(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593037
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】高耐熱性ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/29 20060101AFI20191010BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20191010BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
H01B7/29
H01B7/02 Z
H01B7/18 H
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-170650(P2015-170650)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-50073(P2017-50073A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】藤本 憲一朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優弥
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−130348(JP,A)
【文献】
特開2009−199818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/29
H01B 7/02
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周を絶縁体で被覆した絶縁電線と、
前記絶縁電線の外周に設けられたシースとを備え、
前記導体は温度センサに接続されており、
配線通路部に形成された高温領域である配線通路に通して使用される、温度センサ付き高耐熱性ケーブルであって、
前記絶縁体は、ハロゲンを含まないポリエーテルエーテルケトンから形成され、
前記シースは、ハロゲンを含まない難燃オレフィン樹脂から形成され、
前記配線通路の内径は、前記温度センサ付き高耐熱性ケーブルの外径よりも小さく、
前記絶縁電線は前記シースから露出しており、
露出した前記絶縁電線を前記配線通路に通して、露出した前記絶縁電線が前記配線通路に位置するようにして使用されることを特徴とする温度センサ付き高耐熱性ケーブル。
【請求項2】
前記絶縁体は、厚さ0.2〜0.3mmを有し、
前記シースは、厚さ0.3〜0.5mmを有する、
請求項1に記載の温度センサ付き高耐熱性ケーブル。
【請求項3】
前記絶縁電線は、2芯から4芯の複数の絶縁電線である、
請求項1又は2に記載の温度センサ付き高耐熱性ケーブル。
【請求項4】
前記複数の絶縁電線は、撚り合わせて構成されており、撚り合わせピッチは30〜35mmである、
請求項3に記載の温度センサ付き高耐熱性ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
高耐熱性を有するケーブルとして、一般に、電線をフッ素樹脂、フッ素ゴム等からなるシースで被覆したものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された高耐熱性ケーブルは、中心導体をフッ素樹脂、例えばフッ素化されたPFAからなる絶縁体で被覆した電線と、電線の外周にシールド層を介して設けられたフッ素樹脂、例えばPFA(融点300〜310°C)からなる外被とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−188782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の高耐熱性ケーブルの外被を構成するフッ素樹脂は、ハロゲンを含む材料であるため、廃棄・燃焼時に有毒、有害なガスを多量に発生し、焼却条件によっては猛毒のダイオキシンを発生させる。このため、火災時の安全性や環境負荷低減の観点からハロゲンを含まないハロゲンフリー樹脂材料を被覆材料に用いたケーブルが普及している。
【0006】
また、高耐熱性ケーブルをケーブル外径よりも狭い場所であって高温領域に通す必要がある場合がある。さらに、高耐熱性ケーブルが繰返し屈曲される部分に使用される場合もある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ケーブル外径よりも狭い場所であって高温領域にケーブルを通すことが可能な高耐熱性ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]導体の外周を絶縁体で被覆した絶縁電線と、
前記絶縁電線の外周に設けられたシースとを備え、
前記導体は温度センサに接続されており、
配線通路部に形成された高温領域である配線通路に通して使用される、温度センサ付き高耐熱性ケーブルであって、
前記絶縁体は、ハロゲンを含まないポリエーテルエーテルケトンから形成され、
前記シースは、ハロゲンを含まない難燃オレフィン樹脂から形成され
、
前記絶縁電線は前記シースから露出しており、
露出した前記絶縁電線が、前記配線通路部に形成された高温領域である前記配線通路に位置するように、前記配線通路に通して使用されることを特徴とする温度センサ付き高耐熱性ケーブル。
[2]前記絶縁体は、厚さ0.2〜0.3mmを有し、
前記シースは、厚さ0.3〜0.5mmを有する、前記[1]に記載の
温度センサ付き高耐熱性ケーブル。
[3]前記絶縁電線は、2芯から4芯の複数の絶縁電線である、前記[1]又は[2]に記載の
温度センサ付き高耐熱性ケーブル。
[4]前記複数の絶縁電線は、撚り合わせて構成されており、撚り合わせピッチは30〜35mmである、前記[3]に記載の
温度センサ付き高耐熱性ケーブル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブル外径よりも狭い場所であって高温領域にケーブルを通すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る高耐熱性ケーブルの横断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す高耐熱性ケーブルの使用状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0012】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る高耐熱性ケーブルの横断面図である。
【0013】
この高耐熱性ケーブル1は、導体2の外周を絶縁体3で被覆した絶縁電線4と、絶縁電線4の周囲に介在物5を介在させて巻き付けられた押さえテープ6と、押さえテープ6の外周に設けられたシールド層7と、シールド層7の外周に設けられたシース8とを備える。
【0014】
(絶縁電線)
絶縁電線4の本数は、
図1に示す場合は3本であるが、1本、2本又は4本以上でもよい。2本以上の絶縁電線4を用いる場合は、撚り合わせ構成される。絶縁電線4は、電圧又は信号を伝送する。例えば、3本の絶縁電線4を用いて3端子CMOS温度センサ等の温度センサに接続してもよい。また、3本又は2本の絶縁電線4を用いて3相又は2相交流電圧をインバータからモータに伝送してもよい。また、絶縁電線4として、差動信号を伝送する1組又は2組以上のツイストペア線を用いてもよい。
【0015】
導体2は、例えば、銅からなる銅導体の表面にメッキを施したものを用いる。メッキとしては、錫メッキよりも耐熱性が高い銀メッキが好ましい。
【0016】
絶縁体3は、シース8よりも耐熱性が高く、ハロゲンを含まないノンハロゲン樹脂材料を用いる。このようなノンハロゲン樹脂材料として、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(融点343℃)等を用いることができる。また、絶縁体3の厚さは、細径化及び軽量化の観点より、0.2〜0.3mmが好ましい。
【0017】
また、高屈曲性及び端末作業性を考慮して、複数の絶縁電線4の撚り合わせピッチは、30〜35mmが好ましい。撚り合わせピッチを30mm以上としたのは、30mm未満とすると端末作業性が悪くなるからである。撚り合わせピッチを35mm以下としたのは、35mmを超えると屈曲性が悪くなるからである。
【0018】
(シース)
シース8は、融点が100℃以上の耐熱性を有し、ハロゲンを含まないノンハロゲン樹脂材料を用いる。このようなノンハロゲン樹脂材料として、例えば難燃オレフィン系樹脂(融点120℃)を用いることができる。難燃オレフィン系樹脂は、例えば、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)100重量部に水酸化マグネシウム150〜200重量部添加して難燃性を高めたものを用いる。シース8の厚さは、細径化及び軽量化の観点から、0.3〜0.5mmが好ましい。なお、シース8を構成する樹脂材料は、融点が絶縁電線4の絶縁体3の樹脂材料と同等でもよい。
【0019】
(その他の構成)
介在物5は、例えば、ガラス繊維等の一般的なものを用いることができる。押さえテープ6は、例えば、ポリエステル等からなる樹脂テープを用いる。シールド層7は、例えば、導線を編組して形成され、グランドに接続される。なお、シールド層7は、導体付きテープを巻き付けたものでもよい。
【0020】
図2は、
図1に示す高耐熱性ケーブル1の使用状態の一例を示す図である。高耐熱性ケーブル1の端末部側の配線ルートには、
図2に示すように配線通路部10に形成された配線通路10aが設けられている。配線通路10aは、ケーブル外径よりも狭い場所であって高温領域(例えば170℃)である。すなわち、配線通路10aの内径dは、高耐熱性ケーブル1の外径Dよりも小さく形成されている。このため、高耐熱性ケーブル1を配線通路10aに通すには、シース8等を剥がす必要がある。
【0021】
まず、高耐熱性ケーブル1の一方の端部側に段剥処理を施してシース8、シールド層7、押さえテープ6及び介在物5を除去し、絶縁電線4を例えば50〜100cm露出させる。
【0022】
次に、露出させた絶縁電線4を配線通路部10に形成された配線通路10aに通す。電線4から導体2を露出させ、導体2を温度センサ11の3つの端子11aに接続部材12によって接続する。
【0023】
(本実施の形態の作用、効果)
本実施の形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
(1)ケーブル外径よりも狭い場所であっても、シース8等を剥がして絶縁配線4を露出させることより、その場所に絶縁配線4を通すことができる。
(2)ケーブル外径よりも狭い場所が高温領域であっても、露出させた絶縁配線4の絶縁体3は、高耐熱性の材料から形成されているので、本高耐熱性ケーブル1を使用することができる。
(3)本高耐熱性ケーブル1は、耐屈曲性を有しているので、繰返し屈曲される部分に使用することができる。
【0024】
なお、本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されず、種々な実施の形態が可能
である。上記実施の形態では、高耐熱性ケーブル1をケーブル外径よりも狭い場所であって高温領域に通す場合について説明したが、高耐熱性ケーブル1をケーブル外径よりも広い場所であって高温領域に通す場合に適用してもよい。
【0025】
また、本発明の要旨を変更しない範囲内で、上記実施の形態の構成要素の一部を省くことや変更することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…高耐熱性ケーブル、2…導体、3…絶縁体、4…絶縁電線、5…介在物、
6…押さえテープ、7…シールド層、8…シース、10…配線通路部、
10a…配線通路、11…温度センサ、11a…端子、12…接続部材