(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得部が取得した画像に含まれる粒子の画像の明るさおよび面積に基づいて、前記第1の時刻において撮像された画像から前記第1の微粒子の画像を、前記第2の時刻において撮像された画像から前記第2の微粒子の画像を、それぞれ抽出する抽出部
をさらに備える請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の微粒子分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る観察装置1の外観構成の一例を示す模式図である。観察装置1は、電気泳動装置40を備えている。
【0012】
以下、本実施形態において、XYZ直交座標系を用いて観察装置1の構成を説明する。
このXYZ直交座標系において、鉛直方向をZ方向とし、電気泳動装置40による泳動方向をX方向とし、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とする。
【0013】
電気泳動装置40は、電源41と、負電極42と、正電極43と、電気泳動漕44とを備えている。電気泳動漕44は、X方向の第1端部にリザーバ44aを備えている。電気泳動漕44は、X方向の第2端部にリザーバ44bを備えている。また、電気泳動漕44は、リザーバ44aと、リザーバ44bとを接続する流路44cを備えている。流路44cのサイズは、一例として、X方向の長さ1000[μm]、Y方向の幅200[μm]、Z方向の高さ50[μm]である。これらの数値は一例であり、流路44cのサイズはこれに限定されない。負電極42は、例えば白金等の金属により構成されており、電気泳動漕44の−X方向の端(第1端部)にあるリザーバ44aに配置される。正電極43は、負電極42と同様に例えば白金等の金属により構成されており、電気泳動漕44の+X方向の端(第2端部)にあるリザーバ44bに配置される。電源41は、負電極42と、正電極43との間に電位差を生じさせる。一例として、電源41は、流路44cにおける電界強度が50[V/cm]となるようにして、負電極42と、正電極43との間に電位差を生じさせる。媒質中の粒子には、この媒質中を所定方向(この一例の場合においてはX方向)に移動させる力が加えられている。電気泳動装置40は、種々の粒子を媒質中に浮遊させて泳動させることができる。本実施形態の電気泳動装置40は、微粒子の電気泳動に用いることができる。微粒子としては、例えばエキソソーム(エクソソーム)、アポトーシス小体やマイクロベシクル等を含む脂質小胞、細胞外小胞体、ラテックス粒子(抗体で修飾され、さらに細胞で修飾されたラテックス粒子を含む)、高分子ミセルなど、が挙げられる。本実施形態では、一例として、がん患者の血液、唾液、尿等の体液から抽出されたエキソソームに対し、免疫電気泳動を行う場合について説明する。
【0014】
図2は、エキソソーム、及び抗体−エキソソーム複合体それぞれの電気泳動の一例を示す模式図である。
図2に示すように、エキソソームは負に帯電する一方、抗体は正に帯電する。このため、抗体−エキソソーム複合体のゼータ電位は、エキソソーム単独のゼータ電位と比較して正の電荷を有している。したがって、抗体−エキソソーム複合体の泳動度は、エキソソームの泳動度より小さいものとなる。この免疫電気泳動においては、電気泳動中のエキソソームの数を計測することにより、ゼータ電位対エキソソーム粒子数のヒストグラムを生成する。
【0015】
図3A、3Bは、ゼータ電位対エキソソーム粒子数のヒストグラムの一例を示すグラフである。
図3Aおよび3Bにおいて、横軸は、ゼータ電位を示し、縦軸は、エキソソームの粒子数(以下の説明において、エキソソーム数とも記載する。)を示す。
図3Aは、エキソソーム懸濁液におけるゼータ電位の分布を示す。
図3Bは、抗体−エキソソーム懸濁液におけるゼータ電位の分布を示す。このゼータ電位対エキソソーム数のヒストグラムから、あるエキソソーム数におけるゼータ電位の平均値を求めることができる。この一例においては、エキソソーム数が100個の場合におけるゼータ電位の平均値を求める。一例には、
図3Aに示すように、エキソソーム懸濁液におけるゼータ電位の平均値は、−4.7±2.2[mV]である。また、
図3Bに示すように、抗体−エキソソーム懸濁液におけるゼータ電位の平均値は、−9.0±2.2[mV]である。
【0016】
また、このゼータ電位対エキソソーム数のヒストグラムによれば、抗体−エキソソーム複合体のゼータ電位の平均値だけでなく、抗体−エキソソーム複合体のゼータ電位を1粒子レベルで計測することができる。そのため、ゼータ電位の平均値からは、抗体が認識する抗原を有するエキソソームが試料中に存在しないように思われる場合であっても、電気泳動チップによって、マイナーポピュレーションとして存在する、その抗原を有するエキソソームを検出することができる。このようにしてゼータ電位対エキソソーム粒子数のヒストグラムを解析することにより、例えば、生体内に微量に存在する悪性度の高いがん細胞を高感度に検出し、がんの浸潤・転移を早期に発見することができる。
【0017】
また、複数の種類の抗体−エキソソーム複合体のゼータ電位を比較することもできる。一例には、第1の抗体としてがん細胞特異的に発現するタンパク質を抗原とする抗体を用いて、第1の抗体−エキソソーム複合体のゼータ電位を計測し、次いで、第2の抗体として臓器特異的に発現するタンパク質を抗原とする抗体を用いて、第2の抗体−エキソソーム複合体のゼータ電位を計測することにより、検出対象の細胞がどの臓器由来のがん細胞であるかを特定できる。また、がん細胞に限らず、用いる抗体の組合せを変えることにより、生体内における細胞の異常を詳細に特定することができる。
【0018】
このゼータ電位対エキソソーム数のヒストグラムは、媒質中を電気泳動する各エキソソームについて、その移動の軌跡を検出することによって生成する。このヒストグラムの精度を向上させるためには、媒質中のエキソソームの軌跡を正確に検出することが求められる。以下、媒質中のエキソソームの軌跡を正確に検出するための仕組みについて説明する。
【0019】
図1に戻り、観察装置1は、微粒子分析装置2と、撮像部10と、照射部20と、暗視野光学系30とを備えている。
照射部20は、電気泳動装置40の流路44c内の媒質に向けて照明光を照射する。流路44c内の媒質中に浮遊する微粒子に、この照明光が照射されると、散乱光が生じる。
ここで、微粒子の一例には、上述したエキソソーム(エクソソーム)がある。以下の説明において、観察装置1は、エキソソームを観察する場合について記載するが、観察装置1は、エキソソーム以外の微粒子についても観察可能である。
【0020】
暗視野光学系30は、対物レンズ31と、ダイクロイックミラー32とを備えている。
対物レンズ31は、照射部20が照射する照明光が直接入射しない位置に配置される。また、対物レンズ31には、照明光がエキソソームに照射された際に生じる散乱光が入射する。ダイクロイックミラー32は、光波長に応じて反射・透過特性が異なる反射透過部材である。ダイクロイックミラー32は、対物レンズ31と、撮像部10との間の光路に配置されており、対物レンズ31から入射する光の少なくとも一部を撮像部10の方向へ反射する。
暗視野光学系30は、対物レンズ31と、ダイクロイックミラー32とを備えることにより、流路44c内の観察領域DOFを、撮像部10によって暗視野観察することを可能にする。
【0021】
撮像部10は、EMCCD(Electron Multiplying Charge Coupled Device)カメラを備えており、入射する光の画像を撮像する。撮像部10は、動画撮影が可能である。
一例として、撮像部10は、100[フレーム/秒]で画像を撮像する。撮像部10は、撮像した画像を微粒子分析装置2に出力する。なお、撮像部10はEMCCDカメラ以外にも、CMOSやNMOSなどの撮像素子を備えていてもよい。
【0022】
微粒子分析装置2は、撮像部10が撮像した画像に基づいて、エキソソームの移動の軌跡を検出する。微粒子分析装置2の機能構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態の微粒子分析装置2の機能構成の一例を示す構成図である。
【0023】
微粒子分析装置2は、演算部200と、記憶部206とを備えている。記憶部206は、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、レジスタなどの記憶装置を備えている。記憶部206には、演算部200が実行するプログラム(ファームウェア)が予め格納される。
また、記憶部206には、演算部200が演算処理を行った演算結果が格納される。
【0024】
演算部200は、CPU(Central Processing Unit)を備えており、各種の演算を行う。演算部200は、その機能部として、取得部201と、抽出部202と、速度算出部203と、推定部204と、判定部205とを備えている。
【0025】
取得部201は、撮像部10が撮像した画像を取得する。上述したように撮像部10は、媒質中を移動するエキソソームの動画を撮像する。すなわち、取得部201は、媒質中を所定方向に移動する微粒子が異なる時刻においてそれぞれ撮像された複数の画像を、取得する。取得部201は、取得した画像を抽出部202に出力する。
【0026】
抽出部202は、撮像部10が撮像した画像のなかから、エキソソームの画像を抽出する。例えば、抽出部202は、取得部201から供給される画像のうち、1フレーム分の画像を選択し、選択した画像に対して既知のフィルタ処理やパターンマッチング処理を施すことにより、エキソソームの画像を抽出する。このとき、抽出部202は、抽出したエキソソームの画像に対して、エキソソームの粒子ごとに粒子番号を付与する。つまり、抽出部202は、エキソソームの粒子に対してラベリングを行う。ここで、流路44cの媒質中にエキソソームが存在するにもかかわらず、撮像部10がこのエキソソームの画像を撮像できない場合がある。
【0027】
図5は、本実施形態の観察装置1による観察領域DOFの一例を示す模式図である。
図5(a)は、エキソソームが、流路44c内の観察領域DOFの位置Pにある場合について示している。
図5(a)に示すように、撮像部10は、流路44c内の観察領域DOFを通過する微粒子の画像を撮像する。このエキソソームは、流路44c内を電気泳動によってX方向に進行する。照射部20は、観察領域DOFを含む範囲に光を照射する。照射部20が照射した光がエキソソームにあたると、散乱光が生じる。撮像部10は、観察領域DOF内の位置Pにあるエキソソームから生じる散乱光の画像を撮像する。
【0028】
ここで、エキソソームは媒質中に浮遊しており、ブラウン運動により移動する。このため、エキソソームが観察領域DOFの外に移動することがある。
図5(b)は、エキソソームが、ブラウン運動によって−Z方向の位置P’に移動した場合について示している。
図5(b)に示すように、エキソソームが観察領域DOFの外に移動すると、エキソソームが存在するにもかかわらず、撮像部10は、このエキソソームの画像を撮像できない。
また、いったん観察領域DOFの外に移動したエキソソームが、ブラウン運動によって再び観察領域DOF内に移動することがある。この場合には、撮像部10は、このエキソソームの画像を撮像できる。このエキソソームの画像を時系列に並べた一例について、
図6を参照して説明する。
【0029】
図6は、時系列に並べたエキソソームの画像の一例を示す模式図である。
図6を参照して、エキソソームP1およびエキソソームP2の2つのエキソソームの移動の軌跡について説明する。上述したように、撮像部10は、所定の時間間隔で画像を撮像する。この一例では、撮像部10は、100[フレーム/秒]の頻度で、時刻t0から時刻t50の各時刻において1フレームの画像を撮像する。すなわち、撮像部10は、51フレームの画像を、0.5秒間で撮像する。
【0030】
図6において、例えば、時刻t0におけるエキソソームP1の位置を、位置P1(t0)と表す。また、例えば、時刻t48におけるエキソソームP2の位置を、位置P2(t48)と表す。
図6に示すように、各エキソソームは、電気泳動によって、時間の経過とともに、X方向に移動する。一例として、エキソソームP1は、時間の経過とともに、位置P1(t0)、位置P1(t1)…とX方向に移動する。また、エキソソームP2は、時間の経過とともに、位置P2(t0)、位置P2(t1)…とX方向に移動する。
この一例では、エキソソームP1は、時刻t0から時刻t1までの間、観察領域DOF内にある。また、エキソソームP1は、時刻t2から時刻t47までの間、観察領域DOFの外にあり、時刻t48において、再び観察領域DOF内に戻る。また、エキソソームP2は、時刻t0から時刻t48までの間、観察領域DOF内にある。
この一例の場合、撮像部10が時刻t0および時刻t1において撮像した画像には、エキソソームP1と、エキソソームP2とが写る。また、撮像部10が時刻t2から時刻t47までの間に撮像した画像には、エキソソームP2が写るが、エキソソームP1は写らない。また、撮像部10が時刻t48において撮像した画像には、エキソソームP1と、エキソソームP2とが写る。
【0031】
抽出部202は、撮像部10が各時刻において撮像した画像から、エキソソームの画像を抽出し、抽出したエキソソームの画像に基づいて、エキソソームの座標と、エキソソームの画像の明るさおよび面積を算出する。また、抽出部202は、算出したエキソソームの座標と、エキソソームの画像の明るさおよび面積を記憶部206に書き込む。
ここで、時刻t0において撮像された画像に対する、抽出部202の処理について説明する。
図6に示す例においては、抽出部202は、時刻t0において撮像された画像から、2つのエキソソームの画像を抽出する。抽出部202は、抽出した、2つのエキソソームの画像のうち、1つの画像について、エキソソームP1とラベリングし、もう1つの画像について、エキソソームP2とラベリングする。また、抽出部202は、ラベリングしたエキソソームP1について、その位置P1(t0)の座標(x1、y1)、明るさl1、面積s1をそれぞれ算出する。抽出部202は、エキソソームP1について、算出した座標(x1、y1)、明るさl1、面積s1を、記憶部206が記憶する粒子リストに書き込む。記憶部206が記憶する粒子リストの一例について、
図7を参照して説明する。
【0032】
図7は、本実施形態の記憶部206が記憶する粒子リストの一例を示す図である。この粒子リストは、行方向をラベリングされた微粒子番号とし、列方向を撮像時刻として、各時刻における各微粒子の画像の、座標(X、Y)、明るさL、面積Sが記憶される。一例として、抽出部202は、算出した座標(x1、y1)、明るさl1、面積s1を、粒子リストのエキソソームP1の行の、時刻t0の列に書き込む。抽出部202は、エキソソームP2についても、エキソソームP1と同様にして、各時刻における座標(X、Y)、明るさL、面積Sを算出して、粒子リストに書き込む。
【0033】
図6に戻り、時刻t1において撮像された画像に対する、抽出部202の処理について説明する。抽出部202は、時刻t1において撮像された画像から、2つのエキソソームの画像を抽出する。抽出部202は、抽出した、2つのエキソソームの画像のうち、1つの画像について、時刻t0において撮像された各エキソソームの画像と連続性を有しているか否かを判定する。例えば、抽出部202は、異なる2つの時刻において撮像された画像が連続性を有しているか否かを、次のようにして判定する。
【0034】
抽出部202は、時刻t1において撮像されたエキソソームの座標と、時刻t0において撮像された各エキソソームの座標とを比較する。ここで、エキソソームは、電気泳動によってX方向に移動するため、X方向に比較的大きな変位が発生する。また、エキソソームは、X方向の変位に比べて、Y方向の変位は少ない。そこで、抽出部202は、時刻t0において撮像された各エキソソームのY座標のうち、時刻t2において撮像されたエキソソームのY座標(y1)に近いY座標を有するエキソソームについて、連続性を有していると判定する。例えば、抽出部202は、時刻t1において撮像されたエキソソームのY座標(y1)と、時刻t0において撮像されたエキソソームP1のY座標(y1)とを比較する。また、抽出部202は、時刻t1において撮像されたエキソソームのY座標(y1)と、時刻t0において撮像されたエキソソームP2のY座標(y2)とを比較する。この例においては、時刻t1において撮像されたエキソソームのY座標(y1)は、エキソソームP2のY座標(y2)よりもエキソソームP1のY座標(y1)に近い。そこで、抽出部202は、時刻t2において撮像された、このエキソソームの画像は、時刻t0において撮像されたエキソソームP1の画像と連続性を有すると判定する。
この場合、抽出部202は、時刻t1において撮像された、このエキソソームの画像を、エキソソームP1とラベリングする。また、抽出部202は、時刻t1におけるエキソソームP1の座標(x1’、y1)、明るさl1、面積s1を、粒子リストのエキソソームP1の行の、時刻t1の列に書き込む。
また、抽出部202は、時刻t1において撮像された、もう1つのエキソソームについても、同様にして直前フレームとの連続性を判定して、ラベリングする。
【0035】
ここで、時刻t48において撮像された画像に対する、抽出部202の処理について説明する。抽出部202は、時刻t48において撮像された画像から、2つのエキソソームの画像を抽出する。抽出部202は、抽出した、2つのエキソソームの画像うち、1つの画像について、直前の時刻t47において撮像されたエキソソームの画像と連続性を有しているか否かを判定する。上述したように、時刻t47においては、撮像部10が撮像した画像に、エキソソームP1が写っていない。つまり、時刻t47においては、撮像部10が撮像した画像に、時刻t48においてエキソソームP1とラベリングできるエキソソームが写っていない。抽出部202は、時刻t48において撮像されたいずれのエキソソームについても、エキソソームP1とラベリングしない。抽出部202は、エキソソームP1とラベリングしなかったエキソソームを、新たなエキソソームとしてラベリングする。この一例においては、抽出部202は、エキソソームP100とラベリングする。
【0036】
なお、この一例では、抽出部202は、エキソソームのY座標を比較することよって画像の連続性を判定しているが、エキソソームの画像の明るさ、または面積を比較することによってエキソソームの画像を抽出して、画像の連続性を判定してもよい。また、抽出部202は、これらのY座標、明るさ、および面積のうち少なくとも2つを組み合わせて比較することによってエキソソームの画像を抽出して、画像の連続性を判定してもよい。すなわち、抽出部202は、エキソソームの粒径に基づいて、エキソソームの画像を抽出して、画像の連続性を判定してもよい。
【0037】
ここまで、2フレームの画像間において、エキソソームの画像をラベリングする処理について説明した。次に、異なる微粒子番号を付与したエキソソームの画像が、同一のエキソソームを示す画像であるか否かを判定する処理について説明する。このとき、同一のエキソソームを示す画像であることを判定するとは、ある時刻において微粒子番号1を付与されたエキソソームが、別の時刻において微粒子番号2を付与された場合に、微粒子番号2を付与されたエキソソームの微粒子番号を微粒子番号1に付け替えることである。例えば、異なる微粒子番号を付与されたエキソソームを再びラベリングして、同じ微粒子番号を付与する。一例として、上述したエキソソームP100が、エキソソームP1と同一のエキソソームであるか否かを判定する場合について説明する。
【0038】
速度算出部203は、抽出部202が算出したエキソソームの座標と、撮像時間差とに基づいて、エキソソームの移動速度を算出する。上述したように、抽出部202は、エキソソームP1について、時刻t0における座標(x1、y1)と、時刻t1における座標(x1’、y1)を算出する。また、上述したように、撮像部10は、100[フレーム/秒]の頻度で、時刻t0から時刻t50の各時刻において1フレームの画像を撮像する。したがって、この一例においては、時刻t0から時刻t1までの時間、つまり、隣接するフレーム間の時間は、0.01秒である。速度算出部203は、エキソソームP1について、抽出部202が算出した、時刻t0におけるX座標(x1)と、時刻t1におけるX座標(x1’)とを取得する。また、速度算出部203は、エキソソームP1について、取得したX座標の差P1ΔXを算出し、算出したX座標の差P1ΔXを、フレーム間の時間で除することにより、エキソソームP1の移動速度v1を算出する。このようにして速度算出部203は、複数の画像からエキソソームP1が所定方向に移動する移動速度を算出する。
【0039】
推定部204は、速度算出部203が算出したエキソソームの移動速度に基づいて、ある時間が経過した後のエキソソームの座標を推定する。ここで、時刻t0におけるエキソソームP1のX座標(x1)と、エキソソームP1の移動速度v1とが既知である場合、時刻t0からある時間T1が経過した場合のエキソソームP1のX座標(xT1)は、次の式(1)によって求めることができる。
【0041】
推定部204は、抽出部202が算出した時刻t0におけるエキソソームP1のX座標(x1)と、時刻t48におけるエキソソームP100のX座標(x100)とを取得する。また、推定部204は、速度算出部203が算出した、エキソソームP1の移動速度v1を取得する。ここで、時間T1は、時刻t0から、時刻t48までの時間である。この一例においては、時間T1は、0.48秒である。推定部204は、取得したこれらのパラメータを上述の式(1)に代入して、時刻t48におけるエキソソームP1のX座標(xT1)を算出する。このようにして、推定部204は、エキソソームP1の時刻t0における座標と、エキソソームP1がX方向に移動する移動速度v1とに基づいて、時刻t48におけるエキソソームP1の座標を推定する。
【0042】
判定部205は、推定部204が推定したエキソソームの座標に基づいて、2つの時刻において撮像されたエキソソームが同一のエキソソームであるか否かを判定する。例えば、判定部205は、抽出部202が算出した時刻t48におけるエキソソームP100のX座標(x100)と、推定部204が推定した時刻t48におけるエキソソームP1のX座標(xT1)とを取得する。また、判定部205は、取得したエキソソームP100のX座標(x100)と、エキソソームP1のX座標(xT1)とを比較する。ここで、判定部205は、エキソソームP100のX座標(x100)と、エキソソームP1のX座標(xT1)との差が所定のしきい値以下であれば、エキソソームP100と、エキソソームP1とが同一のエキソソームであると仮判定する。
【0043】
さらに、判定部205は、エキソソームP100と、エキソソームP1とが同一のエキソソームであると仮判定した場合には、これらのエキソソームのY座標の差に基づいて、確定判定の処理を行う。例えば、判定部205は、抽出部202がそれぞれ算出した時刻t0におけるエキソソームP1のY座標(y1)と、時刻t48におけるエキソソームP100のY座標(y100)とを取得する。
【0044】
上述したように、エキソソームは媒質中に浮遊しており、ブラウン運動により様々な方向に移動する。このため、エキソソームは、電気泳動によってX方向に移動するだけでなく、ブラウン運動によりY方向に移動することがある。判定部205は、エキソソームがブラウン運動によりY方向に移動する移動量の許容値BMに基づいて、時刻t0におけるエキソソームP1と、時刻t48におけるエキソソームP100とが同一のエキソソームであるか否かを確定判定する。例えば、判定部205は、取得した時刻t0におけるエキソソームP1のY座標(y1)と、時刻t48におけるエキソソームP100のY座標(y100)との差Δyを算出する。また、判定部205は、算出したY座標の差Δyと、許容値BMとを比較し、Y座標の差Δyが許容値BM以下であれば、時刻t0におけるエキソソームP1と、時刻t48におけるエキソソームP100とが同一のエキソソームであると確定判定する。すなわち、判定部205は、ブラウン運動によるエキソソームの移動量の成分のうち、少なくとも電気泳動による移動方向であるX方向と直交するY方向の成分に基づいて、同一のエキソソームであるか否かを確定判定する。
【0045】
判定部205は、取得部201が取得した複数の画像のうち、時刻t0において撮像されたエキソソームP1と、時刻t48において撮像されたエキソソームP100とが、同一のエキソソームであるか否かを、媒質中のブラウン運動によるエキソソームの移動量に基づいて判定する。
【0046】
なお、判定部205は、ブラウン運動によるエキソソームのY方向の移動量に基づいて、2つの時刻のエキソソームの画像が、同一のエキソソームを示すものであるか否かを判定するとして説明したが、これに限られない。判定部205は、電気泳動方向であるX方向について、ブラウン運動による移動量に基づいて、2つの時刻のエキソソームの画像が、同一のエキソソームを示すものであるか否かを判定してもよい。すなわち、判定部205は、エキソソームがX方向にブラウン運動を行う場合に、このX方向のブラウン運動によるエキソソームの変位の許容値に基づいて、2つの時刻のエキソソームの画像が、同一のエキソソームを示すものであるか否かを判定してもよい。また、判定部205は、X方向およびY方向についてのブラウン運動による移動量を組み合わせて、2つの時刻のエキソソームの画像が、同一のエキソソームを示すものであるか否かを判定してもよい。
【0047】
次に、
図8を参照して、微粒子分析装置2の動作について説明する。
図8は、本実施形態の微粒子分析装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
【0048】
抽出部202は、粒子リストを作成する(ステップS10)。例えば、抽出部202は、撮像部10が各時刻において撮像した画像から、エキソソームの画像を抽出し、抽出したエキソソームの画像に基づいて、エキソソームの座標と、エキソソームの画像の明るさおよび面積を算出する。また、抽出部202は、算出したエキソソームの座標と、エキソソームの画像の明るさおよび面積を記憶部206の粒子リストに書き込む。
【0049】
次に、速度算出部203は、抽出部202が算出したエキソソームの座標と、撮像時間差とに基づいて、エキソソームの移動速度を算出する(ステップS20)。
【0050】
次に、抽出部202は、記憶部206の粒子リストに記憶されている各座標値について、電気泳動方向(この一例においてはX方向)に揃えるための座標変換を行って、座標を再作成する(ステップS30)。これにより、電気泳動方向と、撮像部10の撮像方向とが一致しておらず、エキソソームがX方向以外の方向に移動しているように撮像された場合においても、微粒子分析装置2は、エキソソームを正確にトラッキングすることができる。
【0051】
次に、抽出部202が抽出したすべてのエキソソームについて、ステップS40からステップS70までの処理を繰り返し適用する。
まず、判定部205は、撮像間隔を取得する。また、判定部205は、着目しているエキソソームについて、第1の時刻における座標、第2の時刻における座標、移動速度を取得する(ステップS40)。
【0052】
次に、判定部205は、着目しているエキソソームについて、第1の時刻におけるX座標と、第2の時刻におけるX座標との差が所定のしきい値以下であれば、これら2つの時刻におけるエキソソームが同一のエキソソームであると仮判定する。次に、判定部205は、同一のエキソソームであると仮判定した2つのエキソソームについて、Y座標の差が所定のしきい値以下であれば、これら2つのエキソソームが同一のエキソソームであると確定判定する。ここで、判定部205は、算出したY座標の差が、ブラウン運動による許容値BM以下である場合(ステップS50;YES)には、処理をステップS60に進める。一方、判定部205は、算出したY座標の差が、ブラウン運動による許容値BMを超える場合(ステップS50;NO)には、処理をステップS70に進める。
【0053】
次に、ステップS60において、判定部205は、2つのエキソソームを同一のエキソソームとしてラベリングする。一方、判定部205は、ステップS70において、2つのエキソソームを異なるエキソソームとしてラベリングする。
【0054】
判定部205は、抽出部202が抽出したすべてのエキソソームについて、ステップS40からステップS70までの処理を繰り返し適用した後、処理を終了する。
【0055】
以上説明したように、微粒子分析装置2は、判定部205を備えることにより、エキソソームが撮像できない期間がある場合に、別々の時刻において撮像されたエキソソームが同一のエキソソームであるか否かを判定することができる。したがって、微粒子分析装置2は、1つのエキソソームが、画像処理において別々のエキソソームとして判定されてしまうことにより、エキソソーム数を誤って計測してしまうことを抑止することができる。すなわち、微粒子分析装置2によれば、微粒子の計測誤差を低減することができる。
【0056】
また、微粒子分析装置2は、微粒子に対して、所定方向に微粒子を移動させる力を加えている。例えば、微粒子分析装置2は、微粒子に対して、上述したX方向に微粒子を移動させる電界を加えている。これにより、微粒子は、電界による移動量と、ブラウン運動による移動量とによって定まる軌跡を移動する。微粒子分析装置2は、ブラウン運動による移動量を考慮して微粒子の位置を推定することにより、微粒子の移動の軌跡を推定することができる。このとき、ブラウン運動による移動量が、電界による移動量に比べて小さい場合には、微粒子分析装置2は、微粒子の位置をより正確に推定することができる。
すなわち、ブラウン運動による移動量が、電界による移動量に比べて小さい場合、微粒子分析装置2は、微粒子の計測誤差をさらに低減することができる。
【0057】
[第2の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、上述した第1の実施形態と同様である構成及び動作については、同一の符号を付して、説明を簡略化あるいは省略する。本実施形態の観察装置1aは、照射部20が輪帯50を介して流路44cに光を照射する点において、第1の実施形態と異なる。
【0058】
図9は、本発明の第2の実施形態の観察装置1aの構成の一例を示す模式図である。観察装置1aは、輪帯50を備えている。照射部20は、輪帯50を介して流路44cに光を照射する。輪帯50の構成について
図10を参照して説明する。
【0059】
図10は、本実施形態の輪帯50の構成の一例を示す模式図である。輪帯50は、直径R1の内側遮蔽部と、直径R3の外側遮蔽部とを有し、内側遮蔽部と外側遮蔽部との間に透過部を有している。この透過部は、直径R1から直径R2の範囲に設けられている。輪帯50は、この透過部の内輪の直径R1と、外輪の直径R2との比(輪帯比)が変化することによって、透過光による照明特性が変化する。輪帯比は、直径R1/直径R2によって求められる。本実施形態において、輪帯50は、輪帯比0.8〜0.85にできる。この数値は一例であり、輪帯比はこれに限定されない。
【0060】
図11は、本実施形態の観察装置1aによる微粒子の観察結果の一例を示す模式図である。観察装置1aは、輪帯50を介して流路44cを照明する。このため、観察装置1aによれば、例えば、レーザ光を直接流路44cに照射する場合に比べて、流路44cに光が当たった場合の散乱光を低減することができる。また、輪帯50の輪帯比を上述した範囲に設定することにより、流路44cによる散乱光を低減しつつ、撮像部10が撮像する画像のコントラストを向上させることができる。したがって、観察装置1aによれば、
図11に示すように粒子PA1〜PA8を高コントラストに撮像することができるため、微粒子の計測誤差を低減することができる。
【0061】
なお、観察装置1aは、
図12に示すように構成してもよい。
図12は、観察装置1aの暗視野光学系の変形例を示す模式図である。
図12に示すように、この変形例による暗視野光学系30は、レンズ33を備えている。レンズ33は、照射部20から輪帯50を介して入射する光を、流路44c内の観察領域DOFの位置に集光する。流路44cに微粒子Paが存在する場合に、レンズ33によって集光された光が、微粒子Paにあたると、散乱光が発生する。対物レンズ31は、レンズ33によって集光された光が直接入射しない位置であり、かつ、この散乱光が入射する位置に配置されている。このように構成しても、観察装置1aは、流路44c内の微粒子を暗視野観察することができる。
【0062】
なお、上述した各実施形態における観察装置1(または、観察装置1a。以下の説明において同じ。)において、電気泳動によって微粒子を所定方向に移動させる場合について説明したが、これに限られない。例えば、観察装置1は、媒質に流速を与えることによって、微粒子を所定方向に移動させてもよい。また、観察装置1は、微粒子を所定方向に移動させる力を与えない構成であってもよい。
【0063】
なお、上述した各実施形態における観察装置1の一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、観察装置1に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上述した実施形態における観察装置1の各機能ブロックの一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。観察装置1の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。
また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、その技術による集積回路を用いてもよい。
【0064】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。また、上述した各実施形態および変形例に示す構成を適宜組み合わせてもよい。