(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0014】
図1及び
図2は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図であり、鉛直方向に延びる軸線PXを含む一平面においてチャンバ本体を破断して、当該プラズマ処理装置を示している。なお、
図1においては、後述する第2軸線AX2が軸線PXに一致するよう支持構造体の第1軸線AX1周りの回転方向位置が設定された状態(非傾斜状態)のプラズマ処理装置が示されている。
図2においては、第2軸線AX2が軸線PXに交差するよう支持構造体の第1軸線AX1周りの回転方向位置が設定された状態(傾斜状態)ののプラズマ処理装置が示されている。
【0015】
図1及び
図2に示すプラズマ処理装置10は、チャンバ本体12、ガス供給部14、プラズマ源16、支持構造体18、排気装置20、及び、第1の駆動装置24、を備えている。一実施形態では、プラズマ処理装置10は、バイアス電力供給部22、及び、制御部Cntを更に備え得る。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。一実施形態では、チャンバ本体1の中心軸線は、軸線PXと一致している。このチャンバ本体12は、その内部空間、即ちチャンバSを提供している。
【0016】
一実施形態では、チャンバ本体12は、上側部分12a、中間部分12b、及び、下側部分12cを含んでいる。上側部分12aは、中間部分12bの上方に位置しており、中間部分12bは、下側部分12cの上方に位置している。中間部分12b及び下側部分12cは一体の筒状体である。上側部分12aは、中間部分12b及び下側部分12cを提供する筒状体とは別体の筒状体である。上側部分12aの下端は中間部分12bの上端に結合される。上側部分12aの下端と中間部分12bの上端との間には、Oリングといった封止部材が設けられる。また、上側部分12aと中間部分12bとは、固定具、例えば、ネジによって結合される。この上側部分12aは、中間部分12bから取り外し可能になっている。上側部分12aは、プラズマ処理装置10の保守を行うときに、必要に応じて、中間部分12bから取り外される。
【0017】
中間部分12bによって囲まれた領域、即ち、支持構造体18を収容する領域において、チャンバSは、略一定の幅を有している。また、チャンバSは、支持構造体18を収容する領域の下側の領域においては、当該チャンバSの底部に向かうにつれて徐々に幅が狭くなるテーパー状をなしている。また、チャンバ本体12の底部は、排気口12eを提供しており、当該排気口12eは軸線PXに対して軸対称に形成されている。
【0018】
ガス供給部14は、チャンバSにガスを供給するよう構成されている。一実施形態では、ガス供給部14は、第1のガス供給部14a、及び第2のガス供給部14bを有していてもよい。第1のガス供給部14aは、第1の処理ガスをチャンバ本体12内に供給するよう構成されている。第2のガス供給部14bは、第2の処理ガスをチャンバ本体12内に供給するよう構成されている。なお、ガス供給部14の詳細については後述する。
【0019】
プラズマ源16は、チャンバS内のガスを励起させるよう構成されている。一実施形態では、プラズマ源16は、チャンバ本体12の天部に設けられている。また、一実施形態では、プラズマ源16の中心軸線は、軸線PXと一致している。なお、プラズマ源16の一例に関する詳細については後述する。
【0020】
支持構造体18は、チャンバ本体12内において被加工物Wを保持するように構成されている。被加工物Wは、ウエハのように、略円盤形状を有し得る。支持構造体18は、鉛直方向に直交する方向に延びる第1軸線AX1中心に回転可能であるよう構成されている。即ち、支持構造体18は、第2軸線AX2と軸線PXとの間の角度を変更することが可能である。支持構造体18を回転させるために、プラズマ処理装置10は、第1の駆動装置24を有する。第1の駆動装置24は、チャンバ本体12の外部に設けられている。第1の駆動装置24は、第1軸線AX1中心の支持構造体18の回転のための駆動力を発生する。また、支持構造体18は、第1軸線AX1に直交する第2軸線AX2中心に被加工物Wを回転させるよう構成されている。なお、支持構造体18の詳細については後述する。
【0021】
排気装置20は、チャンバSを減圧するよう構成されている。一実施形態では、排気装置20は、自動圧力制御器20a、ターボ分子ポンプ20b、及び、ドライポンプ20cを有している。自動圧力制御器20aは、チャンバ本体12の直下に設けられており、排気口12eに接続されている。ターボ分子ポンプ20bは、自動圧力制御器20aの下流に設けられている。ドライポンプ20cは、バルブ20dを介してチャンバSに直結されている。また、ドライポンプ20cは、バルブ20eを介してターボ分子ポンプ20bに接続されている。このプラズマ処理装置10では、軸線PXに対して軸対称に設けられた排気口12eに排気装置20が接続されているので、支持構造体18の周囲から排気装置20までの均一な排気の流れを形成することができる。これにより、効率の良い排気が達成され得る。また、チャンバS内で生成されるプラズマを均一に拡散させることが可能である。なお、チャンバS内には、必要に応じて、整流部材(不図示)が設けられていてもよい。整流部材は、支持構造体18を側方及び下方から囲むように、チャンバ本体12の内壁面に沿って延在する。整流部材には多数の貫通孔が形成されている。
【0022】
バイアス電力供給部22は、被加工物Wにイオンを引き込むための、バイアス電圧及び高周波を選択的に支持構造体18に与えるよう構成されている。一実施形態では、バイアス電力供給部22は、第1電源22a及び第2電源22bを有している。第1電源22aは、支持構造体18に印加するバイアス電圧として、パルス変調された直流電圧(以下、「変調直流電圧」という)を発生する。
【0023】
第2電源22bは、被加工物Wにイオンを引き込むための高周波を支持構造体18に供給するよう構成されている。この高周波の周波数は、イオンを被加工物Wに引き込むのに適した任意の周波数であり、例えば、400kHzである。プラズマ処理装置10では、第1電源22aからの変調直流電圧と第2電源22bからの高周波を選択的に支持構造体18に供給することができる。変調直流電圧と高周波の選択的な供給は、制御部Cntによって制御され得る。
【0024】
制御部Cntは、例えば、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータである。制御部Cntは、入力されたレシピに基づくプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。プラズマ処理装置10の各部は、制御部Cntからの制御信号により制御される。
【0025】
以下、ガス供給部14、プラズマ源16、支持構造体18のそれぞれについて詳細に説明する。
【0027】
ガス供給部14は、上述したように、第1のガス供給部14a及び第2のガス供給部14bを有している。第1のガス供給部14aは、一以上のガス吐出孔14eを介してチャンバSに第1の処理ガスを供給する。また、第2のガス供給部14bは、一以上のガス吐出孔14fを介してチャンバSに第2の処理ガスを供給する。ガス吐出孔14eは、ガス吐出孔14fよりも、プラズマ源16に近い位置に設けられている。したがって、第1の処理ガスは第2の処理ガスよりもプラズマ源16に近い位置に供給される。なお、
図1及び
図2においては、ガス吐出孔14e及びガス吐出孔14fそれぞれの個数は、「1」であるが、複数のガス吐出孔14e及び複数のガス吐出孔14fが設けられていてもよい。複数のガス吐出孔14eは、軸線PXに対して周方向に均等に配列されていてもよい。また、複数のガス吐出孔14fも、軸線PXに対して周方向に均等に配列されていてもよい。
【0028】
一実施形態では、ガス吐出孔14eによってガスが吐出される領域とガス吐出孔14fによってガスが吐出される領域との間に、仕切板、所謂イオントラップが設けられていてもよい。これにより、第1の処理ガスのプラズマから被加工物Wに向かうイオンの量を調整することが可能となる。
【0029】
第1のガス供給部14aは、一以上のガスソース、一以上の流量制御器、一以上のバルブを有し得る。したがって、第1のガス供給部14aの一以上のガスソースからの第1の処理ガスの流量は調整可能となっている。また、第2のガス供給部14bは、一以上のガスソース、一以上の流量制御器、一以上のバルブを有し得る。したがって、第2のガス供給部14bの一以上のガスソースからの第2の処理ガスの流量は調整可能となっている。第1のガス供給部14aからの第1の処理ガスの流量及び当該第1の処理ガスの供給のタイミング、並びに、第2のガス供給部14bからの第2の処理ガスの流量及び当該第2の処理ガスの供給のタイミングは、制御部Cntによって個別に調整される。
【0030】
一例では、第1の処理ガスは、希ガスであり得る。希ガスは、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、又は、Xeガスである。また、第1の処理ガスは、Heガス、eガス、Arガス、Krガス、及び、Xeガスのうちから選択されるガスであり得る。例えば、多層膜を有する被加工物Wをエッチングする際には、各層のエッチングに適した希ガスが選択される。第2の処理ガスは、水素含有ガスであり得る。水素含有ガスとしては、CH
4ガス又はNH
3ガスが例示される。このような第2の処理ガスに由来する水素の活性種は、例えば、多層膜中の1以上の層に含まれる金属を還元作用によってエッチングし易い状態に改質する。かかる一例においては、制御部Cntによる制御により、プラズマ生成時の第1の処理ガス及び第2の処理ガスの供給量が個別に制御される。
【0032】
図3及び
図4は、一実施形態のプラズマ源を示す図である。
図3には、
図1のY方向(軸線PX及び第1軸線AX1に直交する方向)に視たプラズマ源が示されており、同図においては、プラズマ源が部分的に破断されている。
図4には、
図1のZ方向(鉛直方向)においてその上側から視たプラズマ源が示されており、同図においては、プラズマ源が部分的に破断されている。
図1及び
図3に示すように、チャンバ本体12の天部には開口が設けられており、当該開口は、誘電体板194によって閉じられている。誘電体板194は、板状体であり、石英、又はセラミックから構成されている。プラズマ源16は、この誘電体板194上に設けられている。
【0033】
図3及び
図4に示すように、プラズマ源16は、高周波アンテナ140及びシールド部材160を有している。高周波アンテナ140は、シールド部材160によって覆われている。一実施形態では、高周波アンテナ140は、内側アンテナ素子142A及び外側アンテナ素子142Bを含んでいる。内側アンテナ素子142Aは、外側アンテナ素子142Bよりも軸線PXの近くに設けられている。換言すると、外側アンテナ素子142Bは、内側アンテナ素子142Aを囲むように、当該内側アンテナ素子142Aの外側に設けられている。内側アンテナ素子142A及び外側アンテナ素子142Bの各々は、例えば銅、アルミニウム、ステンレス等の導体から構成されており、軸線PXに対して螺旋状に延在している。
【0034】
内側アンテナ素子142A及び外側アンテナ素子142Bは共に、複数の挟持体144に挟持されている。複数の挟持体144は、例えば、棒状の部材であり、軸線PXに対して放射状に延在している。
【0035】
シールド部材160は、内側シールド壁162A及び外側シールド壁162Bを有している。内側シールド壁162Aは、鉛直方向に延在する筒形状を有しており、内側アンテナ素子142Aと外側アンテナ素子142Bの間に設けられている。この内側シールド壁162Aは、内側アンテナ素子142Aを囲んでいる。また、外側シールド壁162Bは、鉛直方向に延在する筒形状を有しており、外側アンテナ素子142Bを囲むように設けられている。
【0036】
内側アンテナ素子142Aの上には、内側シールド板164Aが設けられている。内側シールド板164Aは、円盤形状を有しており、内側シールド壁162Aの開口を塞ぐように設けられている。また、外側アンテナ素子142Bの上には、外側シールド板164Bが設けられている。外側シールド板164Bは、環状板であり、内側シールド壁162Aと外側シールド壁162Bとの間の開口を塞ぐように設けられている。
【0037】
内側アンテナ素子142A、外側アンテナ素子142Bにはそれぞれ、高周波電源150A、高周波電源150Bが接続されている。高周波電源150A及び高周波電源150Bは、プラズマ生成用の高周波電源である。高周波電源150A及び高周波電源150Bは、内側アンテナ素子142A及び外側アンテナ素子142Bのそれぞれに、同じ周波数又は異なる周波数の高周波を供給する。例えば、内側アンテナ素子142Aに高周波電源150Aから所定の周波数(例えば40MHz)の高周波を所定のパワーで供給すると、チャンバS内で形成された誘導磁界によって、チャンバSに供給された処理ガスが励起され、被加工物Wの上の中央領域においてドーナツ型のプラズマが生成される。また、外側アンテナ素子142Bに高周波電源150Bから所定の周波数(例えば60MHz)の高周波を所定のパワーで供給すると、チャンバS内で形成された誘導磁界によって、チャンバSに供給された処理ガスが励起され、被加工物Wの上の周縁領域において別のドーナツ型のプラズマが生成される。かかるプラズマによって、処理ガスからラジカルといった活性種が生成される。
【0039】
図5及び
図6は、一実施形態に係る支持構造体を示す断面図である。
図5には、Y方向に視た支持構造体の断面図が示されており、
図6には、X方向(
図2参照)に視た支持構造体の断面図が示されている。
図5及び
図6に示すように、支持構造体18は、保持部30、容器40、及び、第1の軸部50を有している。
【0040】
保持部30は、被加工物Wを保持し、第2軸線AX2中心に回転することによって、被加工物Wを回転させる機構である。なお、第2軸線AX2は、第1軸線AX1に直交する軸線であり、支持構造体18が非傾斜状態にあるときには、軸線PXと一致する。この保持部30は、静電チャック32、ベース部材35、及び、第2の軸部36を有している。
【0041】
静電チャック32は、吸着部33及び下部電極34を有している。吸着部33は、下部電極34上に設けられている。下部電極34は、ベース部材35上に設けられる。吸着部33は、その上面において被加工物Wを保持するように構成されている。吸着部33は、略円盤形状を有しており、その中心軸線は第2軸線AX2に略一致している。吸着部33は、絶縁膜、及び、当該絶縁膜内に設けられた電極膜を有している。電極膜に電圧が印加されると、吸着部33は静電力を発生する。この静電力により、吸着部33は、その上面に載置された被加工物Wを吸着する。この吸着部33と被加工物Wとの間には、Heガスといった伝熱ガスが供給されるようになっている。この吸着部33の内部には、被加工物Wを加熱するためのヒータが内蔵されていてもよい。
【0042】
下部電極34は、略円盤形状を有しており、その中心軸線は第2軸線AX2に略一致している。一実施形態において、下部電極34は、第1部分34a及び第2部分34bを有している。第1部分34aは、下部電極34の中央側の部分であり、第2部分34bは、第1部分34aよりも第2軸線AX2から離れて、即ち、第1部分34aよりも外側で延在する部分である。第1部分34aの上面及び第2部分34bの上面は連続しており、第1部分34aの上面及び第2部分34bの上面によって下部電極34の略平坦な上面が構成されている。この下部電極34の上面には、吸着部33が接している。また、第1部分34aは、第2部分34bよりも下方に突出して、円柱状をなしている。即ち、第1部分34aの下面は、第2部分34bの下面よりも下方において延在している。この下部電極34は、アルミニウムといった導体から構成されている。下部電極34は、上述したバイアス電力供給部22と電気的に接続される。即ち、下部電極34には、第1電源22aからの変調直流電圧、及び、第2電源22bからの高周波が選択的に与えられるようになっている。また、下部電極34には、冷媒流路34fが設けられている。この冷媒流路34fに冷媒が供給されることにより、被加工物Wの温度が制御されるようになっている。
【0043】
ベース部材35は、石英、アルミナといった絶縁体から構成されている。ベース部材35は、略円盤形状を有しており、中央において開口している。一実施形態では、ベース部材35は、第1部分35a及び第2部分35bを有している。第1部分35aは、ベース部材35の中央側の部分であり、第2部分35bは、第1部分35aよりも第2軸線AX2から離れて、即ち、第1部分35aよりも外側で延在する部分である。第1部分35aの上面は第2部分35bの上面よりも下方で延在しており、第1部分35aの下面も第2部分35bの下面よりも下方で延在している。ベース部材35の第2部分35bの上面は、下部電極34の第2部分34bの下面に接している。一方、ベース部材35の第1部分35aの上面は、下部電極34の下面から離間している。
【0044】
支持構造体18は、絶縁性の保護部材30pを更に有している。保護部材30pは、例えば、石英、アルミナといった絶縁体から構成されている。保護部材30pは、略円筒形状を有しており、その上端部分は当該保護部材30pの他の部分よりも縮径している。この保護部材30pは、静電チャック32の上面の外縁部及び静電チャック32の外周面を覆っている。したがって、静電チャック32の上面の外縁部及び静電チャック32の外周面は、保護部材30pによりプラズマから保護される。また、保護部材30pにより、被加工物Wの周囲におけるプラズマ密度分布の均一性が向上される。
【0045】
保持部30は、固定具30aを更に有する。固定具30aは、静電チャック32をベース部材35に対して取り外し可能に固定する。固定具30aは、一実施形態では、複数のねじを含む。この実施形態のベース部材35及び静電チャック32には、ベース部材35の下面から鉛直方向に沿って静電チャック32の内部まで延びる複数の孔30bが形成されている。複数の孔30bを画成する面は雌ねじを提供している。これら雌ねじに固定具30aの複数のねじがそれぞれ螺合されることにより、静電チャック32はベース部材35に対して固定される。また、これら複数のねじを雌ねじから取り外すと、静電チャック32をベース部材35から容易に取り外すことができる。
【0046】
図7は、別の実施形態の固定具を示す図である。この実施形態では、保持部30は、固定具30aに代わる固定具31を有している。固定具31は、複数の第1の柱状体31a及び複数の第2の柱状体31bを含んでいる。ベース部材35及び静電チャック32には、複数の第1の孔31cが形成されている。複数の第1の孔31cは、ベース部材35の下面から鉛直方向に沿って静電チャック32の内部まで延びている。また、静電チャック32には複数の第2の孔31dが形成されている。複数の第2の孔31dは、静電チャック32(下部電極34)の外周面から延びて、複数の第1の孔31cにそれぞれ接続している。
【0047】
静電チャック32をベース部材35に固定する際には、
図7の(a)部に示すように、複数の第1の柱状体31aがそれぞれ、複数の第1の孔31cに挿入される。そして、
図7の(b)部に示すように、複数の第2の柱状体31bがそれぞれ、複数の第2の孔31dに挿入される。複数の第2の柱状体31bの先端部分はそれぞれ、複数の第1の柱状体31aに形成された孔31eに挿入される。これにより、静電チャック32がベース部材35に対して固定される。しかる後に、
図7の(c)部に示すように、静電チャック32の上面の外縁部及び静電チャック32の外周面を覆うように保護部材30pが取り付けられる。
【0048】
図5及び
図6に示すように、第2の軸部36は、静電チャック32から容器40内まで第2軸線AX2に沿って延びている。第2の軸部36は、略円柱形状を有しており、下部電極34の下面に結合されている。具体的には、下部電極34の第1部分34aの下面に結合されている。第2の軸部36の中心軸線は、第2軸線AX2と一致している。この第2の軸部36に対して回転力が与えられることにより、保持部30が回転するようになっている。
【0049】
支持構造体18の内部空間(即ち、容器40内の空間)には、第2の駆動装置78が設けられている。第2の軸部36は、第2の駆動装置78に連結されている。第2の駆動装置78は、保持部30を第2軸線AX2周りに回転させるよう構成されている。第2の駆動装置78は、第2の軸部36を回転させるための駆動力を発生する。一実施形態では、第2の駆動装置78は、第2の軸部36の側方に設けられている。この第2の駆動装置78は、第2の軸部36に取り付けられたプーリ80に伝導ベルト82を介して連結されている。第2の駆動装置78の回転駆動力は、プーリ80及び伝導ベルト82を介して第2の軸部36に伝達される。これにより、保持部30が第2軸線AX2中心に回転する。
【0050】
このような種々の要素によって構成される保持部30は、容器40と共に支持構造体18の内部空間として中空の空間を形成している。容器40は、保持部30の下側に設けられている。容器40は、筒状の容器本体41、当該容器本体41の上部に設けられた上蓋42、及び、容器本体41の下側開口を閉じる底蓋43を有する。上蓋42は、略円盤形状を有している。上蓋42の中央には、第2の軸部36が通る貫通孔が形成されている。この上蓋42は、ベース部材35の第2部分35bの下方において、当該第2部分35bに対して僅かな間隙を提供するように設けられている。上蓋42の下面周縁には、容器本体41の上端が結合している。
【0051】
底蓋43は、上端部43a及び下端部43bを含んでいる。下端部43bは、第2軸線AX2が延びる方向において上端部43aよりも容器本体41から離れている。この底蓋43は、容器本体41に対して取り外し可能なように構成されている。上端部43aは、容器本体41の下端に接続される。容器本体41の下端と底蓋43の上端部43aとの間には、Oリングといった封止部材が設けられ得る。容器本体41と底蓋43とは、固定具43cで結合される。固定具43cは、例えば、複数のねじを含む。
【0052】
上端部43aよりも下端部43bの側において、第2軸線AX2に直交する任意の方向における底蓋43の幅は、当該任意の方向における上端部43aの幅よりも小さくなっている。例えば、上端部43aと下端部43bとの間において、底蓋43の幅は、単調に減少している。この底蓋43によれば、第1軸線AX1と底蓋43との間の最大距離DLが小さくなる。即ち、第1軸線AX1周りの支持構造体18の回転半径が小さくなっている。したがって、チャンバSのサイズを小さくすることができる。故に、チャンバ本体12のサイズを小さくすることができる。また、支持構造体18、特に底蓋43の周囲におけるコンダクタンスが大きくなる。したがって、チャンバS内における均一なガスの流れが形成される。故に、静電チャック32上におけるプラズマ密度分布の均一性が向上される。
【0053】
一実施形態では、第1軸線AX1は、第2軸線AX2方向における支持構造体18の中心と保持部30の上面との間の位置を含んでいる。即ち、この実施形態では、第1の軸部50は、支持構造体18の中心よりも静電チャック32側に偏った位置で延在している。この実施形態によれば、第2軸線AX2を軸線PXに対して傾斜させたときに、プラズマ源16から被加工物Wの各位置までの距離差を低減することができる。したがって、プラズマ処理、例えばエッチングの面内均一性が向上される。
【0054】
別の実施形態では、第1軸線AX1は、支持構造体18の重心を含んでいる。この実施形態では、第1の軸部50は、当該重心を含む第1軸線AX1上で延在している。この実施形態によれば、第1の駆動装置24に要求されるトルクが小さくなり、当該第1の駆動装置24の制御が容易となる。
【0055】
容器40と保持部30の第2の軸部36との間には、シール部材が介在している。シール部材は、容器40内の空間をチャンバSから分離する。シール部材は、第2の軸部36と容器40との間に設けられた磁性流体シール52であることができる。磁性流体シール52は、内輪部52a及び外輪部52bを有している。内輪部52aは、第2の軸部36と同軸に延在する略円筒形状を有しており、第2の軸部36に対して固定されている。また、内輪部52aの上端部は、ベース部材35の第1部分35aの下面に結合している。この内輪部52aは、第2の軸部36と共に第2軸線AX2中心に回転するようになっている。外輪部52bは、略円筒形状を有しており、内輪部52aの外側において当該内輪部52aと同軸に設けられている。外輪部52bの上端部は、上蓋42の中央側部分の下面に結合している。これら内輪部52aと外輪部52bとの間には、磁性流体52cが介在している。また、磁性流体52cの下方において、内輪部52aと外輪部52bとの間には、軸受53が設けられている。この磁性流体シール52は、支持構造体18の内部空間を気密に封止する封止構造を提供している。この磁性流体シール52により、容器40内の空間は、プラズマ処理装置10のチャンバSから分離される。なお、プラズマ処理装置10では、容器40内の空間の圧力は大気圧に維持される。
【0056】
一実施形態では、磁性流体シール52と第2の軸部36との間に、第1部材37及び第2部材38が設けられている。第1部材37は、第2の軸部36の外周面の一部分、即ち、後述する第3筒状部36dの上側部分の外周面及び下部電極34の第1部分34aの外周面に沿って延在する略円筒形状を有している。また、第1部材37の上端は、下部電極34の第2部分34bの下面に沿って延在する環状板形状を有している。この第1部材37は、第3筒状部36dの上側部分の外周面、並びに、下部電極34の第1部分34aの外周面及び第2部分34bの下面に接している。
【0057】
第2部材38は、第2の軸部36の外周面、即ち、第3筒状部36dの外周面、及び第1部材37の外周面に沿って延在する略円筒形状を有している。第2部材38の上端は、ベース部材35の第1部分35aの上面に沿って延在する環状板形状を有している。第2部材38は、第3筒状部36dの外周面、第1部材37の外周面、ベース部材35の第1部分35aの上面、及び、磁性流体シール52の内輪部52aの内周面に接している。この第2部材38とベース部材35の第1部分35aの上面との間には、Oリングといった封止部材39aが介在している。また、第2部材38と磁性流体シール52の内輪部52aの内周面との間には、Oリングといった封止部材39b及び39cが介在している。かかる構造により、第2の軸部36と磁性流体シール52の内輪部52aとの間が封止される。これにより、第2の軸部36と磁性流体シール52との間に間隙が存在していても、容器40内の空間が、プラズマ処理装置10のチャンバSから分離される。
【0058】
容器本体41には、第1軸線AX1に沿って開口が形成されている。容器本体41に形成された開口には、第1の軸部50の内側端部が嵌め込まれている。第1の軸部50は、中空であって略円筒形状を有しており、その中心軸線は第1軸線AX1と一致している。第1の軸部50は、
図1に示すように、第1軸線AX1に沿ってチャンバ本体12の内部から該チャンバ本体12の外部まで延在している。チャンバ本体12の外部において、第1の軸部50の一方の外側端部には、上述した第1の駆動装置24が結合されている。この第1の駆動装置24は、第1の軸部50の一方の外側端部を軸支している。
【0059】
図5に示すように、支持構造体18は、複数のプッシャーピン91、複数の第3の駆動装置92、及び、複数のホルダ93を更に有する。なお、
図5には、一つのプッシャーピン91、一つの第3の駆動装置92、及び、一つのホルダ93を含む一つのユニット90が示されているが、支持構造体18は、複数のユニット90を有している。また、保持部30には、鉛直方向に延びる複数の貫通孔94が形成されている。複数の貫通孔94は、第2軸線AX2に対して周方向に配列されている。複数のユニット90は、複数のプッシャーピン91がそれぞれ複数の貫通孔94に挿入可能なように、第2軸線AX2に対して周方向に配列されている。即ち、複数の貫通孔94の相対的位置関係と同一の相対的位置関係で複数のプッシャーピン91が配置されるよう、複数のユニット90が配列されている。また、複数のプッシャーピン91それぞれの上方において上蓋42には、複数の貫通孔が形成されている。上蓋42において複数の貫通孔を画成する面には、当該面と複数のプッシャーピン91との間の間隙を封止するよう、Oリングといった封止部材が設けられ得る。
【0060】
複数の第3の駆動装置92は、容器40内に設けられている。複数の第3の駆動装置92は、複数のプッシャーピン91の上端の位置を静電チャック32の上面よりも上方の位置と容器40内の位置との間で変化させるために複数のプッシャーピン91を個別に移動させるよう構成されている。
【0061】
複数のホルダ93は、筒状をなしている。各ユニット90において、ホルダ93は、当該ホルダ93が鉛直方向に延在するよう、第3の駆動装置92の駆動軸に固定されている。また、各ユニット90において、ホルダ93の周囲には、当該ホルダ93と同軸に筒状のスリーブ95が設けられている。スリーブ95の長さはホルダ93の長さよりも長く、スリーブ95は、上蓋42の近傍又は上蓋42まで延びている。各ユニット90では、プッシャーピン91は、スリーブ95によって案内されている。また、各ユニット90では、プッシャーピン91の基端部、即ち上端と反対側の端部が、ホルダ93の内孔に嵌め込まれている。
【0062】
このように、支持構造体18では、複数のプッシャーピン91それぞれに専用の第3の駆動装置92が設けられている。したがって、複数のプッシャーピンを支持するリンクを一つの駆動装置によって上下動させるタイプの駆動機構に比べて、複数のプッシャーピン91それぞれの上端の位置を精密に制御することができる。また、被加工物Wを静電チャック32から上方に移動させる際に複数のプッシャーピン91の各々が被加工物Wに対して与える駆動力の監視の精度が向上される。なお、複数の第3の駆動装置92はモータであり、当該駆動力は、複数の第3の駆動装置92それぞれのトルクを、これら複数の第3の駆動装置92における電流を監視することにより、検出することができる。さらに、支持構造体18は、容器40内にリンクを内蔵していない。したがって、容器40内のスペースを有効に利用することが可能になっている。
【0063】
図5及び
図6に示すように、第2の軸部36は、柱状部36a、第1筒状部36b、第2筒状部36c、及び、第3筒状部36dを有している。柱状部36aは、略円柱形状を有しており、第2軸線AX2上で延在している。柱状部36aは、吸着部33の電極膜に電圧を印加するための配線である。柱状部36aは、吸着部33の電極膜に電気的に接続されており、また、スリップリングといったロータリーコネクタ54を介して配線60に接続されている。配線60は、容器40の内部空間から第1の軸部50の内孔を通ってチャンバ本体12の外部まで延びている。この配線60は、チャンバ本体12の外部においてスイッチを介して電源62(
図1参照)に接続されている。
【0064】
第1筒状部36bは、柱状部36aの外側において当該柱状部36aと同軸に設けられている。第1筒状部36bは、下部電極34にバイアス用の変調直流電圧及び高周波を供給するための配線である。第1筒状部36bは、下部電極34に電気的に接続されており、また、ロータリーコネクタ54を介して配線64に接続されている。配線64は、容器40の内部空間から第1の軸部50の内孔を通ってチャンバ本体12の外部まで延びている。この配線64は、チャンバ本体12の外部においてバイアス電力供給部22の第1電源22a及び第2電源22bに接続されている。なお、第2電源22bと配線64との間には、インピーダンスマッチング用の整合器が設けられ得る。
【0065】
第2筒状部36cは、第1筒状部36bの外側において当該第1筒状部36bと同軸に設けられている。一実施形態では、上述のロータリーコネクタ54内には軸受55が設けられており、当該軸受55は第2筒状部36cの外周面に沿って設けられている。この軸受55は、第2筒状部36cを介して第2の軸部36を支持している。上述した軸受53は第2の軸部36の上側部分を支持しているのに対して、軸受55は第2の軸部36の下側部分を支持している。このように二つの軸受53及び軸受55によって、第2の軸部36がその上側部分及び下側部分の双方において支持されるので、第2の軸部36を第2軸線AX2中心に安定して回転させることが可能である。
【0066】
第2筒状部36cには、伝熱ガス供給用のガスラインが形成されている。このガスラインは、スイベルジョイントといった回転継手を介して配管66に接続されている。配管66は、容器40の内部空間から第1の軸部50の内孔を通ってチャンバ本体12の外部まで延びている。この配管66は、チャンバ本体12の外部において伝熱ガスのソース68(
図1参照)に接続されている。
【0067】
第3筒状部36dは、第2筒状部36cの外側において当該第2筒状部36cと同軸に設けられている。この第3筒状部36dには、冷媒流路34fに冷媒を供給する得ための冷媒供給ライン、及び冷媒流路34fに供給された冷媒を回収する冷媒回収ラインが形成されている。冷媒供給ラインは、スイベルジョイントといった回転継手70を介して配管72に接続されている。また、冷媒回収ラインは回転継手70を介して配管74に接続されている。配管72及び配管74は、容器40の内部空間から第1の軸部50の内孔を通ってチャンバ本体12の外部まで延びている。配管72及び配管74は、チャンバ本体12の外部において、チラーユニット76(
図1参照)に接続されている。
【0068】
このように、第1の軸部50の内孔には、種々の電気系統用の配線、伝熱ガス用の配管、及び、冷媒用の配管が通されている。例えば、第1の軸部50の内孔には、第2の駆動装置78に電気的に接続される複数の配線が更に通されている。第2の駆動装置78に電力を供給するための配線は、第1の軸部50の内孔を通ってチャンバ本体12の外部まで引き出され、チャンバ本体12の外部に設けられたモータ用電源に接続される。
【0069】
この支持構造体18は、大気圧に維持可能な容器40の内部空間に多様な機構を設けることが可能である。また、支持構造体18は、当該内部空間に収めた機構とチャンバ本体12の外部に設けた電源、ガスソース、チラーユニット等の装置とを接続するための配線及び配管をチャンバ本体12の外部まで引き出すことが可能であるように構成されている。なお、上述した配線及び配管に加えて、チャンバ本体12の外部に設けられたヒータ電源と吸着部33に設けられたヒータとを接続する配線が、容器40の内部空間からチャンバ本体12の外部まで第1の軸部50の内孔を介して引き出されていてもよい。
【0070】
以下、プラズマ処理装置10の保守方法について説明する。
図8は、静電チャックに対して底蓋を上方に位置させた状態の支持構造体18を示す図である。この保守方法では、支持構造体18の内部の部品の交換といった保守を行うために、静電チャック32に対して底蓋43を上方に位置させるよう、第1の駆動装置24によって支持構造体18が第1軸線AX1中心に回転される。また、チャンバ本体12の上側部分12aが中間部分12bから取り外される。
【0071】
図9は、底蓋を取り外した状態の支持構造体を示す図である。本保守方法では、次いで、
図9に示すように、底蓋43が容器本体41から取り外される。しかる後に、容器40内に収容されている部品の交換といった保守が行われる。このように、支持構造体18をチャンバ本体12内に配置した状態で、支持構造体18の容器40内に収容されている部品に容易にアクセスすることが可能である。故に、支持構造体18を構成する部品の保守が容易である。
【0072】
図10は、静電チャックを取り外した状態の支持構造体を示す図である。本保守方法では、静電チャック32の交換といった保守のために、静電チャック32が底蓋43に対して上方に位置し、且つ、チャンバ本体12の上側部分12aが中間部分12bから取り外された状態が形成される。次いで、固定具によるベース部材35に対する静電チャック32の固定が解除される。そして、
図10に示すように、静電チャック32がベース部材から取り外される。このように、チャンバS内に支持構造体18を配置した状態で、静電チャック32の交換といった保守を容易に行うことが可能である。
【0073】
図11は、プッシャーピンが抜き取られた状態の支持構造体を示す図である。本保守方法では、プッシャーピン91の交換といった保守のために、静電チャック32が底蓋43に対して上方に位置し、且つ、チャンバ本体12の上側部分12aが中間部分12bから取り外された状態が形成される。また、プッシャーピン91の上端が静電チャック32の上面よりも上方に位置するよう(
図5に示す状態を参照)、第3の駆動装置92によってプッシャーピン91が移動される。そして、
図11に示すように、プッシャーピン91が対応のホルダ93から上方に抜き取られる。そして、抜き取られた後に修理されたプッシャーピン91又は別のプッシャーピン91の基端部がホルダ93に嵌め込まれる。このように、プッシャーピン91の上端を静電チャック32の上面よりも上方に位置させた状態で、ホルダ93からプッシャーピンを容易に抜き取ることができる。したがって、プッシャーピン91の交換といった保守を容易に行うことができる。