(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記部分カバー及び隙間カバーは、金属製のねじにより前記部分窓に締結され、前記ねじを処理空間側から覆うセラミックス製のねじカバーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
前記金属窓は、前記処理空間内に処理ガスを供給するガスシャワーヘッドを兼ね、前記隙間カバーは、少なくとも処理空間内の被処理基板に対する処理ガスの供給が行われる領域内の部分カバーに対して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
前記段部よりも下方側の処理容器または部分窓の側壁面には、処理容器と部分窓、または隣り合う部分窓同士の電気的距離を広げるための切り欠き面が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造工程においては、処理空間内に載置された被処理基板であるガラス基板に対し、プラズマ化された処理ガスを供給して、エッチング処理や成膜処理などのプラズマ処理を行う工程が存在する。これらのプラズマ処理には、プラズマエッチング装置やプラズマCVD装置などの種々のプラズマ処理装置が用いられる。近年、処理ガスをプラズマ化する手法として、高真空度下で高密度のプラズマを得ることができるという大きな利点を有する誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma: ICP)が注目されている。
【0003】
一方で、ガラス基板のサイズは大型化が進行している。例えばLCD用の矩形状ガラス基板では、短辺×長辺の長さが、約2200mm×約2400mm、さらには約2800mm×約3000mmのサイズを処理可能なプラズマ処理装置が必要となっている。
【0004】
このようなガラス基板の大型化に伴って、プラズマ処理装置も大型化が進行している。しかしながら誘導結合プラズマを利用したプラズマ処理装置では、処理空間の天井面に設けられ、石英などからなる誘電体窓の剛性が低く、装置の大型化の障害となっていた。
【0005】
そこで特許文献1には、石英よりも剛性の高い金属窓を複数の分割片(部分窓)に分割して分割片同士を絶縁することにより、金属窓の大型化を図った誘導結合プラズマ方式のプラズマ処理装置が記載されている。
しかしながら、特許文献1には分割片同士を絶縁するのに好適な絶縁部材の材料選定や、特定の材料が選定された場合に留意すべき技術事項に関する記載はない。
【0006】
また特許文献2には、同じく誘導結合プラズマ方式のプラズマ処理装置において、複数の分割誘電部材を用いて構成された誘電体窓の下面に、誘電体窓を保護するための着脱可能な誘電体カバーを設け、この誘電体カバーを複数の分割素片に分割する技術が記載されている。この誘電体カバーには、分割素片の熱膨張時に分割素片間の隙間が開口することに伴う誘電体窓の損傷や、隙間への堆積物の堆積を防止するためのカバープレートが設けられている。
しかしながら引用文献2は、互いに絶縁された複数の導電性の部分窓を用いて金属窓を構成する技術に係る文献ではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
初めに、
図1、
図2を参照しながら、本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置1の全体構成を説明する。
プラズマ処理装置1は、被処理基板である矩形基板、例えば、FPD用のガラス基板(以下。「基板G」と記す)上に薄膜トランジスタを形成する際のメタル膜、ITO膜、酸化膜などを形成する成膜処理やこれらの膜をエッチングするエッチング処理、レジスト膜のアッシング処理などの各種プラズマ処理に用いることができる。ここで、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)などが例示される。また、プラズマ処理装置1は、FPD用の基板Gに限らず、太陽電池パネル用の基板Gに対する上述の各種プラズマ処理にも用いることができる。
【0014】
図1の縦断側面図に示すように、プラズマ処理装置1は、導電性材料、例えば、内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる角筒形状の容器本体10を備え、当該容器本体10は電気的に接地されている。容器本体10の上面には開口が形成され、この開口は、当該容器本体10と絶縁されて設けられた矩形状の金属窓3によって気密に塞がれる。これら容器本体10及び金属窓3によって囲まれた空間は基板Gの処理空間100となり、金属窓3の上方側の空間は、高周波アンテナ(プラズマアンテナ)5が配置されるアンテナ室50となる。また処理空間100の側壁には、ガラス基板Gを搬入出するための搬入出口101および搬入出口101を開閉するゲートバルブ102が設けられている。
【0015】
処理空間100の下部側には、前記金属窓3と対向するように、基板Gを載置するための載置台13が設けられている。載置台13は、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。載置台13に載置された基板Gは、不図示の静電チャックにより吸着保持される。載置台13は絶縁体枠14内に収納され、この絶縁体枠14を介して容器本体10の底面に設置されている。
【0016】
載置台13には、整合器151を介して第2の高周波電源152が接続されている。第2の高周波電源152は、バイアス用の高周波電力、例えば周波数が3.2MHzの高周波電力を載置台13に印加する。このバイアス用の高周波電力により生成されたセルフバイアスによって、処理空間100内に生成されたプラズマ中のイオンを基板Gに引き込むことができる。
なお、載置台13内には、基板Gの温度を制御するために、セラミックヒータなどの加熱手段、及び冷媒流路とからなる温度制御機構と、温度センサー、基板Gの裏面に熱伝達用のHeガスを供給するためのガス流路が設けられている(いずれも図示せず)。
【0017】
また容器本体10の底面には、排気口103が形成され、この排気口103には真空ポンプなどを含む真空排気部12が接続されている。処理空間100の内部は、この真空排気部12によってプラズマ処理時の圧力に真空排気される。
【0018】
図1、及び処理空間100側から金属窓3を見た平面図である
図2に示すように、容器本体10の側壁の上面側には、アルミニウムなどの金属からなる矩形状の枠体である金属枠11が設けられている。容器本体10と金属枠11との間には、処理空間100を気密に保つためのシール部材110が設けられている。ここで容器本体10及び金属枠11は本実施の形態の処理容器を構成している。
【0019】
さらに、本例の金属窓3は複数の部分窓30に分割され、これらの部分窓30が金属枠11の内側に配置され、全体として矩形状の金属窓3を構成している。各部分窓30は、例えば非磁性体で導電性の金属、アルミニウムまたはアルミニウムを含む合金などにより構成される。
【0020】
また各部分窓30は処理ガス供給用のシャワーヘッドを兼ねている。例えば
図5に示すように各部分窓30は、処理空間100に対して処理ガスを供給するための多数の処理ガス吐出孔302が形成されたシャワープレート305と、当該シャワープレート305との間に、処理ガスを拡散させる処理ガス拡散室301を形成するための金属窓本体303と、を下からこの順に重ねた構成となっている。シャワープレート305は金属製のねじ201によって処理ガス拡散室301を構成する凹部の外側の領域の下面側に締結されている。これらの構成を備えた部分窓は、不図示の保持部を介して処理空間100の天井面側に保持されている。
【0021】
また、部分窓30の耐プラズマ性を向上させるために、各部分窓30の処理空間100側の面(シャワープレート305の下面)は耐プラズマコーティングされている。耐プラズマコーティングの具体例としては、陽極酸化処理やセラミックス溶射による誘電体膜の形成を挙げることができる。
【0022】
図1に示すように、各部分窓30の処理ガス拡散室301は、ガス供給管41を介して処理ガス供給部42に接続されている。処理ガス供給部42からは、既述の成膜処理、エッチング処理、アッシング処理などに必要な処理ガスが供給される。なお図示の便宜上、
図1には、1つの部分窓30に処理ガス供給部42を接続した状態を示してあるが、実際には各部分窓30の処理ガス拡散室301が処理ガス供給部42に接続される。
【0023】
さらに
図1、
図5などに示すように、各部分窓30の例えば金属窓本体303内には、温度調節用の温調流体を通流させる温調流路307が形成されている。この温調流路307は、温調流体供給部に接続され、部分窓30に設けられた温度センサーの温度検出結果に基づき、この温調流体供給部から供給される温調流体によって、部分窓30が予め設定された温度となるように温度調節が行われる(温調流体供給部、温度センサーはいずれも不図示)。
【0024】
互いに分割された部分窓30は、絶縁部材31によって金属枠11やその下方側の容器本体10から電気的に絶縁されると共に、隣り合う部分窓30同士も絶縁部材31によって互いに絶縁されている。例えば
図5に示すように、絶縁部材31は、隣り合う部分窓30の間の隙間に嵌合する縦断面形状を備え、各部分窓30の対向する側面に形成された段部(
図5の例では金属窓本体303の側壁面から突出したシャワープレート305)によって支持されている。
ここで、
図2は金属窓3を処理空間100側から見た図であり、絶縁部材31は後述の部分カバー2によって覆われていて見えないが、これら部分カバー2の配置位置の上方側に絶縁部材31が設けられている。
【0025】
本例のプラズマ処理装置1において、絶縁部材31はPTFE(
Poly
tetra
fluoro
ethylene)などのフッ素樹脂が採用される。例えばPTFEは、体積抵抗率が>10
18[Ω・cm(23℃)]、密度が2.1〜2.2[g/cm
3]程度である。このような樹脂製の絶縁部材31を採用することにより、例えば絶縁部材31の材料としてアルミナ(体積抵抗率>10
14程度[Ω・cm(23℃)]程度、密度3.9程度[g/cm
3])を採用する場合と比較して、高い絶縁性能と、絶縁部材31を含む金属窓3の軽量化を同時に実現することができる。
【0026】
また
図1に示すように、金属窓3の上方側には天板部61が配置され、この天板部61は、金属枠11上に設けられた側壁部63によって支持されている。
以上に説明した金属窓3、側壁部63及び天板部61にて囲まれた空間はアンテナ室50を構成し、アンテナ室50の内部には、部分窓30に面するように高周波アンテナ5が配置されている(
図1)。高周波アンテナ5は、例えば、図示しない絶縁部材からなるスペーサを介して部分窓30から離間して配置される。高周波アンテナ5は、各部分窓30に対応する面内で、矩形状の金属窓3の周方向に沿って周回するように、渦巻状に形成される(平面図示省略)。なお、高周波アンテナ5の形状は、渦巻に限定されるものではなく、一本または複数のアンテナ線を環状にした環状アンテナであってもよい。さらに、角度をずらしながら複数のアンテナ線を巻きまわし、全体が渦巻状となるようにした多重アンテナを採用してもよい。このように、金属窓3や金属窓3を構成する各部分窓30に対応する面内で、その周方向に沿って周回するようにアンテナ線が設けられていれば、高周波アンテナ5の構造は問わない。
【0027】
各高周波アンテナ5には、整合器511を介して第1の高周波電源512が接続されている。各高周波アンテナ5には、第1の高周波電源512から整合器511を介して、例えば13.56MHzの高周波電力が供給される。これにより、プラズマ処理の間、部分窓30それぞれの表面に渦電流が誘起され、この渦電流によって処理空間100の内部に誘導電界が形成される。ガス吐出孔302から吐出された処理ガスは、誘導電界によって処理空間100の内部においてプラズマ化される。
【0028】
さらに
図1に示すように、このプラズマ処理装置1には制御部8が設けられている。制御部8は不図示のCPU(Central Processing Unit)と記憶部とを備えたコンピュータからなり、この記憶部には基板Gが配置された処理空間100内を真空排気し、高周波アンテナ5を用いて処理ガスをプラズマ化して基板Gを処理する動作を実行させる制御信号を出力するためのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカードなどの記憶媒体に格納され、そこから記憶部にインストールされる。
【0029】
以上に説明した構成を備えるプラズマ処理装置1において、部分窓30は、処理空間100内で発生するプラズマによる損傷を抑えるため、陽極酸化処理やセラミックス溶射による耐プラズマコーティングがなされている。一方で、金属枠11と部分窓30や、隣り合う部分窓30同士を絶縁する絶縁部材31には、絶縁性能が高く、軽い、PTFEなどの樹脂が採用されている。しかしながらアルミナなどのセラミックスと比較して、樹脂の耐プラズマ性は高くない。さらにこれらの樹脂は、陽極酸化処理やセラミックス溶射による耐プラズマコーティングを行うことも困難である。
【0030】
そこで本例のプラズマ処理装置1は、絶縁部材31の処理空間100側の面を覆うセラミックス製の絶縁部材カバー20を設けることによりプラズマから絶縁部材31を保護している。
以下、
図2〜
図8を参照しながら絶縁部材カバー20の具体的な構成について説明する。
【0031】
図2に示すように、部分窓30は必要に応じて種々の形状に分割される。これら部分窓30の分割形状に応じて、金属枠11と部分窓30との間、及び隣り合う部分窓30同士の間に配置される絶縁部材31は、その配置領域の形状が複雑になる。絶縁部材カバー20はこれら絶縁部材31の処理空間100側の全ての面を覆う必要があるが、一体に形成された絶縁部材カバー20にてこのような複雑な形状の領域を覆うことは困難である。
【0032】
そこで、本例の絶縁部材カバー20は、複数の部分カバー2に分割されている。例えば各部分カバー2は、細長い平板状に成形されたアルミナなどのセラミックス製の部材からなる。これら複数の部分カバー2を並べて絶縁部材31の配置領域を覆う絶縁部材カバー20が構成されている。
【0033】
しかしながら、複数の部分カバー2を並べただけでは、隣り合って配置された部分カバー2同士の間には隙間が形成されてしまう。このような隙間は、プラズマ処理時の温度上昇に伴う部分カバー2の膨張によって開口幅が大きくなり、ここからプラズマが進入して絶縁部材31を損傷したり、隙間の開口幅の変化に伴って、隙間内に堆積した堆積物が剥離し、基板Gを汚染したりするおそれもある。
【0034】
そこで、本例の絶縁部材カバー20は、複数の部分カバー2を組み合わせて絶縁部材カバー20を構成したとき、上述の隙間による絶縁部材31の損傷や堆積物の剥離の発生を抑えることが可能な構成となっている。
例えば
図2に示した絶縁部材カバー20において、部分カバー2間の隙間が形成される領域は、複数の部分カバー2同士が合流する領域である。
図2中には、このような隙間の形成される領域を破線で囲んで(i)〜(v)の符号を付してある。以下に説明する
図3〜
図8のうち、
図3〜
図7は、領域(i)に設けられた部分カバー2の構成を示し、
図8は領域(iv)に設けられた部分カバー2の構成を示している。
【0035】
図3は、領域(i)における部分カバー2(配置位置に応じた識別符号「2a〜2c」を併記してある。以下、「2d〜2m」についても同様)の平面図、
図4は、これらの部分カバー2a〜2cを取り去った状態における部分窓30(配置位置に応じた識別符号「30a〜30c」を併記してある)及び絶縁部材31(配置位置に応じた識別符号「31a、31b」を併記してある。以下、「31c、31d」についても同様)の平面図である。また、
図5〜
図7は、各々
図3、
図4中に一点鎖線で示したA−A’線、B−B’線、C−C’線に沿って矢視した縦断側面図である。
【0036】
図3、
図4に示すように、領域(i)においては、隣り合って配置された部分窓30a〜30cの隙間に嵌合するように、処理空間100から見てT字状に絶縁部材31a、31bが配置されている。領域(i)では、3枚の部分カバー2a〜2cを絶縁部材31a、31bの下面に並べることにより、処理空間100側からこれらの絶縁部材31a、31bを覆っている。
【0037】
図4中の破線や
図5〜
図7に示すように、各部分カバー2a〜2cの短辺方向の幅寸法は、絶縁部材31a、31bの下面、及び部分窓30a〜30cの下面側周縁部に跨る領域を覆うことが可能な寸法に形成されている。このように、幅広の部分カバー2a〜2cにて絶縁部材31a、31bを覆うことにより、部分カバー2a〜2cの側面からプラズマが進入した場合でも、絶縁部材31a、31bへのプラズマの到達が抑えられる。
【0038】
そして
図3に示すように、部分カバー2b、2cの端部と隣り合って配置される部分カバー2aの端部においては、部分カバー2aの一部が切り欠かれている。そして、部分カバー2b、2cは、この切り欠き内に嵌合するように配置されている。このように切り欠きを形成して部分カバー2aの幅寸法を小さくすることにより、部分カバー2b−2a、2c−2a間の隙間が形成される領域を互いに近づけて、よりコンパクトな領域内に収めることができる。
【0039】
さらに
図3、
図6、
図7に示すように、これら隙間の形成領域は、セラミックス製の平板からなる隙間カバー21(配置位置に応じた識別符号「21a」を併記してある。以下、「21b、21c」についても同様)によって処理空間100側から覆われている。
図7に示すように隙間カバー21aは、多段ヘッドを有する金属製のねじ202により部分窓30aの下面側に締結される。この結果、隙間カバー21aと部分窓30aとの間に挟まれた部分カバー2a〜2cについても部分窓30aの下面に締結される。
【0040】
ここで
図7に示すように、金属製のねじ202のヘッド部は、隙間カバー21の下面から処理空間100側へと突出しているが、このヘッド部はセラミックス製のねじカバー22によって覆われている。例えばヘッド部の側周面と、当該ヘッド部を収容するねじカバー22の凹部の内周面との間には、互いに螺合可能なねじが切られており、このねじによってねじカバー22が前記ヘッド部に固定される。
【0041】
なお、縦断面図の図示は省略したが、部分窓30aのシャワープレート305を金属窓本体303に締結するねじ201のヘッド部は、その一部がシャワープレート305の下面から下方側に突出している。一方で、部分カバー2b、2cには、このヘッドを挿入可能な凹部が形成されており、隙間カバー21aにて部分カバー2b、2cを固定する際に、これらヘッドと凹部とを嵌合させることにより、部分カバー2b、2cの横方向の位置ずれの発生を防止している。
図2中の領域(ii)、(iii)においても同様に、部分カバー2が合流する領域を覆う隙間カバー21が設けられている。
【0042】
ここで、
図3〜
図7を用いて説明した部分カバー2の構成は、金属窓3に設けられる全ての部分カバー2に適用する場合に限られない。例えば
図2中に一点鎖線で囲んで示したガス吐出孔形成領域300(ガス吐出孔302については一部のみを示してある)は、処理ガスの供給が行われる領域であり、この領域に対向するようにして、基板Gが配置されている。
【0043】
従って、ガス吐出孔形成領域300内に配置された部分カバー2間の隙間が、処理空間100に向けて露出すると、当該隙間を介してプラズマが進入し、また隙間に堆積した堆積物が基板G上に落下する要因となり易い。そこでガス吐出孔形成領域300内に配置された部分カバー2(
図2中の領域(i)〜(iii)に設けられた部分カバー2)に対しては、処理空間100側から隙間を覆う隙間カバー21が設けられている。
【0044】
一方で、ガス吐出孔形成領域300の外側、
図2に示す例では、金属枠11側(容器本体10の内壁側)に設けられている部分カバー2は、基板Gと対向する位置から離れて配置され、またプラズマが形成される領域からも離れている場合もある。このような場合には、
図2の領域(iv)〜(v)に示す部分カバー2のように、隣り合って配置された部分カバー2の隙間を覆う隙間カバー21を設けずに、部分カバー2の構造の簡素化を図ってもよい(
図8には、領域(iv)の部分カバー2j、2kを拡大表示してある)。この場合、部分カバー2はねじ202により部分窓30の下面に直接、締結される。
【0045】
以下、上述の実施の形態に係るプラズマ処理装置1の作用について説明する。
初めに、ゲートバルブ102を開き、隣接する真空搬送室から搬送機構(いずれも図示せず)により、搬入出口101を介して処理空間100内に基板Gを搬入する。次いで、載置台13上に基板Gを載置して、不図示の静電チャックにより固定する一方、前記搬送機構を処理空間100から退避させてゲートバルブ102を閉じる。また、金属窓3は、各部分窓30の温調流路307に供給される温調流体によって、予め設定された温度に調節されている。
【0046】
しかる後、処理ガス供給部42から、各部分窓30の処理ガス拡散室301を介して処理空間100内に処理ガスを供給する一方、真空排気部12より処理空間100内の真空排気を行って、処理空間100内を例えば0.66〜26.6Pa程度の圧力雰囲気に調節する。また基板Gの裏面側には、熱伝達用のHeガスを供給する。
【0047】
次いで、第1の高周波電源512から高周波アンテナ5に高周波電力を印加し、これにより金属窓3を介して処理空間100内に均一な誘導電界を生成する。この結果、誘導電界により、処理空間100内で処理ガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。そして、第2の高周波電源152から載置台13に印加されたバイアス用の高周波電力により、プラズマ中のイオンが基板Gに向けて引き込まれ、基板Gのプラズマ処理が行われる。
そして、予め設定した時間だけプラズマ処理を行ったら、各高周波電源512、152からの電力供給、処理ガス供給部42からの処理ガス供給、及び処理空間100内の真空排気を停止し、搬入時とは反対の順序で基板Gを搬出する。
【0048】
以上に動作説明を行った処理空間100の内部にて、プラズマを用いて基板Gのプラズマ処理を行うにあたり、部分窓30内においては、隣り合う部分カバー2の隙間が処理空間100側から隙間カバー21によって覆われている。この結果、前記隙間を介したプラズマの進入が抑えられ、絶縁部材31の損傷を防止することができる。
【0049】
また前記隙間が隙間カバー21によって覆われていることにより、この隙間内への堆積物の堆積や、堆積物の剥離、当該隙間に対向して配置された基板Gへの剥離物の落下などを抑えることができる。
【0050】
さらには、絶縁部材カバー20が設けられる領域を、金属窓3の配置領域に限定することにより、例えば金属窓3の下面側全体をセラミックス製のカバーで覆う場合と比較して、絶縁部材31や絶縁部材カバー20を含む金属窓3の軽量化を図ることができる。これらに加えて、金属と比較して比熱が大きいセラミックス製の部分カバー2の配置領域が絶縁部材31を覆うことができる程度の限られた面積範囲に限定されていることにより、温調流体を用いた金属窓3の温度調節時の応答性を向上させることもできる。
【0051】
本実施の形態に係るプラズマ処理装置1によれば、以下の効果がある。軽量で絶縁性能の高い樹脂製の絶縁部材31を用いて金属枠11や容器本体10(処理容器)と部分窓30との間、及び隣り合う部分窓同士30の間の絶縁を行う一方、セラミックス製の絶縁部材カバー20を用いて絶縁部材31をプラズマから保護するので、処理空間100内に供給される処理ガスをプラズマ化するうえで必要な金属窓3の機能を維持しつつ、金属窓3を軽量化することができる。
【0052】
次いで、
図9〜
図11に示す第2の実施の形態は、金属枠11(処理容器)と部分窓30、または隣り合う部分窓30同士の短絡を防止する目的で、これら金属枠11と部分窓30や隣り合う部分窓30同士の間に配置される絶縁部材31aと、部分カバー2aとの間にラビリンス構造を設けた例である。
【0053】
図9〜
図11の縦断面図は、
図2の領域(i)(
図3、
図4)における絶縁部材31a、31bや部分カバー2a〜2cに対して上記ラビリンス構造を適用した例を示している。本例において、各絶縁部材31a、31bの下面には、当該絶縁部材31の延伸方向に沿って伸び、断面形状が処理空間100側へ突出した突状部311が形成されている(絶縁部材31A)。一方で、絶縁部材カバー20を構成する部分カバー2a〜2c(部分カバー2A)の上面には、前記突状部311と嵌合する溝部23が形成されている(
図9〜
図11には、部分カバー2aの溝部23のみが示されている)。
【0054】
このように、金属枠11と部分窓30、または隣り合う部分窓30同士の間にラビリンス構造を設けることにより、互いの電気的距離が広がり、短絡の発生に伴って誘導結合プラズマを十分に形成することができない不具合の発生を防止することができる。
なお、ラビリンス構造を形成する突状部311や溝部23は、絶縁部材31の延伸方向に沿って1列だけ設ける場合に限定されず、複数列設けてもよい。
【0055】
次に
図12〜
図14に示す第3の実施の形態は、隙間カバー21と部分窓30との間に部分カバー2を挟み込む第1の実施の形態に係る絶縁部材カバー20と比較して、部分カバー2Bの取り付け手法が異なる。即ち、本例では、金属枠11(処理容器)と部分窓30の互いに対向する側壁面、または隣り合う部分窓30同士の互いに対向する側壁面に段部308を形成し、この段部308にて部分カバー2Bの側縁部を係止することにより金属窓3に対して部分カバー2Bを取り付けている。
【0056】
例えば
図12は、
図2の領域(i)に設けられた絶縁部材31a、31bを覆うように部分カバー2l、2m(部分カバー2B)を取り付けた例を示している。
図13、
図14は、
図12中に一点鎖線で示したA−A’線、B−B’線に沿って矢視した縦断側面図である。
図13、
図14に示すように、本例の部分窓30a〜30cには、下面側のシャワープレート305Aが金属窓本体303の側壁よりも外方に突出して段部308が形成されている。
図12に示す2枚の部分カバー2m、2l(2B)は、その両側の側縁部が前記段部308により係止されている(
図12中に長い破線で示した領域が段部308上に載置された側縁部である)。また絶縁部材31c、31d(31B)は、隣り合う部分窓30の間の隙間に嵌合した状態で、これら部分カバー2m、2l上に載置されている。
【0057】
さらに
図12に短い破線で示し、また
図14に示すように、隣り合って配置された部分カバー2l、2mの一方側である、部分カバー2mは、その端部が他方側の部分カバー2lの上面に重ねられている。このような積層構造を採用することにより、隙間カバー21を設けなくても部分カバー2l、2m間の隙間の形成を避けることができる。なお、
図13、
図14に示すように、隣り合って配置される部分カバー2l、2mを積層する場合には、各部分カバー2l、2mの高さ位置に合わせて、その側縁部を係止する段部308の高さ位置も調節されている。
【0058】
これらに加え、部分窓30の側壁面の途中に形成された段部308に部分カバー2l、2mを係止し、これら部分カバー2l、2mの上に絶縁部材31c、31dを設けた第3の実施の形態においては、部分カバー2l、2mの下方側に絶縁部材31c、31dの挿入されていない領域が形成される。このため、絶縁部材31c、31dが挿入されていない領域における部分窓30間の短絡の発生を防止するため、部分カバー2l、2mの下方側の部分窓30a〜30cの側壁面には、隣り合って配置される部分窓30a〜30cの電気的距離を広げるための切り欠き面306が形成されている。
【0059】
以上に説明した各実施の形態において、被処理基板としてFPD基板を用いた例を示したが、矩形基板であれば太陽電池パネル用の基板など他の種類の基板に対するプラズマ処理にも適用可能である。