(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ナノ薄膜層は転写の際、水分を使用することが通常であるため、転写時に基材を剥離する前に、ナノ薄膜層の貼付性の確保等を目的として、ナノ薄膜層の水分を除去する工程が必要となる。しかし、使用者の利便性を考慮すると、ナノ薄膜層を転写する際の工程は少ないことが望ましい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ナノ薄膜層を簡便に転写できるナノ薄膜転写シート及び転写方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るナノ薄膜転写シートは、吸水性基材と、吸水性基材上に積層されたナノ薄膜層と、を備える。
【0008】
このナノ薄膜転写シートは吸水性基材を備えているため、ナノ薄膜層の水分が吸水性基材に吸収される。したがって、このナノ薄膜転写シートでは、転写時に吸水性基材を剥離しさえすれば、ナノ薄膜層の水分を除去する工程が不要となる。そのため、このナノ薄膜転写シートによれば、ナノ薄膜層を簡便に転写できる。
【0009】
吸水性基材は、20g/m
2以上の目付けを有する不織布シートであることが好ましい。この場合、吸水性基材がより大量の水分を迅速に吸収することができる。
【0010】
吸水性基材は、吸水性高分子化合物の粒子を含有することが好ましい。この場合、吸水性基材がより大量の水分を迅速に吸収することができる。
【0011】
ナノ薄膜層は、フィブロインを含有することが好ましい。この場合、ナノ薄膜層の生体親和性が向上する。
【0012】
ナノ薄膜層は、ポリカチオンを含有する溶液を用いて形成されるA層とポリアニオンを含有する溶液を用いて形成されるB層とが交互に積層された層であることが好ましい。この場合、ナノ薄膜層の機械的強度及び自己密着性が向上する。
【0013】
本発明に係る転写方法では、上記のナノ薄膜転写シートをナノ薄膜層側が被転写体と対向するように被転写体上に配置し、ナノ薄膜転写シートの吸水性基材側を押圧することによりナノ薄膜層を被転写体に転写する。
【0014】
この転写方法では、ナノ薄膜転写シートの吸水性基材側を押圧してナノ薄膜層を被転写体に転写するため、被転写体とナノ薄膜層との追従性及び接着性が向上すると考えられる。したがって、ナノ薄膜層を被転写体に好適に転写できる。
【0015】
ナノ薄膜転写シートの吸水性基材側を押圧する際の荷重は、10〜1000g/cm
2であることが好ましい。この場合、吸水性基材を剥離する際のナノ薄膜層の吸水性基材側への残存、及び、転写時の被転写体の損傷を容易に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ナノ薄膜層を簡便に転写できるナノ薄膜転写シート及び転写方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、ナノ薄膜転写シート及び転写方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、ナノ薄膜転写シートの一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、ナノ薄膜転写シート1は、吸水性基材2と、吸水性基材2上に積層されたナノ薄膜層3と、を備えている。
【0020】
吸水性基材2は、水分を吸収することができる基材であれば、従来から使用されている公知の吸水性基材であってよい。吸水性基材2は、好ましくは150質量%以上の吸水率を有する基材である。本明細書でいう「吸水率」は、所定の大きさ(例えば10cm×10cm)の吸水性基材(質量M)を20℃の水に1分浸漬して吸水させた後の質量M’を測定し、下記式(1)により算出される吸水率A(質量%)を意味する。
A=(M’−M)/M×100 …(1)
【0021】
吸水性基材2としては、例えばポリアクリル酸等の樹脂成分からなる樹脂シート、紙、編物、織物、不織布等の繊維質シート、及び樹脂シートと繊維質シートとで構成される複合シートなどの吸水性シートが挙げられる。これらの中でも、大量の水分を速やかに吸収、拡散できる点から、不織布の繊維質シート(不織布シート)がより好適に用いられる。不織布の繊維質シート(不織布シート)を構成する繊維としては、例えば、綿、羊毛、麻、パルプ等の天然繊維、レーヨン等の半合成繊維、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の合成繊維などを挙げることができる。これらの繊維は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、大量生産しやすく、入手しやすいことを考慮すると、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の合成繊維が特に好適に用いられる。
【0022】
不織布シートは、スパンボンド法、スパンレース法、ニードルパンチ法、樹脂接着法、フラッシュ紡糸法、メルトブロー法、エアレイ法等のうち、いずれの製法で作製された不織布シートであってもよい。不織布シートの目付け(単位面積当たりの質量)は、大量の水分を迅速に吸収でき、貼付性の低下を容易に抑制できる観点から、好ましくは20g/m
2以上、より好ましくは25g/m
2以上、更に好ましくは30g/m
2以上である。不織布シートの目付けは、装着感及び使用感に優れる観点から、好ましくは150g/m
2以下、より好ましくは130g/m
2以下、更に好ましくは100g/m
2以下である。
【0023】
吸水性基材2は、より大量の水分を迅速に吸収できる観点から、上記の吸水性シートに吸水性高分子化合物の粒子を更に含有させた基材であってもよい。このような吸水性高分子化合物としては、紙おむつ等に広く用いられている公知の吸水性高分子化合物を使用することができ、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等を挙げることができる。吸水性高分子化合物の粒子の粒径(直径)は、例えば10〜1000μmであってもよい。
【0024】
吸水性基材2の厚さは、使用感に優れる観点から、好ましくは100μm〜10mm、より好ましくは300μm〜5mmである。
【0025】
ナノ薄膜層3の厚さは、自己密着性、吸水性、乾燥状態での柔軟性等の特性がより優れることから、乾燥時の厚さとして、好ましくは1〜300nm、より好ましくは40〜300nm、更に好ましくは40〜250nm、特に好ましくは40〜200nmである。
【0026】
ナノ薄膜層3は、生体親和性に優れる観点から、フィブロイン(シルクフィブロイン)を含有することが好ましい。フィブロインとしては、例えば、家蚕、野蚕、天蚕等の天然蚕、トランスジェニック蚕から産生されるフィブロインが挙げられる。
【0027】
ナノ薄膜層3は、ポリカチオンを含有する溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含有する溶液を用いて形成されるB層とを有していることが好ましく、A層とB層とが交互に積層された層(交互積層)であることがより好ましい。これにより、ナノ薄膜層の機械的強度及び自己密着性が向上する。A層とB層とが交互に積層された層(交互積層)は、A層とB層とが1層ずつ交互に積層された層であってもよく、複数のA層からなる層と複数のB層からなる層とが交互に積層された層であってもよい。
【0028】
ナノ薄膜層3がA層とB層との交互積層である場合、ナノ薄膜層3の透明性を確保しやすいことから、A層及びB層の層数は、それぞれ1〜300層であることが好ましい。ナノ薄膜層3が好適な自己密着性を有することから、A層及びB層の層数は、それぞれ10〜100層であることがより好ましく、それぞれ20〜80層であることが更に好ましい。
【0029】
ナノ薄膜層3におけるA層とB層との積層構造は、例えばナノ薄膜層3をIR、NMR、TOF−SIMS(飛行時間型2次イオン質量分析、Time−of−Flight SIMS)等で観察することにより、確認することができる。
【0030】
ポリカチオンとしては、カチオン性ポリマーが好ましい。本明細書において、カチオン性ポリマーとは、1分子中に2個以上のカチオン性基を有するポリマーをいう。カチオン性ポリマーの好ましい例としては、コラーゲン、ポリヒスチジン、アイオネン、キトサン、アミノ化セルロース等の塩基性多糖類;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンとの共重合体等の塩基性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジビニルピリジン等の塩基性ビニルポリマー;ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、並びにそれらの塩類(塩酸塩、酢酸塩等)及び誘導体などが挙げられる。これらのポリマーは、架橋を形成していてよい。
【0031】
ポリカチオンは、1分子中に2個以上のカチオン性基を有する低分子化合物であってもよい。このような低分子化合物としては、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン等のジアミノアルカンといった1分子中に2個のアミノ基を有する化合物、N−(リジル)−ジアミノエタン、N,N’−(ジリジル)−ジアミノエタン、N−(リジル)−ジアミノヘキサン、N,N’−(ジリジル)−ジアミノヘキサン等のモノ又はジリジルアミノアルカンといった1分子中に3〜4個のアミノ基を有する化合物、及び、1分子中に5個以上のアミノ基を有する化合物が挙げられる。
【0032】
ポリカチオンを含有する溶液は、上述のポリカチオンの1種又は2種以上を、水等の溶媒に溶解させることにより得られる。溶液中のポリカチオンの濃度は、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜2.0質量%、更に好ましくは0.05〜1.0質量%である。
【0033】
ポリアニオンとしては、アニオン性ポリマーが好ましい。本明細書において、アニオン性ポリマーとは、1分子中に2個以上のアニオン性基を有するポリマーをいう。アニオン性ポリマーの好ましい例としては、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ペクチン、サクラン等のカルボキシル基、カルボキシレート基又は硫酸基等のアニオン性基を有する天然の酸性多糖類及びその誘導体;セルロース、デキストラン、デンプン等の天然の多糖類にアニオン性基を結合させて得られる酸性多糖類及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキトサン、硫酸化セルロース及び硫酸化デキストラン並びにそれらの誘導体);ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、グルタミン酸とアスパラギン酸との共重合体等の酸性アミノ酸の単独重合体及び共重合体;ポリアクリル酸等の酸性ビニルポリマー;並びにそれらの塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が挙げられる。酸性多糖類の誘導体としては、例えば、アルギン酸エチレングリコールエステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒアルロン酸エチレングリコールエステル及びヒアルロン酸プロピレングリコールエステルが挙げられる。これらのポリマーは、架橋を形成していてもよい。
【0034】
ポリアニオンは、1分子中に2個以上のアニオン性基を有する低分子化合物であってもよい。このような低分子化合物としては、例えば、コハク酸、マロン酸等の1分子中に2個のカルボキシル基又はカルボキシレート基を有する化合物が挙げられる。
【0035】
ポリアニオンを含有する溶液は、上述のポリアニオンの1種又は2種以上を、水等の溶媒に溶解させることにより得られる。溶液中のポリアニオンの濃度は、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜2.0質量%、更に好ましくは0.05〜1.0質量%である。
【0036】
カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの組合せは、水の共存下で混合した場合にポリイオンコンプレックスを形成しゲル化すれば、いずれの組合せでもよい。安全性により優れることから、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーのうちの少なくとも1種は、生体吸収性ポリマーであることが好ましい。生体吸収性ポリマーとは、生分解され得るポリマーを意味する。生体吸収性のカチオン性ポリマーとしては、キトサン、コラーゲン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、アイオネン等が挙げられる。生体吸収性のアニオン性ポリマーとしては、アルギン酸、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、コンドロイチン硫酸、並びにこれらの誘導体及び塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)等が挙げられる。
【0037】
ナノ薄膜層3は、機能性物質(例えば、臓器、皮膚等の被転写体において機能性を発揮する物質)を含有していてもよい。機能性物質としては、化粧料、色素、金属イオン、薬剤等が挙げられる。機能性物質は、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0038】
ナノ薄膜層3は、皮膚貼付用薄膜、化粧用薄膜、又は、化粧用皮膚貼付用薄膜として好適に使用することができる。また、ナノ薄膜層3は、医療用薄膜として好適に使用することができる。
【0039】
以上のとおり、ナノ薄膜転写シート1は吸水性基材2を備えているため、ナノ薄膜層3の水分及び貼付の際に使用する水分が吸水性基材2に吸収される。したがって、このナノ薄膜転写シート1では、転写時に吸水性基材2を剥離しさえすれば、ナノ薄膜層3の水分を除去する工程が不要となる。そのため、このナノ薄膜転写シート1によれば、ナノ薄膜層3を簡便に転写できる。
【0040】
ナノ薄膜転写シート1は、例えば以下の工程により製造される。
(1)熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成された支持基材の主面上にナノ薄膜層を形成する。
(2)ナノ薄膜層の支持基材と反対側に溶解性支持層を形成する。溶解性支持層は、水、アルコール等の溶媒に溶解する化合物で形成される。
(3)溶解性支持層のナノ薄膜層と反対側に、浸透性基材をラミネート等により積層する。
(4)支持基材を剥離し、浸透性基材、溶解性支持層及びナノ薄膜層をこの順に備える第1の積層体を得る。
(5)第1の積層体のナノ薄膜層に吸水性基材を貼り合わせて第2の積層体を得る。
(6)溶解性支持層を溶解させる溶媒(例えば水)に第2の積層体を浸漬し、溶解性支持層を溶解させることにより、吸水性基材、ナノ薄膜層及び浸透性基材をこの順で備える第3の積層体を得る。
(7)第3の積層体から浸透性基材を剥離することで、吸水性基材及びナノ薄膜層を備えるナノ薄膜転写シート1を得る。
【0041】
ナノ薄膜層3がフィブロインを含有する場合、ナノ薄膜層3は、例えばキャスト法、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法によりフィブロイン水溶液を支持基材上に塗布することで形成される。フィブロイン水溶液を得る方法としては、公知のいかなる手法を用いてもよいが、例えば、高濃度の臭化リチウム水溶液にフィブロインを溶解後、透析による脱塩、風乾による濃縮を経てフィブロイン水溶液を得る方法が簡便である。この場合、臭化リチウム水溶液の濃度は、好ましくは8〜10M、より好ましくは8.5〜9.5Mである。臭化リチウム水溶液の濃度が上記範囲内であると、フィブロイン水溶液がゲル化しにくく、安定して均一な膜厚のナノ薄膜層3を得ることができる。フィブロイン水溶液中のフィブロイン濃度は、好ましくは0.01〜10.0質量%、より好ましくは0.05〜5.0質量%、更に好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0042】
ナノ薄膜層3が、ポリカチオンを含有する溶液を用いて形成されるA層と、ポリアニオンを含有する溶液を用いて形成されるB層とを有している場合、ナノ薄膜層3の形成方法は、ポリカチオンを含有する溶液(以下「溶液A」ともいう)又はポリアニオンを含有する溶液(以下「溶液B」ともいう)に支持基材を接触させて、支持基材の表面にポリカチオンを含有する層(A層)又はポリアニオンを含有する層(B層)を形成する工程、及び、(i)A層に溶液Bを接触させて、A層上にB層を形成するステップと、(ii)B層に溶液Aを接触させて、B層上にA層を形成するステップとを繰り返してナノ薄膜層3を形成する工程を備える交互積層方法であることが好ましい。
【0043】
交互積層法によれば、A層(又はB層)と、溶液B(又は溶液A)とが接触することで、ポリカチオン及びポリアニオンが交互に吸着して積層膜が形成される。交互積層法では、ポリカチオン又はポリアニオンの吸着が進行して表面電荷が反転すると更なる静電吸着は起こらなくなるため、溶液A及び溶液Bとの接触によりそれぞれ形成されるA層及びB層の厚さが制御される。
【0044】
以上説明したナノ薄膜転写シート1を用いて、ナノ薄膜層3を臓器、皮膚等の被転写体に転写することができる。転写方法としては、ナノ薄膜転写シート1をナノ薄膜層3側が被転写体と対向するように被転写体上に配置し、ナノ薄膜転写シート1の吸水性基材2側を押圧することによりナノ薄膜層3を被転写体に転写する方法が好ましい。この方法では、吸水性基材2がナノ薄膜層3を覆っている状態でナノ薄膜転写シート1の吸水性基材2側を押圧することによりナノ薄膜層3を被転写体に転写するため、被転写体とナノ薄膜層との追従性及び接着性が向上する。したがって、この方法では、例えば、吸水性基材2を予め剥離した上でナノ薄膜層3を被転写体に転写する方法、又は、押圧することなくナノ薄膜層3を被転写体に転写する方法に比べて、ナノ薄膜層3を好適に転写できる。
【0045】
この転写方法においては、吸水性基材2に対して押圧する際、吸水性基材2全面に対して略均一に圧力を加えることが好ましい。押圧は、ローラー等の冶具を用いることで、より簡便かつ好適に行われる。
【0046】
ナノ薄膜転写シート1の吸水性基材2側を押圧する際の荷重は、好ましくは10〜1000g/cm
2、より好ましくは30〜900g/cm
2、更に好ましくは50〜800g/cm
2である。荷重が下限値以上であると、吸水性基材2を剥離する際にナノ薄膜層3が吸水性基材2側に残存することを容易に抑制できる。一方、荷重が上限値以下であると、皮膚等の被転写体が損傷することを容易に抑制できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0048】
<実施例>
まず、高圧精練済み切繭(シルクフィブロイン、ながすな繭株式会社製)150gを9M臭化リチウム水溶液1000mLに添加し、室温(25℃)で6時間攪拌して溶解した。次いで、遠心分離(回転速度:12000rpm、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析チューブ(Spectra/Por(登録商標) 1 Dialysis Membrane、MWCO6000−8000、Spectrum Laboratories, Inc.製)に注入し、超純水製造装置(PRO−0500及びFPC−0500(型番)、オルガノ株式会社製)から採水した超純水5Lに対して12時間の透析を5回繰り返し、シルクフィブロイン溶液用水溶液を得た。
【0049】
得られたシルクフィブロイン溶液用水溶液2mLをアルミニウム製容器に分取し、秤量した。その後、加熱乾燥した。得られた乾燥物を乾燥機から取り出して秤量し、質量減少からシルクフィブロイン溶液用水溶液中のシルクフィブロイン濃度(単位:g/L)を定量した。
【0050】
濃度を測定したシルクフィブロイン溶液用水溶液にグリセリン及び超純水を加え、シルクフィブロイン濃度10g/L、グリセリン0.3体積%のシルクフィブロイン溶液(フィブロインナノ薄膜作製用溶液。シルクフィブロイン:グリセリン=1:0.3(質量比))を調製した。
【0051】
(シルクフィブロインナノ薄膜の作製)
支持基材であるPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡績株式会社製、商品名「A4100」、150mm×100mm×100μm厚)上に、アプリケータを用いてシルクフィブロイン溶液を塗工した。その後、100℃1時間乾燥を行ってシルクフィブロインナノ薄膜を形成した。シルクフィブロインナノ薄膜の膜厚をフィルメトリスク株式会社製の型番:F20によって測定した結果、シルクフィブロインナノ薄膜の膜厚は100nmであった。
【0052】
続いて、ポリビニルアルコール500(関東化学株式会社製、平均重合度:500)を超純水に溶解した10質量%水溶液を、乾燥後の膜厚が5μmとなるようにシルクフィブロインナノ薄膜層上にバーコーターによって塗布し、溶解性支持層を形成した。
【0053】
その後、浸透性基材として、ポリエチレンテレフタレートメッシュシート(PETメッシュ、大紀商事株式会社製、商品名「OKILON−SHA 2516」、JIS L 1096に記載されるフラジール形法による通気性5850cc/cm
2・sec、厚さ:80μm)を、溶解性支持層上に積層し、室温(25℃)にて水分を蒸発させた。その結果、支持基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に、シルクフィブロインを含有するナノ薄膜層、溶解性支持層(ポリビニルアルコール)及び浸透性基材(ポリエチレンテレフタレートメッシュシート)がこの順で積層された積層体Aを得た。
【0054】
積層体Aから支持基材を剥離し、吸水性基材(ミラクルコットンスパンレース、丸三産業株式会社製、目付け:30g/m
2)を貼り合わせ、端部を固定した状態で水に24時間浸漬した。その後、室温(25℃)にて水分を蒸発させた。
【0055】
その結果、吸水性基材(ミラクルコットンスパンレース)上に、シルクフィブロインナノ薄膜層及び浸透性基材(「OKILON−SHA 2516」)がこの順で積層されたナノ薄膜転写シートが得られた。
【0056】
<比較例>
吸水性基材(ミラクルコットンスパンレース)を浸透性基材(「OKILON−SHA HYBRID」)に変更したこと以外には実施例と同様の操作を行った。
【0057】
<貼付性の評価>
ナノ薄膜層を皮膚に貼付する際、あらかじめ皮膚を水分で濡らした。浸透性基材(「OKILON−SHA 2516」)を剥離した後、ナノ薄膜転写シートのナノ薄膜層側が被転写体と対向するように被転写体上に配置し、実施例のナノ薄膜転写シートの吸水性基材側、及び、比較例の浸透性基材(「OKILON−SHA HYBRID」)側を押圧することによりナノ薄膜層を被転写体に転写した。実施例では、濡らした水分を吸水性基材が吸水するため、容易に貼付可能であるが、比較例では、水分を除去する工程が必要であり、貼付工程が1つ余分に必要であった。