(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。このことは、数値及び範囲についても同様であり、本開示を不当に制限するものではないと解釈すべきである。また、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又はそれに対応する「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。
【0019】
本明細書において、「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、「第1」、「第2」等の用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、構成要素が前記用語によって限定されるものではない。
【0020】
上述の特許文献1〜3に記載されているような従来の感光性エレメントでは、従来使用されていた開口数が大きい投影式露光機を使用すると、現像後のレジストパターンにピンホールが発生しないものの、開口数が小さい投影式露光機を使用すると、現像後のレジストにピンホールが発生することが、本発明者らの検討により判明している。
【0021】
本発明者らは、現像後のレジストにピンホールが生じる原因について、詳細に検討を行っている。まず、コンタクト式露光機及び投影式露光機をそれぞれ用い、露光方式の違いによるピンホール発生の影響を確認する。本検討で用いた投影式露光機は、5μmの解像性を保証された高性能な(開口数が小さい)機種である。その結果、コンタクト式露光機ではピンホール不具合が観察されなかった感光性エレメントを用いた場合でも、投影式露光機を用いると2〜3μm程度のピンホールが発生することが判明している。また、コンタクト式露光機でピンホールを発生させた感光性エレメントを用い投影式露光機で露光すると、ピンホールの発生数は、大幅に増加する傾向にある。
【0022】
次に、ピンホールの発生に対する支持フィルムの種類の影響を確認する。支持フィルムの光透過率及びヘーズは、支持フィルムに含まれる粒子に影響するため、ピンホールを発生させる原因は、支持フィルムに含まれる粒子に起因していると考えられる。開口数が小さい投影式露光機を使用する場合、支持フィルムに含まれる粒子が黒点となり、感光層が露光されず、現像後のレジストパターンにピンホールが発生したものと、本発明者らは推察している。一方、従来使用されていた開口数が大きい投影式露光機を使用すると、感光層表面に投影される像の焦点が合い難いため、現像後のレジストパターンにピンホールが発生し難くなると推察している。そこで、特定の光透過率及びヘーズを有する支持フィルムを採用することで、開口数が小さい投影式露光機を使用した場合も、ピンホールの発生を充分に抑制することができる感光性エレメントを完成するに至っている。
【0023】
本実施形態の感光性エレメントは、支持フィルムと、該支持フィルム上に形成された感光層とを備える感光性エレメントであって、支持フィルムのヘーズが0.01〜1.0%であり、且つ、支持フィルムの全光線透過率が90%以上であることを特徴とする。
【0024】
図1は、感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示した感光性エレメント1は、支持フィルム10と、感光層20とで構成される。感光層20は支持フィルム10の第1の主面12上に設けられている。また、支持フィルム10は、第1の主面12とは反対側に第2の主面14を有している。
【0025】
(支持フィルム)
支持フィルム10は、ヘーズが0.01〜1.0%であり、且つ、全光線透過率が90%以上である。
【0026】
支持フィルム10のヘーズは、0.01〜0.9%であることが好ましく、0.01〜0.8%であることがより好ましく、0.01〜0.7%であることが更に好ましい。支持フィルム10のヘーズが0.01%未満では、支持フィルム自体の製造が容易でなくなる傾向があり、1.0%を超えるとレジストパターンのがたつきが増加する傾向がある。ここで、「ヘーズ」とは曇り度を意味する。本実施形態におけるヘーズは、JIS K 7136(2000)に規定される方法に準拠して、市販の曇り度計(濁度計)を用いて測定された値をいう。ヘーズは、例えば、NDH−5000(日本電色工業株式会社製、製品名)等の市販の装置で測定が可能である。
【0027】
支持フィルム10の全光線透過率は、91%以上であることが好ましい。支持フィルム10の全光線透過率が、90%未満では、開口数の小さい投影式露光機を使用した場合、直径2〜3μmのピンホールが発生し易くなる。本実施形態における全光線透過率は、JIS K 7361−1(1997)に規定される方法に準拠して、市販の曇り度計(濁度計)を用いて測定された値をいう。全光線透過率は、例えば、NDH−5000(日本電色工業株式会社製、製品名)等の市販の装置で測定が可能である。
【0028】
支持フィルム10中に含まれる長径5μm以上の粒子及び凝集物(以下、単に「粒子等」という)の総数は、5個/mm
2以下であることが好ましい。ここで、支持フィルム10中に含まれる長径5μm以上の粒子等には、支持フィルムの主面から突出しているもの及びフィルム内部に存在するものの両方が含まれる。また、長径5μm以上の粒子等には、長径5μm以上の一次粒子及び長径5μm未満の一次粒子の凝集物が含まれる。
【0029】
上記長径5μm以上の粒子等は、5個/mm
2以下であることが好ましく、3個/mm
2以下であることがより好ましく、1個/mm
2以下であることが更に好ましい。この粒子等の数が5個/mm
2以下であると、露光及び現像後のレジストの一部欠損(レジスト微小欠損)が生じ難くなる。そして、このようなレジストの一部欠損を伴う感光性エレメントをプリント配線板に使用すると、エッチング時のオープン不良発生又はめっき時のショート不良発生の一因になり、プリント配線板の製造歩留まりが低下する傾向がある。
【0030】
なお、長径5μm未満の粒子は支持フィルム10中に数多く含まれていても、光散乱に対する影響は大きくない。その要因は、露光工程において、感光層に光を照射した場合、感光層の光硬化反応は光照射部のみでなく、若干であるが光が直接照射されていない横方向(光照射方向に対し垂直方向)へも進行する。このため粒子径が小さい場合は、粒子直下部の光硬化反応が充分に進行するが、粒子径が大きくなるに伴い、粒子直下部の光硬化反応が充分に進行しないため、レジスト微小欠損が発生すると考えられる。
【0031】
ここで、支持フィルム10中に含まれる長径5μm以上の粒子等とは、支持フィルムを構成する成分、例えば、ポリマーのゲル状物、原料であるモノマー、製造時に使用される触媒、必要に応じて含まれる無機粒子又は有機粒子がフィルム作製時に凝集し形成される凝集物、粒子を含有する樹脂層をフィルム上に塗布した際に発生する滑剤と接着剤による膨らみ、フィルム中に含有する長径5μm以上の粒子等に起因して生じたものである。長径5μm以上の粒子等を5個/mm
2以下にするには、これらの粒子等のうち、粒径の小さなもの又は分散性に優れたものを選択的に用いればよい。
【0032】
上記長径5μm以上の粒子等の数は、支持フィルムの厚み方向から偏光顕微鏡を用いて測定することができる。なお、長径5μm以上の一次粒子と長径5μm未満の一次粒子とが凝集して形成される凝集物は、1個として数える。また、本明細書中において、支持フィルム中に含まれる粒子等の「長径」とは、偏光顕微鏡を用いて観察した場合の粒子等の粒子図形の外側輪郭線上の任意の2点を、その間の長さが最大になるように選んだ時の長さを意味し、「最大長」ともいう。
【0033】
支持フィルム10の材料は、ヘーズが0.01〜1.0%であり、且つ全光線透過率が90%以上であれば、特に制限されない。支持フィルム10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と表記する)等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂材料を含むフィルムが挙げられる。
【0034】
支持フィルム10の樹脂層は、単層であっても複数層であってもよい。例えば、樹脂層が2層からなる2層支持フィルムを用いる場合、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、粒子を含有する樹脂層を積層してなる2層フィルムを支持フィルムとして使用し、上記粒子を含有する樹脂層を形成した面に自己治癒層又はハードコート層を設けることが好ましく、上記粒子を含有する樹脂層を形成した面とは反対側の面に感光層を形成することが好ましい。また、支持フィルムの樹脂層として、3層からなる多層支持フィルム(例えば、A層/B層/A層)を用いることもできる。支持フィルムの樹脂層の構成は特に制限されないが、最外層(上記3層からなるものの場合はA層)はいずれも粒子を含有する層であることが、フィルムの滑り性等の見地から好ましい。
【0035】
従来の2層支持フィルムは、粒子を有する樹脂層を二軸配向ポリエステルフィルムに塗布して製造しているため、感光性フィルムのラミネート時に粒子を含有する樹脂層が剥がれ易く、剥がれた樹脂層が感光層に付着して不良の原因になる可能性がある。そのため、本実施形態においては、粒子を有する樹脂層を、二軸配向ポリエステルフィルムの両面に射出成形して作製した3層からなる支持フィルムを用いることが好ましい。上記樹脂層の上には、自己治癒層又はハードコート層を、ロールコート、フローコート、スプレーコート、カーテンフローコート、ディップコート、スリットダイコート等の公知の方法を用いて、適切な硬化性化合物が塗布された後、硬化性化合物が硬化されることによって形成することができる。
【0036】
上記粒子は、粒子を含有する樹脂層中に0.01〜50質量%含有されていることが好ましい。そして、上記粒子としては、例えば、各種核剤により重合時に生成した粒子;凝集体;二酸化珪素粒子(凝集シリカ等)、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子等の無機粒子;架橋ポリスチレン粒子、アクリル粒子、イミド粒子等の有機粒子;及びこれらの混合体を用いることができる。
【0037】
上記粒子を含有する樹脂層は、支持フィルム上に粒子を保持できれば特に制限はなく、支持フィルムの材料に積層されていなくてもよい。また、粒子を含有する樹脂層を構成するベース樹脂としては、上述した支持フィルムの材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
3層以上の多層支持フィルムにおいて、粒子を含有する最外層で挟まれた1以上の中間層は、上記粒子を含有するものであっても含有しないものであってもよいが、解像度を向上させる見地からは、上記粒子を含有していないことが好ましい。中間層が上記粒子を含有する場合は、中間層における含有量は最外層の含有量の1/3以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
【0039】
解像度を向上させる見地からは、また、上記粒子を含有する樹脂層の層厚は0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがより好ましく、0.1〜2μmであることが更に好ましい。そして、最外層の中間層に対向しない面は、1.2以下の静摩擦係数を有することが好ましい。静摩擦係数が1.2以下であることで、フィルム製造時及び感光性エレメント製造時にしわが入り難く、また、静電気を生じ難くなるためごみが付着し難くなる傾向がある。本実施形態において、静摩擦係数は、ASTMD1894に準じて測定することができる。
【0040】
なお、支持フィルム10中に含まれる長径5μm以上の粒子等が5個/mm
2以下とするためには、粒子を含有する樹脂層が含有する粒子の粒径は5μm未満であることが好ましい。そして、露光時の光散乱をより一層低減するために、粒子の粒径に合わせて粒子を含有する樹脂層の層厚を適宜調整することが好ましい。
【0041】
なお、支持フィルム10は、その感光特性を損なわない範囲で、必要に応じて、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0042】
支持フィルム10の厚さは5〜200μmであることが好ましく、8〜100μmであることがより好ましく、10〜80μmであることが更に好ましく、12〜60μmであることが特に好ましい。感光性エレメント1から支持フィルム10を剥離する際に、支持フィルム10が破れ難くなることから、支持フィルム10の厚さは5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、12μm以上であることが特に好ましい。また、廉価性に優れることから、支持フィルム10の厚さは200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることが特に好ましい。
【0043】
また、支持フィルム10は、市販の一般工業用フィルムの中から、感光性エレメント1の支持フィルムとして使用可能なものを入手し、適宜加工して用いられてもよい。支持フィルム10として使用可能な市販の一般工業用フィルムとしては、例えば、PETフィルムである東レ株式会社製の製品名「U32」及び「U48」が挙げられる。
【0044】
(感光層)
感光層20は、感光性樹脂組成物から形成された層である。感光層20を構成する感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物及び(C)光重合開始剤を含有する。以下、上記各成分について詳細に説明する。
【0045】
(A)成分であるバインダーポリマーとしては、従来の感光性樹脂組成物に用いられているものであれば特に限定はされず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。これらの中で、アルカリ現像性を向上させる見地からは、アクリル樹脂が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0046】
バインダーポリマーは、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸及びプロピオール酸が挙げられる。
【0047】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、エステル部位のアルキル基が炭素数1〜12のアルキル基であるものが挙げられる。かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、並びに、これらの構造異性体が挙げられる。さらには、上記アルキル基が、水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0048】
バインダーポリマーは、アルカリ現像性を向上させる見地から、分子内にカルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有するバインダーポリマーは、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体とをラジカル重合させることにより製造することができる。カルボキシル基を有する重合性単量体としては、メタクリル酸が好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸を単量体単位として有するバインダーポリマーが好ましい。
【0049】
また、バインダーポリマーは、密着性及び耐薬品性(耐めっき性)を向上させる見地からスチレン又はスチレン誘導体を単量体単位として有することが好ましい。スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分として、密着性及び剥離特性を共に良好にするには、バインダーポリマーがこれらを3〜60質量%含むことが好ましく、4〜55質量%含むことがより好ましく、5〜50質量%含むことが更に好ましい。スチレン又はスチレン誘導体に基づく単量体単位の含有量が3質量%以上であることで密着性が向上する傾向があり、60質量%以下であることで現像時間がより短くなり、剥離片がより小さくなり、剥離時間がより短くなる傾向がある。
【0050】
バインダーポリマーの重量平均分子量は、30000〜150000であることが好ましく、40000〜120000であることがより好ましい。本実施形態の感光性エレメントを感光層の膜厚を薄くすることが好ましいエッチング用途に用いる場合は、膜強度(テンティング性)を向上できる観点から、バインダーポリマーの重量平均分子量を80000〜100000とすることが特に好ましい。また、感光層の膜厚を厚くすることが好ましいめっき用途に用いる場合は、感光層の剥離性向上の観点から、バインダーポリマーの重量平均分子量を40000〜60000とすることが特に好ましい。この重量平均分子量が30000以上であることで、感光層が脆くなり難い傾向があり、150000以下とすることで糸状現像残りが発生し難く、解像度が向上する傾向がある。なお、上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と表記する)により測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用したものである。
【0051】
バインダーポリマーの酸価は、30〜300mgKOH/gであることが好ましく、60〜250mgKOH/gであることがより好ましく、100〜200mgKOH/gであることが更に好ましい。この酸価が30mgKOH/g以上であることで現像時間がより短くなる傾向があり、300mgKOH/g以下であることで光硬化したレジストのアルカリ現像液に対する酸性が向上する傾向がある。
【0052】
これらのバインダーポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。2種以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーの組合せとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー及び異なる分散度を有する2種類以上のバインダーポリマーが挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
【0053】
なお、現像工程として有機溶剤での現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体を少量に調製することが好ましい。また、必要に応じてバインダーポリマーは感光性基を有していてもよい。
【0054】
(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物としては、炭素数2〜6のオキシアルキレン単位(アルキレングリコールユニット)を分子内に4〜40有する化合物を含むことが好ましい。(B)成分としてこのような化合物を含有することによって、(A)バインダーポリマーとの相溶性を向上することができる。
【0055】
上記炭素数2〜6のオキシアルキレン単位としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシイソプロピレン単位、オキシブチレン単位、オキシペンチレン単位及びオキシへキシレン単位が挙げられる、これらの中で、上記オキシアルキレン単位としては、解像度及び耐めっき性を向上させる観点から、オキシエチレン単位又はオキシイソプロピレン単位が好ましい。
【0056】
また、これらの光重合性化合物の中でも、本発明の効果をより確実に得ることができる傾向があることから、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物又はポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましく使用できる。
【0057】
上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【化1】
【0058】
上記一般式(I)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、メチル基であることが好ましい。上記一般式(I)中、X
1及びX
2はそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレン基を示し、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基及びへキシレン基が挙げられる。中でも、X
1及びX
2は、解像度及び耐めっき性を向上させる観点から、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0059】
上記一般式(I)中、p及びqはp+q=4〜40となるように選ばれる正の整数を示す。p+qの値は6〜34であることが好ましく、8〜30であることがより好ましく、8〜28であることが特に好ましく、8〜20であることが非常に好ましく、8〜16であることが極めて好ましく、8〜12であることが最も好ましい。p+qの値が4以上であると、(A)成分であるバインダーポリマーとの相溶性が向上し、回路形成用基板に感光性エレメントをラミネートした際に剥がれ難くなる。また、p+qの値が40以下であると、親水性が低下し、現像時にレジスト像が剥がれ難く、半田めっき等に対する耐めっき性も向上し易くなる。そして、いずれの場合でも感光性エレメントの解像度が向上する傾向がある。pが2以上の場合、分子内で隣り合った2つ以上のX
1はそれぞれ同一であっても異なってもよく、qが2以上の場合、分子内で隣り合った2つ以上のX
2はそれぞれ同一であっても異なってもよい。また、X
1が2種以上のアルキレン基である場合、−(O−X
1)−の構造単位はランダムに存在してもよいし、ブロック的に存在してもよく、X
2が2種以上のアルキレン基である場合、−(X
1−O)−の構造単位はランダムに存在してもよいし、ブロック的に存在してもよい。
【0060】
また、上記一般式(I)中の芳香環は置換基を有していてもよい。それら置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、フェナシル基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、メルカプト基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、アリル基、水酸基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜10のアルキルカルボニル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のN−アルキルカルバモイル基又は複素環を含む基、あるいは、これらの置換基で置換されたアリール基が挙げられる。上記置換基は、縮合環を形成していてもよく、また、これらの置換基中の水素原子がハロゲン原子等の上記置換基などに置換されていてもよい。なお、置換基の数がそれぞれ2以上の場合、2以上の置換基は各々同一でも異なっていてもよい。
【0061】
上記一般式(I)で表される化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0062】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらのうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(製品名、新中村化学工業社製)として商業的に入手可能である。また、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(製品名、新中村化学工業社製)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0064】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(II)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【化2】
【0065】
上記一般式(II)中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、メチル基であることが好ましい。上記一般式(II)中、Y
1、Y
2及びY
3はそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレン基を示し、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。上記一般式(II)中、s、t及びuはs+t+u=4〜40となるように選ばれる0〜30の整数を示す。s+t+uの値は5〜30であることが好ましく、8〜23であることがより好ましく、10〜15であることが特に好ましい。このs+t+uの値が4以上であると、当該化合物の沸点が高くなり、感光層20の臭気が弱くなる傾向がある。また、s+t+uの値が40以下であると、単位重量当たりの光反応性部位の濃度が高くなるため、実用的な感度がより得られ易い傾向がある。
【0066】
また、一般式(II)中のオキシアルキレン単位(−(Y
1−O)
s−、−(Y
2−O)
t−、及び、−(Y
3−O)
u−)が、例えば、オキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位を含む場合、それらが複数存在する際に、複数のオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位は各々連続してブロック的に存在する必要性はなく、ランダムに存在してもよい。
【0067】
さらに、オキシアルキレン単位がオキシイソプロピレン単位である場合、プロピレン基の2級炭素が酸素原子に結合していてもよく、1級炭素が酸素原子に結合していてもよい。
【0068】
上記一般式(II)で表される化合物の好ましい例としては、下記一般式(III)、(IV)及び(V)で表される化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0069】
【化3】
式(III)中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、EOはオキシエチレン単位を示し、POはオキシプロピレン単位を示し、m
1、m
2及びn
1はm
1+m
2+n
1=4〜40となるように選ばれる1〜30の整数を示す。
【0070】
【化4】
式(IV)中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、EOはオキシエチレン単位を示し、POはオキシプロピレン単位を示し、m
3、n
2及びn
3はm
3+n
2+n
3=4〜40となるように選ばれる1〜30の整数を示す。
【0071】
【化5】
式(V)中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、EOはオキシエチレン単位を示し、POはオキシプロピレン単位を示し、m
4及びn
4はm
4+n
4=4〜40となるように選ばれる1〜30の整数を示す。
【0072】
一般式(III)、(IV)及び(V)における炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。
【0073】
また、上記一般式(III)、(IV)及び(V)におけるオキシエチレン単位の繰り返し数の総数(m
1+m
2、m
3及びm
4)は、各々独立に1〜30の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、4〜9の整数であることが更に好ましく、5〜8の整数であることが特に好ましい。この繰り返し数が30以下であるとテント信頼性及びレジスト形状が向上し易い傾向がある。
【0074】
上記一般式(III)、(IV)及び(V)におけるオキシプロピレン単位の繰り返し数の総数(n
1、n
2+n
3及びn
4)は、各々独立に1〜30の整数であることが好ましく、5〜20の整数であることがより好ましく、8〜16の整数であることが更に好ましく、10〜14の整数であることが特に好ましい。この繰り返し数が30以下であると解像度が向上し、スラッジが発生し難い傾向がある。
【0075】
上記一般式(III)で表される化合物の具体例としては、R
3及びR
4がメチル基、m
1+m
2=4(平均値)、n
1=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成株式会社製、製品名:FA−023M)が挙げられる。
【0076】
上記一般式(IV)で表される化合物の具体例としては、R
3及びR
4がメチル基、m
3=6(平均値)、n
2+n
3=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成株式会社製、製品名:FA−024M)が挙げられる。
【0077】
上記一般式(V)で表される化合物の具体例としては、R
3及びR
4が水素原子、m
4=1(平均値)、n
4=9(平均値)であるビニル化合物(新中村化学工業株式会社製、サンプル名:NKエステルHEMA−9P)が挙げられる。
【0078】
なお、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0079】
(B)成分には、以上説明したような、分子内に重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物に加えて、更に、その他のエチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物を含有させることが好ましい。その他のエチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物としては、例えば、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレート等のノニルフェノキシポリアルキレンオキシ(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記エチレン性不飽和結合を1つ有する光重合性化合物を含有させることにより、現像液特性、剥離性等の特性を向上できる。
【0080】
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物には、上述した光重合性化合物以外の光重合性化合物を含有させてもよい。そのような光重合性化合物としては、例えば、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマーが挙げられる。
【0081】
(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン;N,N’−テトラメチル−4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’−テトラアルキル−4’−ジアミノベンゾフェノン;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。また、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体において、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。これらの中では、密着性及び感度を向上させる観点から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体が好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0082】
(A)成分であるバインダーポリマーの配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、40〜70質量部であることが好ましく、50〜60質量部であることがより好ましい。この配合量が40質量部以上であると光硬化物が脆くなり難い傾向にあり、70質量部以下であると、解像度及び光感度が充分に得られ易い傾向にある。
【0083】
(B)成分であるエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、30〜60質量部であることが好ましく、40〜50質量部であることがより好ましい。この配合量が30質量部以上であると、解像度及び光感度が充分に得られ易い傾向があり、60質量部以下であると光硬化物が脆くなり難い傾向がある。
【0084】
(C)成分である光重合開始剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。この配合量が0.1質量部以上であると光感度が充分に得られ易い傾向があり、20質量部以下であると、露光の際に感光性樹脂組成物の表面での光吸収が増大し難くなり、内部の光硬化が充分に得られ易い傾向がある。
【0085】
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じて、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等の添加剤を含有させてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。これらの添加剤は、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有してもよい。
【0086】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の溶液として調製することができる。
【0087】
本実施形態の感光性エレメント1における感光層20は、上述の感光性樹脂組成物を支持フィルム10上に塗布し、溶剤を除去することにより形成することができる。ここで、塗布方法としては、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法を採用することができる。また、溶剤の除去は、例えば、70〜150℃で5〜30分間程度処理することで行うことができる。なお、感光層には、溶剤が残っていてもよく、感光層20中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0088】
このようにして形成される感光層20の厚さは、乾燥後の厚さで3〜30μmであり、5〜25μmであることが好ましい。本実施形態の感光性エレメントをエッチング用途に用いる場合は、8〜18μmであることがより好ましく、10〜15μmであることが特に好ましい。この厚さが3μm以上であると、回路形成用基板に感光層を積層する際に不具合が発生し難くなること、テンティング性が優れ、現像及びエッチング工程中でレジストが破損し難く、オープン不良が発生し難い傾向があり、プリント配線板の製造歩留まりが向上する傾向がある。一方、厚さが30μm以下であると、感光層20の解像度が向上したり、エッチング液の液周りが改善するため、サイドエッチングの影響がより小さくなったりと、高密度なプリント配線板を製造し易くなる傾向がある。また、本実施形態の感光性エレメントをめっき用途に用いる場合は、15〜25μmであることがより好ましく、20〜25μmであることが特に好ましい。この厚さが3μm以上であると、回路形成用基板に感光層を積層する際に不具合が発生し難くなること、めっき液がオーバーハングし難くなるため、めっき後における感光層の剥離の際に、感光層が剥離し易くなる傾向があり、プリント配線板の製造歩留まりが向上する傾向がある。一方、厚さが30μm以下であると、感光層20の解像度が向上し、高密度なプリント配線板を製造し易くなる傾向がある。
【0089】
感光性エレメント1は、感光層20の支持フィルム10に接する第1の主面とは反対側の第2の主面上に保護フィルム(図示せず。)を備えていてもよい。保護フィルムとしては、感光層20と支持フィルム10との間の接着力よりも、感光層20と保護フィルムとの間の接着力が小さくなるようなフィルムを用いることが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の不活性なポリオレフィンフィルムが挙げられる。感光層20からの剥離性を向上させる見地から、ポリエチレンフィルムが好ましい。保護フィルムの厚みは、用途により異なるが1〜100μmであることが好ましい。
【0090】
感光性エレメント1は、支持フィルム10、感光層20及び保護フィルムの他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層又は保護層を更に備えていてもよい。
【0091】
本実施形態の感光性エレメント1は、例えば、そのままの状態で又は感光層20上に保護フィルムを更に積層したものを、円筒状の巻芯に巻き取った状態で貯蔵されてもよい。この際、支持フィルム10が最外層になるようにロール状に巻き取られることが好ましい。また、ロール状に巻き取った感光性エレメント1の端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の低いブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0092】
巻芯の材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。
【0093】
(レジストパターンの形成方法)
本実施形態のレジストパターンの形成方法は、上記感光性エレメント1を用いて、回路形成用基板上に感光層20を形成する感光層形成工程と、感光層20の所定部分に活性光線を照射して、感光層20に光硬化部を形成させる露光工程と、上記光硬化部以外の感光層20の部分を除去する現像工程と、を含む方法である。感光層形成工程において、回路形成用基板上に、感光層20、支持フィルム10の順に積層することによって、感光層を形成してもよい。すなわち、本実施形態のレジストパターンの形成方法は、感光性エレメント1を、感光層20、支持フィルム10の順に回路形成用基板上に積層する積層工程と、支持フィルム10を通して感光層20の所定部分に活性光線を照射して、感光層20に光硬化部を形成させる露光工程と、上記光硬化部以外の感光層20の部分を除去する現像工程と、を含む方法であってもよい。
【0094】
感光層形成工程において、回路形成用基板上に感光層20を形成する方法としては、感光性エレメントの感光層20上に保護フィルムが存在している場合には、該保護フィルムを除去した後、感光層20を70〜130℃に加熱しながら回路形成用基板に0.1〜1MPaの圧力で圧着することにより積層する方法が挙げられる。この感光層形成工程において、減圧下で積層することも可能である。なお、回路形成用基板上の感光層を形成する表面は通常金属面であるが、特に制限されない。また、積層性を更に向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行ってもよい。
【0095】
次に、露光工程において、上記感光層形成工程で形成した感光層20に対して、活性光線を照射し、感光層20に光硬化部を形成させる。露光方法としては、ネガ又はポジマスクパターンを有するフォトマスクを介して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)、フォトマスクの像を投影させた活性光線を用いレンズを介して画像状に照射する方法(投影式露光法)、LDI(Laser Direct Imaging)露光法又はDLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。露光工程では、感光層20に対して、支持フィルム10を通して活性光線を照射してもよいし、支持フィルム10を除去した後に、感光層20に対して活性光線を照射してもよい。なお、マスク露光法においては、支持フィルム10の第2の主面14に位置合わせをして配置させた後で、露光する。上記活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ及び窒化ガリウム系青紫色レーザ等の紫外線を有効に放射するもの、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものが用いられる。
【0096】
投影式露光法において、開口数の小さい投影式露光機を用いると、解像度10μm未満の細線パターンを形成する場合であっても、投影レンズを介した像の焦点が合い易く、回路形成用基板により正確に投影させることができる。また、異なる波長を有する光源を用いて焦点が合い難い場合、より解像度が高い細線パターンを形成させるために、光源の波長を、フィルター等を用いて単線にすることが好ましい。開口数の小さい投影式露光機としては、例えば、UX−2240SM−XJ01(ウシオ電機株式会社製、製品名)が挙げられる。本実施形態の感光性エレメントを用いることで、開口数が0.1未満の投影式露光機を用いた場合であっても、上記効果を充分に得ることができる。
【0097】
次いで、上記露光工程後、フォトマスクを支持フィルム10から剥離する。更に、支持フィルム10を感光層20から剥離除去する。次に現像工程において、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で感光層20の未露光部(未光硬化部)を除去して現像し、レジストパターンを製造することができる。
【0098】
アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液及び0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液が挙げられる。上記アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層20の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、有機溶剤を混入させてもよい。また、現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング及びスラッピングが挙げられる。
【0099】
また、現像工程後の処理として、必要に応じて60〜250℃の加熱又は0.2〜10J/cm
2のエネルギー量での露光を行うことにより、レジストパターンを更に硬化してもよい。
【0100】
上述の方法によって、回路パターンが形成された導体層上にレジストパターンの形成を行うことができる。レジストパターンは、実装部品の接合時に、導体層上の不必要な部分へのはんだの付着を防ぐソルダーレジストとして用いることができる。
【0101】
また、上述の形成方法により得られたレジストパターンは、リジット状の基材上に引張強度、伸び率等の物理特性に優れ、かつ耐電食性を満足する硬化樹脂を形成するために用いられてもよく、リジット状の基材上に形成される永久マスク(ソルダーレジスト)として使用されるとより好ましい。具体的には、リジット基板を備えるプリント配線板のソルダーレジスト又はリジット基板を備えるパッケージ基板のソルダーレジストとして用いられると有用である。
【0102】
(プリント配線板の製造方法)
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンの形成された回路形成用基板を、エッチング又はめっきすることによって行われる。ここで、回路形成用基板のエッチング又はめっきは、現像されたレジストパターンをマスクとして、回路形成用基板の表面を公知の方法によりエッチング又はめっきすることによって行われる。
【0103】
エッチングに用いられるエッチング液としては、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液及びアルカリエッチング溶液を用いることができる。
【0104】
めっきとしては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき及び金めっきが挙げられる。
【0105】
エッチング又はめっきを行った後、レジストパターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液より更に強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液及び1〜10質量%水酸化カリウム水溶液が用いられる。また、剥離方式としては、例えば、浸漬方式及びスプレー方式が挙げられる。なお、レジストパターンが形成されたプリント配線板は、多層プリント配線板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0106】
また、めっきが絶縁層と絶縁層上に形成された導体層とを備えた回路形成用基板に対して行われた場合には、パターン以外の導体層を除去する必要がある。この除去方法としては、例えば、レジストパターンを剥離した後に軽くエッチングする方法、上記めっきに続いてはんだめっき等を行い、その後レジストパターンを剥離することで配線部分をはんだでマスクし、次いで導体層のみをエッチング可能なエッチング液を用いて処理する方法が挙げられる。
【0107】
(半導体パッケージ基板の製造方法)
本実施形態の感光性エレメント1は、リジット基板と、そのリジット基板上に形成された絶縁膜とを備えるパッケージ基板に用いることもできる。この場合、感光層の光硬化部を絶縁膜として用いればよい。感光層の光硬化部を、例えば半導体パッケージ用のソルダーレジストとして用いる場合は、上述のレジストパターンの形成方法における現像終了後、はんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀灯による紫外線照射又は加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.2〜10J/cm
2程度の照射量で照射を行うこともできる。また、レジストパターンを加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。さらに紫外線照射と加熱とを同時に行うこともでき、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。紫外線の照射と加熱とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
【0108】
このソルダーレジストは、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ね、引張強度、伸び率等の物理特性及び耐熱衝撃性に優れているので、半導体パッケージ用の永久マスクとして有効である。
【0109】
このようにしてレジストパターンを備えたパッケージ基板は、その後、半導体素子などの実装(例えば、ワイヤーボンディング、はんだ接続)がなされ、そして、パソコン等の電子機器へ装着される。
【0110】
以上、説明した本実施形態の感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、プリント配線板及び半導体パッケージ基板の製造方法によると、支持フィルム10として、ヘーズが0.01〜1.0%であり、且つ、全光線透過率が90%以上である支持フィルムを感光性エレメント1が備えている。これにより、開口数が小さい投影式露光機を使用して、感光層20に活性光線を照射した場合にも、支持フィルム10中での光散乱を最小限に抑制し、感光層20にピンホールの発生を充分に低減した光硬化部を形成することができる。これによって得られるレジストパターン及びプリント配線板における回路パターンも、パターンの微小欠損を充分に低減できるため、プリント配線板の製造歩留まりを向上することが可能となる。
【0111】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0112】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0113】
(感光性樹脂組成物の調製)
まず、下記表1に示す組成のバインダーポリマーを合成例にしたがって合成した。
【0114】
【表1】
【0115】
(合成例)
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比6:4であるトルエン及びメチルセロソルブの混合液420gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、80℃まで加熱した。
【0116】
上記混合液に、表1に示す所定の材料を混合した溶液(以下、「溶液a」という)を4時間かけて滴下ロートから滴下速度を一定にして滴下した後、質量比6:4であるトルエン及びメチルセロソルブの混合液40gを用い滴下ロートを洗浄し、洗浄に用いた混合液をフラスコに加えた。次いで、80℃で2時間撹拌した。さらに、質量比6:4であるメチルセロソルブ及びトルエンの混合液40gにアゾビスイソブチロニトリル1.0gを溶解した溶液を、30分かけてフラスコ内に滴下速度を一定にして滴下した後、質量比6:4であるトルエン及びメチルセロソルブの混合液120gを用い滴下ロートを洗浄し、洗浄に用いた混合液をフラスコに加えた。滴下後の溶液を、80℃で3時間撹拌した。次いで、30分間かけて90℃に加温し、90℃で2時間保温した後、室温まで冷却して(A)成分であるバインダーポリマー溶液を得た。なお、本明細書において、室温とは25℃を示す。
【0117】
このバインダーポリマー溶液に、トルエンを加えて不揮発成分濃度(固形分濃度)が40質量%になるように調製した。バインダーポリマーの重量平均分子量を測定した結果を表1に示す。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより算出した。GPCの条件を以下に示す。また、酸価も下記測定手順に従い測定し、測定結果を表1に示す。
(GPC条件)
ポンプ:日立 L−6000型(株式会社日立製作所製)
カラム:Gelpack GL−R420 + Gelpack GL−R430 + Gelpack GL−R440(計3本)(以上、日立化成株式会社製、製品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI(株式会社日立製作所製、製品名)
【0118】
(酸価測定方法)
三角フラスコに合成したバインダーポリマーを秤量し、混合溶剤(質量比:トルエン/メタノール=70/30)を加え溶解後、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を添加し、0.1N水酸化カリウムアルコール溶液(f=1.00)で滴定し、酸価を測定した。
【0119】
下記表2に示す各成分の配合量で混合することにより、感光性樹脂組成物を調製した。表2中のバインダーポリマーの配合量は、不揮発分の質量(固形分量)である。
【0120】
【表2】
【0121】
(実施例1〜2及び比較例1〜6)
(感光性エレメントの作製)
感光性エレメントの支持フィルムとして、下記表3に示すPETフィルムを用意した。各PETフィルムのヘーズ及び全光線透過率を測定した結果を表3に示す。なお、ヘーズ及び全光線透過率はヘーズメーターNDH5000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。また、ヘーズはJIS K 7136(2000)で規定される方法に準拠して測定し、全光線透過率はJIS K 7361−1(1997)で規定される方法に準拠して測定した。
【0122】
次に、それぞれのPETフィルム上に上記の感光性樹脂組成物を厚さが均一になるようにして塗布し、熱風対流乾燥機を用いて、100℃で2分間乾燥した。乾燥後、ポリエチレン製保護フィルム(タマポリ株式会社製、製品名「NF−15」、厚さ20μm)で感光層を被覆して感光性エレメントを得た。なお、乾燥後の感光層の厚さは、表3に示す「感光層の厚さ」となるように調整した。また、表裏で構成が異なるPETフィルムの場合は、樹脂層と反対の面に感光層を形成した。
【0123】
(積層体の作製)
銅箔(厚さ:35μm)を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張積層板(日立化成株式会社製、製品名「MLC−E−679」)の銅表面を、メックエッチボンド CZ−8100(メック社製)を用い表面粗化を行い、酸洗、水洗後、空気流で乾燥した。得られた銅張積層板を80℃に加温し、保護フィルムを剥離しながら、感光層が銅表面に接するように感光性エレメントをラミネートした。こうして、銅張積層板、感光層、支持フィルムの順に積層された積層体を得た。ラミネートは、120℃のヒートロールを用いて、0.4MPaの圧着圧力、1.5m/分のロール速度で行なった。これらの積層体は、以下に示す試験における試験片として用いた。
【0124】
(最短現像時間の測定)
上記積層体を、125mm×200mm角にカットして、最短時間測定用試験片とした。最短時間測定用試験片からPETフィルムを剥離した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、露光していない感光層を0.15MPaの圧力でスプレー現像し、1mm以上の未露光部が除去されたことを目視で確認できる最短の時間を、最短現像時間とした。測定結果を表3に示す。
【0125】
(光感度測定試験)
試験片の支持フィルム上に、ネガとして41段ステップタブレット(日立化成株式会社製)を有するフォトツールを載置し、高圧水銀灯を有する投影式露光機(ウシオ電機株式会社製、製品名「UX−2240SM−XJ01」)を用いて、現像後のレジスト硬化段数が11段になる所定の照射エネルギー量となるように感光層を露光した。なお、フォトツール及び支持フィルムを介して露光した。使用した投影式露光機は、レンズの解像度として5μmを保証された装置である。
【0126】
次に、支持フィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最短現像時間の2倍の時間でスプレー現像し、未露光部分を除去した。そして、銅張積層板上に形成された光硬化膜のステップタブレットの段数が11段になっていることを確認し、フィルムの所定の照射エネルギー量とした。結果を表3に示す。
【0127】
(密着性及び解像度測定試験)
密着性を評価するため、41段ステップタブレット(日立化成株式会社製)を有するフォトツールと、密着性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅(以下、「L/S」と示す)がx/3x(x=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)(単位:μm)の配線パターンを有するガラスクロムタイプのフォトツールと、高圧水銀灯を有する投影式露光機(ウシオ電機株式会社製、製品名「UX−2240SM−XJ01」)とを用いて、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が11段となる照射エネルギー量で露光した。次に、支持フィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最短現像時間の2倍の時間でスプレー現像し、未露光部分を除去した。現像処理後、スペース部分(未露光部分)がきれいに除去され、かつライン部分(露光部分)がうねり、欠け、剥がれ等の不良を生じることなく形成されたレジストパターンのうち、最も小さいライン幅の値を密着性評価の指標とした。この数値が小さいほど密着性が良好であることを意味する。結果を表3に示す。なお、得られたレジストパターンは、顕微鏡を用いて、倍率1000倍で拡大して観察することで不良の有無を確認した。
【0128】
解像度を評価するため、41段ステップタブレット(日立化成株式会社製)を有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅がx/x(x=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)(単位:μm)の配線パターンを有するガラスクロムタイプのフォトツールと、高圧水銀灯を有する投影式露光機(ウシオ電機株式会社製、製品名「UX−2240SM−XJ01」)とを用いて、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が11段となる照射エネルギー量で露光した。次に、密着性の評価と同様の方法で、現像した。現像処理後、スペース部分(未露光部分)がきれいに除去され、かつライン部分(露光部分)がうねり、欠け、剥がれ等の不良を生じることなく形成されたレジストパターンのうち、最も小さいL/Sの値を解像性評価の指標とした。この数値が小さいほど解像性が良好であることを意味する。結果を表3に示す。なお、得られたレジストパターンは、顕微鏡を用いて、倍率1000倍で拡大して観察することで不良の有無を確認した。
【0129】
(ピンホール発生性の評価)
図2は、現像後にピンホールが発生したレジスト表面の走査型顕微鏡写真である。上記密着性及び解像度測定試験で評価した基板を用い、感光層の露光部(「レジストライン」ともいう)の表面を走査型電子顕微鏡SU−1500(株式会社日立製作所製)を用い、倍率500倍及び試料台の傾き60度の時の観察視野を1視野(
図2に示す写真を1視野とする)とし、
図2に示すような直径2μm以上のピンホールの個数を測定した。ピンホール発生性は、以下の基準で評価した。観察は、無作為の10視野で行い、次いで平均値を算出し評価を行った。結果を表3に示す。
A:ピンホールが0.1個未満
B:ピンホールが0.1個以上1.0個未満
C:ピンホールが1.0個以上10個未満
D:ピンホールが10個以上
【表3】
U32:粒子を含有する樹脂層を表裏に有する3層構造の二軸配向PETフィルム、東レ株式会社製
U48:粒子を含有する樹脂層を表裏に有する3層構造の二軸配向PETフィルム、東レ株式会社製
FB40:粒子を含有する樹脂層を表裏に有する3層構造の二軸配向PETフィルム、東レ株式会社製
QS48:粒子を含有する樹脂層を表裏に有する3層構造の二軸配向PETフィルム、東レ株式会社製
A1517:粒子を含有する樹脂層を一方の面に有する2層構造の二軸配向PETフィルム、東洋紡株式会社製
A4100:粒子を含有する樹脂層を一方の面に有する2層構造の二軸配向PETフィルム、東洋紡株式会社製
U40:粒子を含有する樹脂層を表裏に有する3層構造の二軸配向PETフィルム、東レ株式会社製
G2H:粒子を含有する単層構造の二軸配向PETフィルム、帝人デュポンフィルム株式会社製
【0130】
図3は、実施例1の現像後のレジストの側面形状の走査型顕微鏡写真であり、
図4は比較例6の現像後のレジストの側面形状の走査型顕微鏡写真である。
図4に示す比較例6のレジストに比べ、
図3に示す実施例1のレジストでは、ピンホールの発生が充分に抑制されていることがわかる。