(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、剥離や欠けを生じにくい印刷層付き板、およびこれを有する表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷層付き板は、第一の主面と第二の主面と端面とを有する板と、前記第一の主面
の周縁部に設けられた印刷層とを備えた印刷層付き板であって、
前記第一の主面の周縁部を全周にわたって覆う前記印刷層の外周部分は、
その外周端が、前記第一の主面と前記端面との間の接続部を越えて、前記端面にまで達しており、前記印刷層に覆われた前記板の部分の内、前記印刷層の前記外周端から前記印刷層の内周部分に向かって0mm超0.5mm以下入り込んだ領域、及び、前記印刷層の前記内周部分の内周端から前記印刷層の外周部分に向かって0mm超0.5mm以下入り込んだ領域を除く前記板の部分を印刷層密着領域とするとき、前記板の前記印刷層密着領域の表面粗さR2が、100nm≦R2≦1000nmであって、前記表面粗さR
2は、前記印刷層密着領域を除く前記板の部分の表面粗さR
1より大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、
板の印刷層密着領域が、板の
主面の外周領域
から接続部及び端面の一部にまで拡がっており、この印刷層密着領域の表面粗れが大き
い。そのため、板上に形成された印刷層
のインクが表面粗れ
した表面構造に
入り込み、印刷層が剥がれにくくなり、欠陥の少ない印刷層付き板を作製できる。
【0010】
また、表面粗さR
2を
100nm≦R2≦1000nmの範囲と
したので、印刷層の耐剥離性を向上し、さらに良好な美観性を備えた印刷層付き板を作製できる。
【0016】
板の表面粗さが粗い印刷層密着領域は、印刷層の
内周縁及び外周縁から0mm超0.5mm以下入り込んでいるため、使用者から
は表面粗さの粗い板部分が視認できない。そのため、良好な美観性を
維持できる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記第一または第二の主面と前記端面との接続部が、曲率中心を前記板内に有し曲率半径0.05mm以上0.5mm以下の曲面である。
【0020】
好ましい形態によれば、外周領域の平面視での面積が同じでも、接続部を曲面とすることで外周領域の実面積を大きくできるため、より剥離しにくい印刷層付き板となる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記第一または第二の主面と前記端面との接続部が、厚み方向断面視で前記主面に相当する辺と前記端面に相当する辺とを接続する線分となり、前記それぞれの辺と前記線分との交点において形成される前記板側の2つの角が鈍角となる。
【0022】
好ましい形態によれば、簡単に接続部を形成でき、外周領域の平面視での面積が同じでも、外周領域の実面積を大きくできるため、より剥離しにくい印刷層付き板となる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記2つの角度の合計が270°である。
【0024】
好ましい形態によれば、接続部を形成する線分の両端の角が鈍角となるため取扱いが容易になる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記接続部の幅が、前記板の平面視において端面から0.05mm以上0.5mm以下である。
【0026】
好ましい形態によれば、接続部が板の外周端付近となるため、使用者から視認した際の視認性を損ねることなく良好な美観性を備えた印刷層付き板となる。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記板はガラスからできている。
【0028】
好ましい形態によれば、ガラスが高い強度を有し、良好な質感も有するため、高い強度と良好な質感を兼ね備えた印刷層付き板を得られる。
【0029】
本発明の好ましい形態では、前記ガラスは強化ガラスである。
【0030】
好ましい形態によれば、優れた強度と耐擦傷性を有するガラスになるため、安全性や耐久性を有する印刷層付き板となる。
【0031】
本発明の好ましい形態では、表示装置に用いられる。
【0032】
好ましい形態によれば、本発明の印刷層付き板を表示装置用カバーに用いた際、表示装置に取り付ける際の取扱いなどで、印刷層が剥離・欠損しにくくなるため、製品生産性を向上できる。
【0033】
本発明の表示装置は、以上説明した印刷層付き板と、前記印刷層付き板を支えるフレームと、液晶モジュールと、前記印刷層付き板と前記液晶パネルとを貼合する接着層とを備える。
【0034】
本発明によれば、印刷層が剥離しにくいため、印刷層付き板を備える表示装置の耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、剥離、欠けを生じにくい印刷層付き板、およびこれを有する表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明の各形態に限定されない。本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものとする。
【0038】
「第一実施形態」
[印刷層付き板の構成]
図1は本発明の第一の実施形態にかかる印刷層付き板の全体構成を示した(a)斜視図と(b)平面図である。
図2は
図1におけるII−II断面矢視図である。本実施形態の印刷層付き板1は、板2と、印刷層3とを備える。
【0039】
板2は第一の主面21、第二の主面22と端面23とを有する。
印刷層3は板2の第一の主面21周縁部に設けられ、印刷層3は所望の遮光性などの機能が得られるように複数層塗り重ねて形成される。印刷層3以外の板2上の領域が表示領域4となる。印刷層3は板2と非接触の面31、板2と接触する面32、板2の表示領域4側の端面である内周端33および板2の端面23側の端面である外周端34とを有する。
なお、
図1(b)の印刷層付き板1の平面図において、板2の重心Gから遠い位置にある、印刷層3の端面側を「外周」、近い位置にある印刷層3の端面側を「内周」と定義する。
【0040】
表示領域4には、最終製品である表示装置を作製する際に、液晶パネルなどの表示パネルが配置される。表示パネルには駆動のための配線・回路等がある。板2を通して表示パネルを視認した場合、前記配線・回路等が視認でき美観性を損なう。そこで印刷層3を板2の周縁部に設けることにより外周近傍に配置された配線回路等を隠蔽でき美観性を高められる。
【0041】
前記周縁部とは、板2の外周から板2の中央部に向かって、所定の幅を有する帯状領域を意味する。印刷層3は、第一の主面21の周縁全周に設けられていてもよく、周縁一部に設けられていてもよい。印刷層3の幅は同じでもよく、異なっていてもよい。印刷層3の前記厚さは同じでもよく、異なっていてもよい。
【0042】
印刷層3の外周部分3bに対する板の外周部分2bと、板の外周部分2bに対応した印刷層3の内周部分3aに相当する板の内周部分2aは、全周のうち少なくとも一部において異なる表面粗さを有する。全周のうち少なくとも一部において異なる表面粗さを有する板の外周部分2bを外周領域26、対応する板の内周部分2aを内周領域25とし、前者の表面粗さをR
2、後者の表面粗さをR
1とすると、R
2がR
1より大きくなる。これにより印刷層3が表面粗さの大きい外周領域26の凹凸にインクの一部が入り込み、印刷層3が板2に強固に固定されるため、印刷層の外周端34に衝撃が加わっても印刷層3の剥離や欠けが生じにくくなる。
【0043】
ここで、前記「対応する」とは、
図1(b)の印刷層付き板1の平面図において、板2の重心Gと外周領域26内の任意の点を結ぶ線分Lを引いたとき、線分Lが内周部分2aと交わる部位が内周領域25となるような位置関係にあることを示す。
【0044】
前記表面粗さは、算術平均粗さRa(以下、「表面粗さ」とも記載)であり、JIS B 0601:(2001)(ISO4287:1997)で規定される方法に準拠して測定できる。表面粗さの測定方法として具体的には、表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密社製 商品名:サーフコム1400D−LCD)により試料を測定した。
【0045】
外周領域26の表面粗さR
2は100nm以上が好ましく、300nm以上がより好ましく、450nm以上がさらに好ましい。この範囲であれば印刷層3のインクの一部が凹凸に入り込み、印刷層3の剥離耐性、欠け耐性が得られる。外周領域26の表面粗さR
2は1000nm以下が好ましく、900nm以下がより好ましく、800nm以下がさらに好ましい。この範囲であれば板2の良好な透明度となり美観性に優れる。
【0046】
印刷層の外周部分3bは、印刷層の外周端34から内周側に向かって0mm超0.5mm以下に相当する仮想線で囲まれた領域であることが好ましい。これにより本発明の印刷層付き板1を表示装置に使用した際に良好な視認性を確保できる。さらに印刷層の外周端34に衝撃が加わっても印刷層3の剥離や欠けを抑制できる効果も有する。印刷層の外周部分3bは、印刷層の外周端34から内周側に向かって0mm超0.4mm以下に相当する仮想線で囲まれた領域がより好ましく、0mm超0.3mm以下に相当する仮想線で囲まれた領域がより好ましい。
【0047】
第一の主面21または第二の主面22と端面23との間を接続部24とすると、
図3(a)に示すように接続部24を覆うように印刷層3が形成されていることが好ましく、
図2に示すように印刷層の外周端34が接続部24上にあるように印刷層3が形成されていることがより好ましく、
図3(b)に示すように印刷層の外周端34が板の端面23から0mm超0.5mm以下の第一の主面21または第二の主面22上の領域にあるように印刷層3が形成されていることがさらに好ましい。さらに、本実施形態の印刷層を備えた板1を最終製品である表示装置に組み込む際の寸法安定性を高くするため、印刷層の外周端34全周が板の端面23から0mm超0.5mm以下の第一の主面21または第二の主面22上の領域にあるように印刷層3が形成されていることが特に好ましい。これにより外周領域26が板2の外周端付近となる。印刷層3に用いたインクの一部が外周領域26の表面粗さの大きい部位の凹凸に入り込み、印刷層3が板2に強固に固定されるため、印刷層の外周端34に衝撃が加わっても印刷層3の剥離や欠けが生じにくくなる。
【0048】
印刷層の内周部分3aは、内周端33から外周側に向かって0mm超0.5mm以下に相当する仮想線で囲まれた領域であることが好ましい。これは内周部分3aが前記印刷層の内周端付近で使用者が最も視認しやすい部位であり、外周領域26に比べ内周領域25の表面粗さを小さくすることで良好な美観性を備える。内周領域25の表面粗さR
1は0.5nm以上20nm以下が好ましく、1nm以上10nmがより好ましく、1nm以上5nm以下がさらに好ましい。印刷層の内周部分3aは、内周端33から外周側に向かって0mm超0.4mm以下に相当する仮想線で囲まれた領域がより好ましく、0mm超0.3mm以下に相当する仮想線で囲まれた領域がより好ましい。
【0049】
「第二実施形態」
[断面円弧状の接続部24を有する印刷層付き板]
第二実施形態は、第一実施形態と接続部24の形状が異なっており、それ以外は同じである。なお、第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一の構造には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
図4に第二実施形態にかかる印刷層付き板1の断面図を示す。第二実施形態では、接続部24が断面円弧状となっており、曲率中心を板2内に有し曲率半径0.05mm以上0.5mm以下の曲面となっている。曲率半径は0.05mm以上0.4mm以下が好ましく、0.05mm以上0.3mm以下がより好ましい。これにより出荷時、製品組立時に生じる衝撃が一部に集中せず分散するため、印刷層3の剥離や欠けを抑制できるようになる。
【0051】
印刷層3の一部において、内周領域25の表面粗さR
1と外周領域26の表面粗さR
2とは、R
2>R
1の関係を満たす。印刷層3のインクの一部が外周領域26の表面粗さの大きい部位の凹凸に入り込み、板2に強固に固定される。これにより印刷層3の外周端34に衝撃が加わっても印刷層3の剥離や欠けを生じにくくできる。上記効果を得るためには、
図4(a)に示すように外周領域26では接続部24を覆うように印刷層3が形成されている形態や、
図4(b)に示すように外周領域26では印刷層の外周端34が平面視で端面23と一致するように印刷層3が形成されている形態、印刷層の外周端34全周が平面視で端面23と一致するように印刷層3が形成されている形態、
図4(c)に示すように外周領域26では印刷層の外周端34が端面23から0mm超0.5mm以下の第一の主面21または第二の主面22の接続部24にあるように印刷層3が形成されている形態が例示される。さらに、本実施形態の印刷層付き板1を最終製品である表示装置に組み込む際の寸法安定性を高くするため、印刷層の外周端34全周が端面23から0mm超0.5mm以下の第一の主面21または第二の主面22の接続部24にあるような形態であってもよい。
【0052】
第二実施形態にかかる接続部24は研削、ブラスト処理、エッチングなどにより形成できるが、研削で行うことが好ましい。
【0053】
「第三実施形態」
[断面線分状の接続部24を有する印刷層付き板]
第三実施形態は、第一実施形態と接続部24の形状が異なっており、それ以外は同じである。なお、第三実施形態の説明において、第一実施形態と同一の構造には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
図5に第三実施形態にかかる印刷層付き板1の断面図を示す。第三実施形態では、接続部24は厚さ方向断面視で、第一の主面21または第二の主面22に相当する辺と端面23に相当する辺とを接続する線分となる。第一の主面21または第二の主面22に相当する辺のうち一方と前記線分との交点で形成される板側の角と、端面23に相当する辺と前記線分との交点で形成される板側の角が鈍角となる。これにより出荷時、製品組立時に生じる衝撃が一部に集中することを防げるため、印刷層3の剥離や欠けを抑制できるようになる。さらに前記2つの鈍角の角度の合計が270°となることが好ましい。
【0055】
第三実施形態にかかる接続部24の幅は印刷層付き板1の平面視で、端面23から0.05mm以上0.5mm以下が好ましく、0.05mm以上0.4mm以下がより好ましく、0.05mm以上0.3mm以下がさらに好ましい。これにより出荷時、製品組立時に生じる衝撃が一部に集中することを防げるため、印刷層3の剥離や欠けを抑制できるようになる。
【0056】
内周領域25の表面粗さR
1と外周領域26の表面粗さR
2がR
2>R
1の関係を満たす。印刷層3が外周領域26の表面粗さの大きい部位の凹凸に入り込み、板2に強固に固定される。これにより印刷層の外周端34に衝撃が加わっても印刷層3の剥離や欠けを生じにくくできる。このため、
図5(a)に示すように外周領域26では接続部24を覆うように印刷層3が形成されていることが好ましく、
図5(b)に示すように外周領域26では印刷層の外周端34が平面視で端面23と一致するように印刷層3が形成されていることがより好ましく、印刷層の外周端34全周が平面視で端面23と一致するように印刷層3が形成されていることがさらに好ましく、
図5(c)に示すように外周領域26では印刷層の外周端34が端面23から0mm超0.5mm以下の第一の主面21または第二の主面22の接続部24にあるように印刷層3が形成されていることがとりわけ好ましい。さらに、本実施形態の印刷層付き板1を最終製品である表示装置に組み込む際の寸法安定性を高くするため、印刷層の外周端34全周が端面23から0mm超0.5mm以下の第一の主面21または第二の主面22の接続部24にあるように印刷層3が形成されていることが特に好ましい。
【0057】
第三実施形態にかかる接続部24は研削、ブラスト処理、エッチングなどにより形成できるが、研削で行うことが好ましい。
【0058】
本発明は前述の各形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
【0059】
[変形例]
本発明における板2には、用途に応じて、種々の形状、材料からなるものを使用できる。形状としては、例えば、平坦面のみを有する板のみならず、全体が曲率を有する曲面板や、一部に屈曲部を有する板であってもよい。このような曲面板などは成形時における加工精度によっては多少バラつきがあり、表示装置と組み合わせる際に屈曲部に負荷がかかることが想定される。そのため、本実施形態の印刷層付き板1は負荷がかかっても印刷層が剥離・欠損しにくく非常に有効である。また、板に限らず、フィルム状であっても良い。材料としては、透明であればよく、一般的なガラス、例えば、無機ガラス、ポリカーボネートやアクリル等の有機ガラスを使用でき、またその他の合成樹脂等も使用できる。
【0060】
無機ガラスを用いる場合には、その厚さは0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。これは下限値以上の厚さを備えたガラスであれば高い強度を有し、良好な質感も有するため、高い強度と良好な質感を兼ね備えた印刷層付き板を得られる利点がある。0.7mm以上3mm以下がより好ましく、1mm以上3mm以下がさらに好ましい。さらに無機ガラスでは化学強化処理や物理強化処理がなされていてもよく、化学強化処理がされていることが好ましい。上述のような比較的に薄い無機ガラスを強化処理する場合には、化学強化処理が適切である。
また、有機ガラスや合成樹脂等は、同種・異種問わず重ねられた基材でも良く、その間に各種接着層が挿入されていてもよい。
【0061】
本発明における板2は、第一の主面21または第二の主面22および両面に防眩処理(AG処理)、反射防止処理(AR処理)、耐指紋処理(AFP処理)などの処理層を有していてもよい。印刷層との密着性を向上させるため、プライマー処理やエッチング処理などがされていてもよい。
【0062】
本発明における印刷層3は、用途に応じて種々の印刷方法、インク(印刷材料)により形成されてよい。印刷方法は、例えば、スプレー印刷やスクリーン印刷が利用される。これらの方法により、面積の広い透明板でも良好に印刷できる。特にスプレー印刷では、屈曲部を有する透明板に印刷しやすく、印刷面の表面粗さを調整しやすい。一方スクリーン印刷では、広い透明板に平均厚さが均一になるように所望の印刷パターンを形成しやすい。また、インクは複数使用してよいが、印刷層の密着性の観点から同一のインクであることが好ましい。
【0063】
本発明における印刷層3を形成するインクは、無機系でも有機系であってもよい。無機系のインキとしては例えば、例えば、SiO
2、ZnO、B
2O
3、Bi
2O
3、Li
2O、Na
2O、及びK
2Oから選択される1種以上、CuO、Al
2O
3、ZrO
2、SnO
2、及びCeO
2から選択される1種以上、Fe
2O
3、及びTiO
2からなる組成物であってもよい。
【0064】
有機系のインクとしては樹脂を溶剤に溶解した種々の印刷材料を使用できる。例えば、樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、オレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリエール等の樹脂からなる群から少なくとも1種を選択して使用してよい。また、溶媒としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を用いてもよい。例えば、アルコール類としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等を使用でき、エステル類としては酢酸エチル、ケトン類としてはメチルエチルケトンを使用できる。また、芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等を使用でき、脂肪族炭化水素系溶剤としてはヘキサン等を使用できる。なお、これらは例として挙げたものであり、その他、種々の印刷材料を使用できる。前記有機系の印刷材料は、透明板に塗布した後、溶媒を蒸発させて樹脂の層を形成することで印刷層とすることができる。
【0065】
印刷層3に用いられるインクは、着色剤が含まれてもよい。着色剤としては、例えば、印刷層3を黒色とする場合はカーボンブラックなどの黒色の着色剤を使用できる。その他、所望の色に応じて適切な色の着色剤を使用できる。
【0066】
本発明の印刷層付き板1は、例えば、液晶ディスプレイ等のパネルディスプレイやスマートフォンなど携帯機器等のカバーガラスといった表示装置用カバーに使用できる。特に本発明の印刷層付き板1は車載用表示装置用カバーガラスとして適している。車載用表示装置を製造する工程では、印刷層付き板1が梱包・出荷され、表示装置組立メーカーにて印刷層付き板1を載置、組立、搬送などのステップを経ることとなる。これまでは出荷時の振動や表示装置組立時の取扱などにより印刷層3の剥離や欠けが発生しやすく、不良品となるものが多かった。本発明では印刷層3と板2とを強固に固定できるようになり、上記のような不良品を大幅に減少できる。
【0067】
次に、
図6(a)〜
図6(c)を用いて、本発明の実施形態に係る印刷層付き板1の製造方法について説明する。なお、
図6(a)〜
図6(c)において、今まで説明した構成要素と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明を省略または簡略化するものとする。
【0068】
図6(a)は板2の断面図を示す。まず所望の組成を有し所望の厚さを有する板材を最終製品である表示装置に組み込む際の所望の大きさに切断加工し板2を準備する。
次に後の工程において剥離しにくい印刷層3を形成するため、第一の主面21、第二の主面22と端面23とのそれぞれの接続部24周辺を研削し、
図6(b)に示すような接続部が断面線分状となるような板2とする。これは研削、ブラスト処理、エッチングなどにより形成できるが、研削で行うことが好ましい。一般的に「C面取り」と言われる研削を行うことが好ましいがこれに限定されない。例えば600番の砥石を用い接続部24周辺を研削する。
砥石の回転数や砥石の移動速度なども表面粗さに影響を与えるが、100nm以上1000nm以下であれば特に限定されない。
【0069】
この断面線分状の接続部位24が外周領域26となるように、第一の主面21に印刷層3を形成し、
図6(c)のような印刷層付き板1を作製する。印刷は、種々の印刷方法が利用できるが、例えば、スクリーン印刷により印刷を行うのが好ましい。スクリーン印刷は孔を用いた印刷であり、印刷対象を問わず、また、多少の屈曲部を有している対象に対しても印刷できるので、板2への印刷に好適に使用できる。
【0070】
印刷層の外周端34全周が接続部24上にあるように印刷層3を形成することが好ましい。
図6(c)に示すように印刷層の外周端34全周が接続部24上にあることが特に好ましい。これは印刷層付き板1を最終製品である表示装置に組み込む際の寸法安定性が高くなるためである。
【0071】
以上により印刷層3が接続部24の表面粗さの大きい部位の凹凸に入り込み、印刷層3が板2に強固に固定される。そのため、印刷層3の外周端34に衝撃が加わっても印刷層3の剥離や欠けが生じにくくなる。
【0072】
印刷は所望の回数だけ積層してよく、印刷に用いるインキは、各層異なるものを使用して良い。例えば、観察者が印刷層付き板を表面から板を通して観察したときに、印刷領域を白く見せたい場合には、例えば、まず白印刷を行い、続いて黒印刷を行えばよい。これにより使用者が板を通して印刷層を観察した際、印刷層の背面の視認性に関わる「透け感」を抑制した白色の印刷層を形成できる。
【0073】
上記印刷工程の最後及び途中において、乾燥工程や焼結工程を実施してもよく、これらの工程を実施するタイミングや温度条件などは、使用するインキの特性に応じて適宜選択できる。
【0074】
上記各工程の他、板2が無機ガラスである場合には強化処理工程を行ってもよい。また板2の第一の主面21または第二の主面22または両面に防眩処理(AG処理)、反射防止処理(AR処理)、耐指紋処理(AFP処理)などの機能膜処理工程を行ってもよい。
【0075】
次に、
図7(a)〜
図7(c)を用いて、本発明の実施形態に係る印刷層付き板を用いた表示装置の製造方法について説明する。なお、
図7(a)〜
図7(c)において、今まで説明した構成要素と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明を省略または簡略化するものとする。
【0076】
図7(a)は、前記にて作製した印刷層付き板1をフレーム9に配置した構造体の一例の断面図である。フレーム9を印刷層付き板1に接着層などにより固定しても良く、2種類の構造体で構成されたフレーム9で印刷層付き板1を挟みこんで固定してもよく、特に制限はない。フレームの形状、材質も特に制限はなく、適宜設計、選択して使用できる。
【0077】
図7(b)は、
図7(a)において得られた印刷層付き板1とフレーム9の構造体に接着層10を貼り付けた構造体の一例である。接着層10の形状、大きさは、印刷層付き板1の表示領域4に嵌まる大きさが好ましいが、特に形状、大きさに制限はない。
【0078】
接着層10は板2と同じく透明であり、板2と接着層10との屈折率差は小さいことが好ましい。
接着層10としては、例えば、液状の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる透明樹脂からなる層が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、例えば、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物などが挙げられ、なかでも、硬化性化合物および光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物が好ましい。硬化性樹脂組成物を、例えば、ダイコータ、ロールコータ等の方法を用いて塗布し、硬化性樹脂組成物膜を形成する。
なお、接着層10は、OCAフィルム(OCAテープ)であってもよい。この場合、印刷層付き板1の第一の主面21側、表示領域4上にOCAフィルムを貼合する。
【0079】
このような接着層10の厚さは、例えば、5〜400μmであり、50〜200μmが好ましい。また、粘着層10の貯蔵せん断弾性率は、例えば、5kPa〜5MPaであり、1MPa〜5MPaが好ましい。
【0080】
図7(c)は、
図7(b)において得られた構造体の接着層10に、液晶モジュール8を貼合した構造体の一例である。以上により、本願発明の印刷層付き板1を備えた表示装置11を作製できる。
【0081】
本願発明の表示装置11を作製するにあたり、組立順序は特に限定されない。例えば、予め印刷層付き板1に接着層10を配置した構造体を準備しておき、フレーム9に配置し、その後、液晶モジュール8を貼合しても良い。
【0082】
また上記構成だけでなく、表示装置はタッチセンサーなどを備えてよい。タッチセンサーを組み込む場合は、印刷層付き板1の第一の主面21側、表示領域4に接着層10を介してタッチセンサーを配置し、それに接着層10を介して液晶モジュール8を配置することとなる。
【実施例】
【0083】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。例1は本発明の実施例、例2は比較例である。
【0084】
板2には、ガラス板であって厚さ2mmの主面が四角形の板状ガラス(ドラゴントレイル(登録商標)、旭硝子社製)を用い、以下の手順でそれぞれ印刷層付きガラス板を得た。以下、当該ガラス板の一方の主面を第一の主面(第一面)、他方の主面を第二の主面(第二面)と称する。
【0085】
<例1>
ガラス板に(1)防眩処理、(2)端面の研削処理、(3)化学強化処理およびアルカリ処理、(4)印刷領域の形成、の順に以下の手順で行った。
【0086】
(1)防眩処理
ガラス板の第一の主面に以下の手順で、フロスト処理による防眩処理を行った。
【0087】
まず、耐酸性の保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」という)を、ガラス板の防眩処理を施さない側の主面(第一面)に貼合した。このガラス板を3質量%のフッ化水素水溶液に3分間浸漬し、ガラス板をエッチングしガラス板の第二面表面に付着した汚れを除去した。続いてガラス板15質量%フッ化水素、15%フッ化カリウムの混合水溶液に3分間浸漬し、ガラス板の第1面にフロスト処理を施した。その後、ガラス板を10質量%フッ化水素水溶液に6分間浸漬することで防眩処理を施し、ヘーズ値を25%に調整した。なお、ヘーズ値は、JIS K 7136によりヘーズメータ(商品名:HZ−V3、スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0088】
(2)端面の研削処理
前記防眩処理を施したガラス板を150mm×250mmの大きさに切断した。その後、ガラス板の全周にわたってガラスの端面から0.2mmの寸法でC面取りを行った。面取りは600番の砥石(東京ダイア社製)を用い、砥石の回転数が6500rpm、砥石の移動速度が5000mm/minで処理した。これにより端面の表面粗さが450nmとなった。
【0089】
(3)化学強化処理およびアルカリ処理
ガラス板に貼合した保護フィルムを除去し、ガラス板を450℃に加熱して溶融させた硝酸カルシウム塩に2時間浸漬した。その後、ガラス板を溶融塩より引き上げ、1時間で室温まで徐冷することで化学強化処理を行った。これにより、表面圧縮応力(CS)が730MPa、応力層の深さ(DOL)が30μmの化学強化されたガラス板を得た。
さらに、このガラス板をアルカリ溶液(商品名:サンウォッシュTL−75、ライオン社製)に4時間浸漬してアルカリ処理を施した。
【0090】
(4)印刷層の形成
ガラス板の第一面の外周部の四辺に、2cm幅の黒枠状に印刷し印刷層を形成した。まず、スクリーン印刷機により黒色インク(商品名:GLSHF、帝国インキ社製)を5μmの厚さに塗布した後、150℃で30分間保持して乾燥させた。研削処理を行った端面上に印刷層の外周端が形成されるように、平面視でガラス板の端面から0.1mmの位置となるように印刷を行った。
【0091】
以上より、
図4(c)に示すような印刷層付きガラス板を得た。
【0092】
<例2>
例1とは異なり、(2)端面の研削処理を実施しない以外は、ガラス板に(1)防眩処理、(3)化学強化処理およびアルカリ処理、(4)印刷領域の形成、の順に同様の手順で行った。つまり、例1とは異なり、研削処理せず表面粗さの小さい平坦な部位に印刷層の外周端が形成されている。
【0093】
[評価]
例1および例2で得られた印刷層付きガラス板について、印刷層剥離試験を以下の方法で行った。
【0094】
(印刷層剥離試験)
印刷層の耐剥離性について以下のように実施した。印刷層付きガラス板を出荷する際に使用するフィルムを第一面に貼合し、一定の速度で一定の角度を保ちながら前記フィルムを剥がし、印刷層が剥離等生じていないか確認を行った。
フィルムには、PET基材に接着剤としてアクリル系糊剤の貼合されたEC9000ASL(商品名、スミロン社製)を用いた。
フィルムを第一面に貼合する際は、第一面とフィルムの間に空隙が残らない様に注意を払い、ローラーにより0.1MPaの荷重をかけ密着させて試験と行った。
フィルムを剥がす速度は50mm/minで、印刷層付きガラス板とフィルムの成す角が90°となるように試験を行った。
【0095】
例1および例2に上記フィルムを貼り付けた試験サンプルをそれぞれ10枚ずつ用意し、上記試験を行った。
例2では10枚のうち8枚について印刷層の剥離などが見られた。これらの剥離はほとんど印刷層の外周端を起点に発生していた。一方、例1では印刷層の剥離などが見られたのは10枚のうち1枚で、例2に比べ印刷層の剥離などが抑制された。
【0096】
以上のことから、実施例の印刷層付きガラス板は、比較例の印刷層付きガラス板に比べ、優れた耐剥離性を発揮することが分かった。