特許第6592134号(P6592134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6592134リチウム二次電池用負極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592134
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20191007BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   H01M4/48
   H01M4/36 C
   H01M4/36 E
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-79764(P2018-79764)
(22)【出願日】2018年4月18日
(62)【分割の表示】特願2013-162152(P2013-162152)の分割
【原出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2018-152348(P2018-152348A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年4月18日
(31)【優先権主張番号】61/680,068
(32)【優先日】2012年8月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/956,230
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】朴 相垠
(72)【発明者】
【氏名】金 英旭
(72)【発明者】
【氏名】金 載明
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲徳▼▲ヒュン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 然甲
(72)【発明者】
【氏名】朱 圭楠
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−225494(JP,A)
【文献】 特開2005−294079(JP,A)
【文献】 特開2011−051844(JP,A)
【文献】 特開2014−032964(JP,A)
【文献】 特開2002−042809(JP,A)
【文献】 特開2011−065934(JP,A)
【文献】 特開2006−164954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体組成がSiO(ここで、0<x<2である)で表されるシリコンオキシド粒子を含むシリコンオキシド粉末をエッチャントと反応させるステップを含み
反応後に得られたシリコンオキシド粒子の表面に存在する、酸素に対するシリコンの原子数の比率(Si/Oの比)が1.8〜2.0であることを特徴とする、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記エッチャントが、硝酸、硫酸、HF、NHF、およびNHHFからなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記シリコンオキシド粉末と前記エッチャントとを反応させた後、得られたシリコンオキシド粒子を炭素系物質でコーティングまたは蒸着するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項またはに記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム二次電池は、有機電解液を使用することにより、既存のアルカリ水溶液を用いた電池より2倍以上の高い放電電圧を示し、その結果、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としては、LiCoO、LiMn、LiNi1−xCo(0<x<1)などのように、リチウムイオンのインターカレーションが可能な構造を有するリチウムと遷移金属とからなる酸化物が主に使用される。
【0004】
負極活物質としては、リチウムの挿入および脱離が可能な人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料が適用されてきた。最近は、安定性およびさらなる高容量の要求に応じて、最近、Siのような非炭素系負極活物質に関する研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、低い表面抵抗を有し、リチウム二次電池の寿命特性を含む電気化学的特性を向上させることができるリチウム二次電池用負極活物質を提供するものである。
【0006】
本発明の他の実施形態は、前記負極活物質を製造する方法を提供するものである。
【0007】
本発明のさらに他の実施形態は、前記負極活物質を含むリチウム二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態において、全体組成がSiO(ここで、0<x<2である)で表されるシリコンオキシド粒子を含み、前記シリコンオキシド粒子の表面に存在する、酸素に対するシリコンの原子数の比率(Si/Oの比)が約1.8〜約2.4であるリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0009】
好ましくは、前記シリコンオキシド粒子の表面に存在する、酸素に対するシリコンの原子数の比率(Si/Oの比)は、約2.0〜約2.3であり得る。
【0010】
前記シリコンオキシド粒子の全体組成SiOのx値は、約0.5〜約1.5であり得る。
【0011】
例えば、前記シリコンオキシド粒子の全体組成SiOのx値は、約0.6〜約0.95であり得る。
【0012】
前記シリコンオキシド粒子は、粒子表面から粒子中心にいくほど、シリコン元素の濃度は次第に減少し、酸素元素の濃度は次第に増加することができる。
【0013】
前記シリコンオキシド粒子は、非晶質シリコンオキシド粒子であり得る。
【0014】
前記負極活物質は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族ないし16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の追加元素をさらに含むことができる。
【0015】
前記1つ以上の追加元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
また、前記負極活物質は、前記シリコンオキシド粒子の表面に炭素系物質を含むコーティング層または蒸着層をさらに含むことができる。
【0017】
前記炭素系物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、または炭素繊維などであり得る。
【0018】
前記炭素系物質は、シリコンオキシド粒子に対して0.01〜0.5倍の粒子の大きさを有することができる。
【0019】
また、前記炭素系物質は、シリコンオキシド100重量部に対して1〜50重量部で含まれ得る。
【0020】
前記負極活物質は、約0.1μm〜約100μmの平均粒子直径を有することができる。
【0021】
前記負極活物質は、約5〜約500m/gの比表面積を有することができる。
【0022】
例えば、前記負極活物質は、約4〜約40m/gの比表面積を有することができる。
【0023】
本発明の他の実施形態では、全体組成がSiO(ここで、0<x<2である)で表されるシリコンオキシド粒子を含むシリコンオキシド粉末をエッチャントと反応させるステップを含むリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0024】
具体的には、全体組成がSiO(ここで、0<x<2である)で表される非晶質シリコンオキシド粒子を含むシリコンオキシド粉末をエッチャントと反応させるステップを含むリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0025】
前記エッチャントは、Fイオンを含む化合物、例えば、硝酸、硫酸などのような酸、またはHF、NHF、またはNHHFなどのようなFイオンであり得る。
【0026】
前記シリコンオキシド粉末と前記エッチャントとは、約10:1〜約1:10のモル比で反応することができる。
【0027】
前記製造方法は、前記シリコンオキシド粉末と前記エッチャントとの反応後、得られたシリコンオキシド粒子にコーティング層または蒸着層を形成するステップをさらに含むことができる。
【0028】
本発明のさらに他の実施形態において、前記負極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、非水電解質とを含むリチウム二次電池を提供する。
【0029】
前記二次電池の負極は、2つの主表面を有する電気集電体を含み、前記電気集電体の2つの主表面の少なくとも1つに前記実施形態にかかる負極活物質を含む。
【0030】
前記二次電池は、約60%〜約70%のサイクル効率を有することができる。
【発明の効果】
【0031】
前記負極活物質は、低い表面抵抗を有し、リチウム二次電池の寿命特性を含む電気化学的特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態にかかるリチウム二次電池を概略的に示す図である。
図2】比較例1による負極活物質粒子に対するXPS(X−ray photoelectron spectroscopy、X線光電子分光法)分析グラフである。
図3】比較例2で製造された負極活物質粒子に対するXPS分析グラフである。
図4】比較例3で製造された負極活物質粒子に対するXPS分析グラフである。
図5】比較例4で製造された負極活物質粒子に対するXPS分析グラフである。
図6】実施例1で製造された負極活物質粒子に対するXPS分析グラフである。
図7】実施例2による負極活物質粒子に対するXPS分析グラフである。
図8】実施例3で製造された負極活物質粒子に対するXPS分析グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として示されるものであって、これによって本発明が制限されるものではなく、本発明は後述する請求項の範囲によってのみ定義される。
【0034】
通常、負極活物質として使用されるシリコンオキシド(SiO)は、金属シリコン(Si)とシリコンジオキシド(SiO)とが均一に混合されている高容量負極素材である。しかし、このようなシリコンオキシドの表面には酸素分率の高い自然被膜が形成されやすく、酸素に対するシリコンの比率(Si/Oの比)が0.7未満の値を有し、その結果、シリコンオキシド表面の高い酸素分率はリチウムの挿入反応時に抵抗として作用し、リチウム二次電池の電気化学的特性を劣化させる。
【0035】
これに対し、本発明では、シリコンオキシド粒子を含む負極活物質において、結晶性シリコンオキシドに対する選択的エッチングにより、活物質の表面に存在するシリコンの酸化価数を約0.55以下に低下させることにより、活物質表面の酸素分率を大きく低下させて表面抵抗を減少させ、その結果、負極活物質への適用時、リチウム二次電池の電気化学的特性、特に、寿命特性を顕著に改善することができるリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0036】
詳細には、全体組成がSiO(ここで、0<x<2である)で表されるシリコンオキシド粒子中、選択的エッチングによりSiOを多量除去することにより、シリコンオキシド粒子の表面は、酸素(O)元素に比べてシリコン(Si)元素を非常に高い分率で含むことができる。
【0037】
つまり、本発明の一実施形態において、全体組成がSiO(ここで、0<x<2である)で表されるシリコンオキシド粒子を含むものの、シリコンオキシド粒子の表面に存在する、酸素に対するシリコンの原子数の比率(Si/Oの比率)が1.8〜2.4であるリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0038】
一例として、シリコンオキシド粒子は、非晶質シリコンオキシド粒子であり得る。
【0039】
表面に存在するシリコンと酸素との比率は、XPSにより定量分析することができる。
【0040】
ここで、「全体組成」とは、結晶性または非結晶性などの多様な形態を有する多数のシリコンオキシド粒子を含むことにより、それぞれのシリコンオキシド粒子が示す化学的組成を平均して示したものをいう。
【0041】
従来も、Si系負極活物質を製造するにあたり、表面におけるSiの酸化価数を低下させようとする試みがあった。しかし、これまでシリコンオキシド粒子の表面におけるSi/Oの比率を1.8以上に高めた負極活物質は知られていない。シリコンオキシド粒子の表面におけるSi/Oの比率が1.8以上の場合、Si/Oの比率が1.8未満の場合に比べてリチウム二次電池の寿命特性を顕著に改善することができる。
【0042】
他の実施形態において、シリコンオキシド粒子の粒子表面に存在するシリコン(Si)と酸素との比率は、2.0〜2.3であり得る。シリコンオキシド粒子の表面におけるSi/Oの比率が2.0以上の場合、リチウム二次電池の寿命特性はより改善できる。
【0043】
シリコンオキシド粒子は、シリコンオキシド粒子の表面から粒子の中心に向かって深くなるにつれ、シリコン(Si)元素の濃度は次第に減少し、酸素(O)元素の濃度は次第に増加する濃度勾配を有することができる。
【0044】
また、シリコンオキシド粒子は、粒子の表面に存在する結晶性SiOの選択的制御により表面粗度が形成され得、さらに、SiOのような結晶性シリコンオキシドが除去されたサイトは、粒子の内部で空隙を形成することもできる。その結果、シリコンオキシド粒子は、増加した比表面積を有することができる。
【0045】
一実施形態において、シリコンオキシド粒子を含むリチウム二次電池用負極活物質は、約5〜約500m/gの比表面積を有することができる。他の実施形態において、負極活物質は、約10〜約40m/gの比表面積を有することができる。
【0046】
他の実施形態において、シリコンオキシド粒子は、全体組成SiOのx値が約0.5〜約1.5であり得る。例えば、シリコンオキシド粒子は、SiOのx値が約0.6〜約0.95であり得る。シリコンオキシド粒子がシリコン(Si)元素の含有量を範囲で含む場合、容量と効率において適当な向上を期待することができる。
【0047】
シリコンオキシド粒子は、結晶性Siをさらに含むことができる。
【0048】
このようなシリコンオキシド粒子を含む負極活物質は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族ないし16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つ(Siではない)をさらに含むことができ、これらの具体的な元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
負極活物質は、約0.1μm〜約100μmの平均粒子直径を有することができる。
【0050】
また、負極活物質は、シリコンオキシド粒子の表面に酸化防止層の役割を果たすコーティング層または蒸着層をさらに含むことができる。
【0051】
コーティング層または蒸着層は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質を含むことができる。
【0052】
炭素系物質は、シリコンオキシド粒子に対して0.01〜0.5倍の粒子の大きさを有することが好ましい。
【0053】
また、炭素系物質は、シリコンオキシド100重量部に対して1〜50重量部で含まれ得る。炭素系物質がこの含有量範囲で含まれる時、容量減少の恐れなく優れた酸化防止効果を示すことができる。
【0054】
このようなコーティング層または蒸着層は、シリコンオキシド粒子の表面に100nm以下の厚さに形成され得る。酸化防止層が範囲内の厚さに形成される時、容量低下の恐れなく優れた酸化防止効果を示すことができる。
【0055】
シリコンオキシド粒子を含む負極活物質はケイ素酸化物系であって、高容量を実現しながらも、リチウム二次電池の寿命特性を改善することができる。
【0056】
本発明の他の実施形態では、全体組成がSiO(ここで、0<x<2である)で表されるシリコンオキシド粒子を含むシリコンオキシド粉末をエッチャントと反応させるステップを含むリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0057】
一例として、シリコンオキシド粒子は、非晶質シリコンオキシド粒子であり得る。
【0058】
一実施形態において、シリコンオキシド粉末とエッチャントとは、約10:1〜約1:10のモル比で反応することができる。具体的には、シリコンオキシド粉末とエッチャントとは、約1:1.1〜約1:2.1のモル比で反応することができる。範囲の重量比となるように、シリコンオキシド粉末とエッチャントの含有量を調節して反応させることにより、シリコンオキシド粒子の表面におけるシリコンの酸化価数を範囲に低下させることができる。
【0059】
従来も、Si系負極活物質を製造するにあたり、表面におけるSiの酸化価数を低下させようとする試みがあった。しかし、これまで知られた方法では、シリコンオキシド粒子の表面におけるSi/Oの比率を1.8以上に高めることはできなかった。本発明の実施形態にかかる方法では、シリコンオキシド粉末をエッチャントと反応させる簡単な方法により、シリコンオキシド粒子の表面から結晶質SiOのみを選択的に除去することができ、特に、シリコンオキシド粉末とエッチャントとの反応モル比を調節することにより、Si/Oの比率が1.8以上のSi系負極活物質を容易に製造することができる。つまり、シリコンオキシド粒子の表面における所望のSi/Oの比率に応じて、エッチャントの濃度を適切に選択して反応させることにより、粒子の表面におけるSi/Oの比率を容易に選択、製造可能な方法を見出した。
【0060】
シリコンオキシド粉末は、通常の方法により製造されたものを使用することもでき、または商業的に入手して使用することもできる。
【0061】
エッチャントは、通常周知のエッチング液に使用される物質が制限なく使用可能であり、例えば、硝酸、硫酸などのような酸を使用することができ、またはHF、NHF、NHHFなどのようなFイオンを含む化合物を使用することができる。一実施形態において、エッチャントとしてFイオンを含む化合物を用いてエッチング工程をより迅速に行うことができる。
【0062】
エッチャントは、水などの溶媒中に溶解させた溶液状態で使用できる。
【0063】
この時、エッチャント含有溶液の濃度は、適当なエッチング速度を実現できるように決定可能である。例えば、エッチャント含有溶液は、0.5M〜12MのFイオン濃度を有する溶液であり得る。エッチャントの種類が異なると、濃度に応じたエッチング速度が異なるが、例えば、0.5M〜12MのFイオン濃度を有する溶液のエッチング速度と同じエッチング速度を有し得る濃度の等価物を使用することができる。一般に、酸溶液を使用する場合、Fイオンを含む化合物溶液を使用する場合のようなエッチング速度および効果を得るために、より高濃度の溶液を使用することができる。
【0064】
シリコンオキシド粉末とエッチャントとの反応の結果として、表面に存在するシリコンの酸化価数が低いシリコンオキシド含有負極活物質が製造されるが、この時製造された負極活物質に対して通常の方法による洗浄または乾燥工程をさらに実施することができる。例えば、洗浄工程は、製造された負極活物質に対してメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコールを用いて実施することができる。また、乾燥工程は、製造された負極活物質に対して不活性ガス雰囲気下で80〜120℃の温度で実施できる。
【0065】
製造方法は、負極活物質の表面の酸化を防止するために、製造された負極活物質に対して炭素系物質で表面処理して酸化防止膜を形成するステップをさらに含むことができる。
【0066】
この時、炭素系物質としては、カーボンまたは金属導電材などを使用することができる。
【0067】
表面処理工程は、通常の被膜形成方法または蒸着方法であれば特別な制限なく利用することができるが、例えば、塗布、含浸、スプレーなどの方法を利用することができる。
【0068】
本発明のさらに他の実施形態において、本発明にかかる負極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、非水電解液とを含むリチウム二次電池を提供する。
【0069】
リチウム二次電池は、使用するセパレータおよび電解質の種類に応じて、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類され得、形態に応じて、円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類され得、サイズに応じて、バルクタイプと薄膜タイプとに分けられる。これら電池の構造および製造方法は当該分野で広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0070】
図1は、一実施形態にかかるリチウム二次電池の分解斜視図である。図1を参照すれば、リチウム二次電池100は円筒型で、負極112と、正極114と、負極112と正極114との間に配置されたセパレータ113と、負極112、正極114およびセパレータ113に含浸された電解質(図示せず)と、電池容器120と、電池容器120を封入する封入部材140とを主な部分として構成されている。このようなリチウム二次電池100は、負極112、正極114およびセパレータ113を順次に積層した後、スパイラル状に巻き取られた状態で電池容器120に収納して構成される。
【0071】
負極は、集電体と、集電体上に形成された負極活物質層とを含み、負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質は、前述した負極活物質と同じである。負極活物質層はさらに、バインダーを含み、選択的に導電材をさらに含むこともできる。
【0072】
バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また、負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、その代表例として、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレーテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において化学変化を起こさずに電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0074】
集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0075】
正極は、電流集電体と、この電流集電体上に形成される正極活物質層とを含む。
【0076】
正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチオ化インターカレーション化合物)を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを使用することができ、その具体例としては、下記化学式のうちのいずれか1つで表される化合物を使用することができる。Li1−b(式中、0.90≦a≦1.8および0≦b≦0.5である);Li1−b2−c(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5および0≦c≦0.05である);LiE2−b4−c(式中、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1−b−cCoα(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiNi1−b−cCo2−αα(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiNi1−b−cCo2−α(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiNi1−b−cMnα(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiNi1−b−cMn2−αα(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiNi1−b−cMn2−α(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiNi(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5および0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMnGeO(式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5および0.001≦e≦0.1である);LiNiG(式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である);LiCoG(式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である);LiMnG(式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である);LiMn(式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiTO;LiNiVO;Li(3−f)(PO(0≦f≦2);Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2);およびLiFePO
【0077】
これらの化学式において、Aは、Ni、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Rは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Zは、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Tは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0078】
この化合物の表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または化合物とコーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできるのはいうまでもない。コーティング層はコーティング元素化合物であって、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートまたはコーティング元素のヒドロキシカーボネートを含むことができる。これらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であり得る。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Ni、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、化合物にこれら元素を用いて正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法などでコーティングできればいかなるコーティング方法を用いてもよく、これについては当該分野に従事する人によく理解できる内容であるので、詳細な説明は省略する。
【0079】
正極活物質層はさらに、バインダーおよび導電材を含む。
【0080】
バインダーは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また、正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、その代表例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレーテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を起こさずに電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用することができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して使用することができる。
【0082】
電流集電体としては、Alを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0083】
負極および正極はそれぞれ、活物質、導電材および結着剤を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は当該分野で広く知られた内容であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。溶媒としては、N−メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0084】
電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0085】
非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たす。
【0086】
非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒を使用することができる。カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用可能であり、エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用可能である。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグリム、ジグリム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用可能であり、ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用可能である。また、アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用可能であり、非プロトン性溶媒としては、R−CN(Rは、C2〜C20の直鎖状、分枝状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン類などが使用可能である。
【0087】
非水性有機溶媒は、単独または1つ以上を混合して使用することができ、1つ以上を混合して使用する場合の混合比率は、目的の電池性能に応じて適宜調節することができ、これは当該分野に従事する人には広く理解できる。
【0088】
また、カーボネート系溶媒の場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合して使用することがよい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとは約1:1〜約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能に優れることができる。
【0089】
非水性有機溶媒は、カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。この時、カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒とは、約1:1〜約30:1の体積比で混合できる。
【0090】
芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記化学式1の芳香族炭化水素系化合物が使用できる。
【0091】
【化1】
【0092】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素、ハロゲン、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のハロアルキル基またはこれらの組み合わせである。)
【0093】
芳香族炭化水素系有機溶媒は、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,2,3−トリヨードベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、1,2−ジフルオロトルエン、1,3−ジフルオロトルエン、1,4−ジフルオロトルエン、1,2,3−トリフルオロトルエン、1,2,4−トリフルオロトルエン、クロロトルエン、1,2−ジクロロトルエン、1,3−ジクロロトルエン、1,4−ジクロロトルエン、1,2,3−トリクロロトルエン、1,2,4−トリクロロトルエン、ヨードトルエン、1,2−ジヨードトルエン、1,3−ジヨードトルエン、1,4−ジヨードトルエン、1,2,3−トリヨードトルエン、1,2,4−トリヨードトルエン、キシレンまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0094】
非水性電解質は、電池の寿命を向上させるために、ビニレンカーボネートまたは下記化学式2のエチレンカーボネート系化合物をさらに含むこともできる。
【0095】
【化2】
【0096】
式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)またはC1〜C5のフルオロアルキル基であり、RおよびRの少なくとも1つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)またはC1〜C5のフルオロアルキル基である。
【0097】
エチレンカーボネート系化合物の代表例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。ビニレンカーボネートまたはエチレンカーボネート系化合物をさらに使用する場合、その使用量を適宜調節して寿命を向上させることができる。
【0098】
リチウム塩は、非水性有機溶媒に溶解し、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、基本的なリチウム二次電池の作動を可能とし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。リチウム塩の代表例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサラートボレート(lithium bis(oxalato)borate;LiBOB)またはこれらの組み合わせが挙げられ、これらを支持電解塩として含む。リチウム塩の濃度は、約0.1〜約2.0Mの範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0099】
セパレータ113は、負極112と正極114とを分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、リチウム電池で通常使用されるものであればすべて使用可能である。つまり、電解質のイオンの移動に対して、低抵抗でありながら、電解液含湿能力に優れたものが使用できる。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはこれらの組み合わせの中から選択されたものであって、不織布または織布の形態であってもよい。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に単層または多層構造で使用できる。
【0100】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の一実施例であって、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0101】
実施例1:負極活物質の製造
非晶質シリコンオキシド粉末(信越社製)100gを、エタノール40体積%水溶液350mLに分散させた。300RPMの速度で撹拌を行い、1ml/分の流量で49体積%HF水溶液80mLを添加した。添加完了後、そのまま放置し、追加的に30分間反応させた。反応完了後、減圧ろ過装置を用い、5Lの蒸留水を透過させて粉末を洗浄し、負極活物質を得た。
【0102】
実施例2:負極活物質の製造
非晶質シリコンオキシド粉末(信越社製)100gを、エタノール40体積%水溶液350mLに分散させた。300RPMの速度で撹拌を行い、1ml/分の流量で49体積%HF水溶液100mLを添加した。添加完了後、そのまま放置し、追加的に30分間反応させた。反応完了後、減圧ろ過装置を用い、5Lの蒸留水を透過させて粉末を洗浄し、負極活物質を得た。
【0103】
実施例3:負極活物質の製造
49体積%HF水溶液を150mL添加したことを除き、実施例1と同様の方法で実施し、負極活物質を製造した。
【0104】
比較例1:負極活物質の製造
非晶質シリコンオキシド粉末(信越社製)をそのまま負極活物質として用いた。
【0105】
比較例2:負極活物質の製造
非晶質シリコンオキシド粉末(信越社製)100gを、エタノール40体積%水溶液350mLに分散させた。300RPMの速度で撹拌を行い、1ml/分の流量で49体積%HF水溶液10mLを添加した。添加完了後、そのまま放置し、追加的に30分間反応させた。反応完了後、減圧ろ過装置を用い、5Lの蒸留水を透過させて粉末を洗浄し、負極活物質を得た。
【0106】
比較例3:負極活物質の製造
49体積%HF水溶液を30mL添加したことを除き、比較例2と同様の方法で実施し、負極活物質を製造した。
【0107】
比較例4:負極活物質の製造
49体積%HF水溶液を50mL添加したことを除き、比較例2と同様の方法で実施し、負極活物質を製造した。
【0108】
実験例1:X線光電子分光法(XPS)による内部濃度の測定
比較例1の非晶質シリコンオキシドと、比較例2により製造された負極活物質粒子に対し、X線光電子分光器(XPS)を用いて分析した。その結果を図2および図3に示した。
【0109】
[XPS分析条件]
−分析機器:ESCA 250 spectrometer
−分析チャンバ内の圧力:8*10−10mbar
−使用放射線:monochromatic Alkα
−X線の活性エネルギー:1486.8eV
−分析面積:500μm
−XPS分析の表面層の大まかな厚さ:約5nm
−深さ条件:Arイオンビームスパッタリング(3keV)により深さプロファイルを得た。SiOに対して決定されるスパッタリング速度は10nm/minである。
【0110】
図2は、比較例1の非晶質シリコンオキシド粒子を分析したものであって、表面が酸化され、表面に酸素の非常に豊富な相が形成されていることを確認することができる。
【0111】
図3ないし図5は、比較例2ないし4により製造された負極活物質をそれぞれ分析したものであって、エッチャントの濃度に応じて、シリコンオキシド粒子の表面でシリコンオキシド粒子に対するエッチング程度が異なることを示す。つまり、エッチャントの濃度が高いほど、粒子の表面でより高いSi比率を示し、これらすべてにおいて、シリコンオキシド粒子の中心にいくほど、Siの含有量がより緩やかな濃度勾配を形成することを示す。
【0112】
図6ないし図8は、本発明の実施例1ないし実施例3により製造された負極活物質をそれぞれ分析したものであって、ここでも、エッチャントの濃度に応じて、シリコンオキシド粒子の表面でシリコンオキシド粒子に対するエッチング程度が異なることが分かる。これら実施例1ないし3による負極活物質の場合、比較例2ないし比較例4による負極活物質に比べて高濃度のエッチャントと反応させることにより、粒子の表面でSiの比率が急激に高まり、これらすべてにおいて、シリコンオキシド粒子の中心にいくほど、Siの含有量がより緩やかな濃度勾配を形成することを示す。
【0113】
実験例2:容量特性の評価
実施例1ないし3および比較例1ないし4により製造された負極活物質を、リチウム二次電池用負極活物質を用いて2016コイン型半電池を製造した。極板の組成は活物質:導電材:バインダー=80:10:10(重量比)とし、導電材はデンカブラック(Denka black)、バインダーはPI(ポリイミド)を使用し、溶媒はNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いて極板を作製した。対極としてはリチウムメタルを使用し、中間にセパレータを挿入して電解液を注入し、シーリングし、電池を完成した。電解液としては、EC(エチレンカーボネート)/EMC(エチルメチルカーボネート)/DMC(ジメチルカーボネート)が3/3/4の体積比で混合された混合溶媒中に、添加剤としてFEC(Fluorinated ethyl carbonate)を5体積%添加して製造したものを使用した。
【0114】
実験例3:サイクル寿命特性の評価
各リチウム二次電池を、25℃、3.0〜4.2Vの範囲内で、0.5Cの電流密度で充放電を50回実施した。その結果として、初期容量、充放電50回実施後の初期容量に対する50サイクル目の放電容量の比率であるサイクル容量維持率を下記表1に示した。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示しているように、シリコンオキシド粒子の表面におけるSi/Oの比率が1.8以上の場合、最初のサイクル効率および容量維持率がいずれも比率1.8未満の場合に比べて顕著に増加したことが分かる。したがって、本発明の一実施形態により、シリコンオキシド粒子の表面に存在する、酸素に対するシリコンの比率(Si/Oの比率)が1.8〜2.4のシリコンオキシドをリチウム二次電池用負極活物質として使用することにより、リチウム二次電池の寿命特性を含む電気化学的特性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0117】
100 リチウム二次電池
112 負極
113 セパレータ
114 正極
120 電池容器
140 封入部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8