(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の態様に係るデバイス製造方法および転写基板について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、基板(以下、第1基板)P1に薄膜を形成する成膜装置10の構成を示す図である。第1基板P1は、フレキシブル(可撓性)のシート状の基板(シート基板)であり、成膜装置10は、第1基板(転写基板、担持基材)P1をロール状に巻いた供給ロール12から供給された第1基板P1が送出され、送出された第1基板P1に対して成膜処理を施した後、回収ロール14が巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール方式の構造を有する。この第1基板P1は、第1基板P1の移動方向が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。成膜装置10は、チャンバー16、チャンバー16内の空気を吸引してチャンバー16内を真空にする真空ポンプ18、成膜原料(薄膜原料)となる基材20、ガイドローラGR1〜GR3、および、成膜用回転ドラム22をさらに備える。
【0013】
供給ロール12および回収ロール14には、図示しないモータが設けられ、該モータが回転することで、供給ロール12から第1基板P1が搬出され、回収ロール14によって送出された第1基板P1が巻き取られる。また、成膜用回転ドラム22は、回転しながら第1基板P1を搬送するとともに、成膜が行われる部分を円周面で支持する。これにより、第1基板P1は、成膜用回転ドラム22の外周面(円周面)に倣って回収ロール14に向かって搬送される。ガイドローラGR1〜GR3は、搬送される第1基板P1の経路をガイドするものである。なお、成膜用回転ドラム22には、図示しないモータが設けられ、該モータが回転することで、成膜用回転ドラム22は回転する。
【0014】
成膜装置10は、蒸着若しくはスパッタリングにより第1基板P1上に薄膜(層)を形成する。蒸着により成膜を行う場合は、基材20を抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、または、レーザー等の方法で加熱させ、気化若しくは昇華された成膜原料を第1基板P1に付着させて薄膜を形成する。また、スパッタリングにより成膜を行う場合は、基材20にイオン化させたアルゴンガスを衝突させて基材20の分子を遊離させ、この遊離分子を第1基板P1に付着させて薄膜を形成する。したがって、回収ロール14は、その表面に薄膜(層)が形成された第1基板P1を巻き取ることになる。なお、成膜装置10は、CVD(Chemical Vapor Deposition)により薄膜を形成してもよい。また、成膜装置10として、例えば国際公開第2013/176222号パンフレットに開示されているようなミストデポジション法(ミストCVD法)を利用したものでも良い。
【0015】
このような成膜装置10を用いて、第1基板P1に何層もの薄膜を連続して積層することができる。つまり、第1の層が表面に形成された第1基板P1を巻き取った回収ロール14を、別の成膜装置10の供給ロール12として用いることで、前記別の成膜装置10によって新たな層(第2の層)が第1の層の上に積層される。また、積層する際に、成膜原料となる基材20を変えることで、異なる材質の薄膜を積層することもできる。この薄膜を積層することで、薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)等の半導体素子を含む電子デバイスを構成する少なくとも一部の積層構造体を、担持基材としての第1基板P1上に形成することができる。
【0016】
例えば、ボトムコンタクト型のTFT(薄膜トランジスタ)を形成する場合は、成膜装置10によって、第1基板P1の表面に、金属系の材料(Cu、Al、Mo等)やITOの薄膜(第1導電層)、絶縁材料(SiO
2、Al
2O
3等)の薄膜(絶縁層)、金属系の
材料(Cu、Al、Mo等)の薄膜(第2導電層)を順に積層することで、TFTを構成する少なくとも一部の積層構造体を第1基板P1上に形成する。また、トップコンタクト型のTFTを形成する場合は、成膜装置10によって、金属系の材料(Cu、Al、Mo等)の薄膜(第1導電層)、酸化物半導体(IGZO、ZnO等)、シリコン(α-Si
)、または、有機半導体(ペンタセン)等の薄膜(半導体層)、絶縁材料(SiO
2、A
l
2O
3等)の薄膜(絶縁層)、金属系の材料(Cu、Al、Mo等)やITOの薄膜(第2導電層)を順に積層することで、TFTを構成する積層構造体を第1基板P1上に形成することができる。
【0017】
このようにして積層構造体が形成された第1基板P1は、後に詳述するフォトリソグラフィ(光パターニング)、エッチング等の非真空系の処理装置によって処理され、半導体素子用の電極層、絶縁層、配線層、或いは半導体層等のパターン形状を持つように加工される。そのようなパターン形状に加工された第1基板P1の積層構造体は、基板(以下、第2基板)P2に転写される。
図2は、第1基板P1に形成(担持)された積層構造体を第2基板P2(製品基板)に転写するためのラミネータ装置30の構成を示す図である。このラミネータ装置30は、例えば、100度以下の低温で、第1基板P1に形成された積層構造体を第2基板P2に転写する低温熱転写方式の装置である。ラミネータ装置30は、供給ロール32、34、圧着加熱ローラ36、回収ロール38、40、および、ガイドローラGR5、GR6を備える。
【0018】
供給ロール32は、表面に積層構造体が形成された第1基板P1をロール状に巻いたものであり、第1基板P1を回収ロール38に向けて搬出する。供給ロール34は、積層構造体が転写される第2基板P2をロール状に巻いたものであり、第2基板P2を回収ロール40に向けて搬出する。なお、第2基板P2も、第1基板P1と同様に、フレキシブルのシート状の基板(シート基板、被転写基板)であり、第2基板P2の移動方向が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。
【0019】
圧着加熱ローラ36は、供給ロール32から供給された第1基板P1と、供給ロール34から供給された第2基板P2とを両側から挟んで、一時的に密着させて圧着を行うとともに加熱も行う。これにより、第1基板P1上に形成された積層構造体を第2基板P2に転写することができる。つまり、圧着加熱ローラ36による加熱(例えば、100度以下の低温)によって第1基板P1上に形成された積層構造体が軟化されるとともに、圧着加熱ローラ36による圧着によって軟化された第1基板P1上の積層構造体が第2基板P2に転写される。この圧着加熱ローラ36の表面は弾性体が用いられ、転写材料に応じて圧着加熱ローラ36の温度と圧着力(加圧力)とを任意に設定することが好ましい。
【0020】
回収ロール38は、圧着加熱ローラ36を通過した第1基板P1、つまり、積層構造体が剥がれた第1基板P1を巻き取ることで回収する。回収ロール40は、圧着加熱ローラ36を通過した第2基板P2、つまり、積層構造体が転写された第2基板P2(積層構造体が表面に形成された第2基板P2)を巻き取ることで回収する。ガイドローラGR5は、供給ロール32から供給された第1基板P1を圧着加熱ローラ36に案内するものであり、ガイドローラGR6は、供給ロール34から供給された第2基板P2を圧着加熱ローラ36に案内するものである。
【0021】
ここで、第1基板P1および第2基板P2は、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および、酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、第1基板P1および第2基板P2の厚みや剛性(ヤング率)は、搬送される際に、第1基板P1および第2基板P2に座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。第1基板P1および第2基板P2の母材として、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
【0022】
第1基板P1および第2基板P2は、第1基板P1および第2基板P2に対して施される処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板を選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素等でもよい。また、第1基板P1および第2基板P2は、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
【0023】
なお、
図1のような成膜装置10では、成膜の際に第1基板P1を、例えば100℃〜300℃程度に加熱することがあることから、第1基板P1の母材は特に耐熱性のよいポリイミド樹脂、極薄シートガラス、或いは極薄の金属箔シート(十数μm〜数百μmの厚さに圧延した銅箔、ステンレス箔、アルミ箔)等が望ましい。さらに、第1基板P1は、必ずしもロール状に巻き取れる長尺のシート基板である必要はなく、製造すべき電子デバイス(或いはその回路基板)の大きさに合わせたサイズに切断された枚葉のシート基板やガラス基板、金属板であってもよい。
【0024】
次に、TFTの製造方法について説明する。TFTの構造は、ボトムゲート型構造とトップゲート型構造に大別されるが、本第1の実施の形態では、ボトムゲート型構造のTFTの製造工程について説明し、トップゲート型構造のTFTの製造工程の説明を省略する。また、ボトムゲート型構造のTFTは、ボトムコンタクト型とトップコンタクト型に分類されるので、まず、ボトムコンタクト型のTFTの製造方法を説明した後、トップコンタクト型のTFTの製造方法を説明する。
【0025】
(ボトムコンタクト型のTFTの製造方法について)
図3および
図4は、ボトムコンタクト型のTFTの製造方法の工程の一例を示すフローチャートであり、
図5A〜
図5F、および、
図6A〜
図6Dは、
図3および
図4に示す工程によって製造されるTFTの製造経過状態を示す断面図である。まず、
図3のステップS1で、
図5Aに示すように、第1基板P1上に剥離層50を形成する。例えば、フッ素系の材質若しくはアルカリ溶解離形剤(アルカリに対して可溶な材料)を第1基板P1の表面に塗布することで剥離層50を形成してもよく、感光性アルカリ溶解膜が形成されたドライフィルムレジスト(DFR)を第1基板P1にラミネートすることで剥離層50を形成してもよい。アルカリ溶解離形剤としては、バインダー樹脂とカルボキシル基の混合物等が挙げられる。この剥離層50は、積層構造体が第1基板P1から剥離しやすくするためのものである。
【0026】
そして、
図5Bに示すように、第1基板P1上に、積層構造体52を形成する(第1の工程)。この積層構造体52は、第1基板P1上(剥離層50上)に所定の厚さで堆積された金属系の材料(Cu、Al、Mo、Au等の導電性の材料)やITO(導電性の材料)の薄膜(第1導電層)52aと、第1導電層52aの上に所定の厚さで堆積された絶縁材料(SiO
2、Al
2O
3等の絶縁性の材料)の薄膜(機能層)52bと、機能層52bの上に所定の厚さで堆積された金属系の材料(Cu、Al、Mo、Au等の導電性の材料)やITO(導電性の材料)の薄膜(第2導電層)52cとで構成される。なお、積層構造体52を構成する第1導電層52aと第2導電層52cの材料を銅(Cu)とする場合、第1基板P1の材料も銅(Cu)にして、熱膨張率を揃えるのがよい。
【0027】
したがって、まず、ステップS2で、第1基板P1(剥離層50)の上に第1導電層52aを形成(堆積)する。そして、ステップS3で、第1導電層52aの上に絶縁層である機能層52bを形成(堆積)し、ステップS4で、さらに第2導電層52cを形成(堆積)する。これにより、第1基板P1上に積層構造体52が形成される。この第1導電層52a、機能層52b、および、第2導電層52cは、上述した
図1のような成膜装置10を用いることで第1基板P1上に連続して形成される。なお、第1導電層52aは、ソース電極およびドレイン電極の電極層と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線の配線層として機能するものである。また、第2導電層52cは、ゲート電極の電極層とゲート電極に付随する配線の配線層として機能するものである。ここで、TFTとしての電気特性(移動度、オンオフ比、リーク電流等)を良好なものとするため、第1導電層52aと機能層52bとの界面、或いは機能層52bと第2導電層52cとの界面は、サブミクロン以下のオーダーで平坦化されていることが望ましい。そのためには、第1基板P1の剥離層50側の表面も、サブミクロン以下のオーダーで平坦化されていることが望ましい。
【0028】
その後、積層構造体52が形成された第1基板P1に対して、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、
図5Cに示すように、第2導電層52cにゲート電極およびそれに付随する配線を形成する(第1の工程)。なお、
図5Cでは、ゲート電極のみを表している。
【0029】
このフォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理は周知技術なので簡単に説明すると、ステップS5で、第2導電層52c上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層の形成は、液体レジストをローラ印刷方式、ダイコート方式、スプレー方式等で行ったり、ドライフィルムレジスト(DFR)のフォトレジスト層を第2導電層52c上にラミネートしたりすることで簡単に実施できる。そして、ステップS6で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターン(ゲート電極およびそれに付随する配線等のパターン)を露光し、ステップS7で、現像を行う(TMAH等の現像液に第1基板P1を浸す)ことで紫外線が露光された部分のフォトレジスト層を除去する。これにより、フォトレジスト層に所定のパターン(レジスト像)が形成される。次いで、第1基板P1の洗浄、乾燥後のステップS8で、積層構造体52が形成された第1基板P1を腐食液(例えば、酸化第二鉄)に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしたエッチング処理が施されて、第2導電層52cにゲート電極およびそれに付随する配線等が形成される。そして、ステップS9で、第2導電層52c上にあるフォトレジスト層を剥離し、第1基板P1の洗浄を行う。これにより、
図5Cに示すような積層構造体52が得られる。なお、第1基板P1の洗浄は、NaOH等のアルカリ洗浄液を用いて洗浄してもよい。
【0030】
そして、ステップS10で、
図5Dに示すように、積層構造体52が形成された第1基板P1の表面側(積層構造体52側)に接着剤を塗布することで、接着層54を形成する。この接着層54は、第1基板P1上に形成された積層構造体52を第2基板P2に転写(接着)させやすくするためのものである。この接着剤として、例えば、ドライラミネート用接着剤、紫外線の光エネルギーに反応して液体から固体に変化するUV(紫外線)硬化接着剤、または、熱硬化接着剤を用いてもよい。第1の実施の形態では、ドライラミネート用接着剤を用いるものとする。
【0031】
そして、ドライラミネート用接着剤の場合は、第2導電層52cが第2基板P2側に位置するように、第1基板P1と第2基板P2とを一時的に近接または密着させて、第1基板P1上に形成された積層構造体52を第2基板P2に転写する(第2の工程)。この転写は、上述の
図2のようなラミネータ装置30によって転写される。すなわち、剥離層50、積層構造体52、および、接着層54が、第1基板P1の表面側から前記の順で積層された第1基板P1がロール状に巻かれたものを、ラミネータ装置30の供給ロール32として用いることで、第1基板P1に形成された積層構造体52を第2基板P2に転写することができる。このとき、剥離層50は、第2基板P2側には転写されずに第1基板P1側に残されたままとなる。
【0032】
詳しく説明すると、まず、
図5Eに示すように、積層構造体52上に形成された接着層54を第2基板P2の表面に接着させ(ステップS11)、
図5Fに示すように、剥離層50によって積層構造体52を第1基板P1から剥離する(ステップS12)。これにより、第1基板P1上の積層構造体52が第2基板P2に転写される。この転写によって、積層構造体52が反転した状態で第2基板P2上に形成される。つまり、積層構造体52を構成する第2導電層52c、機能層52b、および、第1導電層52aが、第2基板P2の表面側から前記の順で第2基板P2上に積層されることになり、第1導電層52aが露呈する。ラミネータ装置30によって積層構造体52が転写された第2基板P2は、回収ロール40によって巻き取られる。なお、剥離層50が第1基板P1から剥がれ第2基板P2側に転写された場合は、剥離層50を除去して第2基板P2の洗浄を行う。第2基板P2の洗浄は、NaOH等のアルカリ洗浄液を用いて洗浄してもよい。剥離層50は、可溶性なので、溶媒によって第1導電層52aから取り除かれる。
【0033】
そして、回収ロール40を供給ローラとして用い、この供給ローラから搬出された第2基板P2に対して、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、
図6Aに示すように、第1導電層52aにソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線とを形成する(第4の工程)。なお、
図6Aでは、ソース電極およびドレイン電極のみを表している。
【0034】
フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によるソース電極等の形成について簡単に説明すると、まず、
図4のステップS13で、第2基板P2の表面側(第1導電層52a側)にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層は、ステップS5で説明したように、ドライフィルムレジスト(DFR)の転写や液体レジストの塗布等によって形成される。そして、ステップS14で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターン(ソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線等のパターン)を露光し、ステップS15で、現像を行う。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS16で、積層構造体52が形成された第2基板P2を腐食液(例えば、酸化第二鉄等)に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしてエッチング処理が施されて、第1導電層52aにソース電極およびドレイン電極等が形成される。そして、ステップS17で、第1導電層52a上にあるフォトレジスト層を剥離し、第2基板P2の洗浄を行う。これにより、
図6Aに示すような積層構造体52が得られる。
【0035】
ソース電極とドレイン電極は、その直下の機能層(絶縁層)52bのさらに下のゲート電極(第2導電層52c)に対して、精密に位置合わせ(重ね合せ)されている必要がある。したがって、ステップS14での露光工程で使われる露光装置(描画装置)は、
図3中のステップS5〜S9のゲート電極等形成工程で、ゲート電極とともに第1基板P1上の第2導電層52cによって形成されるアライメントマークを、機能層(絶縁層)52bを介して、或いは直接的に光学検出するアライメントセンサーと、そのマークの検出位置に基づいて、ステップS14で露光すべき所定パターン(ソース電極、ドレイン電極、および付随する配線等のパターン)に対応した紫外線と第2基板P2との相対位置関係を精密に調整する機能とを備えている。
【0036】
そして、ステップS18で、
図6Bに示すように、第1導電層52aのソース電極およびドレイン電極にAu置換メッキ処理を行う(第4の工程)。この置換メッキ処理により塗布されたAu(金)56は、ソース電極およびドレイン電極と、後述する半導体層との接触界面の抵抗を下げる(電子移動度を高める)ためのものである。
【0037】
その後、ステップS19で、
図6Cに示すように、第2基板P2の上(第1導電層52aの上)に、半導体(IGZO、ZnO等)の薄膜(半導体層)58を形成する(第4の工程)。そして、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、
図6Dに示すように、半導体層58を加工する(第4の工程)。つまり、ステップS20で、半導体層58上にフォトレジスト層を形成し、ステップS21で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターンを露光し、ステップS22で現像を行う。この露光の際も、アライメントセンサーによってアライメントマークを検出し、半導体層58のうちの残すべき部分がドレイン電極とソース電極との間を精密に跨ぐように、紫外線の照射位置が精密に位置決めされる。
【0038】
これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS23で、第2基板P2を腐食液(例えば、フッ化水素等)に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしてエッチング処理が施されて、半導体層58が加工される。これにより、
図6Dに示すように、少なくともソース電極とドレイン電極との間にある半導体層58を残し、それ以外の不要な半導体層58を除去することができる。その後、ステップS24で、半導体層58上にあるフォトレジスト層を剥離し、第2基板P2の洗浄を行う。このような工程を経ることで、第2基板P2上に、
図6Dに示すようなボトムコンタクト型のTFTが形成される。なお、半導体層58は、有機半導体や酸化物半導体であってもよい。この場合は、予めレジストによりパターニングし、半導体の液体材料をソース電極とドレイン電極の間(チャネル部)を含む領域に選択的に塗布した後、リフトオフ法を用いて、ソース電極とドレイン電極との間に半導体層58を形成してもよい。
【0039】
以上説明した工程のうち、少なくとも
図3のステップS1〜ステップS4の工程(
図5Aおよび
図5B)を第1基板P1の供給業者が行うようにし、供給業者が行った工程より後の工程を電子デバイスの製造業者が行うようにしてもよい。例えば、供給業者は、
図3のステップS1〜ステップS4の工程を行い、製造業者は、
図3のステップS5〜
図4のステップS24の工程(
図5C〜
図6D)を行ってもよい。本実施の形態では、
図3のステップS1〜ステップS4の工程を経て製造された第1基板P1(積層構造体52の担持基材)が、中間製品としてロール状に巻かれた状態、または所定の長さで枚葉状に切断された状態で、電子デバイスの製造業者に供給される。
【0040】
このように、例えば、
図3のステップS1〜ステップS4の工程(真空処理装置を必要とする工程)を第1基板P1の供給業者が行い、
図3のステップS5〜
図4のステップS24の工程(真空処理装置が不要な工程)をTFT(電子デバイス)の製造業者が行うことで、電子デバイスの製造業者の負担を軽減させることができ、高精度な電子デバイスを簡単に製造することができる。つまり、高精度な電子デバイスを製造するためには、電子デバイスを構成する少なくとも一部の積層構造体52を真空空間で成膜する必要があるが、電子デバイスの製造業者は真空空間での成膜を行わなくて済むので、電子デバイスの製造業者の負担が軽減する。また、電子デバイスの製造業者は、積層構造体52が形成された第1基板P1を用いて、電子デバイスを形成していけばよいので、電子デバイスの数および配置を任意に決定して電子デバイスを製造することができ、電子デバイスを構成する薄膜トランジスタ等の配置や結線、バスライン等の設計の自由度が向上する。また、電子デバイスを構成する全ての層の成膜に必要な多数の真空蒸着装置や塗工装置、或いはスパッタ装置等を持たない製造業者であっても、容易に高性能な電子デバイスを製造することができる。
【0041】
(トップコンタクト型のTFTの製造方法について)
図7および
図8は、トップコンタクト型のTFTの製造方法の工程の一例を示すフローチャートであり、
図9A〜
図9D、および、
図10A〜
図10Cは、
図7および
図8に示す工程によって製造されるTFTの製造経過状態を示す断面図である。まず、
図7のステップS31で、
図9Aに示すように、第1基板P1上に剥離層70を形成する。この工程は、
図3のステップS1と同様である。
【0042】
そして、
図9Bに示すように、第1基板P1上に、積層構造体72を形成する(第1の工程)。この積層構造体72は、第1基板P1上(剥離層70上)に所定の厚さで堆積された金属系の材料(Cu、Al、Mo、Au等の導電性の材料)やITO(導電性の材料)の薄膜(第1導電層)72aと、第1導電層72aの上に所定の厚さで堆積された半導体(IGZO、ZnO、シリコン、ペンタセン等の半導体特性を示す材料)の薄膜(半導体層)72b1と、半導体層72b1の上に所定の厚さで堆積された絶縁材料(SiO
2、Al
2O
3等の絶縁性の材料)の薄膜(絶縁層)72b2と、絶縁層72b2の上に所定の厚さで堆積された金属系の材料(Cu、Al、Mo、Au等の導電性の材料)やITO(導電性の材料)の薄膜(第2導電層)72cとで構成される。半導体層72b1および絶縁層72b2は、機能層72bを構成する。なお、ここでも、第1基板P1の母材は、成膜時の加熱(100〜300℃)を考慮して、耐熱性のよいポリイミド樹脂、極薄シートガラス、或いは極薄の金属箔シート(十数μm〜数百μmの厚さに圧延した銅箔、ステンレス箔、アルミ箔)等にするとよい。また、剥離層70も、先の
図3〜
図6で説明した剥離層50と同様に、フッ素系の材質、若しくはアルカリ溶解離形剤、無機材料をベースとした離型剤、シリコン離型剤等が使える。
【0043】
したがって、まず、ステップS32で、第1基板P1(剥離層70)の上に第1導電層72aを形成(堆積)する。そして、ステップS33で、第1導電層72aの上に半導体層72b1を形成(堆積)し、ステップS34で、さらに絶縁層72b2を形成(堆積)することで機能層72bを形成する。その後、ステップS35で、機能層72bの上に第2導電層72cを形成(堆積)する。これにより、第1基板P1上に積層構造体72が形成される。この第1導電層72a、半導体層72b1、絶縁層72b2、および、第2導電層72cは、上述した成膜装置10を用いることで第1基板P1上に連続して形成される。なお、第1導電層72aは、ソース電極およびドレイン電極の電極層と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線の配線層として機能するものである。また、第2導電層72cは、ゲート電極の電極層と、ゲート電極に付随する配線の配線層として機能するものである。以上の構成において、第1基板P1や第1導電層72aを金属系の材料(例えばCu)とした場合、第1導電層72a上に半導体層72b1を形成する際に、PET等の樹脂フィルムのガラス転移温度よりも遥かに高い温度(例えば200℃以上)に加熱することが可能なので、有機半導体材料や酸化物半導体材料等の配向(結晶化)が良好に行われ、TFTの電気特性(例えば移動度)を飛躍的に向上させることができる。併せて、少なくとも第1導電層72aと半導体層72b1との界面、および、絶縁層72b2と第2導電層72cとの界面の各々を、サブミクロン以下のオーダーで平坦化しておくことも、TFTの電気特性の向上に寄与する。
【0044】
その後、積層構造体72が形成された第1基板P1に対して、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、
図9Cに示すように、第2導電層72cにゲート電極およびそれに付随する配線を形成する(第1の工程)。なお、
図9Cでは、ゲート電極のみを表している。
【0045】
フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によるゲート電極等の形成について簡単に説明すると、まず、ステップS36で、第2導電層72c上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層は、
図3のステップS5で説明したように、ドライフィルムレジストの転写やレジスト液の塗布等によって形成される。そして、ステップS37で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターン(ゲート電極およびそれに付随する配線等のパターン)を露光し、ステップS38で、現像を行う(TMAH等の現像液に第1基板P1を浸す)。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS39で、積層構造体72が形成された第1基板P1を腐食液(例えば、酸化第二鉄等)に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしたエッチング処理が施されて、第2導電層72cにゲート電極等が形成される。そして、ステップS40で、第2導電層72c上にあるフォトレジスト層を剥離し、第1基板P1の洗浄を行う。これにより、
図9Cに示すような積層構造体72が得られる。なお、第1基板P1の洗浄は、NaOH等のアルカリ洗浄液を用いて洗浄してもよい。
【0046】
そして、
図8のステップS41で、
図9Dに示すように、積層構造体72が形成された第1基板P1の表面側(積層構造体72側)に接着剤を塗布することで、接着層74を形成する。
【0047】
次いで、第2導電層72cが第2基板P2側に位置するように、第1基板P1と第2基板P2とを一時的に近接または密着させて、第1基板P1上に形成された積層構造体72を第2基板P2に転写する(第2の工程)。この転写は、上述したラミネータ装置30によって転写される。すなわち、剥離層70、積層構造体72、および、接着層74を、第1基板P1の表面側から前記の順で積層した第1基板P1が、ラミネータ装置30の供給ロール32にロール状に巻かれた状態でセットされる。ラミネータ装置30によって、第1基板P1に形成された積層構造体72を第2基板P2に転写することができる。このとき、積層構造体72を第1基板P1から剥がれやすくするための剥離層70は、第2基板P2側には転写されずに第1基板P1側に残されたままとなる。
【0048】
まず、
図10Aに示すように、積層構造体72上に形成された接着層74を第2基板P2の表面に接着させ(ステップS42)、
図10Bに示すように、剥離層70によって積層構造体72を第1基板P1から剥離する(ステップS43)。これにより、第1基板P1上の積層構造体72が第2基板P2に転写される。この転写によって、積層構造体72が反転した状態で第2基板P2上に形成される。つまり、積層構造体72を構成する第2導電層72c、機能層72b、および、第1導電層72aが、第2基板P2の表面側から前記の順で第2基板P2上に積層されることになり、第1導電層72aが露呈する。ラミネータ装置30によって積層構造体72が転写された第2基板P2は、回収ロール40によって巻き取られる。なお、剥離層70が第1基板P1から剥がれ第2基板P2側に転写された場合は、剥離層70を除去して第2基板P2の洗浄を行う。剥離層70は、可溶性なので、溶媒によって第1導電層72aから取り除かれる。
【0049】
そして、回収ロール40を供給ローラとして用い、この供給ローラから搬出された第2基板P2に対して、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、
図10Cに示すように、第1導電層72aにソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線とを形成する(第4の工程)。なお、
図10Cでは、ソース電極およびドレイン電極のみを表している。
【0050】
フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によるソース電極等の形成について簡単に説明すると、まず、ステップS44で、第2基板P2の表面側(第1導電層72a側)にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層は、
図3のステップS5で説明したように、ドライフィルムレジストや塗布等によって形成される。そして、ステップS45で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターン(ソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線等のパターン)を露光し、ステップS46で、現像を行う。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS47で、積層構造体72が形成された第2基板P2を腐食液(例えば、酸化第二鉄等)に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしてエッチング処理が施されて、第1導電層72aにソース電極およびドレイン電極等が形成される。そして、ステップS48で、第1導電層72a上にあるフォトレジスト層を剥離し、第2基板P2の洗浄を行う。このような工程を経ることで、第2基板P2上に、
図10Cに示すようなトップコンタクト型のTFTが形成される。なお、第2基板P2の洗浄は、NaOH等のアルカリ洗浄液を用いて洗浄してもよい。
【0051】
以上説明した工程のうち、少なくとも
図7のステップS31〜ステップS35の工程(
図9Aおよび
図9B)を第1基板P1の供給業者が行うようにし、供給業者が行った工程より後の工程を電子デバイスの製造業者が行うようにしてもよい。例えば、供給業者は、
図7のステップS31〜ステップS35の工程を行い、製造業者は、
図7のステップS36〜
図8のステップS48の工程(
図9C〜
図10C)を行ってもよい。
【0052】
このように、例えば、
図7のステップS31〜ステップS35の工程を第1基板P1の供給業者が行い、
図7のステップS36〜
図8のステップS48の工程をTFT(電子デバイス)の製造業者が行うことで、電子デバイスの製造業者の負担を軽減させることができ、高精度な電子デバイスを簡単に製造することができる。つまり、高精度な電子デバイスを製造するためには、電子デバイスを構成する少なくとも一部の積層構造体72を真空空間で成膜する必要があるが、電子デバイスの製造業者は真空空間での成膜を行わなくて済むので、電子デバイスの製造業者の負担が軽減する。また、電子デバイスの製造業者は、積層構造体72が形成された第1基板P1を用いて、電子デバイスを形成していけばよいので、電子デバイスの数および配置を任意に決定して電子デバイスを製造することができ、電子デバイスを構成する薄膜トランジスタ等の配置や結線、バスライン等の設計の自由度が向上する。また、電子デバイスを構成する全ての層の成膜に必要な多数の真空蒸着装置や塗工装置、或いはスパッタ装置等を持たない製造業者であっても、容易に高性能な電子デバイスを製造することができる。本実施の形態でも、
図7のステップS31〜ステップS35の工程を経て製造された第1基板P1(積層構造体72の担持基材)は、中間製品としてロール状に巻かれた状態、または所定の長さで枚葉状に切断された状態で、電子デバイスの製造業者に供給される。
【0053】
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下の変形例も可能である。
【0054】
(変形例1)変形例1では、トップコンタクト型のTFTの製造について、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施しながら積層構造体を形成するというものである。
図11および
図12は、本変形例1におけるトップコンタクト型のTFTの製造方法の工程の一例を示すフローチャートであり、
図13A〜
図13F、および、
図14A〜
図14Fは、
図11および
図12に示す工程によって製造されるTFTの製造経過状態を示す断面図である。まず、
図11のステップS61で、
図13Aに示すように、第1基板P1上に剥離層80を形成する。この剥離層80の形成工程は、
図3のステップS1と同様である。
【0055】
次いで、ステップS62で、
図13Bに示すように、第1基板P1上(剥離層80の上)に所定の厚さで堆積された絶縁材料(SiO
2、Al
2O
3等)の薄膜(絶縁層)82を形成する。この絶縁層82は、上述した成膜装置10を用いることで第1基板P1上に形成される。この絶縁層82は、パッシベーションとしての機能を有し、エッチングストッパーとしての機能も兼ねてもよい。
【0056】
そして、ステップS63で、
図13Cに示すように、第1基板P1上(絶縁層82の上)に所定の厚さで堆積された金属系の材料(Cu、Al、Mo等の導電性の材料)の薄膜(第1導電層)84aを形成する(第1の工程)。この第1導電層84aは、ソース電極およびドレイン電極の電極層と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線の配線層として機能するものである。この第1導電層84aは、上述した成膜装置10を用いることで第1基板P1上に形成される。
【0057】
その後、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、
図13Dに示すように、第1導電層84aにソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線とを形成する(第1の工程)。このとき、エッチングストッパーとしても機能する絶縁層82によって、剥離層80のエッチングが防止される。なお、
図13Dでは、ソース電極およびドレイン電極のみを表している。
【0058】
フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によるソース電極等の形成について簡単に説明すると、まず、ステップS64で、第1導電層84a上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層は、
図3のステップS5で説明したように、ドライフィルムレジストや塗布等によって形成される。そして、ステップS65で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターン(ソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極に付随する配線等のパターン)を露光し、ステップS66で、現像を行う。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS67で、第1導電層84aが形成された第1基板P1を腐食液(例えば、酸化第二鉄等)に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしてエッチング処理が施されて、第1導電層84aにソース電極およびドレイン電極等が形成される。そして、ステップS68で、第1導電層84a上にあるフォトレジスト層を剥離し、第1基板P1の洗浄を行う。
【0059】
そして、ステップS69で、
図13Eに示すように、第1基板P1の上(第1導電層84aの上)に、所定の厚さで堆積された半導体(IGZO、ZnO等)の薄膜(半導体層)84b1を形成する(第1の工程)。この半導体層84b1は、上述した成膜装置10を用いることで第1基板P1上に形成される。次いで、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、
図13Fに示すように、半導体層84b1を加工する(第1の工程)。つまり、ステップS70で、半導体層84b1上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層は、
図3のステップS5で説明したように、ドライフィルムレジストや塗布等によって形成される。そして、ステップS71で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターンを露光し、ステップS72で、現像を行う。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS73で、第1基板P1を腐食液(例えば、フッ化水素等)に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしてエッチング処理が施されて、半導体層84b1が加工される。これにより、
図13Fに示すように、少なくともソース電極とドレイン電極との間にある半導体層84b1を残し、それ以外の不要な半導体層84b1を除去することができる。そして、ステップS74で、フォトレジスト層を剥離し、第1基板P1の洗浄を行う。
【0060】
その後、
図12のステップS75で、
図14Aに示すように、第1基板P1の表面側(半導体層84b1側)に、所定の厚さで堆積された絶縁材料(SiO
2、Al
2O
3等)の薄膜(絶縁層)84b2を形成する(第1の工程)。この絶縁層84b2は、上述した成膜装置10を用いることで第1基板P1上に形成される。この半導体層84b1、および、絶縁層84b2は、機能層84bを構成する。
【0061】
そして、ステップS76で、
図14Bに示すように、第1基板P1の上(絶縁層84b2の上)に、所定の厚さで堆積された金属系の材料(Cu、Al、Mo等の導電性の材料)の薄膜(第2導電層)84cを形成する。この第2導電層84cは、上述した成膜装置10を用いることで第1基板P1上に形成される。第2導電層84cは、ゲート電極の電極層と、ゲート電極に付随する配線の配線層として機能するものである。この第1導電層84a、機能層84b、および、第2導電層84cで、積層構造体84が構成される。
【0062】
次いで、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、
図14Cに示すように、第2導電層84cにゲート電極とそれに付随する配線とを形成する(第1の工程)。なお、
図14Cでは、ゲート電極のみを表している。
図14Cに示す工程では、第2導電層84cが形成された第1基板P1に対して、ゲート電極とそれに付随する配線を形成するためのフォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施す。これにより、第1基板P1上にTFTが形成される。
【0063】
フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によるゲート電極等の形成について簡単に説明すると、まず、ステップS77で、第2導電層84c上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層は、
図3のステップS5で説明したように、ドライフィルムレジストや塗布等によって形成される。そして、ステップS78で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターン(ゲート電極およびそれに付随する配線等のパターン)を露光し、ステップS79で、現像を行う。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS80で、第1基板P1を腐食液(例えば、酸化第二鉄等)に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしたエッチング処理が施されて、第2導電層84cにゲート電極およびそれに付随する配線等が形成される。そして、ステップS81で、第2導電層84c上にあるフォトレジスト層を剥離し、第1基板P1の洗浄を行う。
図11のステップS63〜
図12のステップS81の工程を経ることで第1基板P1上に積層構造体84が形成される。
【0064】
そして、ステップS82で、
図14Dに示すように、積層構造体84が形成された第1基板P1上、つまり、第2導電層84c上に接着剤を塗布することで、接着層86を形成する。この接着層86は、第1基板P1上に形成された積層構造体84を第2基板P2に転写(接着)させやすくするためのものである。この接着剤として、例えば、UV硬化樹脂を用いてもよい。この場合は、接着層86を形成した後に紫外線を接着層86に照射する。
【0065】
次いで、ステップS83で、第2導電層84cが第2基板P2側に位置するように、第1基板P1と第2基板P2とを一時的に近接または密着させて、
図14Eに示すように、第1基板P1上に形成された積層構造体84を第2基板P2に転写する(第2の工程)。この転写は、上述したラミネータ装置30によって転写される。すなわち、剥離層80、絶縁層82、積層構造体84、および、接着層86が、第1基板P1の表面側から前記の順で積層された第1基板P1がロール状に巻かれたものを、ラミネータ装置30の供給ロール32として用いることで、第1基板P1に形成された積層構造体84を第2基板P2に転写することができる。これにより、積層構造体84が反転した状態で第2基板P2上に形成される。つまり、積層構造体84を構成する第2導電層84c、機能層84b、第1導電層84aが、第2基板P2の表面側から前記の順で第2基板P2上に積層されることになる。このとき、剥離層80は、第2基板P2側には転写されずに第1基板P1側に残されたままとなる。ラミネータ装置30によって積層構造体84が転写された第2基板P2は、回収ロール40によって巻き取られる。このような工程を経ることで、第2基板P2上に、
図14Eに示すようなトップコンタクト型のTFTが形成される。
【0066】
なお、第2基板P2上に積層構造体84、つまり、TFTを転写した後に、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施すことで、
図14Fに示すように、絶縁層82を加工してもよい(第4の工程)。この
図14Fに示す工程により、少なくともソース電極とドレイン電極との間にある絶縁層82が残り、それ以外の不要な絶縁層82が除去される。
【0067】
以上説明した工程のうち、少なくとも
図11のステップS61〜
図12のステップS81の工程(
図13A〜
図14C)に示す工程を第1基板P1の供給業者が行うようにし、供給業者が行った工程より後の工程を電子デバイスの製造業者が行うようにしてもよい。例えば、供給業者は、
図11のステップS61〜
図12のステップS82の工程を行い、製造業者は、
図12のステップS83の工程(
図14E)を行ってもよい。
【0068】
このように、例えば、
図11のステップS61〜
図12のステップS82の工程を第1基板P1の供給業者が行い、少なくとも
図12のステップS83の工程を電子デバイスの製造業者が行うことで、電子デバイスの製造業者の負担を軽減させることができ、高精度な電子デバイスを製造することができる。
【0069】
(変形例2)上記変形例1においては、剥離層80と第1導電層84aとの間に、絶縁層82を形成するようにしたが、変形例2においては、絶縁層82を形成しない。つまり、本変形例2では、
図11のステップS62の工程を行わない。したがって、
図11のステップS61の工程を経るとステップS63の工程を行う。例えば、パッシベーション層を設けなくてもよく、剥離層80がエッチングされる虞がない場合は、絶縁層82を剥離層80と第1導電層84aとの間に設けなくてもよい。なお、この場合は、絶縁層82を元々形成しないので、
図14Fのように絶縁層82に、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、絶縁層82を加工する必要もない。
【0070】
(変形例3)また、第1基板P1の供給業者は、アライメントマークKsが形成された第1基板P1を、製造業者に提供してもよい。このアライメントマークKsとは、基板上の露光領域Wに露光される所定のパターンと基板とを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。このアライメントマークKsを顕微鏡付きの撮像装置によって光学的に検出することで、基板の位置(基板の長手方向の位置、短手方向の位置、傾き状態)、或いは基板の面内での歪み状態を検出することができる。このアライメントマークKsは、例えば、基板の幅方向の両端側に、基板の長手方向(長尺方向)に沿って一定間隔で形成されている。
【0071】
例えば、第1基板P1の供給業者は、
図5B若しくは
図9Bに示すように、第1基板P1上に積層構造体52(72)を形成すると、
図15に示すように、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施して、第2導電層52c(72c)にアライメントマークKsを形成するようにしてもよい(第3の工程)。そして、アライメントマークKsが形成された第1基板P1を用いて、
図5C(
図9C)以降の工程を行うようにしてもよい。この場合は、転写により第1導電層52a(72a)が第2基板P2の表面側となり、第2導電層52c(72c)が第2基板P2の深部側となるので、形成したアライメントマークKsが第1導電層52a(72a)によって隠れてしまう。したがって、転写後(例えば、ソース電極およびドレイン電極を形成する際に)、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によって、
図16に示すように、アライメントマークKsと対向する領域の第1導電層52a(72a)を除去することで窓部90を設けるようにしてもよい。また、アライメントマークKsと対向する領域には第1導電層52a(72a)を形成しないようにすることで窓部90を設けてもよい。これにより、アライメントマークKsと対向する領域の第1導電層52a(72a)を除去する手間が省ける。なお、機能層52b(72b)は、透過性のある材料で構成されているので、アライメントマークKsを顕微鏡等の光学的なアライメント系で撮像することはできるが、機能層52b(72b)が、非透過性の材料で構成されている場合は、機能層52b(72b)にも窓部90を設けるのがよい。なお、窓部90とは、アライメントマークKsを撮像するために形成された開口部である。また、アライメントマークKsを第1導電層52a(72a)に形成し、窓部90を第2導電層52c(72c)に形成してもよい。
【0072】
また、第1導電層52a(72a)を形成したときに、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を用いて、第1導電層52a(72a)にアライメントマークKsまたは窓部90を形成し、第2導電層52c(72c)を形成したときに、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を用いて、第2導電層52c(72c)に窓部90またはアライメントマークKsを形成してもよい。特に、上記変形例1および2では、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を施しながら積層構造体84を形成していくので、積層構造体84の形成中に、アライメントマークKsおよび窓部90も一緒に形成してもよい。
【0073】
また、第1基板P1の供給業者が、電子デバイス用の回路基板上におけるデバイス領域内の配線パターン(例えば、アースバスライン、電源バスライン等の大きなパターンの形状、配置、寸法等のアートワーク)を予め把握している場合は、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によって、第1導電層52a(72a)または第2導電層52c(72c)にアライメントマークKsや窓部90を形成するのと同時に、それらの配線パターンを形成してもよい。さらに、第1基板P1の供給業者が、配線パターンとともに半導体素子(TFT)が形成される領域(或いはTFTが全く形成されない領域)を予め把握している場合は、TFTが形成される領域に機能層52b(72b)としての半導体層を選択的に堆積し、TFTが全く形成されない領域には機能層52b(72b)としての絶縁層を選択的に堆積させてもよい。この場合、機能層52b(72b)の全体の厚みをなるべく均一にするために、半導体層と絶縁層はほぼ同じ厚みになるように調整してもよい。
【0074】
(変形例4)
図17は、変形例4におけるラミネータ装置30aの構成を示す図である。なお、変形例4においては、上記第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。変形例4においては、ガイドローラGR6の代わりに、ガイドローラGR6より半径が大きいガイドローラGR6aを設けている。ラミネータ装置30aには、ガイドローラGR6aに巻き付いた第2基板P2に対して熱によって硬化する熱硬化接着剤を塗布するダイコータヘッドDCHが設けられている。つまり、変形例4では、第1基板P1側ではなく、第2基板P2側に接着剤を塗布することで接着層54(74)を形成する。したがって、第1基板P1には、接着層54(74)が設けられていない。ダイコータヘッドDCHによって熱硬化接着剤が塗布される第2基板P2上の領域は、ガイドローラGR6aの円周面で支持されている。このダイコータヘッドDCHは、熱硬化接着剤を第2基板P2に対して幅広く一様に塗布する。これにより、圧着加熱ローラ36によって、第1基板P1上に形成された積層構造体52(72)を、第2基板P2に転写することができる。
【0075】
詳しくは、圧着加熱ローラ36は、積層構造体52(72)が、第2基板P2側に位置し、且つ、第2基板P2上に塗布された熱硬化接着剤と接するように、第1基板P1と第2基板P2とを両側から挟んで密着させるとともに加熱を行う。この加熱によって熱硬化接着剤が硬化するので、接着層54(または74)が形成され、積層構造体52(72)と第2基板P2とが強固に接着されて、第1基板P1上に形成された積層構造体52(72)が第2基板P2に転写される。なお、圧着加熱ローラ36を通過した第1基板P1と第2基板P2とは互いに離間する。
【0076】
(変形例5)
図18は、変形例5におけるラミネータ装置30bの構成を示す図である。なお、変形例5においては、上記第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。変形例5においては、圧着加熱ローラ36の代わりに、加熱を行わずに、圧着のみを行う圧着ローラ36bを設け、ガイドローラGR6の代わりに、ガイドローラGR6より半径が大きいガイドローラGR6bを設けている。この圧着ローラ36bは、ローラRと、ローラRに比べ半径が大きいドラムDRSとを有する。したがって、ローラRとドラムDRSとによって挟まれて密着した第1基板P1と第2基板P2とは、互いに重ね合わさった状態でドラムDRSの円周面に沿って搬送され、その後、ガイドローラGR7、GR8によって互いに離間する。第1基板P1は、ガイドローラGR7によって回収ロール38に案内され、第2基板P2は、ガイドローラGR8によって回収ロール40に案内される。
【0077】
ラミネータ装置30bには、ガイドローラGR6bに巻き付いた第2基板P2に対してUV光によって硬化するUV硬化接着剤を塗布するダイコータヘッドDCH1が設けられている。つまり、変形例5では、第1基板P1側ではなく、第2基板P2側に接着剤を塗布することで接着層54(74)を形成する。したがって、第1基板P1には、接着層54(74)が設けられていない。ダイコータヘッドDCH1によってUV硬化接着剤が塗布される第2基板P2上の領域は、ガイドローラGR6bの円周面で支持されている。このダイコータヘッドDCH1は、UV硬化接着剤を第2基板P2に対して幅広く一様に塗布する。また、ラミネータ装置30bには、圧着ローラ36bによって圧着された第1基板P1と第2基板P2とが離間する前に、UV硬化接着剤に対してUV(紫外線)光を照射する紫外線照射源94を複数有する照射装置UVSが設けられている。これにより、圧着ローラ36bによって、第1基板P1上に形成された積層構造体52(72)を、第2基板P2に転写することができる。
【0078】
詳しくは、圧着ローラ36bのローラRとドラムDRSとは、積層構造体52(72)が、第2基板P2側に位置し、且つ、第2基板P2上に塗布されたUV硬化接着剤と接するように、第1基板P1と第2基板P2とを両側から挟んで密着させる。その後、照射装置UVSは、互いに重ね合わさった状態でドラムDRSに巻き付いて搬送されている第1基板P1および第2基板P2に対してUV光を照射する。このUV光の照射によって第1基板P1と第2基板P2との間にあるUV硬化接着剤が硬化するので、接着層54(74)が形成され、積層構造体52(72)と第2基板P2とが強固に接着される。このUVの照射後に、第1基板P1と第2基板P2とが、ガイドローラGR7、GR8によって互いに離間する。これにより、第1基板P1上に形成された積層構造体52(72)が第2基板P2に転写される。
【0079】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態においては、有機ELディスプレイの画素回路の具体的な製造方法について説明する。
図19は、アクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイの1つの発光画素の画素回路の一例を示す図であり、
図20は、
図19に示す画素回路の具体的な構造を示す図である。画素回路は、TFT、コンデンサC、および、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)を有する。TFTのソース電極Sおよびドレイン電極Dとそれに付随する配線L1、コンデンサCの一方の電極C1、および、OLEDのカソードに接続される画素電極Eは、積層構造体100の第1導電層102に形成されている。TFTのゲート電極Gとそれに付随する配線L2、および、コンデンサCの他方の電極C2は、積層構造体100の第2導電層104に形成されている。このコンデンサCの電極C2は、グラウンドGND(アースライン)に接続されている。また、第1導電層102に形成された配線L1と第2導電層104に形成された配線L2とを繋ぐ必要がある箇所には、無電解メッキコンタクタMが設けられている。なお、
図20においては、第1導電層102と、第2導電層104とを区別するため、便宜上第1導電層102を斜線で示している。
【0080】
本第2の実施の形態では、トップコンタクト型のTFTを有する画素回路の製造方法について説明する。
図21および
図22は、画素回路の製造方法の工程の一例を示すフローチャートである。
【0081】
まず、ステップS101〜ステップS105の工程を経て、
図23に示すように、第1基板P1の表面側から順に、剥離層106、第1導電層102、半導体層108、絶縁層110、および、第2導電層104を第1基板P1上に形成する。このステップS101〜ステップS105の工程は、
図7のステップS31〜ステップS35の工程と同一である。言うまでもないが、半導体層108および絶縁層110は、機能層112を構成し、第1導電層102と、機能層112(半導体層108および絶縁層110)と、第2導電層104とは、積層構造体100を構成する。本第2の実施の形態においては、第1導電層102および第2導電層104はCu(銅)で形成され、半導体層108は、酸化物半導体の一種であるZnOで形成され、絶縁層110はSiO
2で形成されている。
【0082】
そして、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によって、
図24および
図25に示すように、第2導電層104に所定のパターン(上述したゲート電極G、配線L2、および、コンデンサCの電極C2のパターン)を形成する。なお、
図24においては、第2導電層104には、ゲート電極Gおよび配線L2のみを図示している。また、
図25においては、第1導電層102と、第2導電層104とを区別するため、第1導電層102を斜線で示している。
【0083】
フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によるゲート電極等の形成について簡単に説明すると、まず、ステップS106で、第2導電層104上にフォトレジスト層を形成する。そして、ステップS107で、塗布されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターン(ゲート電極G、配線L1、および、電極C2のパターン)を露光し、ステップS108で、現像を行う。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS109で、第1基板P1を酸化第二鉄の腐食液に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしたエッチング処理が施されて、第2導電層104にゲート電極G等が形成される。そして、ステップS110で、フォトレジスト層を剥離し、第1基板P1の洗浄を行う。このステップS106〜ステップS110の工程は、
図7のステップS36〜ステップS40と同様である。このエッチング処理によって第2導電層104が除去された領域は、機能層112が露出することになる。
【0084】
その後、ステップS111で、第1基板P1をフッ化水素の腐食液に浸漬することで、
図24に示すように機能層112もエッチング(加工)している。ステップS109のエッチング処理によって第2導電層104が除去された領域は、機能層112が露出することになるので、第2導電層104が除去された領域の機能層112が、ステップS111のエッチング処理によって除去される。
【0085】
その後、ステップS112で、積層構造体100が形成された第1基板P1の表面側(第2導電層104側)に接着剤を塗布することで接着層114を形成する。そして、ステップS113で、第2導電層104が第2基板P2側に位置するように、第1基板P1と第2基板P2とを一時的に近接または密着させて、
図26に示すように、第1基板P1に形成された積層構造体100を第2基板P2に転写する。この転写は、ラミネータ装置30によって転写される。このステップS112およびステップS113の工程は、
図8のステップS41〜ステップS43と同様である。
【0086】
そして、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によって、
図27および
図28に示すように、第1導電層102に所定のパターン(上述したソース電極Sおよびドレイン電極D、配線L1、コンデンサCの電極C1、および、画素電極Eのパターン)を形成する。なお、
図27においては、第1導電層102には、ソース電極S、ドレイン電極D、および、配線L1のみを図示している。また、
図28においては、第1導電層102と、第2導電層104とを区別するため、第1導電層102を斜線で示している。
【0087】
フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によるソース電極等の形成について簡単に説明すると、
図22のステップS114で、第2基板P2の表面側(第1導電層102側)にフォトレジスト層を形成する。そして、ステップS115で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターン(ソース電極S、ドレイン電極D、配線L1、電極C1、および、画素電極Eのパターン)を露光し、ステップS116で、現像を行う。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS117で、第2基板P2を酸化第二鉄の腐食液に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしてエッチング処理が施されて、第1導電層102にソース電極Sおよびドレイン電極D等が形成される。この際、無電解メッキコンタクタMを形成するためのコンタクトホールHの開口部分も第1導電層102に形成される。そして、ステップS118で、第1導電層102上にあるフォトレジスト層を剥離し、第2基板P2の洗浄を行う。このステップS114〜ステップS118の工程は、コンタクトホールHを形成する点以外では、
図8のステップS44〜ステップS48と同様である。
【0088】
そして、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によって、
図29に示すように、コンタクトホールH部分の機能層112(半導体層108および絶縁層110)をエッチングする。つまり、ステップS119で、第2基板P2の表面側(第1導電層102側)にフォトレジスト層を形成する。そしてステップS120で、形成されたフォトレジスト層に紫外線を用いて所定のパターンを露光し、ステップS121で現像を行う。これにより、フォトレジスト層に所定のパターンが形成される。次いで、ステップS122で、第2基板P2をフッ化水素の腐食液に浸漬することで、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層をマスクとしてエッチング処理が施されて、コンタクトホールH部分の機能層112もエッチングする。これにより、コンタクトホールHが完成する。
【0089】
その後、ステップS123で、コンタクトホールH部分に無電解メッキ処理を行い、
図30に示すように、例えば、Cu、Cr、NiP等で構成された無電解メッキコンタクタMを形成して、第1導電層102(配線L1)と第2導電層104(配線L2)とを電気的に接続する。そして、ステップS124で、第2基板P2上にあるフォトレジスト層を剥離し、第2基板P2の洗浄を行う。以上のような工程を経て、
図20に示すような画素回路を製造することができる。
【0090】
なお、上記第1の実施の形態(変形例も含む)および上記第2の実施の形態では、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理を用いて薄膜を加工するようにしたが、光パターニング法を利用した加工処理であればなんでもよい。光パターニング法を利用した加工処理としては、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理の他に、例えば、積層構造体52が形成された第1基板P1を特殊な液体中に浸漬させた状態で、紫外線のパターン光を照射することで第2導電層52cの上に被覆されたレジスト層をエッチングする手法や、高NAで集光するレーザビームのスポットによって紫外線のパターン光を照射することで第2導電層52cを直接除去(エッチング)するアブレーション手法等がある。
【0091】
また、上記第1の実施の形態(変形例も含む)および上記第2の実施の形態では、ボトムゲート型構造のTFTを例にとって説明したが、トップゲート型構造のTFTであってもよい。また、第1基板P1(担持基材)上に形成される積層構造体52、72等は、薄膜トランジスタ(TFT)に限られず、薄膜ダイオード(TFD)を含む電子デバイスの製造にも有用である。さらに、積層構造体52、72等の構成において、上下の第1導電層と第2導電層の間に挟まれる機能層52b(72b)は2層以上の薄膜であってもよい。例えば、機能層52b(72b)が第1の機能性膜と第2の機能性膜の積層で構成される場合、第1の機能性膜は第1基板P1上でデバイス領域の全体に対応した領域に一様に成膜し、第2の機能性膜は第1の機能性膜上の一部分の領域に選択的に成膜してもよい。
【0092】
ところで、上記第1の実施の形態(変形例も含む)および上記第2の実施の形態等において、第1基板P1(金属箔等の担持基材)の表面のうち、積層構造体の絶縁層または半導体層が積層される表面の粗さを、JIS規格で定義される算術平均粗さRa値(nm)で表した場合、その粗さRa値は積層される絶縁層(または半導体層)の厚みを越えない範囲に定められる。しかしながら、TFTとしての長期安定動作を保証するためには、第1基板P1の表面の粗さRa値は200nm以下(サブミクロン以下)、さらには1nm〜数十nmの範囲にするのが好ましい。粗さRa値を小さくするほど、TFTの電気特性である電子移動度、オンオフ比、リーク電流の各特性が向上する。粗さRa値を1nm未満にすることも可能であるが、実用的な粗さRa値として、数nm程度であればよい。そのような粗さRa値は現在の表面処理(研磨)技術で容易に得られる。また、第1基板P1の表面上に、積層構造体の第1導電層(52a、72a、84a、102)を成膜する場合は、第1基板P1の表面を研磨処理等で平坦化する代わりに、第1基板P1の表面に平坦化膜を形成した後、その平坦化膜の上に剥離層(50、70、80、106)、第1導電層(52a、72a、84a、102)の順に成膜してもよい。平坦化膜は、第1基板P1の表面の凹部を埋めて凹凸を緩和するとともに、強いエッチング耐性を有し、転写(ラミネート)時やポストアニール時の加熱処理においても変性しないような材料、例えば、酸化シリコン(SiO
2)系の湿式材料で構成される。そのような平坦化膜の材料として、住友大阪セメント(株)製のスミセファイン(登録商標)、日本曹達(株)製のビストレイター(登録商標)、コルコート(株)製のコルコート(登録商標)、ハネウェル社や日立化成(株)等から販売されている平坦化材料SOG(Spin On Glass)等が使える。
【0093】
[上記各実施の形態の変形例]
上記各実施の形態(各変形例も含む)は、さらに、以下のように変形することも可能である。
【0094】
[変形例1]
図31は、先の
図1の成膜装置10と同様に、第1基板P1上に電子デバイス用の積層構造体を連続的に成膜する成膜装置10Aの概略構成を示す。
図31の成膜装置10Aは、チャンバー16、真空ポンプ18、成膜用回転ドラム22、成膜用回転ドラム22の周囲に配置され、複数の成膜原料(薄膜原料)を連続して堆積するための複数の基材20A、20B、20C、および、ガイドローラGR1〜GR3を備える。先の各実施の形態や変形例で説明したように、第1基板P1上には、導電層(金属膜、ITO膜等)、絶縁層(誘電体膜)の2層構造体、または、その2層構造の上に半導体層を成膜した3層構造体が形成される。そこで、成膜用回転ドラム22の周囲に配置される基材20Aは、蒸着、スパッタリング、或いはCVD等により導電層を成膜するものとし、基材20Bは、蒸着、スパッタリング、或いはCVD等により導電層の上に絶縁層を成膜するものとし、基材20Cは、蒸着、スパッタリング、或いはCVD等により絶縁層の上に半導体層を成膜するものとする。なお、第1基板P1上に導電層と絶縁層の2層構造体を形成する場合は、基材20Cによる成膜を行わない様にすればよい。さらに、作成すべきTFTの構造によっては、基材20Bと基材20Cの配置を入れ替えて、導電層、半導体層、絶縁層の順番で成膜を行ってもよい。
【0095】
このように、複数の薄膜材料の基材20A、20B、20Cによる各成膜部を、成膜用回転ドラム22の周囲に順次配置することにより、回収ロール14で巻き上げられる第1基板P1の表面には所望の積層構造体が一度に形成されるため、回収ロール14を別の成膜装置に掛け替える必要が無くなり、生産性が向上する。この場合、基材20Aによる成膜部、基材20Bによる成膜部、基材20Cによる成膜部では、同じような温度に設定しておくのが望ましい。また、成膜装置10Aとして、例えば国際公開第2013/176222号パンフレットに開示されているようなミストデポジション法(ミストCVD法)を組み込んだものでもよい。その場合、成膜材料の基材は、第1基板P1の表面に噴霧されるミスト中に、イオン状態、またはナノ粒子状態となって含有される。さらに、ミストの噴霧ノズルと第1基板P1の表面との間の空間中に、高圧パルス電源を使って非平衡状態の大気圧プラズマを発生させると、第1基板P1の温度が200℃程度でも、ミストCVD法による良好な成膜が可能となり、成膜レートも向上する。
【0096】
[変形例2]
図32は、先の
図9、
図10による転写法の変形例を示す概略図であり、
図9、
図10中の符号と同じ部材(層、膜、材料等)には同じ符号を付してある。先の
図9の例では、
図9Bに示すように、第1基板P1上に、剥離層70、第1導電層72a、半導体層72b1、絶縁層72b2、第2導電層72cを順次積層した後に、
図9Cに示すように、第2導電層72cをエッチングしてゲート電極を形成した。
図32に示す第1基板P1にも、同様に、剥離層70、第1導電層72a、半導体層72b1、絶縁層72b2、第2導電層72cが積層されるが、本変形例では、半導体層72b1を第1導電層72a上に一様に形成するのではなく、TFTのチャネル部(ソース電極とドレイン電極のギャップ部分)に相当する局所的な領域に選択的に半導体層72b1を形成する。この場合、第1導電層72a上にフォトレジスト層を形成し、フォトリソグラフィ法によって半導体層72b1を成膜すべき領域にレジスト層の開口部を形成し、その開口部内に蒸着、スパッタリング、CVD等により、半導体材料を堆積させればよい。
【0097】
その後、
図32の変形例では、第1導電層72aと選択的に形成された半導体層72b1とを一様に覆うように絶縁層72b2が成膜され、さらに絶縁層72b2の上に第2導電層72cが成膜され、第2導電層72cは、先の
図9Cと同様に、フォトリソグラフィ法を利用したエッチング処理によってゲート電極(およびそれと接続される配線)となるように加工される。本変形例では、半導体層72b1をTFTの形成領域に制限して選択的に成膜することができるので、半導体材料の使用量が抑えられる。このように第1基板P1上に形成された積層構造体72を第2基板P2に転写する場合、先の
図9Dでは第1基板P1の積層構造体72の表面に接着層74を塗布したが、本変形例では、
図32に示すように第2基板P2側に接着層74を形成する。本変形例における第2基板P2は、PETやPEN等のシート基板P2aの表面にポリエチレン(PE)等による緩衝層P2bを積層した構成とし、緩衝層P2bの表面にシーラント層(Silicon Sealant等)P2cを介して接着層74を形成する。
【0098】
図32に示すように、第1基板P1側の積層構造体72が選択的な半導体層72b1やゲート電極で形成される場合、積層構造体72の第2基板P2と対向する面には凹凸が生じるため、転写の際に第2基板P2との密着が不均一になる場合もある。そこで、そのような凹凸を吸収するために、緩衝層P2bが設けられる。緩衝層P2bとしては、安定性と可塑性を有するものが好ましく、転写時に熱圧着する場合にはポリエチレン(PE)等の熱可塑性のある材料がよい。さらに、本変形例では、緩衝層P2b上に形成される接着層74は、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂を主体とした合成樹脂エマルジョンタイプの接着剤EVA(Ethylene Vinyl Acetate)とする。このような構成とすることで、凹凸のある第1基板P1側の積層構造体72は、ひび割れ等のダメージを受けること無く、第2基板P2側に精密に転写される。
【0099】
[変形例3]
上記の
図32のように、接着層74(EVA)を使った場合、良好な転写が可能となるが、第1基板P1側の積層構造体72の凹凸が比較的に大きいと、接着層74(EVA)の硬化時に生じる内部応力によって、硬化後の接着層74(EVA)中、特に積層構造体72の第2導電層72cの上部や近傍に微細なクラックが生じる可能性がある。そこで、
図32のように第1基板P1上に積層構造体72(第1導電層72a、半導体層72b1、絶縁層72b2、第2導電層72c)を形成した後、
図33に示すように、積層構造体72の上を全体的に覆うように平坦化膜FPを形成する。この平坦化膜FPは、積層構造体72の凹部を埋めて凹凸を緩和するとともに、強いエッチング耐性を有し、転写(ラミネート)時やポストアニール時の加熱処理においても変性しないような材料、例えば、酸化シリコン(SiO
2)系の湿式材料で構成される。そのような平坦化膜FPの材料として、住友大阪セメント(株)製のスミセファイン(登録商標)、日本曹達(株)製のビストレイター(登録商標)、コルコート(株)製のコルコート(登録商標)、ハネウェル社や日立化成(株)等から販売されている平坦化材料SOG(Spin On Glass)等が使える。そして平坦化膜FPの材料が完全に乾燥した後、或いは乾燥の途中で、第2基板P2上の接着層74(EVA)に平坦化膜FP付の積層構造体72を圧着転写する。
【0100】
平坦化膜FPは、無機絶縁膜(或いは有機絶縁膜)であり、ラミネートされる接着層74(EVA)と直接接合することで、接着層74(EVA)の硬化時の内部応力に起因したクラック発生を低減させる作用を有する。なお、
図33では、第1基板P1上に積層構造体72を形成した後に、その上に平坦化膜FPの湿式材料を塗工するものとしたが、
図32のように、第2基板P2上に接着層74(EVA)を形成した後、その接着層74(EVA)の上に平坦化膜FPを形成し、その平坦化膜FPが乾燥する前に、第1基板P1上の積層構造体72を平坦化膜FPに加熱しながら転写してもよい。また、
図32、
図33において、第1基板P1上に形成される積層構造体72は、第1基板P1側の第1導電層72aがTFTのソース電極/ドレイン電極およびそれと接続される配線になり、第2基板P2側の第2導電層72cがTFTのゲート電極およびそれと接続される配線になるとして説明したが、逆であってもよい。すなわち、第1導電層72aをTFTのゲート電極およびそれと接続される配線とし、第2導電層72cをTFTのソース電極/ドレイン電極およびそれと接続される配線としてもよい。
【0101】
[第3の実施の形態]
図34〜
図36は、先の
図23〜
図30の実施の形態による製造方法の一部を改良した電子デバイス(TFT)の製造工程を示す図である。したがって、
図34〜
図36に示す各部材(材料)で
図23〜
図30中の各部材(材料)と同じものには、
図23〜
図30中の符号と同じ符号を付してある。本実施の形態では、
図34Aに示すように、第1基板P1を厚さ数十μm〜数百μm程度の銅(Cu)のシート箔板とし、その表面に剥離層106を挟んで銅(Cu)の第1導電層102を全面に積層する。この第1導電層102は、厚さが数十μm以下に圧延された銅箔を剥離層106上にラミネートして形成される。ラミネート後の第1導電層102は、その厚みを減少させつつ、表面の算術平均粗さRa値が数nm〜十数nm程度になるようにラッピングされる。
【0102】
次に、
図34Bに示すように、第1基板P1の第1導電層102の上に、TFTのゲート絶縁膜として機能する絶縁層110を形成する。この絶縁層110は、典型的なシリコン酸化膜(SiO
2)とし、第1導電層102の全面に成膜した後、エッチング等によりTFTの形成領域以外のシリコン酸化膜を除去する方法、または選択的な成膜によって初めからTFTの形成領域のみにシリコン酸化膜を蒸着する方法等によって形成される。第1基板P1も第1導電層102も、耐熱性の高い銅(Cu)であるため、真空内で高温成膜することができ、シリコン酸化膜の平坦性(粗さRa)を良好にすることができる。
【0103】
次に、
図34Cに示すように、絶縁層110(SiO
2)の上に、半導体層108を形成する。ここで、半導体層108は、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、亜鉛(Zinc)、および、酸素(Oxide)から構成されるIGZO(酸化物半導体)とする。IGZOによる半導体層108は、インジウム、ガリウム、亜鉛および酸素を構成元素とし、インジウムとガリウムの合量に対するインジウムの原子数比と、インジウムとガリウムと亜鉛の合量に対する亜鉛の原子数比とを所定の比にした酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとするスパッタ装置によって成膜される。スパッタ工程の前に、第1基板P1上の全面に形成されたレジスト層に、フォトリソグラフィ工程(パターンの露光とレジストの現像)によって半導体層108の形成領域に対応した窓を開ける処理が実施され、スパッタ装置によってIGZO半導体がスパッタされた後には、レジスト層を剥離する工程も実施される。これによって
図34Cのように、絶縁層110上に選択的にIGZOの半導体層108が形成される。
【0104】
次に、
図34Dに示すように、第2導電層104としてのソース電極104(S)とドレイン電極104(D)が半導体層108の上でチャネル部(Channel)となるように一定のギャップで対向配置して形成される。ここでも、フォトリソグラフィ工程を用いて、ソース電極104(S)とドレイン電極104(D)が形成される領域にレジスト層の窓部を形成し、その窓部内に金属性のソース電極104(S)とドレイン電極104(D)を蒸着等によって堆積する。ソース電極104(S)とドレイン電極104(D)は、半導体層108と接合するため、仕事関数の大きい金(Au)とするのが望ましいが、他の金属材料(アルミニウム、銅)、或いは銀ナノ粒子や金属性カーボンナノチューブを含む導電性インク材料でもよい。ここで、ソース電極104(S)とドレイン電極104(D)は、
図34Dに示すように、チャネル部から絶縁層110の領域の外側の第1導電層102まで広がるように形成され、ソース電極104(S)とドレイン電極104(D)は第1導電層102と電気的に導通した状態(オーミック結合)になっている。以上の工程によって、第1基板P1上に積層構造体100(第1導電層102、絶縁層110、半導体層108、第2導電層104)が形成される。
【0105】
図35は、第1基板P1上に形成された積層構造体100の平面的な配置構成を示す図である。TFTの電気特性として、電子移動度とオンオフ比がともに高く、リーク電流が充分に小さいことが望まれる。本実施の形態では、TFTのベースとなる第1導電層102の表面を、算術平均粗さRa値が充分に小さい平滑面とした。そのため、その上に形成される絶縁層110、半導体層108も均一な厚みの平坦な膜として形成され、半導体層108と第2導電層104(ソース電極とドレイン電極)との接触界面の平坦性も良好に維持される。これにより、電子移動度、オンオフ比、リーク電流とも良好な特性が得られる。また、チャネル部のソース電極104(S)とドレイン電極104(D)のギャップを数μm程度に小さくできるので、IGZO半導体の特性を生かした高性能なTFTが得られる。なお、
図35のように、絶縁層110、半導体層108、第2導電層104(ソース電極とドレイン電極)の積層に際しては、ミクロンオーダーでの相対的な重ね合せが必要になる。したがって、フォトリソグラフィ工程において、第1基板P1(特に第1導電層102)上の特定位置に形成したアライメントマークの位置を、露光装置内のアライメントセンサーで検出して、パターン露光位置を調整するアライメント動作が必要となる。
【0106】
図36は、
図34、
図35で示した積層構造体100を、第2基板P2に転写して、さらなる加工処理を施す様子を示す図である。
図36Aは、転写(ラミネート)工程によって、第1基板P1上の積層構造体100が第2基板P2に転写された直後の様子を示す。本実施の形態でも、転写の前に、先の
図33で説明したように、第1基板P1の積層構造体100の全面を覆うような平坦化膜FPを第1基板P1上に形成し、先の
図32で説明したように、PETによるシート基板P2aの表面にポリエチレン樹脂による緩衝層P2bを所定厚さで形成した第2基板P2を用意し、さらに第2基板P2の上に酢酸ビニル樹脂による接着層(EVA)114を所定の厚さで形成する。転写の際は、第1基板P1上の平坦化膜FPと第2基板P2上の接着層(EVA)114とを所定圧力で圧着させつつ、接着層(EVA)114を加熱により硬化させ、第1基板P1から積層構造体100を剥離する。これにより、
図36Aに示すように、第2基板P2上には、積層構造体100が第1導電層(Cu)102を最上面に露出した状態で貼り合される。
【0107】
図36Aに示す転写直後の状態では、第1導電層102の表面に剥離層106の残渣が付着している場合がある。その場合は、第1導電層102の表面を洗浄、または研磨するとよい。特に、第1導電層102の厚みが数十μm程度である場合、この後の第1導電層102の加工処理(特にエッチング処理)に時間が掛ることがあるので、研磨工程を入れて、第1導電層102の厚みを数μm程度にしておくとよい。本実施の形態では、緩衝層P2b、EVAによる接着層114、平坦化膜FPを設けたので、第1導電層102の表面の研磨時の外力によって、内部のTFTが破損すること(ひび割れ、断線)が抑制される。また、第1基板P1上にTFTの積層構造体100を製造する際のフォトリソグラフィ工程で使ったアライメントマークのうち、第1導電層102の複数位置の各々に形成したアライメントマークを微細な貫通孔(例えば、20μm径の円形、20μm角の矩形等)とした場合は、
図36Aのように第1導電層102が最上面になるため、そのアライメントマークを露光装置のアライメントセンサーで容易に検出できる。そのため、第1導電層102をフォトリソグラフィ工程で加工処理する際、第1導電層102の下層のTFTの位置、特にソース電極104(S)とドレイン電極104(D)の各位置を、アライメントマークの位置を基準として正確に特定することができる。
【0108】
そこで、
図36Aの第1導電層102の表面にレジスト層を塗布し、露光装置によって、TFTのゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、およびそれらの電極と連なる配線の形状に対応したパターン光をレジスト層に露光する。その際、パターン光の投射位置は、第1導電層102に形成されたアライメントマークを、露光装置のアライメントセンサーが検出することによって精密に設定される。露光後のレジスト層の現像処理、第1導電層102(Cu)のエッチング処理によって、
図36Bに示すように、第1導電層102によるゲート電極102G、ソース電極102S、ドレイン電極102D(およびそれら電極と接続される配線)が形成される。その際、エッチング後のソース電極102Sが半導体層108と直接結合しているソース電極104(S)と接合し、ドレイン電極102Dが半導体層108と直接結合しているドレイン電極104(D)と接合した状態となるように、アライメントとパターニングが実施される。さらに、エッチング後のゲート電極102Gは、
図35に示したチャネル部(ソース電極104(S)とドレイン電極104(D)とのキャップ部)を覆うようにパターニングされる。
【0109】
図37は、
図36BのTFTの平面的な配置構成の一例を示す図であり、
図37中の36B−36B’矢視断面が
図36Bとなっている。エッチング処理により、第1導電層102の不要な部分が除去されるが、除去された部分では、絶縁性の平坦化膜FPが露出している。電子デバイスの製造のために、更なる機能素子(抵抗、コンデンサ、発光素子、受光素子、IC等)を第2基板P2上に形成する場合は、第1導電層102で形成された配線部分等に、それらの機能素子をハンダ付けすることができる。また、第1導電層102が銅(Cu)である場合は、酸化による腐食を防止する絶縁性、耐熱性の膜を、選択的または全体に形成してもよい。
【0110】
以上、本実施の形態では、第1基板P1上に形成される積層構造体100の第1導電層102の算術平均粗さRa値を充分に小さくするとともに、真空プロセスや高温プロセスを使えるように、第1基板P1を金属箔(銅箔)としたので、高性能なTFTを形成することができる。したがって、最終的にフレキシブルな第2基板P2上に製造される電子デバイス(表示パネル、タッチパネル、シートセンサー等)の性能が飛躍的に向上する。なお、本実施の形態では、第1基板P1上に形成される積層構造体100のうちの第2導電層104を、TFTのソース電極、ドレイン電極とするように加工処理したが、第2導電層104をゲート電極とするように加工処理してもよい。その場合は、
図34に示したTFT(積層構造体100)の製造工程において、第1導電層102上に積層する絶縁層110と半導体層108の順番(上下関係)を逆にすればよい。すなわち、最初に第1導電層102上の所定領域に半導体層108を形成し、その上に半導体層108を完全に覆うような大きさで絶縁層110を形成し、その絶縁層110の上に、第2導電層104によるゲート電極を第1導電層102と部分的に結合するように形成すればよい。
【0111】
また、以上の本実施の形態では、第1基板P1を銅(Cu)のシート箔板とし、その表面に剥離層106を介して積層構造体100の第1導電層102を形成するようにしたが、第1基板P1の銅(Cu)のシート箔板自体を、積層構造体100の第1導電層102とすることもできる。その場合、第1基板P1は、その表面の算術平均粗さRa値が充分に小さくなるような圧延による金属箔(銅箔)とし、さらに必要に応じて、表面をラッピングするとよい。
【0112】
また、第1導電層102を第1基板P1とする場合は、第1基板P1自体が第1導電層102(電極、配線)となって、第2基板P2側に転写されるので、例えば転写工程の直後に、第1基板P1(第1導電層102)の厚みを減少させる研磨処理を行うのが望ましい。このように、第1基板P1自体を第1導電層102とする場合は、第1基板P1を含んで構成される積層構造体(導電層、絶縁層、半導体層)の全体を、第2基板P2側に転写することになり、結果的に第1基板P1も第2基板P2側に転写される。
【0113】
また、以上の本実施の形態では、絶縁層110と半導体層108との2層を第1導電層102(または第1基板P1自体)と第2導電層104とで挟み込むような構成を積層構造体としたが、先の
図5に示したように、絶縁層のみ(または半導体層のみ)を第1導電層102(または第1基板P1自体)と第2導電層104とで挟み込むような構成の積層構造体としてもよい。
【0114】
このように、第1基板P1自体を積層構造体の一部として構成する場合、電子デバイスを構成する少なくとも一部の積層構造体が形成された第1基板を第2基板上に転写するためのデバイス製造方法では、第1基板を導電性の材料による第1導電層として用意し、その第1導電層の上に絶縁性および半導体の少なくとも一方の材料による機能層を形成し、その機能層の上に導電性の材料による第2導電層を形成することで、積層構造体を形成する第1の工程と、第2導電層が第2基板側に位置するように、第1基板と第2基板とを一時的に近接または密着させて、第1基板を含む積層構造体を第2基板に転写する第2の工程と、が実施されることになる。
【0115】
また、第1基板P1自体を積層構造体の一部として構成する場合、被転写基板に電子デバイスを構成する少なくとも一部の積層構造体を転写するための転写基板は、導電性の材料によって第1導電層として機能する導電箔(例えば金属箔)と、絶縁性および半導体の少なくとも一方の材料によって第1導電層の上に形成される機能層と、導電性の材料によって機能層の上に形成される第2導電層とを備えることになる。この場合、転写基板の全体を被転写基板に転写する(貼り合せる)ことになる。
【0116】
さらに、上記の
図34の実施の形態では、第1基板P1上に剥離層106を介して第1導電層102として銅箔をラミネートしたが、その他、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、錫(Sn)、ステンレス(SUS)等の箔、またはそれらの合金による箔、或いは、それらの箔に金(Au)等をメッキした箔を第1導電層102としてラミネートしてもよい。これらの金属箔は、圧延箔、電解箔(電気メッキ箔)として生成されるが、ラミネート時の密着性を高めるために、第1基板P1と対向する裏面にはある程度の粗さ(例えば、算術平均粗さRa値で200nm程度)が必要である。一方、金属箔の機能層(絶縁層や半導体層等)が形成される表面は、粗さRa値が数nm〜数十nm程度の平滑面である必要がある。したがって、第1導電層102を金属箔とする場合、金属箔の表面と裏面とで粗さRa値を意図的に異ならせ、粗さRa値が大きい面を第1基板P1側とし、粗さRa値が小さい面を積層構造体が形成される面にするとよい。