合開始剤のCH
3O
−M
+(Mはア
ルカリ金属)は、THFに単独では溶解しない。そのため、重合開始剤を重合溶媒に溶解
させ、均一な重合を行うためには、開始剤原料アルコールであるメタノールを過剰量用い
る必要がある。しかし、これらのアルコールが反応系中に過剰に存在すると、重合速度の
低下が避けられず、重合速度を上げるためには高温や高圧などの厳しい反応条件が必要と
なる場合がある。これに対し、本発明の製造方法において重合開始剤として用いられる一
般式(V)で表される化合物はTHF等の重合溶媒に易溶であり、開始剤原料アルコール
の存在を必要としないため、温和な条件下での重合が可能である。
【0038】
このように、次の[工程2]において温和な条件で十分な重合速度を得るためには、[
工程1]において、開始剤原料アルコール残量が少ない状態の重合開始剤を合成すること
が好ましい。具体的には、一般式(IV)で表される開始剤原料アルコールから一般式(
V)で表される重合開始剤を合成した後の、一般式(V)で表される重合開始剤と一般式
(IV)で表される原料アルコールの物質量比率が、100:0〜80:20(mol%
)であることが好ましく、さらに好ましくは100:0〜90:10(mol%)となる
ように反応させる。そのためには、[工程1]を、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物
の使用モル数が一般式(IV)で表される化合物の0.8〜1.5、好ましくは0.9〜
1.0となるような条件で行うことが好ましい。すなわち、[工程1]においては、開始剤
原料アルコール残量が少ない反応物を得ることが好ましい。
【0039】
また、上述の一般式(V)で表される重合開始剤を合成した後に、一般式(IV)で表
される開始剤原料アルコールを反応系から減圧留去することも可能である。その場合、[
工程1]の終了後の一般式(V)で表される重合開始剤と一般式(IV)で表される開始
剤原料アルコールの物質量比率が100:0〜98:2(mol%)となるまで原料アル
コールを除去することが好ましく、さらに好ましくは100:0〜99:1(mol%)
となるまで原料アルコールを除去する。原料アルコール残量を少なくすることで次の[工
程2]における重合速度をより高めることができる。
【0040】
本発明の製造方法においては、上述の通り、重合開始剤の重合溶媒への溶解度向上要因
であり、一方重合速度低下要因でもある、一般式(IV)で表される開始剤原料アルコー
ル化合物が残っておらずとも、重合開始剤である一般式(V)で
表される化合物を重合溶
媒に溶解することができる。その役割を果たす構造が一般式(V)中の(R
A4O)の繰
り返し単位であり、上記構造を有することで重合開始剤と重合溶媒との相溶性が高まり、
開始剤原料アルコールの実質的な存在なしに、重合開始剤を重合溶媒に溶解させることが
出来る。その結果、均一な系での重合が可能となり、温和な条件での狭分散ポリアルキレ
ングリコール誘導体の製造が可能となる。
【0041】
[工程2]では、一般式(V)で表される化合物(重合開始剤)を、重合溶媒中で、ア
ルキレンオキシドと反応させ、下記一般式(VI)で表される化合物を合成する。
R
A3O(R
A4O)
n−1R
A4O
−M
+ (VI)
【0042】
[工程2]では、好ましくは一般式(V)で表される化合物を重合溶媒中に完全に溶解
させた後、アルキレンオキシドと反応させる。上記のように、一般式(V)で表される化
合物は、その原料アルコールである一般式(IV)で表される化合物が実質的に存在しな
くとも重合溶媒に易溶である。一般式(V)で表される化合物が重合溶媒中に完全に溶解
できたことは、例えば目視により重合溶媒中に塩の析出や白濁が見られないことで確認す
ることができる。この際、一般式(V)で表される化合物の質量に対する重合溶媒の質量
が10倍量以下(かつ1倍量以上)の状態で、塩の析出や白濁が見られないことが望まし
い。すなわち、一般式(V)で表される化合物を含む重合溶媒溶液中の一般式(V)で表
される化合物の濃度としては、9.1重量%以上(かつ50重量%以下)の状態で、塩の
析出や白濁が見られないことが望ましい。上記のように一般式(V)で表される化合物が
重合溶媒中に完全に溶解できたことを確認した後は、確認時の濃度のまま一般式(V)で
表される化合物を含む重合溶媒溶液を重合反応に使用してもよいし、更に重合溶媒を加え
て希釈した状態で重合反応に使用してもよい。なお、重合溶媒の量は、重合反応開始時に
おいて、使用するアルキレンオキシドの質量に対して、例えば1〜50倍量、好ましくは
2〜25倍量となるように調整されればよい。
【0043】
また、上記のように、原料アルコールの存在は重合速度の低下要因となるため、[工程
2]では、原料アルコールが少ない状態で重合開始剤を用いることが好ましい。例えば、
[工程1]で得られた、好ましくは100:0〜80:20の物質量比率で一般式(V)
で表される重合開始剤と一般式(IV)で表される原料アルコールとを含む反応混合物を
、そのまま、重合溶媒に溶解させて用いることが好ましい。
【0044】
[工程2]で使用する重合溶媒としては、重合開始剤との相溶性が高いという観点から
、炭素数4〜10の環状エーテル化合物や直鎖状、もしくは分岐状のエーテル化合物が好
ましく用いられる。環状エーテル化合物の具体例としては、フラン、2,3−ジヒドロフ
ラン、2,5−ジヒドロフラン、2,3−ジメチルフラン、2,5−ジメチルフラン、テ
トラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロ
フラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、1
,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソ
ラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、テ
トラヒドロピラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,4−ジメチル−1,
3−ジオキサン、1,4−ベンゾジオキサン、1,3,5−トリオキサン、オキセパン等
が例示できるが、これらに限定はされない。直鎖状、もしくは分岐状のエーテル化合物の
具体例としては、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメ
チルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示できるが、これらに限
定はされない。特にTHFが好ましく用いられる。また、エーテル化合物以外の有機溶媒
を使用することも可能であり、その具体例としてはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳
香族炭化水素類等が例示出来るが、これらに限定はされない。用いる有機溶媒は、単体溶
剤でも良いし、二種以上を組み合わせて用いても良く、組み合わせる場合の、化合物の組
み合わせ、並びにその混合比は限定されない。
【0045】
重合反応に使用する重合溶媒の量は特に限定されないが、使用するアルキレンオキシド
の質量に対して、例えば1〜50倍量、好ましくは2〜30倍量、さらに好ましくは3〜
20倍量である。重合溶媒は、金属ナトリウム等の脱水剤を用いて蒸留したものを使用す
ることが好ましい。重合溶媒の含水率は、例えば50ppm以下、好ましくは10ppm
以下、さらに好ましくは5ppm以下である。
【0046】
使用するアルキレンオキシドの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシ
ド、ブチレンオキシド等が挙げられる。中でも、重合しやすいエチレンオキシド、プロピ
レンオキシドが好ましい。重合反応に使用する一般式(V)で表される化合物とアルキレ
ンオキシドとの使用量比としては、特に限定されないが、一般式(V)で表される化合物
:アルキレンオキシドの物質量比として、例えば1:1〜1:448、好ましくは1:1
0〜1:400である。
【0047】
[工程2]では、一般式(V)で表される化合物を重合溶媒に溶解させた反応系にアル
キレンオキシドを一括添加しても良いし、アルキレンオキシドを重合溶媒に溶解させた溶
液を上記の反応系に滴下しても良い。重合反応は、例えば30〜60℃の温度で実施し、
好ましくは40〜60℃、さらに好ましくは45〜60℃の温度で実施する。重合反応時
の圧力は、例えば1.0MPa以下、好ましくは0.5MPa以下である。重合反応の進
行度はGPCで追跡し、アルキレンオキシドの転化率に変化がなくなった時点を終点とす
ることができる。本発明で重合開始剤として用いる一般式(V)で表される化合物は、上
記のように重合溶媒に易溶であり、開始剤原料アルコールの存在を必要としないため、重
合に際しては高温や高圧などの厳しい反応条件を必要とせず、温和な条件下での重合が可
能である。上記のように、一般式(V)で表される重合開始剤を用いることにより、温和
な条件下で一般式(VI)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を得ることができ
る。よって、本発明は一般式(V)で表される重合開始剤を用いる(好ましくは[工程1
]及び[工程2]を含む)、一般式(VI)で表されるポリアルキレングリコール誘導体
の製造方法にも関する。
【0048】
[工程3]では、前の[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物を、下記一
般式(I)で表される求電子剤と反応させ、一般式(II)で表される化合物を合成する
。
【0050】
好ましくは、[工程3]では、[工程2]で得られた一般式(VI)で表される化合物
を、精製することなく、そのまま一般式(I)で表される求電子剤との反応に使用する。
このことにより、分離精製工程の簡略化に伴うコスト抑制が実現するだけでなく、精製作
業に伴う収率の低下(ポリマーの製造設備への付着や貧溶媒への溶解などによる収率の低
下)を抑えられるといった利点をもたらす。
【0051】
すなわち、[工程3]では、一般式(VI)で表される化合物を含む[工程2]終了後
の反応液をそのまま使用しても良いし、濃縮して使用することも可能である。反応液を濃
縮する場合、一般式(VI)で表される化合物の濃度が、例えば10〜50質量%、好ま
しくは15〜45重量%、さらに好ましくは20〜40質量%となるまで濃縮する。[工
程3]の反応では、[工程2]終了後の反応液もしくはその濃縮液中に一般式(I)で表
される求電子剤を添加して反応させることが好ましい。一般式(I)で表される求電子剤
の反応系への添加方法としては、反応系に一括添加しても良いし、適切な溶媒に一般式(
I)で表される求電子剤を溶解させた溶液を反応系に滴下しても良い。この際に使用する
溶媒としては、例えば、[工程2]で重合溶媒として例示した溶媒と同じ溶媒が挙げられる
。この反応に使用する一般式(I)で表される求電子剤の量は、一般式(VI)で表され
る化合物のモル数に対して、例えば1〜20当量であり、好ましくは1〜5当量、さらに
好ましくは1〜3当量である。
【0052】
[工程3]の反応は、触媒なしに進行するが、さらに反応を加速するために塩基性化合
物を反応系に添加することができる。その場合、用いられる塩基性化合物としては、水酸
化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシドなどが挙げられるがこれ
らに限定はされない。塩基性化合物の添加量は、一般式(VI)で表される化合物のモル
数に対して、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量
である。
【0053】
[工程3]の反応は、例えば30〜60℃、好ましくは30〜50℃、さらに好ましく
は30〜45℃の温度で実施することができる。反応はNMRによって追跡し、転化率に
変化がなくなった時点を終点とすることができる。
【0054】
[工程3]では、上記のように、一般式(VI)で表される化合物との反応に、一般式
(I)で表される求電子剤(本明細書中、「求電子剤(I)」と称することがある)を使
用する。[工程3]では、求電子剤として一般式(I)で表される化合物を使用するため
に、比較的少量の求電子剤を使うだけで、一般式(VI)で表される化合物の求核反応が
完結できるという利点がある。一方で、従来のように、求電子剤としてアクリロニトリル
を使用する場合では、一般式(VI)で表される化合物の求核反応を100%進行させる
ために、大過剰量の求電子剤が必要となる場合があり、ポリアクリロニトリルが副生する
可能性があるが、本発明の方法ではこのような副生成物は発生しない。
【0055】
[工程3]で使用する求電子剤(I)は、上記のとおり、重金属触媒を使用することな
く脱保護できる保護基でアミノ基が保護されている。求電子剤(I)は、一般式(I)中
のR
A1a及びR
A1bで表される保護基の種類によって、例えば、以下の好ましい求電
子剤(I−I)〜(I−IV)に分類して例示することができるが、これらに限定される
ものではない。
【0056】
求電子剤(I−I)は、上記一般式(I)中のR
A1a及びR
A1bが互いに独立にア
ミノ基の保護基を示す場合か、又は、一方が水素原子、他方がアミノ基の保護基を示す場
合であって、R
A1a及び/又はR
A1bが、Si(R
1)
3で表される構造の保護基(
トリアルキルシリル基)である場合の求電子剤である。
【0057】
上記のSi(R
1)
3で表される構造中、R
1は独立して炭素数1〜6の直鎖状、又は
炭素数3〜6の分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基である。或いは、R
1は互いに結
合してこれらが結合するケイ素原子と共に3〜6員環を形成していてもよい。R
1の具体
例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチ
ル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプ
ロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。また、
R
1が互いに結合してケイ素原子と共に環を形成する場合はこれらの基から水素原子が一
つ脱離した基が挙げられる。
Si(R
1)
3で表される構造の保護基の好ましい具体例としては、例えば、トリメチ
ルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等が挙げられるが
、これらに限定はされない。
【0058】
求電子剤(I−II)は、上記一般式(I)中のR
A1a及びR
A1bが互いに独立に
アミノ基の保護基を示す場合か、又は、一方が水素原子、他方がアミノ基の保護基を示す
場合であって、R
A1a及び/又はR
A1bが、R
A6OCOで表される構造の保護基で
ある場合の求電子剤である。
【0059】
上記のR
A6OCOで表される構造中、R
A6は炭素数1〜20の1価の炭化水素の残
基であり、該残基はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ケイ素原子、リン
原子又はホウ素原子を含んでいてもよい。
R
A6OCOの構造で示される保護基の具体例としては、メチルオキシカルボニル基、
エチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカ
ルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキ
シカルボニル基、2−トリメチルシリルエチルオキシカルボニル基、フェニルエチルオキ
シカルボニル基、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルオキシカルボニル基、1,
1−ジメチル−2−ハロエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2,2−ジブロ
モエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルオキシ
カルボニル基、1−メチル−1−(4−ビフェニルイル)エチルオキシカルボニル基、1−
(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−1−メチルエチルオキシカルボニル基、2−(2'−
ピリジル)エチルオキシカルボニル基、2−(4'−ピリジル)エチルオキシカルボニル基、
2−(N,N−ジシクロヘキシルカルボキシアミド)エチルオキシカルボニル基、1−アダ
マンチルオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、
1−イソプロピルアリルオキシカルボニル基、シンナミルオキシカルボニル基、4−ニト
ロシンナミルオキシカルボニル基、8−キノリルオキシカルボニル基、N−ヒドロキシピ
ペリジニルオキシカルボニル基、アルキルジチオカルボニル基、ベンジルオキシカルボニ
ル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル
基、p−ブロモベンジルオキシカルボニル基、p−クロロベンジルオキシカルボニル基、
2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル基、4−メチルスルフィニルベンジルオキシ
カルボニル基、9−アントリルメチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカル
ボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、9−(2,7−ジブロモ)フルオ
レニルメチルオキシカルボニル基、2,7−ジ−t−ブチル−[9−(10,10−ジオキ
ソ−チオキサンチル)]メチルオキシカルボニル基、4−メトキシフェナシルオキシカルボ
ニル基、2−メチルチオエチルオキシカルボニル基、2−メチルスルホニルエチルオキシ
カルボニル基、2−(p−トルエンスルホニル)エチルオキシカルボニル基、[2−(1,3
−ジチアニル)]メチルオキシカルボニル基、4−メチルチオフェニルオキシカルボニル基
、2,4−ジメチルチオフェニルオキシカルボニル基、2−ホスホニオエチルオキシカル
ボニル基、2−トリフェニルホスホニオイソプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジメ
チル−2−シアノエチルオキシカルボニル基、m−クロロ−p−アシロキシベンジルオキ
シカルボニル基、p−(ジヒドロキシボリル)ベンジルオキシカルボニル基、5−ベンゾイ
ソオキサゾリルメチルオキシカルボニル基、2−(トリフルオロメチル)−6−クロモニル
メチルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、m−ニトロフェニルオキシカ
ルボニル基、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、o−ニトロベンジルオキ
シカルボニル基、3,4−ジメトキシ−6−ニトロベンジルオキシカルボニル基やフェニ
ル(o−ニトロフェニル)メチルオキシカルボニル基等が例示できる。中でも、tert−
ブチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、アリル
オキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカル
ボニル基が好ましい。
【0060】
求電子剤(I−III)は、上記一般式(I)中のR
A1a及びR
A1bが互いに結合
してアミノ基の窒素原子と共に環を形成する環状保護基である場合の求電子剤である。
このような求電子剤(I−III)における環状保護基としては、N−フタロイル基、
N−テトラクロロフタロイル基、N−4−ニトロフタロイル基、N−ジチアスクシロイル
基、N−2,3−ジフェニルマレオイル基、N−2,5−ジメチルピロリル基、N−2,
5−ビス(トリイソプロピルシロキシ)ピロリル基、N−1,1,3,3−テトラメチル
−1,3−ジシライソインドイル基、3,5−ジニトロ−4−ピリドニル基や1,3,5
−ジオキサジニル基、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラ−1−アザシクロ
ペンタン等が例示できるが、これらに限定はされない。中でも、N−フタロイル基が好ま
しい。
【0061】
求電子剤(I−IV)は、R
A1a及び/又はR
A1bが、上記求電子剤(I−I)の
保護基(Si(R
1)
3で表される構造の保護基)、上記求電子剤(I−II)の保護基
(R
A6OCOで表される構造の保護基)、及び上記求電子剤(I−III)の保護基(
R
A1a及びR
A1bが互いに結合して窒素原子と共に環を形成している環状保護基)以
外の保護基である場合の求電子剤である。
このような求電子剤(I−IV)における保護基としては、ベンジル基、p−メトキシ
ベンジル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基、(2−トリ
メチルシリル)エタンスルホニル基、アリル基、ピバロイル基、メトキシメチル基、ジ(
4−メトキシフェニル)メチル基、5−ジベンゾスベリル基、トリニルメチル基、(4−メ
トキシフェニル)ジフェニルメチル基、9−フェニルフルオレニル基、[2−(トリメチル
シリル)エトキシ]メチル基、N−3−アセトキシプロピル基等が例示できるが、これらの
保護基に限定はされない。中でも、ベンジル基、p−トルエンスルホニル基、2−ニトロ
ベンゼンスルホニル基、アリル基が好ましい。
【0062】
上記一般式(I)で表される求電子剤は、好ましくは上記した求電子剤(I−I)〜(
I−IV)のいずれかであり、中でも下記一般式(I−I−I)で表される求電子剤がよ
り好ましい。すなわち、一般式(I)中のR
A1a及びR
A1bが、互いに独立してトリ
アルキルシリル基である求電子剤がより好ましい。アミノ基の保護基がいずれもトリアル
キルシリル基であるため、後の[工程4]での脱保護が容易であり、また[工程3]の塩
基性の反応液中で安定であるという利点を有する。また、R
A1a又はR
A1bとしての
水素原子を有しておらず、そのため不要な反応を生じにくいという利点もある。そのため
、より簡便に、かつ安定して狭分散かつ高純度なポリアルキレングリコール誘導体の製造
を行うことが可能となる。
【0063】
【化5】
(上記一般式(I−I−I)中、R
1は上記求電子剤(I−I)におけるR
1と同一であ
り、R
A2及びXは上記一般式(I)中のR
A2及びXと同一である。)
【0064】
上記の求電子剤(I−I)〜(I−IV)は、従来公知の様々な方法で合成することが
できる。例えば、求電子剤(I−I)の合成方法としては、脱離基を持ったアミンに対し
て、シリル化剤を使いアミノ基の保護をすることが挙げられる。脱離基を持ったアミンの
具体例としては、3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩、3−クロロプロピルアミン塩
化水素酸塩などのハロゲン化アミンが挙げられるが、これらに限定はされない。シリル化
剤の具体例としては、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、トリフルオロ
メタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル(
以下TESOTfと記す)などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0065】
求電子剤(I−I)合成の別法としては、アミノ基をシリル保護したアルコールを、ス
ルホン酸ハロゲン化物と反応させることにより、末端のヒドロキシ基を脱離基に変換する
方法が挙げられる。アミノ基をシリル保護したアルコールの具体例としては、3−ビス(
トリメチルシリル)アミノ−1−プロパノール、3−ビス(トリエチルシリル)アミノ−
1−プロパノールなどが挙げられるが、これらに限定はされない。スルホン酸ハロゲン化
物の具体例としては、塩化パラトルエンスルホニル(以下TsClと記す)、塩化メタン
スルホニル(以下MsClと記す)などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0066】
求電子剤(I−II)の合成方法としては、脱離基を持ったアミンに対して、カルバメ
ート化剤を使いアミノ基の保護をすることが挙げられるが、これに限定はされない。脱離
基を持ったアミンの具体例としては、3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩、3−クロ
ロプロピルアミン塩化水素酸塩などのハロゲン化アミンが挙げられるが、これらに限定は
されない。カルバメート化剤の具体例としては、ジ−tert−ブチルジカルボネート、
クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸フルオレニルメチル、クロロギ酸2,2,2−トリクロ
ロエチル、クロロギ酸アリルなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0067】
求電子剤(I−III)の合成方法としては、環状酸無水物にアミノアルコールを反応
させて、得られた環状イミドアルコールをスルホン酸ハロゲン化物と反応させることによ
り、末端のヒドロキシ基を脱離基に変換する方法が挙げられるが、これに限定はされない
。環状酸無水物の具体例としては、無水フタル酸などが挙げられ、アミノアルコールの具
体例としては、3−アミノ−1−プロパノールなどが挙げられ、環状イミドアルコールの
具体例としては、N−(3−ヒドロキシプロピル)フタルイミドなどが挙げられるが、こ
れらに限定はされない。スルホン酸ハロゲン化物の具体例としては、TsCl、MsCl
などが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0068】
求電子剤(I−IV)の合成方法としては、脱離基を持ったそれぞれ対応する保護基に
アミノアルコールを反応させて、得られた保護アミノアルコールをスルホン酸ハロゲン化
物と反応させることにより、末端のヒドロキシ基を脱離基に変換する方法が挙げられるが
、これに限定はされない。脱離基を持った保護基の具体例としては、ベンジルブロマイド
、TsCl、2−ニトロベンゼンスルホニルクロライド、アリルブロマイドなどが挙げら
れ、アミノアルコールの具体例としては、3−アミノ−1−プロパノールなどが挙げられ
、保護アミノアルコールの具体例としては、3−ビスベンジルアミノ−1−プロパノ−ル
、3−ビス(p−トルエンスルホニル)アミノ−1−プロパノ−ル、3−ビス(ニトロベ
ンゼンスルホニル)アミノ−1−プロパノ−ル、3−ビスアリルアミノ−1−プロパノ−
ルなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0069】
[工程3]の反応生成物である一般式(II)で表される化合物は、次工程に移る前に
、固体として反応系から取り出して使用することができる。その場合、[工程3]終了後
の反応液をそのままで、又は濃縮後、貧溶媒に滴下して一般式(II)で表される化合物
の晶析を行うことができる。濃縮する際は、一般式(II)で表される化合物の濃度が、
例えば10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質
量%となるように調製する。また、晶析を行う前にエーテル化反応で生じた塩をろ過によ
り反応液から除去することにより、不純物混入を防いで、純度の高い一般式(II)で表
される化合物を取り出すことができる。
【0070】
[工程3]のエーテル化反応で生じた塩をろ過により反応溶液から除去する工程はその
まま反応溶媒で行ってもよいし、良溶媒に置換してから行ってもよい。その場合の良溶媒
の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン
、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン
等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類
、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセ
トニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。塩が析出しやすい溶媒を用いる
とポリマー中に残存する塩を減らすことができるため、ベンゼン、トルエン、キシレン等
の芳香族炭化水素類等が好ましい。これらの溶媒は、単独で用いることもできるし、一種
又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定され
ない。
【0071】
[工程3]で生じたポリマーはその構造に酸素原子を多量に含むため、エーテル化反応
で生じた塩をポリマー内に取り込んでしまうことがある。その場合吸着材を用いて塩を除
去することができる。吸着材としては水酸化アルミニウム(例えば、協和化学工業社製「
キョーワード200」)、合成ハイドロタルサイド(例えば、協和化学工業社製「キョー
ワード500」)、合成珪酸マグネシウム(例えば、協和化学工業社製「キョーワード6
00」)、合成珪酸アルミニウム(例えば、協和化学工業社製「キョーワード700」、
酸化アルミニウム・酸化マグネシウム固溶体(例えば、協和化学工業社製「KW−200
0」)、富田製薬(株)製「トミタAD700NS」)等が用いられるが、塩を除去する
ことができる性能を有するものであればこれらに限定はされない。中でもイオン捕捉能が
高いことからKW−2000が好ましい。吸着剤の使用量は一般式(II)で表される化
合物の質量に対して0.01〜10倍量、好ましくは0.1〜8倍量、さらに好ましくは
0.3〜6倍量であるが特に限定はされない。吸着剤は、上記一般式(VI)で表される
化合物と、一般式(I)で表される求電子剤との反応が終了した時点で、反応液に直接投
入することもできるし、反応が終了し生成したアルカリ金属塩をろ過した後に反応液に投
入してもよい。投入後0.5〜6時間反応させた後、ろ過により除去を行うことができる
が反応時間は特に限定されない。吸着材を用いる時の方法としてはバッチ式として反応溶
液中に吸着材を添加、撹拌してもよいし、カラム式として吸着材を充填したカラム上に反
応溶液を通過させてもよい。吸着処理を行う場合の溶媒の具体例としては、THF、1、
4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素
類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチ
ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(DMS
O)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるが、こ
れらに限定はされない。塩の吸着能を高めるためにはベンゼン、トルエン、キシレン等の
芳香族炭化水素類等が好ましい。これらの溶媒は、単独で用いることもできるし、一種又
は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されな
い。
【0072】
なお、上記のように、[工程3]では、工程簡略化の観点から、[工程2]で得られる
一般式(VI)で表される化合物を、精製することなくそのまま求電子剤(I)との反応
に使用することが好ましい(精製を経ない態様)。すなわち、[工程2]の後にアニオン
を残したまま求電子剤(I)を反応させることが好ましい。この場合、(VI)→(II
)というように、一般式(VI)で表される化合物から直接、一般式(II)で表される
化合物を合成する。
或いは、[工程3]では、[工程2]で得られる一般式(VI)で表される化合物を酸
性化合物等により反応停止させ、これにより得られた下記一般式(IX)で表される化合
物を精製して、これを求電子剤(I)と反応させることによって一般式(II)で表され
る化合物を合成することもできる(精製を経る態様)。すなわち、[工程2]の後にアニ
オンをいったん酸等で反応停止させてから求電子剤(I)を反応させてもよい。具体的に
は、[工程2]終了後の反応液に酸性化合物等を添加して、一般式(VI)で表される化
合物を反応停止させることによって、一般式(VI)で表される化合物を下記一般式(I
X)で表される化合物へと変換する。次いで、得られた下記一般式(IX)で表される化
合物を、例えば貧溶媒への滴下による晶析によって精製し、反応系から取り出す。次いで
、取り出した精製後の下記一般式(IX)で表される化合物を、塩基性化合物存在下で、
求電子剤(I)と反応させることにより、上記一般式(II)で表される化合物を得るこ
とができる。なお、この場合は、下記一般式(IX)で表される化合物が、塩基性化合物
との反応によって再び一般式(VI)で表される化合物に戻された後に、求電子剤(I)
と反応することとなる。すなわち、(VI)→(IX)→(VI)→(II)というよう
に、一般式(VI)で表される化合物から一般式(IX)で表される化合物を経由して一
般式(II)で表される化合物を合成する。
【0073】
【化6】
(一般式(IX)中、R
A3、R
A4、及びnは上記一般式(II)及び(III)のR
A3、R
A4、及びnと同一である)
【0074】
この精製を経る態様では、反応停止後、得られる一般式(IX)で表される化合物につ
いて、例えば1H−NMRによる分析を行い、[工程2]の重合により生成物が所望のと
おりに合成できたかどうかを確認することができる。また、重合で生成した低分子化合物
を貧溶媒への滴下による晶析により反応系から除去した後に求電子剤(I)との反応を行
うため、低分子化合物が求電子剤(I)と反応してアミノ基を有する化合物へと変換され
るのを防ぐことができる。
【0075】
反応停止に使用される酸性化合物の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハ
ク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、塩
酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸などの無機酸類、ベンゼンスルホン酸、p−トルエン
スルホン酸等のスルホン酸類、オルガノ(株)製アンバーリストシリーズ等の固体酸等が
例示できるがこれらに限定はされない。これらの酸性化合物の使用量としては、一般式(
VI)で表される化合物のモル数の、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さら
に好ましくは1〜2当量である。これらの酸性化合物は単独で用いることもできるし、一
種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定さ
れない。
【0076】
またアルコールや水などのプロトン性化合物と塩基吸着材を組み合わせて反応を停止す
ることもできる。プロトン性化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プ
ロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルア
ルコール、tert−ブチルアルコール、水等が例示できるがこれらに限定はされない。
これらのプロトン性化合物の使用量としては、一般式(VI)で表される化合物のモル数
の、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量である。
これらのプロトン性化合物は単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して
用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。吸着材としては上
述の[工程3]に記載したような吸着材を使うことができるが特に限定はされない。吸着
剤の使用量は一般式(VI)で表される化合物の質量に対して0.01〜10倍量、好ま
しくは0.02〜1倍量、さらに好ましくは0.03〜0.5倍量であるが特に限定はさ
れない。
【0077】
反応停止後、そのまま貧溶媒で晶析を行ってもよいし、良溶媒に置換してから晶析を行
ってもよい。その場合の良溶媒の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエ
ーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n
−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル
イソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチル
ホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。
これらの溶媒は、単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いること
もできる。その場
合、混合比に関しては特に限定されない。溶媒置換後の一般式(IX)
で表される化合物の濃度は、例えば10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、さ
らに好ましくは20〜40質量%である。
【0078】
貧溶媒としては、一般式(IX)で表される化合物の溶解性が低いものが用いられる。
貧溶媒の具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペン
タン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭化水素やジエチルエー
テル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルなどのエーテル類が好適に用い
られる。貧溶媒の使用量は特に限定されないが、一般式(IX)で表される化合物の質量
に対して、例えば5〜100倍量、好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは5〜20
倍量の溶媒を使用する。貧溶媒は単独で用いることもできる他、一種又は二種以上を混合
して用いることもできる。また、他の溶媒と混合して使用することも可能である。混合す
ることができる、他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン
等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類
、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチ
ルエーテル、1、4−ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロピ
ルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジメチルスル
ホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等が
例示できるがこれらに限定はされない。貧溶媒として二種以上の溶媒を混合して用いる場
合、混合比に関しては特に限定されない。
【0079】
晶析により、一般式(IX)で表される化合物の固体を析出させた後、必要に応じて固
体の洗浄を行い、精製を行っても良い。洗浄に用いる溶媒は、上述と同じ貧溶媒であるこ
とが望ましいが、洗浄溶媒の使用量も含めて特に限定はされない。得られた固体を減圧下
で乾燥させることにより、一般式(IX)で表される化合物を固体として取り出すことが
できる。上記のように、[工程1]及び[工程2]、並びに[工程2]で得られた一般式
(VI)で表される化合物を酸性化合物又はプロトン性化合物で反応停止させることによ
って、一般式(IX)で表されるポリアルキレングリコール誘導体を得ることができる。
すなわち本発明は、上記の工程を含む、一般式(IX)で表されるポリアルキレングリコ
ール誘導体の製造方法にも関する。
【0080】
その後の一般式(IX)で表される化合物と求電子剤(I)との反応時に使用される塩
基性化合物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムtert−
ブトキシドなどが挙げられるがこれらに限定はされない。塩基性化合物の添加量は、一般
式(IX)で表される化合物のモル数に対して、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5
当量、さらに好ましくは1〜2当量である。
【0081】
一般式(IX)で表される化合物と求電子剤(I)との反応時の反応温度等の条件は、
上記した精製を経ない態様における、一般式(VI)で表される化合物と求電子剤(I)
との反応条件と同様である。また、一般式(IX)で表される化合物と求電子剤(I)と
の反応により得られる一般式(II)で表される化合物は、次工程に移る前に固体として
反応系から取り出して使用することができるが、その方法も、上記した精製を経ない態様
における、一般式(II)で表される化合物を取り出す方法と同様である。
【0082】
[工程4]では、[工程3]で得られた上記一般式(II)で表される化合物における
保護基の脱保護を行う。この脱保護は、重金属触媒を使用することなく行われる。なお、
ここでいう重金属触媒は、例えばCo、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、Cr等の
重金属を原料とした触媒である。
【0083】
[工程4]において、重金属触媒を用いずに脱保護を行う際の方法は特に限定されない
が、例えば上記一般式(II)中のR
A1a及び/又はR
A1bがシリル基の場合(求電
子剤(I−I))は、酸触媒下で、水又はアルコール(R
6OH:式中R
6は炭素数1〜
5の炭化水素基である)と上記一般式(II)で表される化合物とを反応させることによ
り、一般式(III)で表される化合物へと変換することができる。使用する酸触媒の具
体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、リ
ンゴ酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸など
の無機酸類、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、オルガノ
(株)製アンバーリストシリーズ等の固体酸等が例示できるが、これらに限定はされない
。これらの酸性化合物の使用量としては、一般式(II)で表される化合物のモル数の、
例えば0.01〜1000当量、好ましくは0.1〜100当量、さらに好ましくは1〜
10当量である。これらの酸性化合物は単独で用いることもできるし、一種又は二種以上
を混合して用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。
【0084】
また、例えばR
A1a及び/又はR
A1bがtert−ブチルオキシカルボニル基の場
合(求電子剤(I−II))は、トリフルオロ酢酸や塩酸などの強酸を上記一般式(II
)で表される化合物に作用させることで脱保護できる。これらの強酸の使用量としては、
一般式(II)で表される化合物のモル数の、例えば0.01〜1000当量、好ましく
は0.1〜100当量、さらに好ましくは1〜10当量である。
【0085】
例えばR
A1a及びR
A1bがN−フタロイル基の場合(求電子剤(I−III))は
、アルコール中でヒドラジン水和物を上記一般式(II)で表される化合物と反応させる
ことで、フタロイル基が脱離できる。使用されるアルコールとしては、メタノール、エタ
ノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s
ec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどが例示できる。アルコールの
使用量としては、一般式(II)で表される化合物の質量に対して、例えば1〜100倍
量、好ましくは3〜50倍量、さらに好ましくは5〜10倍量である。使用されるヒドラ
ジン水和物の使用量としては、一般式(II)で表される化合物のモル数の、例えば1〜
50当量、好ましくは2〜20当量、さらに好ましくは3〜10当量である。
【0086】
例えばR
A1a及び/又はR
A1bがベンジル基やアリル基の場合(求電子剤(I−I
V))は、液体アンモニウムと金属ナトリウムを使用するバーチ還元の条件で、上記一般
式(II)で表される化合物の脱保護を行うことができる。使用される液体アンモニウム
の使用量としては、一般式(II)で表される化合物の質量に対して、例えば1〜100
倍量、好ましくは3〜50倍量、さらに好ましくは5〜10倍量である。使用される金属
ナトリウムの使用量としては、一般式(II)で表される化合物のモル数の、例えば2〜
50当量、好ましくは2〜10当量、さらに好ましくは2〜5当量である。以上の例のよ
うに重金属触媒を使用しない条件を適切に選択することにより、脱保護を行うことができ
、その条件は限定されない。
【0087】
酸触媒により脱保護した場合、生成した一般式(III)で表されるアミンと酸が塩を
形成し酸を除去できないことがある。その際、生成した塩に塩基性化合物を添加して酸と
反応させると、添加した塩基性化合物と酸の塩が形成し、一般式(III)で表されるア
ミンを取り出すことができる。このとき生成した塩はろ過により除去することができる。
生じた塩がポリマー内に取り込まれてしまった場合、吸着材を用いて塩を除去することが
できる。そのときの吸着材としては上述の[工程3]に記載したような吸着材を使うこと
ができるが特に限定はされない。吸着剤の使用量は一般式(III)で表される化合物の
質量に対して0.01〜10倍量、好ましくは0.1〜8倍量、さらに好ましくは0.3
〜6倍量であるが特に限定はされない。用いる塩基性化合物としては、水酸化カリウム、
水酸化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメ
トキシドなどが挙げられるがこれらに限定はされない。塩基性化合物の添加量は、脱保護
に使用した酸触媒のモル数に対して、例えば1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さら
に好ましくは1〜2当量である。ろ過を行う際の溶媒としては反応溶媒をそのまま用いて
もよいし、塩が析出しやすい溶媒に置換してからろ過しても良い。塩が析出しやすい溶媒
の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン
、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン
等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類
、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセ
トニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。ろ過性を高めるためにはベンゼ
ン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が好ましい。これらの溶媒は、単独で用
いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、混合
比に関しては特に限定されない。
【0088】
酸触媒を除去する際、塩基性化合物を加えずに直接吸着材を反応系に添加することもで
きるが、その場合ろ過性が低下する可能性があるため上述の塩基性化合物を添加した後に
吸着材を使用することが好ましい。
【0089】
脱保護後、そのまま貧溶媒で晶析を行ってもよいし、良溶媒に置換してから晶析を行っ
てもよく、また上述の塩基性化合物との反応と吸着材処理をしてから晶析を行ってもよい
。良溶媒の具体例としては、THF、1、4−ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロ
ラクトン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の
ケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF
)、アセトニトリル等が例示できるが、これらに限定はされない。これらの溶媒は、単独
で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して用いることもできる。その場合、
混合比に関しては特に限定されない。溶媒置換後の濃度は、例えば10〜50質量%、好
ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。
【0090】
貧溶媒としては、一般式(III)で表される化合物の溶解性が低いものが用いられる
。貧溶媒の具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペ
ンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭化水素やジエチルエ
ーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルなどのエーテル類が好適に用
いられる。貧溶媒の使用量は特に限定されないが、一般式(III)で表される化合物の
質量に対して、例えば5〜100倍量、好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは5〜
20倍量の溶媒を使用する。貧溶媒は単独で用いることもできる他、一種又は二種以上を
混合して用いることもできる。また、他の溶媒と混合して使用することも可能である。混
合することができる他の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクト
ン等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン
類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエ
チルエーテル、1、4−ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロ
ピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジメチルス
ルホキシド(DMSO)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル等
が例示できるがこれらに限定はされない。貧溶媒として二種以上の溶媒を混合して用いる
場合、混合比に関しては特に限定されない。
【0091】
[工程4]では、晶析により、一般式(III)で表される化合物の固体を析出させた
後、必要に応じて固体の洗浄を行い、精製を行っても良い。洗浄に用いる溶媒は、上述と
同じ貧溶媒であることが望ましいが、洗浄溶媒の使用量も含めて特に限定はされない。得
られた固体を減圧下で乾燥させることにより、一般式(III)で表される化合物を固体
として取り出すことができる。
【0092】
本発明においては、アミノ基は上記のような脱保護により得られるため、例えば特許文
献5に記載の方法で生成しうる副生成物(下記(VII)〜(IX)で表される化合物)
は実質的に生成せず、最終的に一般式(III)で表される末端にアミノ基を有する狭分
散かつ高純度なポリアルキレングリコール誘導体を合成することができる。これに対し、
例えば特許文献5に記載の方法でシアノエチル化物を水素還元してアミノ基を有するポリ
アルキレングリコール誘導体へ導く場合、アクリロニトリルのβ脱離を伴うため、下記一
般式(IX)で示されるPEG誘導体およびポリアクリロニトリルの副生を防ぐことがで
きない。また、上記水素還元工程ではニトリルの還元中間体であるイミンに生成物のアミ
ンが付加することにより、下記一般式(VII)、(VIII)で表される2級、3級ア
ミン化合物が副生する可能性がある。これらの副反応は反応系へのアンモニアや酢酸の添
加により抑制することが出来るものの、従来の方法で完全に制御することは困難である。
【0093】
【化7】
(上記一般式(VII)〜(IX)中、R
A2、R
A3、R
A4及びnは上記一般式(I
)〜(III)のR
A2、R
A3、R
A4及びnと同一である)
【0094】
[工程4]の後に行う[工程5]〜[工程8]は任意選択的な精製工程である。また、[
工程3]で得られた一般式(II)で表される化合物における保護基が酸で脱保護できる
保護基である場合は、[工程3]の後に[工程5]〜[工程8]を行うことにより、脱保
護も同時に行うことができ、さらに工程を簡略化することができる。すなわちこの場合は
、[工程4](一般式(II)で表される化合物の脱保護により一般式(III)で表さ
れる化合物を得る工程)は、具体的には[工程5]〜[工程8]の操作により実施するこ
とができる。また、下記のように[工程5]〜[工程8]は一般式(III)で表される
化合物の精製及び取り出しの際に凍結乾燥を必要としない。そのため[工程5]〜[工程
8]を含む方法では、工業的な規模でポリアルキレングリコール誘導体を製造する際の設
備や工程の簡略化を実現することができるといった利点を有する。
【0095】
[工程5]では、[工程3]又は[工程4]で得られた反応生成物を、強酸性陽イオン交
換樹脂と反応させた後、水又は炭素数1〜5の一価アルコールで強酸性陽イオン交換樹脂
を洗浄することにより、一般式(III)で表される化合物以外の物質を分離する。
【0096】
[工程5]で使用する強酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、オルガノ(株)製ア
ンバーライトシリーズ(IR120B、IR124B、200CT、252)、オルガノ
(株)製アンバージェットシリーズ(1020、1024、1060、1220)、三菱
化学(株)製ダイヤイオンシリーズ(例えば、SK104、SK1B、SK110、SK
112、PK208、PK212、PK216、PK218、PK220、PK228、
UBK08、UBK10、UBK12、UBK510L、UBK530、UBK550)
、ダウ・ケミカル(株)製DOWEXシリーズ(50W×2 50−100、50W×2
100−200、50W×4 100−200、50W×8 50−100、50W×
8 100−200、50W×8 200−400、HCR−S、HCR−W2(H))
などが挙げられるが、これらに限定はされない。強酸性陽イオン交換樹脂の使用量として
は、一般式(III)で表される化合物の質量の、例えば1〜50倍量、好ましくは1〜
30倍量、さらに好ましくは1〜20倍量である。
【0097】
強酸性陽イオン交換樹脂を用いる場合、事前に強酸性陽イオン交換樹脂を酸性化合物で
処理してから使用しても良い。強酸性陽イオン交換樹脂はスルホン酸のアルカリ金属塩の
状態で販売されていることも多く、酸性化合物で事前に処理して用いることでスルホ基が
再生され、反応効率を上げることが可能である。この場合、用いられる酸性化合物として
は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸などの無機酸類等が例示できるが、これらに限
定はされない。これらの酸性化合物の使用量は、強酸性陽イオン交換樹脂の質量の、例え
ば1〜15倍量、好ましくは1〜10倍量、さらに好ましくは1〜8倍量である。強酸性
陽イオン交換樹脂を酸性化合物で処理した後、水洗によって樹脂中から酸性化合物を分離
し、必要に応じてメタノールやエタノールなどの水溶性有機溶媒で水を分離する。
【0098】
[工程3]又は[工程4]で得られた反応生成物を強酸性陽イオン交換樹脂と反応させる
方法としては、イオン交換樹脂を充填したカラムに、生成物溶液を流して吸着させる方法
や樹脂が充填されたカートリッジと、[工程3]又は[工程4]を実施した反応槽との間で粗
生成物溶液を循環させる方法などが挙げられるが、反応の方法については特に限定されな
い。[工程3]の後に[工程5]を行う場合は、強酸性陽イオン交換樹脂の触媒下で、一般式
(II)で表される化合物と水又はアルコール(R
3OH:式中R
3は炭素数1〜5の炭
化水素基である)とを反応させることで、脱保護の後に、一般式(III)で表される化
合物を強酸性陽イオン交換樹脂に吸着させることができる。
【0099】
次いで、一般式(III)で表される化合物を吸着させた強酸性陽イオン交換樹脂を、
水又は、炭素数1〜5の一価アルコールで洗浄を行い、目的物以外の化合物を分離する。
炭素数1〜5の一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコ
ール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t
ert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペ
ンチルアルコールなどが例示できる。洗浄を行う際、水又は一価アルコールを単独で用い
ることもできるし、水と一種以上のアルコールとの混合物、又は二種以上のアルコールの
混合物を用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。使用する
水又は炭素数1〜5の一価アルコール、或いはそれらの混合物の使用量は特に限定されな
いが、使用した強酸性陽イオン交換樹脂の質量に対して、例えば1〜30倍量、好ましく
は1〜20倍量、さらに好ましくは1〜10倍量である。
【0100】
[工程6]では、一般式(III)で表される化合物を吸着させた強酸性陽イオン交換
樹脂を、水又は炭素数1〜5の一価アルコール中で塩基性化合物と反応させることにより
、一般式(III)で表される化合物を水又は一価アルコール中に抽出する。反応を行う
際、水又は一価アルコールを単独で用いることもできるし、水と一種以上のアルコールと
の混合物、又は二種以上のアルコールの混合物を用いることもできる。その場合、混合比
に関しては特に限定されない。強酸性陽イオン交換樹脂を塩基性化合物と反応させる方法
としては、[工程5]と同様、イオン交換樹脂を充填したカラムに塩基性化合物の溶液を
流して反応させる方法や、イオン交換樹脂が充填されたカートリッジと[工程3]、[工程
4]及び[工程5]を実施した反応槽との間で、塩基性化合物の溶液を循環させる方法等
を挙げることができるが、反応の方法については特に限定されない。
【0101】
[工程6]で使用する一価アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n
−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチ
ルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、イソペンチルア
ルコール、ネオペンチルアルコールなどが例示できる。水又は一価アルコールの使用量は
特に限定されないが、使用した強酸性陽イオン交換樹脂の質量に対して、例えば1〜30
倍量、好ましくは1〜20倍量、さらに好ましくは1〜10倍量である。
【0102】
[工程6]で使用する塩基性化合物としては、水又は有機溶媒に溶解したアンモニア(
例えば、アンモニア水やアンモニアのメタノール溶液など)が好適に用いられるが、第一
級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類
等も使用することができる。第一級の脂肪族アミン類としては、メチルアミン、エチルア
ミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン
、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン等、第二級の脂肪
族アミン類としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイ
ソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルア
ミン等、第三級の脂肪族アミン類としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ
−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブ
チルアミン、トリ−sec−ブチルアミン等、混成アミン類としては、例えばジメチルエ
チルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジ
ルジメチルアミン等、芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、アニリン誘
導体(例えばアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリ
ン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチル
アニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリ
ン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジ
ニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェ
ニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレン
ジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレンやピリジン誘導体(例えばピリジン、メ
チルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチル
ペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フ
ェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、
ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメト
キシピリジン、4−ピロリジノピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノ
ピリジン、ジメチルアミノピリジン等)等が例示できるが、これらに限定はされない。ま
た、塩基性化合物として水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を使用す
ることもできる。塩基性化合物の使用量は、使用した強酸性陽イオン交換樹脂の質量に対
して、例えば0.1〜100倍量、好ましくは0.1〜10倍量、さらに好ましくは0.
1〜5倍量である。
【0103】
[工程7]では、[工程6]の反応液を濃縮後、反応液に含まれる一般式(III)で
表される化合物の良溶媒に溶媒置換し、一般式(III)で表される化合物の濃度が10
〜50質量%となるように調製する。
【0104】
[工程7]で用いられる一般式(III)で表される化合物の良溶媒としては、THF
のほか、[工程3]において例示した良溶媒と同様のものが挙げられるが、これらには限定
されない。これらの良溶媒は単独で用いることもできるし、一種又は二種以上を混合して
用いることもできる。その場合、混合比に関しては特に限定されない。溶媒置換後の濃度
は、例えば10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜4
0質量%である。
【0105】
[工程8]では、[工程7]で濃縮して得られた溶液を、一般式(III)で表される
化合物の貧溶媒中に滴下し、析出させることにより一般式(III)で表される化合物を
得る。
【0106】
[工程8]で用いられる貧溶媒としては、一般式(III)で表される化合物の溶解性
が低いものが用いられる。貧溶媒の具体例としては、[工程3]において例示した貧溶媒と
同様のものが挙げられるが、これらには限定されない。貧溶媒の使用量は特に限定されな
いが、一般式(III)で表される化合物の質量に対して、例えば5〜100倍量、好ま
しくは5〜50倍量、さらに好ましくは5〜20倍量の溶媒を使用する。貧溶媒は、単独
で用いることもできる他、他の溶媒と混合して使用することも可能である。混合すること
ができる他の溶媒としては、[工程3]において例示した他の溶媒と同様のものが挙げら
れるが、これらには限定されない。また、混合して用いる場合、混合比に関しては特に限
定されない。
【0107】
[工程8]では、晶析により固体を析出させた後、必要に応じて固体の洗浄を行い、精
製を行っても良い。洗浄に用いる溶媒は上述と同じ貧溶媒であることが好ましいが、洗浄
溶媒の使用量も含めて特に限定はされない。得られた固体を減圧下で乾燥させることによ
り、一般式(III)で表される化合物を固体として取り出すことができる。
【0108】
なお、[工程6]以降の操作においては、一般式(III)で表される化合物を水溶液
として取り出した場合、その水溶液を凍結乾燥させることにより一般式(III)で表さ
れる化合物を取り出してもよい。ただし、凍結乾燥を行うためには特殊な設備が必要であ
り、完全に水を除去するには長時間を必要とするため、工業的な規模で製造を行うことが
難しい場合がある。本発明では、好ましくは上記のように有機溶媒を使用した精製を行う
ことにより、設備や工程の簡略化を実現することが出来る。
【0109】
本発明の[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]
に続いて[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる一般式(III)で表される化合物
は、重合時、開始反応が成長反応より十分に早く、また停止反応の要因である水分の混入
が少なく、さらに重合開始剤が重合溶媒中に均一に溶解しているため、狭分散ポリマーを
得ることができる。
すなわち、本発明の製造方法により製造される上記一般式(III)で表される化合物
は、狭分散性であり、その分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は
、例えば1.0〜1.20であり、好ましくは1.0〜1.10であり、さらに好ましく
は1.0〜1.06である。また、本発明の製造方法により製造される上記一般式(II
I)で表される化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)として、5,000〜25,
000が好ましく、8,000〜15,000がより好ましい。なお、本明細書において
、ポリマーの分子量及び分散度は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記)
を用いて測定を行った場合の値をいうものとする。
【0110】
[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に続いて
[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる生成物中の、副生成物(VII)及び(VI
II)(上記一般式(VII)で表される化合物及び一般式(VIII)で表される化合
物)の混入量は、GPCにより測定された面積含有率(%)で、一般式(III)、(VI
I)及び(VIII)で表される化合物の総面積に対して、3%以下であることが好まし
く、1%以下であることがより好ましい。最も好ましくは、得られる生成物は、一般式(
VII)で表される化合物及び一般式(VIII)で表される化合物をいずれも含まないも
のである。なお、実際には、本実施形態によると、一般式(VII)で表される化合物及び
一般式(VIII)で表される化合物はいずれも生成しない。
【0111】
[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に続いて
[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる生成物中の、副生成物(IX)(上記一般式(
IX)で表される化合物)の混入量は、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)により測定
された組成比含有率(mol%)で、一般式(III)で表される化合物及び一般式(I
X)で表される化合物の総物質量に対して、2mol%以下であることが好ましく、1m
ol%以下であることがより好ましい。最も好ましくは、得られる生成物は一般式(IX)
で表される化合物を含まないものである。なお、実際には、本実施形態によると、一般式
(IX)で表される化合物は生成しない。
【0112】
また、[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に
続いて[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる生成物は、上記したような副生成物(
一般式(VII)〜(IX)で表される化合物)を実質的に含まないものである。好まし
くは、上記したGPC及び1H−NMRによる測定結果から換算した、主生成物(一般式
(III)で表される化合物)の総量をX
A、副生成物の総量をX
Bとしたとき、X
A/
(X
A+X
B)が0.95以上であることが好ましい。最も好ましくは、得られる生成物
は上記のような副生成物を含まないものである。
【0113】
[工程1]〜[工程4]、又は、[工程1]〜[工程4]もしくは[工程1]〜[工程3]に続いて
[工程5]〜[工程8]を実施した後に得られる生成物中の、高周波誘導結合プラズマ質量分
析計(ICP−MS)により測定された重金属不純物含有量としては100ppb以下が
好ましく、さらに好ましくは10ppb以下である。生成物中の重金属不純物量測定は、
上記のICP−MSを用いて行うのが一般的だが、この測定方法に限定はされない。IC
P−MSにより分析を行う際はポリマーサンプルを溶媒で希釈して測定を行う。用いる溶
媒はポリマーが溶解し、かつ金属を含まないものであることが必須である。超純水や電子
工業用N−メチル−2−ピロリドンなどが特に好ましいが、これらに限定はされない。希
釈率は特に限定されないが、好ましくは10〜100,000倍、さらに好ましくは50
〜1,000倍である。
【0114】
上述の通り、重金属が生体内に蓄積されると悪影響を及ぼすことが知られているが、例
えば特許文献4や5に記載の従来の合成法ではラネーニッケル触媒を用いてシアノ基をア
ミノメチル基に変換しているため、生成物中への重金属の混入が懸念される。日米EU医
薬品規制調和国際会議(ICH)において報告された「ICH Q3D:医薬品の金属不
純物ガイドライン(案)」によると、金属不純物のうちリスクアセスメントが必要な金属不
純物としてクラス1にAs、Pb、Cd、Hg、クラス2AにV、Mo、Se、Co、ク
ラス2BにAg、Au、Tl、Pd、Pt、Ir、Os、Rh、Ru、クラス3にSb、
Ba、Li、Cr、Cu、Sn、Niが挙げられている。水素還元反応において使用され
る重金属としてはCo、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、Crなどが挙げられるが
、これらはリスクアセスメントが必要な重金属として挙げられており、今後ますます混入
低減が求められる。
【0115】
これに対し、本発明の方法は重金属触媒の使用を必要としないため、生成物中に重金属
が混入するという恐れがない。その結果、特に医薬品用途に使用する一般式(III)で
表される化合物を得るのに適した製造方法と言える。
【実施例】
【0116】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に
制限されるものではない。なお、実施例中における分子量の表記において、重量平均分子
量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の数値はGPCによりポリエチレングリコール換算
値として測定したものである。なお、GPCは下記条件で測定を行った。
カラム:TSKgel SuperAWM−H、SuperAW−3000
展開溶媒:DMF(臭化リチウム0.01mol/L溶液)
カラムオーブン温度:60℃
サンプル濃度:0.20wt%
サンプル注入量:25μl
流量:0.3ml/min
【0117】
[合成例1]重合開始剤(Va)の合成
500mLの二口ナスフラスコ中に撹拌子を投入後、精留管、温度計、リービッヒ冷却
器、分留管、50mLのナスフラスコ(2個)、300mL二口フラスコ(1個)を接続
し、蒸留装置を組み立てた。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及び
ヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下でジエ
チレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株)製)を500mL二口ナスフ
ラスコ内に投入し、減圧蒸留を行った。蒸留後の含水率を測定した結果、水分は、1pp
m以下であった(含水率測定はカールフィッシャー水分計による、以下同様)。
【0118】
3Lの二口ナスフラスコ中に撹拌子を投入後、精留管、温度計、ジムロート冷却器、分
留管、200mLのナスフラスコと2L二口フラスコを接続し、蒸留装置を組み立てた。
装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置
内を
加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下で無水THF(関東化学(株)製)
、金属ナトリウム片(関東化学(株)製)、ベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)を
3L二口ナスフラスコ内に投入し、常圧下で5時間還流を行った。3L二口ナスフラスコ
内が青紫色になったことを確認後、2L二口フラスコ中に蒸留THFを取り出した。蒸留
後の含水率を測定した結果、水分は1ppm以下であった。
【0119】
窒素雰囲気下のグローブボックス内で水素化カリウム15.98g(関東化学(株)製
、ミネラルオイル状)を秤量し、温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却器を接続した500
mL四口フラスコ内に水素化カリウムを窒素気流下で投入した。ヘキサン洗浄によりミネ
ラルオイルを分離後、約2時間真空乾燥し6.193g(154mmol)の水素化カリ
ウムを得た。フラスコ内にシリンジで蒸留THF127.65gを添加した。滴下漏斗に
蒸留ジエチレングリコールモノメチルエーテル18.737g(156mmol)を少量
ずつ滴下した。熟成を2時間実施し、重合開始剤(Va)のTHF溶液148.62g(
1.05mmol/g)を得た。このとき塩の析出及び白濁は観測されなかった((Va
)質量/THF溶液質量=16.6重量%)。上記反応により合成された重合開始剤(V
a)と開始剤原料アルコールの物質量比率は99:1(mol%)である。反応スキーム
を以下に示す。
【0120】
【化8】
【0121】
[合成例1−1]重合開始剤(Va)の別法による合成
ジエチレングリコールモノメチルエーテルとTHFの蒸留は上記[合成例1]と同様の方
法で行った。
【0122】
窒素雰囲気下のグローブボックス内で100mL三口フラスコ内にナフタレン1.28
g、カリウム0.43gを秤量し、1時間真空乾燥した。その後窒素雰囲気下に戻し、フ
ラスコ内にシリンジで蒸留THF13.58gを添加した。1時間撹拌し、カリウムナフ
タレニドのTHF溶液を調整した(0.65mmol/g)。一方、窒素雰囲気下、50
mL三口フラスコ内に蒸留ジエチレングリコールモノメチルエーテル1.00gをシリン
ジで秤量した。そこに上記調整したカリウムナフタレニドのTHF溶液を常温で12.3
3g滴下した。熟成を1時間実施し、重合開始剤(Va)のTHF溶液13.33g(0
.64mmol/g)を得た。このとき塩の析出及び白濁は観測されなかった((Va)
質量/THF溶液質量=9.9重量%)。上記反応により合成された重合開始剤(Va)
と開始剤原料アルコールの物質量比率は96:4(mol%)である。反応スキームを以
下に示す。
【0123】
【化9】
【0124】
[合成例2]求電子剤(Ia)の合成
(2−1)シリル保護体(I−1)の合成
300ml三口フラスコに3−アミノ−1−プロパノール6.0g、トリエチルアミン
28.74g、トルエン18.0gを仕込み、その後窒素雰囲気化でTESOTf75.
0gを滴下した。その後80℃で25時間撹拌した。反応液を分液ロートに移し、下層を
分離し、上層を減圧蒸留してシリル保護体(I−1)を31.47g(収率93.3%)
得た。
シリル保護体(I−1)
無色液体
沸点 133−138℃/10Pa
1H−NMR(500MHz,CDCL3):δ=0.60(18H,q),0.9
4(27H,t),1.62(2H,m),2.83(2H,m),3.54(2H,t
)
【0125】
【化10】
式中TESはトリエチルシリル基のことである。
【0126】
(2−2)アミノ基シリル保護アルコール体(I−2)の合成
200ml一口フラスコにシリル保護体(I−1)30.98g、メタノール30.9
8g、ナトリウムメトキシド0.2gを仕込み、60℃で18時間撹拌した。その後、ト
リエチルメトキシシランを減圧留去し、再びメタノール30.98gを入れて60℃で撹
拌した。同様の操作を繰り返し、反応が完結した後炭酸水素ナトリウムでクエンチし、ト
ルエンに溶媒置換した後、塩をろ過で取り除いた。その後トルエンを減圧留去してアミノ
基シリル保護アルコール体(I−2)を22.66g(粗収率96.4%)得た。この粗
生成物は中間体として十分な純度を有しており、このまま次の工程に用いた。
アミノ基シリル保護アルコール体(I−2)
無色液体
1H−NMR(500MHz,CDCL3):δ=0.60(12H,q),0.9
3(18H,t),1.67(2H,m),2.85(2H,m),3.59(2H,m
)
【0127】
【化11】
【0128】
(2−3)求電子剤(Ia)の合成
50ml三口フラスコにTsCl4.7g、塩化メチレン5g、トリエチルアミン5.
0g仕込み、アミノ基シリル保護アルコール体(I−2)5.0gを塩化メチレン10.
0gに溶解させた溶液を氷冷しながら滴下した。常温に戻して13時間撹拌後、水でクエ
ンチしてトルエンで抽出した。その後トルエン溶液を濃縮して求電子剤(Ia)を7.6
g(粗収率100%)得た。この粗生成物は中間体として十分な純度を有しており、この
まま次の工程に用いた。
求電子剤(Ia)
褐色液体
1H−NMR(500MHz,CDCL3):δ=0.54(12H,q),0.8
9(18H,t),1.68(2H,m),2.45(3H,s),2.71(2H,m
),3.98(2H,t)
【0129】
【化12】
【0130】
[合成例3]求電子剤(Ib)の合成
200ml三口フラスコに3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩15.93g、トリ
エチルアミン27.26g、トルエン47.79gを仕込み、その後窒素雰囲気化でTE
SOTf50.00gを滴下した。その後80℃で63時間撹拌した。反応液を分液ロー
トに移し、下層を分離し、上層を減圧蒸留して求電子剤(Ib)を8.00g(収率30
.0%)得た。
求電子剤(Ib)
無色液体
沸点 108℃/30Pa
1H−NMR(500MHz,CDCL3):δ=0.61(12H,q),0.9
4(18H,t),1.92(2H,m),2.90(2H,m),3.31(2H,t
)
【0131】
【化13】
【0132】
[合成例4]求電子剤(Ic)〜(Ii)の合成
TESOTfをそれぞれ対応する保護化剤に変えた以外は[合成例3]と同様にして下
記求電子剤(Ic)〜(Ii)を合成した。
【0133】
【化14】
上記一般式中、TMSはトリメチルシリル、TBSはtert−ブチルジメチルシリル
、Bocはtert−ブトキシカルボニルのことである。
【0134】
[ポリマー合成例1]ポリマー(VIa)の合成
温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却器を接続した2L四口フラスコ中に撹拌子を投入し
た。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒートガンを使って装置
内を加温し、系内の水分を除去した。その後、窒素気流下で2L四口フラスコ内に上述の
[合成例1]で得られた重合開始剤(Va)のTHF溶液4.96g(1.05mmol
/g)と蒸留THF420gを添加した。
【0135】
滴下漏斗にエチレンオキシド60gと蒸留THF120gを投入し、2L四口フラスコ
内に少しずつ滴下した。2L四口フラスコ内の温度が安定したことを確認後、45℃に温
度を保ったオイルバスに2L四口フラスコを浸し、8時間熟成を行った。反応終了後、オ
イルバスを外し、反応系を室温まで冷却した。反応スキームを以下に示す。
【0136】
得られた反応系を少量サンプリングし、酢酸でクエンチしてGPC測定を行った結果、
Mw=8,500、Mw/Mn=1.04であった。
【0137】
【化15】
【0138】
[ポリマー合成例1−1]ポリマー(IXa)の合成
2Lの高圧ガス反応容器を窒素パージにより乾燥し、窒素雰囲気下上述の[合成例1]
で得られた重合開始剤(Va)のTHF溶液8.30g(1.05mmol/g、8.7
2mmol)と蒸留THF1008gを添加した。反応容器を45℃まで昇温した後、エ
チレンオキシド112gを連続的に圧入した後、系内の圧力を窒素加圧により0.15M
Paに調節した。45℃で撹拌すると系内の圧力は徐々に低下していき、6時間経過した
ところで0.11MPaで安定し反応の終点とした。続いてH
2O 0.32gで反応停
止させKW−2000(協和化学工業)10gを加えて2時間撹拌することで吸着処理し
、ろ過によりKW−2000を除去した。反応溶液を濃縮し448gとした後、撹拌子の
入った3Lビーカー中にヘキサン1120gを入れ、滴下漏斗を使って得られた反応液を
10分かけて滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビ
ーカーに戻し、ヘキサン560gで10分間洗浄を行ない、得られた白色粉末を真空乾燥
した結果、107gのポリマー(IXa)を得た。GPC測定を行った結果、Mw=12
500、Mw/Mn=1.02であった。反応スキームを以下に示す。
【0139】
【化16】
【0140】
[ポリマー合成例2]ポリマー(IIa)の合成
乾燥させた100ml三口フラスコに[ポリマー合成例1]で得られたポリマー(VI
a)のTHF溶液26g(固形分換算で2.6g分)をシリンジで分取した。窒素気流下
で求電子剤(Ia)0.298g、カリウムtert−ブトキシドのTHF溶液(1mo
l/L)0.43mlを添加し、40℃に保ちながら5時間熟成を行った。反応終了後、
40℃のままろ過を行い析出した塩を取り除いた。撹拌子の入った200mLビーカー中
にヘキサン26gを入れ、滴下漏斗を使って得られた反応液を5分かけて滴下後、10分
間熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン13
gで10分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。
【0141】
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、2.30gのポリマー(IIa)を得た。GP
C測定を行った結果、Mw=8800、Mw/Mn=1.04であった。反応スキームを
以下に示す。
【0142】
なお、ポリマー(VIa)で精製することなく続いて求電子剤と反応を行うため、本合
成例は大幅に工程が簡略化されていることがわかる。
【0143】
【化17】
【0144】
[ポリマー合成例2−1]ポリマー(IIa)の合成
2Lの高圧ガス反応容器を窒素パージにより乾燥し、窒素雰囲気下、上述の[合成例1
]で得られた重合開始剤(Va)のTHF溶液8.30g(1.05mmol/g、8.
72mmol)と蒸留THF1008gを添加した。反応容器を45℃まで昇温した後、
エチレンオキシド112gを連続的に圧入した後、系内の圧力を窒素加圧により0.15
MPaに調節した。45℃で撹拌すると系内の圧力は徐々に低下していき、6時間経過し
たところで0.11MPaで安定し反応の終点とした。40℃まで冷却した後、求電子剤
(Ia)8.14gをTHF81.4gに溶解させ系内に圧入し、さらにカリウムter
t−ブトキシドのTHF溶液(1mol/L)8.9mlをTHF50gで希釈し系内に
圧入した。続いて40℃に保ちながら5時間熟成を行った。析出した塩をろ過により分別
し、ろ液に吸着材KW−2000を11g添加して2時間撹拌した後ろ過により吸着材を
取り除いた。反応液を濃縮し448gとした後、撹拌子の入った3Lビーカー中にヘキサ
ン1120gを入れ、滴下漏斗を使って得られた反応液を10分かけて滴下後、10分間
熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン560
gで10分間洗浄を行ない、さらにもう一度同様の洗浄を繰り返した後、得られた白色粉
末を真空乾燥した。結果、109gのポリマー(IIa)を得た。GPC測定を行った結
果、Mw=12900、Mw/Mn=1.02であった。反応スキームを以下に示す。
【0145】
【化18】
【0146】
なお、下記表1に示したようにポリマー合成例1−1、ポリマー合成例2−1では化学
量論的にエチレンオキシドとの重合が進行していることがわかる。
【0147】
【表1】
【0148】
[ポリマー合成例3]ポリマー(IIIa)の合成
50mL三口フラスコに[ポリマー合成例2]で得られたポリマー(IIa)1.0g
、THF9.0g、1N HClaq.0.4mlを投入し40℃で4時間撹拌した。そ
の後25wt%NaOHaq.0.2mlで反応を停止した。反応溶液を濃縮して水を飛
ばした後、THF5.7gでポリマー溶液を調整し、析出した塩をろ過した。撹拌子の入
った100mLビーカー中にヘキサン10gを入れ、得られた反応液を滴下後、10分間
熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン5gで
10分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。
【0149】
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、0.7gのポリマー(IIIa)を得た。GP
C測定を行った結果、Mw=8500、Mw/Mn=1.05であった。反応スキームを
以下に示す。
【0150】
なお、[ポリマー合成例2]でポリマー(IIa)を反応後精製することなく続いて塩
酸を加えて脱保護しても良く、その場合さらに工程を簡略化することができた。
【0151】
【化19】
【0152】
[ポリマー合成例3−1]ポリマー(IIIa)の合成
1L三口フラスコに[ポリマー合成例2−1]で得られたポリマー(IIa)100g
、MeOH400g、酢酸5.00gを投入し35℃で3時間撹拌した。その後ナトリウ
ムメチラート28%メタノール溶液を24.12gで反応を停止した。反応溶液を濃縮し
てトルエンへと溶媒置換し450gのポリマー溶液を調整し、析出した塩をろ過した。得
られたポリマー溶液に吸着材KW−2000を100g加え35℃で1時間処理をして微
量の塩を除去した。撹拌子の入った3Lビーカー中にヘキサン1000g、酢酸エチル5
00gを入れ、得られた反応液を滴下後、10分間熟成を行った。生成した白色粉末をろ
過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン600g、酢酸エチル300gで10分間洗
浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。
【0153】
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、90gのポリマー(IIIa)を得た。GPC
測定を行った結果、Mw=13,000、Mw/Mn=1.02であった。反応スキーム
を以下に示す。
【0154】
【化20】
【0155】
[ポリマー合成例4]ポリマー(IIIa)の精製
陽イオン交換樹脂DIAION PK−208(三菱化学(株)製)50gを充填した
カートリッジ内を1N塩酸300gで洗浄後、イオン交換水300gで3回、次いでメタ
ノール300gで1回、カートリッジの洗浄を行った。500mL二口フラスコに[ポリ
マー合成例3]で得られたポリマー(IIIa)のメタノール5wt%溶液(ポリマー含
有量10g)を投入し、ポリマー溶液を上述のカートリッジ内にポンプを使って移送した
。カートリッジの排液口から出てきたメタノール溶液を元の500mLナスフラスコに合
せ、この操作を2時間継続してポリマー(IIIa)を陽イオン交換樹脂に吸着させた。
その後、カートリッジ内の樹脂をメタノール300gで1回洗浄した後、7Nアンモニア
溶液(メタノール溶液、関東化学(株)製)を50g使ってポリマー(IIIa−2)を
陽イオン交換樹脂から溶離させた。なお、陽イオン交換樹脂からの溶離工程以降の精製ポ
リマーを(IIIa−2)と示す。
【0156】
なおポリマー(IIIa)の代わりにポリマー(IIa)を使用しても陽イオン交換樹
脂触媒下、メタノール溶液で脱保護が進行するので、脱保護と精製を同時に行うことがで
き、工程をさらに簡略化することができた。
【0157】
得られた溶離液を500mLナス形フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを使っ
てアンモニアとメタノールを留去した。ほぼ乾固するまで減圧濃縮を実施後、トルエンに
溶媒置換し、ポリマー(IIIa−2)の固形分濃度が25wt%になるように調製した
。
【0158】
撹拌子の入った500mLビーカー中にヘキサン100gと酢酸エチル50gを混合し
、滴下漏斗を使って得られたポリマー(IIIa−2)の25wt%溶液を10分かけて
滴下後、20分間撹拌を行い、熟成を行った。生成した白色粉末をろ過後、粉末を元のビ
ーカーに戻し、ヘキサン50gと酢酸エチル25gの混合溶媒で20分間洗浄を行ない、
さらに同様の洗浄操作を1回実施した。
【0159】
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、8.51gのポリマー(IIIa−2)を得た
。GPC測定を行った結果、Mw=8,500、Mw/Mn=1.05であった。
【0160】
[ポリマー合成例5]ポリマー(VIb)〜(VIf)の合成
[ポリマー合成例1]において、重合開始剤(Va)(1.05mmol/gTHF溶
液)の使用量を変えた以外はほぼ同様の操作を行うことにより、ポリマー(VIb)〜(
VIf)を合成した。分析結果を表2に示す。
【0161】
【表2】
【0162】
[ポリマー合成例6]ポリマー(IIb)〜(IIf)の合成
[ポリマー合成例2]において、出発原料のポリマー(VIa)を前記ポリマー(VI
b)〜(VIf)に変えた以外はほぼ同様の操作を行うことにより、ポリマー(IIb)
〜(IIf)を合成した。分析結果を表3に示す。
【0163】
【表3】
【0164】
[ポリマー合成例7]ポリマー(IIIb)〜(IIIf)の合成
[ポリマー合成例3]及び[ポリマー合成例4]において、出発原料のポリマー(II
a)を前記ポリマー(IIb)〜(IIf)に変える以外はほぼ同様の操作を行うことに
より、ポリマー(IIIb)〜(IIIf)を合成した。分析結果を表4に示す。
【0165】
【表4】
【0166】
[ポリマー合成例8]ポリマー(IIIg)〜(IIIn)の合成
[ポリマー合成例2]における求電子剤(Ia)を、(Ib)〜(Ii)に変えて脱保
護条件を変える以外は[ポリマー合成例1]〜[ポリマー合成例4]とほぼ同様の操作を
行うことにより、ポリマー(IIIg)〜(IIIn)を合成した。求電子剤(Ib)〜
(Ie)、(Ii)を使用した場合の脱保護はポリマー合成例3と同様にして行った。求
電子剤(If)、(Ih)を使用した場合の脱保護は、液体アンモニウムと金属ナトリウ
ムを使用するバーチ還元の条件で、脱保護を行った。求電子剤(Ig)を使用した場合の
脱保護は、アルコール中でヒドラジン水和物を反応させることで、脱保護を行った。分析
結果を表5に示す。
【0167】
【表5】
【0168】
[比較ポリマー合成例1]ポリマー(IXa)の合成
温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却器を接続した500mLの四口ナスフラスコ中に撹
拌子と重合開始剤として、カリウムメトキシド(関東化学(株)製)71mg(1.01
mmol)を投入し、装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバス及びヒート
ガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。
【0169】
その後、窒素気流下で四口フラスコ内にメタノール(東京化成工業(株)製)40μL
(1.00mmol)及び蒸留THF140gを投入し、カリウムメトキシドが完全に溶
解するまで室温で撹拌を行った。上記方法により合成された重合開始剤カリウムメトキシ
ドと開始剤原料アルコールであるメタノールの物質量比率は50:50(mol%)であ
る。
【0170】
滴下漏斗内にエチレンオキシド35gと蒸留THF60gの混合溶液を投入し、内温を
35℃以下に保ちながら四口フラスコ内に少量ずつ滴下した。全量滴下後、内温を50℃
以下に保ちながら80時間撹拌を行った。
【0171】
エチレンオキシドの転化率に変化がなくなったことを確認後、フラスコ内に酢酸0.0
6gを添加した。窒素バブリングによりエチレンオキシドを除去後、反応液を500mL
ナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを使って固体が析出するまで反応液を
濃縮した。ポリマーの粗生成物23gをトルエン46gに再溶解後、滴下漏斗に移送した
。
【0172】
撹拌子の入った500mLビーカー中にイソプロピルエーテル138gを投入し、滴下
漏斗を使ってポリマー溶液を10分かけて滴下後、20分間熟成を行った。生成した白色
粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、イソプロピルエーテル69gの混合溶媒で2
0分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を2回実施した。反応スキームを以下に示す
。
【0173】
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、18.54gの比較ポリマー(IXa)を得た
。GPC測定を行った結果、Mw=7,200、Mw/Mn=1.16であった。
【0174】
【化21】
【0175】
[比較ポリマー合成例2]ポリマー(Xa)の合成
温度計、ジムロート冷却器、分留管、300mLナスフラスコを接続した500mL四
口フラスコ中に撹拌子を投入した。装置内の真空度を10Pa以下に保った後、オイルバ
ス及びヒートガンを使って装置内を加温し、系内の水分を除去した。ポリマー(VIa)
のTHF溶液(固形分換算で10g分)をシリンジで分取し、窒素気流下で500mL四
口フラスコ内に投入した。500mL四口フラスコ内の温度を40℃以内に保ちながら、
ポリマー溶液の濃縮を行い、固形分濃度が25wt%となるように調製した。
【0176】
窒素気流下で500mL四口フラスコ内にアクリロニトリル1.0gを投入し、500
mL四口フラスコ内の温度を40℃に保ちながら、3時間熟成を行った。反応終了後、オ
イルバスを外し、反応系を室温まで冷却した。系内に酢酸0.2gを添加してクエンチ後
、アルカリ吸着剤「キョーワード700」(協和化学工業(株)製)を10g添加し、3
時間反応を行った。アルカリ吸着剤をろ過後、ろ液を300mLナスフラスコに移し、ロ
ータリーエバポレーターを使って比較ポリマー(Xa)の固形分濃度が25wt%になる
まで濃縮した。
【0177】
撹拌子の入った500mLビーカー中にヘキサン100gと酢酸エチル50gを混合し
、滴下漏斗を使って得られた濃縮液を10分かけて滴下後、20分間熟成を行った。生成
した白色粉末をろ過後、粉末を元のビーカーに戻し、ヘキサン50gと酢酸エチル25g
の混合溶媒で20分間洗浄を行ない、さらに同様の洗浄操作を1回実施した。反応スキー
ムを以下に示す。
【0178】
得られた白色粉末を真空乾燥した結果、9.12gの比較ポリマー(Xa)を得た。G
PC測定を行った結果、Mw=8,800、Mw/Mn=1.05であった。
【0179】
【化22】
【0180】
[比較ポリマー合成例3]ポリマー(IIIo)の合成
500mLの水素還元用オートクレーブの中に5.0gのポリマー(Xa)、5.0g
のラネーコバルト触媒R−400(日興リカ(株)製)、45.0gのメタノール、3.
5mLのアンモニアの1Nメタノール溶液(アルドリッチ製)を室温で投入した。その後
、水素ガス(圧力=10kg/cm
2)を封入し、内温が120℃になるまで加温し、そ
のまま6時間反応を行った。室温まで冷却後、圧力を大気圧に戻した後、窒素を吹き込み
ながら系内のアンモニアを除去した。ろ過によりラネーコバルト触媒を除去後、ろ液を1
00mLナス形フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを使ってアンモニアとメタノ
ールを留去した。乾固するまで減圧濃縮を実施後、ポリマー(IIIo)と下記一般式(
VIIo)〜(IXo)の混合物を4.5g得た。GPC測定を行った結果、Mw=8,
900、Mw/Mn=1.11であった。
反応スキームと副生成物を以下に示す。
【0181】
【化23】
【0182】
[ポリマー合成例3と比較ポリマー合成例3で得られた生成物の不純物含有量分析]
[ポリマー合成例3]で得られた生成物と[比較ポリマー合成例3]で得られた生成物
中の不純物含有量分析を行った。結果を下記表6に示す。
表6中mPEGと表した化合物とは[比較ポリマー合成例3]中、一般式(IXo)に
相当する化合物であり、末端にシアノエチル基を有するポリマーからアクリロニトリルが
β脱離した化合物である。mPEGの組成比はH−NMR測定により算出した。まず、[
ポリマー合成例3]と[比較ポリマー合成例3]で得られた生成物をそれぞれ10mg測
り取り、0.75mlのCDCl3に溶解させた後、トリフルオロ酢酸無水物を50mg
添加し、1日放置した後測定した。この処理によって生成する下記一般式(IX−1)で
表される化合物のエステルα位メチレン由来のプロトンと下記一般式(III−1)で表
される化合物のアミドα位メチレン由来のプロトンとの比によりmPEGの組成比を算出
した。
表6中2、3級アミンと表した化合物とは[比較ポリマー合成例3]中、一般式(VI
Io)、(VIIIo)に相当する化合物である。その混入量はGPCにより測定し、2
倍、3倍分子量に相当するポリマーの面積パーセントより算出した。
これらの結果より、比較ポリマー(IIIo)では水素還元によるアクリロニトリルの
β脱離と2、3級アミンの生成が観測されたが、実施例ポリマー(IIIa)ではそれら
の副生物が観測されなかった。
【0183】
【化24】
【0184】
【表6】
【0185】
[ポリマー合成例3、4と比較ポリマー合成例3で得られた生成物の金属分析]
[ポリマー合成例3]及び[ポリマー合成例4]の各々において得られた生成物と[比
較ポリマー合成例3]で得られた生成物の高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−
MS、Agilent Technologies 7500cs)による金属不純物分
析を行った。測定はポリマーを超純水で100倍希釈したサンプルを用い、標準添加法に
より分析を行った。分析結果(固形分換算値)を表7に示す(単位はppb)。
金属分析の結果、比較ポリマー(IIIo)では還元時に使用した重金属が混入するの
に対し、実施例のポリマー(IIIa)及びポリマー(IIIa−2)では合成過程で重
金属触媒を使用しないため、重金属が含ま
れないことがわかる。
【0186】
【表7】
【0187】
[合成例5]重合開始剤(Vb)〜(Vg)の合成
原料アルコールを下表のアルコールに変えた以外は[合成例1]に記載の方法と同様にし
て重合開始剤(Vb)〜(Vg)を合成した。
【0188】
【表8】
【0189】
【化25】
【0190】
[比較合成例1]比較重合開始剤(Vh)〜(Vk)の合成
原料アルコールを下表のアルコールに変えた以外は[合成例1]に記載の方法と同様にし
て比較重合開始剤(Vh)〜(Vk)を合成した。
【0191】
【表9】
【0192】
【化26】
【0193】
[合成例1、5及び比較合成例1で得られた重合開始剤の重合溶媒に対する溶解性比較]
次に重合開始剤(Va)〜(Vg)と比較重合開始剤(Vh)〜(Vk)の重合溶媒へ
の溶解性の結果を示す。それぞれ重合溶媒であるTHFに20wt%の濃度で溶解させた
結果を表に示す。目視による濁りが全く見られないものは「○」、濁りが見られたり全く
溶けないものは「×」を記した。その結果、鎖長が長い開始剤(Va)〜(Vg)では開
始剤が溶媒へ溶解した。一方、比較開始剤(Vh)〜(Vk)では溶媒へ溶解しなかった
。
【0194】
【表10】
【0195】
ポリマー合成例1及び比較ポリマー合成例1において、後者が開始剤原料アルコールの
存在のため80時間もの重合時間を要しているのに対し、前者は開始剤原料アルコールの
残量が少なくてもTHFに可溶である開始剤を用いることで8時間以内に重合反応が完結
していることがわかる。すなわち、本発明の手法によって温和な条件下でのアルキレンオ
キシドの重合が実現した。また、ポリマー合成例2ではポリマー合成例1の反応液を直接
反応に用いることにより、工程が大幅に簡略化出来た。さらにポリマー合成例4ではイオ
ン交換樹脂を用いた樹脂の精製に有機溶媒を用いることにより、最終工程で凍結乾燥を使
用せずに、簡便な方法でポリマーの精製を行うことが可能となった。
【0196】
ポリマー合成例2、3及び比較ポリマー合成例2、3において、後者ではシアノ基の還
元に重金属を触媒とした水素添加反応を要するのに対し、前者ではアミノ基が保護基で保
護された求電子剤を用いているため、脱保護を行うだけで目的のポリマーを合成できた。
比較ポリマー(IIIo)では水素還元によりアクリロニトリルのβ脱離と2、3級アミ
ンの生成が起こっているが、実施例ポリマー(IIIa)ではいずれの生成も観測できな
かった(表6)。
【0197】
また、金属分析の結果から、ポリマー合成例3、4及び比較ポリマー合成例3において
、比較ポリマー(IIIo)では還元時に使用した重金属が混入するのに対し、実施例ポ
リマー(IIIa、IIIa−2)では合成例3、4で重金属を使用していないために重
金属が本質的に混入しないことがわかる(表7)。また強酸性陽イオン交換樹脂による精
製によりK金属混入量を低減することができた。結果、本発明により、医薬品において悪
影響を及ぼす可能性のある重金属の混入がないアミノ基含有狭分散ポリアルキレングリコ
ール誘導体の合成を達成することができた。また、アルキレンオキシドの重合から求電子
剤による末端停止反応、続く脱保護を、連続して行うことができ、工程の簡略化も達成さ
れた。