(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態>
図1、
図2により、本発明の第1の実施の形態に係る農業用音波照射システムXについて説明する。
まず、
図1によると、本実施形態の農業用音波照射システムXは、音波照射部1、駆動機構2、レール3、脚部4を備えている。本実施形態の農業用音波照射システムXは、植物体5が配置された畝等の配置方向の上方に固定されたレール3上を、音波照射部1が往復走行しつつ、植物体5のそれぞれに対して音波を照射する。
【0012】
具体的には、音波照射部1は、特に病原菌や虫害等に対して植物体5に病害抵抗性を誘導させる超音波帯域又は可聴帯域の音波を照射する。
音波照射部1は、照射する音波の周波数を変更可能に構成される。また、音波照射部1は、周波数が異なる複数の音波を、本実施形態では下方に位置する植物体5に対して照射させる。また、音波照射部1は、単周波数発信、パルス発信、及び/又はスイープ発信が可能に構成されている。
これにより、対象作物に応じた、効果的な音波照射が可能となる。
【0013】
駆動機構2は、本実施形態の育成方法を実行する育成(栽培)対象となる複数の植物体5のそれぞれに対して音波が照射されるよう、音波照射部1の位置を移動させる。具体的には、駆動機構2は、音波照射部1を植物体5に対して相対的に移動させつつ、植物体5に対して音波を照射させる。
このように、植物体5に対して相対的に移動しながら音波を照射することで、容易に、複数の植物体5に対して均一に音波を照射することが可能となる。
【0014】
レール3は、植物体5の上方から音波が照射される状態で、植物体5の配置方向に沿って音波照射部1を移動可能に架設されている、配置方向保持手段である。具体的には、本実施形態において、レール3は、植物体5が栽培される畝等に沿うよう配置されたステンレスや樹脂製のパイプ等である。レール3は、植物体5を配置する畝の長さ等に合わせて、数十cm〜数m間隔で分解、結合可能に構成されていてもよい。
【0015】
脚部4は、植物体5が配置された畝の両端部近傍に設けられている。脚部4は、音波照射部1が植物体5から特定の高さに調整可能に保持されるようレール3を架設させる。これにより、脚部4は、植物体との距離調整機構として機能する。具体的に、本実施形態に係る脚部4は、レール3が固定された一対の脚立等である。この脚立等の高さは、圃場の農作業員等のユーザー(管理者)により変更され、植物体5の成長度合いに合わせて、最適な高さに調整された音波照射部1により音波を照射することが可能となる。これにより、簡単な構造で、均一照射が可能となる。
【0016】
植物体5は、圃場に植えられた各種栽培植物である。この栽培植物として、各種の穀物(作物)、野菜、果樹、花卉園芸植物、地衣類、広義の植物である担子菌等に適用することが可能である。このうち、稲のように音波照射を受けた刺激により矮小化する作物については、音波照射の効果を目視で把握することも可能である。
【0017】
次に、
図2により、本発明の実施の形態に係る農業用音波照射システムXにおける、主要なものについての詳細構成の具体例を説明する。
図2では、駆動機構2として、レール3に沿わせたワイヤーロープ23により音波照射部1を駆動させる具体例を記載している。この例では、二本のレール3がワイヤー取付部22に挿通される。この上で、音波照射部1は、レール3のうち一本を上下に挟み込むような位置でホーン取付部11に配設された回動自在な三つのプーリー12により、レール3に沿って移動可能な状態で固定される。音波照射部1は、レール3上で、それぞれのジョイント部21に設けられたリミットスイッチ210に挟まれた区間を移動される。
また、ホーン取付部11には、駆動用のワイヤーロープ23が取り付けられている。また、ホーン取付部11の下部には、ピエゾ素子やダイナミックスピーカー等の音波ホーン10が、ネジ等で取り付けられている。この音波ホーン10からは、上述の超音波帯域又は可聴帯域の音波が、各植物体5(
図1)に向かって照射される。
【0018】
また、駆動機構2のワイヤー取付部22のそれぞれには、ワイヤーロープ23を駆動するプーリー24が備えられる。一方のプーリー24には、駆動モーター25が軸着されている。また、他方のプーリー24には、板バネ等を用いた引張バネ部26が持着されており、テンションプーリーとして機能する。駆動モーター25は、駆動スピードを制御可能なACモーター等であり、ワイヤー取付部22の一方に取り付けられた電装ボックス20から供給される電源により、特定の回転数で正転又は逆転するように駆動される。これにより、プーリー24が回転し、ワイヤーロープ23が駆動され、音波照射部1がレール3に沿って移動される。そして、ジョイント部21のリミットスイッチ210のいずれかに音波照射部1が接触したことが検知されると、駆動モーター25の回転方向が逆転され、音波照射部1が、それまでの進行方向とは反対方向へ移動される。
これを繰り返すことで、圃場の畝に沿って植えられたそれぞれの植物体5に対して、均一に音波を照射することが可能となる。
【0019】
なお、レール3は、脚部4の代わりに吊架部材により吊架されていてもよい。この場合には、例えば、圃場を覆う栽培ハウスの天井等の構造材から吊架されたワイヤーロープ等の吊架部材により、レール3が吊架される。
また、レール3には、特定間隔でワイヤーロープ23を保持するためのロープサポート等が取り付けられていてもよい。
また、駆動機構2として、ワイヤー取付部22が駆動モーター25を備える構成について説明したものの、音波照射部1が駆動モーター25を備えて自走させる構成であってもよい。この場合、ワイヤーロープ23は備えなくてもよく、レール3も一本だけ設けてもよい。または、ワイヤーロープ23だけを支柱等の脚部4に渡して、これを介して音波照射部1が移動するような構成であってもよい。
また、電装ボックス20内には、駆動モーター25を制御するためのCPU等の制御部やRAMやROM等の記憶部が備えられていてもよい。
【0020】
<第2の実施の形態>
次に、
図3〜
図5により、本発明の第2の実施の形態に係る農業用音波照射システムYについて説明する。
本実施形態の農業用音波照射システムYは、第1の実施形態に係る農業用音波照射システムXと同様の構成と、音波照射部1b、脚部4b、及び地上レール6とを備えている。これにより、二次元的に、圃場全体の植物体5に対して音波を照射し、音波照射の効果を判定する。
図3によると、本実施形態の農業用音波照射システムYでは、第1の実施形態に係る農業用音波照射システムXのように、音波照射部1bがレール3上を往復走行しつつ音波を照射するのに加えて、畝等の植物体5の配置方向の対向方向(垂直方向)の地面に配設された地上レール6上を脚部4bが移動される。これにより、圃場全体の植物体5に音波が照射される。また、本実施形態では、音波照射部1bと、駆動機構2内のソフトウェアによる制御により、それぞれの植物体5にのみ音波を照射したり、植物体5への音波照射の効果を把握したりすることが可能である。
【0021】
具体的には、音波照射部1bは、第1の実施の形態に係る音波照射部1の構成に加えて、音波ホーン10脇等にセンサー13を備えている。
センサー13は、音波照射部1から対象物までの距離を測定するために用いられる。本実施形態において、センサー13は、例えば、超音波センサーを用いる。センサー13により、対象物として地面からの高さ及び植物体5との間の距離等について測定することが可能となる。
【0022】
地上レール6は、本実施形態において、植物体5の配置面に対して、植物体5の配置方向に対向する方向に脚部4bを移動可能に保持させる対向方向保持部として機能する。具体的に、本実施形態において、地上レール6は、例えば、畝の両端部に、畝に対して対向方向に配設される。
これにより、地上レール6上を脚部4bが往復走行することが可能となり、圃場全体に音波を均一に照射することができる。
【0023】
また、脚部4bは、本実施形態ではポール状に構成されており、図示しない車輪を地上レール6との接触位置に複数備えている。これに加え、脚部4bは、伸縮機構41を備えている。
伸縮機構41は、駆動機構2の電装ボックス20からの制御により、脚部4bの高さを調整する。伸縮機構41により、測定された植物体5の一つと音波照射部1との距離(高さ)を調整可能となる。つまり、本実施形態では、音波の照射高さが変更されることで、伸縮機構41は、植物体5との距離調整機構として機能する。
伸縮機構41としては、例えば、脚部4bの下側に配置されたモータと、モータに取り付けられたボールねじと、脚部4bに固定されボールねじが挿通されたナットとを用いることができる。この例では、電装ボックス20からの制御信号により、モータを駆動させてボールねじを回転させることで、ナットが押し上げられ又は押し下げられ、脚部41の高さを変更することができる。
これにより、音波照射部1は、センサー13を用いて測定された距離に対応して、植物体5の生育高さに対応した適切な高さから、音波を照射することが可能となる。
なお、伸縮機構41として、ボールねじを用いて脚部4bの高さを調節する構成の例について説明したものの、これに限られない。たとえば、ラック機構や、油圧、水圧、空圧を用いたピストン等、二つの脚部4bを均等に伸縮できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。
【0024】
次に、
図4により、本実施形態の電装ボックス20の概略システム構成について説明する。
電装ボックス20は、制御部200、記憶部220、発振器230、増幅部240、及びI/F部250を含んでいる。
【0025】
制御部200は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Processor、特定用途向けプロセッサー)等の情報処理手段である。
制御部200は、記憶部220の制御プログラムを実行することで、後述する機能ブロックの各手段として動作させられる。
【0026】
記憶部220は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)、産業用フラッシュメモリーカード等の半導体メモリー記録媒体、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記録媒体である。記憶部220には、装置全体の動作制御を行うための制御プログラムとデータとが記憶されている。
また、記憶部220には、距離測定部201により測定されたそれぞれの植物体5への距離を経時的に記憶されている。本実施形態では、記憶部220には、音波照射時における照射対象となる植物体5の高さ情報が記録される。これにより、記憶部220は、植物体5の成長を記憶するデータメモリーとして機能する。
【0027】
発振器230は、音波照射部1から照射される超音波帯域又は可聴帯域の音波に対応した信号を発振することが可能な周波数可変発振器等である。発振器230は、例えば、音波照射部1から単周波数発信をさせる場合は、15kHz〜60kHz程度の周波数から選択された周波数で連続発信させることが可能である。また、発振器230は、パルス発信させる場合、例えば、15kHz〜60kHz程度の周波数を5ms〜10msのパルスとして出力させることが可能である。また、発振器230は、スイープ発信させる場合には、発振周波数15kHz〜60kHzでスィープ発振させることが可能である。発振器230は、例えば、ヤガ類防除用に用いる場合、超音波帯域の音波をパルス成形し、7ms/パルスにて、160ms間隔で11パルス、36ms間隔で20パルス程度発振させる。また、発振周波数は、40kHz〜43kHz程度でスイープ発振させる。
【0028】
増幅部240は、発振器230で発振された信号を増幅するアンプ(Amplifier)等である。増幅部240の出力は、音波照射部1の音波ホーン10へ、図示しないコード等で接続されている。
【0029】
I/F部250は、シリアル、パラレル、LAN、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、USB、GPIO等の各種インターフェイスである。I/F部250は、センサー13、伸縮機構41、駆動モーター25(
図2)、脚部4b内の地上レール走行用モーター(図示せず)、外部ネットワーク(図示せず)等に接続されている。
【0030】
次に、
図4により、制御部200のシステム構成について説明する。
制御部200は、距離測定部201、位置認識部202、照射制御部203、及び効果判定部204を備えている。
【0031】
距離測定部201は、音波照射部1から植物体5の一つへの距離を測定する。距離測定部201は、例えば、音波ホーン10(
図2)から照射されたパルス波の反射波をセンサー13で検知し、この間の時間遅れから距離を測定することが可能である。
【0032】
位置認識部202は、植物体5が配置された位置を認識する。具体的には、例えば、位置認識部202は、距離測定部201により測定された圃場内の高さのマップから、高さの変化を検出して畝を判別する。また、位置認識部202は、この畝の上で高くなっている箇所(スポット)を植物体5であると判別して、植物体5の位置として認識することが可能である。
また、位置認識部202は、認識した植物体5や畝の位置、音波照射時における照射対象となる植物体5の高さ等を高さ情報として、経時的に記憶部220に記憶させる。
なお、位置認識部202は、先に記憶部220にさせておいた圃場内の畝の位置、高さ情報等を基に、植物体5の位置を認識してもよい。
また、農業用音波照射システムYの管理者等が圃場内の畝や植物体5の栽培座標等を図示しない表示部で確認したり、修正したり、記憶部220に記憶させたりすることも可能である。
【0033】
照射制御部203は、位置認識部202により認識された位置に対応して音波照射部1から音波を照射させる。
具体的には、照射制御部203は、位置認識部202により判別された畝や植物体5の位置に対応するよう、脚部4b内の地上レール走行用モーターを駆動して、地上レール6上を走行、停止させる。また、照射制御部203は、駆動機構2を駆動させて、音波照射部1bを植物体5の概直上に移動させ、音波ホーン10から音波を照射させる。
このように、位置認識部202により判別された植物体5の位置から音波を照射させることが可能になるため、畝の位置のバラツキに影響されなくなる。また、適切な位置から音波を照射できるので、精密に均一照射を行うことが可能となる。また、制御も簡単になる。
【0034】
効果判定部204は、記憶部220に記憶されたそれぞれの植物体5への距離から、音波の照射の効果を判定する。具体的には、効果判定部204は、経時的に記憶された高さ情報から、植物体5の高さの変位の平均等を算出して、この変位の平均等が統計的に有意であるか否かを判別する。効果判定部204は、例えば、稲や麦のように音波照射を受けた刺激により矮小化する作物において、変位の平均等が統計的に有意であった場合、効果ありと判定することが可能である。これにより、目視に頼らずに、客観的に音波照射の効果を判定できる。
また、効果判定部204は、照射の効果を確認するだけでなく、農作物の生育状況自体を監視することも可能である。
【0035】
ここで、制御部200は、記憶部220に記憶された制御プログラムを実行することで、距離測定部201、位置認識部202、照射制御部203、効果判定部204として機能させられる。
また、本実施形態の農業用音波照射システムYの各部は、本発明の画像形成方法を実行するハードウェア資源となる。
【0036】
次に、
図5により、本発明の実施の形態に係る農業用音波照射システムXによる音波照射処理の説明を行う。
本実施形態の音波照射処理は、主に制御部200が、記憶部220に記憶されたプログラムを、各部と協働し、ハードウェア資源を用いて実行する。
以下で、
図5のフローチャートを参照して、音波照射処理の詳細をステップ毎に説明する。
【0037】
(ステップS101)
まず、距離測定部201が、距離測定処理を行う。
本実施形態において、距離測定部201は、例えば、伸縮機構14を特定の高さに固定した上で、まず、脚部4b及び音波照射部1bを、地上レール6及びレール3上の一方の端部(以下、「ホームポジション」という。)に移動させる。このホームポジションは、例えば、概略長方形の圃場の頂点の一つとなる。この上で、距離測定部201は、脚部4bを地上レール6上の対向方向に特定距離ずつ走行して停止させる。なお、この特定距離は、畝を検出可能な距離を基準として算出されてもよい。また、この際に、距離測定部201は、駆動機構2により、音波照射部1bをレール3上で配置方向に例えば一往復、移動させる。この間、距離測定部201は、音波ホーン10から特定間隔でパルス波の音波を照射させ、センサー13で反射波を取得して、圃場の畝、轍、及び植物体5との距離を測定する。この距離は、本実施形態では、例えば、地上レール6を基準とする高さに対応した値となる。以下、このような処理を、圃場の「スキャン」という。
圃場のスキャンにより、距離測定部201は、圃場の全面の高さのマップを作成して、記憶部220に保存する。
【0038】
(ステップS102)
次に、位置認識部202が、位置認識記憶処理を行う。
位置認識部202は、例えば、距離測定部201により算出された高さのマップを微分処理等して畝を認識する。この場合、位置認識部202は、この微分処理における各点で変位が特定閾値を超えた位置を、「畝の上で高くなっている箇所(スポット)」として判別する。そして、位置認識部202は、この位置を植物体5の位置と認識し、記憶部220に保存する。この際、位置認識部202は、それぞれの位置の植物体5の高さについて、例えば、測定した時間を含めた「高さ情報」として、データベースのレコードに追記する。これにより、それぞれの位置について、時間的な高さの変化を取得することができ、データメモリー機能を実現できる。
【0039】
(ステップS103)
次に、照射制御部203が、個別音波照射処理を行う。
照射制御部203は、一旦、脚部4b及び音波照射部1bをホームポジションに移動させる。また、照射制御部203は、例えば、上述の位置認識記憶処理で認識された、それぞれの植物体5の位置へ移動させる最短距離となる軌跡を算出する。そして、照射制御部203は、この算出された軌跡に沿って、一筆書きのように、脚部4bと音波照射部1bとを移動させる。また、照射制御部203は、植物体5のそれぞれの位置に到着した際に、移動先の植物体5に対して最適な高さ(距離)で音波を照射可能になるような高さに伸縮機構14を駆動させて調整する。この調整後に、照射制御部203は、植物体5に対して音波照射部1により音波を照射させる。
なお、この際に、距離測定部201及び位置認識部202により、それぞれの植物体5の高さを再度算出してもよい。
【0040】
(ステップS104)
次に、効果判定部204が、効果判定処理を行う。
植物体5が稲のような作物であった場合、音波照射を受けた刺激により矮小化する。このため、効果判定部204は、経時的な植物体5の高さの変位から、音波照射の効果を判定することが可能である。具体的には、効果判定部204は、例えば、圃場の全ての植物体5について高さの変位を算出して、この平均値及び標準偏差等を算出し、これらを基に、音波を照射しない植物体5の高さの平均値及び標準偏差等と統計検定して有意であるか否かを判定する。これにより、例えば、P<0.10等の特定の割合で統計的に有意であった場合、効果ありと判定する。また、効果判定部204は、それぞれの植物体5について、音波照射の効果を判定してもよい。
また、効果判定部204は、圃場の全ての植物体5について高さの変位から、農作物の生育状況をグラフ化等して圃場の管理者等に示すことも可能である。また、それぞれの植物体5について、高さの変位から生育状況を監視することも可能である。効果判定部204は、生育状況が悪かった場合は、電子メール等で管理者等に連絡することも可能である。
以上により、本発明の実施の形態に係る音波照射処理を終了する。
【0041】
なお、上述の実施の形態では、距離測定処理及び位置認識記憶処理、個別音波照射処理及び効果判定処理についての組み合わせで処理を実行する例について説明したものの、これに限られない。つまり、各処理はそれぞれ同時に実行されてもよく、又は別の組み合わせで実行されてもよい。
また、脚部4bの地上レール6上の移動及び音波照射部1bの移動についての上述の制御は例であり、他順序や移動方向で制御されてもよい。また、必ずしもホームポジションから、配置方向及び対向方向にスキャンして高さのマップを作成しなくてもよい。
【0042】
また、センサー13として、レーザーセンサー、ミリ波レーダー、赤外線センサー、ステレオカメラ等を用いることも可能である。センサー13としてレーザーやミリ波レーダーを用いる場合には、レーザーやミリ波の反射時間から距離を測定することが可能である。また、赤外線センサーの場合は、図示しない赤外線LED等から照射される赤外線の反射波の強度から、距離を測定することが可能である。また、ステレオカメラの場合には、画像処理により距離を測定することが可能である。また、センサー13がステレオカメラであった場合、位置認識部202は、畝や植物体5を認識する等の各種画像処理を行ってもよい。
また、センサー13は、必ずしも音波照射部1に取り付けられている必要はなく、圃場でそれぞれの植物体5の高さや畝の高さ等を測定可能であればよい。たとえば、圃場の屋根の骨組みの左右にステレオカメラを備えて、画像処理で各植物体の高さや畝の高さ等を認識するような構成も可能である。
また、脚部4bに伸縮機構41を備えない構成も可能である。この場合でも、音波照射部1bに伸縮機構を備えて、高さを調整可能であってもよい。
【0043】
<第3の実施の形態>
次に、
図6により、本発明の第3の実施の形態に係る農業用音波照射システムZについて説明する。
本実施形態の農業用音波照射システムZは、植物体5が栽培される移動栽培ベッド7を搬送方向に搬送させて音波を照射する、主に、植物工場等で用いられる構成である。農業用音波照射システムZは、第1の実施の形態に係る農業用音波照射システムX、第2の実施の形態に係る農業用音波照射システムYの構成と同様の構成も備えている。この上で、農業用音波照射システムZは、移動栽培ベッド7が圃場内を巡回するに従って音波が照射され、病原菌に対して植物体5に病害抵抗性を持たせる。以下では、これらとの差異点に注目して説明する。
【0044】
具体的には、農業用音波照射システムZは、一般的な野菜工場等で用いられるベルトコンベアー等の駆動機構2cにより、移動栽培ベッド7が搬送方向に駆動される。そして、地面に固定された一組の支柱等の脚部4cに掛け渡されているレール3cから吊された音波照射部1cにより、音波を照射される。
【0045】
より具体的に説明すると、本実施形態において、音波照射部1cは、ワイヤーロープ23c(吊架部材)等でレール3cに吊架されている。また、ワイヤーロープ23cの長さは、伸縮機構14により伸縮される。これにより、音波照射部1cは、圃場からの高さが調整可能となる。
伸縮機構14の構成は、軽量な音波照射部1cのみを上下させればよいことから、例えば、音波照射部1cを吊り下げるワイヤをドラムに播き付け、モータでドラムを回転させてワイヤを巻だしあるいは巻き戻して上下させるように構成してもよい。なお、伸縮機構14の構成として、上述の伸縮機構41と同様の構成を用いることも可能である。
【0046】
駆動機構2cは、移動栽培ベッド7を搬送方向に移動させるように駆動される。このため、駆動機構2cは、レール3c上で音波照射部1を搬送、移動させる機構を備えていなくてもよい。また、レール3cは1本のみ備えられていてもよい。なお、図示しないものの、駆動機構2cは、植物工場内で移動栽培ベッド7を、栽培される位置から音波照射部1で音波照射させる位置まで巡回又は搬送させる機構等も備えている。
【0047】
移動栽培ベッド7は、栽培対象となる複数の植物体5が特定本数、特定間隔で植えられて配置されている。移動栽培ベッド7は、これらの植えられた植物体5を、圃場内で移動可能に保持する。
【0048】
また、本実施形態の音波照射の具体例について説明すると、音波照射部1cは、駆動機構2cにより移動された移動栽培ベッド7に配置された植物体5のそれぞれに対して、上方から音波を照射する。音波照射部1cは、第2の実施の形態に係る農業用音波照射システムYと同様にセンサー13を備えており、伸縮機構14により高さを調整可能である。この構成においては、農業用音波照射システムYの音波照射処理(
図5)と同様に、音波照射と反射波の時間差から距離(高さ)を測定し、ベルトコンベアー等上の移動栽培ベッド7が検出され、移動栽培ベッド7上の植物体5の位置及び生育高さが認識される。そして、測定された各植物体5までの距離(高さ)に対応して、伸縮機構14で音波照射部1cの高さが調整される。
このような構成により、植物体5の生育高さに対応した適切な高さから、音波を照射することが可能となる。
【0049】
なお、音波照射部1cは、レール3cの長手方向に位置を移動可能であってもよい。
また、移動栽培ベッド7自体に駆動機構が備えられており、自走するような構成であってもよい。
また、伸縮機構14の代わりに、第2の実施の形態の伸縮機構41(
図3)と同様の機構を備えて、音波照射部1cの高さを変更可能に構成してもよい。
また、移動栽培ベッド7毎に備えられた図示しないRFID(Radio Frequency Identification)等を検知するセンサーを別途備えて、移動栽培ベッド7を認識し、植物体5別にデータメモリーを実現してもよい。
【0050】
<第4の実施の形態>
次に、
図7により、本発明の第4の実施の形態に係る農業用音波照射システムWについて説明する。
本実施形態の農業用音波照射システムWは、第3の実施の形態に係る農業用音波照射システムZの構成と同様の植物工場等において、複数の音波照射部1dが備えられている。また、農業用音波照射システムWでは、それぞれの複数の音波照射部1dに、移動栽培ベッド7に保持された植物体5の移動方向に対してそれぞれ異なる一方向から音波を照射させる。
【0051】
より具体的に説明すると、
図7に示す本実施形態の具体例では、音波照射部1dは、移動栽培ベッド7の搬送方向と対向する方向の両側(側方)に配置されている。本実施形態では、それぞれの音波照射部1dから、移動栽培ベッド7の植物体5に対して、音波を集中して照射させる。
【0052】
駆動機構2dは、駆動機構2c(
図6)と同様のベルトコンベアー等であり、移動栽培ベッド7を搬送する。ここで、本実施形態においては、ベルトコンベアー等の上での移動栽培ベッド7の位置や向きが、特定範囲でバラついていてもよい。
【0053】
脚部4dは、脚部4cと同様の支柱である。脚部4dには、センサー13dと摺動部8とが取り付けられている。
センサー13dは、センサー13(
図3、
図6)と同様に、ベルトコンベアー等上で搬送される移動栽培ベッド7とこれに配置されたそれぞれの植物体5の位置を検知する。センサー13dとして、音波照射部1dと反射波取得部とが一体化された超音波センサー、レーザーセンサー、ミリ波レーダー、赤外線センサー、ステレオカメラ等を用いることが可能である。
【0054】
摺動部8は、サーボモータ等により駆動されるロボットアーム等である。摺動部8により、それぞれの音波照射部1dは、摺動部8により音波の照射角度を調整可能に保持される。
【0055】
また、本実施形態の音波照射の具体例について説明すると、第2の実施の形態に係る農業用音波照射システムYの照射制御部203(
図4)と同様の制御により、摺動部8を駆動して角度を調整し、音波照射部1dからの音波の照射の向きを植物体5の一つに指向させる。より具体的には、センサー13dで各植物体5の位置を認識し、摺動部8で、音波照射部1dの角度を変更して音波の照射の向きを調整する。これにより、植物体5に対して、異なる向きから音波を照射することで、照射の効果を高めることができる。つまり、植物体5の生育高さに対応した適切な位置で、音波を照射することが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態でも、農業用音波照射システムYの音波照射処理(
図5)と同様に、各植物体5の生育高さを測定し、音波照射の効果を判定することも可能である。
また、照射制御部203は、音波を照射する植物体5の距離に対応して、音波の発振周波数を調整することで、照射位置における各音波の位相を調整し振幅を大きくし、例えば音波の節の箇所が当該植物体5に位置するようにしてもよい。また、照射制御部203は、植物体5の商品価値がある部位、例えば、花弁や葉等の位置にこの振幅が高まるように調整してもよい。
【0057】
また、本実施形態の
図7においては、脚部4dのそれぞれにセンサー13dが設けられている例の構成について記載したものの、これに限られず、音波照射部1dや圃場内のその他の位置にセンサー13が備えられていてもよい。
また、摺動部8は、照射角度を搬送方向の上下角だけでなく、左右角についても変更可能に構成してもよい。これにより、ベルトコンベアー等で搬送される移動栽培ベッド7上を追従して音波を照射することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態において、摺動部8を用いないような構成も可能である。この場合、支柱等である左右の脚部4dに、音波を照射する高さを調整する伸縮機構を備えているような構成であってもよい。また、それぞれの脚部4dの複数の音波照射部1dを備えており、各音波照射部1dの音波の位相を調整して、植物体5への照射位置や角度を変更するような構成であってもよい。
また、本実施形態においても、第3の農業用音波照射システムZと同様にレール3c及び音波照射部1c(
図6)を追加で備えていてもよい。この場合は、三方向から音波を照射可能となる。
また、脚部4dのような支柱ではなく、ベルトコンベアー等の上下を囲むような保持部を備えていてもよい。特に、箱状の保持部に音波照射部1dを配置することで、箱状の壁面に反射した音波が植物体5に照射されることが期待できる。
【0059】
<第5の実施の形態>
次に、
図8により本発明の第5の実施の形態に係る農業用音波照射システムVについて説明する。
本実施形態の農業用音波照射システムVは、電動式等のマルチコプター(Multicopter)等の飛行機械により音波を照射する。
図8は、自律式のクアッドローター(Quadrotor)である駆動機構2eを備えたドローン(Drone)の本体部9の下部に、音波照射部1eを垂設した例を示している。音波照射部1eは、第2、第3実施形態のセンサー13(
図3、
図6)と同様のセンサー13eを備えていてもよい。これにより、ドローンの本体部9に内蔵されたジャイロや気圧センサー等を用いて、特定高度で、圃場の上空をスキャンするように移動し、第2の実施の形態に係る農業用音波照射システムYと同様に高さのマップを作成し、同様の処理を実行することが可能である。
このように構成することで、音波照射の設備にかかるコストを低減することが可能となる。また、複数の農業用音波照射システムVを制御して、一度に多くの面積又は短時間で複数の植物体5に音波を照射することができる。
【0060】
なお、上記の各実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。