特許第6593172号(P6593172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593172
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ポリマーの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/14 20060101AFI20191010BHJP
   C08G 69/46 20060101ALI20191010BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C08J3/14CEZ
   C08J3/14CFG
   C08G69/46
   C08G73/06
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-552505(P2015-552505)
(86)(22)【出願日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2014082815
(87)【国際公開番号】WO2015087964
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-258035(P2013-258035)
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 大希
(72)【発明者】
【氏名】尾田 隆
【審査官】 安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−045529(JP,A)
【文献】 特開昭61−019808(JP,A)
【文献】 特開2004−196869(JP,A)
【文献】 特開2006−124545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、99/00
C08G 69/00−69/50
C08G 73/00−73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合反応後の芳香族ポリアミド系ポリマー含有反応溶液または重合反応後のトリアジン環含有ポリマー含有反応溶液を加熱した貧溶媒中へ滴下し、前記芳香族ポリアミド系ポリマーまたはトリアジン環含有ポリマーを凝集させて沈殿させる第1の再沈殿処理工程を含むことを特徴とするポリマーの精製方法。
【請求項2】
前記第1の再沈殿処理工程で得られた沈殿物を、有機溶媒に再溶解した後、加熱した貧溶媒中へ滴下する、第2の再沈殿処理工程を含む請求項1記載のポリマーの精製方法。
【請求項3】
前記第1の再沈殿処理工程での加熱温度が、35〜75℃である請求項1または2記載のポリマーの精製方法。
【請求項4】
前記第2の再沈殿処理工程での加熱温度が、35〜75℃である請求項2または3記載のポリマーの精製方法。
【請求項5】
前記第1の再沈殿処理工程で用いる貧溶媒が、水系溶媒である請求項1〜4のいずれか1項記載のポリマーの精製方法。
【請求項6】
前記第2の再沈殿処理工程で用いる貧溶媒が、水系溶媒である請求項2〜5のいずれか1項記載のポリマーの精製方法。
【請求項7】
前記芳香族ポリアミド系ポリマー含有反応溶液が、有機溶媒中、ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体と、ジアミン化合物とを、前記ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体と反応し得る官能基を1つ有する一官能物質の存在下で反応させて得られたものである請求項1〜6のいずれか1項記載のポリマーの精製方法。
【請求項8】
前記トリアジン環含有ポリマー含有反応溶液が、有機溶媒中、ハロゲン化シアヌルと、少なくとも2種類のジアミノアリール化合物とを反応させて得られたものである請求項1〜6のいずれか1項記載のポリマーの精製方法。
【請求項9】
前記第1の再沈殿処理工程での加熱温度が、35〜50℃である請求項7記載のポリマーの精製方法。
【請求項10】
前記第1の再沈殿処理工程での加熱温度が、60〜70℃である請求項8記載のポリマーの精製方法。
【請求項11】
ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体とジアミン化合物とを、有機溶媒中、前記ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体と反応し得る官能基を1つ有する一官能物質の存在下で反応させた後、この反応液を、加熱した貧溶媒中へ滴下して生成物を再沈殿させることを特徴とする芳香族ポリアミド系ポリマーの製造方法。
【請求項12】
ハロゲン化シアヌルと、少なくとも2種類のジアミノアリール化合物とを有機溶媒中で反応させた後、この反応溶液を、加熱した貧溶媒中へ滴下して生成物を再沈殿させることを特徴とするトリアジン環含有ポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの精製方法に関し、さらに詳述すると、芳香族ポリアミド系またはトリアジン系ポリマーの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分岐ポリマーは、ハイパーブランチポリマーとデンドリマーとに大別される。
ハイパーブランチポリマーとは、例えば、ABx型の多官能性モノマー(ここでAとBは互いに反応する官能基、Bの数Xは2以上)を重合させて得られる不規則な分岐構造を有する高分岐ポリマーである。
一方、デンドリマーとは、規則的な分岐構造を有する高分岐ポリマーである。ハイパーブランチポリマーは、デンドリマーより合成が容易であり、高分子量体も合成しやすいという特徴がある。
ハイパーブランチポリマーは、一般的にリニアポリマーと比較して良好な溶解性を発揮することが期待される。
このポリマーの製造法としては、AB2手法またはA2+B3手法の2種類の方法が知られており、AとBは、モノマー中の官能基に相当する。
例えば、AB2ルートでは、1個の官能基Aと2個の官能基Bを有する3官能性モノマーが反応してハイパーブランチポリマーを与える。
一方、A2+B3ルートでは、2個の官能基Aを有するモノマーが、3個の官能基Bを有するモノマーと反応してハイパーブランチポリマーを与える。このルートにおいて、理想的な場合には、1個の官能基Aおよび2個の官能基Bのみを有する2つのモノマーの1:1付加物が生成し、この付加物が、さらに反応してハイパーブランチポリマーを与える。
【0003】
2+B3ルートにおける芳香族ポリアミド系ハイパーブランチポリマーの製造方法としては、ベンゼントリカルボン酸(誘導体)とジアミン化合物とを反応させる手法が報告されている(特許文献1)。一方、トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの製造方法としては、ハロゲン化シアヌルと、ジアミノアリール化合物とを反応させる手法が報告されている(特許文献2〜4)。
これらの手法では、重合時に発生するハロゲン化水素は中和等によって除去されるが、その精製工程の再沈殿操作において、多量の貧溶媒を必要とするため生産効率が低いという課題がある。
また、再沈殿によって得られるポリマーは、粒子径が小さくろ過性に劣るため、精製後の残留ハロゲンが多くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/115216号
【特許文献2】国際公開第2012/057104号
【特許文献3】国際公開第2012/060268号
【特許文献4】国際公開第2010/128661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、芳香族ポリアミド系ポリマーまたはトリアジン環含有ポリマーを、高い操作性および容積効率にて高度に精製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、重合後のポリマー溶液を加熱した貧溶媒中へ滴下して再沈殿させることにより、良好な操作性、容積効率にて高い精製効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 重合反応後の芳香族ポリアミド系ポリマー含有溶液または重合反応後のトリアジン環含有ポリマー含有溶液を加熱した貧溶媒中へ滴下する、第1の再沈殿処理工程を含むことを特徴とするポリマーの精製方法、
2. 前記第1の再沈殿処理工程で得られた沈殿物を、有機溶媒に再溶解した後、加熱した貧溶媒中へ滴下する、第2の再沈殿処理工程を含む1のポリマーの精製方法、
3. 前記第1の再沈殿処理工程での加熱温度が、35〜75℃である1または2のポリマーの精製方法、
4. 前記第2の再沈殿処理工程での加熱温度が、35〜75℃である1〜3のいずれかのポリマーの精製方法、
5. 前記第1および第2の再沈殿処理工程で用いる貧溶媒が、水系溶媒である1〜4のいずれかのポリマーの精製方法、
6. 前記芳香族ポリアミド系ポリマー含有溶液が、有機溶媒中、ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体と、ジアミン化合物とを、前記ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体と反応し得る官能基を1つ有する一官能物質の存在下で反応させて得られたものである1〜5のいずれかのポリマーの精製方法、
7. 前記トリアジン環含有ポリマー含有溶液が、有機溶媒中、ハロゲン化シアヌルと、少なくとも2種類のジアミノアリール化合物とを反応させて得られたものである1〜5のいずれかのポリマーの精製方法、
8. 前記第1の再沈殿処理工程での加熱温度が、35〜50℃である6のポリマーの精製方法、
9. 前記第1の再沈殿処理工程での加熱温度が、60〜70℃である7のポリマーの精製方法、
10. ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体とジアミン化合物とを、有機溶媒中、前記ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体と反応し得る官能基を1つ有する一官能物質の存在下で反応させた後、この反応液を、加熱した貧溶媒中へ滴下して生成物を再沈殿させることを特徴とする芳香族ポリアミド系ポリマーの製造方法、
11. ハロゲン化シアヌルと、少なくとも2種類のジアミノアリール化合物とを有機溶媒中で反応させた後、この反応溶液を、加熱した貧溶媒中へ滴下して生成物を再沈殿させることを特徴とするトリアジン環含有ポリマーの製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の精製方法は、加熱した貧溶媒にポリマー溶液を添加する方法であるため、ポリマーの凝集が生じて沈殿物のろ過性などの操作性が良好になる。この凝集は、芳香族ポリアミド系ポリマーおよびトリアジン環含有ポリマーが、分子間の水素結合を有しているために生じると考えられる。
また、ろ過性が良好であるため、貧溶媒の使用量を少なくでき、容積効率を向上できるのみならず、残留ハロゲン量の低減効果にも優れている。
なお、本発明の精製方法は、貧溶媒を加熱しない精製方法の場合と同等の分子量および分子量分布を有するポリマーを与えることから、加熱によるポリマー物性への影響はほとんどない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るポリマーの精製方法は、重合反応後の芳香族ポリアミド系ポリマー含有溶液または重合反応後のトリアジン環含有ポリマー含有溶液を加熱した貧溶媒中へ滴下する、第1の再沈殿処理工程を含むものである。
【0010】
本発明の精製方法が適用される重合反応後の芳香族ポリアミド系ポリマー含有溶液としては特に限定されるものではないが、好ましくは、ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体(ベンゼントリカルボニルトリハライド等)とジアミンとを有機溶媒中で重合反応させた後の反応溶液であり、このような反応溶液としては、例えば、上記特許文献1に記載された、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体と、ジアミン化合物とを、有機溶媒中、ベンゼントリカルボン酸またはその誘導体と反応し得る官能基を1つ有する一官能物質の存在下で反応させた後の溶液などが挙げられる。
一方、重合反応後のトリアジン環含有ポリマー含有溶液としても特に限定されるものではなく、トリアジン環を含有するリニアポリマー、ハイパーブランチポリマー、共重合型ハイパーブランチポリマー等を合成した後の溶液であればよいが、好ましくは、ハロゲン化シアヌルと、少なくとも2種類のジアミノアリール化合物とを有機溶媒中で重合反応させた後の反応溶液が好ましく、このような反応溶液としては、例えば、上記特許文献2,3に記載された、ハロゲン化シアヌルと、少なくとも2種類のジアミノアリール化合物とを有機溶媒中で反応させた後の溶液などが挙げられる。
【0011】
上記有機溶媒としては、各重合反応に汎用されるものであれば特に制限はなく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピペリドン、N,N−ジメチルエチレン尿素、N,N,N’,N’−テトラメチルマロン酸アミド、N−メチルカプロラクタム、N−アセチルピロリジン、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオン酸アミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等のアミド系溶媒、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
中でもN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、およびそれらの混合系が好ましく、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好適である。
【0012】
第1の再沈殿処理工程に用いられる貧溶媒としては、目的のポリマーが沈殿する溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等が挙げられるが、本発明では、特に、水を主体(50質量%超)とする水系溶媒が好ましく、水単独溶媒が好適である。
なお、貧溶媒中には、必要に応じてアンモニア水等の塩基を添加してもよい。
貧溶媒の加熱温度は、特に限定されるものではないが、沈殿物の凝集性やろ過性等の精製時の操作性、残留ハロゲンの低減化効果、および精製後のポリマーの着色の低減等を考慮すると、35〜80℃程度が好ましく、40〜75℃がより好ましい。特に、芳香族ポリアミド系ポリマーでは40〜60℃が好ましく、40〜55℃が最適であり、一方、トリアジン環含有ポリマーでは60〜70℃が最適である。
【0013】
第1の再沈殿処理工程における貧溶媒の使用量は、通常、重合に用いたベンゼントリカルボン酸またはその誘導体やハロゲン化シアヌル等に対して10〜200質量倍とすることができるが、上述のとおり、本発明の精製方法はろ過性が良好であるため、常温の場合よりも貧溶媒の使用量を少なくして容積効率を高めることができる。上記加熱温度範囲において、容積効率および沈殿物のろ過性等を考慮すると、貧溶媒の使用量は、10〜100質量倍が好ましく、15〜70質量倍がより好ましく、15〜60質量倍がさらに好ましく、15〜40質量倍が最適である。
【0014】
第1の再沈殿処理工程において、ポリマー溶液を貧溶媒中へ加える速度は特に限定されるものではないが、滴下速度が速いほど沈殿物のろ過性が良好となり、再沈殿時のポリマーの凝集性や残留ハロゲンの低減効果等を考慮すると、0.7〜20.0mL/分が好ましく、1.5〜2.2mL/分がより好ましい。
【0015】
第1の再沈殿処理工程後は、沈殿物をろ過し、ろ物を必要に応じて水等で洗浄し、これを乾燥することで目的のポリマーを得ることができる。
ろ過設備は特に限定されるものではなく、公知の吸引ろ過設備等を用いればよい。
また、乾燥温度および時間は、上記有機溶媒の種類やポリマーの耐熱性等によって異なるため一概に規定することはできないが、100〜200℃程度、好ましくは120〜180℃程度で、1〜48時間程度である。なお、乾燥時、−10〜100kPa程度に減圧してもよい。
さらに、再沈殿処理工程により生じた沈殿物は、残留ハロゲンをより低減させる目的等で貧溶媒と同じ温度に加熱した状態で所定時間撹拌し、25℃程度まで冷却してから上記ろ過・乾燥を行ってもよい。この場合、撹拌時間は特に限定されるものではないが、0.1〜5時間程度、好ましくは、0.1〜2時間程度である。
【0016】
本発明の精製方法では、より精製度を高める目的で第2の再沈殿処理工程を行ってもよい。
この場合、第1の再沈殿処理工程で得られた沈殿物を再度有機溶媒に溶かした溶液を用いても、それをろ過・乾燥して得られたポリマーを再度有機溶媒に溶かした溶液を用いてもよいが、操作の簡便化を図るという点から前者の方法が好ましい。
また、第2の再沈殿処理工程においても、第1の再沈殿処理工程と同様、上記溶液を加熱した貧溶媒中へ滴下する方法が好ましく、このようにすることで、ろ過性等の操作性向上や残留ハロゲンの低減を図ることができる。
【0017】
第2の再沈殿処理工程で用いる有機溶媒および貧溶媒としては、第1の再沈殿処理工程で説明したものと同様のものが挙げられるが、有機溶媒としては、精製ポリマー中の残留溶媒を低減するという観点から、特に、N,N−ジメチルアセトアミドが好適である。
また、貧溶媒の加熱温度やポリマー溶液を加える速度は第1の再沈殿処理工程と同様であり、再沈殿後のろ過・乾燥も第1の再沈殿処理工程と同様である。
なお、この場合も、再沈殿処理工程により生じた沈殿物は、残留ハロゲンをより低減させる目的等で貧溶媒と同じ温度に加熱した状態で所定時間撹拌し、25℃程度まで冷却してから上記ろ過・乾燥を行ってもよい。
【0018】
本発明の精製方法を実施することで、芳香族ポリアミド系ポリマーについては、残留ハロゲンを通常5000ppm以下程度、再沈殿を繰り返すことで500ppm以下まで低減することができ、トリアジン環含有ポリマーについては、残留ハロゲンを通常3000ppm以下、場合によっては500ppm以下程度まで低減することができる。
【0019】
本発明の精製方法は、任意の芳香族ポリアミド系ポリマーおよびトリアジン環含有ポリマーの精製に適用し得るが、上述のとおり、特許文献1〜3に示されるポリマーの製造法の後処理に特に適している。
具体的なポリマーの構造としては、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含む共重合型トリアジン環含有ハイパーブランチポリマー、および式(2)で示される繰り返し単位構造を含む芳香族ポリアミド系ハイパーブランチポリマーなどが挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
上記各式中、R、R'、R''およびR'''は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表す。
上記アルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。また、その構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0022】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−イソプロピル−シクロプロピル基、2−イソプロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0023】
上記アルコキシ基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1〜20が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1〜10がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。また、そのアルキル部分の構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、1−メチル−n−ブトキシ基、2−メチル−n−ブトキシ基、3−メチル−n−ブトキシ基、1,1−ジメチル−n−プロポキシ基、1,2−ジメチル−n−プロポキシ基、2,2−ジメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−n−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1−メチル−n−ペンチルオキシ基、2−メチル−n−ペンチルオキシ基、3−メチル−n−ペンチルオキシ基、4−メチル−n−ペンチルオキシ基、1,1−ジメチル−n−ブトキシ基、1,2−ジメチル−n−ブトキシ基、1,3−ジメチル−n−ブトキシ基、2,2−ジメチル−n−ブトキシ基、2,3−ジメチル−n−ブトキシ基、3,3−ジメチル−n−ブトキシ基、1−エチル−n−ブトキシ基、2−エチル−n−ブトキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ基、1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ基等が挙げられる。
【0024】
上記アリール基の炭素数としては特に限定されるものではないが、6〜40が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数6〜16がより好ましく、6〜13がより一層好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル基、o−クロルフェニル基、m−クロルフェニル基、p−クロルフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0025】
アラルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、炭素数7〜20が好ましく、そのアルキル部分は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
その具体例としては、ベンジル基、p−メチルフェニルメチル基、m−メチルフェニルメチル基、o−エチルフェニルメチル基、m−エチルフェニルメチル基、p−エチルフェニルメチル基、2−プロピルフェニルメチル基、4−イソプロピルフェニルメチル基、4−イソブチルフェニルメチル基、α−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0026】
式(1)におけるAr1およびAr2は、互いに異なる、式(3)〜(19)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表すが、それらの組み合わせとしては、特に、式(6)〜(19)で示される2種が好ましく、式(6)〜(13)および(15)〜(19)で示される群から選ばれる2種がより好ましく、式(8)、(12)、(13)、(15)および(16)で示される群から選ばれる2種がより一層好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
また、式(2)におけるAは、上記式(3)〜(19)および下記式(20)〜(33)で示される少なくとも1種を表す。
【0029】
【化3】
【0030】
上記R1〜R130は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルケニル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、R131〜R138は、互いに独立して、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表し、R139およびR140は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し(ただし、R139およびR140は一緒になって環を形成していてもよい。)、W1およびW2は、互いに独立して、単結合、−(CR141142m−(R141およびR142は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表し、mは1〜10の整数を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR143(R143は、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表し、nは1〜10の整数を表す。
これらアルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルケニル基としては、ビニル基、アリル基(2−プロペニル基)、3−ブテニル基、4−ペンテニル基等が挙げられる。
炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0031】
また、X1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(34)で示される基を表す。
【化4】
【0032】
上記R146〜R149は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Y1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。
これらハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキレン基としては上記と同様のものが挙げられる。
【0033】
共重合型トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの具体例としては下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
【化5】
【0035】
一方、芳香族ポリアミド系ハイパーブランチポリマーの具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
【化6】
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置等は以下のとおりである。
(1)数平均分子量Mn,質量平均分子量Mw
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)
装置:(株)島津製作所製 SCL−10Avpシリーズ
カラム:Shodex K−804L+K−805L
カラム温度:60℃
溶媒: N−メチル−2−ピロリドン(1%LiCl添加)
検出器:UV(280nm)
検量線:標準ポリスチレン
(2)塩素含有量
燃焼イオンクロマトグラフ法
装置(燃焼):(株)三菱アナリテック製 IGF−100
装置(イオンクロマトグラフ):日本ダイオネクス(株)製 ICS−1500
サンプル40mgを燃焼装置で燃焼処理し、20mLの吸収トラップに吸収後、イオンクロマトグラフで測定を実施
【0038】
[1]芳香族ポリアミド系ハイパーブランチポリマーの製造および精製
[実施例1]
【化7】
【0039】
<反応>
窒素下、200mL四口フラスコに、1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリド[1](10g、37.7mmol、東京化成工業(株)製、以下TMCと略称)とN−メチル−2−ピロリドン(44.5g、純正化学(株)製、以下NMPと略称)とを仕込み、1,3−フェニレンジアミン[2](3.06g、28.3mmol、デュポン(株)製)およびアニリン[3](2.63g、28.3mmol、純正化学(株)製)をNMP(44.5g、純正化学(株)製)に溶解した溶液を、内温0〜10℃で1時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で30分撹拌した。
<精製>
得られた反応液を、45℃に加熱した純水150g(TMCに対して15質量倍)へ1時間かけて加えて再沈殿させ、さらに45℃で30分撹拌した。30℃以下まで冷却後、得られた沈殿物を、桐山ロート(40φ)およびろ紙(5B)を用いて減圧下で吸引ろ過した。減圧乾燥機で150℃、3時間乾燥し、目的とするトリカルボニルベンゼン系高分岐ポリマー[4](以下HPmDAと略す)11.7gを得た。
HPmDAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13600、多分散度Mw/Mnは3.0であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留塩素を測定したところ、1610ppmであった。
【0040】
[実施例2]
精製時の純水の加熱温度を35℃とした以外は、実施例1と同様にしてHPmDA11.7gを得た。
HPmDAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13300、多分散度Mw/Mnは3.0であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、4400ppmであった。
【0041】
[実施例3]
精製時の純水の加熱温度を40℃とした以外は、実施例1と同様にしてHPmDA11.7gを得た。
HPmDAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13900、多分散度Mw/Mnは3.0であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、3790ppmであった。
【0042】
[比較例1]
精製時の純水の加熱温度を20℃とした以外は、実施例1と同様にしてHPmDA11.7gを得た。
HPmDAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13900、多分散度Mw/Mnは3.0であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、8190ppmであった。
【0043】
上記実施例および比較例における、再沈殿時の加熱温度、再沈殿で生じた沈殿物の減圧下での吸引ろ過後の含液率、乾燥後の残留塩素濃度を表1にまとめて示す。
実施例1〜3および比較例1の結果からわかるように、貧溶媒を加熱しない場合、ろ過性が悪いため含液率が高く、残留塩素の低減化も不十分であることがわかる。
【0044】
【表1】
【0045】
[実施例4]
上記実施例1と同様にして得られた反応液を、45℃に加熱した純水150g(TMCに対して15質量倍)へ1時間かけて加えて再沈殿させ、さらに45℃で30分撹拌した。30℃以下まで冷却後、得られた沈殿物を桐山ロート(40φ)およびろ紙(5B)を用いて減圧下で吸引ろ過し、湿品を再度N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略称)60gに溶解し、55℃で1時間撹拌した。その後、DMAc溶液を30℃まで放冷し、55℃に加熱した純水150g(TMCに対して15質量倍)へ1時間かけて加えて再沈殿し、さらに55℃で30分撹拌した。30℃まで放冷後、桐山ロート(40φ)およびろ紙(5B)を用いて減圧下で吸引ろ過し、減圧乾燥機で150℃、3時間乾燥し、HPmDA11.7gを得た。
HPmDAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13900、多分散度Mw/Mnは3.0であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、140ppmであった。
【0046】
[比較例2]
<反応>
窒素下、2L四口フラスコに、TMC[1](90.0g、339mmol、東京化成工業(株)製)とNMP(400.0g、純正化学(株)製)とを仕込み、1,3−フェニレンジアミン[2](27.5g、254mmol、デュポン(株)製)およびアニリン[3](23.7g、254mmol、純正化学(株)製)をNMP(400.0g、純正化学(株)製)に溶解した溶液を、内温12℃で30分かけて滴下して重合した。滴下後、室温下で30分撹拌し、純水(90g)を滴下してからさらに30分撹拌した。
<精製>
反応液を25℃の純水9000g(TMCに対して100質量倍)へ加えて再沈殿させた。得られた沈殿物を桐山ロート(40φ)およびろ紙(5B)を用いて減圧下で吸引ろ過し、減圧乾燥機で150℃、3時間乾燥させた。得られた湿品を、THF(720.0g、関東化学(株)製)と純水(54.0g)の混合溶媒に溶解させ、これを25℃の純水9000g(TMCに対して100質量倍)へ加えて再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、25時間乾燥し、目的とするトリカルボニルベンゼン系高分岐ポリマー[4](以下HPmDAと略す)105.1gを得た。
HPmDAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは13100、多分散度Mw/Mnは3.6であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、610ppmであった。
【0047】
実施例4の結果から、再沈殿処理工程を2回繰り返すことで、貧溶媒を100質量倍使用した室温での2回の再沈殿処理の場合よりも、残留塩素を著しく低減できていることがわかる。
【0048】
[2]共重合型トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの製造および精製
[実施例5]
【化8】
【0049】
<反応>
窒素下、10Lの反応槽に、DMAc7.5kgを加え、4,4′−ジアミノベンズアニリド[6](0.57kg,2.51mol)、m−フェニレンジアミン[2](0.18kg,1.67mol,デュポン社製)を加え、−10℃まで冷却した。ここに、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[5](0.70kg,3.80mol,エボニック・デグサ社製、以下、TCTAと略称)を0℃以下で滴下した。滴下後、1時間撹拌し、この反応溶液を、DMAc6.1kgを加えてあらかじめ90℃に加熱してある20Lの反応槽へ滴下ポンプを用いて滴下した。2時間後、アニリン(0.27kg,2.85mol、純正化学(株)製)を滴下して3時間撹拌した。続いて、イオン交換水0.20kgを加えて3時間撹拌した後、冷却してポリマーのDMAc溶液15.6kgを得た。
<精製>
ポリマーのDMAc溶液7.8kgを65℃に加熱した28%アンモニア水溶液(1.15kg)とイオン交換水10.5kg(TCTAに対して30質量倍)との混合溶液に再沈殿させた。得られた沈殿物を桐山ロート(185φ)およびろ紙(5B)を用いて減圧下で吸引ろ過し、得られたケーキをイオン交換水3.5kgで洗浄した。洗浄後の湿品とイオン交換水10.5kgとを20Lの反応槽に再度仕込み、60℃で3時間撹拌後、室温まで冷却し、ろ過した。得られた湿品を減圧乾燥機で150℃、8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[7](以下、HB−TAM−mDAと略す)0.63kgを得た。
HB−TAM−mDAのGPC(NMP系)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは32200、多分散度Mw/Mnは3.7であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、400ppmであった。
【0050】
[実施例6]
TCTAの仕込み量を9.0g、精製時のイオン交換水の加熱温度を45℃とした以外は、実施例5と同様にしてHB−TAM−mDA14.9gを得た。
HB−TAM−mDAのGPC(NMP系)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは32200、多分散度Mw/Mnは3.7であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、2200ppmであった。
【0051】
[実施例7]
TCTAの仕込み量を9.0g、精製時のイオン交換水の加熱温度を60℃とした以外は、実施例5と同様にしてHB−TAM−mDA14.9gを得た。
HB−TAM−mDAのGPC(NMP系)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは32200、多分散度Mw/Mnは3.7であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、330ppmであった。
【0052】
[実施例8]
TCTAの仕込み量を9.0g、精製時のイオン交換水の加熱温度を70℃とした以外は、実施例5と同様にしてHB−TAM−mDA14.9gを得た。
HB−TAM−mDAのGPC(NMP系)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは32200、多分散度Mw/Mnは3.7であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、410ppmであった。
【0053】
[実施例9]
TCTAの仕込み量を9.0g、精製時のイオン交換水の加熱温度を80℃とした以外は、実施例5と同様にしてHB−TAM−mDA14.9gを得た。
HB−TAM−mDAのGPC(NMP系)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは32200、多分散度Mw/Mnは3.7であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、1600ppmであった。
【0054】
[比較例3]
<反応>
窒素下、3Lの4口フラスコに、DMAc771.1gを加え、4,4′−ジアミノベンズアニリド[6](146.4g,0.65mmol)、m−フェニレンジアミン[2](46.4g,0.43mmol, デュポン社製)を加え、DMAc1156.6gに溶解させた、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン[5](180.0g,0.98mmol,エボニック・デグサ社製)を5℃以下で滴下した。滴下後、1時間撹拌し、この反応溶液を、DMAc1577.4gを加えてあらかじめ85℃に加熱してある3Lの4口フラスコへ滴下ポンプを用いて滴下した。2時間後、アニリン(0.27kg,2.85mol、純正化学(株)製)を滴下し、さらに3時間撹拌後、冷却してポリマーのDMAc溶液4150.3gを得た。
<精製>
2075.2gのポリマーのDMAc溶液を25℃の28%アンモニア水溶液(296.3g)とイオン交換水4500g(TCTAに対して50重量倍)との混合溶液に再沈殿させた。得られた沈殿物を桐山ロート(185φ)およびろ紙(5B)を用いて減圧下で吸引ろ過し、得られたケーキをイオン交換水900gで洗浄した。洗浄後の湿品を減圧乾燥機で150℃、8時間乾燥し、HB−TAM−mDA306.5gを得た。
HB−TAM−mDAのGPC(NMP系)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは31200、多分散度Mw/Mnは3.7であった。
また、燃焼イオンクロマトグラフ法により全残留ハロゲンを測定したところ、8700ppmであった。
【0055】
上記実施例5〜9および比較例3における、用いた貧溶媒量、再沈殿時の加熱温度、再沈殿で生じた沈殿物の減圧下での吸引ろ過後の含液率、乾燥後の残留塩素濃度を表2にまとめて示す。
実施例5〜9および比較例3の結果からわかるように、貧溶媒を加熱しない場合、貧溶媒量を多く用いてもろ過性が悪いため含液率が高く、残留塩素の低減化が不十分であることがわかる。
【0056】
【表2】