(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透光工程及び測光工程中に前記積層フィルムを一方向へ搬送する搬送工程をさらに含み、前記透光工程では、前記積層フィルムの面上かつ前記一方向と交差する方向に沿った線状の前記測定光を前記積層フィルムに透過させ、
前記測光工程では、前記測定光の形状に対応した領域で透過光強度を測定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の目付量測定方法。
前記積層フィルムを透過した前記測定光の透過光強度に基づき、前記積層フィルムの端部及び欠点の少なくとも一方を検出する検出工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の目付量測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材フィルムと基材フィルムに形成された塗布層とを有する積層フィルムの技術分野では、塗布層の単位面積あたりの質量である目付量を測定できることが好ましい。しかし、特許文献1の技術はこの目付量の測定精度が十分ではなかった。その理由は以下のとおりである。
【0005】
特許文献1の技術では、第1層及び第2層それぞれの膜厚を算出するために、磁気記録媒体を構成するベース・フィルムと同等のベース・フィルムの膜厚を予め測定している。しかしながら、積層フィルムを構成する基材フィルムは、膜厚のバラツキがあり、特に、基材フィルムが延伸をへて形成されるときには、このバラツキは大きくなる。とりわけ、電池用セパレータを構成する基材フィルムなどの多孔質フィルムは、無孔フィルムであるベース・フィルムと比較して膜厚のバラツキが大きくなる。このため、基材フィルムと同等の別の基材フィルムの膜厚を予め測定しておき、その測定値を用いて塗布層の目付量を算出したのでは、算出される目付量と実際の目付量との間の誤差が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、以上の問題に鑑み、積層フィルムの基材フィルムの膜厚バラツキに起因する上記測定誤差の発生を回避して、積層フィルムの塗布層の目付量を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の目付量測定方法は、基材フィルムと前記基材フィルムに形成された塗布層とを有する積層フィルムの前記塗布層の目付量測定方法において、互いに異なる、第1波長を中心波長とする測定光と、第2波長を中心波長とする測定光とを前記積層フィルムに透過させる透光工程と、前記積層フィルムを透過した前記測定光の透過光強度を測定する測光工程と、前記透過光強度に基づき、前記塗布層の目付量を算出する算出工程とを含む。
【0008】
上記方法によれば、積層フィルムを透過する測定光の強度である透過光強度は、塗布層及び基材フィルムの目付量に依存する。
【0009】
このとき、塗布層及び基材フィルムが、第1波長を中心波長とする測定光(以下「第1測定光」)及び第2波長を中心波長とする測定光(以下「第2測定光」)に対して示す吸光度を予め測定しておき、目付量に対する吸光度の傾き(比例係数)を求めておくことで、予め求められた各波長における塗布層及び基材フィルムの比例係数と、測定された積層フィルムの各測定光における透過光強度から塗布層の目付量を算出することができる。
【0010】
そして、二つの測定光が積層フィルムの同一部位を透過しているため、積層フィルムの基材フィルムの膜厚バラツキに起因する上記測定誤差の発生を回避して、積層フィルムの塗布層の目付量を測定できる。
【0011】
また、本発明の目付量測定方法は、基材フィルムと前記基材フィルムに形成された塗布層とを有する積層フィルムの前記塗布層の目付量測定方法において、測定光を前記積層フィルムに透過させる透光工程と、前記積層フィルムを透過した前記測定光を分光し、互いに異なる第1及び第2波長の透過光強度を測定する測光工程と、前記透過光強度に基づき、前記塗布層の目付量を算出する算出工程とを含む。
【0012】
上記方法によれば、積層フィルムを透過する測定光を分光して測定する透過光強度は、塗布層及び基材フィルムの目付量に依存する。
【0013】
このとき、塗布層及び基材フィルムが、第1及び第2波長に対して示す吸光度を予め測定しておき、目付量に対する吸光度の傾き(比例係数)を求めておくことで、予め求められた各波長における塗布層及び基材フィルムの比例係数と、測定された積層フィルムの各波長における透過光強度から塗布層の目付量を算出することができる。
【0014】
そして、第1及び第2波長の透過光強度は、積層フィルムを透過した同一の測定光を分光して測定しているため、積層フィルムの基材フィルムの膜厚バラツキに起因する上記測定誤差の発生を回避して、積層フィルムの塗布層の目付量を測定できる。
【0015】
また、本発明の目付量測定方法は、前記透光工程及び測光工程中に前記積層フィルムを一方向へ搬送する搬送工程をさらに含み、前記透光工程では、前記積層フィルムの面上かつ前記一方向と交差する方向に往復移動する位置から出射した前記測定光を前記積層フィルムに透過させ、前記測光工程では、前記往復移動する位置に対応した領域で透過光強度を測定してもよい。
【0016】
上記方法によれば、目付量の測定範囲を、積層フィルムの搬送方向に延びその幅方向を往復する線状とすることができる。
【0017】
また、本発明の目付量測定方法は、前記透光工程及び測光工程中に前記積層フィルムを一方向へ搬送する搬送工程をさらに含み、前記透光工程では、前記積層フィルムの面上かつ前記一方向と交差する方向に沿った線状の前記測定光を前記積層フィルムに透過させ、前記測光工程では、前記測定光の形状に対応した領域で透過光強度を測定してもよい。
【0018】
上記方法によれば、目付量の測定範囲を、点状又は線状ではなく面状とすることができる。
【0019】
また、本発明の目付量測定方法では、前記測定光と前記積層フィルムとがなす角度は、80°以上100°以下であってもよい。
【0020】
上記方法によれば、積層フィルムを透過する測定光を増やせる。
【0021】
また、本発明の目付量測定方法では、前記塗布層は、アラミドを含むアラミド層であり、前記第1波長は、390nm以上420nm以下の範囲に含まれ、前記第2波長は、680nm以上700nm以下の範囲に含まれていてもよい。
【0022】
上記方法によれば、アラミドは第1波長において測定光を吸収しやすく第2波長において測定光を吸収しにくい。このため、アラミド層の目付量の測定精度が高まる。
【0023】
また、本発明の目付量測定方法では、前記塗布層は、アラミドを含むアラミド層であり、前記第1波長は、390nm以上420nm以下の範囲に含まれ、前記第2波長は、700nm以上850nm以下の範囲に含まれていてもよい。
【0024】
積層フィルムの塗布層の目付量は、可視光が入射する環境で測定されることが多い。そして、700nm以上850nm以下の範囲に含まれる波長は、可視光に多く含まれるわけではない。上記方法によれば、外乱光となる可視光の影響を受けにくくなるため、アラミド層の目付量の測定精度が高まる。
【0025】
また、本発明の目付量測定方法は、前記積層フィルムを透過した前記測定光の透過光強度に基づき、前記積層フィルムの端部及び欠点の少なくとも一方を検出する検出工程をさらに含んでいてもよい。
【0026】
上記方法によれば、塗布層の目付量測定と並行して、積層フィルムの端部及び欠点を検出できる。
【0027】
また、本発明の積層フィルム製造方法は、基材フィルムと前記基材フィルムに形成された塗布層とを有する積層フィルムの製造方法において、上述の目付量測定方法が含む各工程と、前記算出工程において算出した目付量に基づき前記塗布層の目付量を制御する塗工工程とを含む。
【0028】
上記方法によれば、塗布層の目付量がより均一な積層フィルムを製造できる。
【0029】
また、本発明の積層フィルム製造方法は、基材フィルムと前記基材フィルムに形成された塗布層とを有する積層フィルムの製造方法において、上述の目付量測定方法が含む各工程と、前記算出工程において算出した目付量に基づき、前記積層フィルムの目付量異常部位を除去する除去工程とを含む。
【0030】
上記方法によれば、面状の測定範囲に基づき目付量異常部位を除去できるため、積層フィルムの収率が向上する。
【0031】
また、本発明の目付量測定装置は、基材フィルムと前記基材フィルムに形成された塗布層とを有する積層フィルムの前記塗布層の目付量測定装置において、互いに異なる、第1波長を中心波長とする測定光と、第2波長を中心波長とする測定光とをそれぞれ投光する二つの投光器と、前記積層フィルムを透過した前記二つの測定光の透過光強度をそれぞれ測定する二つの受光器と、前記透過光強度に基づき、前記塗布層の目付量を算出する算出部とを備える。
【0032】
また、本発明の目付量測定装置は、基材フィルムと前記基材フィルムに形成された塗布層とを有する積層フィルムの前記塗布層の目付量測定装置において、測定光を投光する投光器と、前記積層フィルムを透過した前記測定光を分光し、互いに異なる第1及び第2波長の透過光強度を測定する分光部と、前記透過光強度に基づき、前記塗布層の目付量を算出する算出部とを備える。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、積層フィルムの基材フィルムの膜厚バラツキに起因する上記測定誤差の発生を回避して、積層フィルムの塗布層の目付量を測定できるという効果を奏する。また、塗布層の目付量がより均一な積層フィルムを製造できるという効果を奏する。また、積層フィルムの収率が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔基本構成〕
本発明の目付量測定対象である積層フィルムとしては、光学フィルム、及び二次電池用セパレータ等が挙げられる。なお、金属フィルム等の光を全く透過しないフィルムは本発明の目付量測定対象とはならない。
【0036】
二次電池用セパレータに関し、基本構成として、リチウムイオン二次電池、セパレータ、耐熱セパレータ、セパレータ・耐熱セパレータの製造方法、スリットについて順に説明する。
【0037】
(リチウムイオン二次電池)
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度が高く、それゆえ、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等の機器、自動車、航空機等の移動体に用いる電池として、また、電力の安定供給に資する定置用電池として広く使用されている。
【0038】
図1は、リチウムイオン二次電池1(電池)の断面構成を示す模式図である。
【0039】
図1に示されるように、リチウムイオン二次電池1は、カソード11と、セパレータ12(電池用セパレータ)と、アノード13とを備える。リチウムイオン二次電池1の外部において、カソード11とアノード13との間に、外部機器2が接続される。そして、リチウムイオン二次電池1の充電時には方向Aへ、放電時には方向Bへ、電子が移動する。
【0040】
(セパレータ)
セパレータ12は、リチウムイオン二次電池1の正極であるカソード11と、その負極であるアノード13との間に、これらに挟持されるように配置される。セパレータ12は、カソード11とアノード13との間を分離しつつ、これらの間におけるリチウムイオンの移動を可能にする多孔質フィルム(基材フィルム)である。セパレータ12は、その材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含む。
【0041】
図2は、
図1に示されるリチウムイオン二次電池1の詳細構成を示す模式図であって、(a)は通常の構成を示し、(b)はリチウムイオン二次電池1が昇温したときの様子を示し、(c)はリチウムイオン二次電池1が急激に昇温したときの様子を示す。
【0042】
図2の(a)に示されるように、セパレータ12には、多数の孔Pが設けられている。通常、リチウムイオン二次電池1のリチウムイオン3は、孔Pを介し往来できる。
【0043】
ここで、例えば、リチウムイオン二次電池1の過充電、又は、外部機器の短絡に起因する大電流等により、リチウムイオン二次電池1は、昇温することがある。この場合、
図2の(b)に示されるように、セパレータ12が融解又は柔軟化し、孔Pが閉塞する。そして、セパレータ12は収縮する。これにより、リチウムイオン3の移動が停止するため、上述の昇温も停止する。
【0044】
しかし、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温する場合、セパレータ12は、急激に収縮する。この場合、
図2の(c)に示されるように、セパレータ12は、破壊されることがある。そして、リチウムイオン3が、破壊されたセパレータ12から漏れ出すため、リチウムイオン3の移動は停止しない。ゆえに、昇温は継続する。
【0045】
(耐熱セパレータ)
図3は、
図1に示されるリチウムイオン二次電池1の他の構成を示す模式図であって、(a)は通常の構成を示し、(b)はリチウムイオン二次電池1が急激に昇温したときの様子を示す。
【0046】
図3の(a)に示されるように、セパレータ12は、基材フィルム5と、耐熱層(塗布層)4とを備える耐熱セパレータであってもよい。耐熱層4は、基材フィルム5のカソード11側の片面に積層されている。なお、耐熱層4は、基材フィルム5のアノード13側の片面に積層されてもよいし、基材フィルム5の両面に積層されてもよい。そして、耐熱層4にも、孔Pと同様の孔が設けられている。通常、リチウムイオン3は、孔Pと耐熱層4の孔とを介し往来する。耐熱層4は、その材料として、例えば全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)を含む。
【0047】
図3の(b)に示されるように、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温し、基材フィルム5が融解又は柔軟化しても、耐熱層4が基材フィルム5を補助しているため、基材フィルム5の形状は維持される。ゆえに、基材フィルム5が融解又は柔軟化し、孔Pが閉塞するにとどまる。これにより、リチウムイオン3の移動が停止するため、上述の過放電又は過充電も停止する。このように、セパレータ12の破壊が抑制される。
【0048】
(セパレータ・耐熱セパレータの製造工程)
リチウムイオン二次電池1のセパレータ及び耐熱セパレータの製造は特に限定されるものではなく、公知の方法を利用して行うことができる。以下では、基材フィルム5がその材料として主にポリエチレンを含む場合を仮定して説明する。しかし、基材フィルム5が他の材料を含む場合でも、同様の製造工程により、セパレータ12(耐熱セパレータ)を製造できる。
【0049】
例えば、熱可塑性樹脂に無機充填剤又は可塑剤を加えてフィルム成形した後、該無機充填剤及び該可塑剤を適当な溶媒で洗浄除去する方法が挙げられる。例えば、基材フィルム5が、超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン樹脂から形成されてなるポリオレフィンセパレータである場合には、以下に示すような方法により製造できる。
【0050】
この方法は、(1)超高分子量ポリエチレンと、無機充填剤(例えば、炭酸カルシウム、シリカ)、又は可塑剤(例えば、低分子量ポリオレフィン、流動パラフィン)とを混練してポリエチレン樹脂組成物を得る混練工程、(2)ポリエチレン樹脂組成物を用いてフィルムを成形する圧延工程、(3)工程(2)で得られたフィルム中から無機充填剤又は可塑剤を除去する除去工程、及び、(4)工程(3)で得られたフィルムを延伸して基材フィルム5を得る延伸工程を含む。なお、前記工程(4)を、前記工程(2)と(3)との間で行なうこともできる。
【0051】
除去工程によって、フィルム中に多数の微細孔が設けられる。延伸工程によって延伸されたフィルムの微細孔は、上述の孔Pとなる。これにより、所定の厚さと透気度とを有するポリエチレン微多孔膜である基材フィルム5(耐熱層(塗布層)を有しないセパレータ12)が得られる。
【0052】
なお、混練工程において、超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200重量部と、無機充填剤100〜400重量部とを混練してもよい。
【0053】
その後、塗工工程において、基材フィルム5の表面に耐熱層4を形成する。例えば、基材フィルム5に、アラミド/NMP(N−メチル−ピロリドン)溶液(塗工液)を塗布し、アラミド耐熱層である耐熱層4を形成する。耐熱層4は、基材フィルム5の片面だけに設けられても、両面に設けられてもよい。また、耐熱層4として、アルミナ/カルボキシメチルセルロース等のフィラーを含む混合液を塗工してもよい。
【0054】
また、塗工工程において、基材フィルム5の表面に、ポリフッ化ビニリデン/ジメチルアセトアミド溶液(塗工液)を塗布(塗布工程)し、それを凝固(凝固工程)させることにより基材フィルム5の表面に接着層(塗布層)を形成することもできる。接着層は、基材フィルム5の片面だけに設けられても、両面に設けられてもよい。
【0055】
塗工液を基材フィルム5に塗工する方法は、均一にウェットコーティングできる方法であれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用できる。例えば、キャピラリーコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法などを採用できる。耐熱層4の厚さは塗工ウェット膜の厚み、塗工液中の固形分濃度によって制御できる。
【0056】
なお、塗工する際に基材フィルム5を固定あるいは搬送する支持体としては、樹脂製のフィルム、金属製のベルト、ドラム等を用いることができる。
【0057】
以上のように、基材フィルム5に耐熱層4が積層されたセパレータ12(耐熱セパレータ)を製造できる。製造されたセパレータは、円筒形状のコアに巻き取られる。なお、以上の製造方法で製造される対象は、耐熱セパレータに限定されない。この製造方法は、塗工工程を含まなくてもよい。この場合、製造される対象は、耐熱層を有しないセパレータである。また、耐熱層に替えて他の塗布層(例えば、後述の接着層)を有する接着セパレータを、耐熱セパレータと同様の製造方法により製造してもよい。
【0058】
(スリット)
耐熱セパレータ又は耐熱層を有しないセパレータ(以下「セパレータ」)は、リチウムイオン二次電池1などの応用製品に適した幅(以下「製品幅」)であることが好ましい。しかし、生産性を上げるために、セパレータは、その幅が製品幅以上となるように製造される。そして、一旦製造された後に、セパレータは、製品幅に切断(スリット)される。
【0059】
なお、「セパレータの幅」とは、セパレータの長手方向と厚み方向とに対し略垂直である方向の、セパレータの長さを意味する。以下では、スリットされる前の幅広のセパレータを「原反」と称し、スリットされたセパレータを特に「スリットセパレータ」と称する。また、スリットとは、セパレータを長手方向(製造におけるフィルムの流れ方向、MD:Machine direction)に沿って切断することを意味し、カットとは、セパレータを横断方向(TD:Transverse Direction)に沿って切断することを意味する。横断方向(TD)とは、セパレータの長手方向(MD)と厚み方向とに対し略垂直である方向を意味する。
【0060】
〔実施形態〕
本発明の実施形態を
図4〜
図12に基づき説明する。
【0061】
《塗布層に関する工程》
図4は、本実施形態の積層フィルムの製造方法が含む、塗布層に関する工程を示す模式図であって、(a)は塗工工程を示し、(b)は検査工程を示す。
【0062】
以下、代表的な実施形態であるセパレータ12を例に説明する。
【0063】
(塗工工程)
図4の(a)に示される塗工工程は、上述のとおり、セパレータ12の塗布層である耐熱層4が含む物質(以下「塗布層物質」)と溶媒とを混合した組成物(以下「塗工液」)を、基材フィルム5に塗工する工程である。塗布層物質は、上述の接着層が含む物質であってもよい。塗工液21は、塗工部材25により基材フィルム5に塗工される。
【0064】
塗工液21が塗工された基材フィルム5である基材フィルム5aは、乾燥工程をへて、後述の検査工程へ搬送される。なお、基材フィルム5aは、乾燥工程へ搬送される前に、析出工程と洗浄工程(溶媒置換工程)とへ搬送されてもよい。析出工程は、塗布層物質を析出させる工程である。洗浄工程は、基材フィルム5aの表面から溶媒を洗浄液で洗い流し、孔の中の溶媒と、洗浄液とを置換する工程である。乾燥工程は、洗浄工程がない場合には、基材フィルム5aの表面の溶媒と、孔の中の溶媒とを乾燥させる工程である。洗浄工程がある場合には、基材フィルム5aの表面の洗浄液と、孔の中の洗浄液とを乾燥させる工程である。これにより、基材フィルム5aは、基材フィルム5に耐熱層4が形成されており、かつ、溶媒が充分に除去されたセパレータ12として、検査工程へ搬送される。
【0065】
(検査工程)
図4の(b)に示される検査工程は、塗工工程の後に、セパレータ12を検査する工程である。セパレータ12は、目付量測定装置30により検査される。
【0066】
目付量測定装置30は、耐熱層4の単位面積あたりの質量である目付量を測定する。後述するとおり、本発明は、目付量測定装置30の構成に主たる特徴を有している。
【0067】
セパレータ12の塗布層(耐熱層又は接着層)は、基材フィルム5の両面に塗工されてもよい。
【0068】
《目付量の測定方法》
塗布層の目付量は、塗布層の吸光度に比例する。この比例関係を利用して目付量を測定できる。「吸光度」とは、塗布層に入射する光の強度である入射光強度Iinと、塗布層を透過したこの光の強度である透過光強度Iとについて「−log(I/Iin)」で求められる値である。以下では、セパレータ12の基材フィルム5の主成分がポリエチレンであり、かつ、塗布層である耐熱層4がアラミドを含む層であるときの目付量の測定について説明する。
【0069】
(波長と吸光度との関係)
図5は、セパレータ12に照射する光の波長と吸光度との関係(以下「吸光度波長依存性」)を示すグラフである。太い実線は、アラミドの吸光度波長依存性を表す。一点鎖線は、ポリエチレンの吸光度波長依存性を表す。なお、この吸光度波長依存性は、セパレータ12を構成する各層中の樹脂存在比率によって変化する。例えば塗布層中に50wt%のフィラーが含まれる場合には、樹脂存在量が半分になるため、塗布層の吸光度も半減する。また、セパレータ12のように積層フィルムが多孔体の場合は、孔の構造による光の散乱も考慮する必要があるため、積層フィルム各層の吸光度波長依存性を求める際は、孔径および孔径分布等において同様の多孔質構造を有する単層フィルムを基準とすることが望ましい。
【0070】
図5に示されるように、光が照射される物質がアラミドであるとき、波長が390nm以上420nm以下(第1波長)である光(測定光)の吸光度は、波長が680nm以上700nm以下(第2波長)である光(測定光)の吸光度よりも大きい。一方、光が照射される物質がポリエチレンであるとき、波長が390nm以上420nm以下である光の吸光度と、波長が680nm以上700nm以下である光の吸光度とは、同程度である。波長が700nmをこえる光の吸光度波長依存性は、波長が680nm以上700nm以下である光の吸光度波長依存性と同様である(非図示)。以上より、アラミドの吸光度が波長に依存することと、ポリエチレンの吸光度が波長に依存しにくいこととがわかる。
【0071】
(目付量と吸光度との関係)
図6は、セパレータ12の耐熱層4の目付量と吸光度平均との関係(以下「目付量吸光度相関」)を示すグラフである。白抜きの正方形の点で示されるデータは、波長が390nm以上420nm以下である光の目付量吸光度相関を示す。三角形の点で示されるデータは、波長が680nm以上700nm以下である光の目付量吸光度相関を示す。
【0072】
図6に示される吸光度は、ガラス基板上にアラミドとアルミナとからなる耐熱層を形成したサンプルに入射する光の強度である入射光強度Iinと、このサンプルを透過したこの光の強度である透過光強度Iとについて「−log(I/Iin)」で求められる値を意味する。「吸光度平均」とは、上述の波長帯における平均的な吸光度を意味する。
【0073】
図6に示されるように、波長が390nm以上420nm以下である光をサンプルに照射したときの目付量の変化に対する平均的な吸光度の変化(以下「目付量吸光度傾き」)は、波長が680nm以上700nm以下である光の目付量吸光度傾きよりも大きい。波長が700nm以上(第2波長)の波長帯(例えば、波長が700nm以上850nm以下の波長帯)の光の目付量吸光度傾きは、波長が680nm以上700nm以下である光の目付量吸光度傾きと同様である(非図示)。
【0074】
(塗布層の目付量の特定)
図5〜
図6に示される関係に基づけば以下の手順でセパレータ12の耐熱層4の目付量を特定できる。
(1)セパレータ12の各層(耐熱層4及び基材フィルム5)が、上述の各波長に対して示す吸光度測定結果から、目付量に対する吸光度の傾き(比例係数)を求める。ここでは、耐熱層4が波長Xに対して示す吸光度の比例係数をX
4、波長Yに対して示す吸光度の比例係数をY
4とする。また、基材フィルム5が波長Xに対して示す吸光度の比例係数をX
5、波長Yに対して示す吸光度の比例係数をY
5とする。
(2)波長が680nm以上700nm以下である光をセパレータ12に照射したときの吸光度X
totalを測定する。
(3)波長が390nm以上420nm以下である光をセパレータ12に照射したときの吸光度Y
totalを測定する。
(4)セパレータ12の耐熱層4の目付をW
4、基材フィルム5の目付をW
5とすると、以下の連立方程式が成り立つ。
X
4W
4+X
5W
5=X
total
Y
4W
4+Y
5W
5=Y
total
上記連立方程式からW
4、W
5をそれぞれ求める。
【0075】
なお、セパレータ12に照射する光の波長は、塗布層を構成する材料によって紫外〜赤外領域から適宜選択することにより、アラミドを含む耐熱層以外でも、塗布層の目付量を特定できる。具体的には、例えば塗布層がPVDFを含む場合、PVDFが特徴的な吸収を示す波数790〜840cm
−1(波長12700nm〜11900nm)の光を用いて上述の(1)〜(4)を実行することにより、塗布層の目付量を特定できる。
【0076】
(セパレータ12が3層以上の層から構成される場合の塗布層の目付量の特定)
セパレータ12が異なる3層以上の層から構成される場合には、層数に対応する数の光を用いて、それぞれの層に対応する吸光度の比例係数を求めることで、各層の目付量を求めることができる。例えば、セパレータ12が異なる4層から構成される場合には、四元一次連立方程式として導かれる上述の連立方程式を解くことにより、各層の目付量が求めることができる。
【0077】
さらに、基材フィルム5の一面にアラミドを含む塗布層が形成され、かつ、他面にセラミックを含む塗布層が形成されたセパレータの、各塗布層の目付量を求めることもできる。また、基材フィルム5の一面にアラミドを含む塗布層が形成され、かつ、この塗布層の基材フィルム5とは反対側の一面に接着層が形成されたセパレータの、塗布層・接着層の目付量を求めることもできる。
【0078】
本発明の実施形態はセパレータに限定されるものではない。例えば、透明フィルム、位相差フィルム又は偏光フィルム等の基材フィルムに、塗布層として接着層が積層された光学フィルムや、塗布層として液晶化合物の硬化膜が積層された光学フィルムにおける塗布層の目付量を求めることもできる。
【0079】
《目付量測定装置の構成》
図7は、
図4の(b)に示される検査工程で用いられる目付量測定装置30の構成を示す側面図である。
図7に示されるように、目付量測定装置30は、投光器31a・31bと、受光器32a・32bと、制御部33(算出部)と、カバー34と、仕切り板35とを備える。
【0080】
なお、
図7に示されるXYZ軸は、
図7以外の図に示されるXYZ軸に対応している。以下では、セパレータ12が、搬送ローラーa・bによりX軸正方向側へ搬送されており、かつ、XY平面が広がる方向に延びているものとして説明する。
【0081】
(投光器・受光器)
投光器31a・31bは、Y軸方向に並ぶ複数の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を含む発光部と、LEDが発光した光を拡散する拡散板とを備え、セパレータ12のY軸方向のおおむね全幅に光を投光する。投光器31aは、中心波長が405nm(第1波長)の光(測定光)をセパレータ12に投光する。投光器31bは、中心波長が850nm(第2波長)の光(測定光)をセパレータ12に投光する。投光器31a・31bと、セパレータ12との間の距離は、1mm〜20mmである。
【0082】
受光器32a・32bは、セパレータ12のY軸方向のおおむね全幅から光を受光する。受光器32aは、投光器31aが投光し、セパレータ12を透過した光を受光する。受光器32bは、投光器31bが投光し、セパレータ12を透過した光を受光する。受光器32a・32bと、セパレータ12との間の距離は、1mm〜20mmである。
【0083】
位置αは、投光器31aにより投光されて受光器32aにより受光される測定光がセパレータ12と交わる空間上の位置である。位置βは、投光器31bにより投光されて受光器32bにより受光される測定光がセパレータ12と交わる空間上の位置である。そして、ある時刻に位置αにあるセパレータ12の部位は、一定時間後に位置βまで搬送される。このため、ある時刻に受光器32aが受光した測定光と、この一定時間後に受光器32bが受光した測定光とは、セパレータ12の同一地点を透過している。
【0084】
(制御部)
制御部33は、投光器31a・31bと、受光器32a・32bとに接続されており、接続された部材の動作を制御できる。例えば、制御部33は、ある時刻に受光器32aが受光した測定光の透過光強度と、一定時間後に受光器32bが受光した測定光の透過光強度とを比較できるように、受光器32a・32bの動作を制御できる。
【0085】
具体的には、制御部33は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されている。なお、この構成に限定されず、制御部33は、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現されてもよい。
【0086】
後者の場合、制御部33は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上述のプログラム及び各種データがコンピュータ(又はCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)又は記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上述のプログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(又はCPU)が上述のプログラムを上述の記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上述の記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上述のプログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上述のコンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上述のプログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0087】
(カバー・仕切り板)
カバー34は、投光器31a・31bと、受光器32a・32bとを囲み、外乱光が囲みの内部へ入射することを防止している。カバー34は、開口部34a・34bを備える。セパレータ12は、開口部34aを介しカバー34の内部へ搬送され、かつ、開口部34bを介しカバー34の外部へ搬送される。仕切り板35は、投光器31aから投光される光が受光器32bに入射すること防止し、かつ、投光器31bから投光される光が受光器32aに入射すること防止する。
【0088】
《目付量測定装置の動作》
目付量測定装置30は、以下のとおり動作する。
(1)投光器31bは、中心波長が850nmである光をセパレータ12に投光する。受光器32bは、セパレータ12を透過したこの光を受光する。制御部33は、投光器31bが出射した光の強度を入射光強度Iinとし、受光器32bが受光した光の強度を透過光強度Iとし、吸光度「−log(I/Iin)」を求める。
(2)投光器31aは、中心波長が405nmである光をセパレータ12に投光する。受光器32aは、セパレータ12を透過したこの光を受光する。制御部33は、投光器31aが出射した光の強度を入射光強度Iinとし、受光器32aが受光した光の強度を透過光強度Iとし、吸光度「−log(I/Iin)」を求める。
(3)制御部33は、この吸光度から吸光度と目付量との比例関係を利用し、耐熱層4の目付量に換算する。
【0089】
《目付量測定装置の効果》
上記(1)(2)の工程(透光工程、測光工程)においてセパレータ12を透過した光は、基材フィルム5が吸収する光の波長帯と、耐熱層4が吸収する光の波長帯との違いを反映する。基材フィルム5の膜厚バラツキが大きければ、その吸光度のバラツキも大きくなるが、耐熱層4の単位面積あたりの質量である目付量は、耐熱層4の吸光度に比例するため、上記(3)の工程(算出工程)において目付量が求まる。
【0090】
以上により、セパレータ12の基材フィルム5の膜厚バラツキに起因する測定誤差の発生を回避して、セパレータ12の耐熱層4の目付量を測定できる。
【0091】
(目付量測定方法・積層フィルム製造方法)
本発明には、上述の透光工程と、測光工程と、算出工程とを含む目付量測定方法も含まれる。
【0092】
また、本発明には、上述の透光工程と、測光工程と、算出工程と、この算出工程において算出した目付量に基づき、塗布層(耐熱層4)の目付量を制御する塗工工程とを含む積層フィルム製造方法も含まれる。この「塗工工程」とは、例えば
図4の(a)に示されるバー塗工を意味する。なお、この「塗工工程」は、グラビア塗工またはディップ塗工であってもよい。そして「目付量を制御」とは、算出工程において算出した目付量に基づき、基材フィルム5に塗工する塗工液の量を調整することを意味する。
【0093】
塗工方法は公知の方法を用いることができる。例えばバー塗工であれば、
図4の(a)に示される基材フィルム5と塗工部材25との間隔を広くすれば塗工液21の塗工量が増加し、この間隔を狭くすればこの塗工量が減少する。グラビア塗工であれば、基材フィルム5を搬送する速度に対するグラビアロールの回転比率を大きくすれば塗工液21の塗工量が増加し、回転比率を小さくすればこの塗工量が減少する。ディップ塗工であれば塗工液21中をくぐる基材搬送速度を大きくすれば塗工液21の塗工量が増加し、基材搬送速度を小さくすればこの塗工量が減少する。
【0094】
また、本発明には、上述の透光工程と、測光工程と、算出工程と、この算出工程において算出した目付量に基づき、セパレータ12の目付量異常部位を除去する除去工程とを含む積層フィルム製造方法も含まれる。この「除去工程」では、スリットされたセパレータ12(スリットセパレータ)の、目付量が予め定めた閾値をこえる又は下回る部位(目付量異常部位)を切断して除去する。切断されたスリットセパレータは、繋ぎ合わされ他のコアに巻き替えられてもよい。
【0095】
(面状の目付量測定・ピンホール検査)
目付量測定装置30を用いた目付量測定方法は、
図7に示されるように、搬送ローラーa・bがセパレータ12をX軸正方向側へ搬送する搬送工程を含む。そして、上述の透光工程では、セパレータ12の面上かつX軸方向と交差するY軸方向に沿った線状の二つの測定光(投光器31aが投光する光、及び、投光器31bが投光する光)をセパレータ12に透過させ、上述の測光工程では、線状の二つの測定光それぞれに対応した領域で透過光強度を測定している。これにより、目付量の測定範囲を、点状又は線状ではなく、面状とすることができる。
【0096】
また、目付量測定装置30は、セパレータ12の全面の耐熱層4の目付量を測定できる。そして、セパレータ12にピンホールが空いているときには、透過光強度のコントラストが著しく変化する。このため、目付量測定装置30は、目付量を測定しつつピンホールも検査できる。つまり、目付計及び欠陥検査機の複合型装置を実現できる。
【0097】
また、目付量測定装置30は、セパレータ12の全面の目付量を測定することにより、セパレータ12の端部を検出(常時監視)できる。ゆえに、目付量測定装置30は、ピンホールなどの欠陥が存在する位置である欠陥座標(例えばセパレータ12の端部から欠陥が存在する位置までの長さ)を特定できる。
【0098】
検査工程の後工程であるスリット工程では、欠陥座標が特定されていることが好ましい。しかし、検査工程ではセパレータ12がランダムに蛇行し得るため、従来の検査装置では、欠陥座標を特定することが困難であった。目付量測定装置30は欠陥座標を特定できるため、スリット工程において欠陥座標を活用し、スリットセパレータの収率を改善することができる。
【0099】
(測定精度)
目付量測定装置30は、0.1g/m
2の精度で目付量を測定できる。この精度を高めるためには、投光器31a・31bが単波長の光を投光できることが好ましい。
【0100】
(測定方式)
目付量測定装置30は、セパレータ12に測定光を透過させる透過型の目付量測定装置である。透過する測定光の光量を増加させるためには、投光器と受光器とを結ぶ直線が、セパレータ12と成す角度は、80度以上100度以下であることが好ましい。また、この角度は、85度以上95度以下であることがより好ましい。セパレータ12に測定光を反射させる反射型の目付量測定装置も存在する。しかし、反射型の目付量測定装置は、セパレータ12の耐熱層4の目付量の変化を、反射した測定光の強度変化として観測できず、目付量を測定できないことがある。目付量測定装置30は、反射型の目付量測定装置が測定不可能なセパレータについても、その塗布層の目付量を測定できる。
【0101】
《その他の構成》
(キャリブレーション)
図8は、
図7に示される目付量測定装置30の構成を示す平面図である。なお、
図8では、受光器32a・32bと制御部33とカバー34と仕切り板35とは省略されている。
図8に示されるように、目付量測定装置30は、サンプルホルダ36をさらに備える。サンプルホルダ36には、吸光度が既知であるサンプルが配される。サンプルホルダ36は、セパレータ12の生産時と同等の搬送速度でX軸方向へ動く。そして、サンプルホルダ36に配されたサンプルに測定光を透過させ、吸光度を測定することにより、吸光度を目付量に換算するときに用いる吸光度と目付量との正しい比例関係を知ることができる。
【0102】
(受光器)
図9は、
図7に示される目付量測定装置30の受光器32の構成を示す正面図であって、(a)は受光器32が密着型センサ(CIS;Contact Image Sensor)モジュールであるときの構成を示し、(b)は受光器32が複数の電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device)カメラ32Aからなるときの構成を示し、(c)は受光器32が広角のCCDカメラ32Bであるときの構成を示す。この正面図において、受光器32aと受光器32bとは、見かけ上同じ構成となるため、受光器32a・32bをまとめて「32」と表記する。同様に、投光器31a・31bをまとめて「31」と表記する。
【0103】
図9の(a)に示されるように、受光器32は、セパレータ12のY軸方向のおおむね全幅から光を受光する、Y軸方向に並ぶ複数の撮像素子とレンズアレイとを備えたCISモジュールである。この構成に限定されるわけではなく、受光器32は、
図9の(b)に示されるように、複数のCCDカメラ32A(受光器)からなっていてもよい。また、受光器32は、
図9の(c)に示されるように、広角のCCDカメラ32B(受光器)であってもよい。
【0104】
(CISモジュール)
CISモジュールは、以下に列挙する特徴を有する。
・装置間の品質のバラツキが少ないため、このバラツキの悪影響を抑制するための構成が不要になる。
・直径が大きなレンズを用いる構成と比較して視野の歪み(例えば、
図9の(b)の視野Dに発生する歪み)が少ない。これにより、光学的な補正(収差、光量比など)が不要になる。
・直径が大きなレンズを用いる構成と比較して色収差が少ない。このため、紫外(UV;ultraviolet)側の光(例えば中心波長が405nmである光)と、近赤外(NIR;near infra-red)側の光(例えば中心波長が850nmである光)とを確実に受光できる。
・分解能は80μmである。他の分解能を選択することもできる。
・視野は1150mmである。セパレータ12の幅が約1000mmであるとき、1台のCISモジュールを一つの受光器として利用すれば、セパレータ12の全幅にわたり、耐熱層4の目付量を測定できる。他の視野を選択することもできる。
・キャリブレーション(目付量測定装置30の経年劣化診断を含む)及び目付換算式算出のための目付量測定は、セパレータ12の幅方向の端部の一箇所で行えばよい。
・CISモジュールの機械構造は1軸である。
【0105】
(CCDカメラ)
CCDカメラは、以下に列挙する特徴を有する。
・CISモジュールと比較して安価である。
・CISモジュールと比較して選択肢(視野、分解能)が多い。
・分解能は60μmである。他の分解能を選択することもできる。
・視野は200mmである。セパレータ12の幅が約1000mmであるとき、6台のCCDカメラを一つの受光器として利用すれば、確実にセパレータ12の全幅にわたり、耐熱層4の目付量を測定できる。他の視野を選択することもできる。
・視野の歪み(例えば、
図9の(b)の視野Dに発生する歪み)に対し、光学的な補正が必要になる。
・CISモジュールと比較して色収差が大きい。
・キャリブレーション及び目付換算式算出のための目付量測定は、CCDカメラ毎に実施する必要がある。
・CCDカメラの機械構造は2軸であってCISモジュールよりも複雑である。
【0106】
(広角のCCDカメラ)
広角のCCDカメラは、以下に列挙する特徴を有する。
・CISモジュール及びY軸方向に並べた複数のCCDカメラを用いる構成と比較して安価である。
・CISモジュールと比較して選択肢(視野、分解能)が多い。
・視野の歪みに対し、光学的な補正が必要になる。
・この視野の歪みは、Y軸方向に並べた複数のCCDカメラを用いる構成と比較して大きい。
・CISモジュールと比較して色収差が大きい。
【0107】
(トラバース測定)
図10は、トラバース測定を行う目付量測定装置50の構成を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。「トラバース測定」とは、測定位置を動かしながら行う目付量測定を意味する。
図10の(a)に示されるように、目付量測定装置50は、投光器51と、分光部52Aと、トラバースユニット56u・56lと、サンプルホルダ57と、制御部59(算出部)とを備える。なお、目付量測定装置50は、ブロアー55と、非常停止ボタン58とを備えていてもよい。
【0108】
投光器51は、波長が405nm(第1波長)の光と、波長が850nm(第2波長)の光とを含む測定光を発光する光源(例えばLED)である。この測定光は、これらに限定されず、390nm以上420nm以下の波長(第1波長)の光と、波長が680nm以上850nm以下の波長(第2波長)の光とを含んでいてもよい。
【0109】
分光部52Aは、受光器52と、受光ファイバ53と、分光器54とを含む。受光器52はレンズを備えた筒状の部材であり、投光器51が投光し、セパレータ12を透過した光を受光する。受光ファイバ53は、受光器52が受光した光を分光器54に導光する。分光器54は、受光ファイバ53が導光した光をスペクトルに分光し、互いに異なる第1及び第2波長の透過光強度を測定する。制御部59は、これらの透過光強度から上述の吸光度を求め、耐熱層4の目付量に換算する。
【0110】
トラバースユニット56uは、受光器52を一定速度でY軸方向に往復移動させる。受光器52が動いても受光器52から分光器54へ光を導光できるように、受光ファイバ53は充分に長い。トラバースユニット56lは、投光器51を一定速度でY軸方向に往復移動させる。トラバースユニット56uとトラバースユニット56lとは連動する。これにより、投光器51により投光された光が受光器52へ入射するように、投光器51と受光器52とは、同期して往復移動できる。つまり、往復移動する投光器51(往復移動する位置)から出射した測定光は、セパレータ12を透過し、これに対応して往復移動する受光器52(往復移動する位置に対応した領域)で受光される。
【0111】
投光器51と受光器52とをキャリブレーションするときには、吸光度が既知であるサンプルがサンプルホルダ57に配される。このとき、トラバースユニット56uは、受光器52をサンプルホルダ57の位置まで動かす。また、トラバースユニット56lは、投光器51をサンプルホルダ57の位置まで動かす。非常停止ボタン58が押下されると、トラバースユニット56u・56lの動作が停止する。
【0112】
トラバースユニット56u・56lは、フィルム幅をこえた位置で、折り返しのために減速する。この位置にブロアー55を配置することで、トラバースユニット56lに接続された機器の埃の堆積を防ぐことができる。ブロアー55は、エアー導管が接続されており、エアー導管から供給されたエアーを、セパレータ12の投光器51が光を投光している位置に吹き付ける。
【0113】
制御部59は、投光器51と、分光器54と、ブロアー55と、トラバースユニット56u・56lと、非常停止ボタン58とに接続されており、接続された部材の動作を制御する。制御部59の具体的な構成は、上述の制御部33と同様である。
【0114】
セパレータ12が、X軸正方向(一方向)側へ搬送されているとき、
図10の(b)に示されるように、目付量測定装置50の目付量測定位置は、セパレータ12上を位置Pa、位置Pb、位置Pc、位置Pdの順に動く。このように、目付量測定位置は、セパレータ12の搬送方向に延びその幅方向を往復する線状となる。
【0115】
なお、セパレータ12の位置Paと位置Pcとの間の耐熱層4の目付量は測定されない。このように、目付量の測定位置がセパレータ12の一点鎖線で示される線状を移動するため、目付量が測定されない領域がセパレータ12上に発生する。
【0116】
(複数の分光部を用いた測定)
図11は、複数の分光部52Aを用いる目付量測定装置50Aの構成を示す正面図である。
図11に示されるように、目付量測定装置50Aは、投光器51Aと、5個の分光部52Aと、制御部59(算出部)とを備える。
【0117】
投光器51Aは、390nm以上420nm以下の波長(第1波長)の光と、波長が680nm以上850nm以下の波長(第2波長)の光とを含む線状の測定光を、セパレータ12のY軸方向のおおむね全幅に投光する。5個の分光部52Aは、受光器52が受光し、受光ファイバ53が導光した光を、分光器54でスペクトルに分光し、互いに異なる第1及び第2波長の透過光強度を測定する。
【0118】
なお、分光部52Aの個数は、5個に限定されず、投光器51Aが出射した測定光をセパレータ12の所望の領域で分光できるように、増やしても減らしてもよい。受光器52は、測定光を集光するための光学系を備えていてもよい。
【0119】
制御部59は、投光器51Aと、5個の分光部52Aの分光器54とに接続されており、接続された部材の動作を制御する。そして、制御部59は、これらの透過光強度から上述の吸光度を求め、耐熱層4の目付量に換算する。
【0120】
(分光部を用いないトラバース測定)
図12は、分光部を用いずにトラバース測定を行う目付量測定装置50Bの構成を示す正面図である。
図12に示されるように、目付量測定装置50Bは、投光器51a・51bと、受光器52a・52bと、トラバースユニット56u・56lと、サンプルホルダ57と、制御部59(算出部)とを備える。なお、目付量測定装置50Bは、ブロアー55と、非常停止ボタン58とを備えていてもよい。
【0121】
投光器51aは、中心波長が390nm以上420nm以下(第1波長)である測定光を投光する。受光器52aは、セパレータ12を透過したこの測定光の透過光強度を測定する。また、投光器51bは、中心波長が680nm以上850nm以下(第2波長)である測定光を投光する。受光器52bは、セパレータ12を透過したこの測定光の透過光強度を測定する。
【0122】
位置αは、投光器51aにより投光されて受光器52aにより受光される測定光がセパレータ12と交わる空間上の位置である。位置βは、投光器51bにより投光されて受光器52bにより受光される測定光がセパレータ12と交わる空間上の位置である。そして、位置αと位置βとにおいて、セパレータ12の基材フィルム5の膜厚バラツキが無視できる程度に小さいときには、投光器51a・51bは、測定光をセパレータ12の同一地点に投光しているとみなしてよい。また、投光器51a・51b及び受光器52a・52bの配置及び角度を調節することにより、二つの測定光をセパレータ12の同一地点に投光してもよい。
【0123】
制御部59は、投光器51a・51bと、受光器52a・52bとに接続されており、接続された部材の動作を制御する。そして、制御部59は、これらの透過光強度から上述の吸光度を求め、耐熱層4の目付量に換算する。
【0124】
〔まとめ〕
以上の目付量測定は、測定光を分光するか否かという特徴と、測定光の出射位置が移動するか否かという特徴とにより、以下のとおり分類できる。
【0125】
(「測定光を分光する」かつ「測定光の出射位置が移動する」目付量測定)
図10の(a)に示される目付量測定装置50が実行する目付量測定方法は、測定光をセパレータ12に透過させる透光工程と、セパレータ12を透過した測定光を分光し、互いに異なる第1及び第2波長の透過光強度を測定する測光工程と、これらの透過光強度に基づき、耐熱層4の目付量を算出する算出工程とを含む。かつ、この目付量測定方法は、透光工程及び測光工程中にセパレータ12をX軸正方向へ搬送する搬送工程をさらに含み、透光工程では、Y軸方向に往復移動する位置から出射した測定光をセパレータ12に透過させ、測光工程では、往復移動する位置に対応した領域で透過光強度を測定している。
【0126】
以上により、目付量の測定範囲を、
図10の(b)に示されるように、セパレータ12の搬送方向に延びその幅方向を往復する線状とすることができる。この目付量の測定結果は、目付量の、セパレータ12の搬送方向の変動を反映したものとなる。ゆえに、目付量測定装置50が算出工程において算出した目付量に基づき、耐熱層4の目付量を制御する塗工工程を実行できる。
【0127】
(「測定光を分光する」かつ「測定光の出射位置が移動しない」目付量測定)
図11に示される目付量測定装置50Aが実行する目付量測定方法は、測定光をセパレータ12に透過させる透光工程と、セパレータ12を透過した測定光を分光し、互いに異なる第1及び第2波長の透過光強度を測定する測光工程と、これらの透過光強度に基づき、耐熱層4の目付量を算出する算出工程とを含む。かつ、透光工程及び測光工程中にセパレータ12をX軸正方向へ搬送する搬送工程をさらに含み、透光工程では、Y軸方向に沿った線状の測定光をセパレータ12に透過させ、測光工程では、測定光の形状に対応した領域で透過光強度を測定している。
【0128】
以上により、目付量の測定範囲を、面状とすることができる。この目付量の測定結果は、目付量の、セパレータ12の搬送方向の変動を反映したものとなる。ゆえに、目付量測定装置30が算出工程において算出した目付量に基づき、耐熱層4の目付量を制御する塗工工程を実行できる。
【0129】
また、目付量の測定範囲を、セパレータ12の全面とすることにより、抜けなく目付量を測定できる。ここで、目付量は、セパレータ12の端部において、有意な値と0との間で変化する。また、目付量は、セパレータ12の欠点(ピンホールなど)位置において、急激に変化する。ゆえに、セパレータ12を透過した測定光の透過光強度に基づき、セパレータ12の端部及び欠点の少なくとも一方を検出する検出工程を実行できる。
【0130】
(「測定光を分光しない」かつ「測定光の出射位置が移動する」目付量測定)
図12に示される目付量測定装置50Bが実行する目付量測定方法は、互いに異なる第1及び第2波長をそれぞれ中心波長とする二つの測定光をセパレータ12に透過させる透光工程と、セパレータ12を透過した測定光の透過光強度を測定する測光工程と、透過光強度に基づき、耐熱層4の目付量を算出する算出工程とを含む。かつ、透光工程及び測光工程中にセパレータ12をX軸正方向へ搬送する搬送工程をさらに含み、透光工程では、Y軸方向に往復移動する位置から出射した測定光をセパレータ12に透過させ、測光工程では、往復移動する位置に対応した領域で透過光強度を測定している。
【0131】
以上により、目付量の測定範囲を、セパレータ12の搬送方向に延びその幅方向を往復する線状とすることができる。ゆえに、上述のとおり、目付量測定装置50が算出工程において算出した目付量に基づき、耐熱層4の目付量を制御する塗工工程を実行できる。
【0132】
(「測定光を分光しない」かつ「測定光の出射位置が移動しない」目付量測定)
図7に示される目付量測定装置30が実行する目付量測定方法は、互いに異なる第1及び第2波長をそれぞれ中心波長とする二つの測定光をセパレータ12に透過させる透光工程と、セパレータ12を透過した測定光の透過光強度を測定する測光工程と、透過光強度に基づき、耐熱層4の目付量を算出する算出工程とを含む。かつ、透光工程及び測光工程中にセパレータ12をX軸正方向へ搬送する搬送工程をさらに含み、透光工程では、Y軸方向に沿った線状の測定光をセパレータ12に透過させ、測光工程では、測定光の形状に対応した領域で透過光強度を測定している。
【0133】
以上により、目付量の測定範囲を、面状とすることができる。ゆえに、上述のとおり、目付量測定装置30が算出工程において算出した目付量に基づき、耐熱層4の目付量を制御する塗工工程を実行できる。
【0134】
また、目付量の測定範囲を、セパレータ12の全面とすることにより、抜けなく目付量を測定できる。ゆえに、上述のとおり、セパレータ12を透過した測定光の透過光強度に基づき、セパレータ12の端部及び欠点の少なくとも一方を検出する検出工程を実行できる。
【0135】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。