特許第6593334号(P6593334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593334
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】電荷輸送性ワニス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20191010BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20191010BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20191010BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20191010BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20191010BHJP
   C07D 487/14 20060101ALN20191010BHJP
   C07D 333/18 20060101ALN20191010BHJP
   C07D 209/86 20060101ALN20191010BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   C09K11/06 650
   C09D7/40
   C09D201/00
   !C07D487/14
   !C07D333/18
   !C07D209/86
【請求項の数】10
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2016-535928(P2016-535928)
(86)(22)【出願日】2015年7月21日
(86)【国際出願番号】JP2015070637
(87)【国際公開番号】WO2016013533
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2018年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-150227(P2014-150227)
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-28392(P2015-28392)
(32)【優先日】2015年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中家 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中澤 太一
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−153864(JP,A)
【文献】 特表2013−527557(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/122182(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/077344(WO,A1)
【文献】 特開2014−131057(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/129947(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/041701(WO,A1)
【文献】 特表2003−519432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物からなる電荷輸送性物質と、分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物(ただし、前記式(1)で表される化合物を除く)からなる電荷輸送性物質と、ドーパント物質とを含む電荷輸送性材料および2種以上の有機溶媒を含む混合溶媒を含み、
前記混合溶媒が、25℃で粘度が10〜200mPa・sで、常圧(大気圧)で沸点が50〜300℃の高粘度有機溶媒を含み、
前記電荷輸送性材料が、前記混合溶媒に溶解していることを特徴とする電荷輸送性ワニス。
【化1】
【請求項2】
前記電荷輸送性化合物が、アリールアミン誘導体、チオフェン誘導体およびピロール誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項3】
前記電荷輸送性化合物が、単一の分子量を有する請求項1または2記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項4】
前記ドーパント物質が、ヘテロポリ酸、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体またはアリールスルホン酸化合物を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項5】
さらに有機シラン化合物を含む請求項4記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項6】
請求項4または5記載の電荷輸送性ワニスを用いて作製される電荷輸送性薄膜。
【請求項7】
請求項6記載の電荷輸送性薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項4または5記載の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、乾燥させることを特徴とする電荷輸送性薄膜の製造方法。
【請求項9】
式(1)で表される化合物を用いて形成される電荷輸送性薄膜の平坦化方法であって、
式(1)で表される化合物からなる電荷輸送性物質と、分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物(ただし、前記式(1)で表される化合物を除く)からなる電荷輸送性物質と、ドーパント物質を含む電荷輸送性材料および2種以上の有機溶媒を含む混合溶媒を含み、
前記混合溶媒が、25℃で粘度が10〜200mPa・sで、常圧(大気圧)で沸点が50〜300℃の高粘度有機溶媒を含み、
前記電荷輸送性材料が、前記混合溶媒に溶解している電荷輸送性ワニスを用いることを特徴とする電荷輸送性薄膜の平坦化方法。
【化2】
【請求項10】
陽極および陰極と、これら各極間に介在する発光層、正孔注入層および正孔輸送層を含む複数の機能層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧の低減方法であって、
前記正孔注入層を形成するに際し、式(1)で表される化合物からなる電荷輸送性物質と、分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物(ただし、前記式(1)で表される化合物を除く)からなる電荷輸送性物質と、ドーパント物質を含む電荷輸送性材料および2種以上の有機溶媒を含む混合溶媒を含み、
前記混合溶媒が、25℃で粘度が10〜200mPa・sで、常圧(大気圧)で沸点が50〜300℃の高粘度有機溶媒を含み、
前記電荷輸送性材料が、前記混合溶媒に溶解している電荷輸送性ワニスを用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧の低減方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子には、発光層や電荷注入層として、有機化合物からなる電荷輸送性薄膜が用いられる。特に、正孔注入層は、陽極と、正孔輸送層あるいは発光層との電荷の授受を担い、有機EL素子の低電圧駆動および高輝度を達成するために重要な機能を果たす。
正孔注入層の形成方法は、蒸着法に代表されるドライプロセスと、スピンコート法に代表されるウェットプロセスとに大別され、これら各プロセスを比べると、ウェットプロセスの方が大面積に平坦性の高い薄膜を効率的に製造できる。それゆえ、有機ELディスプレイの大面積化が進められている現在、ウェットプロセスで形成可能な正孔注入層が望まれている。
このような事情に鑑み、本発明者らは、各種ウェットプロセスに適用可能であるとともに、有機EL素子の正孔注入層に適用した場合に優れたEL素子特性を実現できる薄膜を与える電荷輸送性材料や、それに用いる有機溶媒に対する溶解性の良好な化合物を開発してきている(例えば特許文献1〜4参照)。
しかし、正孔注入層用のウェットプロセス材料に関しては常に改善が求められており、特に、電荷輸送性に優れた薄膜を与えるウェットプロセス材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/067276号
【特許文献2】国際公開第2008/129947号
【特許文献3】国際公開第2006/025342号
【特許文献4】国際公開第2010/058777号
【特許文献5】特開2014−33008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機溶媒への良好な溶解性を示し、有機溶媒に溶解させてワニスを調製することで、電荷輸送性、平坦性および均一性に優れる電荷輸送性薄膜を再現性よく与える電荷輸送性ワニスを調製できる電荷輸送性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルからなる電荷輸送性物質と、分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物からなる電荷輸送性物質とを含む電荷輸送性材料が、有機溶媒への良好な溶解性を示し、当該電荷輸送性材料を有機溶媒に溶解させて得られるワニスから、電荷輸送性、平坦性および均一性に優れる電荷輸送性薄膜が再現性よく得られること、並びに当該薄膜を正孔注入層として用いることで、優れた輝度特性の有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
なお、特許文献5には、ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルを溶解させた有機EL用の塗布液が開示されているが、ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルからなる電荷輸送性物質と分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物からなる電荷輸送性物質とを含む電荷輸送性材料は具体的に開示されていない。
また、同文献には、そのような電荷輸送性材料を有機溶媒に溶解させて得られるワニスから、電荷輸送性、平坦性および均一性に優れる電荷輸送性薄膜が再現性よく得られることを教示する記載も、これを示唆する記載もない。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で表される化合物からなる電荷輸送性物質と、分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物(ただし、前記式(1)で表される化合物を除く)からなる電荷輸送性物質とを含むことを特徴とする電荷輸送性材料、
【化1】
2. 前記電荷輸送性化合物が、アリールアミン誘導体、チオフェン誘導体およびピロール誘導体から選ばれる少なくとも1種である1の電荷輸送性材料、
3. さらにドーパント物質を含む1または2の電荷輸送性材料、
4. 1〜3のいずれかの電荷輸送性材料、および有機溶媒を含み、前記電荷輸送性材料が、前記有機溶媒に溶解している電荷輸送性ワニス、
5. さらに有機シラン化合物を含む4の電荷輸送性ワニス、
6. 4または5の電荷輸送性ワニスを用いて作製される電荷輸送性薄膜、
7. 6の電荷輸送性薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子、
8. 4または5の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、乾燥させることを特徴とする電荷輸送性薄膜の製造方法、
9. 式(1)で表される化合物を用いて形成される電荷輸送性薄膜の平坦化方法であって、式(1)で表される化合物からなる電荷輸送性物質と、分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物(ただし、前記式(1)で表される化合物を除く)からなる電荷輸送性物質とを含む電荷輸送性材料、および有機溶媒を含み、前記電荷輸送性材料が前記有機溶媒に溶解している電荷輸送性ワニスを用いることを特徴とする電荷輸送性薄膜の平坦化方法、
【化2】
10. 陽極および陰極と、これら各極間に介在する発光層、正孔注入層および正孔輸送層を含む複数の機能層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧の低減方法であって、式(1)で表される化合物からなる電荷輸送性物質と、分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物(ただし、前記式(1)で表される化合物を除く)からなる電荷輸送性物質とを含む電荷輸送性材料、および有機溶媒を含み、前記電荷輸送性材料が前記有機溶媒に溶解している電荷輸送性ワニスを用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧の低減方法
【化3】
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電荷輸送性材料は、有機溶媒への良好な溶解性だけでなく優れた電荷輸送性を示すことから、当該電荷輸送性材料を有機溶媒に溶解させることで、電荷輸送性、平坦性および均一性に優れる電荷輸送性薄膜を与える電荷輸送性ワニスを容易に調製できる。
また、このように調製した電荷輸送性ワニスから得られる薄膜は、電荷輸送性、平坦性および均一性に優れることから、有機EL素子をはじめとした電子デバイス用薄膜として好適に用いることができる。特に、この薄膜を有機EL素子の正孔注入層に適用することで、低駆動電圧の有機EL素子を得ることができる。
さらに、このように調製した電荷輸送性ワニスは、スピンコート法やスリットコート法等、大面積に成膜可能な各種ウェットプロセスを用いた場合でも電荷輸送性に優れた薄膜を再現性よく製造できるため、近年の有機EL素子の分野における進展にも十分対応できる。
そして、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜は、電荷輸送性に優れることから、有機薄膜太陽電池の陽極バッファ層、帯電防止膜等として使用されることも期待できる。
なお、本発明の電荷輸送性ワニスによって、電荷輸送性、平坦性および均一性に優れる薄膜が再現性よく得られる理由は定かではないが、比較的結晶性の低い物質を、比較的結晶性の高いジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルとともに有機溶媒に溶解させてワニスを調製することで、当該ワニスから溶媒を除去して得られる固体膜の結晶性が低減され、その結果、ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルのみを溶解させたワニスによっては実現不可能であった、優れた電荷輸送性、平坦性および均一性が実現可能となったものと推測される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例2−1で作製した薄膜の共焦点レーザー顕微鏡による観察図である。
図2】実施例2−2で作製した薄膜の共焦点レーザー顕微鏡による観察図である。
図3】比較例2−1で作製した薄膜の共焦点レーザー顕微鏡による観察図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る電荷輸送性材料は、式(1)で表される化合物からなる電荷輸送性物質と、分子量200〜9,000の電荷輸送性化合物(式(1)で表される化合物を除く。)(以下、単に「電荷輸送性化合物」ということがある。)とを含む。
式(1)で表される化合物は、CAS番号が105598−27−4であるジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルである。
なお、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性とも同義である。また、本発明の電荷輸送性ワニスは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ワニスを使用して得られる固体膜に電荷輸送性があるものでもよい。
【0011】
【化4】
【0012】
本発明において、電荷輸送性化合物の分子量は、平坦性の高い薄膜を与える均一なワニスを調製する観点から、200〜9,000であるが、耐溶剤性の高い電荷輸送性薄膜を得る観点から、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、平坦性の高い薄膜をより再現性よく与える均一なワニスを調製する観点から、8,000以下が好ましく、7,000以下がより好ましく、6,000以下がより一層好ましく、5,000以下がさらに好ましい。
なお、薄膜化した場合に電荷輸送性物質が分離することを防ぐ観点から、電荷輸送性化合物は分子量分布のない(分散度が1)ことが好ましい(すなわち、単一の分子量であることが好ましい)。
【0013】
電荷輸送性化合物としては、従来有機ELの分野等で用いられるものを用いることができる。
その具体例としては、オリゴアニリン誘導体、N,N'−ジアリールベンジジン誘導体、N,N,N',N'−テトラアリールベンジジン誘導体等のアリールアミン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、チエノチオフェン誘導体、チエノベンゾチオフェン誘導体等のチオフェン誘導体、オリゴピロール等のピロール誘導体などの各種正孔輸送性物質が挙げられるが、中でも、アリールアミン誘導体、チオフェン誘導体が好ましく、アリールアミン誘導体がより好ましく、式(2)または(3)で示されるアニリン誘導体がより一層好ましい。
【0014】
【化5】
【0015】
式(3)中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0016】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、フッ素原子が好ましい。
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3〜20の環状アルキル基などが挙げられる。
【0017】
炭素数2〜20のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
【0018】
炭素数2〜20のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル基、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
【0019】
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0020】
炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基等の含酸素ヘテロアリール基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基等の含硫黄ヘテロアリール基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジル基、3−ピラジル基、5−ピラジル基、6−ピラジル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、6−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、5−ピリダジル基、6−ピリダジル基、1,2,3−トリアジン−4−イル基、1,2,3−トリアジン−5−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、1,2,4−トリアジン−6−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基、1,2,4,5−テトラジン−3−イル基、1,2,3,4−テトラジン−5−イル基、2−キノリニル基、3−キノリニル基、4−キノリニル基、5−キノリニル基、6−キノリニル基、7−キノリニル基、8−キノリニル基、1−イソキノリニル基、3−イソキノリニル基、4−イソキノリニル基、5−イソキノリニル基、6−イソキノリニル基、7−イソキノリニル基、8−イソキノリニル基、2−キノキサニル基、5−キノキサニル基、6−キノキサニル基、2−キナゾリニル基、4−キナゾリニル基、5−キナゾリニル基、6−キナゾリニル基、7−キナゾリニル基、8−キナゾリニル基、3−シンノリニル基、4−シンノリニル基、5−シンノリニル基、6−シンノリニル基、7−シンノリニル基、8−シンノリニル基等の含窒素ヘテロアリール基などが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、R1およびR2は、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基がより一層好ましく、水素原子が最適である。
【0022】
上記式(2)および(3)におけるPh1は、式(P1)で表される基を表す。
【0023】
【化6】
【0024】
ここで、R3〜R6は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、これらの具体例としては、上記R1およびR2で説明したものと同様のものが挙げられる。
特に、R3〜R6としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基がより一層好ましく、水素原子が最適である。
【0025】
以下、Ph1として好適な基の具体例を挙げるが、これに限定されるわけではない。
【0026】
【化7】
【0027】
上記式(2)におけるAr1は、互いに独立して、式(B1)〜(B11)のいずれかで表される基を表すが、特に、式(B1′)〜(B11′)のいずれかで表される基が好ましい。
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
ここで、R7〜R27、R30〜R51およびR53〜R154は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、R28およびR29は、互いに独立して、Z1で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基または炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、R52は、水素原子、Z4で置換されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、またはZ1で置換されてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはZ2で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基を表し、Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはZ3で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基またはシアノ基を表し、Z4は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはZ5で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z5は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはZ3で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基を表し、これらハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、上記R1およびR2で説明したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
特に、R7〜R27、R30〜R51およびR53〜R154としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいジフェニルアミノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基がより一層好ましく、水素原子が最適である。
また、R28およびR29としては、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、Z1で置換されていてもよい炭素数2〜14のヘテロアリール基が好ましく、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよい1−ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2−ナフチル基がより一層好ましい。
そして、R52としては、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、Z1で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基、Z4で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、Z1で置換されていてもよい炭素数2〜14のヘテロアリール基、Z4で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、Z1で置換されていてもよい炭素数2〜14の含窒素ヘテロアリール基、Z4で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基がより一層好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよい1−ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2−ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2−ピリジル基、Z1で置換されていてもよい3−ピリジル基、Z1で置換されていてもよい4−ピリジル基、Z4で置換されていてもよいメチル基がさらに好ましい。
【0032】
また、Ar4は、互いに独立して、ジ(炭素数6〜20のアリール基)アミノ基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、R1およびR2で説明したものと同様のものが挙げられ、ジ(炭素数6〜20のアリール基)アミノ基の具体例としては、ジフェニルアミノ基、1−ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1−ナフチル)アミノ基、1−ナフチル−2−ナフチルアミノ基、ジ(2−ナフチル)アミノ基等が挙げられる。
Ar4としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、p−(ジフェニルアミノ)フェニル基、p−(1−ナフチルフェニルアミノ)フェニル基、p−(ジ(1−ナフチル)アミノ)フェニル基、p−(1−ナフチル−2−ナフチルアミノ)フェニル基、p−(ジ(2−ナフチル)アミノ)フェニル基が好ましく、p−(ジフェニルアミノ)フェニル基がより好ましい。
【0033】
以下、Ar1として好適な基の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【0034】
【化10】
(式中、DPAは、ジフェニルアミノ基を表す。)
【0035】
【化11】
【0036】
【化12】
【0037】
【化13】
(式中、R52は、上記と同じ意味を表す。)
【0038】
【化14】
【0039】
【化15】
【0040】
【化16】
【0041】
【化17】
【0042】
上記式(2)におけるAr2は、互いに独立して、式(A1)〜(A18)のいずれかで表される基を表す。
【0043】
【化18】
【0044】
ここで、式中、R155は、水素原子、Z4で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基もしくは炭素数2〜20のアルキニル基、またはZ1で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、R156およびR157は、互いに独立して、Z1で置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリール基または炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、DPAは、ジフェニルアミノ基を表し、Ar4、Z1,Z3〜Z5は上記と同じ意味を表す。これらハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、上記R1およびR2で説明したものと同様のものが挙げられる。
【0045】
特に、R155としては、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、Z1で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基、Z4で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、Z1で置換されていてもよい炭素数2〜14のヘテロアリール基、Z4で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、Z1で置換されていてもよい炭素数2〜14の含窒素ヘテロアリール基、Z4で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基がより一層好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよい1−ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2−ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2−ピリジル基、Z1で置換されていてもよい3−ピリジル基、Z1で置換されていてもよい4−ピリジル基、Z4で置換されていてもよいメチル基がさらに好ましい。
また、R156およびR157としては、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基、Z1で置換されていてもよい炭素数2〜14のヘテロアリール基が好ましく、Z1で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよい1−ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2−ナフチル基がより一層好ましい。
【0046】
以下、Ar2として好適な基の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
【化19】
(式中、DPAは、上記と同じ意味を表す。)
【0048】
【化20】
【0049】
【化21】
【0050】
【化22】
【0051】
【化23】
【0052】
【化24】
(式中、R155は、上記と同じ意味を表す。)
【0053】
【化25】
【0054】
なお、式(2)においては、得られるアニリン誘導体の合成の容易性を考慮すると、Ar1が全て同一の基であり、Ar2が全て同一の基であることが好ましく、Ar1およびAr2が全て同一の基であることがより好ましい。すなわち、式(2)で表されるアニリン誘導体は、式(2−1)で表されるアニリン誘導体がより好ましい。
また、後述するように原料化合物として比較的安価なビス(4−アミノフェニル)アミンを用いて比較的簡便に合成できるとともに、有機溶媒に対する溶解性に優れていることからも、式(2)で表されるアニリン誘導体は、式(2−1)で表されるアニリン誘導体が好ましい。
【0055】
【化26】
【0056】
式(2−1)中、Ph1およびkは上記と同じ意味を表し、Ar5は、同時に、式(D1)〜(D13)のいずれかで表される基を表すが、特に、式(D1′)〜(D13′)のいずれかで表される基であることが好ましい。
なお、Ar5の具体例としては、Ar1として好適な基の具体例として上述したものと同様のものが挙げられる。
【0057】
【化27】
(式中、R28、R29、R52、Ar4およびDPAは、上記と同じ意味を表す。)
【0058】
【化28】
(式中、R28、R29、R52、Ar4およびDPAは、上記と同じ意味を表す。)
【0059】
また、後述するように原料化合物として比較的安価なビス(4−アミノフェニル)アミンを用いて比較的簡便に合成できるとともに、得られるアニリン誘導体の有機溶媒に対する溶解性に優れていることから、式(2)で表されるアニリン誘導体は、式(2−2)で表されるアニリン誘導体が好ましい。
【0060】
【化29】
【0061】
上記Ar6は、同時に、式(E1)〜(E14)のいずれかで表される基を表す。
【0062】
【化30】
(式中、R52は、上記と同じ意味を表す。)
【0063】
上記式(3)におけるAr3は、式(C1)〜(C8)のいずれかで表される基を表すが、特に(C1′)〜(C8′)のいずれかで表される基が好ましい。
【0064】
【化31】
【0065】
【化32】
【0066】
上記式(2)におけるkは、1〜10の整数を表すが、化合物の有機溶媒への溶解性を高める観点から、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2がより一層好ましく、1が最適である。
上記式(3)におけるlは、1または2を表す。
【0067】
なお、R28、R29、R52およびR155〜R157において、Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z2で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、Z2で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z2で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Z2で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルケニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルキニル基がより好ましく、フッ素原子、Z2で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Z2で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルケニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルキニル基がより一層好ましい。
【0068】
28、R29、R52およびR155〜R157において、Z4は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z5で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基が好ましく、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z5で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フッ素原子、Z5で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基がより一層好ましく、フッ素原子、Z5で置換されていてもよいフェニル基がさらに好ましい。
【0069】
28、R29、R52およびR155〜R157において、Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基が好ましく、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フッ素原子、Z3で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基がより一層好ましく、フッ素原子、Z3で置換されていてもよいフェニル基がさらに好ましい。
【0070】
28、R29、R52およびR155〜R157において、Z5は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルケニル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルキニル基がより好ましく、フッ素原子、Z3で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルケニル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルキニル基がより一層好ましい。
【0071】
28、R29、R52およびR155〜R157において、Z3は、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0072】
一方、R7〜R27、R30〜R51およびR53〜R154において、Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z2で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Z2で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルケニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルキニル基が好ましく、ハロゲン原子、Z2で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、フッ素原子、Z2で置換されていてもよいメチル基がより一層好ましい。
【0073】
7〜R27、R30〜R51およびR53〜R154において、Z4は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z5で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基が好ましく、ハロゲン原子、Z5で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フッ素原子、Z5で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましい。
【0074】
7〜R27、R30〜R51およびR53〜R154において、Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基が好ましく、ハロゲン原子、Z3で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フッ素原子、Z3で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましい。
【0075】
7〜R27、R30〜R51およびR53〜R154において、Z5は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルケニル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2〜3のアルキニル基が好ましく、ハロゲン原子、Z3で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、フッ素原子、Z3で置換されていてもよいメチル基がより一層好ましい。
【0076】
7〜R27、R30〜R51およびR53〜R154において、Z3は、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0077】
上記R52およびR155として好適な基の具体例としては、以下の基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
【化33】
【0079】
【化34】
【0080】
【化35】
【0081】
【化36】
【0082】
【化37】
【0083】
【化38】
【0084】
上記アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。
また、上記アリール基およびヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
【0085】
上記式(2)で表されるアニリン誘導体は、式(4)で表されるアミン化合物と、式(5)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させて製造できる。
【0086】
【化39】
(式中、Xは、ハロゲン原子または擬ハロゲン基を表し、Ar1、Ar2、Ph1およびkは、上記と同じ意味を表す。)
【0087】
特に、式(2−1)で表されるアニリン誘導体は、式(6)で表されるアミン化合物と、式(7)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させて製造できる。
【0088】
【化40】
(式中、X、Ar5、Ph1およびkは、上記と同じ意味を表す。)
【0089】
また、式(2−2)で表されるアニリン誘導体は、ビス(4−アミノフェニル)アミンと、式(8)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させて製造できる。
【0090】
【化41】
(式中、XおよびAr6は、上記と同じ意味を表す。)
【0091】
一方、上記式(3)で表されるアニリン誘導体は、式(9)で表されるアミン化合物と、式(10)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させて製造できる。
【0092】
【化42】
(式中、X、R1、R2、Ar3、Ph1およびlは、上記と同じ意味を表す。)
【0093】
ハロゲン原子としては、上記と同様のものが挙げられる。
擬ハロゲン基としては、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等の(フルオロ)アルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等の芳香族スルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0094】
式(4)、(6)もしくは(9)で表されるアミン化合物またはビス(4−アミノフェニル)アミンと、式(5)、(7)、(8)または(10)で表されるアリール化合物との仕込み比は、アミン化合物またはビス(4−アミノフェニル)アミンの全NH基の物質量に対し、アリール化合物を当量以上とすることができるが、1〜1.2当量程度が好適である。
【0095】
上記反応に用いられる触媒としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等の銅触媒;Pd(PPh34(テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム)、Pd(PPh32Cl2(ビス(トリフェニルフォスフィン)ジクロロパラジウム)、Pd(dba)2(ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム)、Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム)、Pd(P−t−Bu32(ビス(トリ(t−ブチルフォスフィン))パラジウム)、Pd(OAc)2(酢酸パラジウム)等のパラジウム触媒などが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの触媒は、公知の適切な配位子とともに使用してもよい。
このような配位子としては、トリフェニルフォスフィン、トリ−o−トリルフォスフィン、ジフェニルメチルフォスフィン、フェニルジメチルフォスフィン、トリメチルフォスフィン、トリエチルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ−tert−ブチルフォスフィン、ジ−t−ブチル(フェニル)フォスフィン、ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)フォスフィン、1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルフォスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン等の3級フォスフィン、トリメチルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト等の3級フォスファイトなどが挙げられる。
【0096】
触媒の使用量は、式(5)、(7)、(8)または(10)で表されるアリール化合物1molに対して、0.2mol程度とすることができるが、0.15mol程度が好適である。
また、配位子を用いる場合、その使用量は、使用する金属錯体に対し0.1〜5当量とすることができるが、1〜2当量が好適である。
【0097】
原料化合物が全て固体である場合あるいは目的とするアニリン誘導体を効率よく得る観点から、上記各反応は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒を使用する場合、その種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。具体例としては、脂肪族炭化水素類(ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、デカリン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ラクタムおよびラクトン類(N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等)、尿素類(N,N−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)などが挙げられ、これらの溶媒は単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0098】
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、0〜200℃程度が好ましく、20〜150℃がより好ましい。
反応終了後は、常法にしたがって後処理をし、目的とするアニリン誘導体を得ることができる。
【0099】
上述の式(2)で表されるアニリン誘導体の製造方法において、原料として用い得る式(4’)で表されるアミン化合物は、式(11)で表されるアミン化合物と、式(12)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させて効率よく製造することができる。
【0100】
【化43】
(式中、X、Ar1、Ph1およびkは、上記と同じ意味を表す。ただし、2つのAr1が同時に式(B1)で表される基となることはない。)
【0101】
式(4’)で表されるアミン化合物の上記製造方法は、式(11)で表されるアミン化合物と、式(12)で表されるアリール化合物とをカップリング反応させるものであるが、式(11)で表されるアミン化合物と、式(12)で表されるアリール化合物との仕込みは、物質量比で、アミン化合物1に対して、アリール化合物2〜2.4程度が好適である。
その他、当該カップリング反応における触媒、配位子、溶媒、反応温度等に関する諸条件は、式(2)で表されるアニリン誘導体の製造方法について説明した上記条件と同じである。
【0102】
なお、式(2)において、Ar1が、R52が水素原子である式(B4)で表される基または式(B10)で表される基であるか、あるいは、Ar2が、式(A12)で表される基またはR155(式(2−1)におけるR52を含む。)が水素原子である式(A16)で表される基であるアニリン誘導体を製造する場合、上述の反応においては、アミノ基上に公知の保護基を有するアリール化合物を用いてもよい。
【0103】
なお、式(2)または(3)で表されるアニリン誘導体は、国際公開第2015/050253号に記載の方法で合成することもできる。
【0104】
以下、式(2)または(3)で表されるアニリン誘導体の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。なお、式および表中、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Prn」はn−プロピル基を、「Pri」はi−プロピル基を、「Bun」はn−ブチル基を、「Bui」はi−ブチル基を、「Bus」はs−ブチル基を、「But」はt−ブチル基を、「DPA」はジフェニルアミノ基を、「SBF」は9,9’−スピロビ[9H−フルオレン]−2−イル基を、それぞれ示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
【表9】
【0114】
【表10】
【0115】
【表11】
【0116】
【表12】
【0117】
【表13】
【0118】
【表14】
【0119】
【表15】
【0120】
【表16】
【0121】
【表17】
【0122】
【表18】
【0123】
本発明において、式(1)で表される化合物と、電荷輸送性化合物との比率は、物質量(モル)比で、式(1)で表される化合物:電荷輸送性化合物=1:0.1〜10程度とすることができる。
【0124】
本発明の電荷輸送性材料は、電荷輸送性を向上させる観点から、ドーパント物質を含んでもよい。
ドーパント物質としては、特に限定されるものではないが、無機系のドーパント物質、有機系のドーパント物質のいずれも使用できる。
また、無機系および有機系のドーパント物質は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0125】
特に、本発明においては、無機系のドーパント物質としては、ヘテロポリ酸が好ましい。
ヘテロポリ酸とは、代表的に式(H1)で示されるKeggin型あるいは式(H2)で示されるDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。このような異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。
【0126】
【化44】
【0127】
ヘテロポリ酸の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、本発明で用いるヘテロポリ酸は、市販品として入手可能であり、また、公知の方法により合成することもできる。
特に、1種類のヘテロポリ酸を用いる場合、その1種類のヘテロポリ酸は、リンタングステン酸またはリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸が最適である。また、2種類以上のヘテロポリ酸を用いる場合、その2種類以上のヘテロポリ酸の1つは、リンタングステン酸またはリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸がより好ましい。
なお、ヘテロポリ酸は、元素分析等の定量分析において、一般式で示される構造から元素の数が多いもの、または少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。
すなわち、例えば、一般的には、リンタングステン酸は化学式H3(PW1240)・nH2Oで、リンモリブデン酸は化学式H3(PMo1240)・nH2Oでそれぞれ示されるが、定量分析において、この式中のP(リン)、O(酸素)またはW(タングステン)もしくはMo(モリブデン)の数が多いもの、または少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。この場合、本発明に規定されるヘテロポリ酸の質量とは、合成物や市販品中における純粋なリンタングステン酸の質量(リンタングステン酸含量)ではなく、市販品として入手可能な形態および公知の合成法にて単離可能な形態において、水和水やその他の不純物等を含んだ状態での全質量を意味する。
【0128】
本発明の電荷輸送性材料にヘテロポリ酸を含める場合、その含有量は、電荷輸送性化合物の種類や量、所望の電荷輸送性等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常、質量比で、電荷輸送性物質1に対して、ヘテロポリ酸0.1〜10の範囲内となる。
【0129】
一方、有機系のドーパント物質としては、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、アリールスルホン酸化合物等が挙げられるが、特にテトラシアノキノジメタン誘導体やベンゾキノン誘導体が好ましい。
テトラシアノキノジメタン誘導体の具体例としては、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)や、式(H3)で表されるハロテトラシアノキノジメタンなどが挙げられる。
また、ベンゾキノン誘導体の具体例としては、テトラフルオロ−1,4−ベンゾキノン(F4BQ)、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン(クロラニル)、テトラブロモ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)などが挙げられる。
【0130】
【化45】
【0131】
式中、R500〜R503は、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子を表すが、少なくとも1つはハロゲン原子であり、少なくとも2つがハロゲン原子であることが好ましく、少なくとも3つがハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であることが最も好ましい。
ハロゲン原子としては上記と同じものが挙げられるが、フッ素原子または塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0132】
このようなハロテトラシアノキノジメタンの具体例としては、2−フルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2−クロロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,5−ジフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,5−ジクロロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6−テトラクロロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)等が挙げられる。
【0133】
本発明の電荷輸送性材料にテトラシアノキノジメタン誘導体やベンゾキノン誘導体を含める場合、その含有量は、電荷輸送性化合物の種類や量、所望の電荷輸送性等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常、物質量比で、電荷輸送性物質1に対して、好ましくは0.0001〜100当量の範囲内であり、好ましくは0.01〜50当量の範囲内、より好ましくは1〜20当量の範囲内である。
【0134】
アリールスルホン酸化合物の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p−スチレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7−ジブチル−2−ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3−ドデシル−2−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4−ヘキシル−1−ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2−オクチル−1−ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7−へキシル−1−ナフタレンスルホン酸、6−ヘキシル−2−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7−ジノニル−4−ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、2,7−ジノニル−4,5−ナフタレンジスルホン酸、国際公開第2005/000832号記載の1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号記載のアリールスルホン酸化合物、国際公開第2009/096352号記載のアリールスルホン酸化合物等が挙げられる。
【0135】
本発明におけるドーパント物質として好ましいアリールスルホン酸化合物の例としては、式(H4)または(H5)で表されるアリールスルホン酸化合物が挙げられる。
【0136】
【化46】
【0137】
1は、OまたはSを表すが、Oが好ましい。
2は、ナフタレン環またはアントラセン環を表すが、ナフタレン環が好ましい。
3は、2〜4価のパーフルオロビフェニル基を表し、pは、A1とA3との結合数を示し、2≦p≦4を満たす整数であるが、A3がパーフルオロビフェニルジイル基、好ましくはパーフルオロビフェニル−4,4’−ジイル基であり、かつ、pが2であることが好ましい。
qは、A2に結合するスルホン酸基数を表し、1≦q≦4を満たす整数であるが、2が最適である。
【0138】
4〜A8は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、または炭素数2〜20のハロゲン化アルケニル基を表すが、A4〜A8のうち少なくとも3つは、ハロゲン原子である。
【0139】
炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0140】
炭素数2〜20のハロゲン化アルケニル基としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基(アリル基)、パーフルオロブテニル基等が挙げられる。
その他、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基の例としては上記と同様のものが挙げられるが、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0141】
これらの中でも、A4〜A8は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、または炭素数2〜10のハロゲン化アルケニル基であり、かつ、A4〜A8のうち少なくとも3つは、フッ素原子であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフッ化アルキル基、または炭素数2〜5のフッ化アルケニル基であり、かつ、A4〜A8のうち少なくとも3つはフッ素原子であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、または炭素数1〜5のパーフルオロアルケニル基であり、かつ、A4、A5およびA8がフッ素原子であることがより一層好ましい。
なお、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基であり、パーフルオロアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基である。
【0142】
rは、ナフタレン環に結合するスルホン酸基数を表し、1≦r≦4を満たす整数であるが、2〜4が好ましく、2が最適である。
【0143】
ドーパント物質として用いるアリールスルホン酸化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、本発明の電荷輸送性材料の有機溶媒への溶解性を高めることを考慮すると、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下である。
【0144】
以下、好適なアリールスルホン酸化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
【0145】
【化47】
【0146】
本発明の電荷輸送性材料にアリールスルホン酸化合物を含める場合、その含有量は、電荷輸送性化合物の種類や量、所望の電荷輸送性等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常、物質量比で、電荷輸送性物質1に対して、通常0.1〜10当量の範囲内であり、好ましくは0.5〜5当量の範囲内、より好ましくは0.8〜3当量の範囲内である。
アリールスルホン酸化合物は市販品を用いてもよいが、国際公開第2006/025342号、国際公開第2009/096352号等に記載の公知の方法で合成することもできる。
【0147】
本発明の電荷輸送性ワニスは、上述した本発明の電荷輸送性材料、および有機溶媒を含み、電荷輸送性材料が有機溶媒に溶解しているものである。
【0148】
電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、電荷輸送性物質およびドーパント物質を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。
このような高溶解性溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5〜100質量%とすることができる。
【0149】
また、本発明においては、ワニスに、25℃で10〜200mPa・s、特に35〜150mPa・sの粘度を有し、常圧(大気圧)で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも1種類含有させることで、ワニスの粘度の調整が容易になり、その結果、平坦性の高い薄膜を再現性よく与える、塗布方法に応じたワニス調製が可能となる。
高粘度有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本発明のワニスに用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜90質量%が好ましい。
【0150】
さらに、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、ワニスに使用する溶媒全体に対して1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
このような溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、エチルラクテート、n−ヘキシルアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0151】
また、本発明の電荷輸送性ワニスは、有機シラン化合物を含んでいてもよい。有機シラン化合物が含まれることで、ワニスから得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いた場合において、正孔輸送層や発光層といった陽極とは反対側に正孔注入層に接するように積層される層への正孔注入能を高めることができる。
この有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物またはテトラアルコキシシラン化合物が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、有機シラン化合物は、ジアルコキシシラン化合物およびトリアルコキシシラン化合物から選ばれる1種を含むことが好ましく、トリアルコキシシラン化合物を含むことがより好ましく、フッ素原子含有トリアルコキシシラン化合物を含むことがより一層好ましい。
【0152】
これらのアルコキシシラン化合物としては、例えば、式(S1)〜(S3)で示されるものが挙げられる。
Si(OR)4 (S1)
SiR′(OR)3 (S2)
Si(R′)2(OR)2 (S3)
【0153】
式中、Rは、互いに独立して、Z6で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z6で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z6で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、Z7で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ7で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、R′は、互いに独立して、Z8で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z8で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z8で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、Z9で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ9で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
【0154】
6は、ハロゲン原子、Z10で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ10で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z7は、ハロゲン原子、Z10で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z10で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、またはZ10で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基を表す。
【0155】
8は、ハロゲン原子、Z10で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、Z10で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基(−NHCONH2)、チオール基、イソシアネート基(−NCO)、アミノ基、−NHY1基、または−NY23基を表し、Z9は、ハロゲン原子、Z10で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z10で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z10で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基(−NHCONH2)、チオール基、イソシアネート基(−NCO)、アミノ基、−NHY1基、または−NY23基を表し、Y1〜Y3は、互いに独立して、Z10で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z10で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z10で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、Z10で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ10で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表す。
10は、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基またはチオール基を表す。
【0156】
式(S1)〜(S3)における、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、および炭素数2〜20のヘテロアリール基としては、上記と同様のものが挙げられる。
RおよびR′において、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。
また、アリール基およびヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
【0157】
Rとしては、Z6で置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数2〜20のアルケニル基、またはZ7で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、Z6で置換されていてもよい、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数2〜6のアルケニル基、またはZ7で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、Z6で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基またはZ7で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、Z6で置換されていてもよい、メチル基またはエチル基がさらに好ましい。
R′としては、Z8で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基またはZ9で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、Z8で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基またはZ9で置換されていてもよい炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、Z8で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、またはZ9で置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基がより一層好ましく、Z8で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基またはZ9で置換されていてもよいフェニル基がさらに好ましい。
なお、複数のRは、すべて同一でも異なっていてもよく、複数のR′も、すべて同一でも異なっていてもよい。
【0158】
6としては、ハロゲン原子またはZ10で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フッ素原子またはZ10で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
7としては、ハロゲン原子またはZ10で置換されていてもよい炭素数6〜20のアルキル基が好ましく、フッ素原子またはZ10で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
【0159】
一方、Z8としては、ハロゲン原子、Z10で置換されていてもよいフェニル基、Z10で置換されていてもよいフラニル基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基、チオール基、イソシアネート基、アミノ基、Z10で置換されていてもよいフェニルアミノ基、またはZ10で置換されていてもよいジフェニルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、フッ素原子、または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより一層好ましい。
9としては、ハロゲン原子、Z10で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z10で置換されていてもよいフラニル基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基、チオール基、イソシアネート基、アミノ基、Z10で置換されていてもよいフェニルアミノ基、またはZ10で置換されていてもよいジフェニルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、フッ素原子、または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより一層好ましい。
10としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより好ましい。
【0160】
以下、本発明で使用可能な有機シラン化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
ジアルコキシシラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0161】
トリアルコキシシラン化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシ(4−(トリフルオロメチル)フェニル)シラン、ドデシルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、トリエトキシ−2−チエニルシラン、3−(トリエトキシシリル)フラン等が挙げられる。
【0162】
テトラアルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。
【0163】
これらの中でも、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリエトキシ(4−(トリフルオロメチル)フェニル)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシランまたはペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0164】
また、有機シラン化合物としては、重合体からなる有機シラン化合物も挙げられる。
このような重合体の好ましい一例としては、予めアルコキシシラン化合物を加水分解縮合して調製された重量平均分子量500〜10,000の重合体からなる有機シラン化合物であって、アルコキシシラン化合物が、式(S4)および(S5)で表されるアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種を含むものが挙げられる。
とりわけ、重合体の分子量をより高める観点から、式(S4)で表されるトリアルコキシシラン化合物が含まれることが好ましい。
SiR′′(OR′′′)3 (S4)
Si(R′′)2(OR′′′)2 (S5)
【0165】
ここで、R′′は、互いに独立して、Z11で置換された炭素数1〜20のアルキル基、またはZ12で置換された炭素数6〜20のアリール基を表し、R′′′は、互いに独立して、Z13で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、Z11は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、Z13で置換された炭素数1〜20のアルコキシ基、Z13で置換された炭素数6〜20のアリール基、またはZ13で置換された炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z12は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、またはZ13で置換された炭素数1〜20のアルキル基を表し、Z13は、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
【0166】
炭素数1〜20のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基等の炭素数3〜20の環状アルキル基などが挙げられる。
【0167】
その他、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0168】
R′′およびR′′′において、アルキル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。
また、アリール基およびヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
11およびZ12としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が最適であり、Z13としては、R′′′においては存在しない(すなわち、非置換である)ことが好ましく、Z11およびZ12においてはハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が最適である。
【0169】
13で置換された炭素数1〜20のアルキル基としては、上記炭素数1〜20のアルキル基において、少なくとも1つの水素原子をZ13で置換したものが挙げられ、その具体例としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、ペンタブロモエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリクロロプロピル基、2,2,3,3−テトラクロロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタクロロプロピル基、ヘプタクロロプロピル基、ヘプタクロロイソプロピル基、3,3,3−トリブロモプロピル基、2,2,3,3−テトラブロモプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタブロモプロピル基、ヘプタブロモプロピル基、ヘプタブロモイソプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、2,2,2−トリクロロ−1−(トリクロロメチル)エチル基、2,2,2−トリブロモ−1−(トリブロモメチル)エチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基、4,4,4−トリクロロブチル基、ノナクロロブチル基、4,4,4−トリブロモブチル基、ノナブロモブチル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタクロロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナクロロペンチル基、ウンデカクロロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタブロモペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナブロモペンチル基、ウンデカブロモペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基、ウンデカフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナクロロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカクロロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカクロロヘキシル基、トリデカクロロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナブロモヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカブロモヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカブロモヘキシル基、トリデカブロモヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフロオロヘキシル基、トリデカフルオロヘキシル基、トリデカクロロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、パークロロオクチル基、トリデカブロモ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、パーブロモオクチル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタデカクロロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、ヘプタデカブロモ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基等のハロゲン化アルキル基;シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等のシアノアルキル基;ニトロメチル基、2−ニトロエチル基、3−ニトロプロピル基、4−ニトロブチル基等のニトロアルキル基などが挙げられるが、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ化アルキル基がより好ましい。
【0170】
11で置換された炭素数1〜20のアルキル基としては、上記炭素数1〜20のアルキル基において、少なくとも1つの水素原子をZ11で置換したものが挙げられ、その具体例としては、上記Z13で置換された炭素数1〜20のアルキル基で例示した基に加え、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピル基、4−トリフルオロメチルフェニルメチル基等が挙げられ、この場合も、ハロゲン原子を有するアルコキシ基、アリール基、またはヘテロアリール基で置換されたアルキル基が好ましく、フッ素原子を有するアルコキシ基、アリール基、またはヘテロアリール基で置換されたアルキル基がより好ましい。
【0171】
13で置換された炭素数1〜20のアルコキシ基の具体例としては、上述したZ13で置換された炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールから水酸基上の水素原子を除外してできる基が挙げられ、例えば、クロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、ジブロモメトキシ基、トリブロモメトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、ペンタクロロエトキシ基、2,2,2−トリブロモエトキシ基、ペンタブロモエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、3,3,3−トリクロロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラクロロプロポキシ基、2,2,3,3,3−ペンタクロロプロポキシ基、ヘプタクロロプロポキシ基、ヘプタクロロイソプロポキシ基、3,3,3−トリブロモプロポキシ基、2,2,3,3−テトラブロモプロポキシ基、2,2,3,3,3−ペンタブロモプロポキシ基、ヘプタブロモプロポキシ基、ヘプタブロモイソプロポキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ヘプタフルオロイソプロポキシ基等が挙げられるが、ハロゲン化アルコキシ基が好ましく、フッ化アルコキシ基がより好ましい。
【0172】
13で置換された炭素数6〜20のアリール基としては、上記炭素数6〜20のアリール基において、少なくとも1つの水素原子をZ13で置換したものが挙げられ、その具体例としては、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;4−シアノフェニル、2,4−ジシアノフェニル基、2,4,6−トリシアノフェニル基等のシアノアリール基;4−ニトロフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基、2,4,6−トリニトロフェニル基等のニトロアリール基などが挙げられるが、ハロゲン化アリール基が好ましく、フッ化アリール基がより好ましい。
12で置換された炭素数6〜20のアリール基としては、上記Z13で置換された炭素数6〜20のアリール基で例示した基に加え、4−トリクロロメチルフェニル基、4−トリブロモメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基等のハロゲン化アルキル基を有するアリール基等が挙げられるが、フッ化アルキル基を有するアリール基が好ましい。
【0173】
13で置換された炭素数2〜20のヘテロアリール基としては、上記炭素数2〜20のヘテロアリール基において、少なくとも1つの水素原子をZ13で置換したものが挙げられ、その具体例としては、5−クロロ−チオフェン−2−イル基、5−ブロモ−チオフェン−2−イル基、5−フルオロ−チオフェン−2−イル基、5−クロロ−チオフェン−3−イル基、5−ブロモ−チオフェン−3−イル基、5−フルオロ−チオフェン−3−イル基等のハロゲン化チエニル基;5−シアノ−チオフェン−2−イル基、5−シアノ−チオフェン−3−イル基等のシアノチエニル基;5−ニトロ−チオフェン−2−イル基、5−ニトロ−チオフェン−3−イル基等のニトロチエニル基;5−クロロ−フラン−2−イル基、5−ブロモ−フラン−2−イル基、5−フルオロ−フラン−2−イル基、5−クロロ−フラン−3−イル基、5−ブロモ−フラン−3−イル基、5−フルオロ−フラン−3−イル基等のハロゲン化フラニル基;5−シアノ−フラン−2−イル基、5−シアノ−フラン−3−イル基等のシアノフラニル基;5−ニトロ−フラン−2−イル基、5−ニトロ−フラン−3−イル基等のニトロフラニル基;6−クロロ−ピリジン−2−イル基、6−ブロモ−ピリジン−2−イル基、6−フルオロ−ピリジン−2−イル基、6−クロロ−ピリジン−3−イル基、6−ブロモ−ピリジン−3−イル基、6−フルオロ−ピリジン−3−イル基、6−クロロ−ピリジン−4−イル基、6−ブロモ−ピリジン−4−イル基、6−フルオロ−ピリジン−4−イル基等のハロゲン化ピリジル基;6−シアノ−ピリジン−2−イル基、6−シアノ−ピリジン−3−イル基、6−シアノ−ピリジン−4−イル基等のシアノピリジル基、6−ニトロ−ピリジン−2−イル基、6−ニトロ−ピリジン−3−イル基、6−ニトロ−ピリジン−4−イル基等のニトロピリジル基などが挙げられる。
【0174】
上記式(S4)で表されるトリアルコキシシランの具体例としては、トリエトキシ(4−(トリフルオロメチル)フェニル)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0175】
上記式(S5)で表されるジアルコキシシランの具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0176】
本発明で用いる有機シラン化合物(重合体)を合成するにあたって、上記式(S4)および/または式(S5)で表されるアルコキシラン化合物とともに、式(S6)〜(S8)で表されるアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1種を併用してもよく、特に、得られる重合体の分子量をより高めることを考慮すると、式(S6)で表されるテトラアルコキシシラン化合物を併用することが好ましい。
Si(OR′′′′)4 (S6)
Si(R′′′′′)2(OR′′′′)2 (S7)
SiR′′′′′(OR′′′′)3 (S8)
【0177】
ここで、R′′′′は、互いに独立して、Z13で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、R′′′′′は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基、Z14で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、Z14で置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、またはZ15で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z14は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、チオール基、Z16で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、またはZ16で置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリール基を表し、Z15は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、チオール基、Z16で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z16で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、またはZ16で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキニル基を表し、Z16は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、またはチオール基を表す。なお、Z13は上記と同じ意味を表す。
【0178】
上記ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のヘテロアリール基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0179】
R′′′′およびR′′′′′において、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。
また、アリール基およびヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
【0180】
R′′′′としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基がより一層好ましい。
R′′′′′としては、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基がより一層好ましく、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基がさらに好ましい。
なお、複数のR′′′′は、すべて同一でも異なっていてもよく、複数のR′′′′′も、すべて同一でも異なっていてもよい。
【0181】
13としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
14としては、ハロゲン原子、Z16で置換されていてもよいフェニル基、Z16で置換されていてもよいフラニル基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、フッ素原子、または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより一層好ましい。
15としては、ハロゲン原子、Z16で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、Z16で置換されていてもよいフラニル基が好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、フッ素原子、または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより一層好ましい。
16としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子または存在しないこと(すなわち、非置換であること)がより好ましい。
【0182】
上記式(S6)で表されるテトラアルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。
上記式(S7)で表されるジアルコキシシラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
上記式(S8)で表されるトリアルコキシシラン化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリエトキシ−2−チエニルシラン、3−(トリエトキシシリル)フラン等が挙げられる。
【0183】
なお、上記重合体からなる有機シラン化合物は、例えば、上述したアルコキシシラン化合物の単一物または2種以上の混合物を、水の存在下で(部分)加水分解縮合させて得ることができる。
加水分解の手法としては、特に限定されるものではなく一般的な手法を用いればよい。一例を挙げると、アルコキシシラン化合物を、水系溶媒中で20〜100℃程度で1〜24時間処理する手法が挙げられる。この際、酸または塩基を触媒として用いることもできる。
【0184】
本発明の電荷輸送性ワニスが有機シラン化合物を含有する場合、その含有量は、電荷輸送性物質の質量(ドーパント物質を含む場合は電荷輸送性物質およびドーパント物質の合計質量)に対して、通常0.1〜50質量%程度であるが、得られる薄膜の電荷輸送性の低下を抑制し、かつ、上述した陰極側に、当該ワニスから得られる薄膜からなる正孔注入層等に接するように積層される層への正孔注入能を高めることを考慮すると、好ましくは0.5〜40質量%程度、より好ましくは0.8〜30質量%程度、より一層好ましくは1〜20質量%程度である。
【0185】
本発明のワニスの粘度は、作製する薄膜の厚み等や固形分濃度に応じて適宜設定されるものではあるが、通常、25℃で1〜50mPa・sであり、その表面張力は、通常、20〜50mN/mである。
また、電荷輸送性ワニスの固形分濃度は、ワニスの粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1〜10.0質量%程度であり、ワニスの塗布性を向上させることを考慮すると、好ましくは0.5〜5.0質量%程度、より好ましくは1.0〜3.0質量%程度である。
【0186】
ワニスの調製法としては、特に限定されるものではないが、例えば、式(1)で表される化合物を先に溶媒に溶解させ、そこへ電荷輸送性化合物を順次加える手法や、式(1)で表される化合物と電荷輸送性化合物の混合物を溶媒に溶解させる手法が挙げられる。
また、有機溶媒が複数ある場合は、例えば、式(1)で表される化合物と電荷輸送性化合物をよく溶解する溶媒に、まずこれらを溶解させ、そこへその他の溶媒を加えてもよく、複数の有機溶媒の混合溶媒に、式(1)で表される化合物、電荷輸送性化合物を順次、あるいはこれらを同時に溶解させてもよい。
【0187】
本発明においては、電荷輸送性ワニスは、高平坦性薄膜を再現性よく得る観点から、式(1)で表される化合物、電荷輸送性化合物等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロオーダーのフィルター等を用いて濾過することが望ましい。
【0188】
本発明の電荷輸送性薄膜は、上記説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して焼成することで、基材上に形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられ、塗布方法に応じてワニスの粘度および表面張力を調節することが好ましい。
【0189】
また、本発明のワニスを用いる場合、焼成雰囲気も特に限定されるものではなく、大気雰囲気だけでなく、窒素等の不活性ガスや真空中でも均一な成膜面および高い電荷輸送性を有する薄膜を得ることができるが、式(1)で表される化合物とともに用いる電荷輸送性化合物等の種類によっては、ワニスを大気雰囲気下で焼成した方が、より高い電荷輸送性を有する薄膜を再現性よく得られる場合がある。
【0190】
焼成温度は、得られる薄膜の用途、得られる薄膜に付与する電荷輸送性の程度、溶媒の種類や沸点等を勘案して、100〜260℃程度の範囲内で適宜設定されるものではあるが、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、140〜250℃程度が好ましく、145〜240℃程度がより好ましい。
なお、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよく、加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等、適当な機器を用いて行えばよい。
【0191】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層として用いる場合、5〜200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
【0192】
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、上述の本発明の電荷輸送性薄膜を有するものである。
有機EL素子の代表的な構成としては、以下(a)〜(f)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層がホール(正孔)ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
【0193】
「正孔注入層」、「正孔輸送層」および「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入(輸送)層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、正孔輸送(発光)層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
「電子注入層」、「電子輸送層」および「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0194】
本発明の電荷輸送性薄膜は、有機EL素子において、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層として好適に用いることができ、正孔注入層としてより好適に用いることができる。
【0195】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を予め行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0196】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜からなる正孔注入層を有する有機EL素子の作製方法の例は、以下のとおりである。
上記の方法により、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、電極上に正孔注入層を作製する。
この正孔注入層の上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層は、用いる材料の特性等に応じて、蒸着法、塗布法(ウェットプロセス)のいずれかで形成すればよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、チタン、鉛、ビスマスやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0197】
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(N−ナフタレン−1−イル−N−フェニルアミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、2,2’,7,7’−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン、2,2’−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,2’−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン、ジ−[4−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)−フェニル]シクロヘキサン、2,2’,7,7’−テトラ(N,N−ジ(p−トリル))アミノ−9,9−スピロビフルオレン、N,N,N’,N’−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラ−(3−メチルフェニル)−3,3’−ジメチルベンジジン、N,N’−ジ(ナフタレニル)−N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラ(ナフタレニル)−ベンジジン、N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン−1,4−ジアミン、N1,N4−ジフェニル−N1,N4−ジ(m−トリル)ベンゼン−1,4−ジアミン、N2,N2,N6,N6−テトラフェニルナフタレン−2,6−ジアミン、トリス(4−(キノリン−8−イル)フェニル)アミン、2,2’−ビス(3−(N,N−ジ(p−トリル)アミノ)フェニル)ビフェニル、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2”−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類等の正孔輸送性低分子材料などが挙げられる。
【0198】
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2,7−ビス[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2−メチル−9,10−ビス(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2−(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2−[9,9−ジ(4−メチルフェニル)−フルオレン−2−イル]−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2,2’−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,3,5−トリス(ピレン−1−イル)ベンゼン、9,9−ビス[4−(ピレニル)フェニル]−9H−フルオレン、2,2’−ビ(9,10−ジフェニルアントラセン)、2,7−ジピレニル−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、1,3−ジ(ピレン−1−イル)ベンゼン、6,13−ジ(ビフェニル−4−イル)ペンタセン、3,9−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、3,10−ジ(ナフタレン−2−イル)ペリレン、トリス[4−(ピレニル)−フェニル]アミン、10,10’−ジ(ビフェニル−4−イル)−9,9’−ビアントラセン、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’:4’,1’’:4’’,1’’’−クウォーターフェニル]−4,4’’’−ジアミン、4,4’−ジ[10−(ナフタレン−1−イル)アントラセン−9−イル]ビフェニル、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン、1−(7−(9,9’−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1−(7−(9,9’−ビアントラセン−10−イル)−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン−2−イル)ピレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、1,3,5−トリス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチルフルオレン、2,2’,7,7’−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジ(p−トリル)フルオレン、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)−フェニル]フルオレン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−スピロビフルオレン、1,4−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−メチルフェニルメタン、2,7−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン、4,4”−ジ(トリフェニルシリル)−p−ターフェニル、4,4’−ジ(トリフェニルシリル)ビフェニル、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ジトリチル−9H−カルバゾール、9−(4−t−ブチルフェニル)−3,6−ビス(9−(4−メトキシフェニル)−9H−フルオレン−9−イル)−9H−カルバゾール、2,6−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、トリフェニル(4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル)シラン、9,9−ジメチル−N,N−ジフェニル−7−(4−(1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、3,5−ビス(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)ピリジン、9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−フォスフィン オキサイド、9,9’−(5−(トリフェニルシリル)−1,3−フェニレン)ビス(9H−カルバゾール)、3−(2,7−ビス(ジフェニルフォスフォリル)−9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)−9−フェニル−9H−カルバゾール、4,4,8,8,12,12−ヘキサ(p−トリル)−4H−8H−12H−12C−アザジベンゾ[cd,mn]ピレン、4,7−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)−1,10−フェナントロリン、2,2’−ビス(4−(カルバゾール−9−イル)フェニル)ビフェニル、2,8−ビス(ジフェニルフォスフォリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、ビス(2−メチルフェニル)ジフェニルシラン、ビス[3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジフェニルシラン、3,6−ビス(カルバゾール−9−イル)−9−(2−エチル−ヘキシル)−9H−カルバゾール、3−(ジフェニルフォスフォリル)−9−(4−(ジフェニルフォスフォリル)フェニル)−9H−カルバゾール、3,6−ビス[(3,5−ジフェニル)フェニル]−9−フェニルカルバゾール等が挙げられ、発光性ドーパントと共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
【0199】
発光性ドーパントとしては、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1gh]クマリン、キナクリドン、N,N’−ジメチル−キナクリドン、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(ppy)2(acac))、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(mppy)3)、9,10−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]アントラセン、9,10−ビス[フェニル(m−トリル)アミノ]アントラセン、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(II)、N10,N10,N10’,N10’−テトラ(p−トリル)−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジアミン、N10,N10,N10’,N10’−テトラフェニル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジアミン、N10,N10’−ジフェニル−N10,N10’−ジナフタレニル−9,9’−ビアントラセン−10,10’−ジアミン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、1,4−ビス[2−(3−N−エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、ビス[3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)]イリジウム(III)、4,4’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレートイリジウム(III)、N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−トリス(9,9−ジメチルフルオレニレン)、2,7−ビス{2−[フェニル(m−トリル)アミノ]−9,9−ジメチル−フルオレン−7−イル}−9,9−ジメチル−フルオレン、N−(4−((E)−2−(6((E)−4−(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン−2−イル)ビニル)フェニル)−N−フェニルベンゼンアミン、fac−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C2’)、mer−イリジウム(III)トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C2’)、2,7−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−スピロビフルオレン、6−メチル−2−(4−(9−(4−(6−メチルベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)アントラセン−10−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール、1,4−ジ[4−(N,N−ジフェニル)アミノ]スチリルベンゼン、1,4−ビス(4−(9H−カルバゾール−9−イル)スチリル)ベンゼン、(E)−6−(4−(ジフェニルアミノ)スチリル)−N,N−ジフェニルナフタレン−2−アミン、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジナト)(5−(ピリジン−2−イル)−1H−テトラゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾール)((2,4−ジフルオロベンジル)ジフェニルフォスフィネート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(ベンジルジフェニルフォスフィネート)イリジウム(III)、ビス(1−(2,4−ジフルオロベンジル)−3−メチルベンズイミダゾリウム)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジル)ピラゾレート)(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジネート)イリジウム(III)、ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナト)(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−2−(2’−ピリジル)ピロレート)イリジウム(III)、ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナト)(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)イリジウム(III)、(Z)−6−メシチル−N−(6−メシチルキノリン−2(1H)−イリデン)キノリン−2−アミン−BF2、(E)−2−(2−(4−(ジメチルアミノ)スチリル)−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−ジュロリジル−9−エニル−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[2−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[4,4’−ジ−t−ブチル−(2,2’)−ビピリジン]ルテニウム(III)・ビス(ヘキサフルオロフォスフェート)、トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、2,8−ジ−t−ブチル−5,11−ビス(4−t−ブチルフェニル)−6,12−ジフェニルテトラセン、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、5,10,15,20−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン白金、オスミウム(II)ビス(3−トリフルオロメチル−5−(2−ピリジン)−ピラゾレート)ジメチルフェニルフォスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジフェニルメチルフォスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾール)ジメチルフェニルフォスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−t−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾレート)ジメチルフェニルフォスフィン、ビス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[2−(4−n−ヘキシルフェニル)キノリン]イリジウム(III)、トリス[2−フェニル−4−メチルキノリン]イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2−(3−メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム(III)、ビス(2−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルピリジン)(3−(ピリジン−2−イル)−2H−クロメン−2−オネート)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、ビス(フェニルイソキノリン)(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(4−フェニルチエノ[3,2−c]ピリジナト−N,C2’)アセチルアセトネート、(E)−2−(2−t−ブチル−6−(2−(2,6,6−トリメチル−2,4,5,6−テトラヒドロ−1H−ピローロ[3,2,1−ij]キノリン−8−イル)ビニル)−4H−ピラン−4−イリデン)マロノニトリル、ビス(3−トリフルオロメチル−5−(1−イソキノリル)ピラゾレート)(メチルジフェニルフォスフィン)ルテニウム、ビス[(4−n−ヘキシルフェニル)イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、白金(II)オクタエチルポルフィン、ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[(4−n−ヘキシルフェニル)キソキノリン]イリジウム(III)等が挙げられる。
【0200】
電子輸送層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリノレート−リチウム、2,2’,2”−(1,3,5−ベンジントリル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、2−(4−ビフェニル)5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,3−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、6,6’−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2’−ビピリジン、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,7−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、1,3−ビス[2−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5f][1,10]フェナントロリン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、フェニル−ジピレニルフォスフィンオキサイド、3,3’,5,5’−テトラ[(m−ピリジル)−フェン−3−イル]ビフェニル、1,3,5−トリス[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン、4,4’−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ビフェニル、1,3−ビス[3,5−ジ(ピリジン−3−イル)フェニル]ベンゼン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ジフェニルビス(4−(ピリジン−3−イル)フェニル)シラン、3,5−ジ(ピレン−1−イル)ピリジン等が挙げられる。
【0201】
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、三酸化モリブデン(MoO3)、アルミニウム、Li(acac)、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0202】
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜からなる正孔注入層を有する有機EL素子の作製方法のその他の例は、以下のとおりである。
上記EL素子作製において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行う代わりに、正孔輸送層(以下、正孔輸送性高分子層)、発光層(以下、発光性高分子層)を順次形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を有する有機EL素子を作製することができる。
具体的には、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して上記の方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送性高分子層、発光性高分子層を順次形成し、さらに陰極電極を蒸着して有機EL素子とする。
【0203】
使用する陰極および陽極材料としては、上述のものと同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
正孔輸送性高分子層および発光性高分子層の形成法としては、正孔輸送性高分子材料もしくは発光性高分子材料、またはこれらにドーパント物質を加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、正孔注入層または正孔輸送性高分子層の上に塗布した後、それぞれ焼成することで成膜する方法が挙げられる。
【0204】
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1’−ビフェニレン−4,4−ジアミン)]、ポリ[(9,9−ビス{1’−ペンテン−5’−イル}フルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン]−エンドキャップド ウィズ ポリシルシスキノキサン、ポリ[(9,9−ジジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(p−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
【0205】
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0206】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げることができ、溶解または均一分散法としては撹拌、加熱撹拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
焼成する方法としては、不活性ガス下または真空中、オーブンまたはホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
【0207】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜からなる正孔輸送層を有するEL素子の作製方法の例は、以下のとおりである。
陽極基板上に正孔注入層を形成する。その層の上に、上記の方法により本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、正孔輸送層を作製する。
この正孔輸送層の上に、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。発光層、電子輸送層および電子注入層の形成方法および具体例は上述と同様のものが挙げられる。また、正孔注入層は、用いる材料の特性等に応じて、蒸着法、塗布法(ウェットプロセス)のいずれかで形成すればよい。
【0208】
正孔注入層を形成する材料としては、銅フタロシアニン、酸化チタンフタロシアニン、白金フタロシアニン、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)ベンジジン、2,7−ビス[N,N−ビス(4−メトキシ−フェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、2,2’−ビス[N,N−ビス(4−メトキシ−フェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ[4−(N,N−ジトリルアミノ)フェニル]ベンジジン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]ベンジジン、N4,N4’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(N4,N4’,N4’−トリフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン)N1,N1’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(N1−フェニル−N4,N4’−ジ−m−トリルベンゼン−1,4−ジアミン)、国際公開第2004/043117号、国際公開第2004/105446号、国際公開第2005/000832号、国際公開第2005/043962号、国際公開第2005/042621号、国際公開第2005/107335号、国際公開第2006/006459号、国際公開第2006/025342号、国際公開第2006/137473号、国際公開第2007/049631号、国際公開第2007/099808号、国際公開第2008/010474号、国際公開第2008/032617号、国際公開第2008/032616号、国際公開第2008/129947号、国際公開第2009/096352号、国際公開第2010/041701号、国際公開第2010/058777号、国際公開第2010/058776号、国際公開第2013/042623号、国際公開第2013/129249号、国際公開第2014/115865号、国際公開第2014/132917号、国際公開第2014/141998号および国際公開第2014/132834号に記載の電荷輸送材料等が挙げられる。
【0209】
陽極材料、発光層、発光性ドーパント、電子輸送層および電子ブロック層を形成する材料、陰極材料としては、上述と同じものが挙げられる。
【0210】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜からなる正孔注入輸送層を有する有機EL素子の作製方法の例は、以下のとおりである。
陽極基板上に正孔注入輸送層を形成し、この正孔注入輸送層の上に、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。発光層、電子輸送層および電子注入層の形成方法および具体例は上述と同様のものが挙げられる。
【0211】
陽極材料、発光層、発光性ドーパント、電子輸送層および電子ブロック層を形成する材料、陰極材料としては、上述と同じものが挙げられる。
【0212】
なお、電極および上記各層の間の任意の間に、必要に応じてホールブロック層、電子ブロック層等を設けてもよい。例えば、電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
【0213】
陽極と陰極およびこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料選択する。
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出されることから、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
【0214】
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤などとともに、封止してもよい。
【実施例】
【0215】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)分子量測定:昭和電工(株)製、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)およびShodex製カラム(KD−803L)
(測定条件)
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF),10ml/L
・流速:1.0ml/分
・検量線作成用標準サンプル:昭和電工(株)製、SL−105,標準ポリスチレン(分子量約580,2970,7200,19900,52400)
(2)基板洗浄:長州産業(株)製 基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(3)ワニスの塗布:ミカサ(株)製 スピンコーターMS−A100
(4)膜厚測定:(株)小坂研究所製 微細形状測定機サーフコーダET−4000
(5)膜の表面観察:レーザーテック社製 共焦点レーザー顕微鏡 リアルタイム走査型レーザー顕微鏡 1LM21D
(6)EL素子の作製:長州産業(株)製 多機能蒸着装置システムC−E2L1G1−N
(7)EL素子の輝度等の測定:(有)テック・ワールド製 I−V−L測定システム
(8)EL素子の寿命測定(輝度半減期測定):(株)イーエッチシー製 有機EL輝度寿命評価システムPEL−105S
【0216】
[1]化合物の合成
[合成例1]
式(TP1)で表されるチオフェン誘導体(以下「TP1」という。)を以下の方法により合成した
【化48】
【0217】
窒素雰囲気下、フラスコ内に、ターチオフェン2.01gおよびテトラヒドロフラン50mLを入れて−78℃に冷却した。そこへn−ブチルリチウムのノルマルへキサン溶液(1.64M)19.6mLを滴下し、−78℃のまま30分間撹拌し、次いで0℃まで昇温してさらに1時間撹拌した。
その後、再び−78℃に冷却して30分間撹拌した後、トリブチルクロロスタナン8.8mLを滴下して10分撹拌し、次いで0℃に昇温してさらに30分間撹拌した。
撹拌後、反応混合物から減圧下で溶媒を留去し、得られた残渣をトルエンに加え、ろ過によって不溶物を除去し、得られたろ液から減圧下で溶媒を留去し、ターチオフェンのビススタニル体を含むオイル状物12.88g(当該ビススタニル体の純度51.91%)得た。
次いで、窒素雰囲気下で、別のフラスコ内に、このターチオフェンビススタニル体を含むオイル状物6.44g、2−ブロモ−3−ノルマルヘキシルチオフェン2.41g、トルエン24mLおよびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.23gを順次入れて、還流条件下4.5時間撹拌した。
室温まで放冷し、溶媒を減圧留去した後、ろ過にて不溶物を除去した。得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、TP1を得た(収量:1.29g、収率:55%、2段階通算収率)。
1H−NMR(CDCl3):7.17(d,J=5.1Hz,2H),7.12(d,J=3.9Hz,2H),7.09(s,2H),7.01(d,J=3.9Hz,2H),6.93(d,J=5.1Hz,2H),2.78(t,J=7.7Hz,4H),1.54−1.70(m,4H),1.28−1.41(m,12H),0.89(t,J=7.0Hz,6H).
【0218】
[合成例2]
【化49】
【0219】
フラスコ内に、N1−(4−アミノフェニル)ベンゼン−1,4−ジアミン1.00g、3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾール8.89g、酢酸パラジウム112mg、およびt−ブトキシナトリウム3.47gを入れた後、フラスコ内を窒素置換した。そこへ、トルエン30mL、および予め調製しておいたジ−t−ブチル(フェニル)フォスフィンのトルエン溶液2.75mL(濃度81.0g/L)を入れ、90℃で6時間撹拌した。
撹拌終了後、反応混合物を室温まで冷却し、冷却した反応混合物と、トルエンと、イオン交換水とを混合して分液処理をした。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。濃縮液をシリカゲルにてろ過を行い、得られたろ液に活性炭0.2gを加え、室温で30分撹拌した。
その後、ろ過にて活性炭を取り除き、ろ液を濃縮した。濃縮液をメタノールおよび酢酸エチルの混合溶媒(500mL/500mL)に滴下し、得られたスラリーを室温で一晩撹拌し、次いでスラリーをろ過してろ物を回収した。得られたろ物を乾燥し、目的とするアニリン誘導体(PCZ5)を得た(収量5.88g,収率83%)。
1H−NMR(300MHz,THF−d8)δ[ppm]:8.08(d,J=7.7Hz,2H),7.99(d,J=7.7Hz,8H),7.60−7.64(m,19H),7.42−7.47(m,6H),7.28−7.36(m,19H),7.09−7.21(m,6H),7.00(m,8H).
MALDI−TOF−MS m/Z found:1404.68([M]+calcd:1404.56).
【0220】
[合成例3]有機シラン化合物の合成
温度計および還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中で、ヘキシレングリコール18.4g、ブチルセロソルブS6.1g、テトラエトキシシラン23.3g、および3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン10.5gを混合し、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。
この溶液に、予めヘキシレングリコール9.2g、ブチルセロソルブ3.1g、水8.6gおよび触媒として蓚酸0.7gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下し、さらに室温で30分撹拌した。その後、オイルバスを用いて加熱して1時間還流させた後、放冷して、SiO2換算濃度が12質量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサンの数平均分子量は2,500であり、重量平均分子量は3,500であった。
なお、得られたポリシロキサン溶液10.0g、ヘキシレングリコール42.0g、およびブチルセロソルブ14.0gを混合し、SiO2換算濃度が5質量%のポリシロキサン溶液を調製し、このポリシロキサン溶液を電荷輸送性ワニスの調製に用いた。
【0221】
[2]電荷輸送性ワニスの調製
[実施例1−1]
TP1 0.024gと、ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(e−Ray社製、以下「HAT−CN」という。)0.080gと、リンタングステン酸(日本新金属(株)製、以下「PTA」という。)0.104gとを、窒素雰囲気下で1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下「DMI」という。)3.5gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−ブタンジオール(以下「2,3−BD」という。)1.0gおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下「DPM」という。)0.5gを加えて撹拌し、更にそこへ3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)0.003gおよびフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)0.007gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0222】
[実施例1−2]
TP1 0.024gと、HAT−CN0.078gとを、窒素雰囲気下でDMI3.5gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD1.0gおよびDPM0.5gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0223】
[実施例1−3]
PCZ5 0.088gと、HAT−CN0.120gとを、窒素雰囲気下でDMI7.0gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD2.0gおよびDPM1.0gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0224】
[実施例1−4]
PCZ5 0.055gと、HAT−CN0.149gとを、窒素雰囲気下でDMI7.0gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD2.0gおよびDPM1.0gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0225】
[実施例1−5]
PCZ5 0.088gと、HAT−CN0.120gとを、窒素雰囲気下でDMI7.0gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD2.0gおよびDPM1.0gを加えて撹拌し、更にそこへ合成例3にて調製したポリシロキサン溶液0.104gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0226】
[実施例1−6]
ポリシロキサン溶液の使用量を0.208gとした以外は、実施例1−5と同様にして電荷輸送性ワニスを調製した。
【0227】
[実施例1−7]
PCZ5 0.087gと、HAT−CN0.119gと、PTA0.103gとを、窒素雰囲気下でDMI7.0gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD2.0gおよびDPM1.0gを加えて撹拌し、更にそこへ3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン0.007gおよびフェニルトリメトキシシラン0.014gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0228】
[実施例1−8]
PCZ5 0.176gと、HAT−CN0.240gとを、窒素雰囲気下でDMI7.0gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD2.0gおよびDPM1.0gを加えて撹拌し、更にそこへ合成例3にて調製したポリシロキサン溶液0.417gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0229】
[実施例1−9]
PCZ5 0.180gと、HAT−CN0.245gと、PTA0.213gとを、窒素雰囲気下でDMI7.0gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD2.0gおよびDPM1.0gを加えて撹拌し、更にそこへ3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン0.014gおよびフェニルトリメトキシシラン0.028gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0230】
[実施例1−10]
PCZ5 0.074gと、HAT−CN0.101gと、PTA0.088gとを、窒素雰囲気下でDMI3.0gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD1.5gおよびDPM0.5gを加えて撹拌し、更にそこへ3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン0.006gおよびフェニルトリメトキシシラン0.012gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0231】
[実施例1−11]
DMI、2,3−BDおよびDPMの使用量を、それぞれ2.5g、2.0gおよび0.5gとした以外は、実施例1−10と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した。
【0232】
[実施例1−12]
DMI、2,3−BDおよびDPMの使用量を、それぞれ2.5g、1.5gおよび1.0gとした以外は、実施例1−10と同様の方法で電荷輸送性ワニスを調製した。
【0233】
[比較例1−1]
HAT−CN0.104gを、窒素雰囲気下でDMI3.5gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD1.0gおよびDPM0.5gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0234】
[比較例1−2]
HAT−CN0.104gと、PTA0.104gとを、DMI3.5gに溶解させた。得られた溶液に、2,3−BD1.0gおよびDPM0.5gを加えて撹拌し、電荷輸送性ワニスを調製した。
【0235】
[3]電荷輸送性薄膜の作製およびその表面観察
[実施例2−1]
実施例1−1で得られたワニスを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下で、50℃で5分間仮焼成をし、次いで230℃で15分間本焼成をし、ITO基板上に30nmの薄膜を形成した。なお、ITO基板としては、ITOが表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した(以下、同様)。
【0236】
[実施例2−2]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−2で得られたワニスを用いた以外は、実施例2−1と同様の方法で薄膜を形成した。
【0237】
[比較例2−1]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、比較例1−1で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成した以外は、実施例2−1と同様の方法で薄膜を形成した。なお、形成した薄膜の膜厚測定を行ったところ、膜表面の凹凸が大きく正確な膜厚を測定することができなかった。それゆえ、当該薄膜の膜厚30nmは、推定値である。
【0238】
実施例2−1、実施例2−2および比較例2−1で得られた薄膜の表面を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。結果を図1〜3に示す。
図1〜3から明らかなように、比較例のワニスを用いた場合、得られた薄膜の表面にムラが観察され、高平坦性の薄膜が得られなかったのに対し、本発明のワニスを用いた場合、表面ムラはほぼ観測されなかった。
【0239】
[4]単層素子の製造およびその評価
[実施例3−1]
実施例2−1と同様の方法で、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置を用いてアルミニウム薄膜を形成して単層素子を得た。アルミニウム薄膜の膜厚は120nmとし、蒸着は、真空度1.3×10-3Pa、蒸着レート0.2nm/秒の条件で行った。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点−85℃以下の窒素雰囲気中で、素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカット WB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製、HD−071010W−40)を素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0240】
[比較例3−1]
比較例2−1と同様の方法で、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。そして、実施例3−1と同様の方法で、単層素子を作製した。
【0241】
[比較例3−2]
比較例1−1で得られたワニスの代わりに比較例1−2で得られたワニスを用いた以外は、比較例3−1と同様の方法で単層素子を作製した。
【0242】
作製した単層素子について、駆動電圧3Vにおける電流密度を測定した。結果を表19に示す。
【0243】
【表19】
【0244】
表19に示されるように、実施例のワニスから作製した薄膜は、優れた電荷輸送性を有していることがわかる。
【0245】
[5]有機EL素子の製造およびその評価
[実施例4−1]
実施例2−1と同様の方法で、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10-5Pa)を用いてα−NPD(N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン)を0.2nm/秒にて30nm成膜した。次に、CBPとIr(PPy)3を共蒸着した。共蒸着はIr(PPy)3の濃度が6%になるように蒸着レートをコントロールし、40nm積層させた。次いで、BAlq、フッ化リチウムおよびアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、BAlqおよびアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ20nm、0.5nmおよび100nmとした。
そして、実施例3−1と同様の方法で、素子を封止した。
【0246】
【化50】
【0247】
[実施例4−2]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−2で得られたワニスを用いた以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0248】
[実施例4−3]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−3で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成した以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0249】
[実施例4−4]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−4で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成した以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0250】
[実施例4−5]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−5で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成した以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0251】
[実施例4−6]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−6で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成した以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0252】
[実施例4−7]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−7で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成した以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0253】
[実施例4−8]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−8で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成し、ITO基板上に形成する薄膜の膜厚を90nmとした以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0254】
[実施例4−9]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−9で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成し、ITO基板上に形成する薄膜の膜厚を90nmとした以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0255】
[実施例4−10]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−10で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成し、ITO基板上に形成する薄膜の膜厚を100nmとした以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0256】
[実施例4−11]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−11で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成し、ITO基板上に形成する薄膜の膜厚を100nmとした以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0257】
[実施例4−12]
実施例1−1で得られたワニスの代わりに、実施例1−12で得られたワニスを用い、230℃で15分間焼成する代わりに、150℃で10分間焼成し、ITO基板上に形成する薄膜の膜厚を100nmとした以外は、実施例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0258】
[実施例4−13]
ITO基板上に形成する薄膜の膜厚を150nmとした以外は、実施例4−8と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0259】
[比較例4−1]
比較例2−1と同様の方法で、ITO基板上に30nmの均一な薄膜を形成した。そして、実施例4−1と同様の方法で、有機EL素子を作製した。
【0260】
[比較例4−2]
比較例1−1で得られたワニスの代わりに比較例1−2で得られたワニスを用いた以外は、比較例4−1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0261】
作製したEL素子について、輝度5,000cd/m2で発光させた場合における駆動電圧、電流密度および電流効率を測定した。結果を表20に示す。
【0262】
【表20】
【0263】
表20に示されるように、実施例の有機EL素子の駆動電圧は低く、その電流効率も高いことがわかる。
以上のとおり、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いることで、有機EL素子の低駆動電圧化が可能となる
【0264】
次に、実施例4−1、実施例4−3〜4−13の素子の輝度の半減期(初期輝度5,000cd/m2)を測定した。結果を表21に示す。
【0265】
【表21】
【0266】
表21に示されるように、実施例の有機EL素子は、耐久性に優れることがわかる。
図1
図2
図3