(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態における触覚提示装置100について、
図1、
図2を用いて説明する。触覚提示装置100は、例えば、車両に搭載されて、所定の空間に映し出される空中映像に対して、操作者の操作体によって空中操作が行われる際に、操作体に触覚を提示する装置となっている。操作体は、ここでは、例えば、操作者の手の指(生体)となっている。触覚提示装置100は、
図1に示すように、空中映像表示器110、超音波素子群120、回路部125、操作検出素子130、および制御部140等を備えている。本実施形態の触覚提示装置100は、空中映像表示器110に対する超音波素子群120の配置に特徴を持たせたものであり、空中映像表示器110と超音波素子群120とが、本実施形態の触覚提示装置100の主たる構成となっている。
【0015】
空中映像表示器110は、操作者の視差を利用して、表示面111から離れた空間に空中映像A1、A2、A3を表示する、いわゆる3次元映像表示器となっている。空中映像表示器110は、制御部140によって制御されて、空中映像A1、A2、A3を形成するようになっている。空中映像表示器110は、例えば、厚み方向が扁平に形成されて、表示面111が四角形を成す表示器となっている。空中映像表示器110は、例えば、支持部110aの上側に水平に保持されて、表示面111が上側を向くように配置されている。
【0016】
空中映像A1、A2、A3は、複数(例えば3つ)の映像となっており、表示面111と対向する空間(表示面111の上側の空間)に形成されるようになっている。空中映像A1、A2、A3は、例えば、車両に搭載される所定機器200の作動条件を決定するための入力用のメニュー項目、あるいはスイッチ項目等に対応する映像となっている。例えば、所定機器200をカーナビゲーション装置としたときに、空中映像A1、A2、A3は、地図の拡大、縮小、および目的地案内設定等のための入力項目画像に対応している。
【0017】
超音波素子群120は、本発明の音波素子群に対応するものであり、空中映像A1、A2、A3に向けて音波を発振して、空中映像A1、A2、A3の位置に運ばれた操作者の指に触感を提示するものとなっている。ここでは、音波としては超音波を用いたものとなっており、超音波素子群120は、支持部120aの上面に複数の超音波素子121が設けられて形成された、いわゆる超音波素子アレイとなっている。
【0018】
本実施形態では、超音波素子群120は、2つ設けられており、空中映像表示器110の表示面111の周囲の所定領域に配置されている。所定領域は、ここでは、
図2に示すように、例えば、四角形の表示面111の互いに対向する2辺に沿う領域となっている。
【0019】
超音波素子群120における複数の超音波素子121は、超音波を発振可能とする素子となっている。複数の超音波素子121は、支持部120aの上面で互いに直交する2軸方向(例えばx軸方向、およびy軸方向)に等間隔で並び、全体では、格子状を成すように整列配置されている。各超音波素子121については、それぞれ、支持部120a上における2軸方向の座標位置(x、y)が予め設定されている。
【0020】
複数の超音波素子121は、ここでは、すべて同一仕様のものが使用されている。各超音波素子121は、電圧印加に伴い振動して超音波を発振するようになっている。複数の超音波素子121は、発振する際の超音波の周波数を所定周波数に設定する共振器を有しており、各超音波素子121から発振される超音波の周波数は、この共振器によって、すべての超音波素子121において同一の周波数f1となるように設定されている。
【0021】
そして、複数の超音波素子121は、回路部125によって、個々に駆動制御されて(駆動タイミングが調節されて)、超音波を発振することで、空中映像A1、A2、A3の位置に重なる触覚提示位置P1、P2、P3に、超音波を集中させて、音圧が増大する音圧増大部を形成するようになっている。
【0022】
複数の超音波素子121は、例えば、予め第1〜第3グループの超音波素子121に区分されている。第1グループの超音波素子121は、触覚提示位置P1における音圧増大部を形成する素子となっている。また、第2グループの超音波素子121は、触覚提示位置P2における音圧増大部を形成する素子となっている。更に、第3グループの超音波素子121は、触覚提示位置P3における音圧増大部を形成する素子となっている。
【0023】
回路部125は、複数の超音波素子121の作動を制御する回路となっている。回路部125は、複数の超音波素子121の一つずつに接続されており、制御部140の指令に基づいて、個々の超音波素子121の駆動タイミングを調節することで、各触覚提示位置P1、P2、P3に音圧増大部をそれぞれ形成させるようになっている。各超音波素子121と触覚提示位置P1、P2、P3との距離が異なるため、回路部125は、この距離を考慮して、時間差をもって個々の超音波素子121から超音波を発振させることで、これら超音波が触覚提示位置P1、P2、P3にそれぞれ集中するように制御する。
【0024】
操作検出素子130は、制御部140と共に操作者の指の位置を検出する素子であり、例えば、カメラ(CCDカメラ)が用いられている。操作検出素子130は、例えば、2つの超音波素子群120のうち、一方の超音波素子群120に隣接するように配置されて、表示面111と対向する側の空間中を移動する指の画像を撮影するようになっている。操作検出素子130にて撮影された指の画像が、制御部140によって解析されて、空中映像A1、A2、A3に対する指の3次元位置が検知されるようになっている。
【0025】
制御部140は、空中映像表示器110による空中映像A1、A2、A3の形成、各超音波素子121による音圧増大部の形成、および操作検出素子130による指の位置に基づく所定機器200への入力指示を行うようになっている(詳細後述)。
【0026】
本実施形態の触覚提示装置100は、上記のように構成されており、以下、作動および作用効果について説明する。
【0027】
触覚提示装置100が作動されると、制御部140は、空中映像表示器110によって、表示面111から離れた空間に空中映像A1、A2、A3を形成する。また、制御部140は、回路部125に指令を出して、各超音波素子121によって、触覚提示位置P1、P2、P3に音圧増大部を形成させる。触覚提示装置100が作動されている間は、空中映像A1、A2、A3、および触覚提示位置P1、P2、P3における音圧増大部の形成は継続される。
【0028】
また、制御部140は、操作検出素子130によって、操作者の指の3次元位置を監視(検出)し、指先の3次元位置が、空中映像A1、A2、A3のいずれかの位置に運ばれたか否かを判定する。
【0029】
そして、指先の3次元位置が、空中映像A1、A2、A3のいずれかの位置に運ばれた(タッチ操作された)ときに、制御部140は、その操作された空中映像(A1、A2、A3)に対応する入力項目が、所定機器200に対して入力されるように指示する。つまり、操作された空中映像に基づいて、所定機器200への入力設定が行われることになる。
【0030】
このとき、空中映像A1、A2、A3の位置に重なる触覚提示位置P1、P2、P3には、超音波素子121による音圧増大部が形成されているので、操作者は、指先に音圧を感じ、あたかも空中映像A1、A2、A3を触って操作しているかのような触覚を得ることができる。
【0031】
ここで、本実施形態では、超音波素子群120は、空中映像表示器110の表示面111の周囲の2カ所の部分領域(所定領域)に配置されている。よって、表示面111側の空間に超音波素子群120が配置されることが無く、空中映像表示器110の表示面111側の空間を、操作のための自由な空間として活用することができる。
【0032】
尚、超音波素子群120は、2カ所の設定に限らず、3カ所以上の設定としてもよい。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態の触覚提示装置100Aを
図3に示す。第2実施形態の触覚提示装置100Aは、上記第1実施形態の触覚提示装置100に対して、超音波素子群120の配置を変更したものである。
【0034】
複数の超音波素子121を支持する支持部120bは、断面が四角形の筒状を成している。空中映像表示器110は、筒状の支持部120bの軸線方向の一方の端部面側で、筒状の中心側の空間領域に設けられている。そして、複数の超音波素子121は、筒状の支持部120bの軸線方向の一方の端部面上の全体にわたって設けられている。
【0035】
つまり、超音波素子群120は、空中映像表示器110の表示面111の周囲の全体にわたる全体領域に配置されている。そして、全体領域は、四角形を描く領域となっている。
【0036】
これにより、
図3に示すように、平面視において、空中映像A1、A2、A3を取り囲むように複数の超音波素子121が配置されている。よって、上記第1実施形態に対して、空中映像A1、A2、A3に重なる触覚提示位置P1、P2、P3に、音圧増大部を容易に形成することができると共に、音圧増大部の強度設定を容易に行うことができる。
【0037】
(第3実施形態)
第3実施形態の触覚提示装置100Bを
図4に示す。第3実施形態の触覚提示装置100Bは、上記第1実施形態の触覚提示装置100に対して、超音波素子群120の配置を変更したものである。
【0038】
複数の超音波素子121を支持する支持部120cは、断面が円形の筒状を成している。空中映像表示器110は、筒状の支持部120cの軸線方向の一方の端部面側で、筒状の中心側の空間領域に設けられている。そして、複数の超音波素子121は、筒状の支持部120cの軸線方向の一方の端部面上の全体にわたって設けられている。
【0039】
つまり、超音波素子群120は、空中映像表示器110の表示面111の周囲の全体にわたる全体領域に配置されている。そして、全体領域は、円形を描く領域となっている。
【0040】
これにより、
図4に示すように、平面視において、空中映像A1、A2、A3を円形状に取り囲むように複数の超音波素子121が配置されている。よって、上記第1実施形態に対して、空中映像A1、A2、A3に重なる触覚提示位置P1、P2、P3に、音圧増大部を容易に形成することができると共に、音圧増大部の強度設定を容易に行うことができる。
【0041】
また、上記第2実施形態に対して、触覚提示位置P1、P2、P3に対する各超音波素子121からの距離を短くすることができるので、超音波素子群120から発振される超音波を触覚提示位置P1、P2、P3に集中させやすくなり、音圧増大部の音圧設定がより容易となる。
【0042】
また、上記第2実施形態に対して、平面視上、四角形の支持部120bの角部に相当する領域を削除したような形状にすることができるので、その分の小型化が可能となる。
【0043】
(第4実施形態)
第4実施形態の触覚提示装置100Cを
図5に示す。第4実施形態の触覚提示装置100Cは、上記第1実施形態の触覚提示装置100に対して、超音波素子群120の向きを変更したものである。
【0044】
支持部120aの超音波素子121が設けられる端部側は、表示面111から空中映像A1、A2、A3が表示される方向(
図5中の一点鎖線)に対して、空中映像A1、A2、A3の方向を向くように所定の角度θをもって傾斜されている。つまり、超音波素子群120は、空中映像A1、A2、A3側を向くように傾斜されている。
【0045】
これにより、触覚提示位置P1、P2、P3に対する各超音波素子121からの距離を短くすることができるので、超音波素子群120から発振される超音波を触覚提示位置P1、P2、P3に集中させやすくなり、音圧増大部の音圧設定がより容易となる。
【0046】
(第5実施形態)
第5実施形態の触覚提示装置100Dを
図6に示す。第5実施形態の触覚提示装置100Dは、上記第1実施形態の触覚提示装置100に対して、超音波素子群120の配置を変更すると共に、超音波反射板150を追加したものである。
【0047】
超音波素子群120は、空中映像表示器110に対して、空中映像A1、A2、A3が形成される側とは反対側に配置されている。そして、超音波素子群120は、表示面111から空中映像A1、A2、A3が表示される方向に対して、傾斜するように配置されている。
【0048】
超音波反射板150は、超音波素子群120から発振される超音波を空中映像A1、A2、A3に向けて反射させる反射部であり、傾斜された超音波素子群120が向く方向に配置されている。超音波反射板150は、例えば、金属材や硬質な樹脂材等から形成されえいる。超音波反射板150の板面は、表示面111から空中映像A1、A2、A3が形成される方向に沿うように配置され、また、超音波反射板150の一端側は、空中映像表示器110の位置に対応するように配置されている。そして、超音波反射板150の一端側と、空中映像表示器110との間には空間部が設けられて、この空間部が、超音波導出孔151となっている。
【0049】
超音波反射板150は、例えば、
図6に示すように、筒状に形成されて、超音波素子群120を囲うように設けられている。この場合であると、筒状の周面の一部の領域が反射部、つまり、超音波反射板150として機能するようになっている。尚、超音波反射板150は、上記筒状のものに対して、反射に必要とされる領域だけを用いた、円弧状の板としてもよい。
【0050】
本実施形態では、超音波素子群120から発振される超音波は、超音波反射板150で反射して、超音波導出孔151から空中映像A1、A2、A3の位置に重なる触覚提示位置P1、P2、P3で、音圧増大部を形成するようになっている。
【0051】
これにより、上記第1実施形態と同様に、超音波素子群120は、空中映像表示器110に対して、空中映像A1、A2、A3が形成される側とは反対側に配置されている。よって、空中映像表示器110の表示面111側の空間に超音波素子群120が配置されることが無く、空中映像表示器110の表示面111側の空間を、操作のための自由な空間として活用することができる。
【0052】
(第6実施形態)
第6実施形態の触覚提示装置100Eを
図7に示す。第6実施形態の触覚提示装置100Eは、上記第5実施形態の触覚提示装置100Dに対して、複数の超音波素子群120A、120Bの傾斜方向が異なるものとして、それぞれの超音波素子群120A、120Bに対応する複数の超音波反射板150a、150bを設けたものである。
【0053】
複数の超音波素子群120A、120Bは、上記第5実施形態に対して、例えば、傾斜の方向が互いに反対側を向くように設定されている。
【0054】
また、超音波反射板としては、超音波素子群120Aに対応する超音波反射板150aと、超音波素子群120Bに対応する超音波反射板150bとが設けられている。超音波反射板150a、150bは、例えば、筒状に一体的に形成されて、空中映像表示器110、および超音波素子群120A、120Bを囲うように設けられている。超音波反射板150aと、空中映像表示器110との間には、超音波導出孔151aが形成され、また、超音波反射板150bと、空中映像表示器110との間には、超音波導出孔151bが形成されている。よって、超音波導出孔151a、151bは、空中映像表示器110の表示面111の周囲に配置されたものとなっている。
【0055】
本実施形態では、超音波素子群120Aから発振される超音波は、超音波反射板150aで反射し、超音波導出孔151aを通り、空中映像A1、A2、A3に向かう。また、超音波素子群120Bから発振される超音波は、超音波反射板150bで反射し、超音波導出孔151bを通り、空中映像A1、A2、A3に向かう。このように、超音波は、表示面111の周囲から空中映像A1、A2、A3の位置に重なる触覚提示位置P1、P2、P3に至り、音圧増大部を形成するようになっている。
【0056】
これにより、複数の超音波素子群120A、120Bから発振されて、超音波反射板150a、150bで反射された超音波を表示面111の周囲から空中映像A1、A2、A3側に向かうようにすることができるので、上記第5実施形態に対して、音圧増大部の形成が容易となる。
【0057】
(第7実施形態)
第7実施形態の触覚提示装置100Fを
図8に示す。第7実施形態の触覚提示装置100Fは、上記第5実施形態の触覚提示装置100Dに対して、超音波吸収材160を追加したものである。
【0058】
超音波吸収材160は、超音波素子群120から発振される超音波のうち、空中映像A1、A2、A3に向かう超音波以外の超音波(
図8中の破線矢印)を吸収する吸収部である。例えば、超音波反射板150を筒状に形成した場合に、超音波吸収材160は、超音波反射板150の周面のうち、空中映像A1、A2、A3に向かう反射にかかわらない領域、および筒状の周面のうち、超音波反射板150とは反対側の周面(超音波反射板150として機能しない領域)等に設けられている。超音波吸収材160は、例えば、グラスウールや発泡ウレタン等の吸音材から形成されている。
【0059】
本実施形態では、超音波導出孔151を介して空中映像A1、A2、A3側に向かう超音波以外の超音波が、超音波吸収材160によって吸収されるので、空中映像A1、A2、A3側に向かう超音波以外の音波による悪影響をなくすことができる。
【0060】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、空中映像表示器110によって形成される空中映像を3つの空中映像A1、A2、A3としたが、これに限定されることなく、所定機器200の入力項目に応じた設定としてもよい。
【0061】
また、空中映像A1、A2、A3は、所定機器200の入力項目に限らず、果物や楽器等の映像として、手触りや、演奏時の操作感覚を与えるもの等としてもよい。
【0062】
また、音波素子群として、超音波を用いた超音波素子群120(120A、120B)としたが、これに限らず、超音波よりも周波数の低い音波を用いたものとしてもよい。
【0063】
また、3つの空中映像A1、A2、A3を形成するために、複数の超音波素子121を3つのグループに分けて対応するようにしたが、これに代えて、所定の時間差(微小時間差)をもって、空中映像A1、A2、A3を順に形成するようにしてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態では、支持部120a(120b、120c)に設けられる複数の超音波素子121は、整列されて格子状に配置されるものとしたが、これに限らず、千鳥配置、ランダム配置等としても、同様に対応可能である。
【0065】
また、空中映像A1、A2、A3を操作する操作体としては、操作者の手の指(生体)に限らず、手に持ったペンや棒等としてもよい。ペンや棒を介して音圧増大部の音圧が操作者の手に伝わり、触覚として認識することができる。
【0066】
また、所定機器200は、車両用に限定されず、アミューズメント施設におけるゲーム装置、一般家庭用における家庭用機器等にも適用可能である。